特許第5697742号(P5697742)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697742
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   H05B6/12 308
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-502173(P2013-502173)
(86)(22)【出願日】2012年2月16日
(86)【国際出願番号】JP2012001009
(87)【国際公開番号】WO2012117680
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2013年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-42634(P2011-42634)
(32)【優先日】2011年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】田仲 導生
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/101135(WO,A1)
【文献】 特許第3163520(JP,B2)
【文献】 特開平08−264275(JP,A)
【文献】 特開2000−082579(JP,A)
【文献】 特開2003−080522(JP,A)
【文献】 特開2005−085560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を構成する本体と、
前記本体の上面に設けられ、調理容器が載置されるトッププレートと、
前記トッププレートの下に設置され、外周部にリング形状の側板を有する円盤状のコイルベースと、
前記コイルベースの周方向に設けられた複数の取付エリアと、
外周壁面が前記コイルベースの搭載面に対して垂直な面に形成され、前記複数の取付エリアにそれぞれ嵌め込まれた複数の変形リング状の加熱コイル
を備え、
前記複数の取付エリアは、それぞれ、前記コイルベースの側板に沿って設けられた複数の第1位置決め凸部と、当該複数の第1位置決め凸部のうち中央に位置する第1位置決め凸部と対向配置された第2位置決め凸部とにより形成され、
前記複数の加熱コイルの外周壁面の形状は、それぞれ、前記複数の第1位置決め凸部と前記第2位置決め凸部とにより保持されることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱コイルは、加工の過程において加熱処理が施されたことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱コイルには、粒成長が見られることを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記加熱コイルは、その加熱コイルの長手方向に対して直交する方向に巻き付けられた帯状の形状保持手段を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記形状保持手段は、耐熱性を有するテープであることを特徴とする請求項4記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理容器である鍋を加熱コイルで誘導加熱する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器として、トッププレートの下に配置されたリング形状の加熱コイルを、加熱コイルの内周から外周にわたるU字形状のコイルベース(フェライト)の凹部に設置しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−100429号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リング状の加熱コイルを中心として、その周囲に周方向に配置された複数の加熱コイルを有する加熱調理器がある。その加熱コイルは、周方向に延びた変形リング状に形成されている。その変形リング状の加熱コイルの場合、その形状を形成することにより加熱コイルの外方に残留応力が発生し、加熱コイルの形状が変形するという課題があった。
【0005】
本発明は、前述のような課題を解決するためになされたものであり、変形リング状の加熱コイルであっても、残留応力によって形状が変形することなく、コイルベースへの組み立て作業が容易にできる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱調理器は、外郭を構成する本体と、本体の上面に設けられ、調理容器が載置されるトッププレートと、トッププレートの下に設置され、外周部にリング形状の側板を有する円盤状のコイルベースと、コイルベースの周方向に設けられた複数の取付エリアと、外周壁面がコイルベースの搭載面に対して垂直な面に形成され、複数の取付エリアにそれぞれ嵌め込まれた複数の変形リング状の加熱コイルを備え、複数の取付エリアは、それぞれ、コイルベースの側板に沿って設けられた複数の第1位置決め凸部と、当該複数の第1位置決め凸部のうち中央に位置する第1位置決め凸部と対向配置された第2位置決め凸部とにより形成され、複数の加熱コイルの外周壁面の形状は、それぞれ、複数の第1位置決め凸部と第2位置決め凸部とにより保持されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱コイルは、コイルベースに配置された変形リング状に形成され、その外周壁面がコイルベースの配置面に対して垂直に形成されている。これにより、コイルベースに加熱コイルを組み立てる際には、その垂直面がコイルベースに対して位置決めとなって作業が容易となっている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る加熱調理器の斜視図である。
図2】実施の形態に係る加熱調理器のトッププレートを取り外して示す斜視図である。
図3図2の加熱調理器において左側のコイルユニットを拡大して示す上面図である。
図4図3に示すコイルユニットの下面図である。
図5図4の下面図においてフェライト部分を拡大して示す側面視の断面図である。
図6図3のコイルユニットにおいて周方向に延びて変形リング状に形成された加熱コイルを拡大して示す平面図である。
図7】変形リング形状の加熱コイルの部分を拡大して示す側面視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は実施の形態に係る加熱調理器の斜視図、図2は実施の形態に係る加熱調理器のトッププレートを取り外して示す斜視図、図3図2の加熱調理器において左側のコイルユニットを拡大して示す上面図、図4図3に示すコイルユニットの下面図、図5図4の下面図においてフェライト部分を拡大して示す側面視の断面図、図6図3のコイルユニットにおいて周方向に延びて変形リング状に形成された加熱コイルを拡大して示す平面図、図7は変形リング形状の加熱コイルの部分を拡大して示す側面視の断面図である。
【0010】
これらの図において、本実施の形態の加熱調理器は、外郭を構成する加熱調理器本体1と、加熱調理器本体1の上部開口面を覆うように取り付けられ、外周に外枠を有するトッププレート2と、トッププレート2の後部の外枠に着脱自在に設けられた吸排気口のカバー3と、加熱調理器本体1の前面に配置された操作部4と、加熱調理器本体1の前面に操作部4と隣接して設けられたグリル扉5を備えている。トッププレート2は、例えば耐熱強化ガラスより構成されている。そのトッププレート2の下には、例えば2つのコイルユニット6、7と、1つのヒーターユニット8が配置されている。
【0011】
コイルユニット6には、後述するが、複数の加熱コイルが設けられ、コイルユニット7には、小径および大径のリング状の加熱コイルが設けられている。また、ヒーターユニット8には、ラジエントヒーターが設けられている。前述の加熱コイルに高周波電流が流れると、加熱コイルから高周波電流に応じた磁束が発生し、その磁束によりトッププレート2に載置された調理容器の鍋などが誘導加熱される。なお、ヒーターユニット8に代えて、コイルユニット7の外径より小さいコイルユニットを用いてもよい。
【0012】
前述のコイルユニット6は、図3図4に示すように、コイルベース61と、複数のフェライト63と、複数の加熱コイル64、65、66を備えている。コイルベース61は、中央に位置する中央支持体62と、この中央支持体62を中心に放射状に伸びる複数の梁部62aと、この梁部62aの端部と連結されたリング形状の側板62bを有し、円盤状に形成されている。そして、梁部62aは、図5に示すように、断面形状が下方向に開口するコの字状に形成され、その開口にフェライト63が嵌め込まれて固着されている。また、コイルベース61の上側面、つまり、梁部62aのフェライト63側の反対側の面には、後述する加熱コイル64、65、66が設けられている。
【0013】
フェライト63は、加熱コイル64、65、66から発生する磁束のうち下方や側方に漏洩する磁束の磁路としての役割をなしている。これによって、コイルユニット6から漏れる磁束を防止でき、操作部4に設けられた回路基板上の電子部品や、加熱コイル64、65、66に高周波電流を供給するための回路基板上の電子部品などへの悪影響を与えないように防いでいる。
【0014】
コイルユニット6の加熱コイル64は、リング状に形成され、中央支持体62を中心として中央支持体62の外周を囲むように配置されている。加熱コイル65は、加熱コイル64の外径より大きいリング状に形成され、その加熱コイル64の外周を囲むように配置されている。加熱コイル66は、コイルベース61の周方向に延びた変形リング状に形成され、加熱コイル65の周囲に周方向に等間隔に例えば4個配置されている。
【0015】
変形リング状の各加熱コイル66は、次のような工程で製造される。
まず、加熱コイル66の元となるコイルを、線材を用いて巻回することにより作成する。そして、この加熱コイル66の元となるコイルをプレス加工することにより、前述したような変形リング状の加熱コイル66が成形される。この時、加熱コイル66の外周壁面は、平面となるようにプレス加工されている。特に本実施の形態においては、コイルの外周壁面は、コイルベース61の各加熱コイルの搭載面に対して、垂直な面(以下、「垂直面66a」という)となるようにプレス加工されている。
なお、加熱コイル66は、コイルベース61のコイルの搭載面に対して垂直方向から取り付けられる。つまり、加熱コイル66の取り付け方向は、垂直面66aと平行となっている。
ここで、前述の平面(垂直面66a)とは、完全な面を意味するものではなく、加熱コイル66の外周壁面を構成する線材の外側の面を繋ぐ面が、略平面に構成されていればよい。
このプレス加工を経た段階において、変形リング状に成形されたコイルは、プレス加工する前の形状に戻ろうとする応力(残留応力)がコイルに残留している。
次に、前記のようにプレス加工した後のコイルを加熱処理することにより、プレス加工する前の形状に戻ろうとする応力を除去することで、変形リング状の加熱コイル66が構成される。その加熱処理を施すことによって、加熱コイル66の素材の再結晶化を促進して残留応力が緩和し、実使用時の温度帯においての変形防止を可能にしている。この加熱処理後の加熱コイル66の材料には、再結晶化による粒成長が見られる。
ここで、加熱コイル66を製造する過程で、コイルの残留応力を除去するために前述の通り加熱処理を行うが、コイルに対して加熱しすぎると、耐絶縁性能が低下し、寿命の短い加熱コイル66となる恐れがあるため、完全に残留応力を除去する程度まで加熱処理を行わない。つまり、加熱コイル66には、若干、残留応力が残った状態となっている。
そこで、次に説明するように加熱コイル66に形状保持手段を取り付けることにより、若干残っている残留応力に対応している。
【0016】
ここで、形状保持手段について説明する。
前記のようにプレス加工と熱処理によって構成された前述の加熱コイル66は、図5に示すように、形状保持手段であるテープ71によって、加熱コイル66の辺を束ねて保持することにより、加熱コイル66に残る残留応力による元の形状へと戻ろうとする広がりを防ぐと共に、その加熱コイル66の外周壁面に形成された垂直面66a(図6参照)が保持される。
その保持方法として、同図(a)に示すように、加熱コイル66の長手方向に対して直交する方向の中央1カ所に、向かい合う加熱コイル66の辺が束ねられるようにテープ71を巻き付ける方法と、同図(b)に示すように、加熱コイル66の長手方向に対して直交する方向の両側に、向かい合う加熱コイル66の辺が束ねられるようにそれぞれテープ71を巻き付ける方法と、さらに、同図(c)に示すように、加熱コイル66の長手方向の内側のコイルをテープ71で巻き付ける方法とがある。
同図(a)に示すテープ71の巻き付け方法であれば、1つの巻き付け位置で加熱コイル66の残留応力による広がりを防ぐことが可能となる。
同図(b)に示すテープ71の巻き付け方法であれば、残留応力による元の形状に戻ろうとする力が強いコイルの湾曲部の近くで加熱コイル66を保持できるので、より強固に加熱コイル66の形状を保持可能である。
さらに、同図(c)に示すテープ71の巻き付け方法であれば、加熱コイル66が元の形状に復元しようとする力により生じるコイルの束なりの乱れを防止することが可能である。
そのテープ71により、加熱コイル66に発生する残留応力による外周壁面の垂直面66aの変形を抑えている。また、前述のテープ71の一例として、例えば、熱や変形に強いガラスクロステープが使用されている。
【0017】
そのテープ71が巻き付けられた変形リング状の各加熱コイル66は、コイルベース61の側板62bに沿って設けられた例えば3個の位置決め凸部67と、この位置決め凸部67と中央支持体62の間に設けられ、3個の位置決め凸部67の内、中央に位置する位置決め凸部67と対向配置された1個の位置決め凸部68とで形成される取付エリアに嵌め込まれる。
なお、この位置決め凸部67,68の加熱コイル66が取り付けられる側の面は、コイルベース61の各加熱コイルの取り付け面に対して、垂直な平面に構成されている。
従って、加熱コイル66が位置決め凸部67,68により形成された取付エリアに嵌め込まれる際に、加熱コイル66の垂直面66aと各位置決め凸部67,68の垂直面は平面が合わさることで、加熱コイル66をコイルベース61に対して、正しく容易に嵌め込むことが可能である。
さらに、加熱コイル66が、残留応力が残った状態でコイルベース61に取り付けられても、前記のように加熱コイル66と接する部位が平面である複数の位置決め凸部67,68と垂直面66aを接して取付エリアに設けられるので、コイルベース61へ取り付けた後でも、加熱コイル66の変形を防止することができる。
つまり、前記の位置決め凸部67、68により形成されたコイルベース61への取付エリアに加熱コイル66を設けることで、加熱コイル66に発生する残留応力による外周壁面の垂直面66aの変形をさらに抑えている。なお、前述の位置決め凸部67、68は、変形リング状の加熱コイル66を固定しているフェライト63上に設けられている。
【0018】
以上のように本実施の形態によれば、変形リング状の加熱コイル66にテープ71を巻き付けて、加熱コイル66の外周壁面に形成された垂直面66aを保持しており、また、この垂直面66aと加熱コイル66のコイルベース61への取り付け方向が平行(同じ方向)となっているので、位置決め凸部67、68により形成される取付エリアに加熱コイル66を容易に嵌め込むことができ、組み立て作業が容易となっている。
【0019】
また、加熱コイル66にテープ71を巻き付けた加熱コイル66を、位置決め凸部67、68により形成される取付エリアに嵌め込んでいるので、加熱コイル66の外周壁面に形成された垂直面66aが変形することがない。
【0020】
さらに、過度の加熱処理が不要となるため、変形リング状の加熱コイル66の絶縁性能の劣化を抑えることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 加熱調理器本体、2 トッププレート、3 カバー、4 操作部、5 グリル扉、6 コイルユニット、61 コイルベース、62 中央支持体、62a 梁部、62b コイルベースの側板、63 フェライト、64、65、66 加熱コイル、66a 加熱コイルの垂直面、67,68 位置決め凸部、7 コイルユニット、8 ヒーターユニット、71 テープ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7