(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697751
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】高次横モード波を抑制した弾性波デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
H03H9/145 C
H03H9/145 Z
【請求項の数】29
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-524280(P2013-524280)
(86)(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公表番号】特表2013-544041(P2013-544041A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】JP2012001495
(87)【国際公開番号】WO2012132238
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2013年5月24日
(31)【優先権主張番号】特願2011-68857(P2011-68857)
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514250975
【氏名又は名称】スカイワークス・パナソニック フィルターソリューションズ ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】中西 秀和
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】鶴成 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 城二
【審査官】
橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0068655(US,A1)
【文献】
国際公開第2008/146449(WO,A1)
【文献】
特開2006−217517(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/123585(WO,A1)
【文献】
特開2007−110342(JP,A)
【文献】
特開2011−101350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H9/00−9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、当該圧電基板上に形成される少なくとも1組のIDT電極と、当該圧電基板および当該IDT電極の少なくとも一部を被覆する誘電体膜を備える弾性波デバイスであって、
前記IDT電極は、バスバーおよび当該バスバーから延伸する複数の電極指を有し、一方の前記IDT電極の各電極指は、他方の前記IDT電極の電極指と交互に並ぶよう配置され、
前記誘電体膜は、少なくとも前記電極指が交互に並ぶ領域を被覆し、
前記領域のうち前記電極指の先端から所定長さ以上内側の部分である交差領域における弾性波の音速は、当該交差領域に隣接する部分であって前記電極指の先端部を含む部分であるエッジ領域における弾性波の音速よりも速く、
前記誘電体膜として、前記少なくとも前記電極指が交互に並ぶ領域を被覆する第1の誘電体膜と、当該第1の誘電体膜上に形成され、前記エッジ領域をさらに被覆する第2の誘電体膜とを備え、
前記第2の誘電体膜の音速は、前記第1の誘電体膜の音速より遅く、
前記第1の誘電体膜の材質は、二酸化ケイ素であり、
前記第2の誘電体膜の材質は、五酸化二タンタルである、弾性波デバイス。
【請求項2】
圧電基板と、当該圧電基板上に形成される少なくとも1組のIDT電極と、当該圧電基板および当該IDT電極の少なくとも一部を被覆する誘電体膜を備える弾性波デバイスであって、
前記IDT電極は、バスバーおよび当該バスバーから延伸する複数の電極指を有し、一方の前記IDT電極の各電極指は、他方の前記IDT電極の電極指と交互に並ぶよう配置され、
前記誘電体膜は、少なくとも前記電極指が交互に並ぶ領域を被覆し、
前記領域のうち前記電極指の先端から所定長さ以上内側の部分である交差領域における弾性波の音速は、当該交差領域に隣接する部分であって前記電極指の先端部を含む部分であるエッジ領域における弾性波の音速よりも速く、
前記誘電体膜は、前記バスバーが配置された領域に、前記交差領域よりも薄い膜厚で被覆される、弾性波デバイス。
【請求項3】
圧電基板と、当該圧電基板上に形成される少なくとも1組のIDT電極と、当該圧電基板および当該IDT電極の少なくとも一部を被覆する誘電体膜を備える弾性波デバイスであって、
前記IDT電極は、バスバーおよび当該バスバーから延伸する複数の電極指を有し、一方の前記IDT電極の各電極指は、他方の前記IDT電極の電極指と交互に並ぶよう配置され、
前記誘電体膜は、少なくとも前記電極指が交互に並ぶ領域を被覆し、
前記領域のうち前記電極指の先端から所定長さ以上内側の部分である交差領域における弾性波の音速は、当該交差領域に隣接する部分であって前記電極指の先端部を含む部分であるエッジ領域における弾性波の音速よりも速く、
前記IDT電極は、バスバーに接続されると共に、他方のIDT電極の電極指と交互に並ぶように配置されていない複数のダミー電極指を有し、
前記誘電体膜は、前記ダミー電極指が配置された領域に、前記交差領域よりも薄い膜厚で被覆される、弾性波デバイス。
【請求項4】
前記IDT電極は、バスバーに接続される、請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
他方のIDT電極の電極指と交互に並ぶように配置されていない複数のダミー電極指をさらに含む、請求項4に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記エッジ領域に隣接し、前記電極指の先端部分から前記他方のIDT電極のバスバーまでの間の領域をギャップ領域とすると、前記ギャップ領域の音速は前記エッジ領域の音速よりも速い、請求項1から3のいずれかに記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記エッジ領域に隣接し、前記電極指の先端部分から前記電極指に対向するダミー電極指の先端部分までの間の領域をギャップ領域とすると、前記ギャップ領域の音速は前記エッジ領域の音速よりも速い、請求項3または5に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記圧電基板の材質は、ニオブ酸リチウムである、請求項2または3に記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
前記誘電体膜の材質は、二酸化ケイ素である、請求項8に記載の弾性波デバイス。
【請求項10】
前記誘電体膜の前記交差領域における膜厚は、前記エッジ領域における膜厚よりも薄い、請求項9に記載の弾性波デバイス。
【請求項11】
前記誘電体膜は、2つの二酸化ケイ素膜の積層構造を含む、請求項10に記載の弾性波デバイス。
【請求項12】
前記誘電体膜は、二酸化ケイ素膜と当該二酸化ケイ素膜をさらに被覆する誘電体膜の積層構造を含む、請求項10に記載の弾性波デバイス。
【請求項13】
前記誘電体膜として、前記少なくとも前記電極指が交互に並ぶ領域を被覆する第1の誘電体膜を備える、請求項2または3に記載の弾性波デバイス。
【請求項14】
前記誘電体膜として、前記第1の誘電体膜上に形成され、前記交差領域をさらに被覆する第2の誘電体膜を備える、請求項13に記載の弾性波デバイス。
【請求項15】
前記第2の誘電体膜の音速は、前記第1の誘電体膜の音速より速い、請求項14に記載の弾性波デバイス。
【請求項16】
前記第1の誘電体膜の材質は、二酸化ケイ素である、請求項15に記載の弾性波デバイス。
【請求項17】
前記第2の誘電体膜の材質は、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、または、窒化アルミニウムのいずれかである、請求項16に記載の弾性波デバイス。
【請求項18】
前記誘電体膜よりも耐湿性の高いパッシベーション膜によって前記誘電体膜の前記交差領域が被覆された、請求項1から3のいずれかに記載の弾性波デバイス。
【請求項19】
前記誘電体膜よりも耐湿性の高いパッシベーション膜によって前記誘電体膜の前記交差領域を含む領域が被覆される、請求項1から3のいずれかに記載の弾性波デバイス。
【請求項20】
前記パッシベーション膜の前記交差領域における膜厚は、他の領域における膜厚よりも厚い、請求項19に記載の弾性波デバイス。
【請求項21】
前記バスバーにおける少なくとも一部の電極膜厚が前記電極指の電極膜厚より厚い、請求項1から3のいずれかに記載の弾性波デバイス。
【請求項22】
前記圧電基板の材質は、ニオブ酸リチウムである、請求項1から3のいずれかに記載の弾性波デバイス。
【請求項23】
前記圧電基板のカット角および伝播角を右手系直交座標のオイラー角(φ,θ,ψ)で表した場合、θ=36°以上41°以下であり、かつ、φとψはそれぞれ−10°以上10°以下の任意の値である、請求項22に記載の弾性波デバイス。
【請求項24】
前記IDT電極は、白金、タングステン、モリブデンのいずれかを主成分とする第1の金属層と、前記第1の金属層の上に前記第1の金属層より導電率の高い第2の金属層との積層構造を含む、請求項1から3のいずれかに記載の弾性波デバイス。
【請求項25】
前記圧電基板上に形成される2つの反射器をさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載の弾性波デバイス。
【請求項26】
複数組の前記IDT電極が、前記2つの反射器の間に形成される、請求項25に記載の弾性波デバイス。
【請求項27】
前記2つの反射器および前記複数組の前記IDT電極は、主要弾性波の伝搬方向に沿って配置される、請求項1から3のいずれかに記載の弾性波デバイス。
【請求項28】
、
縦結合型フィルタを構成する、請求項27に記載の弾性波デバイス。
【請求項29】
前記誘電体膜の前記交差領域または前記エッジ領域の各端部において、当該誘電体膜の膜厚が変化する部分は、当該誘電体膜の膜厚が連続的に変化するテーパー部によって形成される、請求項1から28のいずれかに記載の弾性波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯域フィルタ等に用いられる弾性波デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の情報通信機器などの分野において、共振子、フィルタなどの回路素子として、圧電基板の表面に櫛形のIDT電極を形成した弾性波デバイスが用いられている。このような弾性波デバイスの一例を
図26に示す。
図26の(a)は、弾性波デバイス900の上面図である。弾性波デバイス900は、圧電基板901に2つのIDT電極902と、2つの反射器903を配置して形成されている。IDT電極902はそれぞれ、バスバー911および当該バスバー911から延伸する複数の電極指912を有する。IDT電極902のそれぞれの電極指912は、他方のIDT電極902の電極指912と交互に並ぶよう配置される。また、反射器903は、これらのIDT電極902をはさんで、1つずつ配置される。また、
図26の(b)は、他の弾性波デバイス950の上面図である。弾性波デバイス950は弾性波デバイス900において、IDT電極902がバスバー911から電極指912と交互に延伸するダミー電極指913をさらに有し、電極指912が、他方のIDT電極902のダミー電極指913と対向するよう配置される。これらの弾性波デバイス900および950において、電極指912が交互に並んだ領域のうち各電極指912の先端部分を除いた領域を含む帯状の領域である交差領域は、弾性波の主要な伝播路として利用される。
【0003】
特許文献1は、弾性波デバイス900の交差領域上に圧電体または絶縁体の被膜1004を設けて導波路を形成した弾性波デバイス1000を開示している。
図27は、1本の電極指912に沿った弾性波デバイス1000の断面図である。弾性波デバイス1000では、弾性波の伝搬を被膜1004に集中させ、不要波となる高次の横モード波を抑制している。
【0004】
特許文献2は、弾性波デバイス900の、交差領域に隣接し各電極指912の先端部分を含む2つの帯状の領域であるエッジ領域において、IDT電極の電極指912の幅および膜厚を増した弾性波デバイス1100、および、エッジ領域のみにおいてIDT電極上に誘電体膜1154を設けた弾性波デバイス1150を開示している。
図28の(a)は、弾性波デバイス1100の上面図であり、
図28の(b)は1本の電極指912に沿った弾性波デバイス1150の断面図である。一般に、弾性波デバイスにおいては、交差領域における音速よりエッジ領域およびバスバー領域における音速を遅くすることで、主要な伝播路となる交差領域における基本横モード波の閉じ込めと、不要波となる高次の横モード波の抑制とを図ることができることが知られているが、特許文献2では、IDT電極の電極指の先端部分の形状や質量を大きくすることで、エッジ領域における音速を制御している。
【0005】
特許文献3は、弾性波デバイス900の圧電基板901、IDT電極902および反射器903の上に、誘電体膜1204を表面が平坦となるよう被覆した弾性波デバイス1200を開示している。
図29は、1本の電極指912に沿った弾性波デバイス1200の断面図である。弾性波デバイス1200においては、誘電体膜1204を圧電基板901上に被覆することで、温度による弾性波デバイス1200の周波数特性の変化を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3201088号公報
【特許文献2】米国特許第7576471号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/034347号パンフレット(特願2005−509259)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、弾性波デバイスにおいて、誘電体膜を少なくとも交差領域とエッジ領域とに被覆する構成によって、温度による周波数特性の変化の安定化が図られることはあっても、高次の横モード波の抑制が考慮されることがなかった。したがって、周波数特性の温度変化の安定化のため、誘電体膜を被覆した弾性波デバイスであっても、高次の横モードの抑制のためには、さらに、IDT電極の電極指の先端部分等の形状を別途設計する必要があった。
【0008】
それゆえに、本発明の目的は、誘電体膜を少なくとも交差領域とエッジ領域とに被覆した弾性波デバイスにおいて、不要波となる高次の横モード波を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、圧電基板と当該圧電基板上に形成される少なくとも1組のIDT電極と、当該圧電基板および当該IDT電極の少なくとも一部を被覆する誘電体膜を備える弾性波デバイスであって、IDT電極は、バスバーおよび当該バスバーから延伸する複数の電極指を有し、一方のIDT電極の各電極指は、他方のIDT電極の電極指と交互に並ぶよう配置され、誘電体膜は、少なくとも電極指が交互に並ぶ領域を被覆し、当該領域のうち電極指の先端から所定長さ以上内側の部分である交差領域における弾性波の音速は、当該交差領域に隣接する部分であって電極指の先端部を含む部分であるエッジ領域における弾性波の音速よりも速い、弾性波デバイスである。
【0010】
さらに、IDT電極は、バスバーに接続されると共に、他方のIDT電極の電極指と交互に並ぶように配置されていない複数のダミー電極指を有しても良い。
【0011】
また、エッジ領域に隣接し、電極指の先端部分から他方のIDT電極のバスバーまでの間の領域、若しくは電極指の先端部分から電極指に対向するダミー電極指の先端部分までの間の領域をギャップ領域とすると、ギャップ領域の音速は前記エッジ領域の音速よりも速いことが好ましい。
【0012】
また、圧電基板の材質は、ニオブ酸リチウムであり、誘電体膜の材質は、二酸化ケイ素であり、誘電体膜の交差領域における膜厚は、エッジ領域における膜厚よりも薄いことが好ましい。
【0013】
さらにまた、誘電体膜は、2つの二酸化ケイ素膜の積層構造若しくは、二酸化ケイ素膜と当該二酸化ケイ素膜をさらに被覆する誘電体膜の積層構造を含むことが好ましい。
【0014】
また、誘電体膜として、少なくとも電極指が交互に並ぶ領域を被覆する第1の誘電体膜と、当該第1の誘電体膜上に形成され、交差領域をさらに被覆する第2の誘電体膜とを備え、第2の誘電体膜の音速は、第1の誘電体膜の音速より速いことが好ましい。
【0015】
ここで、第1の誘電体膜の材質は、二酸化ケイ素であり、第2の誘電体膜の材質は、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、または、窒化アルミニウムのいずれかであることが好ましい。
【0016】
あるいは、誘電体膜として、少なくとも電極指が交互に並ぶ領域を被覆する第1の誘電体膜と、当該第1の誘電体膜上に形成され、エッジ領域をさらに被覆する第3の誘電体膜とを備え、第3の誘電体膜の音速は、第1の誘電体膜の音速より遅いことが好ましい。
【0017】
ここで、第1の誘電体膜の材質は、二酸化ケイ素であり、第3の誘電体膜の材質は、五酸化二タンタルであることが好ましい。
【0018】
また、誘電体膜よりも耐湿性の高いパッシベーション膜によって誘電体膜の交差領域が被覆されていることが好ましい。
【0019】
また、誘電体膜よりも耐湿性の高いパッシベーション膜によって誘電体膜の交差領域を含む領域が被覆され、パッシベーション膜の交差領域における膜厚は、他の領域における膜厚よりも厚いことが好ましい。
【0020】
なお、バスバーにおける少なくとも一部の電極膜厚が電極指の電極膜厚より厚いことが好ましい。
【0021】
あるいは、誘電体膜は、ダミー電極指又はバスバーが配置された領域に、交差領域よりも薄い膜厚で被覆されるものとしてもよい。
【0022】
また、上述のような弾性波デバイスにおいて、圧電基板のカット角および伝播角を右手系直交座標のオイラー角(φ,θ,ψ)で表した場合、θ=36°以上41°以下であることが好ましい。
【0023】
また、IDT電極は、白金、タングステン、モリブデンのいずれかを主成分とする第1の金属層と、第1の金属層の上に第1の金属層より導電率の高い第2の金属層との積層構造を含む構成であることが好ましい。
【0024】
また、弾性波デバイスは、圧電基板上に形成される2つの反射器をさらに備え、複数組のIDT電極が、2つの反射器の間に形成され、2つの反射器および複数組のIDT電極は、主要弾性波の伝搬方向に沿って配置され、縦結合型フィルタを構成するものとしてもよい。
【0025】
また、誘電体膜の交差領域またはエッジ領域の各端部において、当該誘電体膜の膜厚が変化する部分は、当該誘電体膜の膜厚が連続的に変化するテーパー部によって形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、誘電体膜を少なくとも交差領域とエッジ領域とに被覆した弾性波デバイスにおいて、不要波となる高次の横モード波を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波デバイスの上面図および断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波デバイスの特性を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る弾性波デバイスの上面図および断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る弾性波デバイスの特性を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の第2の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の第2の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の第2の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の第3の実施形態に係る弾性波デバイスの上面図および断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第3の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図17】
図17は、本発明の第3の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図18】
図18は、本発明の第3の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図19】
図19は、本発明の第3の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図20】
図20は、本発明の第3の実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図21】
図21は、本発明の第4の実施形態に係る弾性波デバイスの上面図および断面図である。
【
図22】
図22は、本発明の各実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図23】
図23は、本発明の各実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図24】
図24は、本発明の各実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図25】
図25は、本発明の各実施形態に係る弾性波デバイスの変形例を示す図である。
【
図28】
図28は、従来の弾性波デバイスの上面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について以下に説明する。
図1は本実施形態に係る弾性波デバイス100を透過的に描いた上面図およびそのA−A´線に沿った断面図である。弾性波デバイス100は、圧電基板101に2つのIDT電極102と、2つの反射器103を配置している。また、これらは、誘電体膜104によって被覆されている。IDT電極102はそれぞれ、バスバー111および当該バスバー111から交互に延伸する複数の電極指112およびダミー電極指113を有する。IDT電極102のそれぞれの電極指112は、他方のIDT電極102の電極指112と交互に並び、かつ、先端が他方のIDT電極102のダミー電極指113の先端と対向するよう配置される。また、反射器103はこれらのIDT電極をはさんで、1つずつ配置される。圧電基板としては、そのカット角および伝播角を右手系直交座標のオイラー角(φ,θ,ψ)で表した場合、θ=36°以上41°以下であるニオブ酸リチウムであることが好ましい。尚、φとψは夫々−10°以上10°以下の任意の値である。なお、IDT電極102と反射器103の材質としては、白金、タングステン、モリブデンのいずれかを主成分とする第1の金属層と、第1の金属層の上に第1の金属層より導電率の高い第2の金属層との積層構造を含む構成であることが好ましい。これにより、弾性波デバイス100の特性ロス低下と電極抵抗の抑制を図ることができる。また、誘電体膜の材質としては、二酸化ケイ素(SiO
2)が挙げられる。
【0029】
弾性波デバイス100において、電極指112が交互に並んだ領域のうち各電極指の先端から所定の長さの領域を除いた領域を含む帯状の領域を交差領域と呼ぶことにする。また、電極指112が交互に並んだ領域のうち交差領域に隣接し電極指112の先端から所定の長さの領域を含む2つの帯状の領域をエッジ領域と呼ぶことにする。また、エッジ領域に隣接し、電極指112の先端部分から当該電極指112に対向するダミー電極指113の先端部分までの間の領域を含む2つの帯状の領域をギャップ領域と呼ぶことにする。また、ギャップ領域に隣接し、ダミー電極指113の先端部分からバスバー111の電極指が延伸する側の端縁までの間の領域を含む2つの帯状の領域をダミー領域と呼ぶことにする。弾性波デバイス100は、レイリー波を主要な弾性波として用い、上述の各領域のうち交差領域が主要な伝搬路として利用される。
【0030】
弾性波デバイス100においては、誘電体膜は、交差領域における膜厚がエッジ領域における膜厚より薄くなるよう形成されている。該構成とすることにより、弾性波デバイス100において、(交差領域の音速)>(エッジ領域の音速)となる。さらに、弾性波デバイス100において、(ギャップ領域の音速)>(エッジ領域の音速)としている。これにより、交差領域に基本横モード波を閉じ込めるとともに、スプリアスとなる高次の横モード波を抑制することができる。
【0031】
また、弾性波デバイス100においては、バスバー領域の一部を誘電体膜で覆うことによって、バスバー領域に対するパッシベーション効果が得られる。このとき、音速関係は、(交差領域の音速)>(バスバー領域の音速)、(エッジ領域の音速)>(バスバー領域の音速)となる。
【0032】
図2は、弾性波デバイス100において、誘電体膜のIDT電極上での膜厚を1300ナノメートルとし、交差領域における誘電体膜の膜厚を、エッジ領域における誘電体膜の膜厚より、300ナノメートル薄くした場合、および、600ナノメートル薄くした場合についての、アドミタンスの周波数特性を示すグラフである。ここで、弾性波デバイス100のIDT電極のピッチは2μmであり、主要弾性波の波長λの1/2倍である。また、弾性波デバイス100において、誘電体の膜厚を主要弾性波の波長λで規格化すると、上記1300ナノメートルの誘電体膜の膜厚は0.325λ、上記300ナノメートル薄くした場合の誘電体膜の膜厚は0.25λ、上記600ナノメートル薄くした場合の誘電体膜の膜厚は17.5%である。また、
図2には、比較例として、弾性波デバイス100において、従来同様、交差領域における誘電体膜の膜厚を薄くしなかった場合の、周波数特性も示す。
図2に示すように、比較例に比べ、本実施形態の弾性波デバイス100は、横モードスプリアスが抑制されていることが分かる。なお、上記は主要弾性波の波長λが4μmの場合で説明したが、他の波長を主要弾性波の波長λとする場合は、誘電体膜の膜厚を上記に記したように波長λで規格化した膜厚とすれば良い。
【0033】
また、
図3に、本実施形態の変形例を示す。
図3は、
図1に示す弾性波デバイス100の断面図と同様に、本実施形態に係る弾性波デバイス300の断面を示す図である。弾性波デバイス300は、弾性波デバイス100において、ギャップ領域、若しくはダミー領域およびダミー領域より外側の誘電体膜104の膜厚をエッジ領域の誘電体膜104の膜厚より薄くしたものである。これによって、主要な伝播路となる交差領域からの弾性波の漏れ出しを抑制し、交差領域への弾性波の閉じ込めをさらに向上できる。
【0034】
また、
図4に示すように、誘電体膜104よりも耐湿性の高いパッシベーション膜108によって誘電体膜104を被覆することで、弾性波デバイス100の耐湿性を向上することができる。このパッシベーション膜として、例えば、窒化ケイ素(SiN)、酸化窒化ケイ素(SiON)、又は窒化アルミニウム(AlN)が挙げられる。
【0035】
さらにまた、
図5に示すように、バスバー111における少なくとも一部の電極膜厚を電極指112の電極膜厚より厚くすることで、IDT電極102の電極抵抗を抑制し、弾性波デバイス100の特性を改善することができる。尚、バスバー111の他にバスバーに接続された配線電極(図示せず)の膜厚をIDT電極102の電極指112より厚くしても良い。この場合は、弾性波デバイス100の配線抵抗を抑制することができ、弾性波デバイス100の挿入損失を小さくすることができる。
【0036】
図6に示すように、誘電体膜104は、2つの二酸化ケイ素膜104a、104bの積層構造であっても良い。この場合、二酸化ケイ素膜104aは、IDT電極102の上面の全面に積層されると共に、二酸化ケイ素膜104bは、IDT電極102の上面の交差領域以外の領域であるエッジ領域とギャップ領域とダミー領域に積層される。こうすることで、弾性波デバイス100の製造工程の歩留まりが良くなる。なお、二酸化ケイ素膜104bは、二酸化ケイ素膜より音速の速い他の材料の誘電体膜であっても良い。
【0037】
また、上記はIDT電極102がダミー電極指113を有する弾性波デバイス100について説明したが、
図7に示すように、IDT電極102がダミー電極指113を有していなくとも良い。この場合、IDT電極102のダミー領域は存在しなくなり、ギャップ領域は、電極指112の先端部分から他方のIDT電極のバスバーまでの間の領域となる。この場合も同様に、弾性波デバイス100において、(交差領域の音速)>(エッジ領域の音速、(ギャップ領域の音速)>(エッジ領域の音速)となる。これにより、交差領域に基本横モード波を閉じ込めるとともに、スプリアスとなる高次の横モード波を抑制することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について以下に説明する。
図8は本実施形態に係る弾性波デバイス400を透過的に描いた上面図およびそのA−A´線に沿った断面図である。弾性波デバイス400は、第1の実施形態の弾性波デバイス100と同様、圧電基板101に2つのIDT電極102と、2つの反射器103を配置している。しかし、これらを第1の誘電体膜404によって被覆したのち、さらに第2の誘電体膜405で被覆した点で弾性波デバイス100と異なる。
【0039】
弾性波デバイス400においては、第1の誘電体膜404は、圧電基板101、IDT電極102および反射器103を被覆し、表面が平坦な面を形成している。また、第2の誘電体膜405は、第1の誘電体膜404上の交差領域を一様の膜厚で被覆している。第1の誘電体膜404の材質としては、二酸化ケイ素(SiO
2)が挙げられる。また、第2の誘電体膜405の材質としては、窒化ケイ素(SiN)、酸化窒化ケイ素(SiON)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)又は窒化アルミニウム(AlN)が挙げられる。これらの材質は、第2の誘電体膜405の音速が、第1の誘電体膜404の音速より速くなるように、選択される。
【0040】
弾性波デバイス400においては、交差領域上に被覆された第2の誘電体膜405の影響により、(交差領域の音速)>(エッジ領域の音速)となる。さらに、弾性波デバイス400において、(ギャップ領域の音速)>(エッジ領域の音速)としている。これによって、交差領域に基本横モード波を閉じ込めるとともに、スプリアスとなる高次の横モード波を抑制することができる。
【0041】
また、弾性波デバイス400においては、バスバー領域の一部を誘電体膜で覆うことによって、バスバー領域に対するパッシベーション効果が得られる。このとき、音速関係は、(交差領域の音速)>(バスバー領域の音速)、(エッジ領域の音速)>(バスバー領域の音速)となる。
【0042】
図9は、弾性波デバイス400において、第2の誘電体膜405の膜厚を30ナノメートルとした場合の、アドミタンスの周波数特性を示すグラフである。ここで、弾性波デバイス400のIDT電極102のピッチは2μmであり、誘電体膜の膜厚は、主要弾性波の波長λで規格化すると、0.015λとなる。また、
図9には、比較例として、弾性波デバイス400において、第2の誘電体膜405を設けなかった場合の、周波数特性も示す。
図9に示すように、比較例に比べ、本実施形態の弾性波デバイス400は、横モードスプリアスが抑制されていることが分かる。なお、上記は主要弾性波の波長λが4μmの場合で説明したが、他の波長を主要弾性波の波長λとする場合は、誘電体膜の膜厚を上記に記したように波長λで規格化した膜厚とすれば良い。
【0043】
また、
図10に、本実施形態の変形例を示す。
図10は、
図1に示す弾性波デバイス100の断面図と同様に、本実施形態に係る弾性波デバイス600の断面を示す図である。弾性波デバイス600は、弾性波デバイス400において、ギャップ領域、若しくはダミー領域およびダミー領域より外側の第1の誘電体膜404の膜厚をエッジ領域の第1の誘電体膜404の膜厚より薄くしたものである。これによって、主要な伝播路となる交差領域からの弾性波の漏れ出しを抑制し、交差領域への弾性波の閉じ込めをさらに向上できる。
【0044】
尚、第2の誘電体膜405は、交差領域に加えてギャップ領域若しくはダミー領域における第1の誘電体膜404上に設けられることが好ましい。これにより、主要な伝播路となる交差領域からの弾性波の漏れ出しをさらに抑制し、交差領域への弾性波の閉じ込めをさらに向上できる。
【0045】
また、
図11に示すように、第1誘電体膜404よりも耐湿性の高いパッシベーション膜408によって第1の誘電体膜404を被覆することで、弾性波デバイス400の耐湿性を向上することができる。このパッシベーション膜として、例えば、窒化ケイ素(SiN)、酸化窒化ケイ素(SiON)、又は窒化アルミニウム(AlN)が挙げられる。
【0046】
さらにまた、
図12に示すように、このパッシベーション膜408は第1の誘電体膜404と第2の誘電体膜405の間に設けられていても良い。
【0047】
また、
図13に示すように、バスバー111における少なくとも一部の電極膜厚を電極指112の電極膜厚より厚くすることで、IDT電極102の電極抵抗を抑制し、弾性波デバイス400の特性を改善することができる。尚、バスバー111の他にバスバーに接続された配線電極(図示せず)の膜厚をIDT電極102の電極指112より厚くしても良い。この場合は、弾性波デバイス400の配線抵抗を抑制することができ、弾性波デバイス400の挿入損失を小さくすることができる。
【0048】
また、上記はIDT電極102がダミー電極指113を有する弾性波デバイス400について説明したが、
図14に示すように、IDT電極102がダミー電極指113を有していなくとも良い。この場合、IDT電極102のダミー領域は存在しなくなり、ギャップ領域は、電極指112の先端部分から他方のIDT電極のバスバーまでの間の領域となる。この場合も同様に、弾性波デバイス400において、(交差領域の音速)>(エッジ領域の音速、(ギャップ領域の音速)>(エッジ領域の音速)となる。これにより、交差領域に基本横モード波を閉じ込めるとともに、スプリアスとなる高次の横モード波を抑制することができる。
【0049】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について以下に説明する。
図15は本実施形態に係る弾性波デバイス700を透過的に描いた上面図およびそのA−A´線に沿った断面図である。弾性波デバイス700は、第1の実施形態の弾性波デバイス100と同様、圧電基板101に2つのIDT電極102と、2つの反射器103を配置している。しかし、これらを第1の誘電体膜704によって被覆したのち、さらに第3の誘電体膜705で被覆した点で弾性波デバイス100と異なる。
【0050】
また、弾性波デバイス700は、第3の誘電体膜705を、第1の誘電体膜704上のエッジ領域に一様の膜厚で被覆している点で、第2の実施形態の弾性波デバイス400とも異なる。第1の誘電体膜704の材質としては、二酸化ケイ素(SiO
2)が挙げられる。また、第3の誘電体膜705の材質としては、五酸化二タンタル(Ta
2O
5)が挙げられる。第3の誘電体膜705の音速が、第1の誘電体膜704の音速より遅くなるように、これらの材質が選択される。
【0051】
弾性波デバイス700においては、エッジ領域上に被覆された第3の誘電体膜の影響により、(交差領域の音速)>(エッジ領域の音速)となる。さらに、弾性波デバイス700において、(ギャップ領域の音速)>(エッジ領域の音速)としている。これによって、第1および第2の弾性波デバイス100および400と同様、スプリアスとなる高次の横モード波を抑制することができる。
【0052】
また、弾性波デバイス700においては、バスバー領域の一部を誘電体膜で覆うことによって、バスバー領域に対するパッシベーション効果が得られる。このとき、音速関係は、(交差領域の音速)>(バスバー領域の音速)、(エッジ領域の音速)>(バスバー領域の音速)となる。
【0053】
また、
図16に、本実施形態の変形例を示す。
図16は、
図1に示す弾性波デバイス100の断面図と同様に、本実施形態に係る弾性波デバイス800の断面を示す図である。弾性波デバイス800は、弾性波デバイス700において、ギャップ領域、若しくはダミー領域およびダミー領域より外側の第1の誘電体膜704の膜厚をエッジ領域の第1の誘電体704の膜厚より薄くしたものである。これによって、主要な伝播路となる交差領域からの弾性波の漏れ出しを抑制し、交差領域への弾性波の閉じ込めをさらに向上できる。
【0054】
以上の実施形態では、圧電基板101として回転Yカットニオブ酸リチウムを用い、誘電体膜として二酸化ケイ素等を用いたが、本発明の趣旨は、これらとは材質の異なる圧電基板や誘電体膜に対しても、適宜適用可能である。また、本発明は、
図9に示す弾性波デバイス900のように、IDT電極902がダミー電極指を有しない場合にも、適用可能である。
【0055】
また、
図17に示すように、第1誘電体膜704よりも耐湿性の高いパッシベーション膜708によって第1の誘電体膜704を被覆することで、弾性波デバイス700の耐湿性を向上することができる。このパッシベーション膜として、例えば、窒化ケイ素(SiN)、酸化窒化ケイ素(SiON)、又は窒化アルミニウム(AlN)が挙げられる。
【0056】
さらにまた、
図18に示すように、このパッシベーション膜708は第1の誘電体膜704と第2の誘電体膜705の間に設けられていても良い。
【0057】
また、
図19に示すように、バスバー111における少なくとも一部の電極膜厚を電極指112の電極膜厚より厚くすることで、IDT電極102の電極抵抗を抑制し、弾性波デバイス700の特性を改善することができる。尚、バスバー111の他にバスバーに接続された配線電極(図示せず)の膜厚をIDT電極102の電極指112より厚くしても良い。この場合は、弾性波デバイス700の配線抵抗を抑制することができ、弾性波デバイス700の挿入損失を小さくすることができる。
【0058】
また、上記はIDT電極102がダミー電極指113を有する弾性波デバイス700について説明したが、
図20に示すように、IDT電極102がダミー電極指113を有していなくとも良い。この場合、IDT電極102のダミー領域は存在しなくなり、ギャップ領域は、電極指112の先端部分から他方のIDT電極のバスバーまでの間の領域となる。この場合も同様に、弾性波デバイス700において、(交差領域の音速)>(エッジ領域の音速、(ギャップ領域の音速)>(エッジ領域の音速)となる。これにより、交差領域に基本横モード波を閉じ込めるとともに、スプリアスとなる高次の横モード波を抑制することができる。
【0059】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施形態について以下に説明する。
図21は本実施形態に係る弾性波デバイス800を透過的に描いた上面図およびそのA−A´線に沿った断面図である。弾性波デバイス800は、圧電基板101の上において2つの反射器803の間に、複数対のIDT電極802a、802b、802cを主要弾性波の伝搬方向に配置して縦結合型フィルタとした点で弾性波デバイス100と異なる。尚、
図21では弾性波デバイス800が3組のIDT電極を有する構成を示したが、弾性波デバイス800は、2組、或は4組以上のIDT電極を有していても構わない。
【0060】
弾性波デバイス800においても、(交差領域の音速)>(エッジ領域の音速)となる。さらに、弾性波デバイス800において、(ギャップ領域の音速)>(エッジ領域の音速)としている。これによって、弾性波デバイス100と同様、スプリアスとなる高次の横モード波を抑制することができる。
【0061】
また、弾性波デバイス800においては、バスバー領域の一部を誘電体膜で覆うことによって、バスバー領域に対するパッシベーション効果が得られる。このとき、音速関係は、(交差領域の音速)>(バスバー領域の音速)、(エッジ領域の音速)>(バスバー領域の音速)となる。
【0062】
(変形例1)
上述の各実施形態において、弾性波の主要な伝搬路となる交差領域およびエッジ領域の各端部において誘電体膜の膜厚が変化する箇所に、テーパー部1201を設け、誘電体膜の膜厚の急峻な変化を緩和し、連続的に膜厚を変化させることが好ましい。
図22の(a)は、一例として、
図1に示した第1の実施形態に係る弾性波デバイス100において、誘電体膜104の交差領域とエッジ領域との境界部分にテーパー部1201を設けた場合の断面図である。
図22の(b)は、他の例として、
図3に示した第1の実施形態に係る弾性波デバイス300において、誘電体膜104の交差領域とエッジ領域との境界部分、および、エッジ領域とギャップ領域との境界部分にテーパー部1201を設けた場合の断面図である。また、
図23は、さらに他の例として、
図11に示した第2の実施形態に係る弾性波デバイス600において、第2の誘電体膜405およびパッシベーション膜408の交差領域とエッジ領域との境界部分にテーパー部1201を設けた場合の断面図である。これらのように、テーパー部1201によって誘電体膜の膜厚を連続的に変化させる場合、膜厚を急峻に変化させる場合に比べて、当該箇所を伝搬する弾性波の音速の急速な変化が抑制され、不要なスプリアス波の発生を低減することができる。
【0063】
(変形例2)
上述の各実施形態において、パッシベーション膜を設ける場合、交差領域にのみパッシベーション膜を設けてもよい。
図24は、第1の実施形態に係る弾性波デバイス100において、誘電体膜104の交差領域にのみパッシベーション膜108を被覆した弾性波デバイス110、120および130の断面図である。
図24の(a)に示す弾性波デバイス110は、パッシベーション膜108の厚さが、誘電体膜104の交差領域における膜厚とエッジ領域における膜厚の差より小さい。
図24の(b)に示す弾性波デバイス120は、パッシベーション膜108の厚さが、誘電体膜104の交差領域における膜厚とエッジ領域における膜厚の差に等しい。
図24の(c)に示す弾性波デバイス130は、パッシベーション膜108の厚さが、誘電体膜104の交差領域における膜厚とエッジ領域における膜厚の差より大きい。
【0064】
また、上述の各実施形態において、交差領域および他の領域にパッシベーション膜を設け、交差領域における膜厚を、他の領域における膜厚よりも厚くしてもよい。
図25の(a)および(b)は、第1の実施形態に係る弾性波デバイス100において、パッシベーション膜108が誘電体膜104の全体を被覆し、交差領域における膜厚を、他の領域における膜厚より大きくした弾性波デバイス140、150の断面図である。弾性波デバイス140においては、パッシベーション膜108の表面が平坦であり、弾性波デバイス150においては、パッシベーション膜108の表面の交差領域を被覆する部分が突出している。
【0065】
これらの弾性波デバイス110−150のように、交差領域のみに、または、交差領域を含む領域に交差領域がより厚くなるよう、誘電体膜104より音速の速いパッシベーション膜108を被覆することにより、交差領域と他の領域との間の音速の差を大きくすることができ、交差領域への基本横モード波の閉じ込め効果を高めることができる。また、誘電体膜104の厚さや電極指112の厚さのばらつきが存在する場合であっても、パッシベーション膜108を適切な厚さで被覆することにより、簡易に音速の微調整を行い所定の周波数特性を得ることができる。本変形例は、弾性波デバイス100以外にも、他の実施形態に係る弾性波デバイスに適用可能である。
【0066】
また、
図25の(c)は、第1の実施形態に係る弾性波デバイス100において、誘電体膜104を一様な厚さとし、パッシベーション膜108が誘電体膜104の全体を被覆し、交差領域における膜厚を、他の領域における膜厚より大きくした弾性波デバイス160の断面図である。パッシベーション膜108の膜厚の差によって、交差領域の音速をより速くし、交差領域とエッジ領域との間の音速の差を十分大きくすることができれば、このように誘電体膜104の膜厚を一様なものとしてもよい。
【0067】
また、上述の各変形例においてパッシベーション膜108は、交差領域の端部において、膜厚が連続的に変化するテーパー形状としてもよい。これにより、不要なスプリアス波の発生を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、情報通信機器等に用いられる弾性表面波デバイスにおいて有用である。
【符号の説明】
【0069】
100、110、120、130、140、150、160、300、400、600、700、800、900、1000、1100、1150 弾性波デバイス
101、901 圧電基板
102、902 IDT電極
103、903 反射器
104、104a、104b、404、405、704、705、1154、1204 誘電体膜
108、408、708 パッシベーション膜
111、911 バスバー
112、912 電極指
113、913 ダミー電極指
1004 被膜
1201 テーパー部