【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリウレタン樹脂組成物のイソシアネート成分として、イソシアヌレート基と、アロファネート基を特定のモル比で含有するポリイソシアネート成分を用い、これをポリオール成分と併用することで、相溶性に優れたポリウレタン樹脂組成物を得ることができ、上記目的を達成し得る電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物が得られることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、下記の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物、封止材及び樹脂封止された電気部品を提供するものである。
1.(1)脂肪族ジイソシアネート、及び脂環式ジイソシアネートから選択される少なくとも1種
と、炭素数6〜9の飽和炭化水素基からなるモノアルコールとから得られ、イソシアヌレート基とアロファネート基とを含むポリイソシアネート成分を含有するA剤と、
(2)ポリオール成分を含有するB剤と
を含む電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物であって、
該ポリイソシアネート成分のイソシアヌレート基(a)とアロファネート基(b)のモル比(a)/(b)が、85/15〜15/85であることを特徴とする電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物。
2.前記ポリイソシアネート成分のイソシアヌレート基(a)とアロファネート基(b)のモル比(a)/(b)が、75/25〜25/75である上記項1に記載の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物。
3.前記ポリオール成分は、下記一般式(1):
【0016】
【化1】
【0017】
(式中、R
7は、水酸基を有していてもよい炭素数3〜20の直鎖状又は分枝鎖状の2価の不飽和脂肪族炭化水素基であり、mは、1〜20の整数を表す。)で表されるポリオール、及びひまし油系ポリオールを含む上記項1又は2に記載の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物。
4.前記ポリオール成分は、ポリブタジエンポリオール、及びひまし油系ポリオールを含む上記項1〜3のいずれか一項に記載の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物。
5.上記項1〜4のいずれか一項に記載の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物からなる封止材。
6.上記項5に記載の封止材を用いて樹脂封止された電気部品。
【0018】
本発明の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物は、(1)脂肪族ジイソシアネート、及び脂環式ジイソシアネートから選択される少なくとも1種から得られ、イソシアヌレート基とアロファネート基とを含むポリイソシアネート成分を含有するA剤と、(2)ポリオール成分を含有するB剤とを含む電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物であって、該ポリイソシアネート成分のイソシアヌレート基(a)とアロファネート基(b)のモル比(a)/(b)が、85/15〜15/85であることを特徴とする。
【0019】
上記特徴を有する本発明の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート成分がイソシアヌレート基とアロファネート基とを特定のモル比で含有するので、ポリイソシアネート成分の極性が高いことに起因する、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の相溶性の低下を抑制することができる。このようなポリウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分の相溶性に優れるため、樹脂硬化成型物のベタツキの発生を抑制することができ、耐熱性、耐湿性、及び絶縁性に優れた電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【0020】
このような本発明の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物は、各種電気部品の封止に用いる封止材として適している。
以下、本発明の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物の各成分について具体的に説明する。
【0021】
本発明の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物は、(1)脂肪族ジイソシアネート、及び脂環式ジイソシアネートから選択される少なくとも1種から得られ、イソシアヌレート基とアロファネート基とを含むポリイソシアネート成分を含有するA剤と、(2)ポリオール成分を含有するB剤とを含む2液型のポリウレタン樹脂組成物であって、使用時にA剤とB剤とを混合して用いられる。
【0022】
A剤
本発明の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物は、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環式ジイソシアネートから選択される少なくとも1種から得られ、イソシアヌレート基とアロファネート基とを含むポリイソシアネート成分を含有するA剤を含む。
【0023】
本明細書において、上記ポリイソシアネート成分は、下記式(2)
【0024】
【化2】
【0025】
で表されるイソシアヌレート基と、下記式(3)
【0026】
【化3】
【0027】
で表されるアロファネート基とを含む。
【0028】
上記イソシアヌレート基、及びアロファネート基は、上記ポリイソシアネート成分一分子中に、両方存在していてもよい。また、ポリイソシアネート成分が全体としてこれらの基を両方含んでいれば、上記ポリイソシアネート成分一分子中に、いずれかひとつが存在していてもよい。また、これらの基が、ポリイソシアネート成分一分子中に複数存在していてもよい。
【0029】
上記ポリイソシアネート成分の、イソシアヌレート基(a)とアロファネート基(b)のモル比(a)/(b)は、85/15〜15/85である。上記モル比(a)/(b)は、耐熱性、耐湿性、相溶性に優れる点で、75/25〜25/75であることが好ましく、70/30〜30/70であることがより好ましい。
【0030】
上記ポリイソシアネート成分の原料として、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環式ジイソシアネートから選択される少なくとも1種のジイソシアネート化合物を用いる。
【0031】
上記脂肪族ジイソシアネートとは分子中にイソシアネート基を除くと、鎖状脂肪族炭化水素を有し、芳香族炭化水素を有しない化合物である。一方、上記脂環式ジイソシアネートとは、分子中に芳香族性を有しない環状脂肪族炭化水素を有する化合物である。脂肪族ジイソシアネートを用いると得られるポリイソシアネート成分が低粘度となるのでより好ましい。上記脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。上記脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。この中でもHDI、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートは、工業的に入手し易いため好ましい。中でもHDIは耐候性と塗膜の柔軟性が非常に優れており最も好ましい。
【0032】
イソシアヌレート基とアロファネート基とを含むポリイソシアネートを製造する方法としては、上記脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートから選択される少なくとも1種のジイソシアネート化合物より、イソシアヌレート基とアロファネート基とを特定のモル比で含有するポリイソシアネート化合物を複数種製造して混合する方法、該ジイソシアネート化合物から、イソシアヌレート基とアロファネート基とを有するポリイソシアネートを一括で製造する方法が挙げられる。
【0033】
上記ポリイソシアネート成分の原料として、更にモノアルコールを用いることができ、また、ジオール若しくはトリオール等の多価アルコールを用いることができるが、モノアルコールを用いることが好ましい。中でも、炭素数が1〜20のモノアルコールを用いることがより好ましい。モノアルコールの炭素数の下限は、好ましくは2、より好ましくは3、更に好ましくは4、特に好ましくは6である。上限は、好ましくは16、より好ましくは12、更に好ましくは9である。モノアルコールは1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いても良い。また、上記モノアルコールは、分子内にエーテル基や、エステル基、カルボニル基を含んでも良いが、好ましいのは飽和炭化水素基だけからなるモノアルコールである。更に、分岐を有しているモノアルコールがより好ましい。このようなモノアルコールとして例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール等が挙げられる。この中でイソブタノール、n−ブタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、1−へプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、1,3,5−トリメチルシクロヘキサノールはポリオール成分との相溶性が優れているため、より好ましい。
【0034】
上記ポリイソシアネート成分を製造する方法としては、以下の3つの方法が挙げられる。
【0035】
(I)モノアルコールとジイソシアネートを、ウレタン化反応し、その後、あるいは同時にアロファネート化反応及びイソシアヌレート化反応を行い、ポリイソシアネート成分を得る方法。
【0036】
(II)モノアルコールとジイソシアネートを、ウレタン化反応し、その後、あるいは同時にアロファネート化反応を行い、得られたアロファネート基を有するポリイソシアネートと、ジイソシアネートをイソシアヌレート化反応して得たイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートを混合して、ポリイソシアネート成分を得る方法。
【0037】
(III)モノアルコールとジイソシアネートを、ウレタン化反応し、その後、あるいは同時にアロファネート化反応を行い、得られたアロファネート基を含有するポリイソシアネートと、モノアルコールとジイソシアネートを、ウレタン化反応し、その後あるいは同時にアロファネート化及びイソシアヌレート化反応を行い、得られたアロファネート基及びイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートを混合してポリイソシアネート成分を得る方法。
【0038】
(I)の方法は、一つのプロセスで製造できるため、生産効率が良いという特徴がある。(II)、(III)の方法は、イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートあるいはイソシアヌレート構造とアロファネート構造を有するポリイソシアネートと、アロファネート基を有するポリイソシアネートを任意の比率で混合することが可能であるので、得られるポリイソシアネート成分の物性の調整が容易であるという特徴がある。
【0039】
(I)〜(III)の製造方法のうち、電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物が耐熱性や耐湿性に優れる点で、(I)及び(III)の製造方法が好ましく、さらに、生産効率に優れる点で、(I)の製造方法がより好ましい。
【0040】
上記製造方法は、イソシアヌレート基とアロファネート基のモル比が85/15〜15/85の範囲になるように製造すれば、いずれの方法を用いても良い。
【0041】
ウレタン化反応の反応温度は、好ましくは20〜200℃、より好ましくは40〜150℃、更に好ましくは60〜120℃である。反応時間は、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは15分〜15時間、更に好ましくは20分〜10時間である。20℃以上で反応が速く、200℃以下でウレトジオン化などの副反応が抑制され、また着色も抑制される。時間は、10分以上であれば反応を完結させることが可能となり、24時間以下であれば生産効率に問題が無く、また副反応も抑制される。ウレタン化反応は、無触媒で、またはスズ系、アミン系などの触媒の存在下で行う事ができる。
【0042】
アロファネート化反応は、好ましくは20〜200℃の温度で行われる。より好ましくは、40〜180℃であり、更に好ましくは60〜160℃である。特に好ましくは90〜150℃であり、最も好ましいのは110〜150℃である。20℃以上で、アロファネート化触媒の量が少なくなると共に、反応の終結までに必要な時間が短い。200℃以下で、ウレトジオン化などの副反応が抑制され、また、反応生成物の着色が抑えられる。
【0043】
アロファネート化反応の反応時間は、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは15分〜12時間、更に好ましくは20分〜8時間、特に好ましくは20分〜6時間が良い。反応時間が10分以上であれば反応の制御が可能となり、24時間以内であれば生産効率が十分である。なお、反応温度が130℃を超える場合には、副反応としてウレトジオンが生成する場合があるため、反応時間は好ましくは8時間以内、より好ましくは6時間以内、更に好ましくは4時間以内が良い。
【0044】
イソシアヌレート化反応、あるいはアロファネート化及びイソシアヌレート化反応は、好ましくは20〜180℃の温度で行われる。より好ましくは、30〜160℃であり、更に好ましくは40〜140℃である。特に好ましくは60〜130℃であり、最も好ましいのは80〜110℃である。20℃以上で、触媒の量が少なくなると共に、ナイロン化反応等の副反応が起こりにくくなる。また180℃以下で、ウレトジオン化などの副反応が抑制され、また、反応生成物の着色が抑えられる。
【0045】
イソシアヌレート化反応、あるいはアロファネート化及びイソシアヌレート化反応の反応時間は、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは15分〜12時間、更に好ましくは20分〜8時間、特に好ましくは20分〜6時間が良い。反応時間が10分以上であれば反応の制御が可能となり、24時間以内であれば生産効率が十分である。
【0046】
(I)の方法を採用する場合、アロファネート化反応およびイソシアヌレート化反応は触媒を用いた方が好ましく、特に生成するポリイソシアネートのイソシアヌレート基/アロファネート基のモル比が85/15〜15/85となる触媒を選択する方が好ましい。このような触媒として、例えばテトラアルキルアンモニウム、ヒドロキシアルキルアンモニウムのカルボン酸塩、ハイドロオキサイドや、アミノシリル基含有化合物等、あるいはこれらの混合物などが挙げられるが挙げられる。
【0047】
(II)、あるいは(III)の方法を採用し、アロファネート基を有するポリイソシアネートを製造する場合、アロファネート化反応は触媒を用いた方が好ましく、特にアロファネート基の選択率が高い触媒、すなわち生成するポリイソシアネートのイソシアヌレート基/アロファネート基の比が好ましくは0/100〜30/70、より好ましくは0/100〜20/80、更に好ましくは0/100〜10/90となる触媒を選択する方が好ましい。このような触媒として、例えば鉛、亜鉛、ビスマス、錫、ジルコニル、ジルコニウムのカルボン酸塩等、あるいは亜鉛、ジルコニウム、スズのアルコキサイド、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
(II)の方法を採用し、イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを製造する場合、イソシアヌレート化反応は触媒を用いた方が好ましい。イソシアヌレート化触媒としては、例えばテトラアルキルアンモニウム、ヒドロキシアルキルアンモニウム、アルカリ金属塩のカルボン酸塩、ハイドロオキサイドや、アミノシリル基含有化合物等、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0049】
(III)の方法を採用し、アロファネート基及びイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを製造する場合、アロファネート化反応及びイソシアヌレート化反応は触媒を用いた方が好ましい。アロファネート化及びイソシアヌレート化触媒として、例えばテトラアルキルアンモニウム、ヒドロキシアルキルアンモニウム、アルカリ金属塩のカルボン酸塩、ハイドロオキサイドや、アミノシリル基含有化合物等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
アロファネート化触媒、イソシアヌレート化触媒、アロファネート化及びイソシアヌレート化触媒の使用量は、反応液総重量を基準にして、好ましくは0.001〜2.0重量%、より好ましくは、0.01〜0.5重量%の量にて用いられる。0.001重量%以上で触媒の効果が十分に発揮できる。2重量%以下で、反応の制御が容易である。
【0051】
上記ポリイソシアネート成分の製造において、アロファネート化触媒、イソシアヌレート化触媒、アロファネート化及びイソシアヌレート化触媒の添加方法は限定されない。例えば、ウレタン基を含有する化合物の製造の前、即ちジイソシアネートと水酸基を有する有機化合物のウレタン化反応に先だって添加しても良いし、ジイソシアネートと水酸基を有する有機化合物のウレタン化反応中に添加しても良く、ウレタン基含有化合物製造の後に添加しても良い。また、添加の方法として、所要量のアロファネート化触媒、イソシアヌレート化触媒、アロファネート化及びイソシアヌレート化触媒を一括して添加しても良いし、何回かに分割して添加しても良い。または、一定の添加速度で連続的に添加する方法も採用できる。
【0052】
ウレタン化反応やアロファネート化反応、イソシアヌレート化触媒、アロファネート化及びイソシアヌレート化触媒は、無溶媒中で進行するが、必要に応じて、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン等の芳香族系溶剤、ジアルキルポリアルキレングリコールエーテル等のイソシアネート基との反応性を有していない有機溶剤、およびそれらの混合物を溶媒として使用する事ができる。
【0053】
上記ポリイソシアネート成分の製造におけるウレタン化反応、アロファネート化反応、イソシアヌレート化反応、アロファネート化反応及びイソシアヌレート化反応の過程は、反応液のNCO基含有率を測定するか、屈折率を測定する事により追跡できる。
【0054】
アロファネート化反応、イソシアヌレート化反応、アロファネート化反応及びイソシアヌレート化反応は、室温に冷却するか、反応停止剤を添加することにより停止できるが、触媒を用いる場合、反応停止剤を添加するほうが、副反応を抑制することができるために、好ましい。反応停止剤を添加する量は、触媒に対して、好ましくは0.25〜20倍のモル量、より好ましくは0.5〜16倍のモル量、更に好ましくは1.0〜12倍のモル量である。0.25倍以上で、完全に失活させることが可能となる。20倍以下で保存安定性が良好となる。反応停止剤としては、触媒を失活させるものであれば何を使っても良い。反応停止剤の例としては、リン酸、ピロリン酸等のリン酸酸性を示す化合物、リン酸、ピロリン酸等のモノアルキルあるいはジアルキルエステル、モノクロロ酢酸などのハロゲン化酢酸、塩化ベンゾイル、スルホン酸エステル、硫酸、硫酸エステル、イオン交換樹脂、キレート剤等が挙げられる。工業的にみた場合、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸、およびリン酸モノアルキルエステルや、リン酸ジアルキルエステルは、ステンレスを腐食し難いので、好ましい。リン酸モノエステルや、リン酸ジエステルとして、たとえば、リン酸モノエチルエステルや、リン酸ジエチルエステル、リン酸モノブチルエステルやリン酸ジブチルエステル、リン酸モノ(2−エチルヘキシル)エステルや、リン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、リン酸モノデシルエステル、リン酸ジデシルエステル、リン酸モノラウリルエステル、リン酸ジラウリルエステル、リン酸モノトリデシルエステル、リン酸ジトリデシルエステル、リン酸モノオレイルエステル、リン酸ジオレイルエステル、リン酸モノテトラデシルエステル、リン酸ジテトラデシルエステル、リン酸モノヘキサデシルエステル、リン酸ジヘキサデシルエステル、リン酸モノオクタデシルエステル、リン酸ジオクタデシルエステルなど、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0055】
また、シリカゲルや活性炭等の吸着剤を停止剤として用いることも可能である。この場合、反応で使用するジイソシアネートに対して、0.05〜10重量%の添加量が好ましい。
【0056】
反応終了後、ポリイソシアネート成分からは、未反応のジイソシアネートや溶媒を分離しても良い。安全性を考えると、未反応のジイソシアネートは分離した方が好ましい。未反応のジイソシアネートや溶媒を分離する方法として、例えば、薄膜蒸留法や溶剤抽出法が挙げられる。
【0057】
上記ポリイソシアネート成分におけるイソシアヌレート基(a)とアロファネート基(b)のモル比(a)/(b)は、1H−NMRにより求めることができる。HDIを原料として用いたポリイソシアネート組成物を1H−NMRで測定する方法の一例を以下に示す。
【0058】
1H−NMRの測定方法例:ポリイソシアネート成分を重水素クロロホルムに10重量%の濃度で溶解する(ポリイソシアネート成分に対して0.03重量%テトラメチルシランを添加)。化学シフト基準は、テトラメチルシランの水素のシグナルを0ppmとした。1H−NMRにて測定し、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素に結合した水素原子(アロファネート基1molに対して、1molの水素原子)のシグナルと、3.8ppm付近のイソシアヌレート基に隣接したメチレン基の水素原子(イソシアヌレート基1モルに対して、6molの水素原子)のシグナルの面積比を測定する。イソシアヌレート基/アロファネート基=(3.8ppm付近のシグナル面積/6)/(8.5ppm付近のシグナル面積)
上記ポリイソシアネート成分のイソシアネート基含有率(以下、NCO基含有率)は、実質的に溶剤やジイソシアネートを含んでいない状態で、好ましくは13〜22重量%である。また、粘度は、実質的に溶剤やジイソシアネートを含んでいない状態で好ましくは150〜800mPa.sである。
【0059】
B剤
本発明の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物は、ポリオール成分を含むB剤を含有する。
ポリオール成分
上記ポリオール成分としては、特に限定的ではなく、従来ポリオール成分として用いられているものを各種使用することが可能である。上記ポリオール成分としては、例えば、下記一般式(1)で表される、末端に水酸基を有するポリオールを用いることができる。
【0060】
【化4】
【0061】
(式中、R
7は、炭素数3〜20の、直鎖状又は分枝鎖状の、飽和又は不飽和の、水酸基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、mは、1〜20の整数を表す。)
上記一般式(1)で表される、末端に水酸基を有するポリオールとしては、ポリブタジエンポリオールを用いることがより好ましい。上記ポリブタジエンポリオールとしては、例えば、1,4結合を60〜90モル%、及び1,2結合を10〜40モル%有するポリブタジエンからなる繰り返し単位を有し、繰り返し数は10〜14であり、両末端に水酸基を有するポリオールが挙げられる。
【0062】
上記ポリブタジエンポリオールの分子量は、800〜4800であることが好ましく、1200〜3000であることがより好ましい。
【0063】
上記ポリオール成分としては、具体的には、ポリブタジエンポリオール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、2−メチルプロパン−1、2,3−トリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリット、ポリラクトンジオール、ポリラクトントリオール、エステルグリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、水酸基含有液状ポリイソプレンの水素化物、水酸基含有液状ポリブタジエンの水素化物等が挙げられる。
【0064】
上記ポリオール成分としては、また、ひまし油系ポリオールを用いることができる。上記ひまし油系ポリオールとしては、ひまし油、又はひまし油誘導体等が挙げられる。
【0065】
上記ひまし油誘導体としては、ひまし油脂肪酸;ひまし油又はひまし油脂肪酸に水素付加した水素化ひまし油;ひまし油とその他の油脂のエステル交換物;ひまし油と多価アルコールの反応物;ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物;これらにアルキレンオキサイドを付加重合したもの等が挙げられる。
【0066】
上記ひまし油系ポリオールとしては、水素化ひまし油を用いることが好ましい。
【0067】
上記ポリオール成分は、ポリブタジエンポリオール、及びひまし油系ポリオールを含むことが更に好ましい。この場合、ポリブタジエンポリオールと、ひまし油系ポリオールとの配合比は、ポリブタジエンポリオールと、ひまし油系ポリオールの総量を100重量%として、(ポリブタジエンポリオール):(ひまし油系ポリオール)=90:10重量%〜50:50重量%であることが好ましく、90:10重量%〜70:30重量%であることがより好ましい。上記配合比のポリオール成分を用いると、ポリイソシアネート成分との相溶性に優れ、また、電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物の粘度が低くなり、作業性に優れた特性を示すことができる。
【0068】
上記ポリオール成分は、ポリブタジエンポリオール、及び水素化ひまし油を含むことが更に好ましい。
【0069】
上記好適に用いられるポリオール成分を更に具体的に挙げると、末端に水酸基を有するポリオールとして、出光興産化学株式会社製水酸基含有液状ポリブタジエン(水酸基含有量=0.83mol/kg、粘度=7000mPa・s(25℃)、商品名:Poly bd(登録商標)R−45HT)を用い、水素化ひまし油として、伊藤製油株式会社製水素化ひまし油、水酸基含有量=1.67mol/kg、粘度=2200mPa・s(25℃)商品名:SR−309を用い、これらを混合したポリオール成分が挙げられる。
【0070】
上記ポリオール成分の水酸基(OH)と、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基(NCO)との当量比NCO/OHは、0.70〜1.40であることが好ましい。当量比NCO/OHを、上記範囲とすることで、防湿絶縁剤としての機能を発揮することができる。上記当量比NCO/OHは、0.80〜1.20であることがより好ましく、0.85〜1.05であることが更に好ましい。
【0071】
(他の成分)
本発明の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物は、上述したポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との他に、可塑剤を含有していてもよい。
【0072】
上記可塑剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。上記可塑剤としては、硬化物に弾性を付与するとともに、組成物調製時に低粘度化を図るという観点から、水酸基を持たない可塑剤を用いることが好ましい。このような可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレートなどのフタル酸エステル、トリエチルヘキシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどのトリメリテート系可塑剤、トリクレジルフォスフェート、トリスキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルホスフェート、トリフェニルフォスフェートなどリン酸エステルが挙げられる。
【0073】
上記可塑剤を更に具体的に挙げると、ジェイプラス株式会社製フタル酸ジイソノニル DINP(商品名)、分子量419が挙げられる。
【0074】
上記可塑剤は、A剤又はB剤のどちらに含まれていてもよいが、B剤に含まれていることが好ましい。
【0075】
上記可塑剤の含有量は、本発明の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性、耐湿性、及び絶縁性を阻害しないためには、ポリイソシアネート成分、及びポリオール成分の合計を100重量部として、1〜50重量部であることが好ましい。可塑剤の含有量を、上記範囲とすることにより、電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物の相溶性が優れ、樹脂硬化物のベタツキを抑制することができる。また、可塑剤の含有量が多すぎると、樹脂硬化物の絶縁性、耐湿性が低下するおそれがある。
【0076】
上記ポリオール成分は、更に、充填剤を添加することができる。充填剤を含有することで、電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物に難燃性、及び熱伝導性を付与することができる。
【0077】
上記充填剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0078】
上記充填剤の含有量は、本発明の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性、耐湿性、及び絶縁性を阻害しないためには、ポリイソシアネート成分、及びポリオール成分の合計を100重量部として、5〜80重量部であることが好ましい。耐熱性、耐湿性、及び絶縁性をより発揮させることができる点で、40〜60重量部であることがより好ましい。
【0079】
上記充填剤は、A剤又はB剤のどちらに含まれていてもよいが、B剤に含まれていることが好ましい。
【0080】
本発明の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物は、更に、その他の添加剤を含んでいてもよい。 その他の添加剤としては、物性向上用低分子量ポリオール(ビスフェノール型ポリオール、アニリン系ポリオール、オクタンジオール等の炭化水素系低分子量ポリオール等)、粘度調整剤(フタル酸・脂肪酸系可塑剤、プロセスオイル、シリコーンオイル、パラフィン系オリゴマー、オレフィン系オリゴマー等)、無機・有機充填剤(炭酸カルシウム、カーボンブラック、クレー、中空フィラー、ゴム粉末、樹脂粉末、タルク、マイカ、カオリン、ベントナイト、シリカ、アルミナ、チタニア、水酸化アルミニウム、グラファイト、ガラス繊維及び炭素繊維等の無機フィラー又は顔料等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、難燃剤(りん系、ハロゲン系、酸化アンチモン)発泡抑制剤・表面処理材、硬化触媒(錫系、イミダゾール系、アミン系等)等を挙げることができる。
【0081】
上記その他の添加剤の総量は、本発明の電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性、耐湿性、及び絶縁性を阻害しないためには、ポリイソシアネート成分及びポリオール成分の合計を100重量部として、0.1〜10.0重量部であることが好ましい。耐熱性、耐湿性、及び絶縁性をより発揮させることができる点で、0.1〜5.0重量部であることがより好ましい。
【0082】
上記その他の添加剤は、A剤又はB剤のどちらに含まれていてもよいが、B剤に含まれていることが好ましい。
【0083】
上記説明した電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物は、耐熱性、耐湿性、及び絶縁性に優れるので、電気部品の封止材として有用である。
【0084】
また、上記封止材を用いて、樹脂封止された電気部品を製造することができる。上記封止材を用いて樹脂封止された電気部品は、耐熱性、耐湿性、及び絶縁性に優れる。
【0085】
上記電気部品を製造する方法としては、電気基板等所望の場所に、上記電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物を注入、塗布し、例えば、60〜80℃の温度で、30〜90分間加熱する方法が挙げられる。