特許第5697772号(P5697772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5697772
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】算出装置、算出方法及び算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20150319BHJP
   G06Q 30/04 20120101ALI20150319BHJP
【FI】
   G06Q30/02 150
   G06Q30/04
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-24926(P2014-24926)
(22)【出願日】2014年2月12日
【審査請求日】2014年7月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500257300
【氏名又は名称】ヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100125612
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】瀬賀 信一郎
【審査官】 阿部 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−142826(JP,A)
【文献】 特開2011−065201(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/084610(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 50/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広告コンテンツがクリックされた回数に応じて課金される課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された課金許容額の時間変動に基づいて、前記広告コンテンツを配信する配信確率を算出する算出手段と
を備えることを特徴とする算出装置であって、
前記算出手段は、
前記取得手段によって取得された課金許容額のうち現在日時に対応する課金許容額と、
前記課金額の累計値との間の差額と連動する配信確率を算出する上で、
入稿された広告コンテンツの前記差額の総和を最小に補正する補正係数を算出し、算出された補正係数を用いて前記配信確率を算出する
ことを特徴とする算出装置。
【請求項2】
前記算出手段は、
前記現在日時に対応する課金許容額に対する前記差額の割合と連動する前記配信確率を算出する
ことを特徴とする請求項に記載の算出装置。
【請求項3】
前記算出手段は、
ターゲティング条件が同じ分類に属する広告コンテンツのグループごとに前記補正係数を算出し、算出された補正係数を用いて前記配信確率を算出する
ことを特徴とする請求項に記載の算出装置。
【請求項4】
前記算出手段は、
広告コンテンツの種別が同じ分類に属する広告コンテンツのグループごとに前記補正係数を算出し、算出された補正係数を用いて前記広告コンテンツの配信確率を算出する
ことを特徴とする請求項に記載の算出装置。
【請求項5】
前記算出手段は、
前記広告コンテンツの入札価格が高いほど前記配信確率を低く算出する
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の算出装置。
【請求項6】
前記算出手段は、
所定の期間経過後に、前記課金額の累計値が前記課金許容額を超えていない場合には、前記配信確率を100%として算出する
ことを特徴とする請求項のいずれか一つに記載の算出装置。
【請求項7】
広告コンテンツがクリックされた回数に応じて課金される課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された課金許容額の時間変動に基づいて、前記広告コンテンツを配信する配信確率を算出する算出手段と
を備えることを特徴とする算出装置であって、
前記広告コンテンツがクリックされる広告クリック傾向と連動し、前記課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する算定手段と、
をさらに備え、
前記算出手段は、
前記算定手段によって算定された課金許容額のうち現在日時に対応する課金許容額と、前記課金額の累計値との間の差額と連動する前記配信確率を算出し、
前記算定手段は、
前記広告コンテンツがクリックされる広告クリック数または前記広告コンテンツの配信によって得られる収益を最大化することで算出される広告クリック傾向と連動し、前記課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する
ことを特徴とする算出装置。
【請求項8】
前記算定手段は、
所定の時間帯ごとに、前記広告コンテンツのクリック数またはクリック率に比例する表示回数を算出し、算出された表示回数にクリック率を乗算することで算出される広告クリック傾向と連動し、前記課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する
ことを特徴とする請求項に記載の算出装置。
【請求項9】
算出装置が実行する算出方法であって、
広告コンテンツがクリックされた回数に応じて課金される課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得された課金許容額の時間変動に基づいて、前記広告コンテンツを配信する配信確率を算出する算出工程と
を含んだことを特徴とする算出方法であって、
前記算出工程は、
前記取得工程によって取得された課金許容額のうち現在日時に対応する課金許容額と、
前記課金額の累計値との間の差額と連動する配信確率を算出する上で、
入稿された広告コンテンツの前記差額の総和を最小に補正する補正係数を算出し、算出された補正係数を用いて前記配信確率を算出する
ことを特徴とする算出方法。
【請求項10】
広告コンテンツがクリックされた回数に応じて課金される課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を取得する取得手順と、
前記取得手順によって取得された課金許容額の時間変動に基づいて、前記広告コンテンツを配信する配信確率を算出する算出手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする算出プログラムであって、
前記算出手順は、
前記取得工程によって取得された課金許容額のうち現在日時に対応する課金許容額と、
前記課金額の累計値との間の差額と連動する配信確率を算出する上で、
入稿された広告コンテンツの前記差額の総和を最小に補正する補正係数を算出し、算出された補正係数を用いて前記配信確率を算出する
ことを特徴とする算出プログラム。
【請求項11】
算出装置が実行する算出方法であって、
広告コンテンツがクリックされた回数に応じて課金される課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得された課金許容額の時間変動に基づいて、前記広告コンテンツを配信する配信確率を算出する算出工程と
を備えることを特徴とする算出方法であって、
前記広告コンテンツがクリックされる広告クリック傾向と連動し、前記課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する算定工程と、
をさらに備え、
前記算出工程は、
前記算定工程によって算定された課金許容額のうち現在日時に対応する課金許容額と、前記課金額の累計値との間の差額と連動する前記配信確率を算出し、
前記算定工程は、
前記広告コンテンツがクリックされる広告クリック数または前記広告コンテンツの配信によって得られる収益を最大化することで算出される広告クリック傾向と連動し、前記課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する
ことを特徴とする算出方法。
【請求項12】
広告コンテンツがクリックされた回数に応じて課金される課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を取得する取得手順と、
前記取得手順によって取得された課金許容額の時間変動に基づいて、前記広告コンテンツを配信する配信確率を算出する算出手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする算出プログラムであって、
前記広告コンテンツがクリックされる広告クリック傾向と連動し、前記課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する算定手順と、
をさらに備え、
前記算出手順は、
前記算定手順によって算定された課金許容額のうち現在日時に対応する課金許容額と、前記課金額の累計値との間の差額と連動する前記配信確率を算出し、
前記算定手順は、
前記広告コンテンツがクリックされる広告クリック数または前記広告コンテンツの配信によって得られる収益を最大化することで算出される広告クリック傾向と連動し、前記課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する
ことを特徴とする算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、算出装置、算出方法及び算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの飛躍的な普及に伴い、インターネットを介した広告配信が盛んに行われている。例えば、ウェブページの所定の位置に企業や商品等の広告コンテンツ(例えば、画像などのアイコン)を表示し、かかる広告コンテンツがクリックされた場合に広告主のウェブページへ遷移するものがある。
【0003】
このような広告コンテンツは、各広告主から入稿された広告コンテンツを保持する広告配信装置によって配信されることが多い。例えば、広告配信装置による広告配信としては、広告予算を広告掲載期間に均等配分した予算割当額を超えないように広告配信を制御する技術が知られている。この技術によれば、時間経過に応じて広告予算が均等に消化されるので、広告掲載期間の満了日よりも想定以上に早く広告コンテンツが配信されなくなる事態を防止できるとも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−65201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させることができるとは限らない。具体的には、上記の従来技術では、広告配信装置は、入札価格が高い広告コンテンツを優先して配信する。また、広告配信装置は、広告コンテンツの課金額の累計値が予算割当額を超えた場合に、広告コンテンツの配信を停止する。このため、広告配信装置は、例えば、入札価格が高い広告コンテンツを優先して配信することで入札価格が高く設定されている広告コンテンツの配信を停止している時間帯には、入札価格が低く設定されている広告コンテンツを配信する。このようなことから、上記の従来技術では、入札価格が低い広告コンテンツでも配信される可能性があるので、広告主は、広告コンテンツを配信するための競争をせずに、入札価格を低く設定する場合がある。このため、上記の従来技術では、広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させることができるとは限らない。
【0006】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させることができる算出装置、算出方法及び算出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係る配信装置は、広告コンテンツがクリックされた回数に応じて課金される課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された課金許容額の時間変動に基づいて、前記広告コンテンツを配信する配信確率を算出する算出手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る算出処理の一例を示す図である。
図2図2は、eCPMの質の時間遷移を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る広告配信システムの構成例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る配信装置の構成例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る広告コンテンツ記憶部の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る許容情報記憶部の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る配信装置による受付処理手順を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係る配信装置による配信処理手順を示すフローチャートである。
図9図9は、配信確率算出処理を説明するための説明図である。
図10図10は、クリック傾向の時間遷移を説明するための説明図である。
図11図11は、クリック傾向と連動する課金許容額を説明するための説明図である。
図12図12は、クリック傾向の時間遷移を説明するための説明図である。
図13図13は、配信装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願に係る算出装置、算出方法及び算出プログラムを実施するための形態(以下、「実施形態」と呼ぶ)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る算出装置、算出方法及び算出プログラムが限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0011】
〔1.算出処理〕
まず、図1を用いて、実施形態に係る算出処理の一例について説明する。図1は、実施形態に係る算出処理の一例を示す説明図である。図1の例では、後述の図3に図示する配信装置100によって算出処理が行われる。配信装置100は、広告主から、広告コンテンツとともに、広告コンテンツの配信期間(すなわち、広告コンテンツの掲載期間)や、広告コンテンツが1回クリックされた際に広告主が広告配信者(例えば、配信装置100の管理者)に支払う広告料金や、広告料金の上限値である広告予算などの指定を受け付ける。
【0012】
ここでは、所定の広告コンテンツAD11に着目した例について説明する。図1に示したグラフの縦軸は、広告コンテンツAD11がクリックされた回数に応じて広告配信者が広告主に課金する課金額を示す。図1に示したグラフの横軸は、時間変動を示す。図1の例では、広告コンテンツAD11の広告予算を配信期間に均等配分した場合に、1日当たりの広告予算が「M10」になるものとする。例えば、配信期間が「31日」であり、広告予算が「31万円」である場合、図1に示すように、1日当たりの広告予算「M10」は、「1万円」となる。
【0013】
このような前提の下、配信装置100と比較される比較例の配信装置は、例えば、1日当たりの広告予算M10が所定の時間(例えば、1秒や1分や10分)毎に均等に消化されるように、時間変動とともに変動する累積課金額の許容値として、図1に示した課金許容額BLを算出する。この課金許容額BLは、経過時間を「x」とした場合に、「課金許容額BL = A・x」の式で表される。この式のうち「A」は、広告予算の消化ペースを示す。例えば、経過時間「x」の単位が分であり、1日当たりの広告予算が「1万円」である場合には、「1万円」を「1440分」により除算した「6.944円/分」が「A」となる。なお、ここでは、除算結果の少数第4位を四捨五入するものとする。
【0014】
そして、比較例の配信装置は、広告コンテンツAD11を配信し、配信した広告コンテンツAD11がクリックされた場合に、広告コンテンツAD11の累積課金額を計数する。このとき、比較例の配信装置は、累積課金額が現在日時に対応する課金許容額BLを超える場合には、所定時間が経過するまでは広告コンテンツAD11を配信しないように制限する。その後、比較例の配信装置は、時間経過に応じて累積課金額が課金許容額BLを超えなくなった場合に、広告コンテンツAD11の配信を再開する。このようにして、比較例の配信装置は、広告予算が一定のペースで消化されるように、上述した課金許容額BLに基づく配信制御を毎日行うことで、広告コンテンツAD11の配信期間の満了日よりも想定以上に早く広告予算が消化されることを防止し、結果として、広告コンテンツAD11が想定以上に早く配信されなくなる事態を防止する。
【0015】
しかし、広告コンテンツが配信された回数を示すインプレッション数は、1日の中で時間帯によって変動する。このため、上述した広告配信では、インプレッション数が多い時間帯に、価値の高い広告コンテンツの配信が停止状態となっており、価値の低い広告コンテンツを配信する可能性がある。この点について、図2を用いて説明する。
【0016】
図2は、eCPM(effective Cost Per Mill)の質の時間遷移を示す図である。ここで、eCPMは、広告コンテンツがウェブページに1000回表示された場合に、かかるウェブページの提供者が得る収益額を示す。例えば、eCPMは、広告コンテンツの入札価格にCTR(Click Through Rate)及び1000を乗算することで算出される。なお、eCPMが高い広告コンテンツは、質の高い広告コンテンツであることを意味する。
【0017】
また、図2には、比較例の配信装置が配信する全ての広告コンテンツの各種の値の合計値が示されている。なお、図2では、縦軸は、各種の値の1日の平均に対する割合を示す。横軸は、1日の時刻を示す。また、図2では、「インプレッション数」は、比較例の配信装置によって配信された広告コンテンツの配信回数の合計値を示す。「eCPM総量」は、実際に配信された広告コンテンツのeCPMの総和を示す。「配信可能eCPM総量」は、配信可能状態の広告コンテンツのeCPMの総和を示す。「平均eCPM」は、実際に配信された広告コンテンツのeCPMの平均を示す。「eCPMの質」は、実際に配信された広告コンテンツの質を示す。例えば、「eCPMの質」は、「配信可能eCPM総量」を「eCPM総量」で除算することで算出される。
【0018】
図2に示した例の場合、インプレッション数は、4時前後の時間帯T1に最も低い値となる。一方、eCPMの質は、時間帯T1に最も高い値となる。また、インプレッション数は、12時前後の時間帯T2に最も高い値となる。一方、eCPMの質は、時間帯T2に最も低い値となる。
【0019】
ここで、比較例の配信装置は、eCPMの高い広告コンテンツを優先して配信する。このため、比較例の配信装置は、図2に示すように、インプレッション数の少ない時間帯にeCPMの質が高い広告コンテンツを配信する。配信に必要なeCPM総量に対する配信可能なeCPM総量の割合が大きいため、配信する広告コンテンツの選択の余地が広く、eCPMの質が高い広告コンテンツが優先して配信されるからである。このため、比較例の配信装置は、インプレッション数の多い時間帯では、eCPMの質が高い広告コンテンツを既に配信しているので、eCPMの質が高い広告コンテンツの配信を停止する。なお、平均的に質が高いeCPMの広告コンテンツが配信されるので、平均CTRも高くなる。
【0020】
また、比較例の配信装置は、インプレッション数の多い時間帯では、eCPMの質が高い広告コンテンツを配信することができないので、eCPMの質が低い広告コンテンツを配信する。配信に必要なeCPM総量に対する配信可能なeCPM総量の割合が小さいため、配信する広告コンテンツの選択の余地が狭く、eCPMの質が高い配信可能な広告コンテンツが少ないからである。なお、平均的に質が低いeCPMの広告コンテンツが配信されるので、平均CTRも低くなる。
【0021】
一般的に、インプレッション数は、このような傾向となることが多いので、比較例の配信装置では、eCPMの質が低い広告コンテンツでも配信される可能性がある。このため、広告主は、広告コンテンツを配信するための競争をせずに、低い入札価格を設定する場合がある。これにより、広告配信者は、高い入札価格が設定されることにより得られる収益を逸する可能性がある。
【0022】
そこで、実施形態に係る配信装置100は、課金許容額に達しないように広告コンテンツの配信を制御する。具体的には、配信装置100は、課金許容額の時間変動に基づいて、広告コンテンツを配信する配信確率を算出する。例えば、配信装置100は、広告コンテンツが配信される確率であって、現在日時に対応する課金許容額と、課金額の累計値との間の差額と連動する配信確率を算出する。そして、配信装置100は、算出した配信確率に基づいて広告コンテンツを配信する。この点について図1を用いて説明する。なお、図1の例では、配信装置100は、広告コンテンツごとに、配信確率を算出する例を示す。
【0023】
まず、配信装置100は、広告コンテンツの取得要求を受信した場合に、広告コンテンツがクリックされた回数に応じて課金される課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を取得する。図1の例では、配信装置100は、図1に示した課金許容額BLを取得する。なお、課金許容額BLは、図1に示すような直線に限らず、後述する方法によって算出される曲線であってもよい。また、配信装置100は、広告コンテンツの配信が開始されてから現在日時までの間における課金額の累積値RLを取得する。
【0024】
続いて、配信装置100は、広告コンテンツが配信される確率であって、取得された課金許容額のうち現在日時に対応する課金許容額と課金額の累計値との間の差額と連動する配信確率を算出する。具体的には、配信装置100は、差額が大きい時刻においては、配信確率を高く算出し、差額が小さい時刻においては、配信確率を低く算出する。例えば、配信装置100は、差額を課金許容額で除算することによって配信確率を算出する。
【0025】
図1の例では、配信装置100は、時刻「10時」においては、課金許容額「4166」と課金額の累計値「3000」との間の差額L1「1116」を課金許容額B1「4166」で除算することで配信確率P1「28%」を算出する。一方、配信装置100は、時刻「20時」においては、課金許容額「8332」と課金額「8000」の累計値との間の差額L2「332」を課金許容額B2「8332」で除算することで配信確率P2「4%」を算出する。
【0026】
実施形態に係る配信装置100は、1日当たりの広告予算を算出し、広告コンテンツの配信期間において、1日毎に上述した配信制御を行う。ここで、実施形態に係る配信装置100は、課金許容額と課金額の累計値との間の差額が十分にある場合(例えば、図1の時刻「10」)には、高い確率で広告コンテンツを配信するので、許容された課金額の上限に近づくように広告コンテンツを配信することができる。これにより、配信装置100は、広告予算を消化する可能性を高めることができる。また、配信装置100は、課金許容額と課金額の累計値との間の差額が逼迫している場合(例えば、図1の時刻「20」)には、低い確率で広告コンテンツを配信するので、課金許容額を超えないように広告コンテンツを配信することができる。これにより、配信装置100は、広告コンテンツが配信停止となる可能性を下げることができる。
【0027】
このように、実施形態に係る配信装置100は、広告コンテンツがクリックされた回数に応じて課金される課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を取得し、取得された課金許容額の時間変動に基づいて、広告コンテンツを配信する配信確率を算出する。
【0028】
これにより、配信装置100は、広告コンテンツの配信停止を防ぐことができるので、配信期間中の時間帯によらずに広告コンテンツの選択の幅を広くすることができる。このため、配信装置100は、図2に示すような時間帯によって配信される広告コンテンツの質の差が大きい場合と比較して、配信期間中に配信する広告コンテンツの質を平均化することができる。また、配信装置100は、高い入札価格の広告コンテンツが配信停止となることを防ぐことができるので、低い入札価格の広告コンテンツが配信されてしまうことを防ぐことができる。これにより、配信装置100は、広告コンテンツを配信させるために広告主に競わせることができるので、広告主に高い入札価格の設定をさせることができる。このため、配信装置100は、広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させることができる。
【0029】
〔2.広告配信システムの構成〕
次に、図3を用いて、実施形態に係る広告配信システムの構成について説明する。図3は、実施形態に係る広告配信システム1の構成例を示す図である。図3に示すように、広告配信システム1には、端末装置10と、広告主装置20〜20と、情報提供装置30と、配信装置100とが含まれる。端末装置10、広告主装置20〜20、情報提供装置30及び配信装置100は、ネットワークNを介して、有線又は無線により通信可能に接続される。なお、図3に示した広告配信システム1には、複数台の端末装置10や、複数台の情報提供装置30や、複数台の配信装置100が含まれてもよい。
【0030】
端末装置10は、例えば、デスクトップ型PC(Personal Computer)や、ノート型PCや、タブレット型端末や、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)等の情報処理装置である。例えば、端末装置10は、情報提供装置30にアクセスすることで、情報提供装置30からウェブページを取得し、取得したウェブページを表示装置(例えば、液晶ディスプレイ)に表示する。また、端末装置10は、ウェブページに広告枠が含まれる場合には、配信装置100にアクセスすることで、配信装置100から広告コンテンツを取得し、取得した広告コンテンツをウェブページ上に表示する。ただし、この例に限られず、端末装置10は、広告コンテンツを含むウェブページを情報提供装置30から取得してもよい。この場合、情報提供装置30は、配信装置100によって配信される広告コンテンツを組み込んだウェブページを端末装置10に配信する。
【0031】
広告主装置20〜20は、配信装置100に広告配信を依頼する広告主によって利用される情報処理装置である。かかる広告主装置20〜20は、広告主による操作に従って、広告コンテンツを配信装置100に入稿する。実施形態に係る広告主装置20〜20は、静止画像や、動画像や、テキストデータや、広告主が管理する広告主サーバによって提供されるウェブページにアクセスするためのURL(Uniform Resource Locator)などに該当する広告コンテンツを配信装置100に入稿する。
【0032】
また、広告主は、広告主装置20〜20を用いて、広告コンテンツを配信装置100に入稿せずに、広告コンテンツの入稿を代理店に依頼する場合もある。この場合、配信装置100に広告コンテンツを入稿するのは代理店となる。以下では、「広告主」といった表記は、広告主だけでなく代理店を含む概念であり、「広告主装置」といった表記は、広告主装置だけでなく代理店によって利用される代理店装置を含む概念であるものとする。また、広告主装置20〜20は、それぞれ同様の機能を有するので、以下では、広告主装置20〜20を区別する必要がない場合には、これらを総称して「広告主装置20」と表記する場合がある。
【0033】
情報提供装置30は、端末装置10にウェブページを提供するWebサーバ等である。かかる情報提供装置30は、例えば、ニュースサイト、オークションサイト、天気予報サイト、ショッピングサイト、ファイナンス(株価)サイト、路線検索サイト、地図提供サイト、旅行サイト、飲食店紹介サイト、ウェブブログなどに関する各種ウェブページを提供する。
【0034】
配信装置100は、広告主装置20から入稿された広告コンテンツを配信するサーバ装置である。上記の通り、配信装置100は、端末装置10からアクセスされた場合に、広告コンテンツを端末装置10に配信する。また、配信装置100は、情報提供装置30からアクセスされた場合には、広告コンテンツを情報提供装置30に配信する。
【0035】
〔3.配信装置の構成〕
次に、図4を用いて、実施形態に係る配信装置100の構成について説明する。図4は、実施形態に係る配信装置100の構成例を示す図である。図4に示すように、配信装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。なお、配信装置100は、配信装置100を利用する管理者等から各種操作を受け付ける入力部(例えば、キーボードやマウス等)や、各種情報を表示するための表示部(例えば、液晶ディスプレイ等)を有してもよい。
【0036】
(通信部110について)
通信部110は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。かかる通信部110は、ネットワークNと有線又は無線で接続され、ネットワークNを介して、端末装置10や広告主装置20や情報提供装置30との間で情報の送受信を行う。
【0037】
(記憶部120について)
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部120は、広告コンテンツ記憶部121と、許容情報記憶部122とを有する。
【0038】
(広告コンテンツ記憶部121について)
広告コンテンツ記憶部121は、広告主装置20から入稿された広告コンテンツを記憶する。ここで、図5に、実施形態に係る広告コンテンツ記憶部121の一例を示す。図5に示した例では、広告コンテンツ記憶部121は、「広告主ID」、「広告コンテンツ」、「入札価格」、「配信期間」、「広告予算」、「累積課金額」といった項目を有する。
【0039】
「広告主ID」は、広告主又は広告主装置20を識別するための識別情報を示す。「広告コンテンツ」は、広告主装置20から入稿された広告コンテンツを示す。図5に示した例では、「広告コンテンツ」に、「AD11」や「AD21」といった概念的な情報が格納される例を示したが、実際には、静止画像や動画像やテキストデータやURL(Uniform Resource Locator)、又は、これらの格納場所を示すファイルパス名などが記憶される。
【0040】
「入札価格」は、広告主が広告コンテンツを入稿する際に指定する広告料金を示す。本実施形態では、「入札価格」は、広告コンテンツがユーザに1回クリックされた際に、広告配信者(例えば、配信装置100の管理者)が広告主に課金する金額の単価(例えば、単位は「円」)に該当する。「配信期間」は、広告主が広告コンテンツを入稿する際に指定する情報であって、広告コンテンツをウェブページに掲載する期間を示す。「広告予算」は、広告主が広告コンテンツを入稿する際に指定する情報であって、広告主が広告配信者に支払う広告料金(すなわち、累積課金額)の上限値を示す。なお、「入札価格」には、2番目に高い入札価格を広告主に課金する金額の単価として採用するGSP(Generalize Second Price)が適用されてもよい。
【0041】
「累積課金額」は、現時点において広告主に課金される広告料金を示す。具体的には、「累積課金額」は、広告コンテンツがクリックされた回数に入札価格が乗算された値に該当する。なお、「累積課金額」は、後述する配信部136によって更新される。
【0042】
すなわち、図5では、広告主ID「AP10」によって識別される広告主が、入札価格「10円」、配信期間「2013年1月1日〜2013年1月31日」及び広告予算「31万円」を指定するとともに、広告コンテンツ「AD11」を入稿した例を示している。また、図5では、現時点において、広告コンテンツ「AD11」を広告配信したことによる累積課金額は、「10万円」である例を示している。
【0043】
なお、図5では図示することを省略したが、広告コンテンツ記憶部121は、「CTR」などを記憶してもよい。「CTR」は、広告コンテンツが端末装置10に配信された場合における広告効果を示す。例えば、「CTR」は、広告コンテンツがユーザによりクリックされた回数を広告コンテンツの表示回数によって除算した値に該当する。
【0044】
(許容情報記憶部122について)
許容情報記憶部122は、累積課金額の許容値である課金許容額に関する情報を記憶する。なお、実施形態に係る許容情報記憶部122は、広告コンテンツ毎に、課金許容額を記憶するものとする。ここで、図6に、実施形態に係る許容情報記憶部122の一例を示す。図6に示した例では、許容情報記憶部122は、「広告コンテンツ」、「対象期間」、「消化基準額」、「制御期間内の累積課金額」といった項目を有する。
【0045】
「広告コンテンツ」は、図5に示した広告コンテンツに対応し、配信装置100によって配信され得る広告コンテンツを示す。「対象期間」は、広告コンテンツが配信され得る日時を示す。図6では、「対象期間」に、年月日が特定されない時間帯のみが記憶される例を示している。「消化基準額」は、広告予算の消化ペースを示す。具体的には、「消化基準額」は、「課金許容額B」を表す式「B = A・x」における「A」に該当する。なお、上記の通り、「x」は、広告コンテンツの配信を開始してからの経過時間(ここの例では、単位は「分」)を示す。
【0046】
「制御期間内の累積課金額」は、配信装置100によって広告コンテンツの配信制御が所定の期間の単位で行われる場合に、現在日時に対応する制御期間における累積課金額を示す。例えば、図1に示した例の場合、配信装置100は、1日毎に、課金許容額BLに基づく配信制御を行う。この例の場合、許容情報記憶部122の「制御期間内の累積課金額」には、現在日における現時点までの累積課金額が記憶される。この「制御期間内の累積課金額」は、1日が経過するたびに「0」にクリアされ、1日毎の累積課金額が随時格納されることとなる。
【0047】
すなわち、図6では、「0時〜24時」の間に広告コンテンツ「AD11」を配信する場合には、1分間当たり「6.944円」のペースで課金することを許容する例を示している。また、図6では、広告コンテンツ「AD11」の累積課金額のうち、現在日時における累積課金額が「3000円」である例を示している。
【0048】
なお、図6の例では、年月日が特定されない時間帯が「対象期間」に記憶される例を示したが、「対象期間」には、年月日や曜日が記憶されてもよい。また、図6の例では、1分間当たりの消化ペースが「消化基準額」に記憶される例を示したが、「消化基準額」には、1秒間当たりの消化ペースや、10分間当たりの消化ペースや、1時間当たりの消化ペースなどが記憶されてもよい。
【0049】
(制御部130について)
制御部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、配信装置100内部の記憶装置に記憶されている各種プログラム(配信プログラムの一例に相当)がRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0050】
かかる制御部130は、図4に示すように、受付部131と、算定部132と、受信部133と、取得部134と、算出部135と、配信部136とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。なお、制御部130の内部構成は、図4に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。また、制御部130が有する各処理部の接続関係は、図4に示した接続関係に限られず、他の接続関係であってもよい。
【0051】
(受付部131について)
受付部131は、広告主装置20から広告コンテンツの入稿を受け付け、受け付けた広告コンテンツを広告コンテンツ記憶部121に格納する。具体的には、受付部131は、入札価格、配信期間及び広告予算の指定とともに広告コンテンツの入稿を受け付け、入稿された広告コンテンツに対応付けて、入札価格、配信期間及び広告予算を広告コンテンツ記憶部121に格納する。このとき、受付部131は、広告コンテンツの入稿元である広告主に対応する広告主IDについても広告コンテンツ記憶部121に格納する。
【0052】
(算定部132について)
算定部132は、各広告コンテンツの課金許容額を算出する。具体的には、算定部132は、受付部131によって受け付けられた配信期間及び広告予算に基づいて課金許容額の時間変動を算出する。ここで、算定部132は、課金許容額Bを表す式「B = A・x」における「消化基準額A」を求めることで、課金許容額Bの時間変動を算出する。
【0053】
ここで、図6を用いて、算定部132による課金許容額の算出処理の一例について説明する。この例では、配信装置100によって広告コンテンツの配信制御が行われる期間の単位が「1日」であるものとする。すなわち、配信装置100は、1日毎に1日当たりの広告予算を消化する配信制御を行う。また、ここでは、図1の例と同様に、所定の広告コンテンツAD11に着目した例について説明する。
【0054】
まず、算定部132は、配信装置100によって広告コンテンツAD11の配信制御が行われる1制御期間当たりの広告予算を算出する。具体的には、ここの例では制御期間の単位が「1日」であるので、算定部132は、広告コンテンツ記憶部121から広告コンテンツAD11の配信期間及び広告予算を取得し、取得した広告予算を配信期間の日数で除算することにより1日当たりの広告予算を算出する。なお、ここでは、1日当たりの広告予算「M10」が「1万円」であるものとする。
【0055】
続いて、算定部132は、1日当たりの広告予算「1万円」を、1日の分単位である「1440分」で除算することで消化基準額A「6.944円/分」を算出する。このような課金許容額の時間変動における傾きは、上述した「消化基準額A」に該当する。すなわち、算定部132は、算出された傾きを許容情報記憶部122の消化基準額に格納する。
【0056】
なお、算定部132は、受付部131によって受け付けられた広告コンテンツ毎に、このような算定処理を行う。また、上記例では、算定部132が1制御期間当たりの広告予算(上記例では、1日当たりの広告予算)を算出する例を示した。しかし、この例に限られず、受付部131が、広告コンテンツの入稿を受け付けた時点で、1制御期間当たりの広告予算を算出し、算出した1制御期間当たりの広告予算を広告コンテンツ記憶部121又は許容情報記憶部122に格納してもよい。
【0057】
(受信部133について)
受信部133は、端末装置10や情報提供装置30から広告コンテンツの取得要求を受信する。例えば、受信部133は、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)リクエスト等により、広告コンテンツの取得要求を受信する。
【0058】
なお、受信部133に広告コンテンツの取得要求を送信する装置は、情報提供装置30によって配信されるウェブページによって異なる。例えば、配信装置100にアクセスするためのURLが埋め込まれたウェブページが端末装置10に配信される場合、受信部133は、端末装置10から広告コンテンツの取得要求を受信する。また、広告コンテンツが既に埋め込まれたウェブページが端末装置10に配信される場合、受信部133は、情報提供装置30から広告コンテンツの取得要求を受信する。本実施形態では、受信部133は、端末装置10から広告コンテンツの取得要求を受信するものとする。
【0059】
(取得部134について)
取得部134は、現在日時に対応する累積課金額および課金許容額を取得する。具体的には、取得部134は、受信部133によって広告コンテンツの取得要求が受信された場合に、許容情報記憶部122に記憶されている消化基準額に対して、現在日時における経過時間を乗算することにより、現時点における課金許容額を算出する。例えば、取得部134は、課金許容額Bを表す式「B = A・x」に、算出された消化基準額Aと1日の経過時間(分)とを代入することで課金許容額Bの時間変動を算出する。一例としては、取得部134は、現在時刻が10時00分である場合には、消化基準額A「6.944円/分」に、1日の経過時間「10×60分」を乗算することで、課金許容額「4166円」を算定する。これにより、取得部134は、現在日時に対応する累積課金額と現在日時に対応する課金許容額とを取得する。
【0060】
(算出部135について)
算出部135は、取得部134によって取得された課金許容額の時間変動に基づいて、広告コンテンツを配信する配信確率を算出する。具体的には、算出部135は、広告コンテンツが配信される確率であって、取得部132によって取得された課金許容額のうち現在日時に対応する課金許容額と、課金額の累計値との間の差額と連動する配信確率を算出する。例えば、算出部135は、現在日時に対応する課金許容額に対する課金許容額と、課金額の累計値との間の差額の割合と連動する配信確率を算出する。
【0061】
この点について、式(1)〜式(4)を用いて詳細に説明する。算出部135は、まず、取得部134によって取得された現在日時に対応する課金許容額と課金額の累計値との間の差額を算出する。続いて、算出部135は、現在日時に対応する課金許容額と課金額の累計値との間の差額を用いて配信確率を算出する。広告コンテンツiの時刻tにおける配信確率Pitは、下記の式(1)で表される。
【0062】
【数1】
【0063】
ここで、「Bit」は、広告コンテンツiの時刻tにおける課金許容額を示す。「Lit」は、広告コンテンツiの時刻tにおける課金許容額と課金額の累計値との間の差額を示す。「k」は、全ての広告コンテンツにおける課金許容額と課金額の累計値との間の差額が最も小さくなるように配信確率を補正する補正係数を示す。算出部135は、現在日時に対応する課金許容額に対する課金許容額と課金額の累計値との間の差額の割合に補正係数を乗算することで、広告予算を可能な限り消化しつつ課金許容額と課金額の累計値との間の差額が最も小さくなる配信確率を算出することができるので、補正係数を算出する。
【0064】
例えば、算出部135は、入稿された広告コンテンツの差額の総和を最小に補正する補正係数を算出する。全ての広告コンテンツの課金許容額を合計した課金許容額Q(t)と、全ての広告コンテンツの課金額の累計値との間の差額は、下記の式(2)で表される。
【0065】
【数2】
【0066】
式(2)は、配信確率Pitに式(1)を代入することで下記の式(3)に変換される。
【0067】
【数3】
【0068】
ここで、補正係数「k」は、式(3)で表される差額の2乗補差を、下記の式(4)のように最小化する値が設定される。
【0069】
【数4】
【0070】
そして、算出部135は、算出された補正係数「k」を式(1)に代入することで配信確率Pitを算出する。なお、補正係数「k」は、上述した算出方法に限らず、例えば、過去の課金額の累計値の履歴から得られた最適な値が設定されてもよい。
【0071】
このように、算出部135は、全ての広告コンテンツにおける課金許容額と課金額の累計値との間の差額が最も小さくなるように配信確率を補正する補正係数を算出する。これにより、配信装置100は、広告予算を可能な限り消化するようにしつつ全ての広告コンテンツが配信停止になりにくい配信確率を算出することができるので、配信期間中の時間帯によらずに配信する広告コンテンツの選択の幅を広くすることができるとともに、広告予算の未消化を防ぐことができる。
【0072】
(配信部136について)
配信部136は、受信部133によって広告コンテンツの取得要求が受信された場合に、広告コンテンツ記憶部121に記憶されている広告コンテンツのいずれかを配信する。具体的には、配信部136は、算出部135によって算出された配信確率に基づいて、広告コンテンツ記憶部121から配信対象の広告コンテンツを抽出し、抽出した広告コンテンツを端末装置10や情報提供装置30に配信する。例えば、配信部136は、配信確率が高い広告コンテンツほど高い確率で広告コンテンツを抽出することで広告コンテンツの配信を制御する。このようにして、配信部136は、算定部132によって算定された課金許容額を超えないように広告コンテンツの配信を制御する。
【0073】
なお、上記では、配信確率に基づいて、配信対象の広告コンテンツを決定する例を示したが、配信部136は、種々の手法による広告コンテンツ抽出処理を組み合わせて、配信対象の広告コンテンツを決定してもよい。例えば、配信部136は、最初に、広告コンテンツ記憶部121から、広告コンテンツが表示されるウェブページ(すなわち、ユーザが閲覧するウェブページ)に含まれるキーワードと合致する所定数の広告コンテンツを抽出した後に、抽出した所定数の広告コンテンツの中から、配信確率に基づいて配信対象の広告コンテンツを決定してもよい。また、例えば、配信部136は、最初に、ユーザ属性(例えば、サイコグラフィック属性やデモグラフィック属性)と合致する所定数の広告コンテンツや、ユーザが入力した検索キーワードと合致する所定数の広告コンテンツを抽出した後に、抽出した所定数の広告コンテンツの中から、配信確率に基づいて配信対象の広告コンテンツを決定してもよい。また、例えば、配信部136は、最初に、配信確率に基づいて配信候補の広告コンテンツを抽出した後に、抽出した配信候補の広告コンテンツの中から、ウェブページに含まれるキーワードや、ユーザ属性や、検索キーワードなどに基づいて、配信対象の広告コンテンツを決定してもよい。また、この例に限られず、配信部136は、最初に、配信確率に基づいて配信候補の広告コンテンツを抽出した後に、広告コンテンツのCTRや入札価格に基づいて配信対象の広告コンテンツを決定してもよい。なお、ここでいうCTRは、実際のCTRであってもよいし、CTRの予測モデル等から予測される予測CTRであってもよい。
【0074】
また、配信部136は、配信した広告コンテンツがユーザによりクリックされた場合には、端末装置10からクリックされた旨のクリック通知を受信する。この場合、配信部136は、クリック通知に基づいて、クリックされた広告コンテンツに対応する広告コンテンツ記憶部121の「累積課金額」に入札価格を加算するとともに、許容情報記憶部122の「制御期間内の累積課金額」に入札価格を加算する。
【0075】
また、配信部136は、配信装置100によって配信制御が行われる制御期間が切り替わった場合に、許容情報記憶部122の「制御期間内の累積課金額」を「0」に更新する。例えば、制御期間が「1日」であり、制御期間の開始時刻が「0時」である場合、配信部136は、「0時」になるたびに、許容情報記憶部122の「制御期間内の累積課金額」を「0」に更新する。なお、配信部136は、許容情報記憶部122の「制御期間内の累積課金額」を履歴として保存してもよい。
【0076】
〔4.受付処理手順〕
次に、図7を用いて、実施形態に係る配信装置100による受付処理の手順について説明する。図7は、実施形態に係る配信装置100による受付処理手順を示すフローチャートである。
【0077】
図7に示すように、配信装置100の受付部131は、広告主装置20から広告コンテンツの入稿を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。そして、受付部131は、入稿を受け付けていない場合には(ステップS101;No)、入稿を受け付けるまで待機する。一方、受付部131は、入稿を受け付けた場合には(ステップS101;Yes)、入稿された広告コンテンツと、入稿時に広告主によって指定された入札価格、配信期間及び広告予算とを広告コンテンツ記憶部121に格納する(ステップS102)。
【0078】
続いて、算定部132は、受付部131によって受け付けられた広告コンテンツの配信期間及び広告予算に基づいて、課金許容額の時間変動を算出する(ステップS103)。例えば、算定部132は、1日当たりの広告予算を、1日の分単位で除算することで消化基準額を算出し、算出された消化基準額に対して、現在日時における経過時間を乗算することにより、現時点における課金許容額を算出する。
【0079】
そして、算定部132は、算出された課金許容額の時間変動に基づいて、許容情報記憶部122を更新する(ステップS104)。例えば、算定部132は、課金許容額の時間変動における傾きを消化基準額として許容情報記憶部122に格納する。
【0080】
〔5.広告配信処理手順〕
次に、図8を用いて、実施形態に係る配信装置100による配信処理の手順について説明する。図8は、実施形態に係る配信装置100による配信処理手順を示すフローチャートである。
【0081】
図8に示すように、配信装置100の受信部133は、広告コンテンツの取得要求を受信したか否かを判定する(ステップS201)。そして、受信部133は、取得要求を受信していない場合には(ステップS201;No)、取得要求を受信するまで待機する。
【0082】
一方、受信部133によって取得要求が受信された場合には(ステップS201;Yes)、取得部134は、許容情報記憶部122に記憶されている現時点における課金許容額を取得する(ステップS202)。
【0083】
続いて、算出部135は、取得部134によって取得された現時点における課金許容額と累積課金額との累積課金額との間の差額を算出する(ステップS203)。そして、算出部135は、算出された差額と課金許容額とを用いて補正係数を算出する(ステップS204)。
【0084】
続いて、算出部135は、算出された補正係数を用いて広告コンテンツの配信確率を算出する(ステップS205)。そして、配信部136は、算出部135によって算出された配信確率に基づいて広告コンテンツを配信する(ステップS206)。
【0085】
〔6.変形例〕
上述した実施形態に係る配信装置100は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。そこで、以下では、上記の配信装置100の他の実施形態について説明する。
【0086】
〔6−1.補正係数〕
上記実施形態では、式(4)に示した例のように、算出部135が、入稿された広告コンテンツの差額の総和を最小に補正する補正係数を算出する例を示した。しかし、この例に限られず、算出部135は、ターゲティング条件が同じ分類に属する広告コンテンツのグループごとに補正係数を算出し、算出された補正係数を用いて配信確率を算出してもよい。
【0087】
この点について、下記の式(5)を用いて説明する。
【0088】
【数5】
【0089】
式(5)は、ターゲティング条件が同じ分類に属する広告コンテンツのグループごとに補正係数を算出するための式である。ここで、算出部135は、性別や年代、地域、時間といった各種のターゲティング条件ごとに、補正係数を算出する。例えば、算出部135は、年代mおよび性別nごとに、式(5)を最小にする補正係数「kmn」を算出する。なお、算出部135は、ターゲティング条件ごとに限らず、例えば、広告コンテンツが扱う商品ごとに補正係数を算出してもよい。
【0090】
また、算出部135は、広告コンテンツの種別が同じ分類に属する広告コンテンツのグループごとに補正係数を算出し、算出された補正係数を用いて広告コンテンツの配信確率を算出してもよい。例えば、算出部135は、広告コンテンツの種別がリターゲティング広告である広告コンテンツのグループごとに補正係数を算出する。
【0091】
このように、配信装置100は、ターゲティング条件が同じ分類に属する広告コンテンツのグループごとに補正係数を算出し、算出された補正係数を用いて配信確率を算出する。また、配信装置100は、広告コンテンツの種別が同じ分類に属する広告コンテンツのグループごとに補正係数を算出し、算出された補正係数を用いて広告コンテンツの配信確率を算出する。
【0092】
これにより、配信装置100は、補正係数を高い精度で算出することができるので、配信確率を高い精度で算出することができる。このため、配信装置100は、広告コンテンツの配信停止を防ぐことができるので、広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させることができる。
【0093】
〔6−2.入札価格に応じた配信確率〕
また、上記実施形態では、配信装置100は、広告コンテンツの入札価格に応じて配信確率を算出してもよい。具体的には、算出部135は、広告コンテンツの入札価格が高いほど配信確率を低く算出する。この点について、図9を用いて説明する。図9は、配信確率算出処理を説明するための説明図である。
【0094】
図9に示すように、広告主AP10は、広告コンテンツAD3および広告コンテンツAD4を配信装置100に入稿したものとする。また、広告コンテンツAD3および広告コンテンツAD4は、現時点における課金許容額が「10000円」であるものとする。また、広告コンテンツAD3および広告コンテンツAD4は、現時点における累積課金額が「4000円」であるものとする。
【0095】
算出部135は、まず、現時点における課金許容額と累積課金額との間の差額「6000円」を算出する。続いて、算出部135は、課金許容額に対する差額の割合「60%」を算出する。ここで、算出部135は、広告コンテンツの入札価格が高いほど配信確率を低く算出する。例えば、算出部135は、図9に示すように、広告コンテンツAD3の場合は、差額の割合「60%」から差額に対する入札価格の割合「1%」を減算することで配信確率P3「59%」を算出する。一方、算出部135は、広告コンテンツAD4の場合は、差額の割合「60%」から差額に対する入札価格の割合「5%」を減算することで配信確率P4「55%」を算出する。
【0096】
このように、配信装置100は、広告コンテンツの入札価格が高いほど配信確率を低く算出する。
【0097】
これにより、配信装置100は、入札価格が高い広告コンテンツの配信を減らすので、広告コンテンツの配信停止を防ぐことができる。このため、配信装置100は、広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させることができる。
【0098】
〔6−3.所定の期間経過後の配信確率〕
また、上記実施形態では、所定の期間経過後に、課金額の累計値が課金許容額を超えていない場合には、配信確率を100%として算出してもよい。
【0099】
例えば、算出部135は、所定の期間が経過するまで上述した配信確率算出処理によって配信確率を算出する。そして、算出部135は、所定の期間経過後に、上述した配信確率の算出処理を停止する。例えば、算出部135は、配信期間の終了時刻に近い時刻になった場合に、上述した配信確率の算出処理を停止する。そして、算出部135は、課金額の累計値が課金許容額を超えていない場合には、配信確率を100%として算出する。一方、算出部135は、例えば、所定の期間経過後に、課金額の累計値が課金許容額を超えている場合には、配信確率を0%として算出する。
【0100】
このように、配信装置100は、所定の期間経過後に、課金額の累計値が課金許容額を超えていない場合には、配信確率を100%として算出する。
【0101】
これにより、配信装置100は、配信期間の終了間際に、課金額の累計値が課金許容額を超えていない広告コンテンツを配信するので、広告予算の未消化を防ぐことができる。
【0102】
〔6−4.広告クリック傾向と連動する課金許容額の算定〕
また、上記実施形態では、図6に示した例のように、算定部132が、1日当たりの広告予算を1440分で除することで消化基準額を算出する例を示した。しかし、この例に限られず、算定部132は、広告コンテンツがクリックされる広告クリック傾向と連動し、課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定してもよい。
【0103】
この点について、図10及び図11を用いて説明する。図10は、クリック傾向の時間遷移を説明するための説明図である。図10では、縦軸は、広告コンテンツが表示された回数のうち、クリックされた数の割合を表す指標であるCTRを示す。横軸は、時刻を示す。図10に示すように、広告コンテンツのCTRは、広告コンテンツによってクリックされやすい時間帯が異なる。図10では、広告コンテンツAD1は、18時から24時の時間帯にCTRが高い例である。一方、広告コンテンツAD2は、0時から6時の時間帯にCTRが高い例である。このように、広告コンテンツによってクリックされやすい時間帯が異なる。
【0104】
ここで、クリックされにくい時間帯に広告コンテンツが配信されてしまうと、CTRが下がるので、広告配信者の売上も低下してしまう問題がある。そこで、配信装置100の算定部132は、広告クリック傾向と連動し、課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する。
【0105】
図11は、クリック傾向と連動した課金許容額を説明するための説明図である。図11に示すように、算定部132は、18時から24時の時間帯に課金許容額が上限に近づくように、広告コンテンツAD1の課金許容額OL1を算出する。一方、算定部132は、0時から6時の時間帯に課金許容額が上限に近づくように、広告コンテンツAD2の課金許容額OL2を算定する。
【0106】
このように、配信装置100は、広告コンテンツがクリックされる広告クリック傾向と連動し、課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する。そして、配信装置100は、算定部132によって算定された課金許容額のうち現在日時に対応する課金許容額と、課金額の累計値との間の差額と連動し、広告コンテンツの配信を制御する配信確率を算出する。
【0107】
これにより、配信装置100は、各広告コンテンツのクリック傾向に即した課金許容額に基づいて配信制御を行うことができるので、未消化の広告予算をより減少させることができる。このため、配信装置100は、広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させることができる。
【0108】
なお、配信装置100は、広告コンテンツごとに限らず、キャンペーンごとに、広告クリック傾向を算出してもよい。ここで、キャンペーンとは、例えば、特定の商品やサービスを宣伝するために用意された複数の広告コンテンツのまとまりを意味する。また、配信装置100は、広告コンテンツを入稿した広告主ごとに、広告クリック傾向を算出してもよい。具体的には、配信装置100は、広告コンテンツのクリック数とインプレッション数の実績データを用いて、曜日や時間帯ごとに、広告クリック傾向を算出する。
【0109】
例えば、配信装置100は、広告コンテンツがクリックされる広告クリック数または広告コンテンツの配信によって得られる収益を最大化することで算出される広告クリック傾向と連動し、課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する。この点について、図12を用いて説明する。図12は、クリック傾向の時間遷移を説明するための説明図である。図12では、例えば、Click(0)は、広告コンテンツADの0時台におけるクリック数を示す。また、ClickMAX1は、広告コンテンツADの0時台からT時台までの間におけるクリック数の合計値を示す。また、Imps(0)は、広告コンテンツAD〜ADの0時台におけるインプレッション数の合計値を示す。なお、図12の例では、広告コンテンツAD〜ADの各時間帯におけるクリック傾向Click(0)〜Click(T)のM×T個がパラメータとなる。また、0時台からT時台までの時間における広告コンテンツADのクリック数の合計値ClickMAXmは、予算制約から決定される。
【0110】
ここで、制約条件は、下記の式(6)および式(7)で表される。
【0111】
【数6】
【0112】
【数7】
【0113】
そして、配信装置100は、線形計画法によって、広告コンテンツのクリック数または広告コンテンツの配信によって得られる収益の最大値を算出する。具体的には、配信装置100は、式(6)および式(7)の制約条件の下で、クリック数または収益を最大化することで、最適なクリック数の傾向を算出する。ここで、クリック数を最大化する式は、下記の式(8)で表される。
【0114】
【数8】
【0115】
そして、配信装置100は、下記の式(8)が最大となるクリック数を算出する。なお、配信装置100は、最大となるクリック数に限らず、最大となる収益を算出してもよい。収益は、広告コンテンツのクリック数に入札価格を乗算することで算出される。このため、収益を最大化する式は、下記の式(9)で表される。ここで、Bidは、広告コンテンツADの入札価格を示す。これにより、配信装置100は、下記の式(9)が最大となる収益を算出する。
【0116】
【数9】
【0117】
このように、配信装置100は、広告コンテンツがクリックされる広告クリック数または広告コンテンツの配信によって得られる収益を最大化することで算出される広告クリック傾向と連動し、課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する。
【0118】
これにより、配信装置100は、広告コンテンツのクリック傾向を高い精度で算出することができるので、広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させる配信確率を算出することができる。
【0119】
なお、配信装置100は、予算制約を考慮せずに、時間ごとに最適化を行ってもよい。具体的には、配信装置100は、所定の時間帯ごとに、広告コンテンツのクリック数またはクリック率に比例する表示回数を算出し、算出された表示回数にクリック率を乗算することで算出される広告クリック傾向と連動し、課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する。例えば、配信装置100は、1時間単位の時間帯ごとに、各広告コンテンツの実績クリック数に比例してインプレッション数を分配する。ここで、広告コンテンツADの時間tにおけるインプレッション数Imps(t)は、下記の式(10)で表される。これにより、配信装置100は、インプレッション数を算出する。
【0120】
【数10】
【0121】
なお、配信装置100は、1時間単位の時間帯ごとに、各広告コンテンツの実績CTRに比例してインプレッション数を分配してもよい。この場合、インプレッション数Imps(t)は、下記の式(11)で表される。
【0122】
【数11】
【0123】
そして、配信装置100は、式(10)または式(11)によって算出されたインプレッション数Imps(t)に実際に観測されたCTRを示す実績CTR(t)を乗算することで最適なクリック数の傾向Click(t)を算出する。そして、配信装置100は、算出されたClick(t)の時系列累積曲線を算出することで最適な配信計画曲線を算出する。これにより、配信装置100は、広告クリック傾向と連動し、課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する。
【0124】
このように、配信装置100は、所定の時間帯ごとに、広告コンテンツのクリック数またはクリック率に比例する表示回数を算出し、算出された表示回数にクリック率を乗算することで算出される広告クリック傾向と連動し、課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する。
【0125】
これにより、配信装置100は、広告コンテンツのクリック傾向を高い精度で算出することができるので、広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させる配信確率を算出することができる。
【0126】
また、配信装置100は、広告クリック傾向に限らず、CVR(Conversion Rate)と連動し、課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定してもよい。ここで、CVRは、広告を配信した回数に対して、コンバージョン(例えば、商品購入や資料請求などの、コンテンツ上から獲得できる最終成果)に至った回数の割合を示す。また、配信装置100は、ユーザの余裕度を考慮して課金許容額の時間変動を算定してもよい。ここで、余裕度は、ユーザが広告コンテンツを見る時間的なゆとりを示す。例えば、余裕度は、平日の日中の時間帯よりも夜の時間帯や土日祝日の方が高い傾向がある。また、配信装置100は、eCPMが高いユーザ数の時間遷移を考慮して課金許容額の時間変動を算定してもよい。また、配信装置100は、広告コンテンツがターゲティング広告の場合には、ターゲティング広告の対象となるデモグラフィック属性ごとに、上述した課金許容額の時間変動を算定してもよい。
【0127】
〔6−5.制御期間の単位〕
また、上記実施形態では、配信装置100によって広告コンテンツの配信制御が行われる制御期間の単位が「1日」である例を示したが、この例に限られず、制御期間の単位は、「1日」以外の他の単位であってもよい。例えば、制御期間の単位は、「10時間」、「3日」、「1週間」、「1ヶ月」などであってもよい。
【0128】
〔6−6.消化基準額(消化ペース)を設けられる期間の粒度〕
また、上記実施形態では、図6に示した例のように、算定部132が、1つの時間帯に対応する消化基準額を算出する例を示した。しかし、この例に限られず、消化基準額が算出される期間の粒度は他の例であってもよい。以下、いくつか例を挙げて説明する。
【0129】
具体的には、算定部132は、複数の時間帯に対応する消化基準額を算出してもよい。例えば、算定部132は、3つの時間帯「0時〜6時」、「6時〜21時」及び「21時〜24時」について消化基準額を、各時間帯ごとに算出する。また、算定部132は、時間帯ではなく、日にちの範囲毎に、消化基準額を算出してもよい。一例を挙げて説明すると、例えば、月の前半(1日〜15日)と月の後半(16日〜31日)とでクリック傾向が変動する場合、算定部132は、対象期間「2013年2月1日〜2013年2月15日」に対応する消化基準額と、対象期間「2013年2月16日〜2013年3月15日」に対応する消化基準額と、対象期間「2013年3月16日〜2013年3月31日」に対応する消化基準額を算出してもよい。
【0130】
また、算定部132は、日にちの範囲毎に、消化基準額を算出する時間帯を変動させてもよい。例えば、算定部132は、「2013年2月1日〜2013年2月15日」及び「2013年3月16日〜2013年3月31日」については、3つの時間帯「0時〜6時」、「6時〜21時」及び「21時〜24時」について消化基準額を算出し、「2013年2月16日〜2013年3月15日」については、2つの時間帯「0時〜9時」及び「9時〜24時」について消化基準額を算出する。
【0131】
また、例えば、算定部132は、曜日毎に異なる消化基準額を算出してもよい。さらに、算定部132は、曜日毎に、消化基準額を算出する時間帯を変動させてもよい。例えば、算定部132は、「月曜日〜金曜日」については、3つの時間帯「0時〜6時」、「6時〜21時」及び「21時〜24時」について消化基準額を算出し、「土曜日、日曜日」については、2つの時間帯「0時〜9時」及び「9時〜24時」について消化基準額を算出する。また、算定部132は、祝日(旗日)については「土曜日、日曜日」と同様の消化基準額を算出してもよいし、各曜日とは別に消化基準額を算出してもよい。
【0132】
また、例えば、算定部132は、所定期間毎の消化基準額を設けるのではなく、課金許容額の時間変動を示す式を算出してもよい。
【0133】
まず、算定部132は、クリック傾向に準じて広告コンテンツがクリックされたと仮定することで、広告コンテンツの仮想課金額の時間変動を算出する。ここでは、算定部132は、広告コンテンツの配信期間の開始日時から終了日時まで変動する仮想課金額を算出する。続いて、算定部132は、配信期間の終了日時に対応する仮想課金額が広告主に設定された広告予算と一致するように、仮想課金額の時間変動を補正する。すなわち、算定部132は、仮想課金額の時間変動を全体的に圧縮することで、課金許容額の時間変動を算出する。そして、算定部132は、曲線あてはめや回帰分析等を行うことにより、課金許容額の時間変動を示す近似式を求め、求めた近似式を広告コンテンツ(実際には広告コンテンツを識別するための広告IDなど)に対応付けて許容情報記憶部122に格納する。
【0134】
このように、配信装置100は、課金許容額(すなわち、消化基準額)を算出することで、詳細に解析されたクリック傾向に即した課金許容額に基づいて配信制御を行うことができるので、未消化の広告予算をより減少させることができる。
【0135】
〔6−7.装置構成〕
また、上記実施形態では、広告配信システム1に、情報提供装置30と配信装置100とが含まれる例を示したが、情報提供装置30と配信装置100とは1個の装置として形成されてもよい。そして、配信装置100は、端末装置10からウェブページの取得要求を受け付けた場合に、広告コンテンツ記憶部121から抽出した広告コンテンツとともに、広告取得命令を含まないウェブページを端末装置10に配信する。
【0136】
〔6−8.その他〕
また、上記実施形態では、広告コンテンツやウェブページのリンク領域を選択するユーザ操作を「クリック」と表記したが、かかるユーザ操作は、マウスを用いたクリック操作に限られない。例えば、上述してきた「クリック」は、指によって広告コンテンツ等をタップする操作や、視線によって広告コンテンツ等を選択する操作であってもよい。
【0137】
また、上記実施形態では、ウェブページに広告コンテンツが重ねて表示される例を示したが、広告コンテンツと重ねて表示されるコンテンツは、ウェブページに限られない。例えば、携帯電話ゲーム等の画面に広告表示領域が含まれる場合、上述してきた広告コンテンツは、ゲーム画面等と重ねて表示されてもよい。
【0138】
また、上記実施形態では、広告コンテンツを例に挙げて説明したが、ウェブページに表示されるコンテンツは、広告目的の広告コンテンツに限られない。例えば、上述してきた広告コンテンツは、天気情報や震災情報などを通知するためのコンテンツであってもよい。
【0139】
また、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0140】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、図4に示した受付部131及び受信部133は統合されてもよい。
【0141】
〔6−9.ハードウェア構成〕
また、上述してきた実施形態に係る配信装置100は、例えば図13に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。以下、配信装置100を例に挙げて説明する。図13は、配信装置100の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD1400、通信インターフェイス(I/F)1500、入出力インターフェイス(I/F)1600、及びメディアインターフェイス(I/F)1700を有する。
【0142】
CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0143】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インターフェイス1500は、通信網50(図3に示したネットワークNに対応)を介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを通信網50を介して他の機器へ送信する。
【0144】
CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータを入出力インターフェイス1600を介して出力装置へ出力する。
【0145】
メディアインターフェイス1700は、記録媒体1800に格納されたプログラム又はデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、かかるプログラムを、メディアインターフェイス1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0146】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る配信装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部130の機能を実現する。また、HDD1400には、記憶部120内のデータが格納される。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムを記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から通信網50を介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0147】
〔7.効果〕
上述してきたように、実施形態に係る配信装置100は、取得部134と、算出部135とを有する。取得部134は、広告コンテンツがクリックされた回数に応じて課金される課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を取得する。算出部135は、取得部134によって取得された課金許容額の時間変動に基づいて、広告コンテンツを配信する配信確率を算出する。
【0148】
また、実施形態に係る配信装置100において、算出部135は、広告コンテンツが配信される確率であって、取得部134によって取得された課金許容額のうち現在日時に対応する課金許容額と、課金額の累計値との間の差額と連動する配信確率を算出する。
【0149】
これにより、実施形態に係る配信装置100は、広告コンテンツの配信停止を防ぐことができるので、配信期間中の時間帯によらずに広告コンテンツの選択の幅を広くすることができる。また、配信装置100は、配信期間中に配信する広告コンテンツの質を平均化することができる。また、配信装置100は、高い入札価格の広告コンテンツが配信停止となることを防ぐことができるので、低い入札価格の広告コンテンツが配信されてしまうことを防ぐことができる。また、配信装置100は、広告コンテンツを配信させるために広告主に競わせることができるので、広告主に高い入札価格の設定をさせることができる。また、配信装置100は、広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させることができる。
【0150】
また、実施形態に係る配信装置100において、算出部135は、現在日時に対応する課金許容額に対する差額の割合と連動する配信確率を算出する。
【0151】
これにより、実施形態に係る配信装置100は、広告コンテンツが配信停止となることを防ぐことができる。
【0152】
また、実施形態に係る配信装置100において、算出部135は、入稿された広告コンテンツの差額の総和を最小に補正する補正係数を算出し、算出された補正係数を用いて配信確率を算出する。
【0153】
これにより、実施形態に係る配信装置100は、広告予算を可能な限り消化しつつ課金許容額と課金額の累計値との間の差額が最も小さくなる配信確率を算出することができる。
【0154】
また、実施形態に係る配信装置100において、算出部135は、ターゲティング条件が同じ分類に属する広告コンテンツのグループごとに補正係数を算出し、算出された補正係数を用いて配信確率を算出する。
【0155】
これにより、実施形態に係る配信装置100は、配信確率を高い精度で算出することができるので、広告コンテンツの配信停止を防ぐことができる。
【0156】
また、実施形態に係る配信装置100において、算出部135は、広告コンテンツの種別が同じ分類に属する広告コンテンツのグループごとに補正係数を算出し、算出された補正係数を用いて広告コンテンツの配信確率を算出する。
【0157】
これにより、実施形態に係る配信装置100は、配信確率を高い精度で算出することができるので、広告コンテンツが配信停止となることを防ぐことができる。
【0158】
また、実施形態に係る配信装置100において、算出部135は、広告コンテンツの入札価格が高いほど配信確率を低く算出する。
【0159】
これにより、実施形態に係る配信装置100は、入札価格が高い広告コンテンツの配信を減らすので、広告コンテンツが配信停止となることを防ぐことができる。
【0160】
また、実施形態に係る配信装置100において、算出部135は、所定の期間経過後に、課金額の累計値が課金許容額を超えていない場合には、配信確率を100%として算出する。
【0161】
これにより、実施形態に係る配信装置100は、配信期間の終了間際に、課金額の累計値が課金許容額を超えていない広告コンテンツを配信するので、広告予算の未消化を防ぐことができる。
【0162】
また、実施形態に係る配信装置100において、算定部132は、広告コンテンツがクリックされる広告クリック傾向と連動し、課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する。算出部135は、算定部132によって算定された課金許容額のうち現在日時に対応する課金許容額と、課金額の累計値との間の差額と連動する配信確率を算出する。
【0163】
これにより、実施形態に係る配信装置100は、各広告コンテンツのクリック傾向に即した課金許容額に基づいて配信制御を行うことができるので、未消化の広告予算をより減少させることができる。
【0164】
このように、実施形態に係る配信装置100において、算定部132は、広告コンテンツがクリックされる広告クリック数または広告コンテンツの配信によって得られる収益を最大化することで算出される広告クリック傾向と連動し、課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する。
【0165】
これにより、配信装置100は、広告コンテンツのクリック傾向を高い精度で算出することができるので、広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させる配信確率を算出することができる。
【0166】
このように、実施形態に係る配信装置100において、算定部132は、所定の時間帯ごとに、広告コンテンツのクリック数またはクリック率に比例する表示回数を算出し、算出された表示回数にクリック率を乗算することで算出される広告クリック傾向と連動し、課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を算定する。
【0167】
これにより、配信装置100は、広告コンテンツのクリック傾向を高い精度で算出することができるので、広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させる配信確率を算出することができる。
【0168】
以上、本願の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0169】
1 広告配信システム
10 端末装置
20 広告主装置
30 情報提供装置
100 配信装置
121 広告コンテンツ記憶部
122 許容情報記憶部
131 受付部
132 算定部
133 受信部
134 取得部
135 算出部
136 配信部
【要約】
【課題】広告コンテンツの配信によって得られる収益を向上させること。
【解決手段】本願に係る算出装置は、取得部と、算出部とを有する。取得部は、広告コンテンツがクリックされた回数に応じて課金される課金額の累積値を許容する課金許容額の時間変動を取得する。算出部は、取得部によって取得された課金許容額の時間変動に基づいて、配信確率を算出する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13