【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例に係る免震床について、添付の
図1乃至
図11を参照して詳細に説明する。
【0030】
本実施例に係る免震床1は、
図2乃至
図4に示すように、免震床設置室101内において、例えばその中央床領域に、周辺床領域に設置した固定床2により四辺を囲まれるように配置している。
【0031】
前固定床2上には、上面にタイル材又はカーペット類等を敷設した平板材からなる敷物材2aを配置している。
【0032】
すなわち、図示する実施例の前記免震床1は、前記固定床2に四角形状の開口状態で形成した内周端縁部により囲まれる領域に、四角形状の免震装置4aと連結ユニット3を配置することにより構成している。
【0033】
実施例に係る免震床1は、上部面を同一高さにレベル調整し、下部面を建物躯体の床スラブ2cの所定位置に固定したレベル調整部材2bを具備した支持脚7と、レベル調整部材2bによりレベル調整した支持脚7の上部面に固定され、上架台フレーム6と下架台フレーム5を具備し当該各フレーム間に地震時水平移動装置等を内蔵した免震支承体4と、前記同一高さにレベル調整した所定数の支持脚7の上部面に形成されて前記免震支承体4の下架台フレーム5の全周端縁部に形成、配置する固定床2と、を具備し、前記免震支承体4の下架台フレーム5の全周端縁部に、前記固定床2を密着又は接近させ、かつ、当該固定床2の高さを免震支承体4の地震時移動を阻害しない範囲内に配置し、前記上架台フレーム6と固定床2に、当該範囲内において許容される段差を設けたことを特徴とする。
【0034】
前記したように、図示する実施例では複数の免震支承体4を配置した例を示しているが、本発明においては免震支承体4の配置数を限定するものではなく、当該免震支承体4の配置数は4以上複数を用いたものに広く適用できることは勿論である。
すなわち、図示する実施例の前記免震床1は、前記固定床2に四角形状の開口状態で形成した内周端縁部により囲まれる領域に、四角形状の免震装置4aと連結ユニット3を配置することにより構成している。
【0035】
前記連結ユニット3を構成する各免震装置4aは、地震時に水平移動する機構や装置のものであれば特に限定するものではないが、図示例では、例えば、
図9乃至
図11に示す免震装置4aを内蔵しこれらの各免震装置4aをもって構成した連結ユニット3でもって免震支承体4を構成している。
本実施例の免震支承体4は、前記レベル調整部材2bによりレベル調整した支持脚7の上部面に固定されて、上架台フレーム6と下架台フレーム5との間に、地震時に水平移動する免震装置4aを内蔵している。
【0036】
すなわち、図示する実施例の免震装置4aは、下架台10、免震要素及び上架台11を含み、縦横(X−X方向、Y−Y方向)に所定の間隔をもって列設し、全体として四角形状配置とした例えば9台の詳細構造は後述する免震装置4aを備えている。
【0037】
そして、これら9台の免震装置4aにおける各下架台10を下架台フレーム5により、また、9台の免震装置4aにおける各上架台11を上架台フレーム6により各々一体化し、9台の免震装置4aが連動してX−X方向、又はY−Y方向の免震性能を発揮するように構成している。
【0038】
更に、
図4に示すように、前記固定床2、免震装置4aは、免震床設置室101の床スラブ2cから起立配置されてレベル調整部材2bをもってレベル調整されたで所要数の支持脚7により各々水平に支持されるとともに、前記下架台フレーム5の外周端縁部が前記固定床2の内周端縁部と密着又は近接する状態で配置されている。
【0039】
本実施例に係る免震床1は、前記免震装置4aにおける前記固定床2より高位置となる上架台フレーム6とその上面にタイル材又はカーペット類等を敷設した平板材からなる敷物材8とにより平坦に形成している。
【0040】
そして、前記免震床1上に被免震物52を設置し、前記各免震装置4aの連動した動作で前記被免震物52に対する免震機能を発揮させるように構成している。
本実施例に係る免震床1においては、前記上架台フレーム6の四辺の外周端縁部から前記固定床2側にカバー体62aを突設した構成としても良い。
【0041】
前記カバー体62aは、例えば、
図5に示すように、鋼板又はアルミニウム板等により一体構成した垂直片13、突出片14を有するL形状の突出体15と、前記突出片14の突出端部に被覆した前記固定床2の上面における敷物材8の上面と非接触状態の例えば弾性ゴム材からなる弾性部材62と、を備えている。弾性部材62を具備するか否かは自在に選択できる。
【0042】
次に、前記免震支承体4を構成している図示例の免震装置4aの具体的構成例について
図9乃至
図11を参照して説明する。
【0043】
本発明における免震支承体4としては、地震時に水平移動する機構のものであれば、図示例に限定するものでないことは前述した通りである。
【0044】
前記免震装置4aは、
図9乃至
図11に示すように、レール面の中央部が最低部分をなしその両側を対称形状の上昇傾斜面とした一対の下部レール10a、10aを平行配置に、かつ、上向きに突設した床面等に設置される例えば平面視正方形状の下架台10と、レール面の中央部が最高部分をなしその両側を対称形状の下降傾斜面とした一対の上部レール12、12を平行配置に、かつ、下向きで前記一対の下部レール10a、10aと直交する配置に突設し、前記下架台10の上方でこの下架台10と対向配置される例えば平面視正方形状で被免震物52を蔵置するための上架台11と、対向配置される前記下架台10と上架台11との間で、前記一対の下部レール10a、10a、一対の上部レール12、12により囲まれる空間領域に配置されるローラー支持軸枠体21と、を有している。
【0045】
前記下部レール10aを配置した方向をX−X方向、上部レール12を配置した方向をY−Y方向として以下の説明を行う。
【0046】
前記ローラー支持軸枠体21は、一対の下部レール10a、10aに沿う支持軸枠本体20の二つの平行な片21a、21bの外側に各々前記各下部レール10a、10aのレール面に転接する片側3個ずつ合計6個のローラー群を回転可能に軸支し、また、一対の上部レール12、12に沿う他の二つの片21c、21dの外側に各々前記上部レール12、12のレール面に転接する片側3個ずつ合計6個のコーラ一群を回転可能に軸支している。
【0047】
なお、前記支持軸枠本体20は、例えば平面視正方形状を呈しつつ例えば平面視正方形方形状に形成されている。
【0048】
前記ローラー支持軸枠体21及び各ローラー群の構造について更に詳述する。
【0049】
前記ローラー支持軸枠体21は、支持軸枠本体20を有し、この支持軸枠本体20には、この支持軸枠本体20内で前記下部レール10a、10aと直交する方向に所定間隔で両端部にネジ部を有する3個のローラー支持軸体31a、31b、31cを配置し、3個のローラー支持軸体31a、31b、31cの一端側は各々片21aを貫通して外方に突出させ、また、他端側は各々片21bを貫通して外方に突出させている。
【0050】
前記3個のローラー支持軸体31a、31b、31cは、中央位置にローラー支持軸体31aを配置し、このローラー支持軸体31aの両隣にローラー支持軸体31b、31cを配置する構成として以下の説明を行う。
【0051】
そして、各ローラー支持軸体31a、31b、31cにおける片21a、片21bの外側に突出させた部分には、例えば、
図5に示すように、軸受33a、33b、33cを介して各々ローラー32a、32b、32cを片側3個ずつ合計6個構成で回転可能に軸支している。
【0052】
また、前記中央位置のローラー支持軸体31aにより支持される中央の各ローラー32a、32aには、片21a、片21b側に位置する配置でフランジ32a1、32a1が設けられ、下部レール10aとの転接による走行安定性と片揺れ防止機能を確保するようにしている。
【0053】
更に、前記各ローラー支持軸体31a、31b、31cは、各ローラー32a、32b、32cを貫通して更に外方に突出され、これらの突出部分には間隔保持板34が嵌装されるとともに、各ローラー支持軸体31a、31b、31cの突出端側には各々ワッシャー35を介在しつつナット36が螺着されて、前記各ローラー支持軸体31a、31b、31cの突出端を一体的に保持し各ローラー支持軸体31a、31b、31cを固着するように構成している。
【0054】
更に、前記ローラー支持軸枠体21には、このローラー支持軸枠体21内で、前記下部レール10a、10aに添う方向に所定間隔で両端部にネジ部を有する3個のローラー支持軸体41a、41b、41cを配置し、3個のローラー支持軸体41a、41b、41cの一端側は各々片21cを貫通して外方に突出させて、また、他端側は各々片21dを貫通して外方に突出させている。
【0055】
前記3個のローラー支持軸体41a、41b、41cは、中央位置にローラー支持軸体41aを配置し、このローラー支持軸体41aの両隣にローラー支持軸体41b、41cを配置する構成として以下の説明を行う。
【0056】
そして、各ローラー支持軸体41a、41b、41cにおける片21c、片21dの外側に突出させた部分には、軸受43a、43b、43cを介して各々ローラー42a、42b、42cを片側3個ずつ合計6個構成で回転可能に軸支している。
【0057】
また、前記中央位置のローラー支持軸体41aにより支持される中央の各ローラー42a、42aには、片21c、片21d側に位置する配置でフランジ42a1、42a1が設けられて、上部レール12との転接による走行安定性と片揺れ防止機能を確保するようにしている。
【0058】
更に、前記各ローラー支持軸体41a、41b、41cは、各ローラー42a、42b、42cを貫通して更に外方に突出され、上述した場合と同様、これらの突出部分には間隔保持板44が嵌装されるとともに、各ローラー支持軸体41a、41b、41cの突出端側には各々ワッシャー45を介在しつつナット46が螺着されて、各ローラー支持軸体41a、41b、41cの突出端を一体的に保持し各ローラー支持軸体41a、41b、41cを固着するように構成している。
【0059】
上述したローラー支持軸枠体21におけるローラー支持軸体31a、31b、31c及び3個のローラー支持軸体41a、41b、41cの配置関係は、ローラー支持軸体31a、31b、31cが上段で、ローラー支持軸体41a、41b、41cが下段となるように配置されており、これにより、前記下部レール10aと上部レール12との相対的な移動時における相互干渉を生じない範囲内において、下部レール10aに沿う回転方向を有する各ローラー32a、32b、32cのローラー支持軸枠体21による軸支位置を上架台11側に接近させ、上部レール12に沿う回方向転を有する各ローラー42a、42b、42cのローラー支持軸枠体21による軸支位置を下架台10側に接近させて、下架台10と上架台11との間隔を縮小し、免震装置4aを全体としての薄型化を実現している。
【0060】
また、前記ローラー42aは、フランジ42a1を有している。
【0061】
更に、前記ローラー32a、32b、32cのローラー径については、
図5に示すように、中央部のローラー32aのローラー径を大きく、その両側のローラー32b、32cのローラー径は同一で、かつ、前記ローラー32aの場合よりも小径としている。
【0062】
前記ローラー42a、42b、42cのローラー径に関しても、
図6に示すように、前記ローラー32a、32b、32cのローラー径の場合と同様である。
前記一対の下部レール10a、10aと、一対の上部レール12、12と、前記各ローラー群を支持したローラー支持軸枠体21とにより前記免震装置4a におけるローラー転動型の免震要素を構成している。
【0063】
以上説明した本実施例に係るカバー体62aを備えた免震床1によれば、以下の効果を奏する。
なお、免震支承体4、すなわち、免震装置4aにカバー体62aを具備するか否かは自在であり、当該カバー体62aの有無は本発明において必須のものではない。
【0064】
免震床設置室101等において、従来例の免震床のような周辺部の隙間Gが存在せず、したがって、従来、各種の免震装置が設置される際には隙間Gを覆うための必須構造物であった緩衝板(エキスパンション)も不要となり、免震床1自体の免震性能を妨げる部材がなくなり、この免震床1の免震性能を十分に発揮させることができるとともに、免震床設置室101内における免震床1の設置面積も隙間Gが無い分十分に広く確保することが可能となり、更に従来例のような危険領域を無くすことができる。
【0065】
また、従来例のような緩衝板が不要となるので、固定床2の上面を傷付ける惧れもなくなるとともに、立ち入り禁止ゾーンも解消することができる。
【0066】
また、本実施例に係るカバー体62aを備えた免震床1によれば、鋼板又はアルミニウム板等により一体構成した垂直片13、突出片14を有するL形状の突出体15と、前記突出片14の突出端部に被覆した前記固定床2の上面と非接触状態の例えば弾性ゴム材からなる弾性部材62と、を備える簡略構成とし、このカバー体62aを設置面の四方に突出させているので、施工時間の短縮化、設置コストの低廉化をも実現することができる。
【0067】
次に、
図6乃至
図8を参照して前記カバー体62aの変形例について説明する。
【0068】
なお、
図5に示すカバー体62aについては、前記した通りである。
【0069】
(変形例1)
変形例1に係るカバー体62bは、
図6に示すように、鋼板又はアルミニウム板等により一体構成した突出体63と、弾性部材62とを備えている。
【0070】
前記突出体63は、設置面形成体9を構成する上架台フレーム6の外側端面部にボルト、ナット等の止着具を用いて基端部64を固着し、この基端部64の下端から前記固定床2の上方に向けて前記固定床2からの高さが比較的小寸法となる状態で突出片65を突出させ、突出片65の突出端から下方に向けて垂直片66を垂下することにより構成している。
【0071】
なお、前記垂直片66の突出端部に、前記固定床2の上面の敷物材2aに非接触状態で例えば弾性ゴム材からなる弾性部材62を被覆した構成としている。弾性部材62を具備するか否かは自在に選択できる。
【0072】
前記カバー体62bは、設置面の四辺から各々前記固定床2の上面に向けて突出させた構成としている。
【0073】
変形例1に係るカバー体62bを備えた免震床1によれば、このカバー体62bを、設置面の四辺から各々前記固定床2の上面に向けて突出させ、かつ、前記垂直片66の突出端部に、被覆した各弾性部材62を前記固定床2の上面の敷物材2aに各々非接触状態に具備した構成としているので、前記実施例の免震床1の場合と略同様な効果を発揮する。
【0074】
同時に、前記固定床2からの高さが比較的小寸法であるカバー体62bにより、免震床1の四辺の境界領域を作業者等に明確に認識させることができる。
【0075】
(変形例2)
変形例2に係るカバー体62cは、
図7に示すように、設置面を構成する上架台フレーム6の外側端面部の上部に、L型補助材72を用いて前記変形例1の場合よりも高位置となる状態で突出片73の基端側を固着し、この突出片73の他端側を前記固定床2の上方に向けて突出させ、突出片73の突出端から下方に向けて垂直片74を垂下した下向きL型状の突出体71と、この突出体71における垂直片74の突出端部に、前記固定床2の上の敷物材2a上に非接触状態で被覆した弾性部材62と、を備えている。弾性部材62を具備するか否かは自在に選択できる。
【0076】
変形例2に係るカバー体62cにおける突出片73の高さは、前記上架台フレーム6の上面の高さと略等高に設定している。
【0077】
前記突出片73、垂直片74は、鋼板又はアルミニウム板等により一体構成し、前記L型補助材72は、ボルト、ナット等の止着具を用いて上架台フレーム6の外側端面部に固着している。
【0078】
また、前記突出片73の基端側は、L型補助材72に前記止着具又は溶接等により固着している。
【0079】
前記カバー体62cは、設置面形成体9の四辺から各々前記固定床2の敷物材2a上に向けて突出させた構成としている。
【0080】
変形例2に係るカバー体62cを備えた免震床1によれば、前記実施例の免震床1の場合と略同様な効果を発揮するととともに、前記固定床2からの高さが変形例1の場合よりも高位置である前記カバー体62cにより、変形例1の場合と同様、免震床1の四辺の境界領域を作業者等に明確に認識させることができる。
【0081】
(変形例3)
変形例3に係るカバー体62dは、
図8に示すように、設置面を構成する上架台フレーム6の外側端面部の上部に、L型補助材82を用いて前記上架台フレーム6と等高の状態で突出片83を固着し、この突出片83の端部から前記固定床2の敷物材2aの上方に向けて垂下した垂直片83とを具備する下向きL形状の突出体81と、前記垂直片83の突出端部に前記固定床2の敷物材2aと非接触状態で被覆した弾性部材62と、を備えている。弾性部材62を具備するか否かは自在に選択できる。
【0082】
前記突出片83の上架台フレーム6の外側端面部からの突出寸法は、変形例2に係るカバー体62cの場合よりも小寸法に設定している。
【0083】
前記突出片83、垂直片84は、鋼板又はアルミニウム板等により一体構成し、前記L型補助材82は、ボルト、ナット等の止着具を用いて上架台フレーム6の外側端面部に固着している。
【0084】
更に、前記突出片83は、前記止着具又は溶接等により前記L型補助材82に固着している。
【0085】
前記カバー体62dは、設置面形成体9の四辺から各々前記固定床2の敷物材2a上に向けて突出させた構成としている。
【0086】
変形例3に係るカバー体62dを備えた免震床1によれば、敷物材2aと非接触状態の弾性部材62を備える構成の基に、既述した実施例の場合と略同様な効果を発揮する。