(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
当該変換器の動作帯域の中心周波数をf[Hz]、上記中心周波数に対応する波長をλ=c/f[m]として(cは光速)として、上記第1の誘電体層の厚みh1は、0.04≦h1/λ≦0.14を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の変換器。
上記第2の部分のx軸方向の長さをWbcshとして、上記第1の部分のy軸方向の長さLbcshは、0.275≦Lbcsh/Wbcsh≦0.375又は0.44≦Lbcsh/Wbcshを満たす、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の変換器。
上記導波管の管軸を通る位置を基準位置とし、上記導波管の上記帯状導体の延在方向に垂直な方向の内径をWwgとして、上記帯状導体の上記基準位置からのオフセットδmslは
、0≦δmsl/Wwg≦0.12を満たす、
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の変換器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
導波管とマイクロストリップ線路との接続を低損失に実現するためには、導波管とマイクロストリップ線路との間で生じる反射を抑制する必要がある。そして、導波管とマイクロストリップ線路との間で生じる反射を最小化するためには、マイクロストリップ線路を構成する帯状導体の先端から導波管の入口までの距離を、伝送する電磁波の波長に応じて最適化する必要がある。特許文献1〜2に記載の構造では、誘電体基板内に形成された短絡導波路をバックショートとして機能させることによって、導波管とマイクロストリップ線路との間で生じる反射を抑制している。とはいえ、このような反射を最小化するためには、やはり、マイクロストリップ線路を構成する帯状導体の先端から導波管の入口までの距離を、伝送する電磁波の波長に応じて最適化する必要がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の構造のように、導波管をマイクロストリップ線路の裏面に直接接続する場合、マイクロストリップ線路を構成する帯状導体の先端から導波管の入口までの距離を自由に変更することができない。何故なら、マイクロストリップ線路を構成する帯状導体の先端から導波管の入口までの距離を変更するためには、マイクロストリップ線路を構成する誘電体基板の厚みを変化させるしかなく、そうすると、マイクロストリップ線路のインピーダンスが所望の値から外れてしまうためである。
【0009】
一方、特許文献2に記載の構造のように、導波管をマイクロストリップ線路の裏面に基台を介して接続する場合、基台の厚みを変更することによって、マイクロストリップ線路を構成する帯状導体の先端から導波管の入口までの距離を自由に変更することができる。しかしながら、この基台は金属により構成されているので、その厚みを増すと著しく重量が増加したり著しく可撓性が低下したりするといった問題を生じる。
【0010】
なお、特許文献1〜2に記載の構造においては、誘電体導波路をバックショートとして機能させることによって、マイクロストリップ線路と導波管との間において生じる反射を抑えている。このため、マイクロストリップ線路を構成する帯状導体に誘電体導波路に覆われている部分と覆われていない部分とができる。そして、誘電体導波路に覆われている部分と覆われていない部分とで特性インピーダンスが異なるため、これらの部分の境界において反射が生じる。したがって、マイクロストリップ線路と導波管との間で生じる反射が抑えられたとしても、装置全体としての反射特性が有意に改善されるとは限らない。また、特許文献2に記載の構造においては、基台の開口に、テーパ加工を施したり、誘電体を充填したりする必要があるため、その製造に掛かる工数の増加が避けられない。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、導波管とマイクロストリップ線路とを接続するための変換器において、少ない工数で製造可能な簡易な構造でありながら、著しい重量の増加や可撓性の低下を伴わずに、導波管とマイクロストリップ線路との間で生じる反射を抑制することが可能な構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る変換器は、導波管と、内部にポスト壁が形成された第1の誘電体層、並びに、上記第1の誘電体層を介して互いに対向する第1の面状導体及び第2の面状導体により構成されたポスト壁導波路であって、上記第1の面状導体に形成された第1の開口を介して上記導波管に接続されたポスト壁導波路と、第2の誘電体層、並びに、上記第2の誘電体層を介して互いに対向にする上記第2の面状導体及び帯状導体により構成されたマイクロストリップ線路であって、上記第2の面状導体に形成された第2の開口を介して上記ポスト壁導波路に接続されたマイクロストリップ線路と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、マイクロストリップ線路と導波管とがポスト壁導波路を介して接続されているので、ポスト壁導波路を構成する第1の誘電体層の厚みを変更することによって、マイクロストリップ線路を構成する帯状導体の先端から導波管の入口までの距離を自由に変更することができる。これにより、マイクロストリップ線路と導波管との間で生じ得る反射を抑制することが可能になる。しかも、ポスト壁導波路を構成する第1の誘電体層の厚みを増しても、金属層の厚みを増したときのように著しく重量が増加したり著しく可撓性が低下したりすることはない。したがって、上記の構成によれば、著しい重量の増加や著しい可撓性の低下を伴わずに、マイクロストリップ線路と導波管との間で生じる反射を抑制することができる。また、上記のように構成された変換器は、全体を誘電体体操基板として実現可能な簡易な構造であり、特許文献2に記載の構造のように、その製造にテーパ加工や誘電体充填のための工数を要さない。
【0014】
本発明に係る変換器において、当該変換器の動作帯域の中心周波数をf[Hz]、上記中心周波数fに対応する波長をλ=c/f[m]として(cは光速)として、上記第1の誘電体層の厚みh1は、0.04≦h1/λ≦0.14を満たす、ことが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現することができる。具体的には、動作帯域における|S11|の最悪値を概ね−6dB以下とし、かつ、動作帯域における|S21|の最悪値を概ね−3dB以上とすることができる。
【0016】
また、上記の変換器において、上記第2の誘電体層の厚みh2は、0.05≦h2/h1≦0.15を満たす、ことが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現することができる。具体的には、動作帯域における|S11|の最悪値を概ね−6dB以下とし、かつ、動作帯域における|S21|の最悪値を概ね−3dB以上とすることができる。
【0018】
本発明に係る変換器は、上記帯状導体の先端を覆う導体ブロックを更に備えており、上記帯状導体の根元から先端に向かう方向をy軸正方向とし、上記y軸正方向に直交する方向のうち、上記帯状導体から上記第2の面状導体に向かう方向をz軸負方向とする直交座標系(右手系)において、上記導体ブロックには、y軸負方向及びz軸負方向に開口した凹部であって、上記導体ブロックのy軸負方向側の側面からy軸正方向に向かって掘り込まれた直方体状の第1の部分と、上記第1の部分の先端からx軸正方向及びx軸負方向に向かって掘り込まれた直方体状の第2の部分とからなるT字型の凹部が形成されている、ことが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、|S11|が設計目標値(具体的には−6dB)以下となる帯域、及び、|S21|が設計目標値(具体的には−3dB)以上となる帯域の帯域幅を拡大することができる。
【0020】
本発明に係る変換器において、上記第2の部分のx軸方向の長さをWbcshとして、上記第1の部分のx軸方向の幅Wvoidは、0.43≦Wvoid/Wbcshを満たす、ことが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現することができる。具体的には、動作帯域における|S11|の最悪値を概ね−6dB以下とし、かつ、動作帯域における|S21|の最悪値を概ね−3dB以上とすることができる。
【0022】
本発明に係る変換器において、上記第2の部分のx軸方向の長さをWbcshとして、上記第1の部分のy軸方向の長さLbcshは、0.275≦Lbcsh/Wbcsh≦0.375又は0.44≦Lbcsh/Wbcshを満たす、ことが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現することができる。具体的には、動作帯域における|S11|の最悪値を概ね−6dB以下とし、かつ、動作帯域における|S21|の最悪値を概ね−3dB以上とすることができる。
【0024】
本発明に係る変換器において、上記第1の開口は、上記帯状導体の延在方向に平行な辺と垂直な辺とを有する長方形であり、上記第1の開口の上記帯状導体に平行な辺の長さをLap0として、上記第1の開口の上記帯状導体に垂直な辺の長さWap0は、1.6≦Wap0/Lap0を満たす、ことが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現することができる。具体的には、動作帯域における|S11|の最悪値を概ね−6dB以下とし、かつ、動作帯域における|S21|の最悪値を概ね−3dB以上とすることができる。
【0026】
本発明に係る変換器において、上記第2の開口は、上記帯状導体の延在方向に平行な辺と垂直な辺とを有する長方形であり、上記第2の開口の上記帯状導体に平行な辺の長さをLap1として、上記第2の開口の上記帯状導体に垂直な辺の長さWap1は、0.95≦Wap1/Lap1≦1.25を満たす、ことが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現することができる。具体的には、動作帯域における|S11|の最悪値を概ね−6dB以下とし、かつ、動作帯域における|S21|の最悪値を概ね−3dB以上とすることができる。
【0028】
本発明に係る変換器において、上記導波管の管軸を通る位置を基準位置とし、上記導波管の上記帯状導体の延在方向に垂直な方向の内径をWwgとして、上記帯状導体の上記基準位置からのオフセットδmslは、0≦δmsl/Wwg≦0.12を満たす、ことが好ましい。
【0029】
上記構成によれば、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現することができる。具体的には、動作帯域における|S11|の最悪値を概ね−6dB以下とし、かつ、動作帯域における|S21|の最悪値を概ね−3dB以上とすることができる。
【0030】
本発明に係る変換器において、上記帯状導体の幅をWmslとして、0<Wmsl≦0.04を満たす、ことが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現することができる。具体的には、動作帯域における|S11|の最悪値を概ね−6dB以下とし、かつ、動作帯域における|S21|の最悪値を概ね−3dB以上とすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、導波管とマイクロストリップ線路とを接続するための変換器において、少ない工数で製造可能な簡易な構造でありながら、著しい重量の増加や著しい可撓性の低下を伴わずに、導波管とマイクロストリップ線路との間で生じる反射を抑制することが可能な構造を実現するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に係る変換器の分解斜視図である。
【
図3】第1の実施例に係る変換器が備える第1の面状導体の平面図である。
【
図4】第1の実施例に係る変換器が備える第2の面状導体の平面図である。
【
図5】第1の実施例に係る変換器が備える帯状導体及びC字状導体の平面図である。
【
図6】第1の実施例に係る変換器が備える導体ブロックの三面図である。
【
図7】(a)は、第1の実施例に係る変換器の反射特性を示すグラフであり、(b)は、同変換器の透過特性を示すグラフである。
【
図8】第1の変形例及び第2の変形例に係る変換器の断面図である。
【
図9】(a)は、第1の変形例に係る変換器の反射特性を示すグラフであり、(b)は、同変換器の透過特性を示すグラフである。(c)は、|S11|の最悪値のh1/λ依存性を示すグラフであり、(d)は、|S21|の最悪値のh1/λ依存性を示すグラフである。
【
図10】(a)は、第2の変形例に係る変換器の反射特性を示すグラフであり、(b)は、同変換器の透過特性を示すグラフである。(c)は、|S11|の最悪値のh2/h1依存性を示すグラフであり、(d)は、|S21|の最悪値のh2/h1依存性を示すグラフである。
【
図11】第3の変形例に係る変換器が備える第1の面状導体の平面図である。
【
図12】(a)は、第3の変形例に係る変換器の反射特性を示すグラフであり、(b)は、同変換器の透過特性を示すグラフである。(c)は、|S11|の最悪値のWap0/Lap0依存性を示すグラフであり、(d)は、|S21|の最悪値のWap0/Lap0依存性を示すグラフである。
【
図13】第4の変形例に係る変換器が備える第2の面状導体の平面図である。
【
図14】(a)は、第4の変形例に係る変換器の反射特性を示すグラフであり、(b)は、同変換器の透過特性を示すグラフである。(c)は、|S11|の最悪値のWap1/Lap1依存性を示すグラフであり、(d)は、|S21|の最悪値のWap1/Lap1依存性を示すグラフである。
【
図15】第5の変形例に係る変換器が備える帯状導体及びC字状導体の平面図である。
【
図16】(a)は、第5の変形例に係る変換器の反射特性を示すグラフであり、(b)は、同変換器の透過特性を示すグラフである。(c)は、|S11|の最悪値のδmsl/Wwg依存性を示すグラフであり、(d)は、|S21|の最悪値のδmsl/Wwg依存性を示すグラフである。
【
図17】第6の変形例に係る変換器が備える帯状導体及びC字状導体の平面図である。
【
図18】(a)は、第6の変形例に係る変換器の反射特性を示すグラフであり、(b)は、同変換器の透過特性を示すグラフである。(c)は、|S11|の最悪値のWmsl/λ依存性を示すグラフであり、(d)は、|S21|の最悪値のWmsl/λ依存性を示すグラフである。
【
図19】第7の変形例に係る変換器が備える導体ブロックの上面図である。
【
図20】(a)は、第7の変形例に係る変換器の反射特性を示すグラフであり、(b)は、同変換器の透過特性を示すグラフである。(c)は、|S11|の最悪値のLbcsh/Wbcsh依存性を示すグラフであり、(d)は、|S21|の最悪値のLbcsh/Wbcsh依存性を示すグラフである。
【
図21】第8の変形例に係る変換器が備える導体ブロックの上面図である。
【
図22】(a)は、第8の変形例に係る変換器の反射特性を示すグラフであり、(b)は、同変換器の透過特性を示すグラフである。(c)は、|S11|の最悪値のWvoid/Wbcsh依存性を示すグラフであり、(d)は、|S21|の最悪値のWvoid/Wbcsh依存性を示すグラフである。
【
図23】(a)は、第1の実施例に係る変換器が備える導体ブロックの斜視図であり、(b)は、第9の変形例に係る変換器が備える導体ブロックの斜視図である。
【
図24】(a)は、第1の実施例に係る変換器の反射特性、及び第9の変形例に係る変換器の反射特性を示すグラフであり、(b)は、第1の実施例に係る変換器の透過特性、及び第9の変形例に係る変換器の透過特性を示すグラフである。
【
図25】第2の実施例に係る変換器が備える第1の面状導体の平面図である。
【
図26】第2の実施例に係る変換器が備える第2の面状導体の平面図である。
【
図27】第2の実施例に係る変換器が備える帯状導体及びC字状導体の平面図である。
【
図28】第2の実施例に係る変換器が備える導体ブロックの三面図である。
【
図29】第2の実施例に係る変換器の反射特性及び透過特性を示すグラフである。
【
図30】第3の実施例に係る変換器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔変換器の構成〕
本発明の一実施形態に係る変換器について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る変換器1の分解斜視図であり、
図2は、本実施形態に係る変換器1の断面図である。
【0035】
変換器1は、導波管11とマイクロストリップ線路13とを互いに接続するための変換器であり、
図1に示すように、導波管11、ポスト壁導波路12、マイクロストリップ線路13、及びバックショートブロック14を備えている。
【0036】
導波管11は、両端が開放した管状部材であり、その管壁は、金属などの導体からなる。導波管11の内部に形成された空洞11aは、空気で満たされていてもよいし、空気以外の誘電体で満たされていてもよいが、本実施形態においては、前者の構成を採用する。この導波管11は、図示した座標系において、その管軸がz軸と平行になるように配置される。
【0037】
ポスト壁導波路12は、第1の誘電体層102、並びに、第1の誘電体層102を介して互いに対向する第1の面状導体101及び第2の面状導体103により構成される。第1の誘電体層102には、柵状に配列された複数の導体ポスト102a1,102a2,…,102aNのからなるポスト壁102aが形成されている。各導体ポスト102ai(i=1,2,…,N)は、その下端が第1の面状導体101に接続され、その上端が第2の面状導体103に接続された円筒状導体(具体的には、第1の誘電体層102を貫通する貫通孔の壁面に形成された導体メッキ)である。
【0038】
ポスト壁導波路12においては、第1の誘電体層102のうち、第1の面状導体101及び第2の面状導体103により上下を挟まれ、ポスト壁102aにより前後左右を囲まれた直方体状の領域が、電磁波を導波する導波領域102bとなる。このポスト壁導波路12は、図示した座標系において、第1の面状導体101及び第2の面状導体がxy面と平行になるように配置される。
【0039】
第1の面状導体101には、開口101aが形成されている。開口101aの位置は、z軸負方向から見て第1の誘電体層102の導波領域102bと重なる位置であり、開口101aの形状は、x軸に平行な辺とy軸に平行な辺とを有する長方形である。第1の誘電体層102の導波領域102bは、この開口101aを介して導波管11の空洞11aと連通している。すなわち、ポスト壁導波路12は、この開口101aを介して導波管11と電磁気的に接続されている。
【0040】
マイクロストリップ線路13は、第2の誘電体層104、並びに、第2の誘電体層104を介して互いに対向する第2の面状導体103及び帯状導体105により構成される。帯状導体105は、図示した座標系において、y軸正方向に向かって伸び、その先端は、z軸正方向から見て第1の誘電体層102の導波領域102bと重なる位置に至る。マイクロストリップ線路13においては、第2の誘電体層104のうち、帯状導体105及び第2の面状導体103により上下を挟まれた直方体状の領域が、電磁波を導波する導波領域104bとなる。
【0041】
第2の面状導体103には、開口103aが形成されている。開口103aの位置は、z軸正方向から見て第1の誘電体層102の導波領域102bと重なる位置であり、開口103aの形状は、x軸に平行な辺とy軸に平行な辺とを有する長方形である。第2の誘電体層104の導波領域104bは、この開口103aを介して第1の誘電体層102の導波領域102bと連通している。すなわち、マイクロストリップ線路13は、この開口103aを介してポスト壁導波路12と電磁気的に接続されている。
【0042】
第2の誘電体層104の内部には、帯状導体105の先端部及び第2の面状導体103により上下を挟まれた領域(すなわち、導波領域104bの先端部)を三方から取り囲むポスト壁104aが形成されている。ポスト壁104aは、柵状に配列された複数の導体ポスト104a1,104a2,…,104aMの集合である。各導体ポスト104ai(i=1,2,…,M)は、その下端が第2の面状導体103に接続された円筒状導体(具体的には、第2の誘電体層104に形成された貫通孔の壁面に形成された導体メッキ)である。また、第2の誘電体層104の上面には、帯状導体105と共に、帯状導体105の先端部を三方から取り囲むC字状導体106が形成されている。ポスト壁104aを構成する各導体ポスト104aiの上端は、このC字状導体106に接続されている。
【0043】
バックショートブロック14は、凹部14aが形成された直方体の導体ブロックであり、帯状導体105の先端部を覆うように第2の誘電体層104の上面に配置されている。凹部14aは、図示した座標系において、y軸負方向及びz軸負方向に開口しており、バックショートブロック14のy軸負方向側の側面からy軸正方向に向かって掘り込まれた直方体状の第1の部分14a1と、第1の部分14a1の先端からx軸正方向及びx軸負方向に向かって掘り込まれた直方体状の第2の部分14a2とからなる。
【0044】
なお、第1の誘電体層102に形成される導体ポスト102aiのうち、第2の誘電体層104に形成される導体ポスト104aiに連なるもの(
図2において導体ポスト102a1として図示)は、第1の誘電体層102及び第2の誘電体層104を貫通し、第1の面状導体101からC字状導体106に至るスルービアとして実現されている(
図2参照)。一方、第1の誘電体層102に形成される導体ポスト102aiのうち、第2の誘電体層104に形成される導体ポスト104aiに連ならないもの(
図2において導体ポスト102a2として図示)は、第1の誘電体層102のみを貫通し、第1の面状導体101から第2の面状導体103に至るブラインドビアとして実現されている(
図2参照)。
【0045】
変換器1においては、以下のようにして、導波管11の導波モードがマイクロストリップ線路13の導波モードに変換される。すなわち、z軸負方向側の端部から導波管11に入力された電磁波は、導波管11の空洞11aをz軸正方向に導波される。導波管11の空洞11aをz軸正方向に導波された電磁波は、第1の面状導体101に形成された開口101aを介して、ポスト壁導波路12に入射する。このようにしてポスト壁導波路12に入射した電磁波は、第1の誘電体層102の導波領域102bをz軸正方向に導波される。第1の誘電体層102の導波領域102bをz軸正方向に導波された電磁波は、第2の面状導体103に形成された開口103aを介してマイクロストリップ線路13に入射する。このようにしてマイクロストリップ線路13に入射した電磁波は、第2の誘電体層104の導波領域104bをy軸負方向に導波される。第2の誘電体層104の導波領域104bをy軸負方向に導波された電磁波は、マイクロストリップ線路13のy軸負方向側の端部から出力される。
【0046】
また、変換器1においては、以下のようにして、マイクロストリップ線路13の導波モードが導波管11の導波モードに変換される。すなわち、y軸負方向側の端部からマイクロストリップ線路13に入力された電磁波は、第2の誘電体層104の導波領域104bをy軸正方向に導波される。第2の誘電体層104の導波領域104bをy軸正方向に導波された電磁波は、第2の面状導体103に形成された開口103aを介してポスト壁導波路12に入射する。このようにしてポスト壁導波路12に入射した電磁波は、第1の誘電体層102の導波領域102bをz軸負方向に導波される。第1の誘電体層102の導波領域102bをz軸負方向に導波された電磁波は、第1の面状導体101に形成された開口101aを介して、導波管11に入射する。このようにして導波管11に入射した電磁波は、導波管11の空洞11aをz軸負方向に導波される。導波管11の空洞11aをz軸負方向に導波された電磁波は、導波管11のz軸負方向側の端部から出力される。
【0047】
ここで、変換器1においては、第2の誘電体層104において帯状導体105の先端部と第2の面状導体103とに挟まれた領域(すなわち、導波領域104bの先端部)がポスト壁104aにより三方を取り囲まれており、更に、第2の誘電体層104においてポスト壁104aにより三方を取り囲まれた領域の上方にバックショートブロック14が配置されている。このため、ポスト壁導波路12を導波された電磁波を効率的にマイクロストリップ線路13に入射させること、及び、マイクロストリップ線路13を導波された電磁波を効率的にポスト壁導波路12に入射させることが可能になる。すなわち、ポスト壁導波路12の導波モードをマイクロストリップ線路13の導波モードに変換する際、及び、マイクロストリップ線路13の導波モードをポスト壁導波路12の導波モードに変換する際に生じ得る損失を小さく抑えることが可能になる。
【0048】
特許文献1〜2に記載の構造と対比したときに本実施形態に係る変換器1において特徴的な点は、導波管11とマイクロストリップ線路13との間にポスト壁導波路12を介在させている点である。これにより、第1の誘電体層102の厚みを変更することによって、マイクロストリップ線路13を構成する帯状導体105の先端から導波管11の入口までの距離を自由に変更することが可能になる。これにより、マイクロストリップ線路13と導波管11との間で生じる反射を抑制することが可能になる。また、第1の誘電体層102の厚みを増しても、金属層の厚みを増したときのように著しく重量が増加したり著しく可撓性が低下したりすることはない。したがって、本実施形態に係る変換器1によれば、著しい重量の増加や著しい可撓性の低下を伴わずに、マイクロストリップ線路13と導波管11との間で生じる反射を抑制することができる。
【0049】
なお、
図1に示す座標系は、以下のように定められたものである。すなわち、(1)帯状導体105の軸方向に平行な軸をy軸とする。y軸の向きは、帯状導体105の根元から先端に向かう向きが正の向きとなるように定める。(2)帯状導体105の厚み方向に平行な軸をz軸とする。z軸の向きは、帯状導体105から第2の面状導体103に向かう向きが負の向きとなるように定める。(3)帯状導体105の幅方向に平行な軸をx軸とする。x軸の向きは、このx軸が上述したy軸及びz軸と共に右手系を構成するように定める。
【0050】
〔実施例1〕
本実施形態に係る変換器1の第1の実施例について、
図3〜
図7を参照して説明する。
【0051】
本実施例に係る変換器1は、60GHz帯(60GHzを中心周波数とする周波数帯域)を動作帯域とするべく、
図1に示す変換器1の各部を以下のごとく構成したものである。
【0052】
導波管11:導波管11として、方形導波管WR−15(EIA規格)を用いた。
【0053】
第1の面状導体101:
図3に示す形状を有する導体(具体的には銅)パターンを第1の誘電体層102の下面に形成し、これを第1の面状導体101として用いた。
【0054】
第1の誘電体層102:第1の誘電体層102として、比誘電率が3、誘電正接が0.003、厚みが500μmである液晶ポリマー基板を用いた。
【0055】
第2の面状導体103:
図4に示す形状を有する導体(具体的には銅)パターンを第2の誘電体層104の下面に形成し、これを第2の面状導体103として用いた。
【0056】
第2の誘電体層104:第2の誘電体層104として、比誘電率が3、誘電正接が0.003、厚みが50μmである液晶ポリマー基板を用いた。
【0057】
帯状導体105及びC字状導体106:
図5に示す形状を有する導体(具体的には銅)パターンを第2の誘電体層104の上面に形成し、これを帯状導体105及びC字状導体106として用いた。
【0058】
導体ポスト102ai及び導体ポスト104ai:第1の誘電体層102及び第2の誘電体層104を含む多層基板に、両層を貫通する直径100μmのスルービアを形成し、これを導体ポスト102a1及び導体ポスト104a1として用いた(
図2参照)。また、第1の誘電体層102及び第2の誘電体層104を含む多層基板に、第1の誘電体層102のみを貫通する直径100μmのブラインドビアを形成し、これを導体ポスト102a2として用いた(
図2参照)。なお、互いに隣接する2つの導体ポスト102ai,102ajの中心軸間の距離、及び、互いに隣接する2つの導体ポスト104ai,104ajの中心軸間の距離は、200μmとした。
【0059】
バックショートブロック14:バックショートブロック14として、
図6に示す形状を有する凹部14aが形成されたアルミブロックを用いた。
【0060】
図7(a)は、本実施例に係る変換器1の反射特性(SパラメータS11の大きさ|S11|の周波数特性)を示すグラフであり、
図7(b)は、本実施例に係る変換器1の透過特性(SパラメータS21の大きさ|S21|の周波数特性)を示すグラフである。
【0061】
図7(a)を参照すると、50GHz以上70GHz以下の全ての周波数において、|S11|が一般的な要求水準である−6dBを下回っていることが分かる。また、
図7(b)を参照すると、50GHz以上70GHz以下の全ての周波数において、|S21|が一般的な要求水準である−3dBを上回っていることが分かる。
【0062】
〔変形例1〕
第1の実施例に係る変換器1の第1の変形例について、
図8及び
図9を参照して説明する。
【0063】
本変形例に係る変換器1は、第1の実施例に係る変換器1において、ポスト壁導波路12を構成する第1の誘電体層102の厚みh1(
図8参照)を変更することにより得られたものである。なお、本変形例において、第2の誘電体層104の厚みh2(
図8参照)は、50μmである。
【0064】
図9(a)は、第1の誘電体層102の厚みh1を、h1=0.04×λ、0.08×λ、0.12×λ、0.16×λ、0.20×λ、0.24×λ、0.28×λ、0.32×λ、0.36×λ、0.40×λとしたときに得られる変換器1の反射特性を示すグラフであり、
図9(b)は、このときに得られる変換器1の透過特性を示すグラフである。また、
図9(c)は、50GHz以上70GHz以下の帯域における|S11|の最悪値(最大値)のh1/λ依存性を示すグラフであり、
図9(d)は、同帯域における|S21|の最悪値(最小値)のh1/λ依存性を示すグラフである。ここで、λは、60GHzに対応する波長であり、λ=60GHz/3.0×10
8[m/秒](光速)=5mmである。
【0065】
図9(c)を参照すると、0.04≦h1/λ≦0.14を満たしていれば、|S11|の最悪値(最大値)を概ね−6dB以下にできることが分かる。また、
図9(d)を参照すると、0.04≦h1/λ≦0.14を満たしていれば、|S21|の最悪値(最小値)を概ね−3dB以上にできることが分かる。すなわち、0.04≦h1/λ≦0.14を満たしていれば、第1の実施例に係る変換器1(h1/λ=0.1)と同様、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現できることが分かる。これは、第1の誘電体層102の厚みh1を0.04≦h1/λ≦0.14としたときに、第1の誘電体層102において多重反射を有効に生じさせることが可能になるためであると考えられる。
【0066】
〔変形例2〕
第1の実施例に係る変換器1の第2の変形例について、
図8及び
図10を参照して説明する。
【0067】
本変形例に係る変換器1は、第1の実施例に係る変換器1において、マイクロストリップ線路13を構成する第2の誘電体層104の厚みh2(
図8参照)を変更することにより得られたものである。なお、本変形例において、第1の誘電体層102の厚みh1(
図8参照)は、500μmである。
【0068】
図10(a)は、第2の誘電体層104の厚みh2を、h2=0.02×h1、0.05×h1、0.15×h1、0.20×h1、0.25×h1、0.30×h1、0.35×h1、0.40×h1としたときに得られる変換器1の反射特性を示すグラフであり、
図10(b)は、このときに得られる変換器1の透過特性を示すグラフである。また、
図10(c)は、50GHz以上70GHz以下の帯域における|S11|の最悪値(最大値)のh2/h1依存性を示すグラフであり、
図10(d)は、同帯域における|S21|の最悪値(最小値)のh2/h1依存性を示すグラフである。
【0069】
図10(c)を参照すると、0.05≦h2/h1≦0.15を満たしていれば、|S11|の最悪値(最大値)を概ね−6dB以下にできることが分かる。また、
図10(d)を参照すると、0.05≦h2/h1≦0.15を満たしていれば、|S21|の最悪値(最小値)を概ね−3dB以上にできることが分かる。すなわち、0.05≦h2/h1≦0.15を満たしていれば、第1の実施例に係る変換器1(h2/h1=0.1)と同様、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現できることが分かる。これは、第2の誘電体層104の厚みh2を0.05≦h2/h1≦0.15としたときに、マイクロストリップ線路13のインピーダンスをポスト壁導波路12のインピーダンスと有効に整合させることが可能になるためであると考えられる。
【0070】
〔変形例3〕
第1の実施例に係る変換器1の第3の変形例について、
図11及び
図12を参照して説明する。
【0071】
本変形例に係る変換器1は、第1の実施例に係る変換器1において、第1の面状導体101に形成された開口101aの辺のうち、帯状導体105に垂直な辺の長さWap0(
図11参照)を変化させることにより得られたものである。なお、本変形例において、開口101aの辺のうち、帯状導体105に平行な辺の長さLap0(
図11参照)は、1300μmである。
【0072】
図12(a)は、開口101aの辺のうち、帯状導体105に垂直な辺の長さWap0を、Wap0=0.77×Lap0、1.15×Lap0、1.92×Lap0、2.31×Lap0、2.69×Lap0としたときに得られる変換器1の反射特性を示すグラフであり、
図12(b)は、このときに得られる変換器1の透過特性を示すグラフである。また、
図12(c)は、50GHz以上70GHz以下の帯域における|S11|の最悪値(最大値)のWap0/Lap0依存性を示すグラフであり、
図12(d)は、同帯域における|S21|の最悪値(最小値)のWap0/Lap0依存性を示すグラフである。
【0073】
図12(c)を参照すると、1.6≦Wap0/Lap0を満たしていれば、|S11|の最悪値(最大値)を概ね−6dB以下にできることが分かる。また、
図12(d)を参照すると、1.6≦Wap0/Lap0を満たしていれば、|S21|の最悪値(最小値)を概ね−3dB以上にできることが分かる。すなわち、1.6≦Wap0/Lap0を満たしていれば、第1の実施例に係る変換器1(Wap0/Lap0=2.0)と同様、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現できることが分かる。
【0074】
〔変形例4〕
第1の実施例に係る変換器1の第4の変形例について、
図13及び
図14を参照して説明する。
【0075】
本変形例に係る変換器1は、第1の実施例に係る変換器1において、第2の面状導体103に形成された開口103aの辺のうち、帯状導体105に垂直な辺の長さWap1(
図13参照)を変化させることにより得られたものである。なお、本変形例において、開口103aの辺のうち、帯状導体105に平行な辺の長さLap1(
図13参照)は、1400μmである。
【0076】
図14(a)は、開口103aの辺のうち、帯状導体105に垂直な辺の長さWap1を、Wap1=0.43×Lap1、0.57×Lap1、0.86×Lap1、1.00×Lap1、1.14×Lap1、1.29×Lap1、1.43×Lap1、1.57×Lap1、1.71×Lap1、1.86×Lap1、2.00×Lap1、2.14×Lap1としたときに得られる変換器1の反射特性を示すグラフであり、
図14(b)は、このときに得られる変換器1の透過特性を示すグラフである。また、
図14(c)は、50GHz以上70GHz以下の帯域における|S11|の最悪値(最大値)のWap1/Lap1依存性を示すグラフであり、
図14(d)は、同帯域における|S21|の最悪値(最小値)のWap1/Lap1依存性を示すグラフである。
【0077】
図14(c)を参照すると、0.95≦Wap1/Lap1≦1.4を満たしていれば、|S11|の最悪値(最大値)を概ね−6dB以下にできることが分かる。また、
図14(d)を参照すると、0.9≦Wap1/Lap1≦1.25を満たしていれば、|S21|の最悪値(最小値)を概ね−3dB以上にできることが分かる。すなわち、0.95≦Wap1/Lap1≦1.25を満たしていれば、第1の実施例に係る変換器1(Wap1/Lap1=1.14)と同様、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現できることが分かる。
【0078】
〔変形例5〕
第1の実施例に係る変換器1の第5の変形例について、
図15及び
図16を参照して説明する。
【0079】
本変形例に係る変換器1は、第1の実施例に係る変換器1において、帯状導体105の基準位置からのオフセットδmsl(
図15参照)を変化させることにより得られたものである。なお、本変形例においては、導波管11の管軸Lを通る位置を、帯状導体105の基準位置とした。
【0080】
図16(a)は、帯状導体105の基準位置からのオフセットδmslを、δmsl=0×Wwg、0.03×Wwg、0.08×Wwg、0.11×Wwg、0.13×Wwg、0.16×Wwg、0.19×Wwg、0.21×Wwgとしたときに得られる変換器1の反射特性を示すグラフであり、
図16(b)は、このときに得られる変換器1の透過特性を示すグラフである。また、
図16(c)は、50GHz以上70GHz以下の帯域における|S11|の最悪値(最大値)のδmsl/Wwg依存性を示すグラフであり、
図16(d)は、同帯域における|S21|の最悪値(最小値)のδmsl/Wwg依存性を示すグラフである。ここで、Wwgは、方形導波管WR−15の内径(帯状導体105の延在方向に垂直な方向の内径)3760mmである。
【0081】
図16(c)を参照すると、0≦δmsl/Wwg≦0.125を満たしていれば、|S11|の最悪値(最大値)を概ね−6dB以下にできることが分かる。また、
図16(d)を参照すると、0≦δmsl/Wwg≦0.12を満たしていれば、|S21|の最悪値(最小値)を概ね−3dB以上にできることが分かる。すなわち、0≦δmsl/Wwg≦0.12を満たしていれば、第1の実施例に係る変換器1(δmsl/Wwg=0)と同様、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現できることが分かる。
【0082】
〔変形例6〕
第1の実施例に係る変換器1の第6の変形例について、
図17及び
図18を参照して説明する。
【0083】
本変形例に係る変換器1は、第1の実施例に係る変換器1において、帯状導体105の幅Wmsl(
図17参照)を変化させることにより得られたものである。
【0084】
図18(a)は、帯状導体105の幅Wmslを、Wmsl=0.02×λ、0.04×λ、0.06×λ、0.08×λ、0.10×λとしたときに得られる変換器1の反射特性を示すグラフであり、
図18(b)は、このときに得られる変換器1の透過特性を示すグラフである。また、
図18(c)は、50GHz以上70GHz以下の帯域における|S11|の最悪値(最大値)のWmsl/λ依存性を示すグラフであり、
図18(d)は、同帯域における|S21|の最悪値(最小値)のWmsl/λ依存性を示すグラフである。ここで、λは、60GHzに対応する波長5mmである。
【0085】
図18(c)を参照すると、0≦Wmsl/λ≦0.04を満たしていれば、|S11|の最悪値(最大値)を概ね−6dB以下にできることが分かる。また、
図18(d)を参照すると、0≦Wmsl/λ≦0.06を満たしていれば、|S21|の最悪値(最小値)を概ね−3dB以上にできることが分かる。すなわち、0≦Wmsl/λ≦0.04を満たしていれば、第1の実施例に係る変換器1(Wmsl/λ=0.02)と同様、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現できることが分かる。
【0086】
〔変形例7〕
第1の実施例に係る変換器1の第7の変形例について、
図19及び
図20を参照して説明する。
【0087】
本変形例に係る変換器1は、第1の実施例に係る変換器1において、バックショートブロック14における第1の部分14a1のy軸方向の長さLbcsh(
図19参照)を変化させることにより得られたものである。なお、本変形例において、バックショートブロック14における第2の部分14a2のx軸方向の長さWbcsh(
図19参照)は、3.86mmである。
【0088】
図20(a)は、第1の部分14a1のy軸方向の長さLbcshを、Lbcsh=0.25×Wbcsh、0.31×Wbcsh、0.41×Wbcsh、0.46×Wbcshとしたときに得られる変換器1の反射特性を示すグラフであり、
図20(b)は、このときに得られる変換器1の透過特性を示すグラフである。また、
図20(c)は、50GHz以上70GHz以下の帯域における|S11|の最悪値(最大値)のLbcsh/Wbcsh依存性を示すグラフであり、
図20(d)は、同帯域における|S21|の最悪値(最小値)のLbcsh/Wbcsh依存性を示すグラフである。
【0089】
図20(c)を参照すると、Lbcsh/Wbcshが図示した範囲の何れの値であっても、|S11|の最悪値(最大値)を概ね−6dB以下にできることが分かる。また、
図20(d)を参照すると、0.275≦Lbcsh/Wbcsh≦0.375又は0.44≦Lbcsh/Wbcshを満たしていれば、|S21|の最悪値(最小値)を概ね−3dB以上にできることが分かる。すなわち、0.275≦Lbcsh/Wbcsh≦0.375又は0.44≦Lbcsh/Wbcshを満たしていれば、第1の実施例に係る変換器1(Lbcsh/Wbcsh=0.36)と同様、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現できることが分かる。
【0090】
〔変形例8〕
第1の実施例に係る変換器1の第8の変形例について、
図21及び
図22を参照して説明する。
【0091】
本変形例に係る変換器1は、第1の実施例に係る変換器1において、バックショートブロック14における第1の部分14a1のx軸方向の幅Wvoid(
図21参照)を変化させることにより得られたものである。なお、本変形例において、バックショートブロック14における第2の部分14a2のx軸方向の長さWbcsh(
図21参照)は、3.86mmである。
【0092】
図22(a)は、第1の部分14a1のx軸方向の幅Wvoidを、Wvoid=0.26×Wbcsh、0.28×Wbcsh、0.31×Wbcsh、0.34×Wbcsh、0.36×Wbcsh、0.39×Wbcsh、0.41×Wbcsh、0.44×Wbcsh、0.47×Wbcshとしたときに得られる変換器1の反射特性を示すグラフであり、
図22(b)は、このときに得られる変換器1の透過特性を示すグラフである。また、
図22(c)は、50GHz以上70GHz以下の帯域における|S11|の最悪値(最大値)のWvoid/Wbcsh依存性を示すグラフであり、
図22(d)は、同帯域における|S21|の最悪値(最小値)のWvoid/Wbcsh依存性を示すグラフである。
【0093】
図22(c)を参照すると、0.32≦Wvoid/Wbcshを満たしていれば、|S11|の最悪値(最大値)を概ね−6dB以下にできることが分かる。また、
図22(d)を参照すると、0.43≦Wvoid/Wbcshを満たしていれば、|S21|の最悪値(最小値)を概ね−3dB以上にできることが分かる。すなわち、0.43≦Wvoid/Wbcshを満たしていれば、第1の実施例に係る変換器1(Wvoid/Wbcsh=0.48)と同様、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現できることが分かる。
【0094】
〔変形例9〕
第1の実施例に係る変換器1の第9の変形例について、
図23及び
図24を参照して説明する。
【0095】
本変形例に係る変換器1は、第1の実施例に係る変換器1において、バックショートブロック14における凹部14aの形状をT字形状(
図23(a)参照)からI字形状(
図23(b)参照)に置き換えたものである。
【0096】
図24(a)は、第1の実施例に係る変換器1の反射特性(図中において破線で示す)、及び、本変形例に係る変換器1の反射特性(図中において実線で示す)を示すグラフであり、
図24(b)は、第1の実施例に係る変換器1の透過特性(図中において破線で示す)、及び、本変形例に係る変換器1の透過特性(図中において実線で示す)を示すグラフである。
【0097】
図24(a)を参照すると、本変形例に係る変換器1においても、|S11|の最悪値(最大値)が−6dB以下になることが分かる。また、
図24(b)を参照すると、本変形例に係る変換器1においても、|S21|の最悪値(最小値)を−3dB以上にできることが分かる。すなわち、本変形例に係る変換器1においても、第1の実施例に係る変換器1と同様、反射特性及び透過特性に優れた変換器を実現できることが分かる。
【0098】
ただし、
図24(a)に示すグラフにおいて、|S11|が−6dB以下になる周波数帯域の帯域幅を比較すると、第1の実施例に係る変換器1の帯域幅の方が本変形例に係る変換器1の帯域幅よりも広い。また、
図24(b)において、|S21|が−3dB以上となる周波数帯域の帯域幅を比較すると、第1の実施例に係る変換器1の帯域幅の方が本変形例に係る変換器1の帯域幅よりも広い。すなわち、バックショートブロック14に形成する凹部14aをT字形状とすることによって、|S11|が設計目標値(具体的には−6dB)以下となる帯域、及び、|S21|が設計目標値(具体的には−3dB)以上となる帯域の帯域幅を拡大し得ることが分かる。
【0099】
〔実施例2〕
本実施形態に係る変換器1の第2の実施例について、
図25〜
図29を参照して説明する。
【0100】
本実施例に係る変換器1は、
図1に示す変換器1の各部を以下のように構成したものであり、60GHz帯を動作帯域とする。以下の説明からも明らかなように、本実施例に係る変換器1は、主に導体ポスト102ai及び導体ポスト104aiの直径が第1の実施例に係る変換器1と相違している。
【0101】
導波管11:導波管11として、方形導波管WR−15(EIA規格)を用いた。
【0102】
第1の面状導体101:
図25に示す形状を有する導体(具体的には銅)パターンを第1の誘電体層102の下面に形成し、これを第1の面状導体101として用いた。
【0103】
第1の誘電体層102:第1の誘電体層102として、誘電率が3、誘電正接が0.003、厚みが500μmである液晶ポリマー基板を用いた。
【0104】
第2の面状導体103:
図26に示す形状を有する導体(具体的には銅)パターンを第2の誘電体層104の下面に形成し、これを第2の面状導体103として用いた。
【0105】
第2の誘電体層104:第2の誘電体層104として、誘電率が3であり、誘電正接が0.003であり、厚さが50μmである液晶ポリマー基板を用いた。
【0106】
帯状導体105及びC字状導体106:
図27に示す形状を有する導体(具体的には銅)パターンを第2の誘電体層104の上面に形成し、これを帯状導体105及びC字状導体106として用いた。
【0107】
導体ポスト102ai及び導体ポスト104ai:第1の誘電体層102及び第2の誘電体層104を含む多層基板に、両層を貫通する直径200μmのスルービアを形成し、これを導体ポスト102a1及び導体ポスト104a1として用いた(
図2参照)。また、第1の誘電体層102及び第2の誘電体層104を含む多層基板に、第1の誘電体層102のみを貫通する直径200μmのブラインドビアを形成し、これを導体ポスト102a2として用いた(
図2参照)。なお、互いに隣接する2つの導体ポスト102ai,102ajの中心軸間の距離、及び、互いに隣接する2つの導体ポスト104ai,104ajの中心軸間の距離は400μmとした。
【0108】
バックショートブロック14:バックショートブロック14として、
図28に示す形状を有する凹部14aが形成されたアルミブロックを用いた。
【0109】
図29は、本実施例に係る変換器1の反射特性(図中において破線で示す)及び透過特性(図中において実線で示す)を示すグラフである。
【0110】
図29を参照すると、50GHz以上68GHz以下の全ての周波数において、|S11|が−6dBを下回っていることが分かる。また、
図29を参照すると、50GHz以上70GHz以下の全ての周波数において、|S21|が−3dBを上回っていることが分かる。
【0111】
〔実施例3〕
本実施形態に係る変換器1の第3の実施例について、
図30を参照して説明する。
【0112】
本実施例に係る変換器1は、マイクロストリップ線路13を構成する帯状導体105にRFIC(Radio Frequency Integral Circuit)等の集積回路16を接続し、バックショートブロック14と一体成形された保護カバー15によって、この集積回路16を覆ったものである。また、ポスト型導波路12の裏面には、ヒートシンク17が付加されている。各部の寸法等については、実施例1、変形例1〜10、及び変形例2の何れに示したものを採用してもよい。
【0113】
本実施例に係る変換器1においては、保護カバー15を設けたことによって、集積回路16の破損を帰結するような他部材の接触を回避することができる。また、ヒートシンクを設けたことによって、集積回路16にて発生した熱を効率よく散逸させることができる。
【0114】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【解決手段】変換器1は、導波管11と、第1の誘電体層102並びに第1の誘電体層102を介して互いに対向する第1の面状導体101及び第2の面状導体103により構成されたポスト壁導波路12と、第2の誘電体層104並びに第2の誘電体層104を介して互いに対向にする第2の面状導体103及び帯状導体105により構成されたマイクロストリップ線路13と、を備えている。