特許第5697804号(P5697804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697804
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】基板上に印刷される作用電極
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/30 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   G01N27/30 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-523343(P2014-523343)
(86)(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公表番号】特表2014-521963(P2014-521963A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】EP2012065293
(87)【国際公開番号】WO2013017697
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2014年4月1日
(31)【優先権主張番号】1102444
(32)【優先日】2011年8月4日
(33)【優先権主張国】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514030768
【氏名又は名称】イージー ライフ サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガリャルド マヌエル アントニオ レイモンド
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−166571(JP,A)
【文献】 特表2006−514300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)、電極(2)、トラック(4)および凹部(3)を備えるデバイスであって、前記基板が第1の面と第2の面の間で第1の厚さであり、前記電極が前記第1の面に印刷され、前記トラックが前記第2の面に印刷され、前記基板が電気的に絶縁され、前記電極が基本的に炭素粒子によって導電性であり、前記トラックが導電性であるとともに銀の粒子を含有するものであって、前記凹部が導電性であるとともに、炭素と銀の二元混合物を、前記二元混合物中に存在する炭素と銀の量の合計で銀の量を割った0から1の区間内に含まれる比率で含むインクで作られ、前記凹部が前記基板内で前記第1の面から前記第2の面まで延び、前記凹部が、前記第1の面に位置する第1の接合部の水平面で前記電極と電気的に接触しており、前記凹部が、前記第2の面に位置する第2の接合部の水平面で前記トラックと電気的に接触しており、電流が前記第1の接合部を通過するときの電流ラインに垂直な前記第1の接合部の水平面における前記凹部中の銀粒子の線密度が、電流が前記第2の接合部を通過するときの電流ラインに垂直な前記第2の接合部の水平面における前記トラック中の銀粒子の線密度よりも低く、
前記凹部が、前記トラックの銀粒子の濃度と基本的に等しい銀粒子の濃度を有し、前記第1の接合部の水平面における、前記第1の面と平行な前記凹部の部分が、前記第2の接合部の水平面における、前記第2の面と平行な前記凹部の部分の面積よりも小さい面積を有することを特徴とするデバイス。
【請求項2】
基板(1)、電極(2)、トラック(4)および凹部(3)を備えるデバイスであって、前記基板が第1の面と第2の面の間で第1の厚さであり、前記電極が前記第1の面に印刷され、前記トラックが前記第2の面に印刷され、前記基板が電気的に絶縁され、前記電極が基本的に炭素粒子によって導電性であり、前記トラックが導電性であるとともに銀の粒子を含有するものであって、前記凹部が導電性であるとともに、炭素と銀の二元混合物を、前記二元混合物中に存在する炭素と銀の量の合計で銀の量を割った0から1の区間内に含まれる比率で含むインクで作られ、前記凹部が前記基板内で前記第1の面から前記第2の面まで延び、前記凹部が、前記第1の面に位置する第1の接合部の水平面で前記電極と電気的に接触しており、前記凹部が、前記第2の面に位置する第2の接合部の水平面で前記トラックと電気的に接触しており、電流が前記第1の接合部を通過するときの電流ラインに垂直な前記第1の接合部の水平面における前記凹部中の銀粒子の線密度が、電流が前記第2の接合部を通過するときの電流ラインに垂直な前記第2の接合部の水平面における前記トラック中の銀粒子の線密度よりも低く、
前記凹部が、基本的に炭素粒子によって導電性であって、前記基板内で、前記第1の面に垂直な第1の軸を中心とする第1の切頭円錐(11)に一致して延び、前記第1の面に平行な前記第1の切頭円錐の部分が、前記第2の面から前記第1の面に向かって縮小する、ことを特徴とするデバイス。
【請求項3】
基板(1)、電極(2)、トラック(4)および凹部(3)を備えるデバイスであって、前記基板が第1の面と第2の面の間で第1の厚さであり、前記電極が前記第1の面に印刷され、前記トラックが前記第2の面に印刷され、前記基板が電気的に絶縁され、前記電極が基本的に炭素粒子によって導電性であり、前記トラックが導電性であるとともに銀の粒子を含有するものであって、前記凹部が導電性であるとともに、炭素と銀の二元混合物を、前記二元混合物中に存在する炭素と銀の量の合計で銀の量を割った0から1の区間内に含まれる比率で含むインクで作られ、前記凹部が前記基板内で前記第1の面から前記第2の面まで延び、前記凹部が、前記第1の面に位置する第1の接合部の水平面で前記電極と電気的に接触しており、前記凹部が、前記第2の面に位置する第2の接合部の水平面で前記トラックと電気的に接触しており、電流が前記第1の接合部を通過するときの電流ラインに垂直な前記第1の接合部の水平面における前記凹部中の銀粒子の線密度が、電流が前記第2の接合部を通過するときの電流ラインに垂直な前記第2の接合部の水平面における前記トラック中の銀粒子の線密度よりも低く、
前記凹部が、基本的に炭素粒子によって導電性であって、前記基板内で、前記第1の面に垂直な第2の軸を中心とする第2の切頭円錐(7)に一致して延び、前記第1の面に平行な前記第2の切頭円錐の部分が、前記第1の面から前記第2の面に向かって縮小する、
ことを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項に記載のデバイスであって、前記凹部が前記基板内で、前記第1の面に垂直な第3の軸を中心とする第3の切頭円錐(15)に一致して延び、前記第1の接合部の水平面における、前記第1の面に平行な前記第3の切頭円錐の部分が、前記第2の接合部の表面よりも小さい表面を有することを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のデバイスであって、前記凹部が前記第2の面に、前記第2の接合部まで印刷された部分を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のデバイスを製作する方法であって、前記基板を前記第1の面から前記第2の面まで貫通する孔を穿設するステップと、前記孔を前記インクで埋めて前記凹部を形成するステップと、前記電極を前記第1の面に前記凹部と電気的に接触させて印刷するステップと、前記トラックを前記第2の面に前記凹部と電気的に接触させて印刷するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
電気化学セルの作用電極としての、請求項1から5のいずれか一つに記載のデバイスの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板上に印刷される電気化学セルの分野に関し、詳細には、このようなセルの作用電極を、ポリマー、炭素および銀の粒子の混合物から作られたインクを使用した印刷技術により、電解液を分析する目的のために製作することに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に印刷される電気化学セルは通常、作用電極、参照電極および対電極の3つの電極を備える。これらの電極のそれぞれは、自動的に動作可能な電気回路に導電トラック(配線)によって接続される。この電気回路により、ある電位差を作用電極と参照電極の間に加えること、および作用電極と対電極を直列に含む電気回路中の電流を測定することが本質的に可能になる。
【0003】
印刷される電気化学セルは通常、ポリエステルシートなどの、80ミクロンから120ミクロンの典型的な厚さを有し、電極が印刷される第1の面、および第2の自由面を備えた、本質的に平坦で薄い基板上に製作される。印刷されるセルは、マトリックスの形で多数製作され、こうすることにより、同一の電解質または異なる電解質をいくつか並行して測定することが、特に保健の分野で可能になる。
【0004】
電解質の電気化学測定値を得るために、基板は水平に置かれ、その第2の自由面が下向きになり、その印刷される第1の面が上向きになる。さらに、孔があけられたカバーが接着または溶接によって第1の面に付けられて、対象とする電解質に対して封止され、電気化学測定に必要なセルの電極がウェル(流路または窪み)の基部を覆うように、孔の基部が基板と位置合わせされる。次にウェルは、通常は液体である電解液で満たされる。最後に各電気化学セルは、それぞれのセルを単独で測定できるようにするマルチプレクサが装着された単一の電気回路によって、順に電力供給される。
【0005】
印刷電気化学セルの開発においてインクはかなり重要であり、完全なセルを製作することを可能にするインクが入手しやすいことが必要不可欠である。揮発性溶剤中に溶解した炭素または銀の粒子の二元混合物を充填したポリマーで作られたインクが、この分野で一般に使用される。インクが表面に印刷された後、溶剤が蒸発し(すなわち、この表面に薄い層が堆積)、ポリマー溶液中の粒子間に浸出が現れ、炭素および銀の粒子の濃度に基づいて電気伝導が観察される。
【0006】
二元混合物が電気化学ポテンシャルの広い範囲で完全に、またはほとんど完全に化学的に不活性である場合、すなわち基本的に炭素粒子で作られている場合、このインクは、良好な品質の作用電極を製作するのに理想的である。実際、化学的に活性な銀が作用電極の、電解液と接触する面に存在すると、酸化還元反応の活性化が生じて、測定信号を中断させ安定性を低下させて精度および有用性を低減させる。その結果、作用電極の性能が著しく劣化する。
【0007】
その一方で、二元混合物が基本的に銀粒子で作られている場合は、その電気抵抗は、炭素粒子の同じ濃度の混合物の電気抵抗と比較して、等しい体積では、それよりもずっと小さい。このような二元混合物は、電流を作用電極の表面から輸送するための導電トラックと、基板を貫通して基板の両面から各導電トラックを接続することができる接点ブロック(塊)とを製作するのに特によく適している。
【0008】
したがって、銀のトラック及びこれに接続された、実現可能な最も細い炭素の作用電極は、理論的に、つまり炭素と銀の粒子の二元混合物からなるインクの種類によっては、セルの電気測定回路中で電気化学電流が遭遇する抵抗を最小限にすることによって、電気化学セル用の最良の構造体になり得る。
【0009】
しかし、実際には、作用電極が基板上にインクを用いて印刷される場合、この構造体では、トラックからの銀粒子による作用電極表面の汚染を含む問題が見られる。実際、印刷による堆積中に溶剤が存在することで、炭素電極とトラックの接合部において、銀濃度の漸次的変化が生じることによる、銀粒子の交換が起こる。同様に、インクのポリマーがクリーピングの影響を受けて、作用電極の表面への銀粒子のマイグレーションが起こる。加えて、印刷された炭素電極は多孔質になることがあり、銀トラックと直接接触した電解質をこの電極が補足する可能性がある。
【0010】
したがって、銀の濃度がトラック中よりも低く電極中よりも高い表面要素(部材)が、トラックからの銀粒子による電極汚染の現象を少なくするために、作用電極の電気回路中に挿入される。したがって、一方の面だけの、すなわち単一面の作用電極の回路は、従来技術では一般に、炭素のインクを用いた作用電極と、銀のインクを用いたトラックと、(表面要素であるところの)銀バッファすなわち銀欠乏凹部またはインクで作られた凹部とから構成される。ここで、インクは炭素と銀の二元混合物であり、混合物中に存在する炭素と銀の量の合計で銀の量を割った比率、すなわち二元混合物中の銀の濃度が、通常は電極の0から、通常はトラック、または基板を横断する銀トラックの通路用の接点ブロックの1まで変化する。
【0011】
したがって、従来技術では、銀の集中がない炭素の電極テール(最後尾)である銀欠乏凹部が、電極の銀粒子を排斥するために使用される。その場合、電極は、実験的に決定された長さの、銀を含有せず、信号外乱を制限する延長部分によって延長される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5672257号明細書
【特許文献2】米国特許第6423193号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/256228号明細書
【特許文献4】仏国特許出願公開第2898133号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、本出願人は、凹部が存在することにより印刷面の乱れが生じ、より重要なことには、ウェルを備える上部カバーと基板とを非平滑面で接合することが必要なことを発見した(印刷、例えばスクリーン印刷では、電極テールは通常、約10ミクロンから15ミクロンを超える)。この一様でない接合面により、長期的に、または繰り返される温度サイクルの間に、ウェルの封止が損なわれることになる。このことは、それでもなお凹部は不可欠であるものの、作用電極が有する電気化学セルでの計測に有害である。
【0014】
したがって、印刷電気化学セルの場合には、銀トラックおよび凹部を自由面に移して電極だけを印刷面、すなわち第1の面に残すことが望ましい。つまり、凹部である非計測要素およびトラックを基板の第2の面に移動させる。このようにして、セルのすべての要素(作用電極、凹部およびトラック)が基板の同一面に印刷される「単一面」技法とは対照的な「両面」技法を用いて印刷される作用電極が得られる。両面技法では、銀トラックを一方の面から他方の面へ移すために、銀ペースト、すなわち基本的に銀粒子から成るインクで作られた接点ブロックが使用される。
【0015】
しかし、両面電気化学セルを印刷するには、これと併せて、ウェルの内径内に炭素の電極テールを保持することが必要である。ウェルの基部は、セルが上部カバーに接合された後に、当該セルにより構成される。このとき、上部カバーと基板の接合面に電極テールがわたらない(及ばない)ようにするために、また銀欠乏凹部として機能するように電極テールの長さを(十分に)保持するために、ウェルの内径内に炭素の電極テールを保持することが必要である。
【0016】
また、電気化学信号を増大させるためには作用電極の表面をその最大とすることが求められるところ、銀欠乏凹部が、この領域で電極の有効表面の一部分を占めると、電気化学信号を低減させることになるので、印刷電気化学セルでの計測の問題になる。
【0017】
したがって、銀欠乏凹部は第2の面に位置していると有利である。
【0018】
その場合、従来技術により、銀トラックを移すことは特別な問題をもたらさないことが知られており、銀接点ブロックが、第1の面上の第1のトラックおよび第2の面上の第2のトラックと電気的に接触して基板をわたり、それによって、この非計測動作(トラックが基本的に電流を搬送する)が容易に実現する。
【0019】
従来技術によりまた、接点ブロックが可能な限り導電性でなければならないことも知られており、したがって、コストの問題に関しては銀が、特に当技術分野では、適した材料であり、または同等の導電性の材料、すなわち金属が適している。
【0020】
従来技術によりまた、化学的に不活性な金属の導電性の、また銀に匹敵するコストの、接点ブロックがない状況では、汚染による問題が予測されるにもかかわらず、銀接点ブロックを電極の直下に配置することが知られている。
【0021】
しかし、この電極の電流を、基板の表面(上部カバーの接合後にウェルの基部として機能する、基板の第1の面)によって形成された当該ウェルの基部において測定するために、銀欠乏凹部を作用電極と直列に電気回路として配置することは、従来技術により知られていない。
【0022】
実際、銀の濃度が高い要素をその表面の保護なしに配置することは、測定部を汚染することになるので不可能である。本出願人は、測定の際に銀の汚染が観察されること、及び、15ミクロンの厚さの印刷電極では効果的な銀(欠乏)凹部を得ることができなくなることから、銀トラックを炭素作用電極の下に配置することは、不可能であることを発見した。同じ理由で、電極の下に銀接点ブロックを有することもまた不可能である。
【0023】
したがって、2つの面を保有する基板上に印刷される炭素作用電極の銀欠乏凹部は、従来技術では基板の第1の面に、かつウェルの外側に保持されなければならないが、この場合には、本出願人が(上記にて)強調した封止問題が生じる。
【0024】
したがって、印刷作用電極の銀汚染の問題により、従来技術では、作用電極として銀欠乏凹部および銀接点ブロックを基板の同一面上で、かつ測定ウェルの外側で使用することが強いられていた。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この文脈において、基板、電極、トラックおよび凹部を備えるデバイスが開示され、この基板は第1の面と第2の面の間で第1の厚さに及び、電極は第1の面に印刷され、トラックは第2の面に印刷され、基板は電気的に絶縁される。電極は基本的に炭素粒子からなる導電性である。トラックは導電性であり、かつ銀の粒子を含有する。凹部は導電性であり、かつ炭素と銀の二元混合物を、この二元混合物中に存在する炭素と銀の量の合計で銀の量を割った0から1の区間内に含まれる比率で含むインクで作られる。凹部は基板内で第1の面から第2の面まで延び、凹部は第1の面に位置する第1の接合部の水平面で電極と電気的に接触しており、凹部は第2の面に位置する第2の接合部の水平面でトラックと電気的に接触しており、電流が第1の接合部を通過するときの電流ラインに垂直な第1の接合部の水平面における凹部中の銀粒子の線密度は、電流が第2の接合部を通過するときの電流ラインに垂直な第2の接合部の水平面におけるトラック中の銀粒子の線密度よりも低い。
【0026】
本開示の変形形態によれば、
− 前記凹部は、基本的に炭素粒子によって導電性である。
− 銀欠乏凹部は、トラックの銀粒子の濃度と基本的に等しい銀粒子の濃度を有し、第1の接合部の水平面における、第1の面と平行な凹部の部分は、第2の接合部の水平面における、第2の面と平行な凹部の部分の面積よりも小さい面積を有する。
− 凹部は基板内で、第1の面に垂直な円柱軸を中心とする円柱に一致して延びる。
− 凹部は基板内で、第1の面に垂直な第1の軸を中心とする第1の切頭円錐(先端を切った円錐)に一致して延び、第1の面に平行な第1の切頭円錐の部分は、第2の面から第1の面に向かって縮小する。
− 凹部は基板内で、第1の面に垂直な第2の軸を中心とする第2の切頭円錐に一致して延び、第1の面に平行な第2の切頭円錐の部分は、第1の面から第2の面に向かって縮小する。
− 凹部は基板内で、第1の面に垂直な第3の軸を中心とする第3の切頭円錐に一致して延び、第1の接合部の水平面における、第1の面に平行な第3の切頭円錐の部分は、第2の接合部の表面よりも小さい表面を有する。
− 凹部は前記第2の面に、第2の接合部まで印刷された部分を含む。
【0027】
本開示はまた、上記のデバイス等を得る方法に関し、この方法は、前記基板を前記第1の面から前記第2の面まで貫通する孔を穿設する段階と、この孔を前記インクで埋めて前記凹部を形成する段階と、前記電極を前記第1の面に凹部と電気的に接触させて印刷する段階と、前記トラックを第2の面に凹部と電気的に接触させて印刷する段階とを含む。
【0028】
本開示はまた、電気化学セルの作用電極としての上記などのデバイスの使用に関する。本開示の諸実施形態を図1から図4を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】炭素のインクで作られた電極が基板面の一方に本開示によって印刷された水平基板と、炭素のインクで作られ基板をわたる円柱形接点ブロックと、銀のインクで作られ他方の面に印刷されたトラックとを垂直面によって表わす断面図であり、接点ブロックが電極およびトラックと電気的に接触している。
図2】炭素のインクで作られた電極が基板面の一方に本開示によって印刷された水平基板と、炭素のインクで作られ基板をわたる切頭円錐形接点ブロックと、銀のインクで作られ他方の面に印刷されたトラックとを垂直面によって表わす断面図であり、接点ブロックが、その最大部分すなわち基部で電極と電気的に接触し、その最小部分すなわち先端でトラックと電気的に接触している。
図3】炭素のインクで作られた電極が基板面の一方に本開示によって印刷された水平基板と、炭素のインクで作られ基板をわたる切頭円錐形接点ブロックと、銀のインクで作られ他方の面に印刷されたトラックとを垂直面によって表わす断面図であり、接点ブロックが、その最小部分すなわち先端で電極と電気的に接触し、その最大部分すなわち基部でトラックと電気的に接触している。
図4】炭素のインクで作られた電極が基板面の一方に本開示によって印刷された水平基板と、銀のインクで作られ基板をわたる切頭円錐形接点ブロックと、銀のインクで作られ他方の面に印刷されたトラックとを垂直面によって表わす断面図であり、接点ブロックが、その最小部分すなわち先端で電極と電気的に接触し、その最大部分すなわち基部でトラックと電気的に接触している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1を参照すると、第1の実施形態によれば、80ミクロンから120ミクロンのポリエステルで作られた第1の基板(1)の上に、炭素の第1のインクを使用して作られた第1の作用電極(2)が、直径が5mmの第1の本質的に円形の表面を有する第1の基板の第1の面に印刷される。第1の電極は、直径が2mmの第1の円の形に印刷され、厚さが10から15ミクロンである。第1の円筒形孔が基板をわたる(貫通する)とともに、第1の電極で覆われ、さらにこの孔は第1のインクで埋められて、第1の円柱形作用接点ブロック(3)を形成する。最後に、第1のトラック(4)が、第2の銀の導電インクを使用して第1の基板の第2の面に印刷される。第1の作用接点ブロックと接触しているこの第1のトラックの一部分は、前記第1の炭素のインクを用いて印刷してもよい。このようにすることで、第1のトラックに含まれる銀の粒子を有する凹部からの距離と、第1の電極からの距離とを増すことができる。この第1の方法では、第1の電極の第1のインクを用いて印刷が行われ、次に基板が戻され(反転され)、第1の接点ブロックが前記第1のインクを用いて第1の孔の中に印刷される。最後に、第1の銀のトラックが第1の基板の第2の面に印刷される。
【0031】
図2を参照すると、第2の実施形態によれば、80ミクロンから120ミクロンのポリエステルで作られた第2の基板(5)の上に、直径が2mm、厚さが10から15ミクロンの第2の円内の炭素のインクの層または炭素の層である第2の作用電極(6)が、直径が5mmの第2の本質的に円形の表面を有する第2の基板の第1の面に印刷される。第2の切頭円錐形の孔が基板をわたる(貫通する)とともに、第2の作用電極で覆われる。この切頭円錐形の孔は、前記炭素の第1のインクを用いて印刷することによって埋められて、第2の切頭円錐形の作用接点ブロック(7)が形成される。作用接点ブロック(7)の第2の先端(典型的には、直径が10ミクロンの円形の表面)は、第2の基板の第2の面と接触し、作用接点ブロック(7)の第2の基部(典型的には、直径が100から150ミクロンの円形の表面)は、第2の基板の第1の面と接触する。最後に、第2のトラック(8)が、前記第2の銀のインクを使用して第2の基板の第2の面に印刷される。第2の作用接点ブロックと接触しているこの第2のトラックの一部分は、前記第1の炭素のインクを用いて印刷してもよい。このようにすることで、第2のトラックに含まれる銀の粒子と第2の電極との間の凹部の間隔を増すことができる。この第2の方法では、本開示の諸実施形態を第1の方法の3回ではなく2回の印刷で実現することができる。実際、第2の電極および第2の孔を、前記第1のインクを用いて単一のステップで第2の基板の第1の面から印刷することが可能であり、第2の切頭円錐形の孔の先端が小さく、第2の面での第1のインクの放出が防止される。次いで第2の銀トラックを、第2の切頭円錐形の接点ブロックの先端と電気的に接触させて印刷することが可能である。第2の接点ブロックの第1の炭素のインクの合成物と、第2の円錐の先端によって第2のトラックの表面に形成された第2の隘路とが合わさって、前記第1の方法と比較して改善した凹部と、第1の方法と比較してだけでなく、円柱形で、基部が変えられず、銀のインクで作られ、かつ銀欠乏凹部を構成しない第2の接点ブロックと比較してもより良好な品質の電気化学信号とが得られる。
【0032】
図3を参照すると、第3の実施形態によれば、80ミクロンから120ミクロンのポリエステルで作られた第3の基板(9)の上に、直径が2mm、厚さが10から15ミクロンの第3の円内の炭素のインクの層または炭素の層である第3の作用電極(10)が、直径が5mmの第3の本質的に円形の表面を有する第3の基板の第1の面に印刷される。第3の切頭円錐形の孔が第3の基板をわたる(貫通する)とともに、第3の作用電極で覆われる。この第3の切頭円錐形の孔は、前記炭素の第1のインクを用いて印刷することによって埋められて、第3の切頭円錐形の作用接点ブロック(11)が形成される。作用接点ブロック(11)の第3の先端(典型的には、直径が10ミクロンの円形の表面)は、第3の基板の第1の面と接触し、作用接点ブロック(11)の第3の基部(典型的には、直径が100から150ミクロンの円形の表面)は、第3の基板の第2の面と接触する。最後に、第3のトラック(12)が、前記第2の銀のインクを使用して第3の基板の第2の面に印刷される。第3の作用接点ブロックと接触しているこの第2のトラックの一部分は、前記第1の炭素のインクを用いて印刷してもよい。このようにすることで、第3のトラックに含まれる銀の粒子と第3の電極との間の凹部からの距離を増すことができる。この第3の方法では、本開示の諸実施形態を3回の印刷で実現することができる。実際、第2の電極を、前記第1のインクを用いて第3の基板の第1の面に、第3の基板の第1の面から印刷することが可能であり、このとき、第3の切頭円錐形の孔の先端が小さく、第3の孔への第1のインクの放出が防止される。次いで第3の基板を戻して(反転させて)、第3の基板の第2の面に第3の炭素接点ブロックのインクを印刷する。また最後に、第3の基板の第2の面に、第3の切頭円錐形の接点ブロックの基部と電気的に接触する第3の銀トラックを印刷する。第3の接点ブロックの第1の炭素のインクの合成物と、第3の円錐の先端によって第3の電極の第1の面に形成された第3の隘路とが合わさって、前記第1の方法と比較して改善した凹部と、第1の方法と比較してだけでなく、円柱形であり、基部が変えられず、かつ銀のインクで作られる第3の接点ブロックと比較してもより良好な品質の電気化学信号が得られる。これは、本開示の諸実施形態を実現するのに最良の方法である。
【0033】
図4を参照すると、第4の実施形態によれば、80ミクロンから120ミクロンのポリエステルで作られた第4の基板(13)の上に、直径が2mm、厚さが10から15ミクロンの第4の円内の炭素のインクの層または炭素の層である第4の作用電極(14)が、直径が5mmの第4の本質的に円形の表面を有する第4の基板の第1の面に印刷される。第4の切頭円錐形の孔が第4の基板をわたる(貫通する)とともに、第4の作用電極(14)で覆われる。この第4の切頭円錐形の孔は、銀のインクを用いて印刷することによって埋められて、第4の切頭円錐形の作用接点ブロック(15)が形成される。作用接点ブロック(15)の第3の先端(典型的には、直径が10ミクロンの第4の円形の表面)は、第4の電極と接触する基板の第1の面と接触し、作用接点ブロック(15)の基部(典型的には、直径が100から150ミクロンの第4の円形の表面)は、第4の基板の第2の面と接触する。最後に、第4のトラック(16)が、前記第2の銀の導電インクを使用して第4の基板の第2の面に、第4の接点ブロックと電気的に接触して印刷される。銀粒子の凹部、または銀の凹部の効果は、第4の接点ブロックの先端の第4の表面によって得られる隘路の効果のみによって得られ、この第4の表面は、効果がさらに改善されるように第4の接点ブロックの基部の表面よりも小さくなっている(第4の基板に垂直であるトラックの部分よりも小さくなっている)。この第4の方法では、炭素粒子が充填された第1のインクを使用する、第4の基板の第1の面への第4の作用電極の第1の印刷によって本開示のデバイスを製作する。また、第4の基板を裏返し、前記第2の銀のインクを用いて、第4の作用接点ブロックを第4の電極と電気的に接触させる。また第4のトラックを第2の表面上の第4の接点ブロックと電気的に接触して、印刷することが可能である。したがって、印刷は2つの作業で実施することができる。このモードでは、第4の切頭円錐形の接点ブロックの先端は、円柱形になり基部が変わらないままである第4の接点ブロックと比較した場合、第4の作用接点ブロックと第4の作用電極の間(隘路を形成する)の銀粒子の電位伝達を低効率に制限することを可能にする。この第4の方法は、本開示の中ではやや劣った方法であるが、凹部の効果は、本開示によるデバイスを作動電極として使用する完成した電気化学セルの信号対雑音比に関して有効に存在する。
【0034】
この適用例に関して、本開示で提示された情報から逸脱することなく、以下が可能であることをすべての場合について理解されたい。
−基板のポリエステルを、炭素と銀の二元混合物であるインクを用いてその上に印刷できる他の材料と交換すること。
−スクリーン印刷技法を、炭素と銀の二元混合物であるインクと適合する、特に、パッドすなわちインクパッド、またはインクの発射すなわち射出を含む方法を利用するインクと適合する、別の印刷技法と交換すること。
−基板の両面に行うことができる印刷方法を使用することによって、基板を戻さず(反転させずに)に印刷すること。
−トラックの要素、または前記第1のインクで作られた可変長の接点ブロックの延長部分を、前記第1のインクで作られた接点ブロックと前記第2のインクで作られたトラックとの間に挿入すること、または前記第2のインクもしくはトラックよりも銀の濃度が低いインクで作られている各接点ブロックに同じこと(隘路を生じさせること)をすること。
−炭素と銀の二元混合物である銀の第2のインクを、それを選択することにより本開示のデバイスが、対電極および参照電極を備える印刷電気化学セルの作用電極として、または印刷電気化学セル、ウェルおよび電解質を含む完成電気化学セルの作用電極として使用可能になる場合に、使用すること。
−第2のインクの銀濃度に適合した、孔および切頭円錐形の接点ブロックの勾配を選択すること(先端表面は、前記第2のインクの銀濃度が増加するときに、接点ブロックに対して縮小する)。この目的を達成するために、当業者は、勾配が異なる孔を様々な穿孔機を使用して作り、いくつかの完成電気化学セルの信号比を並行して評価することが可能である。切頭円錐形を有する接点ブロックまたは孔の先端の電気化学適用例に適合したサイズを決定するために、使用する電解質は同じであるがサイズの異なる孔または接点ブロック先端を使用してもよい。また、基板が2つの面で印刷された場合に改善される信号対雑音比を得るために、当業者は、課されたサイズの、かつ基板の第1の面に位置する場合に所与の長さの凹部を備えた、銀トラックから開始して、切頭円錐形を有する孔または接点ブロックの先端のいくつかの寸法を検査することができる。
−選択したインクに対し最良の特性の信号対雑音比を与える銀欠乏凹部を生成するために、第1のインクと第2のインクの中間の、課された銀の濃度を有する第3のインクから、切頭円錐形の接点ブロックの基部および銀トラックの部分に合わせた先端を有する切頭円錐形の接点ブロックが得られるように、前の方法を適合させること。
−ウェルまたは作用電極の直径を変えること。
−円筒形孔を得るための様々な直径のドリルビットを使用して、または切頭円錐形の孔を得るための様々な種類の穿孔機を用いて、孔を生成すること。
−回転軸の周りで母線が直線部分と等しくない、切頭円錐形の部分を生成すること。
−銀トラックから電極への銀粒子の線密度を低減すること。ある導電体中の粒子の線密度とは、前記粒子の体積密度と、電流が導体中を通るときの電流ラインに垂直なトラックの断面との積である。本開示の概括的な方法は、実際のところ、トラックまたは接点ブロック(すなわち銀を含有する導体)によって電極まで運ばれる銀粒子の線密度を、電極側において低減する方法として見ることができる。実際、接点ブロックが銀で作られている場合、線密度を低減するために、凹部は、接点ブロックから電極に至るまでの水平面(断面)が徐々に縮小するように据え付けられる。接点ブロックが炭素で作られている場合は、銀の体積密度が本開示の諸実施形態によって無にされて、トラックと電極の間の線密度が低減する。
【0035】
本願のすべてにおいて、1つの要素を印刷し、次にもう1つを印刷する場合、これら2つの要素は、電極、接点ブロック(「ビア」とも呼ばれる)およびトラックを含む電気回路を生成することが意図された印刷が完成すると、電気的に接触することを理解されたい。
【0036】
用語の「銀欠乏凹部」は、銀粒子の供給源から遠ざかるための手段、または導体によって、特にトラックまたは接点ブロックタイプの導体によって銀粒子の通過を低減するための手段と理解されてよいこともまた理解されたい。
【0037】
本願のすべてにおいて、銀および炭素の粒子の二元混合物で作られたインクは、炭素を含むインク、銀を含むインク、または無でない濃度の銀および無でない濃度の炭素を含むインクのいずれでもよいこともまた理解されたい。本願の目的では、導電性で、かつ銀および炭素の粒子の二元混合物で作られたインクは、銀および/または炭素の粒子によって導電性であるインクの同義語と理解されてよい。
【0038】
こうして、本開示のすべての方法において、作用電極を含む第1の電気回路は基板上に印刷される。対電極を含む第2の電気回路、および参照電極を含む第3の電気回路は、導電インクを用いる同じ印刷技法を使用して印刷することができる。しかし、銀粒子汚染は、通常は銀である参照電極、および対電極では危険性が非常に小さい。対電極および参照電極には、従来技術で知られている、銀欠乏凹部を用いない技法が使用されてよい。
【0039】
上記の3つの電気回路が合わさって、単一の基板上に印刷される場合、印刷電気化学セルが形成される。この印刷技法は、いくつかの印刷電気化学セルを並列に印刷することによって複製するのに適しやすいので、印刷電気化学セルのマトリックスを得るのに、上述したものなどのいくつかのセルを、本開示に従って基板上に並列に印刷することができる。次に、この基板は、開放ウェルにより孔があけられた板と接合され(開放ウェルは、前記板をわたる孔である)、その結果、各印刷電気化学セルは、各開放ウェルの底部を構成し、各ウェルを一方の面において塞ぐことになる。ウェルは次に、底部よりも高いままのウェルの開口と共に配列され、電解質で埋められて、セルを1つずつ動作させることを可能にする電気的多重化の手段との組み合わせで、完成電気化学セルとして使用することができる。
【0040】
したがって、本開示の諸実施形態には、電気化学分野での産業用途があると考えられる。
図1
図2
図3
図4