(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接合面側の前記表面領域における前記気孔の平均密度と、前記基板の厚さ方向の中心線が通る領域における前記気孔の平均密度との比率が、1:2〜1:40であることを特徴とする、請求項1または2記載のハンドル基板。
前記ハンドル基板の接合面の微視的な中心線平均表面粗さRaが3.0nm以下であり、波長650nmの光の直線透過率が60%以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載のハンドル基板。
請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載のハンドル基板、および前記ハンドル基板の前記接合面に対して直接または接合領域を介して接合されているドナー基板を有することを特徴とする、半導体用複合基板。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明を更に説明する。
(ハンドル基板)
本発明のハンドル基板は、透光性セラミックからなる。これは、特に限定されないが、好ましくは、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン及び窒化ガリウムからなる群から選択される。
【0016】
ハンドル基板の材質は、透光性アルミナ焼結体が特に好適に用いられる。これは非常に緻密な焼結体が得られる為に、ハンドル基板の割れやクラックが発生しにくい。
【0017】
透光性アルミナ焼結体を製造する際には、好ましくは純度99.9%以上(好ましくは99.95%以上)の高純度アルミナ粉末に対して、100ppm以上、1000ppm以下の酸化マグネシウム粉末を添加する。このような高純度アルミナ粉末としては、大明化学工業株式会社製の高純度アルミナ粉体を例示できる。また、この酸化マグネシウム粉末の純度は99.9%以上が好ましく、平均粒径は0.6μm以下が好ましい。
【0018】
図1(a)、
図2(a)は、本発明の実施形態に係るハンドル基板1を示すものであり、
図2(b)は、他の実施形態に係るハンドル基板1Aを示すものである。
【0019】
ハンドル基板1、1Aの接合面1a側の表面領域2Aに含まれる大きさ0.5〜3.0μmの気孔の平均密度が50個/mm
2以下である。これによって、加工後のハンドル基板の接合面1aのRaを3.0nm以下とし、ドナー基板との接合を強化することが可能である。この観点からは、接合面1a側の表面領域2Aに含まれる大きさ0.5〜3.0μmの気孔の平均密度が20個/mm
2以下であることが更に好ましく、10個以下であることが更に好ましい。この下限は特になく、0個/mm
2であってもよい。
【0020】
ハンドル基板1、1Aの底面1b側の表面領域2Bに含まれる大きさ0.5〜3.0μmの気孔の平均密度は、50個/mm
2以下である必要はない。ただし、この気孔が多くなり過ぎると、汚染や脱粒が生じやすくなるので、ハンドル基板1、1Aの底面1b側の表面領域2Bに含まれる大きさ0.5〜3.0μmの気孔の平均密度は、100個/mm
2以下であることが好ましく、50個/mm
2以下であることが更に好ましい。
【0021】
また、ハンドル基板1中には、大きさ0.5〜3.0μmの気孔の平均密度が100個/mm
2以上の領域3が形成されている。領域3は、
図2(b)に示すように、表面領域2A、2B以外の全体に広がっていて良い。あるいは、
図1(a)に示すように、領域3は、表面領域2A、2Bを除く領域の一部のみを占めていても良い。
【0022】
ハンドル基板1中に、大きさ0.5〜3.0μmの気孔の平均密度が100個/mm
2以上の領域3を形成することによって、光学センサーなどでハンドル基板を容易に検出可能になる。この領域における気孔の平均密度の上限は特にないが、気孔が多過ぎると強度低下や脱粒の原因となる傾向がある。こうした観点からは、平均密度が1000個/mm
2以下であることが好ましく、400個/mm
2以下であることが更に好ましい。
【0023】
また、領域3と表面領域2Aとの間には、大きさ0.5〜3.0μmの気孔の平均密度が100個/mm
2未満である領域7Aが設けられていて良い。この場合、領域7Aの気孔の前記平均密度の下限は特にない。また、領域7Aにおいて、気孔の前記平均密度が50個/mm
2以下の領域と、50個/mm
2を超える領域とが混在していてもよい。
【0024】
また、領域3と表面領域2Bとの間には、大きさ0.5〜3.0μmの気孔の平均密度が100個/mm
2未満である領域7Bが設けられていて良い。この場合、領域7Bの気孔の前記平均密度の下限は特にない。また、領域7Bにおいて、気孔の前記平均密度が50個/mm
2以下の領域と、50個/mm
2を超える領域とが混在していてもよい。
【0025】
また、本発明の観点からは、接合面側の表面領域における気孔の平均密度をNcとし、基板の厚さ方向の中心線Lが通る領域における気孔の平均密度Nsとしたとき、比率(Nc:Ns)は、1:2〜1:40であることが好ましい。比率が小さいと所望の効果が得られないし、大きすぎると焼結の際、偏った応力が発生し、クラックを引き起こすためである。この観点より、比率(Nc:Ns)は、1:8〜1:40が更に好ましく、1:12〜1:40が更に好ましい。
【0026】
本発明においては、以下のようにして気孔の前記平均密度を決定する。
すなわち、ハンドル基板の断面(接合面に対して垂直な断面)を鏡面研磨、サーマルエッチングし、結晶粒界を際立たせた後、光学顕微鏡写真(200倍)を撮影する。そして、ハンドル基板の厚さ方向(接合面に垂直な方向)に0.1mm、接合面に水平な方向に1.0mmの層状の視野を設定する。この視野を
図4、5、6に例示する。そして、各視野について、大きさ0.5〜3.0μmの気孔の数を数える。得られた気孔数を単位mm
2当たりの気孔数に換算し、平均密度とする。
【0027】
例えば、
図4の実施例1では、接合層側(上側)の表面領域の視野では気孔数が1であり、厚さ方向に見た中心線を通る領域の視野では気孔数が12であり、底面側の表面領域の視野では気孔数が1である。気孔の平均密度は、それぞれ、10個/mm
2、120個/mm
2、10個/mm
2となる。
【0028】
同様に、
図5の実施例2では、接合層側(上側)の表面領域の視野では気孔数が5であり、厚さ方向に見た中心線を通る領域の視野では気孔数が17であり、底面側の表面領域の視野では気孔数が4である。気孔の平均密度は、それぞれ、50個/mm
2、170個/mm
2、40個/mm
2となる。
【0029】
図6の実施例3では、接合層側(上側)の表面領域の視野では気孔数が2であり、厚さ方向に見た中心線を通る領域の視野では気孔数が15であり、底面側の表面領域の視野では気孔数が16である。気孔の平均密度は、それぞれ、20個/mm
2、150個/mm
2、160個/mm
2となる。
【0030】
また、本発明において前記の気孔の平均密度を算定する際には、ハンドル基板を、接合面から底面へと向かって、層状の領域に分割する。各領域の厚さはそれぞれ0.1mmとする。そして、各領域内に上述のような厚さ0.1mm×長さ1.0mmの測定視野を設定するのである。
【0031】
そして、大きさ0.5〜3.0μmの気孔の平均密度が100個/mm
2以上である領域3は、厚さ0.1mmの単一層を含むが、厚さ0.1mm以上の領域を複数(たとえば2領域、3領域など)含んでいることが、本発明の観点からはより好ましい。
【0032】
ここで、大きさ0.5μm未満の気孔を除外するのは、視野に比べて細か過ぎるために計数が難しく、また精密研磨時の表面状態への影響が小さいからである。また、大きさ3.0μmを超える気孔を除外したのは、気孔が粗大過ぎるため、単なる凹みとなるためであり、またハンドル基板に使用する緻密なセラミックスでは通常このサイズの気孔が見られないためである。断面を鏡面研磨する際、脱粒等が発生し気孔との区別がつきにくい場合、断面加工にFIB(Focused Ion Beam)加工を用いることでこれらの影響を排除することができる。
【0033】
また、気孔の大きさは以下のようにして決定する。すなわち、ハンドル基板の前記断面写真において、接合面に水平な直線を引き、気孔を横断させる。このとき複数の直線を引くことができるが、気孔上を通過する直線の最大長さを気孔の大きさとする。
【0034】
本発明においては、接合面の微視的な中心線平均表面粗さRaが3.0nm以下であり、これによってドナー基板への接合力を高めることができる。この観点からは、接合面の微視的な中心線平均表面粗さRaが1.0nm以下であることが更に好ましい。
【0035】
なお、これは、表面に表れる各結晶粒子の露出面についてAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)によって撮像し、JIS B0601に従い算出する数値のことである。各結晶粒表面の面粗さを微視的に観察する場合には、原子間力顕微鏡による10um視野範囲での表面形状観察が用いられる。
【0036】
好適な実施形態においては、透光性セラミックの平均粒径が5〜60μm、好ましくは15μm〜55μmである。平均粒径が小さいと研磨時に脱粒が置き易く、面粗さが悪くなる。また大きいと焼結の際のマイクロクラックが発生し、面粗さが悪くなる。平均粒径を上記の範囲に設定することによって微視的な中心線平均表面粗さRaを小さくして、分子間力によるドナー基板の接合強度を良好にし易い。
【0037】
なお、結晶粒子の平均粒径は以下のようにして測定するものである。
(1) 焼結体の断面を鏡面研磨、サーマルエッチングして粒界を際立たせた後、顕微鏡写真(100〜200倍)を撮影し、単位長さの直線が横切る粒子の数を数える。これを異なる3箇所について実施する。なお、単位長さは500μm〜1000μmの範囲とする。
(2) 実施した3箇所の粒子の個数の平均をとる。
(3) 下記の式により、平均粒径を算出する。
[算出式]
D=(4/π)×(L/n)
[D:平均粒径、L:直線の単位長さ、n:3箇所の粒子の個数の平均]
平均粒径の算出例を
図3に示す。異なる3箇所の位置において、それぞれ単位長さ(例えば500μm)の直線が横切る粒子の個数が22、23、19としたとき、平均粒径Dは、上記算出式により、
D=(4/π)×[500/{(22+23+19)/3}]=29.9μm
となる。
【0038】
本発明の観点からは、ハンドル基板の波長650nmの光の直線透過率が60%以下であることが好ましい。
【0039】
また、ハンドル基板の大きさ、厚さは、特に限定されないが、通常のSEMI/JEITA規格近傍のものがハンドリングの関係から扱いやすい。また、ハンドル基板の厚さは、0.3mm以上が好ましく、1.5mm以下が好ましい。
【0040】
ハンドル基板を構成する多結晶セラミックの相対密度は、半導体の後処理に対する耐久性および汚染防止の観点から、98%以上とすることが好ましく、99%以上とすることが更に好ましい。
【0041】
(ハンドル基板の製造)
原料粉末の平均粒径(一次粒子径)は特に限定されないが、低温焼結での緻密化という観点からは、0.6μm以下が好ましく、0.4μm以下が更に好ましい。一領域好ましくは、原料粉末の平均粒子径は0.3μm以下である。この平均粒径の下限は特に限定されない。原料粉末の平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)による原料粉末の直接観察によって決定できる。
なお、ここでいう平均粒径とはSEM写真(倍率:X30000。任意の2視野)上における2次凝集粒子を除く1次粒子の(最長軸長+最短軸長)/2の値のn=500平均値のことである。
【0042】
ハンドル基板の成形方法は特に限定されず、ドクターブレード法、押し出し法、ゲルキャスト法など任意の方法であってよい。特に好ましくは、基板を、以下のようなドクターブレード法を用いて製造する。
(1) セラミック粉体とともに、結合剤となるポリビニルブチラール樹脂(PVB樹脂)、または、アクリル樹脂を、可塑剤、分散剤と共に分散媒中に分散してスラリーを調製し、ドクターブレード法にて、テープ状に成形した後、分散媒を乾燥させてスラリーを固化させる。
(2) 得られたテープを複数枚積み重ね、プレス積層またはCIP積層することで所望の厚みの基板形状の成形体を得る。
【0043】
本発明のハンドル基板を得るには、焼結温度は、焼結体の緻密化という観点から、1700〜1900℃が好ましく、1750〜1850℃が更に好ましい。
【0044】
また、焼成時に十分に緻密な焼結体を生成させた後に、更に追加でアニール処理を実施することが好ましい。このアニール温度は、本発明のように表面領域の気孔を選択的に減らすために、焼成時の最高温度+50℃〜最高温度−50℃とすることが好ましく、焼成時の最高温度〜最高温度+50℃とすることが更に好ましい。また、アニール時間は、1〜6時間であることが好ましい。
【0045】
また、上記焼成の際は、モリブデン等の高融点金属からなる平坦な板の上に基板を置くが、その際、基板の上側には5〜10mmの隙間を空けることが焼結助剤の排出を促し、粒成長を置き易くするとの観点より好ましい。粒成長に伴う粒界移動で気孔の排出を進めることができるためである。一方で焼結助剤の排出が進みすぎると異常粒成長が置き易く、クラックの原因となるため、アニールの際は基板の上にモリブデン等の板を載せ、基板を上下から挟み込む形で行うことが更に好ましい。
【0046】
上記のように成形、焼結を行い、セラミック焼結体からなるブランク基板を得る。
【0047】
また、焼結助剤の多いセラミック成形体と焼結助剤の少ないセラミック成形体とを一体化してから焼結することによって、表面領域の気孔数が低減されたブランク基板を得ることも可能である。このような作製方法を採用することで、各層の気孔率をコントロールし易くなるため、Nc:Nsの比率を大きくすることができる。
【0048】
焼結体は、多数の微細なセラミック粒子が結着された微構造を有する。ブランク基板の表面を精密研磨加工することによって、各結晶粒子が平面に沿って削られ、それぞれ平坦面を有する、研磨された結晶粒子が表面に露出することになる。この研磨された結晶粒子の表面は平滑となっている。
【0049】
ブランク基板を精密研磨加工することによって、各結晶粒子の表面の微視的な中心線平均表面粗さRaを小さくする。こうした研磨加工としては、CMP(Chemical Mechanical Polishing)加工が一般的であり。これに使われる研磨スラリーとして、アルカリまたは中性の溶液に30nm〜200nmの粒径を持つ砥粒を分散させたものが使われる。砥粒材質としては、シリカ、アルミナ、ダイヤ、ジルコニア、セリアを例示でき、これらを単独または組み合わせて使用する。また、研磨パッドには、硬質ウレタンパッド、不織布パッド、スエードパッドを例示できる。
【0050】
また、最終的な精密研磨加工を実施する前の粗研磨加工を実施した後にアニール処理を行うことが望ましい。アニール処理の雰囲気ガスは大気、水素、窒素、アルゴン、真空を例示できる。アニール温度は1200〜1600℃、アニール時間は2〜12時間であることが好ましい。これにより、表面の平滑を損ねることなく、焼結助剤の排出を促進することができる。
【0051】
ハンドル基板が透光性アルミナからなる場合には、ハンドル基板を製造する際の原料中への酸化マグネシウムの添加量を100ppm以上とすることによって、ハンドル基板の緻密化を促進し、その接合面近傍のクラックや気孔等によるドナー基板の接合強度低下を抑制できる。この観点からは、酸化マグネシウムの添加量を150ppm以上とすることが好ましい。また、酸化マグネシウムの添加量を1000ppm以下とすることによって、ハンドル基板からドナー基板へのマグネシウムの拡散を抑制しやすくなる。
【0052】
(半導体用複合基板)
本発明の複合基板は、プロジェクター用発光素子、高周波デバイス、高性能レーザー、パワーデバイス、ロジックICなどに利用できる。
【0053】
複合基板は、本発明のハンドル基板と、ドナー基板とを含む。
ドナー基板の材質は、特に限定されないが、好ましくは、シリコン、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、酸化亜鉛及びダイアモンドからなる群から選択される。ドナー基板の厚さは、特に限定されないが、通常のSEMI/JEITA規格近傍のものがハンドリングの関係から扱いやすい。
【0054】
ドナー基板は、上述の材質を有し、表面に酸化膜を有していてもよい。酸化膜を通してイオン注入を行えば、注入イオンのチャネリングを抑制する効果が得られるからである。酸化膜は、好ましくは50〜500nmの厚さを有する。酸化膜を有するドナー基板もドナー基板に含まれ、特に区別しない限り、ドナー基板と称する。
【0055】
例えば
図1(b)の複合基板6においては、ハンドル基板1を得た後、ハンドル基板1の接合面1a上に接合領域4を介してドナー基板5が接合されている。
図1(c)の複合基板6Aにおいては、ハンドル基板1の接合面1a上にドナー基板5が直接接合されている。これらの場合、ハンドル基板1の接合面1aが微視的に見て平滑であることから、ドナー基板との接合強度を高くすることができる。
【0056】
(接合形態)
接合に用いられる技術としては、特に限定される訳ではないが、例えば表面活性化による直接接合や、接着領域を用いた基板接合技術が用いられる。
【0057】
直接接合には界面活性化による低温接合技術が好適に用いられる。10
−6Pa程度の真空状態にてArガスによる表面活性化を実施後、常温にてSi等の単結晶材料がSiO
2等の接着領域を介して多結晶材料と接合されることができる。
【0058】
接着領域の例としては、樹脂による接着の他に、SiO
2、Al
2O
3、SiNが用いられる。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
本発明の効果を確認するために、透光性アルミナ焼結体を用いたハンドル基板1を試作した。
まず、透光性アルミナ焼結体製のブランク基板を作成した。具体的には、以下の成分を混合したスラリーを調製した。
【0060】
(原料粉末)
・比表面積3.5〜4.5m
2/g、平均一次粒子径0.35〜0.45μmのα−アルミナ粉末 100重量部
・MgO(マグネシア) 0.025重量部
・ZrO
2(ジルコニア) 0.040重量部
・Y
2O
3(イットリア) 0.0015重量部
(分散媒)
・2-エチルヘキサノール 45重量部
(結合剤)
・PVB樹脂 4重量部
(分散剤)
・高分子界面活性剤 3重量部
(可塑剤)
・DOP 0.1重量部
【0061】
このスラリーを、ドクターブレード法を用いて焼成後の厚さに換算して0.25mmとなるようテープ状に成形した。これを4層重ねプレス積層し、焼成後の厚さが1mmとなる基板状の粉末成形体を得た。
【0062】
得られた粉末成形体を、大気中1100℃で仮焼(予備焼成)の後、水素3:窒素1の雰囲気中1750℃で3時間焼成を行い、その後、1700℃で3時間アニール処理を実施した。
【0063】
作成したブランク基板に高精度研磨加工を実施した。まずグリーンカーボンによる両面ラップ加工により形状を整えた後、ダイヤモンドスラリーによって表面に片面ラップ加工を実施した。これを、大気雰囲気、1300℃で6時間アニール処理を実施した後、最終的な面粗さを得るべく、コロイダルシリカを用いたCMP研磨加工を実施した。この際、全体の加工量が深さ方向で400μm、アニール後の加工量は10μmとなるよう調整した。更に、加工後の基板を、過酸化アンモニア、過酸化塩酸、硫酸、フッ酸、王水、と純水にそれぞれ交互に浸漬して洗浄し、ハンドル基板1を作製した。
【0064】
得られたハンドル基板について、大きさ0.5〜3.0μmの気孔の平均密度が100個/mm
2以上である領域の厚さ、接合面側の表面領域における大きさ0.5〜3.0μmの気孔の平均密度、接合面側の表面領域における気孔の平均密度(Nc)と基板の厚さ方向の中心線が通る領域における気孔の平均密度(Ns)との比率(Nc:Ns)、結晶の平均粒径、光学センサーでの検知の可否、接合面のRaを測定した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
(実施例2〜8)
実施例1と同様にしてハンドル基板を作製した。ただし、焼成温度、焼成後のアニール温度、アルール時間、ラップ後のアニール温度、ラップ後のアニール時間を変更した。得られた各測定結果を表1に示す。
(実施例9、10、11)
実施例1と同様にしてハンドル基板を作製した。ただし、テープ成形層4層の内、表面側の2層と中央側の2層の酸化マグネシウムの量を変更した。得られた測定結果を表1に示す。なお、実施例11は10枚作成した内の1枚において、アニール処理後クラックが発生した。
【0067】
(比較例1〜4)
実施例1と同様にしてハンドル基板を作製した。ただし、ただし、焼成温度、焼成後のアニール温度、アルール時間、ラップ後のアニール温度、ラップ後のアニール時間を変更した。得られた各測定結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
(接合試験)
実施例1〜11で得られた各ハンドル基板の表面に、シリコン薄板との接着領域として、SiO
2領域を形成した。ただし、実施例11についてはクラックの発生していないもののみ用いた。成膜方法はプラズマCVDを用い、製膜後にCMP研磨(化学機械研磨)を実施することで、最終的なSiO
2領域の膜厚を100nmとした。その後、プラズマ活性化法によりSi基板とSiO
2領域を直接接合し、Si―SiO
2―ハンドル基板からなる複合基板を試作した。この結果、良好な接合状態が得られ、クラック、剥離、割れはみられなかった。また、得られた複合基板を1000℃で30分間の間熱処理した結果、接合状態は変わらず、クラック、剥離等の発生は見られなかった。
【0070】
一方、比較例2,4の各ハンドル基板の表面に、上述のようにしてシリコン基板を接合した。得られた各複合基板を1000℃で30分間の間熱処理した結果、部分的に剥離が見られた。なお、比較例1のハンドル基板は光学センサーでの検知ができず、比較例3のハンドル基板はクラックが見られることから、接合試験を行わなかった。