【実施例1】
【0033】
実施例1の自在手摺りについて
図1乃至
図9を用いて説明する(特に、請求項1,2,4,
5に対応)。
図1は本実施例の自在手摺り1aの外観を示したものであるが、仮設階段Sについては模式的に示されている。また、
図3(a)及び
図3(b)はそれぞれ上部支柱6及び下部支柱7の外観図であり、
図3(c)は
図3(b)において下部支柱7の下端を部分的に拡大した図である。なお、
図3(c)では、ボルトやナットの図示が省略されている。
図1に示すように、自在手摺り1aは、仮設階段Sの傾斜に沿って設置される手摺り部材2と、この手摺り部材2の端部を保持する円筒状の支柱3と、この支柱3の下端に設けられる固定手段4からなり、この固定手段4を介して仮設階段Sの踏板Pに対して着脱自在に連結される構造となっている。
【0034】
図2及び
図3に示すように、支柱3は断面の輪郭が円形をなす棒状の金属製部材であり、上端6aに環状の把持部5aが設けられた上部支柱6と、上部支柱6が上方からスライド自在に挿入される筒状の下部支柱7からなる。なお、本実施例では、上部支柱6が下部支柱7に挿入される構造となっているが、上部支柱6に下部支柱7が挿入される構造であっても良い。また、上部支柱6と下部支柱7のいずれも筒状としているが(
図8(b)参照)、挿入される方のみ筒状とし、挿入する方を中実構造とすることもできる。
【0035】
上部支柱6では、把持部5aの近傍に保持手段8が設けられ、保持手段8と下端6bの間の側面に一対のピン挿通孔6c,6cが上下2箇所に設けられている。
一方、下部支柱7では、上端7aの近傍と略中央に保持手段9,10がそれぞれ設けられ、保持手段9,10の間の側面にピン挿通孔6c,6cと連通可能にピン挿通孔7c,7cが上下2箇所に設けられている。また、保持手段10と下端7bの間の側面には把持部5bが設けられている。
すなわち、支柱3は、下部支柱7に対して上部支柱6をスライドさせるようにして全体の長さを調節した後、ピン挿通孔6cとピン挿通孔7cを横架するようにピン23aを挿通することにより、その長さが維持される構造となっている。
なお、本実施例では保持手段を支柱3の3箇所に設けているが、設置箇所や個数は、これに限定されず、適宜変更可能である。また、ピン挿通孔6c,7cの個数や設置箇所も同様に変更可能である。
【0036】
下部支柱7は、下端7bを閉塞するように基板11が設けられており、ボルト挿通孔12aと角度固定孔12bがそれぞれ設けられた一対の支持片12,12が基板11に立設されている。なお、支持片12,12は、ボルト挿通孔12a,12a及び角度固定孔12b,12bが連通するように、かつ、支柱3の長手方向に沿って所定の間隔をあけて対向配置されており、ボルト23bを挿通するための角度固定孔12bはボルト挿通孔12aの中心からR
1の距離に設けられている(
図6参照)。また、ボルト挿通孔12a,12aに挿通されたボルト13aの端部にはナット13bが締結されるとともに抜け止めピン14が取り付けられている。
【0037】
固定手段4を構成する固定部15と取付部20について
図4及び
図5を用いて説明する。
図4に示すように、固定部15は、側面視略「コ」の字状をなし上部17aの先端近傍に2本のボルト16,16が螺合されたクランプ17と、このクランプ17の背面に接合されるとともに、片側に突出するように2本の雄ネジ18a,18aが立設された連結板19からなる。そして、雄ネジ18a,18aは連結板19の中心を挟んで対称に、かつ、中心からR
2の距離に配置されるとともに、それぞれナット18b,18bが取り付けられている。
なお、固定部15は、このような構造に限定されるものではなく、例えば、雄ネジ18a,18aの代わりに、ボルトを使用し、そのボルト挿通孔を連結板19に設けた構造としても良い。
【0038】
図5に示すように、取付部20は、連結板21と、その中心を通るように、この連結板21の片面に立設される角度調整板22によって構成されている。そして、連結板21には、半径R
2の回動軌跡に沿った一対の長孔21a,21aが角度調整板22を挟んで対称に、かつ、固定部15の雄ネジ18a,18aを挿通可能に設けられている。
一方、角度調整板22には、幅方向(連結板21に平行な方向)の略中央にボルト挿通孔12aと同径のボルト挿通孔22aが設けられるとともに、角度固定孔12bと同径の角度固定孔22bがボルト挿通孔22aを中心として半径R
1の回動軌跡に沿って15°間隔で13箇所に設けられている。
なお、両端の角度固定孔22b,22bは、中心同士を結んだ直線が連結板21と平行をなすように形成されている。そして、取付部20は固定部15に対し、連結板19と連結板21の中心同士が一致するように互いの背面を接触させた状態で、長孔21aに挿通された雄ネジ18aにナット18bを締め込むことによって固定される構造となっている(
図2(b)参照)。
【0039】
図6(a)に示すように、固定手段4は、取付部20の角度調整板22を支持片12,12の間に、ボルト挿通孔22a(
図5(b)参照)がボルト挿通孔12a,12a(
図3(c)参照)に連通するように配置し、これらの孔にボルト13aを差し込んで横架させ、ナット13bを締め込むことで、支柱3の下端に連結される。このとき、ボルト13aは支柱3の長手方向に直交するとともに、角度調整板22を支持片12,12に対して回動自在に連結する軸体として機能するため、固定手段4は支柱3に対し、矢印Aで示すように揺動自在となる。なお、クランプ17はボルト13aと直交する方向へ開閉する。
また、支持片12,12の角度固定孔12b,12b(
図3(c)参照)に角度固定孔22bの1つを連通させた状態で、これら3つの孔にボルト23bを差し込んで横架させると、支持片12,12に対して角度調整板22が回動不能となるため、支柱3に対する矢印Aの方向への固定手段4の揺動が拘束される。
この場合、角度固定孔12b,12bと角度固定孔22b及びボルト23bは角度調整板22を支柱3に対して所定の回動角度で固定する調整板角度固定手段として機能する。
【0040】
すなわち、ボルト23bを角度固定孔12b,12b及び角度固定孔22bから抜出することで、支持片12,12に対して角度調整板22が回動自在となり、ボルト13aに直交する仮想平面内においてクランプ17の開閉方向と支柱3のなす角度が変更可能な状態となる。また、ボルト23bを角度固定孔12b,12b及び角度固定孔22bに挿入し、支持片12,12に対する角度調整板22の回動を拘束することで、クランプ17の開閉方向と支柱3がなす上記角度が固定されるという作用を有する。
なお、本実施例では、ボルト23bを差し込む角度固定孔12b,12bと角度固定孔22bの組合せを変えることにより、0〜180°の範囲内で支柱3に対する角度調整板22の回動角度を15°間隔で調整可能となっているが、角度固定孔12bを設ける箇所や個数は、これに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0041】
一方、雄ネジ18aに締め込まれたナット18bを緩めると、
図6(b)に矢印Bで示すように、雄ネジ18aが長孔21aの内部を移動できる範囲内で、連結板19は連結板21に対して回動自在となるため、固定部15は支柱3に対し、矢印Bで示すように揺動自在となる。また、ナット18bを締め込むと、連結板21に対して連結板19が回動不能となるため、支柱3に対する矢印Bの方向への固定部15の揺動が拘束される。
この場合、雄ネジ18aとナット18b及び長孔21aはクランプ17の背面を連結板21に対して所定の回動角度で固定する連結板角度固定手段として機能する。
【0042】
すなわち、雄ネジ18aに締め込まれたナット18bを緩めることで、連結板21に対して連結板19が回動自在となり、連結板21に平行な仮想平面上に投影したクランプ17の開閉方向と支柱3のなす角度が変更可能な状態となる。また、雄ネジ18aにナット18bを締め込み、連結板21に対する連結板19の回動を拘束することで、クランプ17の開閉方向と支柱3がなす上記角度が固定されるという作用を有する。
なお、本実施例では、固定部15に対する取付部20の回動角度を0〜90°の範囲内で調整可能となっているが、長孔21aを形成する範囲は、これに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0043】
手摺り部材2の構造について
図7を用いて説明する。なお、
図7(b)は
図7(a)において、端部を拡大するとともに、中心軸を含む平面で切断した状態を示した図に相当する。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、手摺り部材2は、金属製の棒状体2aの両端に継手部24がそれぞれ連結された構造であり、棒状体2aは筒状の外側部材33と、外側部材33に対してスライド自在に挿入される筒状の内側部材34によって構成されている。そして、外側部材33の側面にはネジ孔(図示せず)が設けられており、このネジ孔に蝶ネジ35が螺入されている。
すなわち、自在手摺り1aにおいては、蝶ネジ35を緩めた状態で外側部材33に対して内側部材34をスライドさせることで手摺り部材2の全体の長さが容易に調節されるとともに、蝶ネジ35を回し、その下端で内側部材34の側面を押圧することにより、外側部材33に対して内側部材34がスライド不能に固定されるという作用を有する。
このように、自在手摺り1aにおいては、支柱3を設置する間隔に応じて手摺り部材2の長さを変更できるため、支柱3の設置箇所に対する制約が少なく、使い勝手が良い。
【0044】
なお、本実施例では、外側部材33と内側部材34のいずれも筒状としているが、外側部材33のみを筒状とし、内側部材34は中実構造とすることもできる。また、支柱3を一旦設置した後は、支柱3同士の間隔は不変であるため、外側部材33に対して内側部材34を固定せずとも内側部材34が勝手にスライドして手摺り部材2の長さが変わってしまうおそれはない。したがって、蝶ネジ35を省略した構造とすることもできる。ただし、本実施例のように蝶ネジ35を備えた構造であれば、手摺り部材2を運搬する際に内側部材34が勝手にスライドしないように固定できるため、安全である。
【0045】
棒状体2aの両端には、長手方向へ突出するように連結片2bがそれぞれ形成されており、継手部24は、連結片2bを間に挿入配置可能に対向配置される一対の連結片24a,24aと、連結片24a,24aが立設される円板状の係止片24bからなる。また、連結片2bには軸孔が設けられ、連結片24aには、この連結片2bの軸孔と連通するように軸孔が設けられている。そして、これらの軸孔には軸体25が嵌挿されており、連結片2bと連結片24a,24aは軸体25を中心として回動自在に連結されている。これにより、継手部24,24は棒状体2aに対して揺動自在となっている。
すなわち、手摺り部材2では、棒状体2aの長手方向に平行な仮想平面内において係止片24bと棒状体2aの長手方向のなす角度が容易に変更されるという作用を有する。
なお、係止片24bは平面視して周縁部が連結片24a,24aに対して側方へ突出するように形成されている。
【0046】
次に、手摺り部材2を支柱3に連結する際に使用される保持手段9について
図8及び
図9を用いて説明する。
図8(b)は
図8(a)において抜け止め具27を下降させて抜け止め具28との間に手摺り部材2を挟持した状態を示しており、
図8(a)において下部支柱7の中心軸を含む平面で切断した状態を示した図に相当する。
なお、保持手段10は保持手段9と構造が同じであり、また、保持手段8に関する説明は、保持手段9の説明において下部支柱7を上部支柱6と読み替えたものと同じであるため、以下、保持手段9を例にとって説明し、保持手段8,10については、その説明を省略する。
【0047】
保持手段9は下部支柱7の外周面7dの一部に形成される雄ネジ部26と、外周面に滑り止め用の凹凸が設けられ雄ネジ部26に螺着されるリング状の抜け止め具27と、抜け止め具27と対向するように雄ネジ部26の下方に配置され下部支柱7の外周面7dに固設されるリング状の抜け止め具28によって構成されている。また、抜け止め具27の対向面27aと抜け止め具28の対向面28aには、下部支柱7の外周面7dに沿ってリング状の凹溝27b,28bがそれぞれ係止片24bと係止可能に形成されている。
なお、本実施例では、抜け止め具27が雄ネジ部26に螺着され、抜け止め具28が下部支柱7の外周面7dに固設されているが、これに限らず、抜け止め具27,28のうち、少なくとも一方が雄ネジ部26に螺着された構造とすることもできる。また、凹溝は対向面27a,28aのうちの少なくとも一方に形成された構造であっても良い。
【0048】
図8(a)に示すように、手摺り部材2の継手部24を、軸体25が下部支柱7の軸方向と平行をなし、係止片24bの下部が凹溝28bに係止するように抜け止め具28の対向面28aに設置した後、抜け止め具27を回動し、
図8(b)に示すように、係止片24bの上部が凹溝27bに係止するまで下降させた場合、継手部24は、抜け止め具27,28によって離脱不能に保持される。このとき、継手部24は、抜け止め具27,28の対向面27a,28aに連結片24a,24aが当接するため、係止片24bの中心軸周りの回動が抑制される。
一方、連結片2bは連結片24a,24aに対し、軸体25を中心として回動自在であるため、
図9(a)に矢印D
1で示すように、棒状体2aは下部支柱7の軸方向に垂直な平面内で揺動可能となっている。
また、この状態から、抜け止め具27を回動して上昇させ、凹溝27b,28bに対する係止片24bの係止状態が解除されると、保持手段9から手摺り部材2が容易に離脱可能となる。
なお、
図9(b)に示すように、手摺り部材2の継手部24を、軸体25が下部支柱7の軸方向と直交し、係止片24bの下部が凹溝28bに係止するように抜け止め具28の対向面28aに設置した後、抜け止め具27を回動し、係止片24bの上部が凹溝27bに係止するまで下降させた場合、継手部24は、抜け止め具27,28によって離脱不能に保持される。ただし、この場合、棒状体2aは矢印D
2で示すように下部支柱7の中心軸を含む平面内で揺動可能となる。
【0049】
自在手摺り1aでは、ボルト13aに直交する平面内においてクランプ17の開閉方向と支柱3の長手方向がなす角度及び連結板21と平行な平面上に投影したクランプ17の開閉方向とボルト13aがなす角度を調整できることから、踏板P以外の仮設階段Sの部材に対しても、クランプ17で挟持可能な厚さであれば、取り付けることができる。
さらに、抜け止め具27,28によって継手部24を保持する際の対向面27a,28aの間隔を変更することで、支柱3の長手方向と継手部24の揺動平面のなす角度を調節可能となっている。したがって、支柱3に対して手摺り部材2を所望の方向から連結することが可能である。また、係止片24bのサイズ(直径)が異なる複数の手摺り部材2に対して保持手段8〜10を共通して使用することができる。
【0050】
以上説明したように、本発明の自在手摺り1aは、クランプ17で挟持する対象物の姿勢によらず、支柱3を鉛直方向に設置することができる。また、支柱3に対する手摺り部材2の連結方向が限定されない。すなわち、自在手摺り1aは、支柱3の設置場所に対する制約が少ないため、既存の仮設階段や仮設足場に対しても取り付けることができる。さらに、抜け止め具27やナット18bの回動及びボルト23bの挿抜等の簡単な操作によって、手摺り部材2の支柱3への連結や離脱及び支柱3の設置対象に応じたクランプ17の取り付け姿勢の調整を行うことができる。したがって、自在手摺り1aでは、上記設置作業を容易かつ安全に行うことができる。さらに、大きく分けて、手摺り部材2と支柱3という2種類の部材からなる簡単な構造であるため、製造が容易である。また、使用しない場合には、手摺り部材2と支柱3を分解できるため、運搬も容易である。そして、固定手段4及び保持手段8〜10も簡単で軽量な構造である。したがって、運搬コストや製造コストを安くすることができる。
【実施例3】
【0054】
実施例3の自在手摺りについて
図12〜
図17を用いて説明する(特に、請求項3,6に対応)。
図12は本実施例の自在手摺り1cの外観図であり、
図13(a)は自在手摺り1cを構成する手摺り部材36の正面図であり、
図13(b)は
図13(a)において手摺り部材36の端部をI方向から見た拡大図であり、
図13(c)は
図13(a)におけるJ−J線矢視断面図である。また、
図14(a)及び
図14(b)はそれぞれ連結具38の側面図及び正面図であり、
図14(c)は
図14(b)におけるK−K線矢視断面図である。なお、
図13(c)及び
図14(c)では、それぞれ蝶ネジ35及びバネ40cについて、断面であることを示すハッチングを省略している。
図15(a)及び
図15(b)はそれぞれ連結リング41の側面図及び平面図であり、
図15(c)は
図12において保持手段8〜10のいずれかとその近傍を部分的に拡大して示した図である。また、
図16は
図12における固定手段37の拡大図であり、
図17は
図16のL方向矢視図である。さらに、
図18(a)は
図16におけるM−M線矢視断面図であり、
図18(b)はシャフト49に組み付けられる各部品の外観を示す斜視図である。
なお、
図15(c)では、抜け止め具27,28の一部と連結具38及び連結リング41について、支柱3の軸と手摺り部材36の軸の双方を含む平面で切断した状態を示している。また、
図18(a)では、取付部43と固定部42の図示を省略している。さらに、
図1乃至
図11に示した構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図12に示すように、本実施例の自在手摺り1cは、実施例2の自在手摺り1bにおいて、手摺り部材2と固定手段4の代わりにそれぞれ手摺り部材36及び固定手段37を備えたことを特徴とする。
図13(a)及び
図13(b)に示すように、手摺り部材36は、金属製の棒状体36aと、この棒状体36aの両端に、長手方向へ突出するようにそれぞれ形成される一対の連結片36b,36bとからなる。また、連結片36b,36bは、後述する連結具38の連結部38b(
図14参照)を間に挿入配置可能に対向配置されている。そして、連結片36b,36bは、連結具38の連結部38bに設けられた軸孔39aと連通可能に軸孔39b,39bが設けられている。
また、棒状体36aは、筒状の外側部材33と、この外側部材33に対してスライド自在に挿入される筒状の内側部材34によって構成されている。そして、
図13(c)に示すように、外側部材33の側面に設けられたネジ孔33aには蝶ネジ35が螺入され、内側部材34の表面には、その長手方向に沿って係止溝34aが蝶ネジ35の先端部と係止可能に形成されている。すなわち、外側部材33と内側部材34は、ネジ孔33aに螺入された蝶ネジ35の先端部を係止溝34aに係止させることで、円筒軸を中心とする相対的な回転が阻止される構造となっている。
なお、本実施例では、外側部材33と内側部材34に対し、長手方向への移動のみが許容されるように、内側部材34の係止溝34aに蝶ネジ35の先端部を係止させることで、円筒軸を中心とするそれらの回動を阻止しているが、本発明の自在手摺りは、このような構造に限定されるものではない。
例えば、蝶ネジ35の代わりに、又は蝶ネジ35とともにボルト等を使用しても良い。そして、ボルト等をネジ孔33aに螺入して、その先端部を内側部材34の係止溝34aに係止させる構造とした場合、外側部材33と内側部材34の上述の回動がより効果的に阻止される。
【0056】
図14(a)〜
図14(c)に示すように、連結具38は、棒状の挿入部38aの一端に板状の連結部38bが形成された構造となっており、全体として側面視略L字状をなしている。また、連結部38bには前述したように軸孔39aが形成され、挿入部38aの先端近傍には、長手方向へ沿って凹溝40aが細長く形成されている。そして、凹溝40aには、係止片40bと、この係止片40bを外側へ押し出す方向へ付勢するバネ40cが内蔵されている。すなわち、係止片40bはバネ40cに付勢されて、その一部を出没自在に凹溝40aの内部に設置されている。
【0057】
図15(a)及び
図15(b)に示すように、連結リング41は、平面視した場合に外形が円弧の一部をなすように形成される係止片41aと、平面視リング状をなし連結具38の挿入部38aを回動自在に保持する保持部41bが接続部41cを介して接続された構造となっている。
図15(c)に示すように、棒状体36aの連結片36b,36bが連結部38bに連結された連結具38の挿入部38aを連結リング41の保持部41bに挿通し、連結リング41の係止片41aを、その下部が凹溝28bに係止するように抜け止め具28の対向面28aに設置した後、雄ネジ部26に螺着された抜け止め具27を回動して、係止片41aの上部が凹溝27bに係止するまで下降させる。これにより、連結リング41が抜け止め具27,28によって離脱不能に保持され、手摺り部材36は、連結具38の軸孔39a及び連結リング41の保持部41bの中心軸のまわりにそれぞれ回動可能に連結される。
このとき、係止片40bは連結リング41に係止することにより、連結具41の保持部41bからの連結具38の挿入部38aの抜けを防ぐという作用を有する。また、この状態で、バネ40cに抗して係止片40bを凹溝40aの中へ押し込むと、係止片40bが保持部41bに係止しなくなるため、挿入部38aは保持部41bから容易に抜出可能となる。
なお、保持手段8〜10を構成する抜け止め具28,29は、それぞれ少なくとも2本以上の手摺り部材36を連結可能な構造となっている。
【0058】
このような構造の自在手摺り1cにおいては、連結具38の連結リング41への連結やその解除が容易である。また、実施例1の自在手摺り1aでは、手摺り部材2が連結片2bの中心軸のまわりについてのみ揺動可能であることから、例えば、手摺り部材2の揺動平面を支柱3の長手方向に平行な状態から直交する状態に切り換える場合には、抜け止め具27と抜け止め具28の間隔を変更する必要がある。これに対し、本実施例の自在手摺り1cでは、手摺り部材36が連結片2bの中心軸と、連結具38の挿入部38aの中心軸という互いに直交する2本の軸のまわりにそれぞれ独立に揺動可能であり、抜け止め具27,28の間隔を変更して手摺り部材36の揺動平面を支柱3の長手方向に平行な状態から直交する状態に切り換える等の作業を行う必要がない。
【0059】
次に、固定手段37を構成する固定部42と取付部43について
図16〜
図18を用いて説明する。
図16に示すように、固定部42は、側面視略「コ」の字状をなすクランプを有し、背面に取付部43が回動可能にボルトによって固定される構造となっている。なお、固定部42の背面には、実施例1の取付部20に対する固定部15の場合と同様に、取付部43の回動角度を調整可能に、複数のボルト挿通孔が形成されている。
【0060】
取付部43は、連結板44と、その中心を通るように、この連結板44の片面に立設され円弧状の側面に雄ネジ部45bが形成された角度調整板45によって構成されている。そして、連結板44には、所定の半径の回動軌跡に沿った一対の長孔が角度調整板45を挟んで対称に、かつ、固定部42に取り付けるためのボルト47を挿通可能に設けられている。また、連結板44の中心には、固定部42の背面の略中央に設けられた貫通孔に対して挿通可能に形成される軸体46が角度調整板45と反対方向へ、その先端を突出させるように設けられている。
一方、角度調整板45には、幅方向(連結板44に平行な方向)の略中央にボルト13aを挿通するための貫通孔が設けられるとともに、ボルト23bが挿通される角度固定孔45aが設けられている。なお、角度固定孔45aは、ボルト13aの挿通孔を中心とする所定の長さの半径の回動軌跡に沿って略長孔状に形成されている。
【0061】
なお、角度固定孔45aは、始点と終点を結ぶ直線が連結板44と平行をなすように形成されている。そして、取付部43は、連結板44から突出する軸体46の先端を固定部42の背面に設けられた貫通孔に回動自在に挿通させた状態で、背面に設けられた前述のボルト挿通孔に挿通されたボルト47を締め込むことによって固定される構造となっている。
したがって、ボルト47を緩めると、連結板44に設けられた前述の長孔の内部をボルト47が移動できる範囲で、固定部42は連結板44に対して軸体46を中心として回動自在となり、固定部42は支柱3に対して揺動自在となる。一方、ボルト47を締め込むと、連結板44に対して固定部42が回動不能となり、支柱3に対する固定部42の揺動が拘束される。
この場合、ボルト47及び連結板44の長孔は固定部42の背面を連結板44に対して所定の回動角度で固定する連結板角度固定手段として機能する。
【0062】
図17及び
図18に示すように、基板11には、ボルト13a,23bが挿通されるボルト挿通孔48a及び角度固定孔48bとシャフト49を回動自在に保持する保持孔48cがそれぞれ設けられた一対の支持片48,48が立設されている。
シャフト49は、断面が六角形をなす角柱部49aの両端に雄ネジ部49b,49cが形成された構造となっている。角柱部49aには、ギヤ保持具50とバネ保持具51が挿通され、雄ネジ部49b,49cには、把持具52とナット53がそれぞれ螺合し、ギヤ保持具50とナット53の間及びバネ保持具51と把持具52の間にはワッシャー54がそれぞれ設置されている。
ギヤ保持具50は、外面と内面の輪郭形状がそれぞれ円形及び六角形をなす嵌合部50aと、この嵌合部50aに立設される矩形板状の係止部50bからなり、嵌合部50aは角柱部49aに挿通された場合に、シャフト9に対して回動不能となるとともに、係止部50bが支持片48の内壁の一部と係止して支持片48に対して回動不能となるように形成されている。
【0063】
バネ保持具51は、外面と内面の輪郭形状がそれぞれ円形及び六角形をなす嵌合部51aと、この嵌合部51aの一端に設けられ端面に微小な凹凸が形成された段付き部51bからなり、嵌合部51aが角柱部49aに挿通された場合に、シャフト9に対して回動不能となるように形成されている。
ギヤ保持具50の嵌合部50aには、微小な凹凸が設けられた側面55aをバネ保持具51の段付き部51bの端面に対して当接可能、かつ、角度調整板45の雄ネジ部45bと噛合して回動可能に、ギヤ55が外挿されている。
また、支持片48の内壁面と段付き部51bの間には、コイル状の押しバネ56がバネ保持具51の嵌合部51aに外挿された状態でバネ保持具51をギヤ55に対して押し付ける方向へ付勢可能に設置されている。
【0064】
このような構造の自在手摺り1cにおいては、係止部50bが支持片48の内壁の一部と係止することで嵌合部49aとともにシャフト49を支持片48に対して回動しないように抑制するという作用を有する。この場合、バネ保持具51と押しバネ56は、ギヤ55の側面55aとの間に摩擦力を生じさせ、その回動を抑制する手段として機能する。また、把持具52を回動してバネ保持具51をギヤ55に押し付ける方向へ押動すると、バネ保持具51は押しバネ56によって押される場合よりも強い力で把持具52によって直接、ギヤ55に押し付けられることになるため、ギヤ55の回動を抑制する効果が、より一層発揮される。なお、把持具52を操作してギヤ55を押し付ける方向にバネ保持具51を前進させればさせるほど、ギヤ55の回動を抑制する力は強くなる。そして、最終的には、ギヤ55は完全に回動不能な状態となる。
すなわち、シャフト49、バネ保持具51、把持具52及び押しバネ56は、角度調整板45を支柱3に対して所定の回動角度で固定する調整板角度固定手段として機能する。
【0065】
実施例1や実施例2の自在手摺り1a,1bでは、支柱3に対する角度調整板22の回動角度を変更する場合、別の角度固定孔22bにボルト23bを差し込み直さなければならない。これに対し、本実施例の自在手摺り1cにおいては、ボルト23bを差し込み直すという作業を行うことなく、支柱3に対する角度調整板45の回動角度が連続的に変更されるという作用を有する。したがって、作業効率が良い。
また、角度調整板45の雄ネジ部45bに噛合して回動するギヤ55の回動がバネ保持具51と押しバネ56によって抑制され、支柱3に対する固定手段37の回動速度が調節されるという作用を有する。この場合、固定手段37を仮設階段等に設置する作業等において、途中で支柱3が急に倒れるなどの事故を防止できるため、安全である。