(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
残留ガスを有する真空室(10)内で、スパッタリング装置(3)とプラズマ源(5)によって、移動可能な基板(2)上に、少なくとも第一の成分と第二の成分から形成され、前記第一の成分の少なくとも1種は、スパッタリング装置(3)のスパッタ材料であり、かつ前記第二の成分の少なくとも1種は、残留ガス中の反応性成分すなわち反応ガスである層(1)を製造する方法であって、
前記残留ガスが、前記反応ガスと不活性ガスからなり、残留ガス中で、前記反応ガスと不活性ガスの分圧を調節することができる装置を用い、
− 前記スパッタリング装置(3)の領域内で、反応ガスの分圧を測定し、かつ前記プラズマ源(5)の領域内の反応ガスの分圧とは実質的に独立に調整し、前記基板(2)上に、第二の成分が化学量論的に所定量不足した状態の層(1)を反応性堆積させる工程、
− 前記基板(2)を、前記真空室(10)中に前記スパッタリング装置(3)から所定の間隔で設置されていて、かつ前記スパッタリング装置(3)から、少なくとも1つの基板(2)用の通路を有するシールドによって隔てられている前記プラズマ源(5)の領域へ移動する工程、
− 前記プラズマ源(5)の領域内の反応ガスの分圧を、前記スパッタリング装置(3)の領域内の反応ガスの分圧とは実質的に独立に調節し、前記プラズマ源(5)のプラズマ作用により、所定量の第二の成分を供給し、層(1)の構造および/または化学量論比を変更して光学損失を低下させる工程、
を順次行うことを特徴とする方法。
光学的透過率を高めるために、前記基板(2)は、輸送装置(6)としての基板回転プレート上で120rpm〜180rpmの速度で、前記スパッタリング装置(3)及び前記プラズマ源(5)を通り過ぎる、請求項1記載の方法。
前記反応性成分のガス流量を、堆積された層厚および/または変性の時間および/または前記プラズマ源(5)を通過する回数に依存して制御または調整する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
残留ガスを有する真空室(10)内で、スパッタリング装置(3)とプラズマ源(5)によって、移動可能な基板(2)上に、少なくとも第一の成分と第二の成分から形成され、前記第一の成分の少なくとも1種は、スパッタリング装置(3)のスパッタ材料であり、かつ前記第二の成分の少なくとも1種は、残留ガス中の反応性成分すなわち反応ガスである層(1)を製造する装置であって、
− 前記スパッタリング装置(3)の領域(A)及び前記プラズマ源(5)の領域(B)は、少なくとも1つの基板(2)用の通路を有するシールドによって隔てられていて、前記スパッタリング装置(3)の領域(A)は、反応ガスの分圧を測定する手段と、専用のガス供給及び専用のポンプ供給を有し、並びに前記プラズマ源(5)の領域(B)は専用のガス供給及び専用のポンプ供給を有し、前記残留ガスが、前記反応ガスと不活性ガスからなり、残留ガス中で、前記反応ガスと不活性ガスの分圧を調節することができる手段が設けられていて、
− 前記スパッタリング装置(3)の領域(A)内に前記反応ガスを供給し、前記基板(2)上に、第二の成分が化学量論的に所定量不足した状態の層(1)を反応性堆積させ、
− 輸送装置(6)により、前記基板(2)を、前記真空室(10)内の前記スパッタリング装置(3)から所定の間隔で配置されている前記プラズマ源(5)の領域(B)へと移動し、
− 前記プラズマ源(5)の領域(B)内に前記反応ガスを所定量で供給し、前記プラズマ源(5)のプラズマ作用によって、層(1)の構造および/または化学量論比を変更して光学損失を減らすことを特徴とする装置。
前記輸送装置(6)は、基板回転プレートとして構成されていて、かつ前記基板が120rpm〜180rpmの速度で前記スパッタリング装置(3)及びプラズマ源(5)を通り過ぎる運動のために構成されている、請求項9記載の装置。
前記スパッタリング装置(3)として、好ましくは2個の隣り合って存在するマグネトロン装置を有するマグネトロン支援カソードスパッタ源が設けられている、請求項9から11までのいずれか1項記載の装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄層を製造する方法ならびに前記方法を実施するための装置に関する。
【0002】
薄層を製造するために、物理および化学的堆積技術から種々の方法が公知である。堆積すべき層の所望の特性と選択された材料系に依存して、種々の方法が使用される。
【0003】
高い融点を有する材料には、特にスパッタリング(スパッタ)が有利である。この場合に、蒸着法用の一般的な残留ガス圧を著しく上回る真空領域内で、電界をはたらかせることによりプラズマを生じさせ、イオンから高い電気的カソードポテンシャルにあるターゲット上で加速し、これらのイオンはターゲットから原子を打ち出し、更にこの原子は真空室の壁、およびターゲットとは離れていて通常は多量または僅かなバイアス電圧にある基板上に堆積する。この場合に材料源の加熱は必要ではなく、むしろターゲットはプロセスの際に冷却される。この場合に、基板を形成する層に阻害影響を示さないアルゴンのような不活性ガスから残留ガス圧が得られる。窒化物、炭化物、酸化物またはこのような化合物を堆積するために、スパッタガスを付加的に相応する反応ガスに混ぜることができる。
【0004】
新たに成長する層の損害をプラズマからの照射または逆スパッタ効果により回避するために、通常は基板をプラズマ区域の外側に設置する。十分な力学的エネルギーを用いて、すなわち、できるだけ僅かな阻害で、残留ガス中で更なる衝撃プロセスをターゲット上で達成できるようにするために、もう一方では、基板上にスパッタされた原子が堆積できるようにするために、イオンの平均的な通路長さは十分に大きくあるべきである。このことは、可能性としてあり得る残留ガス圧を上に向かって区切る。一方、全体に安定したプラズマを生じるようにするために、圧力は十分に高くあるべきである。磁場支援スパッタリングにより、ターゲットにて高い電子密度を生産することに成功し、ターゲットにて高いプラズマ密度ひいては著しく高いスパッタ速度が生じる。
【0005】
反応性成分、特に酸素を不活性ガスに添加することにより酸化物を製造することもできる。このような反応性スパッタ法は、例えばWO0173151号A1から公知である。ここでは、酸素分圧が酸化物のスパッタの際にラムダセンサにより調整され、これにより成長層内で化学量論的な酸化物を形成することができる。しかし、ターゲットも反応ガスと反応してしまう結果、競合する方法、すなわち一方では脱離が行われ、他方で支持体表面での脱離を抑止する酸化物形成が行われる。これらは、被覆室内で電気ポテンシャル、プラズマ形成およびこのようなものに反作用を有する。同様に、真空室の内表面で堆積するスパッタ材料の層の上に、例えば酸素を反応性成分として結合するゲッター表面が形成される。よって、相互に予測可能が難しい依存性が様々な方法パラメーターを生じる。ここでも被覆パラメーターの間の関係は極めて複雑である。この場合に、個々の被覆パラメーターを変える場合に頻繁に相互の影響が生じる。堆積すべき層の材料に応じて、被覆法と被覆パラメーターを個別に相互に調整する必要がある。このことは堆積すべき層系が複雑であればあるほど、例えば、特別な機能特性を有する多層、特に光学機能層を堆積する際に当てはまる。言及した問題は、いわゆる金属化合物の反応性DC−マグネトロン−スパッタリングの場合に特に顕著であり、その際、基質表面上での反応化合物の要求を同時に金属ターゲット表面で満たすことは高い出費をかけないと達成できない。単離層を製造するために、例えば、SiO
2、Al
2O
3およびこのようなものが既に方法が開発され、この場合に、1つの交流源から供給される2つのマグネトロン−スパッタカソードにより、2つのターゲットを交互に使用している。ターゲットポテンシャルの極性は、通常KHzの範囲内で変化する。すなわち、各電極は、交流カソードとアノードである。これは、反応性DC−マグネトロン−スパッタリングの場合のいわゆる“消失アノード(disappearing anode)”の阻害効果とは対照的に、ターゲット表面の酸化物層に阻害影響がなくカソードとアノードの間で定義付けられた負荷輸送を生じる。
【0006】
しかし効果的な運転は、いわゆる移行範囲内で働かせるという前提がある。それというのも、そうでない場合にはターゲット表面での酸化物形成が脱離速度よりも速くなってしまうからである。
【0007】
EP0795623号A1からは、反応性スパッタリングにより薄い酸化チタン層を堆積する装置が公知である。この場合に、カソードの電流供給は、真空室内の酸素と参照ガスの割合を比較するλセンサ−計測センサーの信号により調整される。この方法は、できるだけ均一で、同じ組成物を製造しなくてはならない酸化物を長期安定に堆積するために特に適切である。
【0008】
DE4236264号C1からは、プラズマ支援電子照射蒸着が公知であり、この場合に極めて高い割合を有する酸化物を、電子照射蒸着機により蒸着し、基板上に堆積させている。しかし、蒸着により酸化物が分離する結果、酸素が失われ、もはや成長層内の酸化物形成は提供されない。従って、基板と蒸発源の間には、酸素プラズマを有するプラズマ空間があり、この中で、蒸気が基板への通路で励起され、その結果基板上で化学量論的酸化物を堆積することができる。材料系に応じて、化学量論的酸化物の堆積は、反応ガスの分圧またはプラズマパラメーターを被覆の際に調整することにより成功する。この場合に、関連が極めて複雑で、材料系から他の材料系に殆ど移せない。個々の方法パラメーターのバリエーションは、種々の材料系の場合に様々な結果を生じる。例えば、酸化アルミニウムに最適な堆積パラメーターは、酸化ケイ素の場合には最適な結果を生じない。さらに、1種類の材料系および同じ材料系の範囲内の場合でも長時間の運転は、別々に認識できない種々の蒸着パラメーターを示し、これは、堆積層の特性を不所望に変化させ、かつ被覆プロセスの再現性をさらに困難にする。
【0009】
EP01516436号E1からは、マグネトロン−スパッタリング装置と二次プラズマ装置を用いて材料を基板上に反応的に堆積するマグネトロン−スパッタリング装置が公知である。スパッタリング装置と二次プラズマ装置は、それぞれ雰囲気的かつ物理的に隣接したスパッタ区域と活性化区域を形成している。スパッタ区域と活性化区域を一緒にすることにより、両方の区域のプラズマを混ぜて唯一の連続的なプラズマにすることができる。
【0010】
EP0716160号B1からは、堆積装置とイオン低下エネルギーのプラズマを生産する装置を備えた被覆装置が公知である。堆積装置とプラズマ装置は、選択的に運転することができるので、少なくとも複数の層を有する複合層が形成される。各層の組成物は、次の物質の少なくとも1つから選択することができる:第一の金属、第二の金属、第一の金属の酸化物、第二の金属の酸化物、第一と第二の金属の混合物、第一の金属と第二の金属の混合物の酸化物。
【0011】
本発明の課題は、薄層を製造する方法を提供し、この方法を用いてインシチュで層の組成物に信頼できる制御された影響を与え、ならびに前記方法を実施するための装置を提供することである。
【0012】
さらに、本発明の課題は、特に上記の本発明による方法により、光学損失の少ない多層膜を製造する方法と装置を生産することである。
【0013】
前記課題は、独立請求項に記載された特徴によりそれぞれ解明される。
【0014】
先行技術から公知の金属層または半導体層の酸化とは異なり、スパッタ装置の領域内で、特に目標を定めた化学量論的に下位の層の堆積は、被覆速度の増加を可能にする。それというのも、後続のプラズマ作用が厚い層を短時間で酸化して化学量論的酸化物にすることができるからである。さらに、本発明による反応性堆積は、所定の最小値を下回る光学損失を有する所定の層厚を有する層を可能にし、かつ後続のプラズマ作用が僅かな光学損失有する層の比較的に速い製造を可能にする。公知の反応性スパッタリングプロセスと比較して、スパッタプロセスは、同時に高品質の層が形成される際にフラッシュオーバーやカソードアーク放電のような障害により殆ど停止することがない。
【0015】
本発明のもう1つの側面によれば、真空室内に少なくとも1つの反応的に実施可能な被覆装置と少なくとも1つの反応装置を用いる多層膜の製法において、少なくとも1つの前記の装置に対して移動可能な基板上で、第一の層の上に、少なくとも1つの反応性成分を有する第二の層の堆積を被覆ステーションにより行う。反応装置により、層の構造および/または化学量論比の変更が行われる。所定の値を下回る多層膜の光学損失を低下させるために、本発明により第一の層と境を接している第二の層の領域に、被覆装置により厚さd
1と反応性成分の不足DEFがDEF
1値よりも小さい値を有する境界面を形成してすることができる。この方法は、コントロールを含めた層の構造および/または化学量論比を変更することができ、有利には僅かな光学損失もしくは僅かな光反射と高い透過率を有する多層を製造することができる。
【0016】
最小の光学損失を有する多層を製造する本発明による方法は、堆積層が第一の組成物と反応組成物の間でできるだけ完全な化学量論比を有すべきであるという認識から出発する。本発明により、この場合に反応スパッタプロセスが1つの様式で制御された化学量論的に下位に実施され、かつ第二の工程で反応性成分の不足部分が付加的なプラズマ源の作用により用意される。例えば、化学量論的なSiO
2−層を製造するための工程は次の通りである:第一の工程で金属ケイ素ターゲットを用いてスパッタ被覆を行い、その際、酸素の反応ガス流を使用し、化学量論的に下位の化合物、例えばSiO
1.6−の層を生じる。よって反応性成分の不足値DEFは、0.4である。第二の工程では、酸素を反応ガスとして用いてプラズマ活性化が行われ、これが完全な化学量論的なSiO
2−層を生じる。
【0017】
このような層の堆積は、材料に応じたパラメーターにより決定される。この場合に本発明によって第一工程での高いスパッタ速度と、最大に達成可能な化学量論比との間の最適な譲歩を、引き続き第二工程でのプラズマ源による処理と最大限に効果的に組み合わせることが常に保証できる。
【0018】
本発明により層を製造する場合、特に高屈折率層と隣接する低屈折率層を有する多層膜を製造する場合には、例えば、Nb
2O
5とSiO
2の間に、光学損失を低下させるためにさらに措置を講ずることができる。この方法は有利である。それというのも、ケイ素の極めて高い反応性により例えば、SiO
1.6のような完全な化学量論的Nb
2O
5−層の上にスパッタリングされて堆積した化学量論的に下位の化合物が、プラズマ源によりSiO
1.6−層が完全な化学量論的な状態に変化する前に、Nb
2O
5−層から酸素が除かれてしまうからである。これは、高屈折率材料の層の少なくとも幾つかの光学特性の悪化を生じ、ひいては多層膜が、特に包まれた境界面の数に比例して悪化する。本発明によれば、記載された作用を防止するために、例えば、直接に高屈折率材料と境を成している境界面の範囲内で、広範囲に及んでまたは完全な化学量論的状態にある所望の厚さを有する低屈折率層を堆積する。例えば、この層はSiO
2の場合には一般的に3.6nmの厚さを有することができる。境界面のこの領域は、この下にある高屈折率層を保護するための遮蔽として働く。前記領域の臨界の厚さが達成され次第、スパッタプロセスのパラメーターを、反応性成分が高い程度で化学量論的に下位であるか、もしくは高い値の不足DEFを有する層の堆積の方向に変えることができる。それゆえ、本発明の方法により製造されるSiO
2層は、1つの内部構造を持つ。その際、第一の部分は僅かな酸素の不足を有し、かつ第二の部分は高い不足の値を有する。
【0019】
高屈折率材料と低屈折率材料から成る層が交互に重なり合って続く多層膜を製造するのが有利である。高屈折率材料として、Nb
2O
5、Ta
2O
5、TiO
2、ZrO
2またはAl
2O
3、低屈折率材料としてSiO
2を備えるのが有利である。
【0020】
本発明による方法を用いれば、高い精密さと傑出した品質の良さを有する薄層の堆積に成功する。特に有利な実施態様では、高い光学的品質の良さを有する酸化物、炭化物および窒化物層の製造に成功する。
【0021】
本発明の更なる実施態様と利点は、請求項から引き出すことができる。
【0022】
本発明を図面にて詳細に記載するが、図は次のような図式的描写を示している。
図1は、層を酸化するための基板、ターゲットおよびプラズマ源の有利な配置の原則的な描写である。
図2〜
図5は、反応性スパッタリングの場合の特性曲線である。
図6は、曲線群のパラメーターとしてrf−プラズマ源が有るものと無いものを波長関数とする層の光送伝の例である。
図7は、曲線群のパラメーターとして基板速度を有するものを波長関数とする層の光送伝の例である。
図8は、種々の層厚を有する単層の光学損失の例である。
図9は、境界面を有する多層膜の構造を示す。
図10は、透過率と反射における多層膜の境界面の数の影響を示す。
図11は、本発明による方法による多層膜について、光学損失の最小化効果を示す。
図12は、高屈折率材料と低屈折率材料から成る単層と多層膜ならびに種々の層厚に関する光学損失を示す;AとBは、境界面を最適化していない77もしくは21個の境界面を有する多層に相当する曲線を示し、C、D、E、Fは、単層に相当する曲線を示す;多層および77個の境界面、境界面最適化はXYで示される。
図13は、僅かな光学損失を有する多層膜、例えば広帯域フィルターの透過率と反射を示す。
図14は、種々の厚さの境界面の多層膜に関する光学損失を示す。Aは、2.7nmの厚さ、Bは3.6nmの厚さに相当する。
図15は、1KWと1.5KWの出力でケイ素を反応性スパッタリングした場合の特性曲線を示す。
図16は、ケイ素を反応性スパッタリングした場合の種々の方法パラメーターの数値経過を示す。
【0023】
本発明による方法では、反応性スパッタリングにより、真空を破壊することなく僅かな光学損失を有する層を製造することができ、これは酸素、炭素または窒素のような反応性成分を含有する。以下に酸化物製造を記載する;しかし、この方法は炭化物または窒化物またはオキシ窒化物もしくはカルボ窒化物のような混合物またはそのような物にも適切であり、その際に、2種以上の反応ガスを反応性成分として同時に使用することもできる。
【0024】
図1は、本発明の実施態様により、層を堆積するための有利な装置の略図を示している。酸化物層1は、残留ガスを有する真空室10内で基板2上に堆積される。真空室10は、幾つかの領域A、B、Cに分かれている。有利には各領域A、B、Cは、記載されていない専用のガス供給と、専用のポンプ供給を有する。真空は炭化水素不含であり、ドライランニングポンプ堆積物を形成するのが有利である。このような領域の3つ以上用意することもできる。領域A、B、Cは、有利にはスリットにのみ連結されたシールドで相互に隔てることができる。よって、以下に詳説するプロセス装置、すなわち、スパッタ装置もしくはプラズマ源からの真空による分離が、領域A、B、Cで達成される。プロセスステーションは、プラズマにより脱共役化するのが有利である。装置の圧力、有利に残留ガス(スパッタガス)中のガスの分圧は、実質的に相互に独立に調整することができる。アルゴンArのような不活性ガスおよび反応ガス、有利に酸素O
2を残留ガス中に含有するのが有利である。
【0025】
領域Aでは、スパッタ装置3として第一のスパッタ源、有利にはマグネトロン源、特に有利には隣り合って存在するマグネトロン装置を有する自体公知のマグネトロン源系(Twinmagとしても公知)を準備する。電流供給は、DC−、DC−パルス−または中周波−(MF)または高周波(HF)またはDC−HFが組み合わさった供給を有する供給ユニットであることができる。スパッタカソードの一般的な電圧範囲は、400V〜800Vである。40kHzを有するMF−源が有利に使用される。
【0026】
領域Aでは、反応性スパッタリングによりターゲットのスパッタ材料がスパッタされ、その際、それぞれ作業点に応じたスパッタ速度で、スパッタ材料−酸素−複合体が真空室1の壁と基板2の上に堆積する。有利なスパッタ材料は、Al、Nb、Hf、Ta、Ti、Zr、TiNbのような金属および金属合金、ならびにSiのような半導体である。
【0027】
領域Bでは、励起イオンと残留ガスの反応性成分のラジカルを含有するプラズマを形成するプラズマ源5を配置する。反応性部分は、堆積層に作用し、これを更に酸化する。プラズマ源5は、例えば、DC−、HF−MH−またはDC−パルス−またはDC+HF−マイクロ波−プラズマ源装置、特にホールエンドプラズマ(Hall End Plasma)源、ホットカソードDC−プラズマ源、高周波プラズマ源、中周波プラズマ源またはパルスDC−プラズマ源であることができる。プラズマ源5のエネルギーは、10eV〜200eVまたは400eVの範囲まで調節可能である。有利には、ECWR(Electron-Cyclotron-Wave-Resonance)−プラズマ源を使用し、プラズマ部分のエネルギーは、プラズマ源5のプラズマ密度と無関係に広範囲に及んで調節することができる。
【0028】
真空室10の領域Aでは、領域AとBの間で、加熱装置を配置するのが有利であり、石英輻射体を用いる放射ヒーターが好ましい。二者択一的に、赤外放熱器を備えることもできる。よって、基板は数百度、例えば250℃まで加熱することができる。
【0029】
第一のスパッタ源3が設定されているように第二のスパッタ源7が正反対に配置されている領域Cが備えてある。もう1つの実施態様では、さらにスパッタ装置および/またはプラズマ源が真空室に準備される。
【0030】
AとCの領域の空間的な間では、光学測定装置(光学モニター)8が光学モニタリング用に設置され、成長層の光学特性により決定することができる。堆積層の光学特性を調査するために、少なくとも1つの基板上の層の透過率および/または反射を自体公知のように断続的に測定するのが有利である。よって、特に成長する光学層の厚さを試験することもできる。
【0031】
平らな輸送装置6は、少なくとも1回連続して、少なくとも1つのスパッタ源3、7ならびにプラズマ源5を有する少なくとも1つのステーションのそばで基板2を動かすのが有利である。この場合に、輸送装置6は、例えば1〜500rpmの速度で調節可能な基板−回転プレートである。高い理論回転数までの加速は、幾つかの段階で、かつそれぞれA、B、Cの領域内で行うことができる。平らな輸送装置の代わりに、基板を支持および輸送するための自体公知のドラム型の装置を使用することができる。この場合には、スパッタ装置とプラズマ源がドラムの周囲の表面範囲に取り付けられる。
【0032】
通常は、1個以上の基板2が回転プレート6上に固定される。分かり易くするために、
図1には円形で示されている1つの基板だけを標準的に示してある。
【0033】
真空室10では、回転プレート6の基板2は第一のスパッタ源3の下に動く。ここでは、スパッタリングによりターゲットがスパッタされ、その際、ターゲットから打ち出された材料が基板上に堆積する。スパッタガスとして、本発明の有利な実施態様では、アルゴン−酸素混合物が使用されるので、基板2の上で成長した層1は酸化物である。
【0034】
本発明によれば、スパッタリングプロセスは、AもしくはCの領域内で、反応性成分を供給しながら、目的を定めて所定の成分を有する化合物層が堆積するように運転される。層1は、少なくとも2個の成分で構成され、その際、反応性成分O
2は、成分O
2に対して層1が化学量論的に下位に製造される成分を形成する。成分の化学量論的な化合物に対して、所定の不足、例えば、高くとも90、80、70、60、50、40、30、20または少ない反応性成分O
2の原子パーセントを有する層1が堆積する。引き続き、Bの領域内ではプラズマ作用により、層1の上、層1中で化学量論的組成物まで成分O
2の含有量をインシチュで高め、かつ/または層の構造を変更する。反応性成分O
2の代わりに、Bの領域では他の反応ガスを供給することもできる。
【0035】
スパッタ源3の領域内での成分O
2の分圧は、基板2を被覆する間に、実質的に一定の値で調節することが最も望ましい。有利には、成分O
2の分圧は、そのガス流により調節される。酸素分圧をスパッタ源3の電力により一定に調節することもでき、その際、ターゲットの寿命を上回って、速度を特に高い値で一定に保持することができる。
【0036】
さらにスパッタ源3のAの領域では、基板2を被覆する際に、プラズマ放出ライン、有利にはターゲット材料用の放出ライン、反応性成分または両方の組み合わせの強度を実質的に一定の値まで調整することができる。これらは、成分O
2のガス流および/またはスパッタ源3の電力により調節することができる。
【0037】
基板2がプラズマ源5および/またはスパッタ源3を通り過ぎる速度を変化させることにより、層の特徴を変更することもできる。
【0038】
本発明によれば、複数の中間工程を介しても化学量論的に下位の堆積/酸化により1つの層を製造することができる。さらに、多層を堆積することができ、その場合に層のパラメーターを変化させることにより、各場所で成長する屈折率を成長する全体の層に沿って達成することができる。このような多層は、被覆時間および/または酸化時間、および/または回転数を調節することにより、例えば制御して堆積することができ、かつ/または光学測定装置8により、成長層の光学的特性または層の順番をもとに被覆を調整することができる。
【0039】
本発明の他の実施態様によれば、スパッタ源3のAの領域では、所定量の反応性成分を添加しながら、基板上に所定の最低値よりも低い光学損失を有する所定の層厚を有する層が堆積される。ここで、光学損失とは、自体公知の方法で一般に層に入射する光波が波長に依存して減少することを意味する。光学損失は、透過率と反射の測定から計算することができる。散光が散漫散乱により表面の粗さと関連して生じるので、層の光学損失から表面特性を逆に推論することができる。有利には、本発明により光学測定装置(光学的監視装置)8により光学損失を測定する。光学モニター8は、一波長または多波長分光器として、特にスペクトロ光度計または楕円偏光測定器として、特にスペクトロ楕円偏光測定器として構成される。所定の層厚に堆積した後に、光学損失を算出し、層の特性の調節を光学モニター8の信号に依存して行う。スペクトロ光度計を使用する場合には、簡単な方法で所定のスペクトロ領域内の透過率、吸光度および反射を層厚の関数として計算することができる。
【0040】
以下に、本発明の方法の有利な実施態様に関して、層を反応性スパッタにより製造するプロセス工程と、それに続く堆積層の変性を記載する。その他のプロセス工程も同様に本発明に含まれる。スパッタリング装置として、2個のニオブターゲットを有し、隣り合って存在する2個のマグネトロン装置を有するマグネトロン源系が使用される。ターゲットは、MF範囲内で、例えば、40kHzの周波数で交代で運転される。両方のターゲットには、シャッターが取り付けられ、これによりスパッタリング装置が基板と隔離することができる。同様にシャッターが取り付けられたプラズマ源は、ラジオ周波の範囲内で調節される。
【0041】
第一の工程では、スパッタリング装置を作業点で調節し、その際、プロセスを安定化するためにシャッターを閉じる。スパッタリング領域内へ不活性ガスと反応性成分(例えばアルゴンと酸素)の侵入が行われる。さらに、プラズマ源の領域内への不活性ガスと反応性成分の侵入が続く。基板担体、例えば、平らな回転プレートは、理論速度まで加速する。もう1つの工程では、プラズマ源のプラズマが生じる。さらに、所定の理論出力までもたらされるスパッタリング装置のスパッタプラズマが生じる。引き続き、スパッタリング装置の領域内で分圧制御が活性化する。所定の分圧の理論値がカソード出力を上回って安定化されるのが有利である。
【0042】
第二の工程では、基板の被覆が開始する。このために、シャッターが開けられる。この場合に、作業点で調節された制御パラメーターの僅かな変化だけが、シャッターを開けることにより必要であることが明らかである。所望の層厚は、被覆時間もしくは回転数によりコントロールすることができる。光学モニター8によりインシチュで行われる光学的な層厚測定が特に有利である。
【0043】
本発明により、特性曲線または特性領域の作業点で層の反応堆積を行い、スパッタリング材料と反応性成分材料に依存して、堆積層またはプラズマ作用により変性された層の光学損失の最小化を選択する。以下に、本発明の有利な特性曲線を説明する。
【0044】
図2には、スパッタリングプロセスにおいて、
反応ガス流の反応ガスの分圧
に依存した特性曲線が1例として記載されており、アルミニウムターゲット、反応性成分としての酸素、およびスパッタリング装置の一定の出力(スパッタ出力)を用いている。分圧の値が小さい場合には、酸素流が初めは急に上昇し、かつ頂点Sの後に減少し、高い分圧の場合に最小の後に再び高まる。極めて低い酸素分圧の場合には、幅広い金属ターゲット表面を有する状態に調節され、その際、金属層が基板上に堆積する。酸素分圧が頂点に相当する値を越えて高くなる場合には、流量制御されたプロセスで、酸化物−モードまたはコンパウンド−モードへの移行が続き、ターゲット表面が完全に反応生成物で覆われ、かつ不所望の層特性を有する化学量論的層が基板上で成長する。Oで示される矢印は、酸化物−モードまたはコンパウンド−モードへの移行を示す。
図2の破線の曲線は、
スパッタ速度を記載したものである。
スパッタ速度は、低い反応ガス分圧の場合に最大であり、
反応ガス分圧
が高まるにつれて減少していき、飽和領域で横
軸と平行に
なるまで減少することが明らかである
。反応ガス流の特性曲線の頂点
Sと最小の間の領域では、一般に
手間をかけずに調整することが難しいが、高い堆積速度で化学量論的に下位の層の堆積が可能である。本発明による方法は、
反応ガス流の特性曲線の所定の領域で、頂点Sのそばを通過する。それというのも、ここでは比較的に高いスパッタ速度が達成できるからである
。この領域では、化学量論的に下位の層の高い
スパッタ速度が達成可能であり、引き続きプラズマ作用が課される。材料に依存して、例えば、Ti、Nb、TiNbの場合には、本発明により頂点Sの右の移行領域で運転できるのに対して、他の材料、例えば、Al、Siの場合には、頂点Sの左の領域が有利である。
【0045】
図3には、一定に保持された反応ガス流と類似した特性曲線が記載されている。この場合に、反応ガス分圧の理論値がスパッタ出力を用いて調節されている。ここでは、Oで示された矢印の左に化学量論的に下位の領域がある。この制御方法は、本発明では有利であるが、しかし、特性曲線の最小の周辺の領域ではスパッタされない。
【0046】
図4には、もう1つの特性曲線が記載されており、一定のスパッタ出力の場合には、スパッタカソード電圧の理論値が反応ガス流を用いて示され、かつOで示されている移行の右の領域では、化学量論的に下位の化合物に調節されている。ここでは、移行の最大Sの周辺の領域が有利である。
【0047】
一定の反応ガス流は、
図5で記載されている特性曲線で使用される。その際、スパッタ速度と反応ガス分圧からの比率の理論値は、スパッタリング装置の電力を用いて、所定の理論値まで調整される。実線の曲線は、反応ガスとして酸素を用いた場合の特性曲線を指し、破線の曲線は、反応ガスとして窒素を用いた場合の特性曲線を指す。O1もしくはO2で示された矢印は、移行の右の化学量論的に下位の状態から移行の左の化学量論的状態を示す(それぞれ反応ガスとして酸素もしくは窒素を用いる)。この移行の位置が使用される反応ガスに左右されることが明らかである。さらに、酸素の場合には、O1で前記の移行の右で
スパッタ出力の極小値を有するが、相応する窒素の特性曲線では
スパッタ出力の極小値はなくなっている。材料はスパッタカソードの材料と共通であ
り、この場合、ケイ素である。このようなツーライン測定(Zweilinienmessung)は、相応する放出ラインを測定することにより、結果が光導体の入射窓の汚染とは相対的に無関係であるという利点がある。
【0048】
本装置の一般的な値は、スパッタリング装置の領域内でアルゴン流に関しては、40sccm/minであり、酸素流に関しては、30sccm/minである。スパッタリング装置の領域内に設置されたラムダセンサの信号から酸素分圧を測定するのが有利である。このようなデュアル・マグネトロン・カソード装置の一般的な出力は、本発明による方法では4kWの範囲内である。プラズマ源の領域では、一般的な酸素流は20sccm/minの範囲内であるのに対して、アルゴン流は2sccm/minの範囲内である。RF−運転の場合の出力は1kWの範囲内である。
【0049】
スパッタリング装置3、7およびプラズマ源5ならびに基板の動きを制御するために、図式で示されていない制御ユニットを備えることができる。既に詳細に説明したように特性曲線もしくは特性領域を広げて、制御をパラメーター室で行う。本発明の有利な実施態様では、光学的品質を最適化するための、特に堆積層の光学損失をモニタリングするための運転パラメーターを調節するために、光学モニター8の信号を考慮する。これは、有利にはオンラインで行われる。同様に、このような制御は交互に、または1つの層から次への移行の際に備えられる。長期に運転することを考慮して、透過率、反射および/または光学損失のような層の特性において操作制御を行うために光学信号を使用するのが特に有利である。さらに、スパッタリング装置3、7およびプラズマ源5の機能を含む全体の装置は、堆積層と変性層の光学的特性を顧慮するか、または層の製造の速さを顧慮して最適化される。このために、例えば、制御装置を用いて特性曲線上の相応する動作点、引き続くプラズマ作用の際に選択し、かつ最適値を決定する。
【0050】
光学的監視は、スパッタリング装置3,7による各スパッタによっておよび/またはプラズマ源5によるプラズマ作用によって、少なくとも1つの基板上で直接に行われる。
【0051】
図6は、波長を関数とする本発明による方法で製造した層(上の曲線S
1)の光学的透過率の例を、化学量論的に下位の堆積の後にプラズマ源5からの酸素プラズマを課していない層(下の曲線S
2)と比較して示している。両方の層の被覆パラメーターは、プラズマ源5の領域内で酸化するまで同じである。化学量論的に下位の層は極めて僅かな透過率を示したが、その代わりに極めて高い損失を示したので、これは反射防止膜またはフィルターまたはこの様なものとしては役に立たない。プラズマ作用による酸化が、層の特性を極めて効果的に改善できることが明らかに分かる(上の曲線S
1)。
【0052】
図7は、基板速度を曲線群のパラメーターとして用いて、基板速度波長を関数とする層の光学的透過率の1例を示す。例えば180または120rpmの高速(上の曲線)では、層の光学的透過率は、例えば60rpmのように半分だけの速度を有するもの(下の曲線)よりも高い。
【0053】
図8は、本発明により製造された種々の厚さの単層の例を示す。この場合に、曲線AとBは、1000nmもしくは500nmの厚さを有するNb
2O
5−層を示す。曲線Cは、1000nmの厚さを有するTa
2O
5−層を示す。曲線DとEは、1000nmもしくは500nmの厚さを有するSiO
2−層を示す。使用される材料の光学損失は、層厚と波長に左右されることが明らかである。全体として、光学損失は極めて小さく、かつ問題の材料の吸光係数の範囲内でのみ増加する。
【0054】
Nb
2O
5、Ta
2O
5、TiO
2、ZrO
2、Al
2O
3のような高屈折率材料から成る本発明により堆積した単層は、僅かな光学損失を有するようにするために、反応性スパッタリングの際に僅かな酸素不足だけで堆積を必要とし、その際、このあとにプラズマ源の反応性プラズマを層に課す。プラズマ源5の反応性プラズマの部分のエネルギーは、50eV未満であるのが有利である。SiO
2のような低屈折率の単層については、反応性スパッタリングと、それに続くプラズマ源の反応性プラズマの作用により、高い酸素不足で僅かな光学損失を達成できる。
【0055】
本発明により、はじめに定義付けれた酸素不足で化学量論的に下位に製造し、引き続きプラズマ作用により酸化して化学量論的酸化物にすることで、層の傑出した光学的品質が得られる。1サイクルあたり一般に0.2〜0.4nmが堆積される。堆積層は、滑らかな表面を有するレントゲン非晶質またはナノ結晶であるのが有利であるが、しかし、同時に空隙、いわゆるボイドのない密な構造を有するのが有利であるので、大気からの水の取り込みが回避される。もしそうでない場合には、不所望な屈折値の変化につながることになる。従来技術で通常の基板の打ち込み(Beaufschlagung)をバイアス電圧で補うことができる限りは、改善された表面構造は、実質的にプラズマ作用に起因する。
【0056】
反応的に運転可能な被覆装置を用いて、第一の層の上で少なくとも1つの反応性成分を有する第二の層の堆積を行い、損失が少ない多層膜を本発明により製造する場合には、層の構造および/または化学量論的な変化を反応装置を用いて備えることができる。第一の層は、基板であってもよい。基板上に第一の層、第二の層ならびに第一の層と接している第二の層の領域内にある厚さd
1の境界面を有する多層膜の図式的表示は、
図9に示されている。この場合に、被覆装置として、それぞれ反応的に運転可能な被覆装置が使用でき、特に、物理気相成長、例えば蒸着技術またはスパッタ技術のような原理により運転される装置が用いられる。DC−マグネトロン源またはACマグネトロン源が特に有利である。反応装置として、プラズマ源、例えば、DC−、HF−、MF−またはDC−パルスまたはDC−+HF−またはマイクロ波プラズマ装置が有利である。
【0057】
光学フィルターに使用されるような高屈折率層と低屈折率層が交互になっている多層膜が有利である。多層膜は、高屈折率層、低屈折率層、中屈折率層が交互になっていてもよい。高屈折率層とは、実質的に1.9より大きい、有利には1.9〜2.6の屈折率を有する層である。
【0058】
低屈折率とは、1.3〜1.5の屈折率を有する層を意味する。中屈折率層は、1.5〜1.9の屈折率を有する。本明細書の範囲内では、高屈折率材料の例は、例えば、Nb
2O
5、Ta
2O
5、TiO
2またはZrO
2である。低屈折率材料は、例えば、SiO
2から成る層である。
【0059】
図10には、波長に依存したNb
2O
5/SiO
2多層膜ついて、N
1=21もしくはN
1=79の境界面数を有する透過率値もしくは反射値が示されている。この記載から、多層膜の境界面もしくは層の数が増えると光学損失が増すことが分かる。
【0060】
層の堆積ならびに層の構造および/または化学量論比の変化は、上記の方法により行うのが有利であるが、しかし、他の方法により行うこともできる。所定の値よりも低く多層膜の光学損失を減らすために、第一の層と境界を成す第二の層の領域内に、好ましくは被覆装置を用いて、厚さd
1と反応性成分の不足DEFがDEF
1値よりも小さい値を有する境界面の構成するのが有利である。
【0061】
本発明により、厚さd
1と反応性成分の不足DEFがDEF
1値よりも小さい値を有する境界面の構成を行う。その際、多層膜は、所定の最小値を下回る光学損失を有する。本発明による方法では、境界面の厚さd
1が最小値を超える場合に有利である。堆積層の残りは、高い不足DEFを用いて反応的に堆積することができる。
【0062】
反応装置の作用により、できるだけ完全な化学量論比を有する境界面を製造するのが特に有利である。
【0063】
記載した方法の場合に、高屈折率層、例えば、Nb
2O
5、Ta
2O
5またはこのような物の上にSiO
2から成る低屈折率層を堆積するのが有利である。反応性成分として、酸素の代わりに炭素または窒素を使用することもできる。低屈折率層の上には、再び高屈折率層を堆積することもできる。
【0064】
本発明による多層膜は、種々の方法で製造できる。第二の層の瞬間の厚さd(t)の値を算出するのが特に簡単であり、d(t)がd
1の値よりも大きくなり次第、反応性成分の不足DEFがDEF
1よりも大きい値を有する第二の層の堆積を行う。この場合に、第二の層の瞬間の厚さd(t)の値の算出は、第二の層を堆積する間に、例えば光学的監視装置(8)の監視信号に応じて行うことができる。
【0065】
図11には、本発明により製造した多層膜について光学損失の監視の効果が記載されている。Nb
2O
5/SiO
2−多層膜では、酸素の様々な高い不足で境界面が堆積されている。この場合に、A、A’は、境界面に比較的に高い酸素の不足を有する多層膜の波長依存した反射もしくは透過率の値を示している。一方で、BB’は、境界面に比較的に低い酸素不足を有する多層膜の透過率もしくは反射の値を示している。曲線A、A’は、曲線B、B’よりも大きな光学損失を示している。
【0066】
図12には、波長に応じた光学損失が記載された、高屈折率材料と低屈折率材料から成る単一層と、高屈折率層と低屈折率層を交互に有する多層膜について、本発明による方法が示されている。ここでは、Aは77個の最適化されていない境界面を有する多層膜の値を示し、さらにBは21個の最適化されていない境界面を有する同じ多層膜の値を示す。77個の境界面の数に対して21個だけであるので、Bの損失は、Aよりも少ない。多層膜の値は、Aと匹敵するが、しかし最適化された境界面はXYで示してある。この場合に曲線XYは、相応する多層膜に関して曲線Aよりも著しく減少した損失を示している。曲線C、D、E、Fは、1000nmもしくは500nmの厚さを有する高屈折率もしくは低屈折率の単一層を示す。
【0067】
図13は、僅かな光学損失を達成するために本発明により製造されたNb
2O
5/SiO
2−多層膜について、波長に応じた透過率と反射を示している。波長を関数としてフィルターの透過率と反射を無しですます場合には、フィルターは最大と最小の透過率の箇所を有する。最大の透過率の箇所では、反射は最小であり、かつUターンする。この箇所では、最も簡単に損失を測定することができる:100%TmaxとRminまたはTminとRmaxを引き算する。
図13による多層膜は、広帯域フィルターに用いるのが有利である。
【0068】
図14は、高屈折率層の上のSiO
2−境界面−層に関して、波長に応じた光学損失に対する、境界面−層の厚さdのバリエーションの効果を示している。Aで示される曲線は、著しい波長への依存性を示す2.7nmの厚さの境界面−層の値を示す。これに対して、3.6nmの厚さの境界面−層の値をBで示してある。記載した範囲内で著しく低い光学損失ならび広範囲に及んで波長の非依存性を示している。
図14からは、さらに境界面−層の臨界厚さが存在することが明らかである。これ以上では、反応性成分の不足DEFがDEF
1の臨界値未満の値を選択する場合に、光学損失が著しく減少することになる。高屈折率層、例えばNb
2O
5の上の低屈折率層SiO
2の場合には、2.5〜10.0nmの範囲内、有利に2.6nm、2.7nm...3.6nm、3.7nm、3.8nmの臨界値にある。この場合に、反応性成分の不足DEF=2−xは、比較的に低く選択できるので、境界面の領域内のSiO
xの反応性成分の値xは、1.5、1.6...1.8以上に相当する。
【0069】
本発明の有利な実施態様では、境界面の領域内にSiO
x−層を製造するために、まず基板プレートの1回転あたりに、比較的に少ないスパッタ出力と比較的に少ない酸素不足で、比較的に薄い層を製造する。酸化物モードへの移行領域では、反応性スパッタリングが有利である。所定の例えば、3.6nmの層厚が達成した後に、高い酸素不足を有するSiO
x−層が高い出力で堆積され、かつプラズマ源の反応性プラズマを課す。これは一定であるのが有利である。
【0070】
図15には、低いもしくは高い酸素不足を有する境界面−層の反応性堆積の特性曲線が記載されている。A、A’は、1kWのスパッタ出力でのラムダ−センサーのスパッタ電圧もしくは出発出力の値を示し、BとB’は、1.5kWのスパッタ出力でのスパッタ電圧とラムダ−信号の値を示している。層形成部分のエネルギーは、有利には数eV〜200eVの間である。反応性プラズマの部分が50eV未満のエネルギーを有するのが有利である。
【0071】
図16には、有利な方法の実施態様で使用されるような、酸素を反応性成分として用いる反応性スパッタリングの場合の重要な方法パラメーターについて時間的な数値経過が図式的に示されている。この場合に、プラズマ源出力、スパッタリング装置の領域内のアルゴン流ならびにスパッタ源とプラズマ源の領域内の酸素流の一定の値を用いて運転するのが有利である。Zcの時点までは、スパッタリング装置の出力が高まる。Zcの時点以上では、スパッタリング装置の領域内の酸素分圧が下がる。Zcの時点までは例えば約3nmの所定の層厚が達成されるのが有利である。この時点までにスパッタされた層は、比較的に低い酸素不足を有する。それとは反対に、時点Zcの後にスパッタされた層は、比較的に高い酸素不足を有する。本発明のさらなる実施態様では、スパッタリング装置の領域内の酸素分圧もしくは酸素分圧以外の大きさのパラメーター値も時間的に変化させることができることが自明である。
【0072】
比較的に薄いSiO
2層を比較的に低い酸素不足で堆積することにより、境界面−層も、この下にある層(例えばNb
2O
5から成る層)も、SiO
x−堆積に続く反応性プラズマ源の作用により、化学量論的層として存在することが保証される。このような手法により、反応しやすいSiO
xよってこの下にある層(Nb
2O
5)から反応性成分、とりわけ酸素が脱離してしまうことをプラズマ源の作用により補償できる。これに対して、高すぎる速度でSiO
xを堆積する場合には、反応性プラズマ作用によって確かに化学量論的SiO
2まで酸化することができるが、しかし状況によっては、この下にある層からSiO
x層の下にある層までの化学量論比を保証するためのプラズマ源の作用が十分に侵入できないほど緊密である。僅かな酸素不足で堆積された境界面−層の所定の厚さからは、すでに堆積層に堆積したSiO
xの上で酸素が取り去られないので、高い不足の酸素でSiO
xの更なる堆積を行うことができる。