(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697835
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】皮膚の乾燥予防または改善用経口剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20150319BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P17/16
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2007-549124(P2007-549124)
(86)(22)【出願日】2006年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2006324231
(87)【国際公開番号】WO2007066642
(87)【国際公開日】20070614
【審査請求日】2009年12月3日
【審判番号】不服2013-5506(P2013-5506/J1)
【審判請求日】2013年3月25日
(31)【優先権主張番号】特願2005-350816(P2005-350816)
(32)【優先日】2005年12月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308032666
【氏名又は名称】協和発酵バイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(72)【発明者】
【氏名】加々美 恵理香
(72)【発明者】
【氏名】森下 幸治
【合議体】
【審判長】
村上 騎見高
【審判官】
辰己 雅夫
【審判官】
渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−300895号公報
【文献】
国際公開第2005/105126号
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/198
CAPLUS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPLUS/JMEDPLUS/JST7580(JDreamII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてのシトルリンまたはその塩と、添加剤とを含有し、錠剤、散剤、顆粒剤およびカプセル剤からなる群より選択される剤形である、皮膚の乾燥予防または改善用経口剤(ただし、農水産物およびそれらの加工品を除く)。
【請求項2】
添加剤が、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤および細菌抑制剤からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の経口剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シトルリンまたはその塩を有効成分として含有する、皮膚の乾燥予防または改善用経口剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は様々な外部環境からの刺激に常にさらされている。皮膚の角質層にはこれら外界からの刺激や異物の侵入を防いだり、体内の水分の蒸散を防ぐバリア機能が備わっている。このバリア機能の低下している人や動物では、皮膚角質層中の水分含量が低下していることが知られている。例えば、アトピー性皮膚炎患者や(非特許文献1参照)、加齢に伴い(非特許文献2参照)、皮膚角質層中の水分含量が減少することが報告されている。
【0003】
皮膚の保湿性を維持または改善する手段として、ワセリン軟膏や油中水型乳化製剤などの閉塞剤により角層バリア機能を補う方法、ソルビトールやグリセリンなどの保湿剤により角層水分量を補う方法、グリチルリチン酸などの抗炎症剤により皮膚炎症を鎮める方法、ビタミン、ホルモンなどにより皮膚細胞を活性化する方法等が用いられている(非特許文献3参照)。
【0004】
シトルリンは表皮保湿成分であるNMF(天然保湿因子)の構成成分であることが知られており(非特許文献4参照)、アルギニンやオルニチン等と組み合わせて局所投与することによってアトピ−性皮膚等の神経感覚的症状が予防または治療されることが報告されている(特許文献1)。しかしながら、シトルリンまたはその塩の経口摂取により、皮膚の乾燥状態が予防または改善されることは知られていない。
【特許文献1】特表平9−505822号公報
【非特許文献1】「アーカイブス・オブ・ダーマトロジー(Archives of Dermatology)」、1991年、第127巻、p.1689
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・インベスティゲイティブ・ダーマトロジー(Journal of Investigative Dermatology)」、1990年、第95巻、p.296
【非特許文献3】「フレグランスジャーナル(Fragrance Journal)」1999年、第10巻、p.29
【非特許文献4】「ジャーナル・オブ・ザ・ソサエティ・オブ・コスメティック・ケミスツ(Journal of the Society of Cosmetic Chemists)」、1984年、第35巻、p.183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、皮膚の乾燥予防もしくは改善用経口剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下(1)〜(3)に関する。
(1)シトルリンまたはその塩を有効成分として含有する皮膚の乾燥予防または改善用経口剤。
(2)シトルリンまたはその塩の有効量を、必要とする対象に経口投与することを含む、皮膚の乾燥予防または改善方法。
(3)皮膚の乾燥予防または改善用経口剤の製造のための、シトルリンまたはその塩の使用。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、安全で有効な皮膚の乾燥予防もしくは改善用経口剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、相対表皮水分含量の経時変化を示す図である。グラフの縦軸は相対表皮水分含量、グラフの横軸はシトルリンの摂取期間を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられるシトルリンとしては、L-シトルリンおよびD-シトルリンがあげられるが、L-シトルリンが好ましい。
シトルリンは、化学的に合成する方法、発酵生産する方法等により取得することができる。また、シトルリンは、市販品を購入することにより取得することもできる。
シトルリンを化学的に合成する方法としては、例えば、J. Biol. Chem.
122, 477 (1938)、J. Org. Chem.
6, 410 (1941)に記載の方法があげられる。
【0010】
L-シトルリンを発酵生産する方法としては、例えば、特開昭53−075387号公報、特開昭63−068091号公報に記載の方法があげられる。
また、L-シトルリンおよびD-シトルリンは、シグマ−アルドリッチ社等より購入することもできる。
シトルリンの塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等があげられる。
【0011】
酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩があげられる。
金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられる。
【0012】
アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられる。
有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の塩があげられる。
アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩があげられる。
【0013】
上記のシトルリンの塩のうち、リンゴ酸塩が好ましく用いられるが、他の塩、または2以上の塩を適宜組み合わせて用いてもよい。
本発明の皮膚の乾燥予防または改善用経口剤には、シトルリンまたはその塩に加え、適宜、各用途に適した添加剤を含有させることができる。
本発明の皮膚の乾燥予防または改善用経口剤を投与または摂取することにより皮膚の水分含量が上昇することから、皮膚の乾燥状態を予防または改善することができる。
【0014】
皮膚の乾燥状態としては、アトピー性皮膚炎、乾皮症、手荒れ、肌荒れ等に伴う皮膚の乾燥状態があげられる。
肌荒れとは、乾燥により角質層がガサガサになる、肌の表面に触れたときにしっとりとした感覚がなくなる等の症状をいう。
手荒れとは、角質細胞間脂質が少ないなど、もともと体質的に皮膚が乾燥しやすい人が、炊事や洗濯等の水仕事を行ったり、シャンプーや毛染め液等の化学物質を繰り返し扱うことにより手に刺激が加わることにより生ずる、手肌における上記症状をいう。
【0015】
本発明の皮膚の乾燥予防または改善用経口剤は、シトルリンまたはその塩を含有し、必要に応じて薬理学的に許容される一種または二種以上の担体、さらに必要に応じて他の治療のための有効成分を含有していてもよい。
本発明の皮膚の乾燥予防または改善用経口剤は、シトルリンまたはその塩を必要に応じ担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造することができる。
【0016】
本発明の皮膚の乾燥予防または改善用経口剤を製剤化する際には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等の添加剤を用いることができる。
皮膚の乾燥予防または改善用経口剤の剤形としては、錠剤、散剤、顆粒剤、乳剤、シロップ剤、カプセル剤等があげられる。
【0017】
例えば、剤形が、錠剤、散剤、顆粒剤等の場合には、乳糖、白糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコン油等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤などを添加して、製剤化することができる。
剤形がシロップ剤等の液体調製物である場合は、水、蔗糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類などを添加して、製剤化することができる。
【0018】
また、経口投与に適用な製剤には、一般的に飲食品に用いられる食品添加剤、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色料、漂白料、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。経口投与に適当な製剤は、そのまま、または例えば粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、ドリンク剤等の形態として皮膚の乾燥予防または改善用の健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品等の飲食品として用いてもよい。
【0019】
本発明の皮膚の乾燥予防または改善用経口剤中のシトルリンまたはその塩の濃度は、経口剤の種類、当該経口剤の投与により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、シトルリンまたはその塩として、通常は0.1〜90重量%、好ましくは0.5〜70重量%、特に好ましくは1〜50重量%である。
本発明の皮膚の乾燥予防または改善用経口剤の投与量は、投与形態、投与される者の年齢、体重等に応じて異なるが、通常成人に対し一日あたりシトルリンまたはその塩として、100〜10000mg、好ましくは100〜2000mg、特に好ましくは200〜1000mgであり、1日に1回または数回に分けて投与する。投与期間は、特に限定はないが、通常は1日間〜1年間、好ましくは1週間〜3ケ月間である。
【0020】
以下に、シトルリンの経口摂取による皮膚水分含量上昇効果を調べた試験例を示す。
試験例1
試験には、HOS:HR−1マウス(オス、5週齢、チャールズ・リバー社より購入)を用いた。飼育条件は、室温22±2℃、湿度35±15%、飼料および水は自由摂取とした。
【0021】
各試験群は10匹のマウスで構成し、第1群のマウスには市販粉末飼料CE−2(日本クレア社製)を、第2群のマウスには1.0重量%のL-シトルリン(協和醗酵工業社製)を含有するCE−2を給餌した。
各飼料の給餌開始1週間後から5週間後まで1週間毎に、各マウスの背側大腿部上部の皮膚表面の水分含量をSKICON−200(IBS社製)を用いて測定した。測定は1匹のマウスあたり10回行ってその個体の平均値を求め、さらに各試験群の平均値を算出した。
【0022】
該平均値を用い、下記の式に従って、相対表皮水分含量を算出した。
相対表皮水分含量(%)=(A2/A1)×100
A1:第1群の表皮水分含量
A2:第2群の表皮水分含量
結果を
図1に示す。
【0023】
図1より、シトルリンを経口摂取することにより、皮膚の水分含量が顕著に上昇するこ
とが明らかとなった。
以下に、本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0024】
シトルリンを含む錠剤の製造
シトルリンを含有する錠剤を、常法により製造する。すなわち、下記の各成分を均一に混合し、この混合物を単発式打錠機にて打錠し、直径5mm、重量15mgの錠剤を得る。
成分 量
L-シトルリン 10.0g
乳糖 90.0g
乾燥コーンスターチ 2.0g
タルク 1.8g
ステアリン酸マグネシウム 0.2g
【実施例2】
【0025】
シトルリンを含有する顆粒剤の製造
実施例1で得られる錠剤を粉砕、製粒し、篩別して20−50メッシュの顆粒剤を得る。
【実施例3】
【0026】
シトルリンを含有する飲料の製造
シトルリンを含有する飲料を、下記の各成分を均一に攪拌溶解し、精製水を加えて全量を1000mlとすることにより製造する。なお、下記成分中の適量とは、香料、色素に関しては、通常の飲料の製造に用いられる量であり、精製水に関しては、他の成分に加え、全量として1000mlにするために必要な量のことをいう。
【0027】
成分 量
L-シトルリン 5.0g
安息香酸ナトリウム 1.0g
果糖 10.0g
香料 適量
色素 適量
精製水 適量
【実施例4】
【0028】
シトルリンを含有する飴の製造
下記の各成分からなるシトルリンを含有する飴を、常法により製造する。
成分 量
L-シトルリン 1.00g
粉末ソルビトール 98.75g
香料 0.20g
ソルビトールシード 0.05g
【実施例5】
【0029】
シトルリンを含有する動物飼料の製造
下記の各成分からなるシトルリンを含有する動物飼料を、常法により製造する。
成分 量
L-シトルリン 1.0g
ラード 5.0g
コーン油 1.0g
ショ糖 20.0g
セルロース 5.0g
塩化コリン 0.2g
ビタミン混合物 1.0g
ミネラル混合物 3.5g
コーンスターチ 44.3g
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、安全で有効な皮膚の乾燥予防もしくは改善用経口剤を提供することができる。