(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸着手段が、筒状に配置された吸着材と、前記吸着材に吸着された揮発性有機物の脱着を促進させる加熱手段と、前記吸着材から脱着して前記濃縮手段により吸引された揮発性有機物の逆流を防止する弁と、を有する請求項1に記載の揮発性有機物回収システム。
前記吸着材が、活性炭、ゼオライト、シリカライト、粘土鉱物、疎水性シリカゲル、メソポーラスシリカ、カーボンナノチューブ、多孔質高分子、及び多孔質金属錯体からなる群から選択される1種以上を含む請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の揮発性有機物回収システム。
前記液化回収手段が、前記吸収材に吸収されている揮発性有機物を気化させる気化手段と、該気化した揮発性有機物を冷却して液化する冷却手段と、該液化した揮発性有機物を回収する回収容器と、を備える請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の揮発性有機物回収システム。
【背景技術】
【0002】
塗装、印刷、洗浄等の様々な分野において大量に用いられている有機溶剤の多くは、揮発性有機物(VOC)を多量に含んでいる。このような有機溶剤の使用に伴い、VOCガスが大量に発生し、大気中に放出されて拡散している。VOCは、光化学オキシダントと浮遊粒子状物質の主な原因であるため、工場等の固定発生源からのVOCの排出及び飛散に関し、排出規制や自主的取組の促進が取り組まれている。
【0003】
例えば、大規模工場等で発生する比較的高濃度のVOCに関しては、主に触媒、助燃剤などを用いた燃焼法により処理する方法が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。しかし、VOCを燃焼により処理する方法は、中小工場で発生した低濃度・大風量のVOC処理には適していない。そのため、特に中小工場が中心である塗装、印刷、洗浄業界が望むような、低コストでのVOC処理を可能にする技術は不十分であり、さらなる開発が望まれている。
【0004】
このような要望を満たすためには、低VOC濃度であっても高い吸着能力を有する吸着材を使用し、回収する方法が適している。例えば代表的な吸着材である活性炭は、1000m
2/g以上の大比表面積を有し、VOCを効率的に回収することが可能である(例えば特許文献3参照)。しかし、活性炭では、吸着後の再生により、活性が低下するため、再利用に制限があるなど問題がある。
【0005】
一方、非可燃性吸着材であるゼオライト等の無機酸化物系吸着材は、再生が可能であり、不燃性の無機物を利用するため、可燃性VOCガスの回収にも適している。しかし、ゼオライト等の無機酸化物系吸着材は、活性炭に比べて、処理できるVOC量が少ないことや、高価であることなどの問題点がある。
【0006】
また、有機溶剤を回収する装置やシステムが種々提案されている。一般に、有機溶剤回収装置は、気化した有機溶剤を濃縮する濃縮装置と、濃縮された有機溶剤を液化する液化装置とから構成される。例えば、内部に吸着材をそれぞれ有する複数の吸着塔を用い、1塔の吸着材に有機溶剤を吸着させた後、この塔の吸着材から真空ポンプによる吸引と加熱によって有機溶剤を脱着させて回収するとともに、吸着操作を他の塔に切り換える吸着方法が提案されている(例えば特許文献4参照)。
【0007】
しかし、上記のような複数の吸収塔で交互に吸着及び脱着を繰り返す方法では、吸着材に吸着した有機溶剤の脱着時に塔内にある程度の流量の空気を送り込まないと十分脱着しないことから、脱着工程の流量を大幅に減少させることはできず、濃縮倍率を十分高めることが難しい。また、回収した有機溶剤を液化して再利用する場合、回収した有機溶剤の濃縮倍率が低いと、後段の液化過程において冷却装置によって十分冷却しないと液化回収ができないことから、冷却装置が大型化し、コストも高くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、揮発性有機物を効率的に液化して回収することができる揮発性有機物回収システム及び揮発性有機物回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
<1> 気化した揮発性有機物を含む雰囲気を通過させることにより前記揮発性有機物を吸着材で吸着して捕集する吸着手段と、
前記吸着手段により捕集された揮発性有機物を前記吸着材から脱着させ、該揮発性有機物を吸引するとともに、固体状であって、前記揮発性有機物を吸収する多孔質疎水性有機分子を含む吸収材、前記揮発性有機物を吸収することによりゲル化する吸収材、又は、ゲル状であって、前記揮発性有機物に対して不活性であり、該揮発性有機物を溶解する不活性有機溶媒と、前記不活性有機溶媒のゲル化剤としての疎水性有機分子物質とを含む吸収材に吸収させて液状又はゲル状に濃縮する濃縮手段と、
前記濃縮手段により濃縮された揮発性有機物を前記吸収材から液体として回収する液化回収手段と、
を有
し、
前記濃縮手段が、前記吸着手段から脱着させた揮発性有機物を収容する密閉型の収容室と、前記収容室内に吸引負圧を生じさせる吸引手段と、前記吸引負圧により前記収容室内に吸引されて収容された揮発性有機物を吸収する前記吸収材とを備え、
前記収容室内の少なくとも上部及び下部に、前記吸収材が収納された吸収材収納容器が設けられている揮発性有機物回収システム。
<2> 前記吸着手段が、筒状に配置された吸着材と、前記吸着材に吸着された揮発性有機物の脱着を促進させる加熱手段と、前記吸着材から脱着して前記濃縮手段により吸引された揮発性有機物の逆流を防止する弁と、を有する<1>に記載の揮発性有機物回収システム。
<3> 前記吸着材が、ミクロ孔、メソ孔、又はマクロ孔を有する多孔質状である<1>又は<2>に記載の揮発性有機物回収システム。
<4> 前記吸着材が、活性炭、ゼオライト、シリカライト、粘土鉱物、疎水性シリカゲル、メソポーラスシリカ、カーボンナノチューブ、多孔質高分子、及び多孔質金属錯体からなる群から選択される1種以上を含む<1>〜<3>のいずれかに記載の揮発性有機物回収システム。
<
5> 前記濃縮手段を運搬する運搬手段をさらに有する<1>〜<
4>のいずれかに記載の揮発性有機物回収システム。
<
6> 前記吸収材収納容器が、前記吸収材を複数に仕切る開閉手段を備えた仕切板を有する
<1>〜<5>のいずれかに記載の揮発性有機物回収システム。
<
7> 前記液化回収手段が、前記吸収材に吸収されている揮発性有機物を気化させる気化手段と、該気化した揮発性有機物を冷却して液化する冷却手段と、該液化した揮発性有機物を回収する回収容器と、を備える<1>〜<
6>のいずれかに記載の揮発性有機物回収システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、揮発性有機物を効率的に液化して回収することができる揮発性有機物回収システム及び揮発性有機物回収方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら本発明についてより具体的に説明する。
本発明に係る揮発性有機物(VOC)回収システムは、気化した揮発性有機物を含む雰囲気を通過させることにより前記揮発性有機物を吸着して捕集する吸着手段と、前記吸着手段により捕集された揮発性有機物を脱着させ、該揮発性有機物を吸引するとともに吸収材に吸収させて濃縮する濃縮手段と、前記濃縮手段により濃縮された揮発性有機物を液体として回収する液化回収手段と、を有する。
【0014】
−第1の実施形態−
図1は、第1の実施形態のVOC回収システムを構成する吸着手段10と濃縮手段30の一例を示し、
図2は、第1の実施形態のVOC回収システムを構成する液化回収手段50の一例を示している。この揮発性有機物(VOC)回収システムは、主に、VOCを含む雰囲気ガスからVOCを選択的に吸着する吸着カートリッジ20等を備えたVOC吸着装置(吸着手段)10と、VOC吸着装置10に吸着された後脱着させたVOCを濃縮して回収するVOC回収車(濃縮手段)30と、VOC回収車30により濃縮して回収した揮発性有機物を液体として回収する冷却コンデンサー56等を備えた液化回収装置(液化回収手段)50から構成されている。
【0015】
<VOC吸着装置>
VOC吸着装置10は、ガス導入口12、拡散槽14、プレフィルター16、VOC吸着カートリッジ20、回収車接続口18、排風機22、ガス排出口24などから構成されている。
図3に示すように、固定発生源から発生したVOCを含む雰囲気(VOCガス)は、排出ポンプ(不図示)により、導入口12を通じて拡散槽14に導入される。VOCガスは拡散槽14にて均一に拡散され、プレフィルター16により固形物が除去される。続いて、吸着材が充填されているVOC吸着カートリッジ20でVOCを吸着して捕集した後、排出口24から清浄空気として大気中に放出される。
【0016】
本発明で用いる吸着カートリッジ20の形状は特に限定されず、例えば、円筒形、円錐形、直方形などを採用することができるが、
図4に示すように、中心部が空洞29の筒形であって、側面に吸着材21が充填されている、言わば竹輪型であることが望ましい。
【0017】
また、吸着カートリッジ20は、例えば吸着材21の充填部にVOCの脱着(脱離)を促進させるための加熱手段23が設けられていることが望ましい。加熱手段23としては、VOCを吸着する間はVOCの通過を遮らないように、金網など、孔が開いた板状のもの、あるいは、棒状のものなどを吸着材21の充填部に配置しておくことが好ましい。
【0018】
また、吸着カートリッジ20の上部には接続口付の仕切りが設けられていることが望ましく、特に、吸着材21から脱着して濃縮手段30により吸引されたVOCの逆流を防止する弁(逆止弁)27を設けることが好ましい。
【0019】
吸着材21としては、通過するVOCと化学反応せずにVOCを吸着し、かつ、加熱、吸引などによって脱着させることができるものであれば特に限定されず、回収するVOCの種類に応じて選択すればよい。例えば、ミクロ孔、メソ孔、又は、マクロ孔を有する多孔質状であることが好ましい。具体的には、活性炭、ゼオライト、シリカライト、粘土鉱物、疎水性シリカゲル、メソポーラスシリカ、カーボンナノチューブ、多孔質高分子、及び多孔質金属錯体が挙げられ、これらの中から選択した1種を用いることができ、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
VOCガスを吸着カートリッジ20に導入して通過させる流路としては、例えば、
図4に点線で示すように、カートリッジ20の下部から入り、空洞部分29を通って側面から排出されてもよいし、
図5に示すように、側面から入って空洞部分29に抜け、下部から排出されてもよい。いずれの場合も、吸着材21を支持する支持体31としては金網などの通気性が高いものを使用し、吸着材を通過することによって発生する圧力損出をできるだけ小さくし、かつVOC吸着量が最大となるようなガス流通方式を採用することが望ましい。
【0021】
吸着材21のVOC吸着飽和量に達した場合は、加熱手段23により吸着材21を加熱し、VOCを脱着させることができる。吸着カートリッジ20に設けた接続口18を回収車のホース37に接続し、VOCガスを回収する。VOCの脱着時には、
図6に示すようにカートリッジ20の外周に設けたシャッター25を開放状態にしてもよいし、
図7に示すように密閉状態にしてもよい。なお、開放状態の場合は、大気開放する時に流入する空気や不活性ガスの流速を利用した脱着の効果を付与することができ、密閉状態の場合は、減圧による脱着の効果を付与することができる。
【0022】
<VOC回収車>
VOC回収車30は、バルブ付の吸着カートリッジ接続口38及びホース37などの接続手段、VOCを収容する濃縮槽32、下部吸収槽36A、上部吸収槽36B、真空ポンプ34などから構成された回収ユニットを、自走車(搬送手段)40の荷台42に設置したものである。濃縮槽32は密閉型であり、真空ポンプ34によって濃縮槽32内に吸引負圧を生じさせ、吸引負圧により濃縮槽32内に吸引されて収容されたVOCが吸収槽36A,36B内の吸収材に吸収されるように構成されている。
【0023】
濃縮槽32の数及び配置は特に限定されないが、複数の濃縮槽32を設けることが好ましい。各濃縮槽32に吸収槽36A,36Bを配置して吸着カートリッジ20から脱着したVOCを同時に吸引するようにすれば、短時間で効率よく回収することができる。
【0024】
吸収槽36A,36Bには、それぞれVOCを吸収する吸収材が配置されている。濃縮槽32内に吸引されたVOCは、温度の低下に伴い一部が液化し、液化したVOCは濃縮槽32の下部に設けられた吸収槽36Aに回収される。一方、気体のまま存在するVOCは、濃縮槽32の上部に設置した吸収槽36Bにおいて吸収される。なお、吸収槽36A,36Bの数及び配置は限定されず、例えば、濃縮槽32の内部側面に設けてもよい。
【0025】
また、吸収槽36A,36Bに開閉手段を備えた仕切板33を設けておくことが好ましい。開閉自在の仕切板33を設けておけば、液化回収装置50によってVOCを回収する際に、
図2に示すように、吸収槽36から複数の管52を通じて短時間で効率的にVOCを回収することができる。
【0026】
吸収材35としては、吸収したVOCを再度放出することができるものであれば特に限定されないが、VOCを吸収することによりゲル化し、VOCを液化捕集することができるもの、固体状であって、VOCを迅速に吸収できる多孔質疎水性有機分子を用いたもの、あるいは、ゲル状であって、VOCを溶解する不活性有機溶媒と、不活性有機溶媒のゲル化剤としての疎水性有機分子物質とを含むものなどが好ましい。例えば、特願2008−207817号の明細書に記載されている揮発性有機物吸収材を好適に用いることができる。
【0027】
上記VOCを溶解する不活性有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族二塩基酸エステル、フタル酸エステル、シリコーンオイル及びこれらの混合物などが好ましい。特に、脂肪族二塩基酸エステルとしては、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジメチルセバケート及びこれらの混合物を好適に用いることができる。
【0028】
また、上記不活性有機溶媒のゲル化剤としての疎水性有機分子物質としては、ポリスチレン、オクタデシルアクリレート、トリアコンタアクリレート、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、ポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂及びこれらの混合物が好ましい。
【0029】
VOC回収車30では、吸着カートリッジ20に吸着させたVOCをVOC吸着装置10から揮発性有機物を回収する前に濃縮槽を真空ポンプにより真空にする。VOC回収車30のホース37を吸着カートリッジ20に接続し、バルブ(不図示)を開放する。圧力の高い吸着カートリッジ20側から濃縮槽32側にVOCガスを含んだ空気が移動する。このように、真空ポンプ34によって真空状態にした濃縮槽32を大気開放することで吸着カートリッジ20を通じて流入する空気の移動をドライビングフォースとすることにより静的環境下での回収を実現することができる。
【0030】
濃縮槽32には高濃度VOCガスが集まり、温度の低下とともに液化したVOCが下部吸収槽36Aに流れ込む。液体VOCは、下部吸収槽36Aに設けられた吸収材35により吸収されて回収される。一方、濃縮槽32に残留するVOCガスは、上部吸収槽36Bに設けられた吸収材35により静的環境下において吸収されて回収される。VOCガスは、吸収材35に吸収される時に液化し、例えばゲル状物質として回収される。
【0031】
<液化回収装置>
液化回収装置50は、エバポレーターの原理を用いており、吸収槽加熱手段(気化手段)54、冷却コンデンサー56、液体回収槽60、真空ポンプ62、冷却水循環手段58などから構成されている。
【0032】
真空ポンプ62により液化回収装置全体(冷却コンデンサー56及び液体回収槽60)を減圧状態にするとともに、吸収槽36の吸収材35に捕集されているVOCを加熱処理により気化させて冷却コンデンサー56に移動させる。VOCガスは冷却トラップにより液体回収槽60に液化VOC64として回収される。
液化回収後の空気は、例えば、取り除けなかったVOCを除去する最終フィルタ(不図示)に流通後、大気中に放出すればよい。
【0033】
なお、VOCの液化回収は上記のような冷却トラップによる手段に限定されない。別の手段によるVOC液化回収装置として、例えば、上下圧縮板、圧縮手段、加熱、冷却手段などから構成し、圧縮などの物理的手段を用いて、吸収材35に含まれている液化VOCを搾り出すことで液化VOCを回収してもよい。この場合は、吸収材35は、スポンジのように吸収した液体を圧縮により容易に放出する構造・材質であることが望ましい。
【0034】
また、吸収材35としては、加熱あるいは冷却により吸収材35の構造を変化させ、圧縮等の物理手段を用いて容易に液体VOCを回収できる特徴を持つことが望ましい。このような材料の一例として、ピートモスが挙げられる。ピートモスはミズゴケが泥炭化したものであり、多孔質、疎水性、親油性を呈しているため、容易にVOCを吸収する。基本構造は、繊維状物質が絡まっているため、圧縮により吸収したVOCを放出する。
【0035】
このように、本実施形態では、VOC回収車30と組み合わせることにより、吸着材の交換や処理能力の低下を抑制することが可能である。また、回収車30中にVOC吸収材35を設けることにより、VOCガス運搬時の安全性を確保することが可能である。
【0036】
また、本実施形態のVOC回収システム10,30,50は、設置場所、回収したVOCの処分などは特に限定されないが、吸収材35に濃縮液化したVOCを液化回収することにより、効率よくVOCを回収することが可能であるため、回収したVOCを再利用するリサイクルシステムとして用いることができる。
【0037】
<吸着工程>
例えば、塗装、印刷、洗浄等に用いる有機溶剤を排出する工場にVOC吸着装置10を設置し、排出されたVOCを吸着捕集する。
【0038】
<濃縮工程>
一定期間運転すると吸着限界に達するため、回収車30が工場に来て、吸着カートリッジ20からVOCを脱着させて回収する。回収には、吸着カートリッジ20を加熱してVOCを脱着させることにより、脱着したVOCを濃縮槽32に移動させ回収する。
濃縮槽32に貯められた高濃度VOCは、そのままでは、発火、爆発の危険性がある。また、高濃度とはいえ、直接液化して回収するには0℃付近まで冷却する必要があり、コストが高くなる。そこで、濃縮VOCを吸収材35に一旦吸収し、ゲル化させて運搬する。
【0039】
<液化回収工程>
濃縮槽32内の吸収材35に吸収されて保持されたVOCは、吸収材35を減圧下で加熱し、冷却コンデンサー56により冷却することで、液体VOCとして回収される。回収した液体VOCは塗料用有機溶剤として再利用することができる。
【0040】
第1の実施形態では、VOC吸着装置(吸着手段)10と、VOC回収車(濃縮手段)30と、液化回収装置(液化回収手段)50をそれぞれ分離してシステムを稼動させるが、吸着手段と濃縮手段と液化回収手段を一体化して稼動させるシステムとしてもよい。
【0041】
−第2の実施形態−
図8は、第2の実施形態に係るVOC回収システムの構成を概略的に示している。本実施形態のVOC回収システム200は、VOC吸着装置(吸着手段)10と、VOC濃縮装置(濃縮手段)30と、液化回収装置(液化回収手段)50が一体的に構成されている。このような構成であれば、例えばVOCを排出工場内で液体VOCを回収してリサイクルすることができる。
【0042】
−第3の実施形態−
図9は、第3の実施形態に係るVOC回収システムの構成を概略的に示している。本実施形態のVOC回収システム300では、濃縮手段と液化回収手段とを兼ねた濃縮液化回収手段70が設けられている。濃縮槽74内は真空ポンプ72によって吸引きれ、VOC吸着装置から移動したVOCは濃縮槽74内の上部に設けた吸収材35に吸収されて濃縮されるとともに、液化したVOCは濃縮槽74の下部に回収される。このような構成でも、例えばVOCを排出工場内で液体VOCを回収してリサイクルすることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例(試験例)について説明する。
【0044】
<試験例1>
−温度の違いによる活性炭トルエン吸着等温線の変化−
顆粒状活性炭0.5gを30mLバイアルに入れTFライナー付きブチルゴム栓とアルミキャップで密栓し、トルエンを液体の状態で2μL〜400μL添加し、よく撹拌してから35、50、75、100、150℃の各吸着温度に設定されたヘッドスペースサンプラー中に24時間静置した。吸着平衡に達した後、ガスクロマトグラフィーで気相濃度を測定し、添加したトルエン量と気相存在量のマスバランスから吸着量を算出した。
【0045】
図10に吸着等温線を示す。この結果、温度の上昇とともにトルエンの吸着量が減少した。150℃に加熱した時の活性炭におけるトルエン吸着量は、35℃の場合と比較すると約60%程度であった。この結果は、活性炭の加熱によりトルエンが脱着できることを示している。
【0046】
<試験例2>
−活性炭飽和吸着トルエンの脱着試験(開放環境)−
加熱乾燥した顆粒状活性炭1gを飽和トルエン蒸気中に24時間静置し、活性炭にトルエンを飽和吸着させた。活性炭の重量は、トルエンを吸着することにより、1.42gに増えており、0.42gのトルエンを吸着していることを示している。
【0047】
図11に脱着試験装置の概要を示す。トルエン飽和活性炭1をガス洗浄瓶2の中に充填しオイルバス5中に入れた。洗浄瓶2のガス流入口には、逆止弁3を設置し、大気取り込み口とした。ガス排出口には逆止弁4、コック7Cの順に接続し、濃縮用セパラブルフラスコ6と接続した。セパラブルフラスコ6は、容量2Lで、コック7C,7Dを調節して予め真空ポンプで0.1Paに減圧した。
ガス洗浄瓶2を150℃、30分間加熱し、活性炭1中のトルエンを脱着させた。コック7A,7Bの開放に伴い、ガス洗浄瓶2の流入口から空気が流入し、トルエンガスを濃縮槽6に移動させた。
【0048】
試験終了後、活性炭の重量を測定すると1.22gであった。これは、0.2gのトルエンが脱着したことを示している。脱着率は、約48%であった。
【0049】
<試験例3>
−活性炭飽和吸着トルエンの脱着試験(密閉環境)−
加熱乾燥した顆粒状活性炭1gを飽和トルエン蒸気中に24時間静置し、活性炭にトルエンを飽和吸着させた。活性炭の重量は、トルエンを吸着することにより、1.4gに増えており、0.4gのトルエンを吸着していることを示している。
【0050】
トルエン飽和活性炭1をガス洗浄瓶2の中に充填しオイルバス5中に入れた。洗浄瓶2のガス流入口には、コック7Aを設置し、大気と遮断した。ガス排出口には逆止弁4、コック7Cの順に接続し、濃縮用セパラブルフラスコ6と接続した。セパラブルフラスコ6は、容量2Lで、コック7C,7Dを調節して予め真空ポンプで0.1Paに減圧した。
ガス洗浄瓶2を150℃、30分間加熱し、活性炭1中のトルエンを脱着させた。コック7Bの開放に伴い、ガス洗浄瓶2とセパラブルフラスコ6の気圧が一定になるまで、洗浄瓶2側からセパラブルフラスコ6にトルエンガスを含む空気が移動した。
【0051】
試験終了後、活性炭の重量を測定すると1.24gであった。これは、0.16gのトルエンが脱着したことを示している。脱着率は、約40%であった。
【0052】
以上本発明について説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例(試験例)に限定されるものではない。例えば、吸着カートリッジは
図4〜
図7に示した形態に限定されず、適宜設計すればよい。