特許第5697862号(P5697862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5697862インスリン様成長因子I受容体に対する抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697862
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】インスリン様成長因子I受容体に対する抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20150319BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20150319BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150319BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150319BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20150319BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20150319BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20150319BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20150319BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20150319BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   A01K67/027
   A61K39/395 N
   A61K45/00
   A61K48/00
   A61P35/00
   A61P43/00 121
   C07K16/28ZNA
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/00 101
   C12P21/08
【請求項の数】27
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2009-222178(P2009-222178)
(22)【出願日】2009年9月28日
(62)【分割の表示】特願2008-267173(P2008-267173)の分割
【原出願日】2001年12月20日
(65)【公開番号】特開2009-297037(P2009-297037A)
(43)【公開日】2009年12月24日
【審査請求日】2009年10月28日
【審判番号】不服2012-10723(P2012-10723/J1)
【審判請求日】2012年6月8日
(31)【優先権主張番号】60/259,927
(32)【優先日】2001年1月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(73)【特許権者】
【識別番号】398005777
【氏名又は名称】アムジェン フレモント インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(72)【発明者】
【氏名】コーエン ブルース ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ベーブ ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー ペネロープ イー.
(72)【発明者】
【氏名】モイヤー ジェームス ディー.
(72)【発明者】
【氏名】コーバラン ホセ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ギャロ マイケル
【合議体】
【審判長】 郡山 順
【審判官】 飯室 里美
【審判官】 中島 庸子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4456166(JP,B2)
【文献】 Biochemical and biophysical research communications. 1993, Vol.196, No.1, p.92−98
【文献】 Cancer immunology, immunotherapy. 2000, Vol.49, No.4−5, p.243−252
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K14/00-19/00
C12N15/00-15/90
C12N5/00
SWISS−PROT/PIR/GeneSeq
DDBJ/EMBL/GenBank/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン様成長因子I受容体(IGF−IR)に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合部分であって、該抗体が、
a)配列番号:4記載のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含む重鎖、ならびに配列番号:2記載のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖;
b)配列番号:8記載のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含む重鎖、ならびに配列番号:6記載のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖;または
c)配列番号:16記載のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含む重鎖、ならびに配列番号:14記載のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
前記抗体が、配列番号:2、配列番号:6、および配列番号:14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
前記抗体が、シグナル配列を含まない配列番号:47、またはシグナル配列を含まない配列番号:51記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
前記抗体が、配列番号:4、配列番号:8、および配列番号:16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
前記抗体が、シグナル配列を含まない配列番号:45、またはシグナル配列を含まない配列番号:49記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
IGF−IRに特異的に結合するモノクローナル抗体であって、該抗体が、
a)配列番号:49記載のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含む重鎖アミノ酸配列;および
b)配列番号:51記載のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖アミノ酸配列
を含む、抗体。
【請求項7】
IGF−IRに特異的に結合するモノクローナル抗体であって、該抗体が、
a)配列番号:45記載のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含む重鎖アミノ酸配列;および
b)配列番号:47記載のCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖アミノ酸配列
を含む、抗体。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合部分であって、該抗体またはその抗原結合部分が、
a)マウス、ラット、イヌまたはウサギのIGF-IRに結合しない特性;
b)カニクイザルまたはアカゲザルのIGF-IRに結合するが、マーモセットIGF-IRには結合しない特性;
c)IGF-IまたはIGF-IIのIGF-IRへの結合を阻害する特性;
d)インスリン受容体に対する選択性よりも少なくとも50倍高い、IGF-IRに対する選択性を有する特性;
e)インビボで腫瘍成長を阻害する特性;
f)IGF-IRを発現している細胞と共にインキュベートすると、細胞表面からのIGF-IRの消失を引き起こす特性;
g)IGF-IR誘導性チロシンリン酸化を阻害する特性;
h)8×10-9Mまたはそれ未満のKdでIGF-IRに結合する特性;および
i)Koffが10-4またはそれ未満であるIGF-IRに対する解離速度を有する特性
からなる群から選択される少なくとも一つの特性を有する、抗体またはその抗原結合部分。
【請求項9】
前記特性のすべてを有する、請求項記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項10】
IGF-IまたはIGF-IIのIGF-IRへの結合を阻害し、8×10-9Mまたはそれ未満のKdでIGF-IRに結合し、かつインスリン受容体に対する選択性よりも少なくとも50倍高い、IGF-IRに対する選択性を有する、請求項記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項11】
前記特性のすべてを有する、請求項10記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項12】
IGF-IRとIGF-IまたはIGF-IIとの結合を、100nM未満のIC50で阻害する、請求項1〜11のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項13】
a)免疫グロブリンG(IgG)、IgM、IgE、IgAもしくはIgD分子であるか、もしくはそれらに由来するか;または
b)Fab断片、F(ab')2断片、Fv断片、ヒト抗体、一本鎖抗体、もしくは二重特異性抗体である、
請求項1〜12のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合部分、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項15】
抗悪性腫瘍薬、化学療法薬、抗脈管形成薬または抗腫瘍薬をさらに含む、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項記載の抗体を作成するための方法であって、
a)B細胞においてヒト抗体を発現することができる哺乳動物である、非ヒト哺乳動物を、IGF-IRを含む免疫原により免疫処置を行う段階;
b)前記哺乳動物からB細胞を単離する段階;
c)該B細胞またはそれに由来する細胞系をスクリーニングして、IGF-IRに結合する抗体を産生する細胞系を同定する段階;
d)IGF-IRに結合する抗体を発現する細胞系を培養する段階;および
e)該細胞系からIGF-IRに結合する抗体を単離する段階
を含む方法。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合部分を産生する、単離された細胞系。
【請求項18】
診断の必要な対象においてIGF−IR発現性腫瘍の存在または位置を診断するための薬剤の製造のための請求項1〜13のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合部分の使用。
【請求項19】
ヒトにおいて癌を治療するための薬剤の製造のための請求項1〜13のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合部分の使用。
【請求項20】
抗体またはその抗原結合部分の必要な患者を治療するための薬剤の製造のための請求項1〜13のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合部分の使用。
【請求項21】
前記薬剤が、抗悪性腫瘍薬、抗腫瘍薬、抗脈管形成薬、または化学療法薬をさらに含む、請求項19または20記載の使用。
【請求項22】
請求項1〜13のいずれか一項記載の抗体の、重鎖もしくはその抗原結合部分、または軽鎖もしくはその抗原結合部分をコードする核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項23】
請求項22記載の核酸分子を含むベクターであって、該核酸分子と作用可能に結合した発現制御配列を任意に含む、ベクター。
【請求項24】
請求項23記載のベクター、または請求項22記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項25】
抗IGF-IR抗体またはその抗原結合部分を作製する方法であって、請求項24記載の宿主細胞または請求項17記載の細胞系を好適な条件下で培養する段階、および該抗体またはその抗原結合部分を回収する段階を含む方法。
【請求項26】
請求項22記載の核酸を含み、該核酸を発現する非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項27】
必要な対象を治療するための薬剤の製造のための、請求項1〜13のいずれか一項記載の抗体の重鎖もしくはその抗原結合部分をコードする単離された核酸分子、および該抗体の軽鎖もしくはその抗原結合部分をコード単離された核酸分子;または請求項1〜13のいずれか一項記載の抗体の重鎖および軽鎖の両方もしくはその抗原結合部分をコードする単離された核酸分子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年1月5日に提出された米国特許仮出願第60/259,927号の恩典を請求するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インスリン様成長因子(IGF-I)は血漿中を高濃度で循環している7.5kDのポリペプチドであり、ほとんどの組織で検出可能である。IGF-Iは細胞分化および細胞増殖を刺激し、ほとんどの哺乳類細胞種にとって持続的な増殖のために必要である。これらの細胞種には、例えば、ヒト二倍体線維芽細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、Tリンパ球、神経細胞、骨髄性細胞、軟骨細胞、骨芽細胞および骨髄幹細胞が含まれる。細胞増殖がIGF-I/IGF-I受容体相互作用によって媒介されるさまざまな細胞種の総説については、Goldringら、Eukar. Gene Express.、1: 31-326(1991)(非特許文献1)を参照されたい。
【0003】
IGF-I誘導性の細胞増殖または分化に至る形質導入経路における第1の段階は、IGF-IまたはIGF-II(または生理的濃度を上回るインスリン)のIGF-I受容体との結合である。IGF-I受容体は次の2種類のサブユニットから構成される:αサブユニット(完全に細胞外にあってリガンド結合に働く130〜135kDのタンパク質)およびβサブユニット(膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを有する95kDの膜貫通タンパク質)。IGF-IRはチロシンキナーゼ増殖因子受容体のファミリーに属し(Ullrichら、Cell 61: 203-212、1990(非特許文献2))、インスリン受容体と構造的に類似している(Ullrichら、EMBO J. 5: 2503-2512、1986(非特許文献3))。IGF-IRは最初に一本鎖プロレセプターポリペプチドとして合成され、それがグリコシル化、タンパク質加水分解切断および共有結合形成によるプロセシングを受けて集合し、2つのαサブユニットおよび2つのβ-サブユニットを含む成熟型の460kDヘテロ四量体となる。βサブユニットはリガンド活性化チロシンキナーゼ活性を有する。この活性は、β-サブユニットの自己リン酸化およびIGF-IR基質のリン酸化に関与するリガンド作用を媒介するシグナル伝達経路と関係することが示されている。
【0004】
IGF-Iのインビボでの血清レベルは下垂体成長ホルモン(GH)の有無に依存する。肝臓はGH依存的なIGF-I合成が行われる主な部位であるが、最近の研究により、大半の正常組織もIGF-Iを産生することが示されている。種々の腫瘍組織もIGF-Iを産生することがある。このため、IGF-Iは、自己分泌またはパラ分泌、さらには内分泌の機構を介した正常および異常な細胞増殖の調節因子として作用すると思われる。IGF-IおよびIGF-IIはインビボでIGF結合タンパク質(IGFBP)に結合する。IGF-IRとの相互作用に対する遊離IGFの利用可能性はIGFBPによって調節される。IGFBPおよびIGF-Iの総説については、Grimbergら、J. Cell. Physiol. 183: 1-9、2000(非特許文献4)を参照されたい。
【0005】
インビトロおよびインビボでの腫瘍細胞の維持におけるIGF-Iおよび/またはIGF-IRの役割に関してはかなりの証拠がある。IGF-IRレベルは、肺(Kaiserら、J. Cancer Res. Clin Oncol. 119: 665-668、1993(非特許文献5);Moodyら、Life Sciences 52: 1161-1173、1993(非特許文献6);Macauleyら、Cancer Res.、50: 2511-2517、1990(非特許文献7))、乳房(Pollakら、Cancer Lett. 38: 223-230、1987(非特許文献8);Foekensら、Cancer Res. 49: 7002-7009、1989(非特許文献9);Cullenら、Cancer Res. 49: 7002-7009、1990(非特許文献10);Arteagaら、J. Clin. Invest. 84: 1418-1423、1989(非特許文献11))、前立腺および結腸(Remaole-Bennetら、J. Clin. Endocrinol. Metab. 75: 609-616、1992(非特許文献12);Guoら、Gastroenterol. 102: 1101-1108、1992(非特許文献13))の腫瘍で上昇している。トランスジェニックマウスの前立腺上皮におけるIGF-Iの調節不全的な発現は新生物を引き起こす(DiGiovanniら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 3455-60、2000(非特許文献14))。加えて、IGF-Iはヒト神経膠腫の自己分泌刺激因子であるように思われ(Sandberg-Nordqvistら、Cancer Res. 53: 2475-2478、1993(非特許文献15))、その一方で、IGF-IはIGF-IRを過剰発現する繊維肉腫の成長を誘発する(Butlerら、Cancer Res. 58: 3021-27、1998(非特許文献16))。さらに、IGF-Iレベルが「正常高値」である個体は、IGF-Iレベルが「正常低値」の範囲にある個体に比べて一般的な癌の危険性が高い(Rosenら、Trends Endocrinol. Metab. 10: 136-41、1999(非特許文献17))。これらの腫瘍細胞種の多くは培養下でIGF-Iに反応して増殖性シグナルを生じ(Nakanishiら、J. Clin. Invest. 82: 354-359、1988(非特許文献18);Freedら、J. Mol. Endocrinol. 3: 509-514、1989(非特許文献19))、インビボ増殖に関する自己分泌性またはパラ分泌性ループが想定されている(LeRoithら、Endocrine Revs. 16: 143-163、1995(非特許文献20);Yeeら、Mol. Endocrinol. 3: 509-514、1989(非特許文献21))。IGF-I/IGF-I受容体相互作用が種々のヒト腫瘍の成長に果たす役割の総説については、Macaulay、Br. J. Cancer、65: 311-320、1992(非特許文献22)を参照のこと。
【0006】
IGF-Iレベルの上昇は、先端巨大症および巨人症を含む、癌以外の複数の病的状態とも相互に関連しており(Barkan、Cleveland Clin. J. Med. 65: 343、347-349、1998(非特許文献23))、IGF-I/IGF-I受容体の機能異常は乾癬(Wraightら、Nat. Biotech. 18: 521-526、2000(非特許文献24))、アテローム硬化および血管形成術後の血管平滑筋の再狭窄 (Bayes-Genisら、Circ. Res. 86: 125-130、2000(非特許文献25))とも関連づけられている。IGF-Iレベルの上昇は、糖尿病または微小血管増殖などのその合併症でも問題となりうる(Smithら、Nat. Med. 5: 1390-1395、1999(非特許文献26))。血清GHレベルが低下した場合、またはGHに対する非感受性もしくは抵抗性がある場合に特に生じるIGF-Iレベルの低下は、低身長(Laron、Paediatr. Drugs 1: 155-159、1999(非特許文献27))、神経障害、筋力量減少および骨粗鬆症(Rosenら、Trends Endocrinol. Metab. 10: 136-141、1999(非特許文献17))などの疾患に伴ってみられることがある。
【0007】
IGF-IR RNAに対するアンチセンス発現ベクターまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることにより、IGF-IRの妨害はIGF-IまたはIGF-IIを介した細胞増殖の阻害につながることが示されている(例えば、Wraightら、Nat. Biotech. 18: 521-526、2000(非特許文献24)を参照のこと)。このアンチセンス戦略は、いくつかの細胞種およびヒト腫瘍細胞株で細胞増殖を抑制することに成功している。IGF-Iのペプチド類似体(Pietrzkowskiら、Cell Growth & Diff. 3: 199-205、1992(非特許文献28);およびPietrzkowskiら、Mol. Cell. Biol.、12: 3883-3889、1992(非特許文献29))またはIGF-I RNAに対するアンチセンスRNAを発現するベクター(Trojanら、Science 259: 94-97、1992(非特許文献30))を用いて増殖を抑制することもできる。さらに、IGF-IRに対する抗体(Arteagaら、Breast Canc. Res. Treatm.、22: 101-106、1992(非特許文献31);およびKalebicら、Cancer Res. 54: 5531-5534、1994(非特許文献32))、およびIGF-IRのドミナントネガティブ変異体(Pragerら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91: 2181-2185、1994(非特許文献33); Liら、J. Biol. Chem.、269: 32558-32564、1994(非特許文献34)およびJiangら、Oncogene 18: 6071-77、1999(非特許文献35))は、形質転換された表現型を元に戻し、腫瘍形成を阻害し、転移性表現型の喪失を誘導することが可能である。
【0008】
IGF-Iはアポトーシスの調節にも重要である。アポトーシスはプログラムされた細胞であり、免疫系および神経系の成熟を含む、さまざまな発生過程に関与している。発生における役割に加えて、アポトーシスは腫瘍形成に対する重要な細胞防御装置としても働くことが示されている(Williams、Cell 65: 1097-1098、1991(非特許文献36);Lane、Nature 362: 786-787、1993(非特許文献37))。さまざまな遺伝的障害によるアポトーシスプログラムの抑制は、悪性腫瘍の発生および進行の一因になることがある。
【0009】
IGF-Iは、IL-3依存性造血細胞におけるサイトカイン除去(Rodriguez-Tarduchy, G.ら、J. Immunol. 149: 535-540、1992(非特許文献38))およびRat-1/mycER細胞における血清除去(Harrington, E.ら、EMBO J. 13: 3286-3295、1994(非特許文献39))によって誘導されるアポトーシスを防ぐ。IGF-Iの抗アポトーシス機能は、細胞周期の拘束後の時期(post-commitment stage)に重要であり、エトポシドまたはチミジンによって細胞周期の進行が阻止された細胞にも重要である。c-myc駆動性線維芽細胞の生存がIGF-Iに依存することが示されていることは、IGF-IまたはIGF-IRの増殖作用とは異なる役割として、アポトーシスを特異的に抑制することによって腫瘍細胞を維持させるという重要な役割がIGF-IRにある可能性を示唆する。これは、bcl-2などの他の抗アポトーシス遺伝子が腫瘍の生存に果たすと考えられている役割と類似していると考えられる(McDonnellら、Cell 57: 79-88、1989(非特許文献40);Hockenberryら、Nature 348: 334-336、1990(非特許文献41))。
【0010】
アポトーシスに対するIGF-Iの防御作用は、細胞表面にIGF-Iと相互作用するIGF-IRが存在することに依存する(Resnicoffら、Cancer Res. 55: 3739-3741、1995(非特許文献42))。IGF-IRの抗アポトーシス機能に関する裏付けはIGF-IRに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた研究によっても得られており、IGF-IRレベル、アポトーシスの程度およびラット同系腫瘍の腫瘍発生能の間の定量的な関係が明らかにされている(Rescinoffら、Cancer Res. 55: 3739-3741、1995(非特許文献42))。IGF-IRはインビトロで腫瘍細胞をエトポシド誘導性アポトーシスから防御することがわかっており(Sellら、Cancer Res. 55: 303-306、1995(非特許文献43))、さらに劇的なことに、IGF-IRレベルが野生型レベルよりも低下するとインビボで腫瘍細胞の大規模なアポトーシスが引き起こされることも明らかになっている(Resnicoffら、Cancer Res. 55: 2463-2469、1995(非特許文献44))。
【0011】
アポトーシスを誘導するための、またはIGF-Iレベルの上昇、IGF-IIレベルの上昇および/またはIGF-IR受容体レベルの上昇に伴う細胞増殖を抑制するための戦略には、IGF-IレベルもしくはIGF-IIレベルを抑制すること、またはIGF-IのIGF-IRとの結合を阻止することが含まれる。例えば、長時間作用性のソマトスタチン類似体であるオクトレオチドは、IGFの合成および/または分泌を減少させるために用いられている。可溶性IGF-IRは、インビボでの腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導するため、および実験動物系における腫瘍発生を抑制するために用いられている(D'Ambrosioら、Cancer Res. 56: 4013-20、1996(非特許文献45))。さらに、IGF-IRアンチセンスオリゴヌクレオチド、IGF-Iのペプチド類似体、およびIGF-IRに対する抗体も、IGF-IまたはIGF-IRの発現を低下させるために用いられている(前記参照)。しかし、これらの化合物はいずれも、ヒト患者に対する長期投与には適していない。さらに、IGF-Iは低身長、骨粗鬆症、筋肉量減少、神経障害または糖尿病の治療のために患者に投与されているものの、IGF-IのIGFBPとの結合のためにIGF-Iによる治療はしばしば困難または無効となっている。
【0012】
したがって、IGF-Iおよび/またはIGF-IRが過剰発現される場合に癌および他の増殖性疾患などの疾患にIGF-IおよびIGF-IRが果たす役割、ならびにIGF-Iおよび/またはIGF-IRが過小発現される場合に低身長および脆弱性などの疾患に過度に少ないIGF-IおよびIGF-IRが果たす役割を考慮すれば、IGF-IRの抑制または刺激に用いうると考えられる、IGF-IRに対する抗体を作製することが望ましいと考えられる。抗IGF-IR抗体は自己免疫疾患のある種の患者に認められることが報告されているが、これらの抗体はいずれも精製されておらず、診断的または臨床的な手法のためにIGF-I活性を抑制するのに適することが示されているものもない。例えば、Thompsonら、Pediat. Res. 32: 455-459、1988(非特許文献46);Tappyら、Diabetes 37: 1708-1714、1988(非特許文献47);Weightmanら、Autoimmunity 16: 251-257、1993(非特許文献48);Drexhageら、Nether. J. of Med. 45: 285-293、1994(非特許文献49)を参照のこと。したがって、ヒトの疾患を治療するために用いうると考えられる高親和性ヒト抗IGF-IR抗体を入手することが望ましいと考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
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【非特許文献49】Drexhageら、Nether. J. of Med. 45: 285-293、1994
【発明の概要】
【0014】
本発明は、IGF-IRに結合する単離された抗体またはその抗原結合部分、好ましくは霊長動物およびヒトのIGF-IRに結合するもの、より好ましくはヒト抗体であるものを提供する。本発明は、IGF-IまたはIGF-IIのIGF-IRとの結合を阻害する抗IGF-IR抗体を提供し、IGF-IRを活性化する抗IGF-IR抗体も提供する。
【0015】
本発明は、抗体および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。薬学的組成物はさらに、抗腫瘍薬または造影試薬(imaging reagent)などの別の成分を含んでもよい。
【0016】
診断方法および治療方法も本発明によって提供される。診断方法には、IGF-IRを発現している組織の存在または位置を、抗IGF-IR抗体を用いて診断するための方法が含まれる。治療方法は、抗体を、好ましくは別の治療薬の投与とともに、それを必要とする対象に対して投与することを含む。
【0017】
本発明は、抗IGF-IR抗体を産生する、ハイブリドーマなどの単離された細胞系を提供する。
【0018】
本発明はまた、抗IGF-IR抗体の重鎖および/もしくは軽鎖またはそれらの抗原結合部分をコードする核酸分子も提供する。本発明は、そのような核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞、さらには、そのような核酸分子によってコードされるポリペプチドを組換え手法によって生産するための方法も提供する。
【0019】
抗IGF-IR抗体の重鎖および/もしくは軽鎖またはそれらの抗原結合部分を発現する非ヒトトランスジェニック動物も提供する。本発明はまた、抗IGF-IR抗体の重鎖および/もしくは軽鎖またはそれらの抗原結合部分をコードする核酸分子の有効量により、それを必要とする対象を治療するための方法も提供する。
【0020】
発明の詳細な説明
定義および一般的な技法
別に定義する場合を除き、本発明に関連して用いる科学用語および専門用語は、当業者が一般に理解している意味を持つものとする。さらに、文脈によって別の必要性が生じる場合を除き、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載される細胞および組織の培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して用いる命名法、ならびにそれらの技法は当技術分野で周知のものであり、一般的に用いられている。本発明の方法および技法は一般に、当技術分野で周知の従来の方法に従って、本明細書の全体を通じて引用または考察される種々の一般的およびより詳細な参考文献における記載の通りに行われる。例えば、本明細書に参照として組み入れられる、Sambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)、およびAusubelら、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、Greene Publishing Associates(1992)、ならびにHarlowおよびLane「抗体:実験マニュアル(Antibody: A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1990)を参照のこと。酵素反応および精製法は、製造者の仕様書に従って行われるか、当技術分野で一般に行われる通りに、または本明細書の記載の通りに行われる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学ならびに医薬および製薬化学に関連して用いられる命名法、ならびにそれらの実験手順および技法は、当技術分野で周知のものであり、一般的に用いられている。化学合成、化学分析、医薬品の製剤化、処方および送達、ならびに罹患生物の治療には、標準的な技法が用いられる。
【0021】
以下の用語は、別に指示する場合を除き、以下の意味を持つと理解されるべきである。
【0022】
「ポリペプチド」という用語は、天然または人工的なタンパク質、タンパク質断片およびタンパク質配列のポリペプチド類似体のことを指す。ポリペプチドは単量体でも多量体でもよい。
【0023】
本明細書で用いる「単離されたタンパク質」または「単離されたポリペプチド」という用語は、その起源または由来の源のために、(1)その天然の状態で付随している天然の随伴成分を伴っていない、(2)同じ種に由来する他のタンパク質を含んでいない、(3)異なる種の細胞によって発現される、または(4)自然界には存在しない、タンパク質またはポリペプチドのことである。このため、化学的に合成された、または天然に生じる細胞とは異なる細胞システムにおいて合成されたポリペプチドは、その天然の随伴成分から「単離されている」と考えられる。タンパク質を、当技術分野で周知のタンパク質精製法を用いた単離により、天然の随伴成分を実質的に含まないようにすることもできる。
【0024】
タンパク質またはポリペプチドは、試料の少なくとも約60〜75%が単一種のポリペプチドを呈する場合に、「実質的に純粋」「実質的に均一」または「実質的に精製されている」という。ポリペプチドまたはタンパク質は単量体でも多量体でもよい。実質的に純粋なポリペプチドまたはタンパク質は一般に、約50%、60%、70%、80%または90%W/Wのタンパク質試料を含むと考えられ、より一般的には純度が約95%であり、好ましくは99%を上回ると考えられる。タンパク質の純度または均一性は、タンパク質試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動の後に、当技術分野で周知の染色剤を用いてゲルを染色して、単一のバンドを可視化するといった、当技術分野で周知のさまざまな手段によって示される。ある種の目的のためには、HPLCまたは当技術分野で周知の精製のための他の手段を用いることにより、高分解能が得られる。
【0025】
本明細書で用いる「ポリペプチド断片」という用語は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端に欠失を有するものの、残りのアミノ酸配列が、天然の配列における対応する位置と同一であるようなポリペプチドのことを指す。断片は典型的には少なくとも5、6、8または10アミノ酸長であり、好ましくは少なくとも14アミノ酸長、より好ましくは少なくとも20アミノ酸長、通常は少なくとも50アミノ酸長であって、さらにより好ましくは少なくとも70、80、90、100、150または200アミノ酸長である。
【0026】
本明細書で用いる「ポリペプチド類似体」という用語は、アミノ酸配列の一部と実質的な同一性のある少なくとも25アミノ酸の区域から構成される、以下の特性の少なくとも1つを有するポリペプチドのことを指す:(1)適した結合条件下でのIGF-IRとの特異的結合、(2) IGF-IもしくはIGF-IIのIGF-IRとの結合を遮断する能力、または(3)インビトロまたはインビボでIGF-IRの細胞表面発現またはチロシンリン酸化を減少させる能力。典型的には、ポリペプチド類似体は天然の配列からみた保存的アミノ酸置換(または付加もしくは欠失)を含む。類似体は典型的には少なくとも20アミノ酸長、好ましくは少なくとも50、60、70、80、90、100、150または200アミノ酸長またはそれ以上であり、しばしば完全長の天然型ポリペプチドと同じ長さでありうる。
【0027】
好ましいアミノ酸置換は以下のようなものである:(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させる、(2)酸化に対する感受性を低下させる、(3)タンパク質複合体の形成のための結合親和性を変化させる、(4)結合親和性を変化させる、および(5)このような類似体のその他の物理化学的または機能的特性を付与または改変する。類似体には、天然型ペプチド配列以外のさまざまな突然変異配列が含まれうる。例えば、天然型配列に単一または複数のアミノ酸置換(好ましくは保存的アミノ酸置換)を加えることができる(分子間接触を生じるドメインの外側にあるポリペプチド部分におけるものが好ましい)。保存的アミノ酸置換は、親配列(parent sequence)の構造的特徴を実質的に変化させない必要がある(例えば、置換アミノ酸には、親配列にみられるヘリックス、または親配列を特徴づけるその他の種類の二次構造を破壊する傾向があるべきではない)。当技術分野で認識されているポリペプチドの二次構造および三次構造の例は、「タンパク質、構造および分子的原理(Proteins、Structures and Molecular Principles)」(Creighton編、W. H. Freeman and Company、New York(1984));「タンパク質構造入門(Introduction to Protein Structure)」(C. BrandenおよびJ. Tooze編、Garland Publishing、New York、N.Y.(1991));ならびにThorntonら、Nature 354:105(1991)に記載されており、これらはそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる。
【0028】
非ペプチド類似体は、テンプレートのペプチドのものに類似した特性を備えた薬物として製薬産業で一般的に用いられている。このような種類の非ペプチド化合物は「ペプチド模倣物」または「ペプチドミメティクス(peptidomimetics)」と呼ばれている。Fauchere, J. Adv. Drug Res. 15: 29(1986);VeberおよびFreidinger、TINS p.392(1985);ならびにEvansら、J. Med. Chem. 30: 1229(1987)、これらは参照として本明細書に組み入れられる。このような化合物はしばしば、コンピュータを用いる分子モデリングを利用して開発される。治療的に有用なペプチドと構造的に類似したペプチド模倣物は、同等な治療または予防効果を得るために用いることができる。一般に、ペプチドミメティクスはヒト抗体などの規範ポリペプチド(すなわち、生化学的特性または薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、1つまたは複数のペプチド結合が、当業者に周知の方法により、--CH2NH--、--CH2S--、--CH2-CH2--、--CH=CH--(シスおよびトランス)、--COCH2--、--CH(OH)CH2--および-CH2SO--からなる群より選択される結合によって選択的に置換されている。より安定性の高いペプチドを作製するために、共通配列の1つまたは複数のアミノ酸を同じ種類のD-アミノ酸(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)によって体系的に置換することも可能である。さらに、例えば、ペプチドを環化する分子内ジスルフィド結合を形成しうる内部システイン残基の付加などによる、当技術分野で知られた方法(RizoおよびGierasch Ann. Rev. Biochem. 61: 387(1992)、これは参照として本明細書に組み入れられる)により、共通配列または実質的に同一な共通配列の変形物を含む拘束性ペプチド(constrained peptide)を作製することもできる。
【0029】
「免疫グロブリン」は四量体分子である。天然型の免疫グロブリンでは、各四量体は、それぞれの対が1つの「軽鎖」(約25kDa)および1つの「重鎖」(約50〜70kDa)を有する、2対の同一なポリペプチド鎖から構成される。各々の鎖のアミノ末端部分は、抗原認識を主に担う約100〜110個またはそれ以上のアミノ酸から構成される可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分にはエフェクター機能を主に担う定常領域が規定される。ヒト軽鎖はκおよびλ軽鎖に分類される。重鎖はμ、Δ、γ、αまたはεに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとして規定する。軽鎖および重鎖の内部では、可変領域および定常領域が、約12個またはそれ以上のアミノ酸を有する「J」領域によって連結されており、重鎖も約10個を上回るアミノ酸を有する「D」領域を含む。概論については、「基礎免疫学(Fundamental Immunology)」第7章(Paul, W.編、第2版、Raven Press、N.Y.(1989))を参照のこと(これはすべての目的に関してその全体が参照として組み入れられる)。それぞれの軽鎖/重鎖対の可変領域は、完全な免疫グロブリンが2つの結合部位を持つように抗体結合部位を形成する。
【0030】
免疫グロブリン鎖は、比較的保存性の高いフレームワーク領域(FR)が、相補性領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって連結された共通の一般的構造を示す。各対の2つの鎖からのCDRがフレームワーク領域と一列に並ぶことにより、特異的エピトープとの結合が可能になる。軽鎖および重鎖はいずれも、N末端からC末端の順にドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインに対するアミノ酸の指定は、Kabat、「免疫学的に興味深いタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」(National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1987および1991))またはChothia & Leski Mol. Biol. 196: 901-917(1987);Chothiaら、Nature 342: 878-883(1989)の定義に従っている。
【0031】
「抗体」とは、完全な免疫グロブリン、または特異的結合の点で完全な抗体と競合するその抗原結合部分のことを指す。抗原結合部分は、組換えDNA技術により、または完全な抗体の酵素的もしくは化学的切断によって作製しうる。抗原結合部分には、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、dAb、ならびに相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、二重特異性抗体、およびポリペプチドに対する特異的結合性を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが含まれる。
【0032】
本明細書で用いる場合、例えば2.12.1、2.13.2、2.14.3、4.9.2、4.17.3および6.1.1と称する抗体は、同じ名称のハイブリドーマに由来する抗体のことを指す。例えば、抗体2.12.1はハイブリドーマ2.12.1に由来する。
【0033】
Fab断片とはVL、VH、CLおよびCH Iドメインからなる一価断片のことである;F(ab')2断片とは2つのFab断片がヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結したものを含む二価断片のことである;Fd断片はVHおよびCH1ドメインからなる;Fv断片は抗体の一本の腕部のVLおよびVHドメインからなる;そして、dAb断片(Wardら、Nature 341: 544-546、1989)は1つのVHドメインからなる。
【0034】
一本鎖抗体(scFv)とは、VLおよびVH領域が、それらを一本鎖タンパク質にすることが可能な合成リンカーを介して対合し、一価分子を形成した抗体のことである(Birdら、Science 242: 423-426、1988およびHustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883、1988)。二重特異性抗体とは、VHおよびVLドメインは単一のポリペプチド鎖上に発現されるが、同一鎖にある2つのドメイン間の対合が起こるには短すぎるリンカーを用い、それによってドメインが別の鎖の相補的ドメインと対合せざるを得ないようにするとともに2つの抗原結合部位を生じさせた、二重特異性のある二価抗体のことである(例えば、Holliger, P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448、1993、およびPoljak, R. J.ら、Structure: 1121-1123、1994を参照のこと)。イムノアドヘシンを作製するために、分子内に共有的または非共有的に1つまたは複数のCDRを組み入れてもよい。イムノアドヘシンには、大型のポリペプチド鎖の一部としてCDRを組み入れてもよく、CDRを別のポリペプチド鎖と共有結合させてもよく、またはCDRを非共有的に組み入れてもよい。CDRはイムノアドヘシンが関心対象の特定の抗原に特異的に結合することを可能にする。
【0035】
抗体は1つまたは複数の結合部位を有しうる。複数の結合部位がある場合、結合部位は互いに同一でもよく、または異なってもよい。例えば、天然型の免疫グロブリンは2つの同一な結合部位を有し、一本鎖抗体またはFab断片は1つの結合部位を有するが、「二重特異性」または「二機能性」抗体は2つの異なる結合部位を有する。
【0036】
「単離された抗体」とは、(1)その天然の状態で付随している天然の随伴成分を伴っていない、(2)同じ種に由来する他のタンパク質を含んでいない、(3)異なる種の細胞によって発現される、または(4)自然界には存在しない、タンパク質またはポリペプチドのことである。単離された抗体の例には、IGF-IRを用いてアフィニティー精製された単離された抗体である抗IGF-IR抗体、ハイブリドーマまたは他の細胞系によってインビトロで合成された抗IGF-IR抗体、およびトランスジェニックマウスに由来するヒト抗IGF-IR抗体が含まれる。
【0037】
「ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1つまたは複数の可変領域および定常領域を有するすべての抗体を含む。1つの好ましい態様においては、可変ドメインおよび定常ドメインのすべてがヒト免疫グロブリン配列に由来する(完全ヒト抗体)。これらの抗体は、以下に述べる通り、さまざまな方法によって調製しうる。
【0038】
ヒト化抗体とは、非ヒト種に由来する抗体であって、ヒトにおける免疫応答が回避または無効化されるように重鎖および軽鎖のフレームワークドメインおよび定常ドメイン内のいくつかのアミノ酸が変異している抗体のことである。または、ヒト抗体由来の定常ドメインを非ヒト種の可変ドメインと融合させることによってヒト化抗体を作製することもできる。ヒト化抗体の作製の仕方の例は、米国特許第6,054,297号、第5,886,152号および第5,877,293号に記載されている。
【0039】
「キメラ抗体」という用語は、1つの抗体に由来する1つまたは複数の領域、および1つまたは複数の他の抗体に由来する1つまたは複数の領域を含む抗体のことを指す。1つの好ましい態様において、CDRの1つまたは複数はヒト抗IGF-IR抗体に由来する。より好ましい1つの態様において、すべてのCDRはヒト抗IGF-IR抗体に由来する。もう1つの好ましい態様では、複数のヒト抗IGF-IR抗体に由来するCDRを1つのキメラ抗体中に混在させて組み合わせる。例えば、あるキメラ抗体が、第1のヒト抗IGF-IR抗体の軽鎖由来のCDR1を第2のヒト抗IGF-IR抗体の軽鎖由来のCDR2およびCDR3と組み合わせたものを含み、重鎖由来のCDRが第3の抗IGF-IR抗体に由来してもよい。さらに、フレームワーク領域は、同じ抗IGF-IR抗体の1つ、ヒト抗体などの1つもしくは複数の異なる抗体、またはヒト化抗体に由来してよい。
【0040】
「中和抗体」または「阻害抗体」とは、過剰な抗IGF-IR抗体により、IGF-IRに結合したIGF-Iの量が少なくとも約20%減少するような、IGF-IRのIGF-Iとの結合を阻害する抗体のことである。1つの好ましい態様において、本抗体は、IGF-IRに結合したIGF-Iの量を少なくとも40%、より好ましくは60%、さらにより好ましくは80%、またはさらにより好ましくは85%減少させる。結合の減少は、例えば、インビトロ競合結合アッセイで測定されるように、当業者に知られた任意の手段によって測定しうる。IGF-IのIGF-IRとの結合の減少を測定した一例は以下の実施例IVに提示されている。
【0041】
「活性化抗体」とは、IGF-IRを発現する細胞、組織または生物に添加した際にIGF-IRを少なくとも約20%活性化する抗体のことである。1つの好ましい態様において、本抗体はIGF-LR活性を少なくとも40%、より好ましくは60%、さらにより好ましくは80%、またはさらにより好ましくは85%活性化する。より好ましい1つの態様において、活性化抗体はIGF-IまたはIGF-IIの存在下で添加される。もう1つの好ましい態様においては、活性化抗体の活性を、IGF-IRのチロシン自己リン酸化の量を決定することによって測定する。
【0042】
抗体の断片または類似体は、本明細書の開示内容に従って当業者によって容易に調製可能である。断片または類似体のアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能ドメインの境界の近傍にあることが好ましい。構造ドメインおよび機能ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸の配列データと、公的または独自開発による配列データベースとの比較によって同定することができる。構造および/または機能が知られた他のタンパク質に存在する配列モチーフまたは予想されるタンパク質高次構造ドメインを同定するためには、コンピュータ化された比較方法を用いることが好ましい。フォールディングして既知の三次元構造をとるタンパク質配列を同定するための方法は知られている。Bowieら、Science 253: 164(1991)。
【0043】
本明細書で用いる「表面プラスモン共鳴」という用語は、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によってリアルタイムの生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象のことを指し、これには例えば、BIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、SwedenおよびPiscataway、N.J.)を用いる。詳細な説明については、Jonsson, U.ら(1993)Ann. Biol. Clin. 51: 19-26;Jonsson, U.ら(1991)Biotechniques 11: 620-627;Johnsson, B.ら(1995)J. Mol. Recognit. 8: 125-131;およびJohnnson, B.ら(1991)Anal. Biochem. 198: 268-277を参照のこと。
【0044】
「Koff」という用語は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離に関する解離速度定数のことを指す。
【0045】
「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数のことを指す。
【0046】
「エピトープ」という用語には、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合しうる任意のタンパク質決定基が含まれる。エピトープ決定基は通常、アミノ酸、糖またはその他の糖質側鎖などの化学的活性をもつ分子群からなり、一般に特定の三次元構造上の特性ならびに特定の荷電特性を有する。解離定数が1μM以下、好ましくは100nM以下、最も好ましくは10nM以下である場合に、抗体は抗原に特異的に結合するという。
【0047】
本明細書で用いる20種の通常のアミノ酸およびそれらの略号は、慣例的な用法に従う。参照として本明細書に組み入れられる、「免疫学―一つの総合体(Immunology-A Synthesis)」(第2版、ES. GolubおよびD.R. Gren編、Sinauer Associates、Sunderland、Mass.(1991))を参照されたい。20種の通常のアミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸)や、α,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸などの人工的アミノ酸、乳酸およびその他の一般的でないアミノ酸も、本発明のポリペプチドのために適した構成要素である。通常でないアミノ酸の例には以下のものが含まれる:4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、ε-N,N,N-トリメチルリジン、ε-N-アセチルリジン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、σ-N-メチルアルギニン、ならびにその他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン)。本明細書で用いるポリペプチドの表記法では、標準的な用法および慣習に従い、左側がアミノ末端の向きであり、右側がカルボキシ末端の向きである。
【0048】
本明細書で言及する「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチド、または改変型のいずれかの種類のヌクレオチドである、長さが少なくとも10塩基の重合型ヌクレオチドのことを指す。この用語には、一本鎖型および二本鎖型のDNAが含まれる。
【0049】
本明細書で用いる「単離されたポリヌクレオチド」という用語は、ゲノム、cDNAもしくは合成物に由来するポリヌクレオチドまたはその何らかの組み合わせを意味するものとし、その由来のために、「単離されたポリヌクレオチド」は(1)天然の状態で内部に「単離されたポリヌクレオチド」が認められるポリヌクレオチドの全体もしくは一部を伴っていない、(2)天然の状態で結合していないポリヌクレオチドと機能的に結合している、または(3)天然の状態ではより長い配列の一部としては存在しない。
【0050】
本明細書で言及する「オリゴヌクレオチド」という用語には、天然型および非天然型のオリゴヌクレオチド結合によって互いに結合した天然型および改変型のヌクレオチドが含まれる。オリゴヌクレオチドとは、一般に長さが200塩基またはそれ未満であるポリヌクレオチドのサブセットである。好ましくはオリゴヌクレオチドは長さ10〜60塩基であり、最も好ましくは長さ12、13、14、15、16、17、18、19または20もしくは40塩基である。プローブ用などのオリゴヌクレオチドは通常は一本鎖であるが、遺伝子変異体の作製などに用いるためにはオリゴヌクレオチドは二本鎖であってもよい。本発明のオリゴヌクレオチドは、センスオリゴヌクレオチドでもアンチセンスオリゴヌクレオチドでもよい。
【0051】
本明細書で言及する「天然型ヌクレオチド」という用語には、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドが含まれる。本明細書で言及する「改変型ヌクレオチド」という用語には、糖の部分が修飾または置換されたヌクレオチドなどが含まれる。本明細書で言及する「オリゴヌクレオチド結合」という用語には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート(phosphoroselenoate)、ホスホロジセレノエート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホロアニラデート(phoshoraniladate)、ホスホロアミデート(phosphoroamidate)などのオリゴヌクレオチド結合が含まれる。例えば、LaPlancheら、Nucl. Acids Res. 14: 9081(1986);Stecら、J. Am. Chem. Soc. 106: 6077(1984);Steinら、Nucl. Acids Res. 16: 3209(1988);Zonら、AntiCancer Drug Design 6: 539(1991);Zonら、「オリゴヌクレオチドおよび類似体:実践的アプローチ(Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach)」、pp. 87-108(F. Eckstein編、Oxford University Press、Oxford England(1991));Stecら、米国特許第5,151,510号;UhlmannおよびPeyman、Chemical Reviews 90: 543(1990)を参照のこと(これらの開示内容は参照として本明細書に組み入れられる)。必要に応じて、オリゴヌクレオチドには検出用の標識を含めることが可能である。
【0052】
「機能的に結合した」配列には、関心対象の遺伝子と隣接した発現制御配列、および、関心対象の遺伝子にトランス的または遠隔的に作用して制御する発現制御配列の両方が含まれる。本明細書で用いる「発現制御配列」という用語は、それらと連結したコード配列の発現およびプロセシングが生じるために必要なポリヌクレオチド配列のことを指す。発現制御配列には、適切な転写開始配列、転写終結配列、プロモーター配列およびエンハンサー配列;スプライシングシグナルおよびポリアデニル化シグナルなどの有効なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、コザック共通配列);タンパク質の安定性を高める配列;ならびに必要に応じて、タンパク質の分泌を増強する配列が含まれる。このような制御配列の性質は宿主生物によって異なり、原核生物ではこのような制御配列は一般にプロモーター、リボソーム結合部位および転写終結配列を含み、真核生物では一般にこのような制御配列はプロモーターおよび転写終結配列を含む。「制御配列」という用語は、最小限、その存在が発現およびプロセシングのために必須であるすべての構成要素を含み、さらに、例えばリーダー配列および融合パートナー配列などの、その存在が好都合であるその他の構成要素も含みうるものとする。
【0053】
本明細書で用いる「ベクター」という用語は、それと結合した別の核酸を輸送する能力を持つ核酸分子のことを指すものとする。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これはその中に付加的なDNA断片を連結させうる環状二本鎖DNAループのことを指す。もう1つの種類のベクターは、ウイルスゲノム中に付加的なDNA断片を連結することができるウイルスベクターである。ある種のベクターは、それが導入された宿主細胞内で自律複製を行いうる(例えば、細菌由来の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム性哺乳類ベクター)。その他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳類ベクター)は、宿主細胞内に導入されると宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、このため宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ベクターの一種である発現ベクターは、それらと機能的に結合した遺伝子の発現を指令する能力をもつ。一般に、組換えDNA法において有用な発現ベクターはしばしばプラスミド(ベクター)の形態にある。しかし、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損型レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などの、これ以外の形態の発現ベクターも含むことを意図している。
【0054】
本明細書で用いる「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)という用語は、内部に組換え発現ベクターが導入された細胞のことを指す。この種の用語は特定の対象細胞のみではなく、このような細胞の子孫または子孫の可能性のあるものも意味することが理解される必要がある。変異または環境的影響のいずれかのために後の世代には何らかの変化が生じる可能性があるため、このような子孫は、実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、それでも本明細書で用いる「宿主細胞」という用語の範囲には含まれる。
【0055】
本明細書で言及する「選択的にハイブリダイズする」という用語は、検出可能なように、しかも特異的に結合することを意味する。本発明によるポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびその断片は、非特異的核酸との検出可能な結合の量が最小化されるハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下で、核酸鎖と選択的にハイブリダイズする。当技術分野で知られており、本明細書で考察する「高ストリンジェンシー」または「高度にストリンジェントな」条件を用いることで、選択的なハイブリダイゼーション条件を実現することができる。「高ストリンジェンシー」または「高度にストリンジェントな」条件の一例は、あるポリヌクレオチドを別のポリヌクレオチドとインキュベートする方法であって(この際、一方のポリヌクレオチドは膜などの固体表面に固定化してもよい)、6×SSPEまたはSSC、50%ホルムアミド、5×デンハルト試薬、0.5%SDS、100μg/ml変性断片化サケ精子DNAのハイブリダイゼーション緩衝液中にハイブリダイゼーション温度42℃で12〜16時間おいた後に、1×SSC、0.5%SDSの洗浄緩衝液を用いて55℃で2回洗浄するというものである。Sambrookら、前記、pp. 9.50-9.55も参照のこと。
【0056】
核酸配列の文脈における「配列同一性%」という用語は、一致が最大となるように整列化した場合に同一である2つの配列中の残基のことを指す。配列同一性を比較する長さは、少なくとも約9ヌクレオチド、通常は少なくとも約18ヌクレオチド、より一般的には少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約32ヌクレオチドであってよく、好ましくは少なくとも約36ヌクレオチド、48ヌクレオチドまたはそれ以上である。ヌクレオチド配列の同一性を評価するために用いうる数多くの異なるアルゴリズムが当技術分野では知られている。例えば、ポリヌクレオチド配列を、Wisconsin Packageバージョン10.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、Wisconsinに含まれるプログラムである、FASTA、GapまたはBestfitを用いて比較することができる。FASTAはFASTA2およびFASTA3などのプログラムを含み、クエリー配列と検索配列とのアライメント、および両者の最適な重複領域の配列同一性を提供する(Pearson、Methods Enzymol. 183: 63-98(1990);Pearson、Methods Mol. Biol. 132: 185-219(2000);Pearson、Metholds Enzymol. 266: 227-258(1996);Pearson、J Mol. Biol. 276: 71-84(1998);これらは参照として本明細書に組み入れられる)。別に指定する場合を除き、個々のプログラムまたはアルゴリズムに関するデフォルトパラメーターを用いる。例えば、核酸配列間の配列同一性%は、FASTAをそのデフォルトパラメーター(ワードサイズが6、スコアリングマトリックスに対してNOPAM因子)で用いて、またはGapをGCGバージョン6.1に示されているデフォルトパラメーターで用いて、決定することができる。
【0057】
核酸配列に対する言及は、別に特記しない限り、その相補物もむ。したがって、特定の配列を有する核酸分子に対する言及は、その相補配列を有するその相補鎖も含むものと理解される必要がある。
【0058】
分子生物学の技術分野では、研究者は「配列同一性%」「配列類似性%」および「配列相同性%」という用語を互換的に用いている。本出願において、これらの用語は核酸配列のみに関しては同じ意味を持つものとする。
【0059】
「実質的な類似性」または「実質的な配列類似性」という用語は、核酸またはその断片に言及する場合、妥当なヌクレオチド挿入または欠失を別の核酸(またはその相補鎖)と整列化した際に、上に考察したようなFASTA、BLASTまたはGapなどのよく知られた任意の配列同一性アルゴリズムによる評価で、ヌクレオチド配列同一性がヌクレオチド塩基の少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%または99%であることを示す。
【0060】
ポリペプチドに対して適用される「実質的同一性」という用語は、デフォルトのギャップウェイト値を用いるGAPまたはBESTFITプログラムなどによって最適に整列化した場合に、2つの配列が少なくとも75%または80%の配列同一性を有し、好ましくは少なくとも90%または95%の配列同一性、さらにより好ましくは98%または99%の配列同一性を有することを意味する。同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換による違いであることが好ましい。「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸残基が、類似した化学特性(例えば、荷電または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたもののことである。一般に、保存的アミノ酸置換はタンパク質の機能特性を実質的に変化させることはないと考えられる。保存的置換のために2つまたはそれ以上のアミノ酸配列が互いに異なる場合には、置換の保存的性質を補正するために配列同一性または類似性の度合いを高い方に調整してもよい。この調整を行うための手段は当業者に周知である。例えば、Pearson、Methods Mol. Biol. 24: 307-31(1994)を参照のこと(これは参照として本明細書に組み入れられる)。類似した化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸の群の例には以下のものが含まれる:1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;2)脂肪族-水酸基側鎖:セリンおよびトレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン;5)塩基性側鎖:リジン、アルギニンおよびヒスチジン;ならびに6)含硫側鎖:システインおよびメチオニン。好ましい保存的アミノ酸置換の群は以下の通りである:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸およびアスパラギン-グルタミン。
【0061】
または、保存的置換は、Gonnetら、Science 256: 1443-45(1992)(これは参照として本明細書に組み入れられる)に開示されたPAM250対数尤度マトリックスで正の値となる任意の変化であってよい。「中程度に保存的」な置換とは、PAM250対数尤度マトリックスで負でない値となる任意の変化のことである。
【0062】
ポリペプチドの配列類似性は、配列同一性とも呼ばれ、配列解析ソフトウエアを用いて評価することが一般的である。タンパク質解析ソフトウエアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失および他の改変に割り当てられた類似性の指標を用いて、類似した配列を一致させる。例えば、GCGは「Gap」および「Bestfit」などのプログラムを含み、これらをデフォルトパラメーターで用いることで、密接な関係にあるポリペプチドの間、例えば生物の異なる種由来の相同ポリペプチドの間、または野生型タンパク質とその突然変異タンパク質との間の配列相同性または配列同一性を決定することができる。例えば、GCGバージョン6.1を参照のこと。GCGバージョン6.1に含まれるプログラムであるFASTAをデフォルトまたは推奨されるパラメーターで用いてポリペプチド配列を比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリー配列と検索配列とのアライメントおよび両者の最適な重複領域の配列同一性を提供する(Pearson(1990);Pearson(2000)。本発明の配列を異なる生物に由来する多数の配列を含むデータベースと比較する場合に好ましいもう1つのアルゴリズムは、デフォルトパラメーターを用いる、コンピュータプログラムBLAST、特にblastpまたはtblastnである。例えば、Altschulら、J. Mol. Biol. 215: 403-410(1990);Altschulら、Nucleic Acids Res. 25: 3389-402(1997)を参照のこと;これらは参照として本明細書に組み入れられる。
【0063】
相同性に関して比較するポリペプチド配列の長さは一般に、少なくとも約16アミノ酸残基、通常は少なくとも約20残基、より一般的には少なくとも約24残基、典型的には少なくとも約28残基であり、好ましくは約35残基を上回る。数多くの異なる種類の生物に由来する配列を含むデータベースを検索する場合には、アミノ酸配列を比較することが好ましい。
【0064】
本明細書で用いる「標識」または「標識された」という用語は、抗体の内部に別の分子を組み入れることを指す。1つの態様において、標識は検出マーカーであり、例えば、放射標識されたアミノ酸の取り込み、または目印となるアビジン(例えば、光学的方法または比色法によって検出しうる蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出しうるビオチン化部分(moiety)のポリペプチドとの結合などによる。もう1つの態様において、標識またはマーカーが治療薬、例えば薬剤結合物または毒素であってもよい。当技術分野ではさまざまなポリペプチドおよび糖タンパク質の標識の方法が知られており、それらを用いることができる。ポリペプチドに対する標識の例には、以下のものが非制限的に含まれる:放射性同位元素または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光性標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン)、酵素性標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチン基、二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、ガドリニウムキレート化合物などの磁性物質、百日咳毒素などの毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルピシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカインアミド、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシン、ならびにそれらの類似体または相同体。いくつかの態様においては、想定される立体障害を軽減するために、種々の長さのスペーサー(spacer arm)を介して標識を結合させる。
【0065】
「作用物質(agent)」という用語は、本明細書において、化合物、化合物の混合物、生体高分子、または生体物質から作製された抽出物を指すために用いられる。本明細書で用いる「薬剤または薬物」という用語は、罹患生物に適切に投与された場合に望ましい治療効果を誘発しうる化合物または組成物のことを指す。本明細書のその他の化学用語は、例えば、「マグローヒル化学用語辞典(The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms)」(Parker、S編.、McGraw-Hill、San Francisco(1985))、これは参照として本明細書に組み入れられる)に例示されている通り、当技術分野における慣例的用法に従って用いられる。
【0066】
「抗悪性腫瘍薬」という用語は、本明細書において、ヒトにおける新生物、特に悪性(癌)病変、癌、肉腫、リンパ腫または白血病などの発生または進行を阻害する機能特性を有する作用物質を指すために用いられる。転移の阻害は抗悪性腫瘍薬の特性であることがしばしばである。
【0067】
罹患生物という用語は、ヒトおよび獣医学的な対象を含む。
【0068】
ヒト抗IGF-IR抗体およびその特徴付け
ヒト抗体により、マウスまたはラットの可変および/または定常領域を有する抗体に付随する問題のいくつかが回避される。マウスまたはラットに由来するこの種の配列の存在は、抗体の迅速な排出につながる恐れがある、または罹患生物による抗体に対する免疫応答の発生につながる恐れがある。このため、1つの態様において、本発明はヒト化抗IGF-IR抗体を提供する。1つの好ましい態様において、本発明は、齧歯動物が完全ヒト抗体を産生するように齧歯動物にヒト免疫グロブリン遺伝子を導入することによって、完全ヒト抗IGF-IR抗体を提供する。完全ヒト抗ヒトIGF-IR抗体がより好ましい。完全ヒト抗IGF-IR抗体は、マウスまたはマウスに由来するモノクローナル抗体(Mab)に固有の免疫応答およびアレルギー反応を最小限にとどめ、そのために投与した抗体の有効性および安全性を高めると考えられる。完全ヒト抗体の使用は、抗体の反復投与を要すると思われる、炎症および癌などの慢性および再発性のヒト疾患の治療にかなりの利益をもたらすと予想される。もう1つの態様において、本発明は、補体に結合しない抗IGF-IR抗体を提供する。
【0069】
1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体は、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1である。もう1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体は、配列番号:2、6、10、14、18もしくは22、またはこれらのアミノ酸配列由来の1つもしくは複数のCDRから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。もう1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体は、配列番号:4、8、12、16、20もしくは24、またはこれらのアミノ酸配列由来の1つもしくは複数のCDRから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0070】
抗IGF-IR抗体クラスおよびサブクラス
抗体はIgG、IgM、IgE、IgAまたはIgD分子のいずれでもよい。1つの好ましい態様において、抗体はIgGであり、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプである。より好ましい1つの態様において、抗IGF-IR抗体はIgG2サブクラスである。もう1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体は、IgG2である抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1と同じクラスおよびサブクラスである。
【0071】
抗IGF-IR抗体のクラスおよびサブクラスは、当技術分野で知られた任意の方法によって決定しうる。一般に、抗体のクラスおよびサブクラスは、特定のクラスおよびサブクラスの抗体に対して特異的な抗体を用いて決定しうる。このような抗体は市販されている。クラスおよびサブクラスは、ELISA、ウエスタンブロット法ならびに他の技法によって決定することができる。または、クラスおよびサブクラスを、抗体の重鎖および/または軽鎖の定常ドメインの全体または一部の配列を決定し、それらのアミノ酸配列を種々のクラスおよびサブクラスの免疫グロブリンの既知のアミノ酸配列と比較した上で、抗体のクラスおよびサブクラスを決定することによって決定してもよい。
【0072】
種選択性および分子選択性
本発明のもう1つの面において、抗IGF-IR抗体は、種選択性および分子選択性の両方を示す。1つの態様において、抗IGF-IR抗体はヒト、カニクイザルまたはアカゲザルのIGF-IRに結合する。1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体はマウス、ラット、モルモット、イヌまたはウサギのIGF-IRとは結合しない。もう1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体はマーモセットなどの新世界ザル種とは結合しない。本明細書の開示に従って、抗IGF-IR抗体の種選択性は当技術分野で周知の方法を用いて決定することができる。例えば、種選択性はウエスタンブロット法、FACS、ELISAまたはRIAを用いて決定しうる。1つの好ましい態様において、種選択性はウエスタンブロット法を用いて決定しうる。
【0073】
もう1つの態様において、抗IGF-IR抗体が有するIGF-IRに対する選択性は、インスリン受容体に対する選択性よりも少なくとも50倍高い。1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体の選択性の高さは、インスリン受容体に対する選択性より100倍を上回る。さらにより好ましい1つの態様において、抗IGF-IR抗体は、IGF-IR以外のいかなるタンパク質とも評価可能な特異的結合を示さない。抗IGF-IR抗体のIGF-IRに対する選択性は、本明細書の開示に従って、当技術分野で周知の方法を用いて決定することができる。例えば、選択性はウエスタンブロット法、FACS、ELISAまたはRIAを用いて決定しうる。1つの好ましい態様において、分子選択性はウエスタンブロット法を用いて決定しうる。
【0074】
抗IGF-IRのIGF-IRに対する結合親和性
本発明のもう1つの面において、抗IGF-IR抗体はIGF-IRと高い親和性で結合する。1つの態様において、抗IGF-IR抗体はIGF-IRに対して1×10-8Mまたはそれ未満のKdで結合する。より好ましい1つの態様において、抗体はIGF-IRに対して1×10-9Mまたはそれ未満のKdで結合する。さらにより好ましい1つの態様において、抗体はIGF-IRに対して5×10-10Mまたはそれ未満のKdで結合する。もう1つの好ましい態様において、抗体はIGF-IRに対して1×10-10Mまたはそれ未満のKdで結合する。もう1つの好ましい態様において、抗体はIGF-IRに対して、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1から選択される抗体と実質的に同じKdで結合する。もう1つの好ましい態様において、抗体はIGF-IRに対して、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1から選択される抗体に由来する、1つまたは複数のCDRを含む抗体と実質的に同じKdで結合する。さらにもう1つの好ましい態様において、抗体はIGF-IRに対して、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22または24から選択される、アミノ酸配列の1つを含む抗体と実質的に同じKdで結合する。もう1つの好ましい態様において、抗体はIGF-IRに対して、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22または24から選択される、アミノ酸配列の1つを含む抗体に由来する、1つまたは複数のCDRを含む抗体と実質的に同じKdで結合する。
【0075】
本発明のもう1つの面において、抗IGF-IR抗体は低い解離速度を有する。1つの態様において、抗IGF-IR抗体のKoffは1×10-4s-1またはそれ未満である。1つの好ましい態様において、Koffは5×10-5s-1またはそれ未満である。もう1つの好ましい態様において、Koffは2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1から選択される抗体と実質的に同じである。もう1つの好ましい態様において、抗体はIGF-IRに対して、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1から選択される抗体に由来する、1つまたは複数のCDRを含む抗体と実質的に同じKoffで結合する。さらにもう1つの好ましい態様において、抗体はIGF-IRに対して、 配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22または24から選択されるアミノ酸配列の1つを含む抗体と実質的に同じKoffで結合する。もう1つの好ましい態様において、抗体はIGF-IRに対して、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22から選択される、アミノ酸配列の1つを含む抗体に由来する、1つまたは複数のCDRを含む抗体と実質的に同じKoffで結合する。
【0076】
抗IGF-IR抗体のIGF-IRに対する結合親和性および解離速度は、当技術分野で知られた任意の方法によって決定しうる。1つの態様において、結合親和性は競合的ELISA、RIA、またはBIAcoreなどの表面プラスモン共鳴によって測定可能である。解離速度も表面プラスモン共鳴によって測定することができる。より好ましい1つの態様においては、結合親和性および解離速度を表面プラスモン共鳴によって測定する。さらにより好ましい1つの態様において、さらにより好ましい1つの態様では、結合親和性および解離速度を、BIAcoreを用いて測定する。結合親和性および解離速度を決定した一例は実施例IIに記載されている。
【0077】
抗IGF-IR抗体の半減期
本発明のもう1つの目的によれば、抗IGF-IR抗体の半減期はインビトロまたはインビボで少なくとも1日である。1つの好ましい態様において、抗体またはその部分の半減期は少なくとも3日である。より好ましい1つの態様において、抗体またはその部分の半減期は4日またはそれ以上である。もう1つの態様において、抗体またはその部分の半減期は8日またはそれ以上である。もう1つの態様において、抗体またはその抗原結合部分は、以下に考察する通り、半減期が長くなるように誘導体化または改変を受ける。もう1つの好ましい態様において、抗体は、2000年2月24日に発行された国際公開公報第00/09560号などに記載されたように、血清半減期を延長するための点変異を含んでもよい。
【0078】
抗体半減期は、当業者に知られた任意の手段によって測定しうる。例えば、抗体半減期をウエスタンブロット法、ELISAまたはRIAにより、適切な期間にわたって測定することができる。抗体半減期は任意の適した動物、例えば、カニクイザルなどのサル類、霊長動物またはヒトにおいて測定しうる。
【0079】
抗IGF-IR抗体によって認識されるIGF-IRエピトープの同定
本発明は、ヒト抗IGF-IR抗体と同じ抗原またはエピトープに結合する抗IGF-IR抗体も提供する。さらに、本発明は、ヒト抗IGF-IR抗体と交差反応する抗IGF-IR抗体も提供する。1つの好ましい態様において、ヒト抗IGF-IR抗体は2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1である。もう1つの好ましい態様において、ヒト抗IGF-IRは、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1から選択される抗体に由来する1つまたは複数のCDRを含む。さらにもう1つの好ましい態様において、ヒト抗IGF-IRは、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22または24から選択されるアミノ酸配列の1つを含む。もう1つの好ましい態様において、ヒト抗IGF-IRは、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22または24から選択される、アミノ酸配列の1つを含む抗体に由来する1つまたは複数のCDRを含む。非常に好ましい1つの態様において、抗IGF-IR抗体は別のヒト抗体である。
【0080】
抗IGF-IR抗体が同じ抗原に結合するか否かは、当技術分野で知られたさまざまな方法を用いて判定することができる。例えば、被験抗IGF-IR抗体が同じ抗原に結合するか否かを、抗IGF-IR抗体に結合することが知られたIGF-IRなどの抗原を捕捉する抗IGF-IR抗体を用い、抗体から抗原を溶出させた上で、被験抗体が溶出抗原に結合するか否かを判定することによって判定することもできる。抗体が抗IGF-IR抗体と同じエピトープに結合するか否かを、抗IGF-IR抗体を飽和条件下でIGF-IRに結合させた後に、被験抗体がIGF-IRに結合する能力を測定することによって判定することもできる。被験抗体が抗IGF-IR抗体と同時にIGF-IRに結合可能であれば、被験抗体は抗IGF-IR抗体と異なるエピトープに結合していることになる。しかし、被験抗体がIGF-IRと同時に結合することができなければ、被験抗体はヒト抗IGF-IR抗体と同じエピトープに結合すると言える。この実験はELISA、RIAまたは表面プラスモン共鳴を用いて行える。1つの好ましい態様においては、表面プラスモン共鳴を用いてこの実験を行う。より好ましい1つの態様では、BIAcoreを用いる。抗IGF-IR抗体が抗IGF-IR抗体と交差競合(cross-compete)するか否かを判定することもできる。1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体が別のものと交差競合するか否かは、抗IGF-IR抗体が別の抗IGF-IR抗体と同じエピトープに結合しうるか否かを評価するために用いられるのと同じ方法を用いることによって判定しうる。
【0081】
軽鎖および重鎖の用法
本発明は、ヒトκ遺伝子によってコードされる可変配列を含む抗IGF-IR抗体も提供する。1つの好ましい態様において、可変配列はVκA27、A30またはO12遺伝子ファミリーによってコードされる。1つの好ましい態様において、ヒトVκA30遺伝子ファミリーによってコードされる。より好ましい1つの態様において、軽鎖が含む生殖系列VκA27、A30またはO12からのアミノ酸置換は10個以下であり、好ましくは6個以下のアミノ酸置換であり、より好ましくは3個以下のアミノ酸置換である。1つの好ましい態様において、アミノ酸置換は保存的置換である。
【0082】
配列番号:2、6、10、14、18および22は、6種の抗IGF-IRκ軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を提示している。配列番号:38、40および42は、この6種の抗IGF-IRκ軽鎖が由来する、3種の生殖系列κ軽鎖のアミノ酸配列を提示している。図1A〜1Cは、この6種の抗IGF-IR抗体の軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列の、相互同士およびそれらが由来する生殖系列配列とのアライメントを示している。本明細書の開示に従って、当業者は6種の抗IGF-IRκ軽鎖および生殖系列κ軽鎖のコードされるアミノ酸配列を決定し、生殖系列配列と抗体配列との違いを決定することができると考えられる。
【0083】
1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体のVLは、生殖系列アミノ酸配列と比較して、抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1のVLの、任意の1つまたは複数と同じアミノ酸置換を含む。例えば、抗IGF-IR抗体のVLが、抗体2.13.2に存在するものと同じ1つまたは複数のアミノ酸置換、抗体2.14.3に存在するものと同じ別のアミノ酸置換、および抗体4.9.2と同じ別のアミノ酸置換を含んでもよい。このようにして、例えば、抗体のIGF-IRに対する親和性または抗原からのその解離速度などを変更するために、抗体結合の種々の特徴を混在させて組み合わせることができる。もう1つの態様では、アミノ酸置換を、抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1のVLの、任意の1つまたは複数に認められるのと同じ位置に作製するが、同じアミノ酸を用いる代わりに保存的アミノ酸置換を作製する。例えば、抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1のうちの1つにおける生殖系列と比較されるアミノ酸置換がグルタミン酸であれば、アスパラギン酸に保存的に置換することができる。同様に、アミノ酸置換がセリンであれば、トレオニンに保存的に置換することができる。
【0084】
もう1つの好ましい態様において、軽鎖は、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1のVLのアミノ酸配列と同じアミノ酸置換を含む。もう1つの非常に好ましい態様において、軽鎖は、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1の軽鎖のCDR領域と同じアミノ酸配列を含む。もう1つの好ましい態様において、軽鎖は、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1の軽鎖の、少なくとも1つのCDR領域に由来するアミノ酸配列を含む。もう1つの好ましい態様において、軽鎖は、複数の異なる軽鎖からのCDRに由来するアミノ酸配列を含む。より好ましい1つの態様において、異なる軽鎖からのCDRは、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1から得られる。もう1つの好ましい態様において、軽鎖は、配列番号:2、6、10、14、18または22から選択されるアミノ酸配列を含む。もう1つの態様において、軽鎖は、配列番号:1、5、9、13、17もしくは21から選択される核酸配列、またはそれからの1〜10個のアミノ酸挿入、欠失または置換を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換であることが好ましい。もう1つの態様において、抗体またはその部分はλ軽鎖を含む。
【0085】
本発明は、ヒト重鎖またはヒト重鎖に由来する配列を含む抗IGF-IR抗体またはその部分も提供する。1つの態様において、重鎖アミノ酸配列はヒトVH DP-35、DP-47、DP-70、DP-71またはVIV-4/4.35遺伝子ファミリーに由来する。1つの好ましい態様において、重鎖アミノ酸配列はヒトVH DP47遺伝子ファミリーに由来する。より好ましい1つの態様において、重鎖が含む生殖系列VH DP-35、DP-47、DP-70、DP-71またはVIV-4/4.35からのアミノ酸変化は8個以下であり、より好ましくは6個以下であり、さらにより好ましくは3個以下である。
【0086】
配列番号:4、8、12、16、20および24は、6種の抗IGF-IR重鎖の可変領域のアミノ酸配列を提示している。配列番号:30、32、34、36および44、ならびに配列番号:29、31、33、35および43はそれぞれ、生殖系列重鎖DP-35、DP-47、DP-70、DP-71、およびVIV-4のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を提示している。図2A〜2Dは、この6種の抗IGF-IR抗体の可変領域のアミノ酸配列とそれらに対応する生殖系列配列とのアライメントを示している。本明細書の開示に従って、当業者は6種の抗IGF-IR重鎖および生殖系列重鎖のコードされるアミノ酸配列を決定し、生殖系列配列と抗体配列との違いを決定することができると考えられる。
【0087】
1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体のVHは、生殖系列アミノ酸配列と比較して、抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1のVHの任意の1つまたは複数と同じアミノ酸置換を含む。上に考察したことと同様に、抗IGF-IR抗体のVHが、抗体2.13.2に存在するものと同じ1つまたは複数のアミノ酸置換、抗体2.14.3に存在するものと同じ別のアミノ酸置換、抗体4.9.2と同じ別のアミノ酸置換を含んでもよい。このようにして、このようにして、例えば、抗体のIGF-IRに対する親和性または抗原からのその解離速度などを変更するために、抗体結合の種々の特徴を混在させて組み合わせることができる。もう1つの態様において、アミノ酸置換を、抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.17.3.、4.9.2または6.1.1のVHの、任意の1つまたは複数に認められるのと同じ位置に作製するが、同じアミノ酸を用いる代わりに保存的アミノ酸置換を作製する。
【0088】
もう1つの好ましい態様において、重鎖は、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1のVHのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む。もう1つの非常に好ましい態様において、重鎖は、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1の重鎖のCDR領域と同じアミノ酸配列を含む。もう1つの好ましい態様において、重鎖は、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1の重鎖の少なくとも1つのCDR領域に由来するアミノ酸配列を含む。もう1つの好ましい態様において、重鎖は、複数の異なる重鎖からのCDRに由来するアミノ酸配列を含む。より好ましい1つの態様において、異なる重鎖からのCDRは2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1から得られる。もう1つの好ましい態様において、重鎖は、配列番号:4、8、12、16、20または24から選択されるアミノ酸配列を含む。もう1つの態様において、重鎖は、配列番号:3、7、11、15、19もしくは23から選択される核酸配列、またはそれからの1〜10個のアミノ酸挿入、欠失または置換を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。もう1つの態様において、置換は保存的アミノ酸置換である。
【0089】
抗IGF-IR抗体によるIGF-IR活性の阻害
IGF-IのIGF-IRとの結合の阻害
もう1つの態様において、本発明は、IGF-IのIGF-IRとの結合、またはIGF-IIのIGF-IRとの結合を阻害する抗IGF-IR抗体を提供する。1つの好ましい態様において、IGF-IRはヒトのものである。もう1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体はヒト抗体である。もう1つの態様において、抗体またはその部分は、IGF-IRとIGF-Iとの結合を100nMを超えないIC50で阻害する。1つの好ましい態様において、IC50は10nMを超えない。より好ましい1つの態様において、IC50は5nMを超えない。IC50は当技術分野で知られた任意の方法によって測定しうる。IC50をELISAまたはRIAによって測定することが一般的である。1つの好ましい態様では、IC50をRIAによって測定する。
【0090】
もう1つの態様において、本発明は、IGF-Iの存在下におけるIGF-IRの活性化を阻止する抗IGF-IR抗体を提供する。1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体は、受容体の占有に伴って起こるIGF-IR誘導性チロシンリン酸化を阻害する。もう1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体は、下流の細胞イベントが起こるのを阻害する。例えば、抗IGF-IRは、細胞をIGF-Iで処理するといずれも通常はリン酸化される、Shcならびにインスリン受容体基質(IRS)1および2のチロシンリン酸化を阻害しうる(Kimら、J. Biol. Chem. 273: 34543-34550、1998)。抗IGF-IR抗体がIGF-Iの存在下で IGF-IRの活性化を阻止しうるか否かは、IGF-IR、Shc、IRS-1またはIRS-2の自己リン酸化のレベルをウエスタンブロット法または免疫沈降によって決定することによって決定しうる。1つの好ましい態様において、IGF-IRの自己リン酸化のレベルはウエスタンブロット法によって決定されると考えられる。例えば、実施例VIIを参照のこと。
【0091】
本発明のもう1つの面において、本抗体は、抗体で処理した細胞によるIGF-IRのダウンレギュレーションを引き起こす。1つの態様において、IGF-IRは細胞の細胞質に内部移行する。共焦点顕微鏡によって示されているように、抗IGF-IR抗体はIGF-IRに結合した後に内部移行する。何らかの理由に拘束されることは望まないが、抗体-IGF-IR複合体はリソソーム内に内部移行して分解されると考えられている。IGF-IRのダウンレギュレーションは 免疫沈降、共焦点顕微鏡またはウエスタンブロット法を含む、当技術分野で知られた任意の方法によって測定しうる。例えば、実施例VIIを参照のこと。1つの好ましい態様において、抗体は2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2もしくは6.1.1から選択される、またはそれらの重鎖、軽鎖もしくは抗原結合領域を含む。
【0092】
IGF-IR抗体によるIGF-IRの活性化
本発明のもう1つの面は、活性化抗IGF-IR抗体にかかわる。活性化抗体は、IGF-IRに対するIGF-Iの作用を増幅または代替する点で、阻害抗体とは異なる。1つの態様において、活性化抗体はIGF-IRに結合して、それをIGF-Iの非存在下で活性化させることができる。このタイプの活性化抗体は、本質的にはIGF-Iの模倣物である。もう1つの態様において、活性化抗体は、IGF-IRに対するIGF-Iの作用を増幅する。このタイプの抗体は単独ではIGF-IRを活性化しないが、IGF-Iの存在下でのIGF-IRの活性化を増強する。模倣型の抗IGF-IR抗体は、インビトロにおける低レベルのIGF-Iの存在下または非存在下で細胞を抗体で処理することにより、増幅型の抗IGF-IR抗体と容易に区別しうる。抗体がIGF-Iの非存在下でIGF-IR活性化を引き起こすことができるなら、例えば、それがIGF-IRチロシンリン酸化を増大させるなら、その抗体は模倣型の抗体である。抗体がIGF-Iの非存在下ではIGF-IR活性化を引き起こせないが、IGF-IR活性化の量を増加させることができるなら、その抗体は増幅型の抗体である。1つの好ましい態様において、活性化抗体は4.17-3である。もう1つの好ましい態様において、抗体は4.17.3.由来の1つまたは複数のCDRを含む。もう1つの好ましい態様において、抗体は生殖系列配列O12(軽鎖)および/またはD71(重鎖)の一方または両方に由来する。
【0093】
抗IGF-IR抗体によるインビボでのIGF-IRチロシンリン酸化、IGF-IRレベルおよび腫瘍細胞増殖の阻害
本発明のもう1つの態様は、インビボでのIGF-IRチロシンリン酸化および受容体レベルを阻害する抗IGF-IR抗体を提供する。1つの態様において、動物に対する抗IGF-IR抗体の投与は、IGF-IR発現性腫瘍におけるIGF-IRホスホチロシンシグナルの減少を引き起こす。1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体はホスホチロシンシグナルを少なくとも20%減少させる。より好ましい1つの態様において、抗IGF-IR抗体はホスホチロシンシグナルを少なくとも60%、より好ましくは50%減少させる。さらにより好ましい1つの態様において、抗体はホスホチロシンシグナルを少なくとも40%、より好ましくは30%、さらにより好ましくは20%減少させる。1つの好ましい態様では、チロシンリン酸化のレベルを測定する約24時間前に抗体を投与する。チロシンリン酸化のレベルは、以下に記載するような当技術分野で知られた任意の方法によって測定しうる。例えば、実施例IIIおよび図5を参照のこと。1つの好ましい態様において、抗体は2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2もしくは6.1.1から選択される、またはそれらの重鎖、軽鎖もしくは抗原結合部分を含む。
【0094】
もう1つの態様において、動物に対する抗IGF-IR抗体の投与は、IGF-IR発現性腫瘍におけるIGF-IRレベルの低下を引き起こす。1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体は、非投与動物と比べて受容体レベルを少なくとも20%低下させる。より好ましい1つの態様において、抗IGF-IR抗体は、非投与動物における受容体レベルの少なくとも60%、より好ましくは50%に受容体レベルを低下させる。さらにより好ましい1つの態様において、本抗体は受容体レベルを少なくとも40%、より好ましくは30%に低下させる。1つの好ましい態様では、IGF-IRレベルを測定する約24時間前に抗体を投与する。IGF-IRレベルは、以下に記載するような当技術分野で知られた任意の方法によって測定しうる。例えば、実施例VIIIおよび図6を参照のこと。1つの好ましい態様において、抗体は2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2もしくは6.1.1から選択される、またはそれらの重鎖、軽鎖または抗原結合部分を含む。
【0095】
もう1つの態様において、抗IGF-IR抗体はインビボでの腫瘍細胞の増殖を阻害する。腫瘍細胞は、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、白血病細胞、肉腫細胞、多発性骨髄腫細胞または中胚葉細胞を非制限的に含む、任意の細胞に由来するものでよい。腫瘍細胞の例には、A549(非小細胞肺癌)細胞、MCF-7細胞、Colo 205細胞、3T3/IGF-IR細胞およびA431細胞が含まれる。1つの好ましい態様において、本抗体は非投与動物における腫瘍の成長と比較して腫瘍細胞の増殖を阻害する。より好ましい1つの態様において、本抗体は、腫瘍細胞の増殖を50%阻害する。さらにより好ましい1つの態様において、本抗体は腫瘍細胞の増殖を60%、65%、70%または75%阻害する。1つの態様においては、腫瘍細胞の増殖の阻害を、動物に抗体による治療を開始してから少なくとも7日後に測定する。より好ましい1つの態様では、腫瘍細胞の増殖の阻害を、動物に抗体による治療を開始してから少なくとも14日後に測定する。もう1つの好ましい態様では、抗IGF-IR抗体とともに別の抗腫瘍薬を動物に投与する。1つの好ましい態様において、この抗腫瘍薬は腫瘍細胞の増殖をさらに阻害することができる。さらにより好ましい1つの態様において、抗腫瘍薬はアドリアマイシン、タキソール、タモキシフェン、5-フルオロデオキシウリジン(5-FU)またはCP-358,774である。1つの好ましい態様において、抗腫瘍薬と抗IGF-IR抗体との同時投与は、22〜24日の期間後に、腫瘍細胞の増殖を少なくとも50%、より好ましくは60%、65%、70%または75%、より好ましくは80%、85%または90%阻害する。例えば、図7および実施例IXを参照のこと。1つの好ましい態様において、抗体は2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2もしくは6.1.1から選択される、またはそれらの重鎖、軽鎖もしくは抗原結合部分を含む。
【0096】
抗IGF-IR抗体によるアポトーシスの誘導
本発明のもう1つの面は、細胞死を誘導する抗IGF-IR抗体を提供する。1つの態様において、抗体はアポトーシスを誘導する。抗体はアポトーシスをインビボまたはインビトロのいずれで誘導してもよい。一般に、腫瘍細胞は正常細胞よりもアポトーシスに対する感受性が高いため、抗IGF-IR抗体の投与は腫瘍細胞のアポトーシスを正常細胞のものよりも選好的に引き起こす。もう1つの態様において、抗IGF-IR抗体の投与は、ホスファチジルイノシトール(PI)キナーゼ経路に関与する酵素であるaktのレベルを低下させる。このPIキナーゼ経路は、細胞増殖、およびアポトーシスの阻止に関与している。このため、aktの阻害はアポトーシスを引き起こす可能性がある。より好ましい1つの態様において、抗体は、IGF-IR発現細胞のアポトーシスを引き起こすためにインビボで投与される。1つの好ましい態様において、抗体は2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2もしくは6.1.1から選択される、またはそれらの重鎖、軽鎖または抗原結合部分を含む。
【0097】
抗体および抗体産生細胞系の作製方法
免疫処置
本発明の1つの態様においては、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部または全体を含む非ヒト動物にIGF-IR抗原による免疫処置を行うことにより、ヒト抗体を作製する。1つの好ましい態様において、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きな断片を含み、マウス抗体の産生に欠陥のある遺伝子操作マウス系統であるXENOMOUSE(商標)である。例えば、Greenら、Nature Genetics 7: 1321(1994)ならびに米国特許第5,916,771号、第5,939,598号、第5,985,615号、第5,998,209号、第6,075,181号、第6,091,001号、第6,114,598号および第6,130,364号を参照のこと。1991年7月25日に発行された国際公開公報第91/10741号、1994年2月3日に発行された国際公開公報第94/02602号、いずれも1996年10月31日に発行された国際公開公報第96/34096号および国際公開公報第96/33735号、1998年4月23日に発行された国際公開公報第98/16654号、1998年6月11日に発行された国際公開公報第98/24893号、1998年11月12日に発行された国際公開公報第98/50433号、1999年9月10日に発行された国際公開公報第99/45031号、1999年10月21日に発行された国際公開公報第99/53049号、2000年2月24日に発行された国際公開公報第00 09560号、ならびに2000年6月29日に発行された国際公開公報第00/037504号も参照のこと。XENOMOUSE(商標) は完全ヒト抗体の成人様レパートリーを生じ、抗原特異的ヒトMabを産生する。第二世代のXENOMOUSE(商標)は、ヒトの重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座のメガベース規模の生殖系列構成のYAC断片の導入により、ヒト抗体レパートリーの約80%を含む。Mendezら、Nature Genetics 15: 146-156(1997)、GreenおよびJakobovits、 J Exp. Med. 188: 483-495(1998)(これらの開示内容は参照として本明細書に組み入れられる)を参照のこと。
【0098】
本発明は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒトトランスジェニック動物に免疫処置を行うことにより、非ヒト非マウス動物から抗IGF-IR抗体を作るための方法も提供する。このような動物は、直前に記載した方法を用いて作製することができる。これらの特許に開示された方法を、米国特許第5,994,619号に記載されたように改変してもよい。1つの好ましい態様において、非ヒト動物はラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマであってよい。
【0099】
もう1つの態様において、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリンの「ミニ遺伝子座」を有する動物である。ミニ遺伝子座アプローチでは、Ig遺伝子座からの個々の遺伝子を含めることによって外因性Ig遺伝子座を模倣する。すなわち、1つまたは複数のVH遺伝子、1つまたは複数のDH遺伝子、1つまたは複数のJH遺伝子、μ定常領域および第2の定常領域(好ましくはγ定常領域)を、動物に挿入するための1つの構築物として構成する。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,625,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号、第5,770,429号、第5,789,650号、第5,814,318号、第5,591,669号、第5,612,205号、第5,721,367号、第5,789,215号および第5,643,763号に記載されており、これらは参照として本明細書に組み入れられる。
【0100】
ミニ遺伝子座アプローチの利点の1つは、Ig遺伝子座の部分を含む構築物を作製して動物に導入することができる迅速性である。一方、ミニ遺伝子座アプローチに想定される欠点は、完全なB-細胞発生を支援するには免疫グロブリンの多様性が不十分であるために抗体産生が少なくなる可能性があることである。
【0101】
ヒト抗IGF-IR抗体の作製のためには、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部または全体を含む非ヒト動物に対してIGF-IR抗原による免疫処置を行って、抗体または抗体産生細胞を動物から単離する。IGF-IR抗原は単離および/または精製されたIGF-IRであってよく、これは好ましくはヒトIGF-IRである。もう1つの態様において、IGF-IR抗原はIGF-IRの断片、好ましくはIGF-IRの細胞外ドメインである。もう1つの態様において、IGF-IR抗原は、IGF-IRの少なくとも1つのエピトープを含む断片である。もう1つの態様において、IGF-IR抗原は、細胞表面にIGF-IRを発現する細胞、好ましくは細胞表面にIGF-IRを過剰発現する細胞である。
【0102】
動物の免疫処置は、当技術分野で知られた任意の方法によって行いうる。例えば、HarlowおよびLane、「抗体:実験マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)」、New York: Cold Spring Harbor Press、1990を参照のこと。マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシおよびウマなどの非ヒト動物に免疫処置を行うための方法は当技術分野で周知である。例えば、HarlowおよびLane、ならびに米国特許第5,994,619号を参照のこと。1つの好ましい態様においては、IGF-I抗原を、免疫応答を刺激するためにアジュバントとともに投与する。このようなアジュバントには、完全もしくは不完全フロイントアジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)またはISCOM(免疫刺激複合体)が含まれる。このようなアジュバントには、ポリペプチドを局在性の沈着物として隔離することによってそれが急速に分散することを防ぐもの、またはマクロファージおよび免疫系の他の構成要素に対する走化性のある因子を分泌するように宿主を刺激する物質を含むものがある。ポリペプチドを投与する場合には、免疫処置計画には数週間にわたって2回またはそれ以上のポリペプチドの投与を含めることが好ましい。
【0103】
実施例Iは、 XENOMOUSE(商標)に対して、リン酸緩衝液食塩水中にある完全長ヒトIGF-IRによる免疫処置を行うためのプロトコールを提示している。
【0104】
抗体および抗体産生細胞系の作製
動物に対するIGF-IR抗原による免疫処置の後に、抗体および/または抗体産生細胞を動物から入手することができる。動物の採血または屠殺により、抗IGF-IR抗体を含む血清を動物から入手する。動物から入手した血清を用い、血清から免疫グロブリン画分を入手すること、または抗IGF-IR抗体を血清から精製することができる。このようにして得られる血清または免疫グロブリンはポリクローナルであり、入手しうる抗体の量が限られていて、ポリクローナル抗体は均一でないさまざまな特性を有することから、このことは不都合である。
【0105】
もう1つの態様において、抗体を産生する不死化ハイブリドーマを免疫感作動物から調製することもできる。免疫処置の後に動物を屠殺し、脾臓B細胞を、当技術分野で周知の通りに不死化骨髄腫細胞と融合させる。例えば、HarlowおよびLane、前記を参照のこと。1つの好ましい態様において、骨髄腫細胞は免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌性細胞系)。融合および抗生物質による選択の後に、IGF-IR、その一部またはIGF-IRを発現する細胞を用いてハイブリドーマをスクリーニングする。1つの好ましい態様において、初期スクリーニングは固相酵素免疫アッセイ(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)、好ましくはELISAを用いて行う。ELISAスクリーニングの一例は国際公開公報第00/37504号に記載されており、これは参照として本明細書に組み入れられる。
【0106】
もう1つの態様において、抗体産生細胞を自己免疫疾患があって抗IGF-IR抗体を発現するヒトから調製してもよい。抗IGF-IR抗体を発現する細胞は、白血球を単離してそれを蛍光活性化細胞分取法(FACS)にかけることによって、またはIGF-IRもしくはその部分をコーティングしたプレートに対するパニングを行うことによって単離しうる。ヒト抗IGF-IR抗体を発現するヒトハイブリドーマを作製するために、これらの細胞をヒト非分泌性骨髄腫と融合させてもよい。一般に、この抗IGF-IR抗体のIGF-TRに対する親和性は低い可能性が高いため、これはあまり好ましくない態様である。
【0107】
抗IGF-IR抗体を産生するハイブリドーマを選択してクローニングし、さらに、以下に詳細に考察するように、ハイブリドーマの増殖が盛んであること、抗体産生量の多さおよび望ましい抗体特性を含む、望ましい特徴に関してスクリーニングする。ハイブリドーマは、インビボで同系動物において、免疫系を欠く動物、例えばヌードマウスにおいて、またはインビトロで細胞培養物において培養して増殖させることができる。ハイブリドーマの選択、クローニングおよび増殖の方法は当業者に周知である。
【0108】
好ましくは、免疫処置を受ける動物はヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する非ヒト動物であり、脾臓B細胞をその非ヒト動物と同じ種に由来する骨髄腫と融合させる。より好ましくは、免疫処置を受ける動物はXENOMOUSE(商標)であって、骨髄腫細胞系は非分泌性マウス骨髄腫であり、例えば骨髄腫細胞系はNSO-bcl2である。例えば、実施例Iを参照のこと。
【0109】
1つの面において、本発明は、ヒト抗IGF-IR抗体を産生する、作製されたハイブリドーマを提供する。1つの好ましい態様において、ハイブリドーマは上記のようにマウスハイブリドーマである。もう1つの好ましい態様において、ハイブリドーマは、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマなどのラット非ヒト非マウス種である。もう1つの態様において、ハイブリドーマは、ヒトの非分泌性骨髄腫を、抗IGF-IR抗体を発現するヒト細胞と融合させたヒトハイブリドーマである。
【0110】
抗体を作製するための核酸、ベクター、宿主細胞および組換え法
核酸
本発明の抗IGF-IR抗体をコードする核酸分子を提供する。1つの態様において、核酸分子は、抗IGF-IR免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖をコードする。1つの好ましい態様では、1つの核酸分子が抗IGF-IR免疫グロブリンの重鎖をコードし、もう1つの核酸分子が抗IGF-IR免疫グロブリンの軽鎖をコードする。より好ましい1つの態様において、コードされる免疫グロブリンはヒト免疫グロブリン、好ましくはヒトIgGである。コードされる軽鎖はλ鎖またはκ鎖であってよく、好ましくはκ鎖である。
【0111】
軽鎖の可変領域をコードする核酸分子は、A30、A27またはO12のVκ遺伝子に由来するものでよい。1つの好ましい態様において、軽鎖はA30のVκ遺伝子に由来する。もう1つの好ましい態様において、軽鎖をコードする核酸分子は、Jκ1、Jκ2またはJκ4に由来する連結領域を含む。さらにより好ましい1つの態様において、軽鎖をコードする核酸分子が含む生殖系列A30 Vκ遺伝子からのアミノ酸変化は10個を超えず、好ましくは6個のアミノ酸変化を超えず、さらにより好ましくは3個のアミノ酸変化を超えない。
【0112】
本発明は、抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1のうち1つのVLに由来する、生殖系列配列からのアミノ酸変化と同一なアミノ酸変化である、生殖系列配列との比較による少なくとも3個のアミノ酸変化を含む軽鎖(VL)の可変領域をコードする核酸分子を提供する。本発明はまた、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸分子も提供する。本発明はまた、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1の任意のいずれか1つのCDRの1つまたは複数のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸分子も提供する。1つの好ましい態様において、核酸分子は、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1の軽鎖のいずれか1つのCDRのすべてのアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。もう1つの態様において、核酸分子は、配列番号:2、6、10、14、18もしくは22のうち1つのアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、または配列番号:1、5、9、13、17もしくは21のうち1つの核酸配列を含む。もう1つの好ましい態様において、核酸分子は、配列番号:2、6、10、14、18もしくは22のいずれか1つのCDRの、1つまたは複数のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、または配列番号:1、5、9、13、17もしくは21のいずれか1つのCDRの、1つもしくは複数の核酸配列を含む。より好ましい1つの態様において、核酸分子は、配列番号:2、6、10、14、18もしくは22のいずれか1つのCDRのすべてのアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、または配列番号:1、5、9、13、17もしくは21のいずれか1つのCDRのすべての核酸配列を含む。
【0113】
本発明は、上記のVL、特に配列番号:2、6、10、14、18または22のうち1つのアミノ酸配列を含むVLと、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する、VLのアミノ酸配列をコードする核酸分子も提供する。本発明はまた、配列番号:1、5、9、13、17または21のうち1つの核酸配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である核酸配列も提供する。もう1つの態様において、本発明は、上記のVLをコードする核酸分子、特に配列番号:2、6、10、14、18または22のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸分子と、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするVLをコードする核酸配列も提供する。本発明はまた、配列番号:1、5、9、13、17または21のうち1つの核酸配列を含む核酸分子と、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするVLをコードする核酸配列も提供する。
【0114】
本発明は、DP-35、DP-47、DP-71またはVIV-4/4.35VH遺伝子、好ましくはDP-35VH遺伝子に由来する重鎖(VH)の可変領域をコードする核酸分子も提供する。もう1つの好ましい態様において、VHをコードする核酸分子は、JH6またはJH5に、より好ましくはJH6に由来する連結領域を含む。もう1つの好ましい態様において、D区域は3-3、6-19または4-17に由来する。さらにより好ましい1つの態様において、VHをコードする核酸分子が含む生殖系列DP-47遺伝子からのアミノ酸変化は10個を超えず、好ましくは6個のアミノ酸変化を超えず、さらにより好ましくは3個のアミノ酸変化を超えない。非常に好ましい1つの態様において、VHをコードする核酸分子は、抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1のうち1つの重鎖に由来する生殖系列配列からのアミノ酸変化と同一なアミノ酸変化である、生殖系列配列との比較による少なくとも1つのアミノ酸変化を含む。さらにより好ましい1つの態様において、VHは、抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1のうち1つのVHに由来する生殖系列配列からの変化と同一な変化である、生殖系列配列との比較による少なくとも3つのアミノ酸変化を含む。
【0115】
1つの態様において、核酸分子は、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1のVHのアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。もう1つの態様において、核酸分子は、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1の重鎖のCDRの1つまたは複数のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの好ましい態様において、核酸分子は、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1の重鎖のCDRのすべてのアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。もう1つの好ましい態様において、核酸分子は、配列番号:4、8、12、16、20もしくは24のうち1つのアミノ酸配列をコードする核酸分子を含むか、配列番号:3、7、11、15、19もしくは23のうち1つの核酸分子を含む。もう1つの好ましい態様において、核酸分子は、配列番号:4、8、12、16、20もしくは24のいずれか1つのCDRの、1つもしくは複数のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、または配列番号:3、7、11、15、19もしくは23のいずれか1つのCDRの1つもしくは複数の核酸配列を含む。1つの好ましい態様において、核酸分子は、配列番号:4、8、12、16、20もしくは24のいずれか1つのCDRのすべてのアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、または配列番号:3、7、11、15、19もしくは23のいずれか1つのCDRのすべての核酸配列を含む。
【0116】
もう1つの態様において、核酸分子は、直前に記載したVH、特に配列番号:4、8、12、16、20または24のうち1つのアミノ酸配列を含むVHをコードするアミノ酸配列の1つと、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるVHのアミノ酸配列をコードする。本発明はまた、配列番号:3、7、11、15、19または23のうち1つの核酸配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である核酸配列も提供する。もう1つの態様において、VHをコードする核酸分子は、上記のVH、特に配列番号:4、8、12、16、20または24のうち1つのアミノ酸配列を含むVHをコードする核酸配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするものである。本発明はまた、配列番号:3、7、11、15、19または23のうち1つの核酸配列を含む核酸分子と、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするVHをコードする核酸配列も提供する。
【0117】
抗IGF-IR抗体の重鎖全体および軽鎖全体の一方もしくは両方、またはそれらの可変領域をコードする核酸分子は、抗IGF-IR抗体を産生する任意の供給源から入手しうる。抗体をコードするmRNAを単離する方法は当技術分野で周知である。例えば、Sambrookらを参照のこと。mRNAを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または抗体遺伝子のcDNAクローニングに用いるためのcDNAを作製するために用いてもよい。本発明の1つの態様において、核酸分子は、上記の通り、抗IGF-IR抗体を発現するハイブリドーマ、好ましくはその融合パートナーの一方がXENOMOUSE(商標)、非ヒトマウストランスジェニック動物または非ヒト非マウストランスジェニック動物などのヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニック動物の細胞であるハイブリドーマから入手しうる。もう1つの態様において、ハイブリドーマは非ヒト非トランスジェニック動物に由来し、これを例えば、ヒト化抗体に用いることができる。
【0118】
抗IGF-IR抗体の重鎖全体をコードする核酸分子は、重鎖またはその抗原結合ドメインの可変ドメインをコードする核酸分子を重鎖の定常ドメインと融合させることによって構築しうる。同様に、抗IGF-IR抗体の軽鎖をコードする核酸分子は、軽鎖またはその抗原結合ドメインの可変ドメインを軽鎖の定常ドメインと融合させることによって構築しうる。VH鎖およびVL鎖をコードする核酸分子は、それぞれ重鎖定常および軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクター中にそれらを挿入して、VH区域をベクター内部の重鎖定常領域(CH)区域と機能的に結合させ、VL区域をベクター内部の軽鎖定常領域(CL)区域と機能的に結合させることにより、完全長抗体遺伝子へと転換させうる。または、標準的な分子生物学の技法を用いて、VH鎖をコードする核酸分子をCH鎖をコードする核酸分子に結合させること、例えば連結させることにより、VH鎖またはVL鎖をコードする核酸分子を完全長抗体遺伝子へと転換させる。同じことを、VL鎖およびCL鎖をコードする核酸分子を用いて行うこともできる。ヒト重鎖および軽鎖の定常領域遺伝子の配列は当技術分野で知られている。例えば、Kabatら、「免疫学的に興味深いタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、第5版、NIH Publ. No. 91-3242、1991を参照のこと。続いて、完全長重鎖および/または軽鎖をコードする核酸分子を、それらが導入された細胞から発現させて、抗IGF-IR抗体を単離することができる。
【0119】
1つの好ましい態様において、重鎖の可変領域をコードする核酸は配列番号:4、8、12、16、20または24のアミノ酸配列をコードし、軽鎖の可変領域をコードする核酸分子は配列番号:2、6、10、14、18または22のアミノ酸配列をコードする。配列番号:28は、抗IGF-IR抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3および6.1.1の重鎖の定常領域のアミノ酸配列を示し、配列番号:27はそれらをコードする核酸配列を示している。配列番号:26は抗IGF-IR抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3および6.1.1の軽鎖の定常領域のアミノ酸配列を示し、配列番号:25はそれらをコードする核酸配列を示している。したがって、1つの好ましい態様において、重鎖の定常領域をコードする核酸分子は配列番号:28をコードし、軽鎖の定常ドメインをコードする核酸分子は配列番号:26をコードする。より好ましい1つの態様において、重鎖の定常ドメインをコードする核酸分子は配列番号:27の核酸配列を有し、定常ドメインの核酸分子をコードする核酸分子は配列番号:25の核酸配列を有する。
【0120】
もう1つの態様において、抗IGF-IR抗体の重鎖もしくはその抗原結合ドメイン、または抗IGF-IR抗体の軽鎖もしくはその抗原結合ドメインのいずれかをコードする核酸分子を、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する、IGF-IR抗原による免疫処置を受けた非ヒト非マウス動物から単離してもよい。他の態様において、核酸分子を、非トランスジェニック動物、または抗IGF-IR抗体を産生するヒト患者に由来する抗IGF-IR抗体産生細胞から単離することもできる。抗IGF-IR抗体産生細胞からmRNAを単離する方法は、標準的な技法による単離、PCRおよびライブラリー構築法を用いたクローニングおよび/または増幅、ならびに抗IGF-IR重鎖および軽鎖をコードする核酸分子を入手するための標準的なプロトコールを用いたスクリーニングであってよい。
【0121】
本核酸分子は、以下に述べるように、大量の抗IGF-IR抗体を組換え手法によって発現させるために用いることができる。以下にさらに述べるように、本核酸分子を、キメラ抗体、一本鎖抗体、イムノアドヘシン、二重特異性抗体、変異型抗体および抗体誘導体を作製するために用いてもよい。核酸分子が非ヒト非トランスジェニック動物に由来する場合には、同じく以下に述べるように、核酸分子を抗体のヒト化のために用いることもできる。
【0122】
もう1つの態様において、本発明の核酸分子を、特定の抗体配列に対するプローブまたはPCRプライマーとして用いてもよい。例えば、核酸分子プローブを診断方法に用いてもよく、または核酸分子PCRプライマーを、例えば、抗IGF-IR抗体の可変ドメインの作製に用いるための核酸配列の単離に用いうると考えられるDNAの領域を増幅するために用いてもよい。1つの好ましい態様において、核酸分子はオリゴヌクレオチドである。より好ましい1つの態様において、オリゴヌクレオチドは関心対象の抗体の重鎖および軽鎖の高度に可変的な領域である。さらにより好ましい1つの態様において、オリゴヌクレオチドはCDRのうち1つまたは複数の全体または一部をコードする。
【0123】
ベクター
本発明は、重鎖またはその抗原結合部分をコードする本発明の核酸分子を含むベクターを提供する。本発明はまた、軽鎖またはその抗原結合部分をコードする本発明の核酸分子を含むベクターも提供する。本発明はまた、融合タンパク質、改変抗体、抗体断片およびそれらのプローブをコードする核酸分子を含むベクターも提供する。
【0124】
本発明の抗体または抗体部分を発現させるためには、上記の通りに入手した、部分的または完全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAを、遺伝子が転写および翻訳の制御配列と機能的に結合するように発現ベクター中に挿入する。発現ベクターには、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソームなどが含まれる。抗体遺伝子を、ベクター内部の転写および翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写および翻訳の調節という意図した機能を果たすようにベクター中に連結する。発現ベクターおよび発現制御配列は、用いる発現宿主細胞と適合するように選択する。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子を別個のベクター中に挿入することができる。1つの好ましい態様においては、両方の遺伝子を同じ発現ベクター中に挿入する。抗体遺伝子の発現ベクター中への挿入は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクター上の相補的制限部位の連結、または、制限部位が存在しない場合には平滑末端の連結)によって行われる。
【0125】
好都合なベクターは、上記のように、任意のVHまたはVL配列を容易に挿入して発現させることが可能なように操作された適切な制限部位を備えた、機能に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列を含むものである。このようなベクターでは、スプライシングは通常、挿入されたJ領域内部のスプライスドナー部位と、ヒトC領域の前にあるスプライスアクセプター部位との間で起こり、ヒトCHエクソン内部に存在するスプライス部位でも起こる。ポリアデニル化および転写終結はコード領域の下流にある本来の染色体部位で起こる。組換え発現ベクターが、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促すシグナルペプチドをコードすることもできる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端に対してインフレームとなるように、ベクター中に挿入するとよい。シグナルペプチドは免疫グロブリンのシグナルペプチドでも異種シグナルペプチド(すなわち、免疫グロブリンでないタンパク質由来のシグナルペプチド)でもよい。
【0126】
本発明の組換え発現ベクターは、抗体鎖遺伝子に加えて、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列も有する。調節配列の選択を含め、発現ベクターのデザインが、形質転換させる宿主細胞の選択、タンパク質の所望の発現レベルなどの要因に依存することを当業者は理解すると考えられる。哺乳類宿主細胞での発現のために好ましい調節配列には、哺乳類細胞における高レベルのタンパク質発現を導くウイルス因子、例えば、レトロウイルスLTR由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマプロモーターならびに天然の免疫グロブリンおよびアクチンプロモーターなどの強力な哺乳類プロモーターが含まれる。ウイルス調節因子およびそれらの配列に関する詳細な説明については、 例えば、Stinskiによる米国特許第5,168,062号、Bellらによる米国特許第4,510,245号、およびSchaffnerらによる米国特許第4,968,615号を参照のこと。
【0127】
本発明の組換え発現ベクターは、抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子といったほかの配列を含んでもよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、いずれもAxelらによる、米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号を参照のこと)。例えば一般的に、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に対して、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(dhfr-宿主細胞のメトトレキサート選択/増幅に用いるため)およびneo遺伝子(G418選択のため)が含まれる。
【0128】
非ハイブリドーマ宿主細胞および組換え手法によるタンパク質の作製方法
抗IGF-LR抗体の重鎖もしくはその抗原結合部分、および/または軽鎖もしくはその抗原結合部分をコードする核酸分子、ならびにこれらの核酸分子を含むベクターは、適した哺乳類宿主細胞における形質転換のために用いることができる。形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の既知の方法によるものでよい。異種性ポリヌクレオチドの哺乳類細胞への導入のための方法は当技術分野で周知であり、これにはデキストランを介したトランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、ポリブレンを介したトランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチドのリポソーム中への封入、微粒子銃による注入、およびDNAの核内への直接微量注入が含まれる。さらに、核酸分子をウイルスベクターによって哺乳類細胞に導入することもできる。細胞の形質転換の方法は当技術分野で周知である。例えば、米国特許第4,399,216号、第4,912,040号、第4,740,461号および第4,959,455号を参照のこと(これらの特許は参照として本明細書に組み入れられる)。
【0129】
発現のための宿主として利用しうる哺乳類細胞は当技術分野で周知であり、これにはAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な不死化細胞系が含まれる。これらには、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、3T3細胞および他の多くの細胞系が含まれる。哺乳類宿主細胞には、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマおよびハムスターの細胞が含まれる。特に好ましい細胞系は、どの細胞系の発現レベルが高いかを判定することによって選択される。用いうる他の細胞系には、Sf9細胞などの昆虫細胞系、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞および真菌細胞がある。重鎖またはその抗原結合部分、軽鎖および/またはその抗原結合部分をコードする組換え発現ベクターを哺乳類宿主細胞に導入する場合には、宿主細胞における抗体の産生を、またはより好ましくは宿主細胞が生育している培地中への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間にわたる宿主細胞の培養により、抗体を産生させる。抗体を、標準的なタンパク質精製法を用いて培地から回収することができる。
【0130】
さらに、本発明の抗体(またはそれに由来する他の部分)の産生細胞系からの発現を、さまざまな既知の技法を用いて増強させることができる。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(GS系)は、ある特定の条件下での発現を増強させるための一般的なアプローチである。GS系については、欧州特許第0 216 846号、第0 256 055号および第0 323 997号ならびに欧州特許出願第89303964.4号の全体または一部に考察されている。
【0131】
異なる細胞系により、またはトランスジェニック動物において発現される抗体は、互いに異なるグリコシル化を有する可能性が高いと考えられる。しかし、本明細書に提供する核酸分子によってコードされる、または本明細書に提供するアミノ酸配列を含む、すべての抗体は、抗体のグリコシル化にかかわらず、本発明の一部である。
【0132】
トランスジェニック動物
本発明は、本発明の抗体の作製に用いうる、1つまたは複数の本発明の核酸分子を含むトランスジェニック非ヒト動物も提供する。抗体を、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタ、ラット、マウス、ウサギ、ハムスターまたは他の哺乳類の乳、血液または尿などの組織または体液中に産生させて回収することができる。例えば、米国特許第5,827,690号、第5,756,687号、第5,750,172号および第5,741,957号を参照のこと。上記の通り、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒトトランスジェニック動物は、IGF-IRまたはその部分による免疫処置によって作製することができる。
【0133】
もう1つの態様においては、非ヒトトランスジェニック動物を、標準的なトランスジェニック法によって動物に1つまたは複数の本発明の核酸分子を導入することによって作製する。Hogan、前記を参照のこと。トランスジェニック動物の作出に用いるためのトランスジェニック細胞は胚幹細胞でも体細胞でもよい。トランスジェニック非ヒト生物は、キメラ体、非キメラ性ヘテロ接合体、および非キメラ性ホモ接合体のいずれでもよい。例えば、Hoganら、「マウス胚の操作:実験マニュアル(Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual)」第2版、Cold Spring Harbor Press(1999);Jacksonら、「マウスの遺伝学およびトランスジェニック学:実践的アプローチ(Mose Genetics and Transgenics: A Practical Approach)」、Oxford University Press(2000);およびPinkert、「トランスジェニック動物の技術:実験ハンドブック(Transgenic Animal Technology: A Laboratory Handbook)」、Academic Press(1999)を参照のこと。もう1つの態様において、トランスジェニック非ヒト生物が、関心対象の重鎖および/または軽鎖をコードするように標的指向的な破壊および置換を受けてもよい。1つの好ましい態様において、トランスジェニック動物は、IGF-IR、好ましくはヒトIGF-IRに特異的に結合する重鎖および軽鎖を含み、発現する。もう1つの態様において、トランスジェニック動物は、一本鎖抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体などの改変抗体をコードする核酸分子を含む。抗IGF-IR抗体は、任意のトランスジェニック動物において作製しうる。1つの好ましい態様において、非ヒト動物はマウス、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマである。非ヒトトランスジェニック動物は、前記のコードされるポリペプチドを、血液、乳、尿、唾液、涙液、粘液および他の体液中に発現する。
【0134】
ファージディスプレイライブラリー
本発明は、抗IGF-IR抗体またはその抗原結合部分を作製するための方法であって、ファージ上にヒト抗体のライブラリーを合成する段階、ライブラリーをIGF-IRまたはその部分によりスクリーニングする段階、IGF-IRに結合したファージを単離する段階、および抗体をファージから入手する段階を含む方法を提供する。抗体のライブラリーを調製するための1つの方法は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒト宿主動物に対して、免疫応答を生じさせるためにIGF-IRまたはその抗原性部分による免疫処置を行う段階、宿主動物から抗体の産生を担う細胞を抽出する段階;抽出した細胞からRNAを単離する段階、RNAを逆転写してcDNAを作製する段階、プライマーを用いてcDNAを増幅する段階、および、抗体がファージ上に発現されるようにcDNAをファージディスプレイベクター中に挿入する段階を含む。このようにして本発明の組換え抗IGF-IR抗体を入手しうる。
【0135】
本明細書に開示する抗IGF-IR抗体に加えて、本発明の組換え抗IGF-IRヒト抗体を、ヒトリンパ球に由来するmRNAから調製したヒトVLおよびVH cDNAを用いて調製した組換えコンビナトリアル抗体ライブラリー、好ましくはscFvファージディスプレイライブラリーのスクリーニングによって単離することもできる。このようなライブラリーの調製およびスクリーニングのための方法は当技術分野で知られている。ファージディスプレイライブラリーを作製するための市販のキットがある(例えば、Pharmacia組換えファージ抗体システム、カタログ番号27-9400-01;およびStratagene SurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。抗体ディスプレイライブラリーの作製およびスクリーニングに用いうる他の方法および試薬もある(例えば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Kangら、PCT国際公開公報第92/18619号;Dowerら、PCT国際公開公報第91/17271号;Winterら、PCT国際公開公報第92/20791号;Marklandら、PCT国際公開公報第92/15679号;Breitlingら、PCT国際公開公報第93/01288号;McCaffertyら、PCT国際公開公報第92/01047号;Garrardら、PCT国際公開公報第92/09690号;Fuchsら(1991)Bio/Technology 9: 1370-1372;Hayら(1992)Hum;Antibod. Hybridomas 3: 81-85;Huseら(1989)Science 246: 1275-1281;McCaffertyら、Nature(1990)348: 552-554;Griffithsら(1993)EMBO J 12: 725-734;Hawkinsら(1992)J. Mol. Biol. 226: 889-896;Clacksonら(1991)Nature 352: 624-628;Gramら(1992)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 3576-3580;Garradら(1991)Bio/Technology 9: 1373-1377;Hoogenboomら(1991)Nuc Acid Res 19: 4133-4137;およびBarbasら(1991)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 7978-7982を参照のこと)。
【0136】
1つの好ましい態様においては、所望の特性を備えたヒト抗IGF-IR抗体を単離するために、本明細書に記載のヒト抗IGF-IR抗体を最初に用い、Hoogenboomら、PCT国際公開公報第93/06213号に記載されたエピトープインプリンティング法を用いて、IGF-IRに対する結合活性が類似しているヒト重鎖および軽鎖配列を選択する。この方法に用いる抗体ライブラリーは、好ましくは、McCaffertyら、PCT国際公開公報第92/01047号、McCaffertyら、Nature(1990)348: 552-554;およびGriffithsら(1993)EMBO J 12: 725-734に記載されたように調製してスクリーニングを行うscFvライブラリーである。scFv抗体ライブラリーのスクリーニングには、ヒトIGF-IRを抗原として用いることが好ましい。
【0137】
最初のヒトVLおよびVH区域を選択した上で、最初に選択したVLおよびVH区域のさまざまな対をIGF-IR結合に関してスクリーニングする「混合組み合わせ」実験を、好ましいVL/VH対の組み合わせを選択するために行う。加えて、抗体の質をさらに向上させるために、先天的な免疫応答の際に抗体の親和性成熟をもたらすインビボでの体細胞変異過程と類似した過程により、好ましいVL/VH対のVLおよびVH区域を、好ましくはVHおよび/またはVLのCDR3領域の内部で、ランダムに変異させることもできる。このインビトロ親和性成熟は、結果として得られるPCR産物がVHおよび/またはVL CDR3領域にランダムな変異が導入されたVHおよびVL区域をコードするように、特定の位置に4つのヌクレオチド塩基のランダムな混合物によって「傷付けられた(spiked)」プライマーである、それぞれVH CDR3またはVL CDR3に対して相補的なPCRプライマーを用いてVHおよびVL領域を増幅することによって実現しうる。これらのランダムに変異したVHおよびVL区域を、IGF-IRに対する結合に関して再びスクリーニングすることが可能である。
【0138】
本発明の抗IGF-IR抗体の組換え免疫グロブリンディスプレイライブラリーからのスクリーニングおよび単離に続いて、標準的な組換えDNA法により、選択した抗体をコードする核酸をディスプレイパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収して他の発現ベクター中にサブクローニングすることができる。必要に応じて、以下に述べるように、本発明の他の抗体形態を作製するために抗体をさらに操作することもできる。コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングによって単離された組換えヒト抗体を発現させるためには、上記のように、抗体をコードするDNAを組換え発現ベクター中にクローニングして、哺乳類宿主細胞に導入する。
【0139】
クラス転換
本発明のもう1つの面は、抗IGF-IR抗体のクラスを別のものへと転換させうる機構を提供することである。本発明の1つの面においては、VLまたはVHをコードする核酸分子を、CLおよびCHをコードする核酸配列を全く含まないように、当技術分野で周知の方法を用いて単離する。続いて、VLまたはVHをコードする核酸分子を、異なるクラスの免疫グロブリン分子由来のCLまたはCHをコードする核酸配列と機能的に結合させる。これは上記のように、CLまたはCH鎖を含むベクターまたは核酸分子を用いて実現しうる。例えば、当初はIgMであった抗IGF-IR抗体をIgGにクラス転換させることができる。さらに、クラス転換を用いて、あるIgGサブクラスを別のものに変換すること、例えばIgG1をIgG2に変換することもできる。所望のアイソタイプを含む本発明の抗体を作製するための好ましい方法は、 抗IGF-IR抗体の重鎖をコードする核酸および抗IGF-IR抗体の軽鎖をコードする核酸を単離する段階、重鎖の可変領域を入手する段階、重鎖の可変領域を所望のアイソタイプの重鎖の定常ドメインと連結する段階、軽鎖および連結した重鎖を細胞内で発現させる段階、ならびに所望のアイソタイプの抗IGF-IR抗体を収集する段階を含む。
【0140】
抗体誘導体
上記の核酸分子を、当業者に知られた技法および方法を用いて抗体誘導体を作製するために用いることもできる。
【0141】
ヒト化抗体
ヒト抗体の作製に関連して上に考察したように、免疫原性の低下した抗体を作製することは有益である。これは、適切なライブラリーを用いたヒト化の技法およびディスプレイ法を用いて、ある程度実現することができる。マウス抗体または他の種由来の抗体を当業者に周知の技法を用いてヒト化または霊長動物化しうることは理解されると考えられる。例えば、WinterおよびHarris、Immunol Today 14: 43-46(1993)ならびにWrightら、Crit. Reviews in Immunol. 12125-168(1992)を参照のこと。関心対象の抗体を組換えDNA法によって操作し、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメインおよび/またはフレームワークドメインを対応するヒト配列へと置換することもできる(国際公開公報第92/02190号および米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,792号、第5,714,350号および第5,777,085号を参照)。1つの好ましい態様においては、抗IGF-IR抗体を、重鎖、軽鎖または重鎖および軽鎖の両方のCDRのすべてを維持しつつ、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメインおよび/またはフレームワークドメインを対応するヒト配列に置換することによってヒト化することができる。
【0142】
変異抗体
もう1つの態様において、核酸分子、ベクターおよび宿主細胞を、変異型の抗IGF-IR抗体を作製するために用いることもできる。抗体の重鎖および/または軽鎖の可変ドメインに変異を加えて、抗体の結合特性を変化させてもよい。例えば、IGF-IRに対する抗体のKdを増加もしくは減少させるため、Koffを増加もしくは低下させるため、または抗体の結合特異性を変化させるために、CDR領域の1つまたは複数に変異を加えることができる。位置指定変異誘発に関する技法は当技術分野で周知である。例えば、Sambrookら、およびAusubelら、前記を参照のこと。1つの好ましい態様においては、生殖系列と比較して抗IGF-IR抗体の可変領域で変化していることが公知のアミノ酸残基に変異を加える。より好ましい1つの態様では、生殖系列と比較して抗IGF-IR抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1のうち1つの可変領域またはCDR領域で変化していることが公知のアミノ酸残基に、1つまたは複数の変異を加える。もう1つの態様では、生殖系列と比較して配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22もしくは24にアミノ酸配列が提示された、または配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21もしくは23に核酸配列が提示された、可変領域またはCDR領域が変化していることが公知のアミノ酸残基に、1つまたは複数の変異を加える。もう1つの態様において、核酸分子はフレームワーク領域の1つまたは複数に変異がある。抗IGF-IR抗体の半減期を延長するために変異をフレームワーク領域または定常ドメインに加えることもできる。例えば、参照として本明細書に組み入れられる、2000年2月24日に発行された国際公開公報第00/09560号を参照のこと。1つの態様において、点変異は1個、3個または5個であってよく、点変異は10個を超えない。抗体の免疫原性を変化させるため、別の分子との共有結合もしくは非共有結合のための部位を付与するため、または補体結合などの特性を変化させるために、変異をフレームワーク領域または定常ドメインに加えることもできる。変異を、単一の変異抗体の内部のフレームワーク領域、定常ドメインおよび可変領域のそれぞれに加えてもよい。または、変異を、単一の変異抗体の内部のフレームワーク領域、可変領域または定常ドメインのいずれか1つのみに加えてもよい。
【0143】
1つの態様において、変異型の抗IGF-IR抗体のVHまたはVL領域におけるアミノ酸変化は、変異前の抗IGF-IR抗体と比較して10個を超えない。より好ましい1つの態様において、変異型の抗IGF-IR抗体のVHまたはVL領域におけるアミノ酸変化は、5個を超えず、より好ましくは3個を超えない。もう1つの態様において、定常ドメインにおけるアミノ酸変化は15個を超えず、より好ましくは10個のアミノ酸変化を超えず、さらにより好ましくは5個のアミノ酸変化を超えない。
【0144】
改変抗体
もう1つの態様において、抗IGF-IR抗体の全体または一部が別のポリペプチドに結合したものを含む、融合抗体またはイムノアドヘシンを作製することもできる。1つの好ましい態様では、抗IGF-IR抗体の可変領域のみをポリペプチドに結合させる。もう1つの好ましい態様では、抗IGF-IR抗体のVHドメインを第1のポリペプチドに結合させ、一方、抗IGF-IR抗体のVLドメインは、VHドメインおよびVLドメインが互いに相互作用して抗体結合部位を形成するような様式で第1のポリペプチドと会合する第2のポリペプチドに結合させる。もう1つの好ましい態様において、VHドメインは、VHドメインおよびVLドメインが互いに相互作用するようにリンカーによってVLドメインから隔てられている(以下の一本鎖抗体の項を参照のこと)。続いて、VH-リンカー-VL抗体を関心対象のポリペプチドに結合させる。融合抗体は、ポリペプチドをIGF-IR発現性の細胞または組織に向かわせるのに有用である。ポリペプチドは毒素、成長因子もしくは他の調節タンパク質などの治療薬であってもよく、または容易に可視化しうる西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素などの診断薬であってもよい。さらに、2つの(またはそれ以上の)一本鎖抗体が互いに結合した融合抗体を作製することもできる。これは、単一のポリペプチド鎖上に二価もしくは多価抗体を作製したい場合、または二重特異性抗体を作製したい場合に有用である。
【0145】
一本鎖抗体を作製するためには(scFv)、VHおよびVL配列が、VLおよびVH領域が柔軟なリンカーによって連結された連続した一本鎖タンパク質として発現されるように、VHおよびVLをコードするDNA断片を、柔軟なリンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3(配列番号:60)をコードする別の断片と機能的に結合させる(例えば、Birdら(1988)Science 242: 423-426;Hustonら(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883;McCaffertyら、Nature(1990)348: 552-554を参照のこと)。一本鎖抗体は単一のVHおよびVLを用いる場合は一価であり、2つのVHおよびVLを用いる場合は二価であり、2つを超えるVHおよびVLを用いる場合は多価であると考えられる。
【0146】
もう1つの態様において、他の改変抗体を、抗IGF-IRをコードする核酸分子を用いて調製することもできる。例えば、「κ体(kappa body)」(Illら、Protein Eng 10: 949-57(1997))、「ミニボディ(Minibody)」(Martinら、EMBO J 13: 5303-9(1994))、「二重特異性抗体(Diabody)」(Holligerら、PNAS USA 90: 6444-6448(1993))または「ヤヌシン(Janusin)」(Trauneckerら、EMBO J 10:3655-3659(1991)およびTrauneckerら「ヤヌシン:二重特異性試薬のための新たな分子設計(Janusin: new molecular design for bispecific reagents)」Int J Cancer 補遺 7: 51-52(1992))を、本明細書の開示に従い、標準的な分子生物学の技法を用いて調製することができる。
【0147】
もう1つの面において、キメラ抗体および二重特異性抗体を作製することができる。複数の異なる抗体からのCDRおよびフレームワーク領域を含むキメラ抗体を作製することができる。1つの好ましい態様において、キメラ抗体のCDRはある抗IGF-IR抗体の軽鎖または重鎖の可変領域のCDRのすべてを含み、一方、フレームワーク領域は1つまたは複数の異なる抗体に由来する。より好ましい1つの態様において、キメラ抗体のCDRは、ある抗IGF-IR抗体の軽鎖および重鎖の可変領域のCDRのすべてを含む。フレームワーク領域は別の種に由来するものでよく、1つの好ましい態様においてはヒト化されたものでよい。または、フレームワーク領域は別のヒト抗体に由来するものでもよい。
【0148】
1つの結合ドメインによってIGF-IRに特異的に結合し、第2の結合ドメインによって第2の分子に結合する二重特異性抗体を作製することができる。二重特異性抗体は、組換え分子生物学の技法によって作製することもでき、または物理的に結合したものでもよい。さらに、IGF-IRおよび別の分子に特異的に結合する、複数のVHおよびVLを含む一本鎖抗体を作製することもできる。このような二重特異性抗体は、よく知られた技法、例えば(i)および(ii)例えばFangerら、Immunol Methods 4: 72-81(1994)ならびにWrightおよびHarris、前記を参照、に関連したもの、ならびに(iii)例えば、Trauneckerら、Int. J. Cancer(補遺)7: 51-52(1992)を参照、に関連したものを用いて作製することができる。1つの好ましい態様において、二重特異性抗体は、IGF-IRおよび癌または腫瘍細胞上に高レベルで発現される別の分子に結合する。より好ましい1つの態様において、他方の分子はerbB2受容体、VEGF、CD20またはEGF-Rである。
【0149】
1つの態様においては、上記の改変抗体を、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3または6.1.1から選択される抗体の1つに由来する可変領域の1つもしくは複数、または1つもしくは複数のCDR領域を用いて調製する。もう1つの態様では、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22もしくは24にアミノ酸配列が提示された、または配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21もしくは23に核酸配列が提示された、可変領域の1つもしくは複数、または1つもしくは複数のCDR領域を用いて改変抗体を調製する。
【0150】
誘導体化抗体および標識抗体
本発明の抗体または抗体部分を誘導体化すること、または別の分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)に結合させることが可能である。一般に、抗体またはその部分の誘導体化は、誘導体化または標識によってIGF-IR結合が有害な影響を受けないように行われる。したがって、本発明の抗体および抗体部分は、本明細書に記載のヒト抗IGF-IR抗体の天然型および改変型の両方を含むものとする。例えば、本発明の抗体または抗体部分を、1つまたは複数の他の分子的実体、例えば、別の抗体(例えば、二重特異性抗体またはダイアボディ)、検出用物質、細胞毒性物質、医薬品、および/または抗体もしくは抗体部部分と別の分子(ストレプトアビジンのコア領域またはポリヒスチジンタグなど)との会合を媒介しうるタンパク質もしくはペプチドと、機能的に結合させること(化学的結合、遺伝子融合、非共有的会合などによる)ができる。
【0151】
1つのタイプの誘導体化抗体は、2つまたはそれ以上の抗体(同じタイプ、または異なるタイプのもの、例えば、二重特異性抗体を作製するためのもの)を架橋させることによって作製される。適した架橋剤には、適切なスペーサー(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)によって隔てられた2つの異なる反応基を有するヘテロ二官能性のもの、またはホモ二官能性のもの(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)が含まれる。この種のリンカーは、Pierce Chemical Company、Rockford、Illから販売されている。
【0152】
もう1つのタイプの誘導体化抗体は、標識抗体である。本発明の抗体または抗体部分の誘導体化に用いうる有用な検出用物質には、フルオロセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリン、ランタニド、リンなどの蛍光性化合物が含まれる。抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ、3-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース酸化酵素などの、検出のために有用な酵素で標識してもよい。抗体を検出可能な酵素で標識する場合には、酵素が利用して識別可能な反応生成物を生成するような別の試薬を添加することにより、それを検出する。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼが存在する場合には、過酸化水素およびジアミノベンチジンの添加により、検出可能な有色反応生成物が生じる。抗体をビオチンで標識し、アビジンの間接的測定またはストレプトアビジン結合によって検出してもよい。抗体をガドリニウムなどの磁性物質で標識してもよい。抗体を、二次レポーター(例えば、ロイシンジッパー対の配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)によって認識される所定のポリペプチドエピトープで標識してもよい。いくつかの態様においては、想定される立体障害を軽減するために、種々の長さのスペーサーを介して標識を結合させる。
【0153】
抗IGF-IR抗体を、放射標識されたアミノ酸で標識してもよい。放射標識は診断目的および治療目的の両方に用いることができる。例えば、X線または他の診断法によってIGF-IR発現性の腫瘍を検出するために放射標識を用いてもよい。さらに、放射標識を、癌細胞または腫瘍に対する毒素として治療的に用いてもよい。ポリペプチドに対する標識には、以下の放射性同位体または放射性核種が非制限的に含まれる:3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I。
【0154】
抗IGF-IR抗体を、ポリエチレングリコール(PEG)、メチル基またはエチル基またはカルボキシル基などの化学基によって誘導体化することもできる。これらの基は、抗体の生物学的特徴を改善するため、例えば、血清半減期を延長させるため、または組織結合性を高めるために有用である。
【0155】
薬学的組成物およびキット
本発明は、本発明の化合物の治療的有効量および薬学的に許容される担体を含む、哺乳類における過剰増殖性疾患の治療のための薬学的組成物にも関する。1つの態様において、前記薬学的組成物は、脳、肺、扁平細胞、膀胱、胃、膵臓、乳房、頭部、頸部、腎(renal)、腎臓(kidney)、卵巣、前立腺、結腸直腸、食道、婦人科臓器または甲状腺の癌の治療のためのものである。もう1つの態様において、前記薬学的組成物は、血管形成術後の再狭窄および乾癬などを非制限的に含む、癌でない過剰増殖性疾患に関する。もう1つの態様において、本発明は、本発明の活性化抗体の治療的有効量および薬学的に許容される担体を含む、IGF-IRの活性化を必要とする哺乳類の治療のための薬学的組成物に関する。活性化抗体を含む薬学的組成物は、十分なIGF-IもしくはIGF-IIを欠いている動物の治療に用いてもよく、または、骨粗鬆症、脆弱性、もしくは活性型の成長ホルモンの分泌量が少なすぎるもしくは成長ホルモンに対する反応能力のない哺乳類における疾患の治療に用いることもできる。
【0156】
本発明の抗IGF-IR抗体は、対象に対する投与のために適した薬学的組成物中に組み入れることができる。このような組成物は、典型的には、本発明の抗体および薬学的に許容される担体を含む。本明細書で用いる「薬学的に許容される担体」には、生理的な適合性のある任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張液および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容される担体の例には、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つまたは複数のほか、それらの組み合わせも含まれる。多くの場合には、糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコ-ル、または塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含めることが好ましいと考えられる。湿潤剤などの薬学的に許容される物質、または、抗体もしくは抗体部分の保存寿命もしくは有効性を向上させる、湿潤剤もしくは乳化剤、保存料もしくは緩衝剤などの少量の補助物質。
【0157】
本発明の組成物はさまざまな剤形をとりうる。これらには例えば、溶液(例えば、注射用および注入用の液剤)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、粉剤、リポソームおよび坐剤などの液体、半固体、固体の剤形が含まれる。好ましい剤形は、意図する投与様式および治療用途に応じて決まる。典型的な好ましい組成物は、ヒトに対する他の抗体による受動免疫処置に用いられるものと類似した組成物などの注射用および注入用の液体の剤形である。好ましい投与様式は、非経口的(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)なものである。1つの好ましい態様では、抗体を静脈内注入または注射によって投与する。もう1つの好ましい態様では、抗体を筋肉内注射または皮下注射によって投与する。
【0158】
治療的組成物は一般に、無菌である上に、製造および保存の条件下で安定でなければならない。本組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散系、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の秩序立った構造として製剤化することができる。滅菌注射用溶液は、必要な量の抗IGF-IR抗体を、必要に応じて、上に列挙した成分の1つまたは組み合わせとともに適した溶媒中に組み入れた後に濾過滅菌を行うことによって調製しうる。分散液は一般に、基本的な分散媒、および上記に列挙したもののうち必要な他の成分を含む滅菌媒体中に活性化合物を含めることによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合には、好ましい調製の方法は、あらかじめ滅菌濾過された溶液から、活性成分の粉末に加えて、所望の任意の付加的な成分が得られるような真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング剤の使用により、分散系の場合には必要な粒径を保つことにより、および界面活性剤の使用により、維持することができる。注射用組成物の持続的な吸収は、吸収を遅らせる作用物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含めることによって得られる。
【0159】
本発明の抗体は、当技術分野で知られたさまざまな方法によって投与することができるが、多くの治療的用途に対して好ましい投与の経路/様式は、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内または点滴である。当業者は理解すると考えられるが、投与の経路および/または様式は所望の結果に応じて異なると考えられる。1つの態様において、本発明の抗体は単回投薬として投与することもでき、または多回投薬として投与することもできる、
【0160】
ある特定の態様においては、活性化合物を、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル封入送達系を含む制御放出型製剤といった、化合物の急速放出を防ぐと思われる担体とともに調製することができる。エチレンビニルアセテート、重合無水物(polyanhydride)、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステルおよびポリ乳酸などの生分解性で生体適合性のある重合体を用いることもできる。このような製剤を調製するための多くの方法は特許が取得されているか、または当業者に広く知られている。例えば、「徐放性および制御放出型の薬物送達系(Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems)」、J.R. Robinson編、Marcel Dekker, Inc.、New York、1978を参照のこと。
【0161】
ある特定の態様においては、本発明の抗IGF-IRを、例えば不活性希釈剤または可食担体とともに経口投与してもよい。化合物(および必要に応じて他の成分)を硬もしくは軟ゼラチンカプセル内に封入すること、圧縮して錠剤にすること、または対象の食事に直接組み入れることも可能である。経口的治療投与のためには、化合物を賦形剤とともに組み入れ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、カシェ剤などの形態で用いることができる。非経口的投与以外によって本発明の化合物を投与するためには、化合物をその失活を防ぐ物質でコーティングすること、または化合物をそれとともに同時投与することが必要なことがある。
【0162】
補足的な活性化合物を組成物に組み入れることもできる。ある特定の態様では、本発明の抗IGF-IRを、化学療法薬、抗腫瘍薬または抗腫瘍薬などの1つまたは複数の追加的な治療薬とともに配合する、および/または同時投与する。例えば、抗IGF-IR抗体を1つまたは複数の追加的な治療薬とともに配合する、および/または同時投与することができる。これらの作用物質には、他の標的に結合する抗体(例えば、1つもしくは複数の成長因子もしくはサイトカイン、それらの細胞表面受容体またはIGF-Iに結合する抗体)、IGF-I結合タンパク質、抗腫瘍薬、化学療法薬、抗腫瘍薬、IGF-IRもしくはIGF-Iに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、IGF-IR活性化を阻止するペプチド類似体、可溶性IGF-IR、および/または、当技術分野で知られたIGF-Iの産生もしくは活性を阻害する1つもしくは複数の化学物質、例えばオクトレオチドが、非制限的に含まれる。活性化抗体を含む薬学的組成物に関しては、抗IGF-IR抗体を、細胞増殖を増大させる因子またはアポトーシスを防止する因子と配合してもよい。このような因子には、IGF-Iなどの成長因子および/またはIGF-IRを活性化するIGF-Iの類似体が含まれる。このような併用療法では、抗IGF-IR抗体ならびに同時投与する作用物質の投与量を減らして、想定される毒性または種々の単剤療法に伴う合併症を回避することが必要なことがある。1つの態様において、抗体および1つまたは複数の追加的な治療薬。
【0163】
本発明の薬学的組成物は、本発明の抗体または抗体部分の「治療的有効量」または「予防的有効量」を含みうる。「治療的有効量」とは、必要な投与および期間で、望ましい治療的成果を達成するために有効な量のことを指す。抗体または抗体部分の治療的有効量は、個体の疾患の状態、年齢、性別および体重、ならびに抗体または抗体部分が個体において望ましい反応を誘発する能力などの要因によってさまざまである。治療的有効量とは、抗体または抗体部分によるいかなる毒性または有害な作用よりも、治療的に有益な効果の方が勝るもののことでもある。「予防的有効量」とは、必要な投与および期間で、望ましい予防的成果を達成するために有効な量のことを指す。予防投与は一般に、疾患が起こる前またはその初期にある対象に用いられるため、予防的有効量は治療的有効量よりも少ないと考えられる。
【0164】
投与計画は、最適な望ましい反応(例えば、治療的または予防的な反応)が得られるように調整しうる。例えば、単回ボーラス投与を行ってもよく、時間をかけて数回の分割投与を行ってもよく、または治療状況の緊急度によって示される程度に応じて用量を減量または増量してもよい。抗体を含む薬学的組成物、または抗体および1つもしくは複数の追加的な治療薬を含む併用療法用の薬学的組成物は、単回投与用または多回投与用のいずれのために配合してもよい。投与の簡便性および投与量の均一性のためには、経口用または非経口用組成物を単位投薬式剤形として製剤化することが特に有益である。本明細書で用いる単位投薬式剤とは、治療しようとする哺乳類対象に対する単位投与量として適した物理的に離散的な単位のことを指し、各単位は必要な薬学的担体とともに望ましい治療的効果を生じるように計算された規定量の活性化合物を含む。本発明の単位投薬式剤形のための仕様は、(a)活性化合物に特有の特徴および達成しようとする特定の治療的または予防的な効果、ならびに(b)個体における感受性の治療のためのこのような活性化合物の調合の技術分野に内在する制限、によって規定されるとともにそれらに直接依存する。特に有用な配合物は、20mMクエン酸ナトリウム、pH 5.5、140mM NaClおよび0.2mg/mlポリソルベート80を有する緩衝液中に5mg/mlの抗IGF-IR抗体を含むものである。
【0165】
本発明の抗体または抗体部分の治療的または予防的有効量に関する非制限的な範囲の一例は、0.1〜100mg/kg、より好ましくは0.5〜50mg/kg、より好ましくは1〜20mg/kgであり、さらにより好ましくは1〜10mg/kgである。投与量の値は改善しようとする状態の種類および重症度によって異なることに注意が必要である。さらに、任意の特定の対象に対する個別の投薬計画は、その個体の必要性および組成物の投与または投与の監督を行う者の専門的判断に従って経時的に調整する必要があること、ならびに本明細書に記述する投与量の範囲は例示に過ぎず、請求する組成物の範囲または使用を制限するものではないことも理解される必要がある。1つの態様においては、抗体またはその抗原結合部分の治療的または予防的有効量を、1つまたは複数の追加的な治療薬とともに投与する。
【0166】
もう1つの面において、本発明は、ひと月当たり300mg未満の投与量での、癌の治療のための抗IGF-IR抗体の投与に関する。
【0167】
本発明のもう1つの面は、抗IGF-IR抗体を含むキット、およびこれらの抗体を含む薬学的組成物を提供する。キットは、抗体または薬学的組成物に加えて、診断薬または治療薬を含みうる。キットは、診断法または治療法に用いるための指示書も含みうる。1つの好ましい態様において、キットは、抗体またはその薬学的組成物、および、以下に述べる方法に用いうる診断薬を含みうる。もう1つの好ましい態様において、キットは、抗体またはその薬学的組成物、および、以下に述べる方法に用いうる抗悪性腫瘍薬、抗腫瘍薬または化学療法薬などの1つまたは複数の治療薬を含む。
【0168】
本発明は、哺乳類における異常細胞増殖を抑制するための薬学的組成物であって、本発明の化合物の一定量を一定量の化学療法薬と組み合わせたものを含み、それらの量の化合物、塩、溶媒和物またはプロドラッグおよび化学療法薬が全体として異常細胞増殖の抑制に有効であるような薬学的組成物にも関する。現在では数多くの化学療法薬が当技術分野で知られている。1つの態様において、化学療法薬は、分裂抑制剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、インターカレート抗生物質、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生存阻害剤(anti-survival agent)、生体反応修飾物質、抗アンドロゲンなどの抗ホルモン、および脈管形成阻害剤からなる群より選択される。
【0169】
MMP-2(マトリックス-メタロプロテイナーゼ2)阻害剤、MMP9(マトリックス-メタロプロテイナーゼ9)阻害剤およびCOX-II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤などの脈管形成阻害剤を、本発明の化合物と併用することが可能である。有用なCOX-II阻害剤の例には、CELEBREX(商標)(アレコキシブ)、バルデコキシブおよびロフェコキシブが含まれる。有用なマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤の例は、国際公開公報第96/33172号(1996年10月24日発行)、国際公開公報第96/27583号(1996年3月7日発行)、欧州特許出願第97304971.1号(1997年7月8日提出)、欧州特許出願第99308617.2号(1999年10月29日提出)、国際公開公報第98/07697号(1998年2月26日発行)、国際公開公報第98/03516号(1998年1月29日発行)、国際公開公報第98/34918号(1998年8月13日発行)、国際公開公報第98/34915号(1998年8月13日発行)、国際公開公報第98/33768号(1998年8月6日発行)、国際公開公報第98/30566号(1998年7月16日発行)、欧州特許公報第606,046号(1994年7月13日発行)、欧州特許公報第931,788号(1999年7月28日発行)、国際公開公報第90/05719号(1990年5月31日発行)、国際公開公報第99/52910号(1999年10月21日発行)、国際公開公報第99/52889号(1999年10月21日発行)、国際公開公報第99/29667号(1999年7月17日発行)、PCT国際出願PCT/IB98/01113号(1998年7月21日提出)、欧州特許出願第99302232.1号(1999年3月25日提出)、英国特許出願第9912961.1号(1999年6月3日提出)、米国特許仮出願第60/148,464号(1999年8月12日提出)、米国特許第5,863,949号(1999年1月26日発行)、米国特許第5,861,510号(1999年1月19日発行)および欧州特許公報第780,386号(1997年6月25日発行)に記載されており、これらはすべてその全体が参照として本明細書に組み入れられる。好ましいMMP阻害剤は関節痛を呈しないものである。より好ましいものは、MMP-2および/またはMMP-9を、他のマトリックス-メタロプロテイナーゼ(すなわち、MMP-1、MMP-3、MMP-4、MMP-5、MMP-6、MMP-7、MMP-8、MMP-10、MMP-11、MMP-12およびMMP-13)に比べて選択的に阻害するものである。本発明において有用なMMP阻害剤のいくつかの具体例には、AG-3340、RO 32-3555、RS 13-0830のほか、以下の一覧に挙げる化合物がある:3-[[4-(4-フルオロ-フェノキシ)ベンゼンスルホニル]-(1-ヒドロキシカルバモイル-シクロペンチル)アミノ]-プロピオン酸;3-エキソ-3[4-(4-フルオロ-フェノキシ)-ベンゼンスルホニルアミノ]-8-オキサ-ビシクロ[3.2.1]オクタン-3カルボン酸ヒドロキシアミド;(2R, 3R)1-[4-(2-クロロ-4-フルオロ-ベンジルオキシ)ベンゼンスルホニル]-3-ヒドロキシ-3-メチル-ピペリジン-2-カルボン酸ヒドロキシアミド;4[4-(4-フルオロ-フェノキシ)-ベンゼンスルホニルアミノ]-テトラヒドロ-ピラン-4-カルボン酸ヒドロキシアミド;3-[[4-(4-フルオロ-フェノキシ)-ベンゼンスルホニル](1-ヒドロキシカルバモイルシクロブチル)-アミノ]-プロピオン酸;4-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ベンゼンスルホニルアミノ]-テトラヒドロ-ピラン-4-カルボン酸ヒドロキシアミド;(R)3-[4(4-クロロ-フェノキシ)-ベンゼンスルホニルアミノ]-テトラヒドロ-ピラン-3-カルボン酸ヒドロキシアミド;(2R, 3R)1-[4-(4-フルオロ-2-メチル-ベンジルオキシ)-ベンゼンスルホニル}-3-ヒドロキシ-3-メチル-ピペリジン-2-カルボン酸ヒドロキシアミド;3-[[4-(4-フルオロフェノキシ)-ベンゼンスルホニル]-(1-ヒドロキシカルバモイル-1-メチル-エチル)-アミノ]-プロピオン酸;3-[[4-(4-フルオロフェノキシ)-ベンゼンスルホニル]-(4-ヒドロキシカルバモイルテトラヒドロ-ピラン-4-イル)-アミノ]-プロピオン酸;3-エキソ-3-[4-(4-クロロ-フェノキシ)ベンゼンスルホニルアミノ]-8-オキサ-イシクロ[3.2.1]オクタン-3-カルボン酸ヒドロキシアミド;3-エンド-3-[4-(4-フルオロ-フェノキシ)-ベンゼンスルホニルアミノ]-8-オキサ-イシクロ[3.2.1]オクタン-3-カルボン酸ヒドロキシアミド;および(R)3-{4-(4-フルオロ-フェノキシ)-ベンゼンスルホニルアミノ]-テトラヒドロ-フラン-3-カルボン酸ヒドロキシアミド;ならびに前記化合物の薬学的に許容される塩および溶媒和物。
【0170】
本発明の化合物を、シグナル形質導入阻害剤とともに用いることもでき、これには、EGF-R(上皮成長因子受容体)応答を阻害しうる作用物質、例えばEGF-R抗体、EGF抗体、およびEGF-R阻害剤である分子など;VEGF(血管内皮成長因子)阻害剤、例えばVEGF受容体のほか、VEGFを阻害しうる分子など;ならびにerbB2受容体阻害剤、例えば、HERCEPTIN(商標)(Genentech, Inc.)のように、erbB2受容体に結合する有機分子または抗体などがある。EGF-R阻害剤は例えば、国際公開公報第95/19970号(1995年7月27日発行)、国際公開公報第98/14451号(1998年4月9日発行)、国際公開公報第98/02434号(1998年1月22日発行)および米国特許第5,747,498号(1998年5月5日発行)に記載されており、この種の物質を本明細書の記載の通りに本発明に用いることができる。EGFR阻害剤には、モノクローナル抗体C225および抗EGFR 22Mab(ImClone Systems Incorporated)、ABX-EGF(Abgenix/Cell Genesys)、EMD-7200(Merck KgaA)、EMD-5590(Merck KgaA)、MDX-447/H-477(Medarex Inc.およびMerck KgaA)、ならびに化合物ZD-1834、ZD-1838およびZD-1839(AstraZeneca)、PKI-166(Novartis)、PKI-166/CGP75166(Novartis)、PTK 787(Novartis)、CP 701(Cephalon)、レフノミド(leflunomide)(Pharmacia/Sugen)、CI-1033(Warner Lambert Parke Davis)、CI-1033/PD 183,805(Warner Lambert Parke Davis)、CL387,785(Wyeth-Ayerst)、BBR-1611(Boehringer Mannheim GmbH/Roche)、Naamidine A(Bristol Myers Squibb)、RC-3940-II(Pharmacia)、BIBX-1382(Boehringer Ingelheim)、OLX-103(Merck & Co.)、VRCTC-310(Ventech Research)、EGF融合毒素(Seragen Inc.)、DAB-389(Seragen/Lilgand)、ZM-252808(Imperial Cancer Research Fund)、RG-50864(INSERM)、LFM-A12(Parker Hughes Cancer Center)、WHI-P97(Parker Hughes Cancer Center)、GW-282974(Glaxo)、KT-8391(協和醗酵)およびEGF-R Vaccine(York Medical/Centro de Immunologia Molecular(CIM))が非制限的に含まれる。上記および他のEGF-R阻害剤を本発明に用いることができる。
【0171】
VEGF阻害剤、例えばSU-5416およびSU-6668(Sugen Inc.)、SH-268(Schering)ならびにNX-1838(NeXstar)を本発明の化合物と併用することもできる。VEGF阻害剤は、例えば、国際公開公報第99/24440号(1999年5月20日発行)、PCT国際出願第PCT/IB99/00797号(1999年5月3日提出)、国際公開公報第95/21613号(1995年8月17日発行)、国際公開公報第99/61422号(1999年12月2日発行)、米国特許第5,834,504号(1998年11月10日発行)、国際公開公報第98/50356号(1998年11月12日発行)、米国特許第5,883,113号(1999年3月16日発行)、米国特許第5,886,020号(1999年3月23日発行)、米国特許第5,792,783号(1998年8月11日発行)、国際公開公報第99/10349号(1999年3月4日発行)、国際公開公報第97/32856号(1997年9月12日発行)、国際公開公報第97/22596号(1997年6月26日発行)、国際公開公報第98/54093号(1998年12月3日発行)、国際公開公報第98/02438号(1998年1月22日発行)、国際公開公報第99/16755号(1999年4月8日発行)および国際公開公報第98/02437号(1998年1月22日発行)に記載されており、これらはすべてその全体が参照として本発明に組み入れられる。本発明において有用ないくつかの具体的なVEGF阻害剤の他の例には、IM862(Cytran Inc.);Genentech, Inc.の抗VEGFモノクローナル抗体;ならびにRibozyme社およびChiron社による合成リボザイムであるアンジオザイム(angiozyme)がある。上記および他のVEGF阻害剤を本明細書の記載の通りに本発明に用いることができる。
【0172】
さらに、GW-282974(Glaxo Weilcome plc)ならびにモノクローナル抗体AR-209(Aronex Pharmaceuticals Inc.)および2B-1(Chiron)などのErbB2受容体阻害剤を本発明の化合物と併用することもでき、これらは例えば、国際公開公報第98/02434号(1998年1月22日発行)、国際公開公報第99/35146号(1999年7月15日発行)、国際公開公報第99/35132号(1999年7月15日発行)、国際公開公報第98/02437号(1998年1月22日発行)、国際公開公報第97/13760号(1997年4月17日発行)、国際公開公報第95/19970号(1995年7月27日発行)、米国特許第5,587,458号(1996年12月24日発行)および米国特許第5,877,305号(1999年3月2日発行)に示されており、これらはすべてその全体が参照として本明細書に組み入れられる。本発明において有用なErbB2受容体阻害剤は、1999年1月27日に提出された米国特許仮出願第60/117,341号、および1999年1月27日に提出された米国特許仮出願第60/117,346号にも記載されており、これらはいずれもその全体が参照として本明細書に組み入れられる。前記のPCT出願、米国特許および米国仮特許出願に記載されたerbB2受容体阻害性の化合物および物質、ならびにerbB2受容体を阻害する他の化合物および物質を、本発明に従って本発明の化合物とともに用いることができる。
【0173】
生存阻害剤には、抗IGF-IR抗体および抗インテグリン物質、例えば抗インテグリン抗体が含まれる。
【0174】
診断的な使用法
抗IGF-IR抗体を、インビトロまたはインビボの生物試料中のIGF-IRを検出するために用いることもできる。抗IGF-IR抗体は、ELISA、RIA、FACS、組織の免疫組織化学、ウエスタンブロット法または免疫沈降を非制限的に含む、従来のイムノアッセイに用いうる。本発明の抗IGF-IR抗体を、ヒトからIGF-IRを検出するために用いてもよい。もう1つの態様において、抗IGF-IR抗体を、カニクイザルおよびアカゲザルなどの旧世界霊長動物、チンパンジーならびに類人猿からIGF-IRを検出するために用いてもよい。本発明は、生物試料中の抗IGF-IRを検出するための方法であって、生物試料中のIGF-IRを検出するために、生物試料を本発明の抗IGF-IR抗体と接触させる段階、および抗IGF-IRに結合した結合抗体を検出する段階を含む方法を提供する。1つの態様では、抗IGF-IR抗体を検出用標識で直接標識する。もう1つの態様では、抗IGF-IR抗体(第1の抗体)は標識せずに、抗IGF-IR抗体に結合しうる第2の抗体または他の分子を標識する。当業者には周知と思われるが、第2の抗体は、特定の種およびクラスの第1の抗体に特異的に結合しうるものを選択する。例えば、抗IGF-IR抗体がヒトIgGである場合には、二次抗体は抗ヒトIgGであってよい。抗体に結合しうる他の分子にはプロテインAおよびプロテインGが非制限的に含まれ、これらはいずれも、例えばPierce Chemical Coから市販されている。
【0175】
抗体または二次物に対する適した標識は前記のものに開示されており、これにはさまざまな酵素、補欠分子族、蛍光性物質、発光性物質、磁性物質および放射性物質が含まれる。適した酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが含まれる;適した補欠分子族複合体の例にはストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれる;適した蛍光性物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが含まれる;発光性物質の例にはルミノールが含まれる;磁性物質の例にはガドリニウムが含まれる;適した放射性物質の例には125I、131I、35Sまたは3Hが含まれる。
【0176】
1つの代替的な態様では、検出可能な物質で標識したIGF-IR標準物質および標識していない抗IGF-IR抗体を利用する競合イムノアッセイにより、IGF-IRをアッセイすることができる。このアッセイでは、生物試料、標識IGF-IR標準物質および抗IGF-IR抗体を組み合わせ、非標識抗体に結合した標識IGF-IR標準物質の量を測定する。生物試料中のIGF-IRの量は、抗IGF-IR抗体に結合した標識IGF-IR標準物質の量と反比例する。
【0177】
上記のイムノアッセイはさまざまな目的に用いることができる。1つの態様において、抗IGF-IR抗体を、細胞培養下にある細胞におけるIGF-IRを検出するために用いてもよい。1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体を、細胞を種々の化合物で処理した後のIGF-IRのチロシンリン酸化、チロシン自己リン酸化のレベル、および/または細胞表面上のIGF-IRの量を決定するために用いることもできる。この方法は、IGF-IRの活性化または阻害のために用いうる化合物を検査するために用いうる。この方法では、細胞の一方の試料を被験化合物で一定期間処理し、もう一方の試料は処理しないままにしておく。チロシン自己リン酸化を測定する場合には、細胞を可溶化し、上記のイムノアッセイを用いて、またはELISAを用いる実施例IIIの記載の通りに、IGF-IRのチロシンリン酸化を測定する。IGF-IRの総レベルを測定する場合には、細胞を可溶化し、上記のイムノアッセイのいずれかを用いて総IGF-IRレベルを測定する。
【0178】
IGF-IRのチロシンリン酸化を評価するため、または総IGF-IRレベルを測定するために好ましいイムノアッセイは、ELISAまたはウエスタンブロット法である。IGF-IRの細胞表面レベルのみを測定したい場合には、細胞を可溶化せず、上記のイムノアッセイのいずれかを用いてIGF-IRの細胞表面レベルを測定する。IGF-IRの細胞表面レベルを評価するために好ましいイムノアッセイは、細胞表面タンパク質をビオチンまたは125Iなどの検出用標識で標識する段階、IGF-IRを抗IGF-IR抗体によって免疫沈降させる段階、およびその後に標識IGF-IRを検出する段階を含む。IGF-IRの局在、例えば細胞表面レベルを評価するために好ましいもう1つのイムノアッセイは、免疫組織化学を用いることによる。ELISA、RIA、ウエスタンブロット法、免疫組織化学、膜内在性タンパク質の細胞表面標識、および免疫沈降などの方法は当技術分野で周知である。例えば、HarlowおよびLane、前記を参照のこと。さらに、多数の化合物をIGF-IRの活性化または阻害に関して検査する目的で、イムノアッセイを高スループットスクリーニング用にスケールアップしてもよい。
【0179】
本発明の抗IGF-IR抗体を、組織または組織に由来する細胞におけるIGF-IRのレベルを評価するために用いてもよい。1つの好ましい態様において、組織は罹患組織である。より好ましい1つの態様において、組織は腫瘍またはその生検試料である。本方法の1つの好ましい態様では、組織またはその生検試料を罹患生物から切り出す。続いて、組織または生検試料を、例えばIGF-IRのレベル、IGF-IRの細胞表面レベル、IGF-IRのチロシンリン酸化レベルまたはIGF-IRの局在を上記の方法によって評価するためのイムノアッセイに用いる。本方法を用いて、腫瘍がIGF-IRを高レベルで発現するか否かを判定することができる。
【0180】
上記の診断方法は、腫瘍が高レベルのIGF-IRを発現するか否かを判定するために用いることができ、これは腫瘍が抗IGF-IR抗体による治療によく反応することの指標になる。この診断方法を、腫瘍に癌の可能性があるか(それが高レベルのIGF-IRを発現する場合)、それとも良性であるか(それが低レベルのIGF-IRを発現する場合)を判定するために用いることもできる。さらに、この診断方法を、抗IGF-IR抗体による治療(以下を参照)が腫瘍により低いレベルのIGF-IRを発現させるか否か、および/または、チロシン自己リン酸化レベルを低下させるか否かを判定するために用いてもよく、すなわち、治療が奏功したか否かを判定するために用いることもできる。一般に、抗IGF-IR抗体がチロシンリン酸化を減少させるか否かを判定するための方法は、関心対象の細胞または組織におけるチロシンリン酸化レベルを測定する段階、細胞または組織を抗IGF-IR抗体またはその抗原結合部分とともにインキュベートする段階、その後に細胞または組織におけるチロシンリン酸化レベルを再び測定する段階を含む。IGF-IRまたは別のタンパク質のチロシンリン酸化は測定することができる。この診断方法を、小人症、骨粗鬆症または糖尿病の個体に該当するように、組織または細胞が十分に高いレベルのIGF-IRまたは十分に高いレベルの活性化IGF-IRを発現していないことを明らかにするために用いてもよい。IGF-IRまたは活性IGF-IRのレベルが低すぎるとの診断は、IGF-IRレベルまたは活性を高めるための活性化抗IGF-IR抗体、IGF-Iまたは他の治療薬による治療のために用いうると考えられる。
【0181】
本発明の抗体を、IGF-IRを発現する組織および臓器の位置を決定するためにインビボで用いてもよい。1つの好ましい態様では、抗IGF-IR抗体を、IGF-IR発現性腫瘍の位置決定に用いることができる。本発明の抗IGF-IR抗体の利点は、投与しても免疫応答を誘発しないと考えられることである。本方法は、抗IGF-IR抗体または薬学的その組成物をこの種の診断検査を必要とする罹患生物に対して投与する段階、および罹患生物をIGF-IR発現性組織の位置を決定するための画像解析にかける段階を含む。画像解析は医学の技術分野で周知であり、これにはX線分析、磁気共鳴画像法(MRI)またはコンピュータ断層撮影法(CE)が非制限的に含まれる。本方法のもう1つの態様では、罹患生物を画像解析にかける代わりに、罹患生物から生検試料を採取し、関心対象の組織がIGF-IRを発現するか否かを判定する。1つの好ましい態様においては、抗IGF-IR抗体を、罹患生物における画像化が可能な検出用物質で標識してもよい。例えば、X線分析に用いうるバリウムなどの造影剤、またはMRIもしくはCEに用いうるガドリニウムキレート化合物などの磁性造影剤で抗体を標識することができる。他の標識剤には、99Tcなどの放射性同位体が非制限的に含まれる。もう1つの態様においては、抗IGF-IR抗体を標識せずに、検出可能でしかも抗IGF-IR抗体に結合しうる第2の抗体または他の分子を投与することによる画像化も考えられる。
【0182】
治療的な使用法
もう1つの態様において、本発明は、抗IGF-IR抗体を、それを必要とする罹患生物に対して投与することにより、IGF-IR活性を阻害するための方法を提供する。本明細書に記載した種々のタイプの抗体のうち任意のものを治療的に用いることができる。1つの好ましい態様において、抗IGF-IR抗体はヒト抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体である。もう1つの好ましい態様において、IGF-IRはヒトのものであり、罹患生物はヒト患者である。または、罹患生物が、抗IGF-IR抗体と交差反応するIGF-IRを発現する哺乳類であってもよい。抗体を、その抗体と交差反応するIGF-IRを発現する非ヒト哺乳類(すなわち、霊長動物またはカニクイザルもしくはアカゲザル)に対して、獣医学的な目的のために、またはヒト疾患の動物モデルとして、投与してもよい。このような動物モデルは、本発明の抗体の治療的有効性を評価するために有用と思われる。
【0183】
本明細書で用いる「IGF-IR活性が有害である疾患」という用語は、その疾患に罹患した対象における高レベルのIGF-IRの存在が、その疾患の病態生理の原因となること、または疾患の悪化の一因となる要因であることが示されているか、その疑いがあるような疾病および他の疾患を含むことを意図している。このため、高レベルのIGF-IR活性が有害である疾患は、IGF-IR活性の阻害によって疾患の症状および/または進行が改善されると考えられる疾患である。このような疾患は、例えば、疾患に罹患した対象の罹患細胞または組織における細胞表面のIGF-IRレベルの上昇、またはIGF-IRのチロシン自己リン酸化の増加によって明らかとなる。IGF-IRレベルの上昇は、例えば、上記の抗IGF-IR抗体を用いて検出することができる。
【0184】
1つの好ましい態様では、抗IGF-IR抗体を、IGF-IR発現性腫瘍を有する罹患生物に投与することができる。腫瘍は固形腫瘍でもよく、リンパ腫などの非固形腫瘍でもよい。より好ましい1つの態様では、抗IGF-IR抗体を、癌性であるIGF-IR発現性腫瘍を有する罹患生物に投与しうる。さらにより好ましい1つの態様では、抗IGF-IR抗体を、肺、乳房、前立腺または結腸の腫瘍を有する罹患生物に投与する。非常に好ましい1つの態様において、本方法は、腫瘍の重量もしくは体積が増加しないようにする、または重量または体積を減少させる。もう1つの態様において、本方法は、腫瘍表面のIGF-IRを内部移行させる。1つの好ましい態様において、抗体は2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2もしくは6.1.1から選択される、またはそれらの重鎖、軽鎖もしくは抗原結合領域を含む。
【0185】
もう1つの好ましい態様では、抗IGF-IR抗体を、不適切に高いレベルのIGF-Iを発現する罹患生物に対して投与する。当技術分野では、IGF-Iの高レベルの発現はさまざまな一般的な癌につながる恐れがあることが知られている。より好ましい1つの態様では、抗IGF-IR抗体を、前立腺癌、神経膠腫または線維肉腫を有する罹患生物に投与する。さらにより好ましい1つの態様において、本方法は、癌の異常な増殖を停止させる、または重量もしくは体積が増加しないようにする、または重量もしくは体積を減少させる。
【0186】
1つの態様において、前記方法は、脳、扁平細胞、膀胱、胃、膵臓、乳房、頭部、頸部、食道、前立腺、結腸直腸、肺、腎、腎臓、卵巣、婦人科臓器または甲状腺などの癌の治療に関する。本発明の方法に従って本発明の化合物によって治療しうる罹患生物には、例えば、以下を有すると診断された罹患生物が含まれる:肺癌、骨の癌、膵癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内の黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、婦人科臓器腫瘍(例えば、子宮肉腫、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌または女性外陰部の癌)、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌(例えば、甲状腺、副甲状腺、または副腎の癌)、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性もしくは急性の白血病、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは尿管の癌(例えば、腎細胞癌、腎盂癌)または中枢神経系の悪性腫瘍(例えば、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫または下垂体腺腫)。
【0187】
抗体を投与するのは1回でもよいが、より好ましくは複数回投与する。抗体は1日3回から6カ月毎に1回までの範囲で投与してよい。投与は、1日3回、1日2回、1日1回、2日毎に1回、3日毎に1回、週1回、2週間毎に1回、月1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回および6カ月毎に1回といったスケジュールで行ってよい。抗体は、経口、粘膜、口腔内、鼻腔内、吸入、静脈内、皮下、筋肉内、避腸的、腫瘍内または局所的な経路で投与することができる。抗体を腫瘍の部位から離れた部位に投与してもよい。また、抗体をミニポンプによって連続的に投与してもよい。抗体は、1回、少なくとも2回、または少なくとも状態が治療、緩和もしくは治癒するまでの期間にわたって投与しうる。抗体は一般に、抗体が腫瘍もしくは癌の成長を停止させる、または重量もしくは体積を減少させるという前提で、腫瘍が存在する限り投与されると考えられる。抗体は一般に、前記の薬学的組成物の一部として投与されると考えられる。抗体の投与量は一般に、0.1〜100mg/kg、より好ましくは0.5〜50mg/kg、より好ましくは1〜20mg/kgの範囲であり、さらにより好ましくは1〜10mg/kgであると考えられる。抗体の血清中濃度は当技術分野で知られた任意の方法によって測定しうる。例えば、以下の実施例XVIIを参照のこと。癌または腫瘍の発生を予防するために抗体を予防的に投与することもできる。これは特にIGF-Iレベルが「正常高値」である罹患生物に有用と思われるが、これは、これらの罹患生物は一般的な癌を発症する危険性が高いことが示されているためである。Rosenら、前記を参照のこと。
【0188】
もう1つの面において、抗IGF-IR抗体を、癌または腫瘍などの過剰増殖性疾患を有する罹患生物に対して、抗悪性腫瘍薬または分子などの他の治療薬とともに同時投与することもできる。1つの面において、本発明は、哺乳類における過剰増殖性疾患の治療のための方法であって、前記哺乳類に対して、本発明の化合物の治療的有効量を、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、インターカレート剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体反応修飾物質、抗ホルモン、キナーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、遺伝子治療薬および抗アンドロゲンから非制限的になる群から選択される抗腫瘍薬と組み合わせて投与することを含む方法に関する。より好ましい1つの態様において、抗体を、アドリアマイシンまたはタキソールなどの抗悪性腫瘍薬とともに投与してもよい。もう1つの好ましい態様においては、抗体または併用療法薬を、放射線療法、化学療法、光力学的治療、外科手術または他の免疫療法とともに投与する。さらにもう1つの好ましい態様では、抗体を別の抗体とともに投与することが考えられる。例えば、抗IGF-IR抗体を、腫瘍または癌細胞の増殖を阻害することが知られた抗体または他の作用物質、例えば、erbB2受容体、EGF-R、CD20もしくはVEGFを阻害する抗体または作用物質とともに投与してもよい。
【0189】
抗体と追加的な治療薬との同時投与(併用療法)には、抗IGF-IR抗体および追加的な治療薬を含む薬学的組成物を投与すること、ならびに一方が抗IGF-IR抗体を含み、他方が追加的な治療薬を含む2つまたはそれ以上の別個の薬学的組成物を投与することが含まれる。さらに、同時投与または併用療法は一般に、抗体および追加的な治療薬を互いに同時に投与することを意味するが、これには抗体および追加的な治療薬を異なる回数投与する場合も含まれる。例えば、抗体を3日毎に1回投与し、追加的な治療薬を1日1回投与してもよい。または、抗体を、追加的な治療薬による疾患の治療の前または後に投与してもよい。同様に、抗IGF-IR抗体の投与は、放射線療法、化学療法、光力学的治療、外科手術または他の免疫療法の前に行っても後に行ってもよい。
【0190】
抗体および1つまたは複数の追加的な治療薬の投与(併用療法)は、1回、2回、または少なくとも状態が治療、緩和もしくは治癒するまでの期間にわたって行いうる。併用療法の投与は複数回行うことが好ましい。併用療法の投与は、1日3回から6カ月毎に1回までの範囲で行いうる。投与は、1日3回、1日2回、1日1回、2日毎に1回、3日毎に1回、週1回、2週間毎に1回、月1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回および6カ月毎に1回といったスケジュールで行ってもよく、またはミニポンプによって連続的に投与してもよい。併用療法の投与は、経口、粘膜、口腔内、鼻腔内、吸入、静脈内、皮下、筋肉内、避腸的、腫瘍内または局所的な経路によって行うことができる。併用療法の投与を腫瘍の部位から離れた部位に行ってもよい。併用療法は一般に、抗体が腫瘍もしくは癌の成長を停止させる、または重量もしくは体積を減少させるという前提で、腫瘍が存在する限り投与されると考えられる。
【0191】
さらにまたもう1つの態様において、抗IGF-IR抗体は、放射性標識、免疫毒素もしくは毒素によって標識される、またはこれは毒性ペプチドを含む融合タンパク質である。抗IGF-IR抗体または抗IGF-IR抗体融合タンパク質は、放射性標識、免疫毒素、毒素または毒性ペプチドをIGF-IR発現性腫瘍または癌細胞に導く。1つの好ましい態様において、放射性標識、免疫毒素、毒素または毒性ペプチドは、抗IGF-IR抗体が腫瘍または癌細胞の表面にあるIGF-IRに結合した後に内部移行する。
【0192】
もう1つの面において、抗IGF-IR抗体を、それを必要とする罹患生物における特定の細胞のアポトーシスを誘導する目的で治療的に用いることもできる。多くの場合、アポトーシスの標的となる細胞は、癌細胞または腫瘍細胞である。したがって、1つの好ましい態様において、本発明は、抗IGF-IR抗体の治療的有効量を、それを必要とする罹患生物に対して投与することによって、アポトーシスを誘導する方法を提供する。1つの好ましい態様において、抗体は2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2もしくは6.1.1から選択される、またはそれらの重鎖、軽鎖もしくは抗原結合領域を含む。
【0193】
もう1つの面において、抗IGF-IR抗体を、高レベルのIGF-Iおよび/またはIGF-IRが非癌性状態もしくは疾患と関連づけられているような、非癌性状態を治療するために用いることもできる。1つの態様において、本方法は、高レベルのIGF-Iおよび/またはIGF-IRレベルもしくは活性に起因する、またはそれによって悪化する非癌性病的状態を有する罹患生物に対して抗IGF-IR抗体を投与する段階を含む。1つの好ましい態様において、非癌性病的状態は、先端巨大症、巨人症、乾癬、アテローム動脈硬化、血管平滑筋の再狭窄、または糖尿病の合併症、特に眼のものに認められるような不適切な微小血管増殖である。より好ましい1つの態様において、抗IGF-IR抗体は、非癌性病的状態の進行を遅らせる。より好ましい1つの態様において、抗IGF-IR抗体は、非癌性病的状態を、少なくとも一部には停止または好転させる。
【0194】
もう1つの面において、本発明は、活性化抗IGFLR抗体を、それを必要とする罹患生物に対して投与する方法を提供する。1つの態様では、活性化抗体または薬学的組成物を、IGF-IR活性を高めるのに有効な量として、それを必要とする罹患生物に対して投与する。より好ましい1つの態様において、活性化抗体は正常なIGF-IR活性を回復させる。もう1つの好ましい態様において、活性化抗体を、低身長、神経障害、筋肉量の減少または骨粗鬆症を有する罹患生物に投与してもよい。もう1つの好ましい態様においては、活性化抗体を、細胞増殖を増大させる、アポトーシスを防ぐ、またはIGF-IR活性を高める、1つまたは複数の他の因子とともに投与してもよい。このような因子には、IGF-Iなどの成長因子、および/またはIGF-IRを活性化するIGF-Iの類似体が含まれる。1つの好ましい態様において、抗体は4.17.3から選択される、またはその重鎖、軽鎖もしくは抗原結合部分を含む。
【0195】
遺伝子治療
本発明の核酸分子を、それを必要とする罹患生物に対する遺伝子治療として投与することもできる。治療法はインビボまたはエキソビボのいずれでもよい。1つの好ましい態様においては、重鎖および軽鎖の両方をコードする核酸分子を罹患生物に投与する。より好ましい1つの態様では、核酸分子を、それらがB細胞の染色体に安定的に組み込まれるように投与するが、これはこれらの細胞が抗体産生のために特化しているためである。1つの好ましい態様では、前駆B細胞をエキソビボでトランスフェクトまたは感染させた上で、それを必要とする罹患生物に再び移植する。もう1つの態様では、前駆B細胞または他の細胞を、関心対象の細胞種を感染させることが知られたウイルスにインビボで感染させる。遺伝子治療のために用いられる一般的なベクターには、リポソーム、プラスミド、またはレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなどのウイルスベクターが含まれる。インビボまたはエキソビボで感染させた後に、治療した罹患生物から試料を採取し、当技術分野で知られ、本明細書で考察した任意のイムノアッセイを用いることにより、抗体の発現レベルを観測することができる。
【0196】
1つの好ましい態様において、遺伝子治療の方法は、ヒト抗体の重鎖またはその抗原結合部分またはその部分をコードする単離された核酸分子の有効量を投与する段階、および核酸分子を発現させる段階を含む。もう1つの態様において、遺伝子治療の方法は、ヒト抗体の軽鎖またはその抗原結合部分またはその部分をコードする単離された核酸配列の有効量を投与する段階、および核酸分子を発現させる段階を含む。より好ましい1つの方法において、遺伝子治療の方法は、ヒト抗体の重鎖またはその抗原結合部分またはその部分をコードする単離された核酸分子の有効量、およびヒト抗体の軽鎖またはその抗原結合部分またはその部分をコードする単離された核酸分子の有効量を投与する段階、ならびに核酸分子を発現させる段階を含む。遺伝子治療の方法が、タキソール、タモキシフェン、5-FU、アドリアマイシンまたはCP358,774などの別の抗癌剤を投与する段階を含んでもよい。
【0197】
本発明がさらに良く理解されるように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は例示のみを目的としており、本発明の範囲をいかなる形でも制限するものとは見なされるべきでない。
【0198】
実施例I:抗IGF-IR抗体を産生するハイブリドーマの作製
本発明の抗体の調製、選択およびアッセイを以下の通りに行った:
【0199】
免疫処置およびハイブリドーマの作製
8〜10週齡のXENOMICE(商標)の腹腔内または後肢足蹠に対して、ヒトIGF-IRの細胞外ドメイン(10μg/投量/匹)、またはヒトIGF-IRを原形質膜上に発現する2種類のトランスフェクト細胞系である3T3-IGF-IRもしくは300.19-IGF-IR細胞(10×106個/投量/匹)による免疫処置を行った。この用量を3〜8週間にわたって5〜7回反復投与した。融合の4日前に、マウスにヒトIGF-IRの細胞外ドメイン(PBS中)の最終注射を行った。免疫処置マウスからの脾臓およびリンパ節のリンパ球を非分泌性骨髄腫P3-X63-Ag8.653細胞系と融合させ、以前の記載の通りにHAT選択にかけた(GalfreおよびMilstein、Methods Enzymol. 73: 3-46、1981)。いずれもIGF-IR特異的ヒトIgG2κ抗体を分泌する一群のハイブリドーマが回収された。IGF-IRに特異的なモノクローナル抗体を産生する7種のハイブリドーマを以降の検討のために選択し、2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、4.17.3および6.1.1と命名した。
【0200】
ハイブリドーマ2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2および4.17.3は、2000年12月12日に以下の寄託番号でAmerican Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110-2209に寄託された:
【0201】
実施例II:完全ヒト抗IGF-IRモノクローナル抗体の親和性定数(Kd)のBIAcoreによる決定
本発明者らは、精製された抗体の親和性の測定を、BIAcore 3000装置を製造者のプロトコールに従って用いる表面プラスモン共鳴法によって行った。
【0202】
プロトコール1
動態解析を行うために、プロテイン-AをBIAcoreのセンサーチップ表面に固定化した。続いて、センサーチップを用いて本発明の抗IGF-IR抗体を捕捉した。種々の濃度のIGF-IR細胞外ドメインをセンサーチップ上に注入し、抗IGF-IR抗体とIGF-IR細胞外ドメインとの間の相互作用の結合および解離の動態を解析した。データは、BIAcoreにより提供されるBIA評価用ソフトウエアで利用できるベースラインドリフトモデルを用いて、グローバルフィット(global fit)Langmuir 1:1により評価した。
【0203】
プロトコール2
BIAcore測定を、本質的にはFagerstamら、「表面プラスモン共鳴による抗原-抗体相互作用の検出.エピトープマッピングへの応用(Detection of antigen-antibody interactions by surface plasmon resonance. Applications to epitope mapping)」、J. Mol. Recog. 3: 208-214.(1990)による記載の通りに行った。
【0204】
表1に、代表的な本発明の抗IGF-IR抗体に関する親和性の測定値を列挙している:
【0205】
【表1】
【0206】
動態解析により、本発明に従って調製された抗体が、IGF-IRの細胞外ドメインに対して高い親和性および高度の結合定数を有することが示された。
【0207】
実施例III:IGF-IRのIGF-I誘導性リン酸化の抗体を介した阻害
本発明者らは、本発明の抗体がIGF-Iを介したIGF-IRの活性化を阻止しうるか否かを明らかにするためにELISA実験を行った。IGF-Iを介したIGF-IRの活性化が、受容体に関連したチロシンリン酸化の増加によって検出された。
【0208】
ELISAプレートの調製
本発明者らは、100μlのブロッキング緩衝液(3%ウシ血清アルブミン[BSA]、Tris緩衝食塩水[TBS]中)を、ReactiBind Protein Gをコーティングした96穴プレート(Pierce)の各ウェルに添加することによってELISA捕捉プレートを調製し、プレートを振盪しながら室温で30分間インキュベートした。ウサギ汎特異的SC-713抗IGF-IR抗体(Santa Cruz)をブロッキング緩衝液中に濃度5μg/mlに希釈した上で、100μlの希釈抗体を各ウェルに添加した。プレートを室温で60〜90分インキュベートした。続いて、プレートを洗浄緩衝液(TBS+0.1%Tween 20)で5回洗い、残った緩衝液をペーパータオルで丁寧に吸い取った。これらのプレートは可溶化物を添加するまで乾燥しないようにした。
【0209】
IGF-IR発現性細胞からの可溶化物の調製
本発明者らは、IGF-IRをトランスフェクトしたNIH-3T3細胞(5×104個/ml)を、96穴U底プレートに入れた100μlの増殖培地(DMEM高グルコース培地にL-グルタミン(0.29mg/ml)、10%熱失活FBS、ならびに各500μg/mlのジェネティシン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加したもの)中に加えた。プレートを37℃、5%CO2下で一晩インキュベートし、細胞を付着させた。培地をプレートからデカントし、1ウェル当たり100μlの新たな増殖培地と交換した。試験のために、本発明者らは抗IGF-IR抗体と考えられるものを5倍に希釈して増殖培地中に所望の最終濃度とした上で、1ウェル当たり25μlを添加した。すべての試料を3連で用意した。続いてプレートを37℃で1時間インキュベートした。細胞を25μl/ウェルの600ng/ml IGF-I(増殖培地中に調製)で刺激し、プレートを室温で10分間インキュベートした。続いてプレートを反転させることによって培地をデカントし、ペーパータオルで丁寧に吸い取った上で、50μlの可溶化緩衝液(50mM HEPES、pH 7.4、10mM EDTA、150mM NaCl、1.5mm MgCl2、1.6mM NaVO4、1%Triton X-100、1%グリセロール、使用直前にEDTA非含有プロテアーゼ阻害薬の錠剤[Roche Molecular Sciences]を50ml当たり1錠添加)を添加することによって付着細胞を可溶化し、室温で5分間振盪した。200μlの希釈緩衝液(50mM HEPES、pH 7.4、1.6mM NaVO4)を各ウェルに添加し、ピペッティングを繰り返すことによって混合した。各ウェルからの100μlの可溶化液を、上記の通りに調製したELISA捕捉プレートの各ウェルに移し、ゆっくり振盪しながら室温で2時間インキュベートした。
【0210】
抗チロシン-リン酸(pTYR)抗体によるELISA
本発明者らは、プレートを反転させることによって細胞可溶化物を除去し、プレートを洗浄用緩衝液で5回洗い、ペーパータオルで吸い取った。ブロッキング緩衝液中に濃度0.2μg/mlに希釈したpTYR特異抗体(HRP-PY54)を1ウェル当たり100μl添加し、プレートを振盪しながら室温で30分間インキュベートした。続いてこれらのプレートを洗浄用緩衝液で5回洗い、ペーパータオルで吸い取った。
【0211】
本発明者らは、1ウェル当たり100μlのTMBペルオキシダーゼ基質溶液(Kirkegaard & Perry)を添加し、発色するまで振盪することにより(約2〜10分)、HRP-PY54抗体の結合を検出した。1ウェル当たり100μlのTMB停止溶液(Kirkegaard & Perry)を添加することによって発色反応を停止させた。続いて、溶液を混合するためにプレートを室温で10秒間振盪し、OD450nmの測定によって定量した。
【0212】
表2および図4は、いくつかの本発明の抗体を用いて行ったこの実験の結果を示している。この実験の結果から、受容体に関連したチロシンリン酸化の増加によって示される通り、本発明の抗体にIGF-Iを介した活性化を阻止する能力があることが示された。さらに、これらの結果を用いて、本発明の抗体の相対的効力を定量化することも可能である。
【0213】
【表2】
【0214】
実施例IV:IGF-I/IGF-IR結合の抗体を介した阻止
本発明者らは、本発明の抗体がIGF-IのIGF-IRとの結合を阻害する能力を細胞系アッセイで定量化するためのELISA実験を行った。IGF-IRをトランスフェクトしたNIH-3T3細胞(5×104個/ml)を、96穴U底プレート中のDL-グルタミン(0.29mg/ml)、10%熱失活FBS、ならびに各500μg/mlのジェネティシン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加したMEM高グルコース培地100μlに対してプレーティングした。続いて、プレートを37℃、5%CO2下で一晩インキュベートして細胞を付着させた。続いて培地をプレートからデカントし、1ウェル当たり100μlの新たな培地と交換した。試験のためには、本発明者らは抗体をアッセイ培地(DMEM高グルコース培地にL-グルタミン、10%熱失活FBS、200μg/mlのBSAおよび各500μg/mlのジェネティシン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加したもの)中に希釈して所望の最終濃度とした上で、1ウェル当たり50μlを添加した。すべての試料を3連で行った。続いてプレートを37℃で10分間インキュベートした。[125I]-IGF-Iをアッセイ培地中に濃度1μCi/mlに希釈し、1ウェル当たり50μlをプレートに添加した。バックグラウンドの放射能に関する対照として、非放射性IGF-Iを最終濃度100ng/mlとなるように添加した。プレートを 37℃で10分間インキュベートし、ペーパータオルで丁寧に吸い取ることによって培地をデカントした上で、アッセイ培地で2回洗った。続いて、50μlの0.1N NaOH、0.1%SDSを添加することによって細胞を可溶化し、プレートを室温で5分間振盪した。続いて試料をシンチレーションプレートに移し、150μlのOptiPhase Supermixを添加して、シグナルをWallac Micro-Betaカウンターで読み取った。
【0215】
表3および図3は、3つの代表的な本発明の抗体を用いて行ったこの実験の結果を示している。この実験により、本発明の抗体が[125I]-IGF-IとIGF-IRを過剰発現するとの結合を特異的に阻害することが示された。
【0216】
【表3】
【0217】
実施例V:エピトープマッピングの検討
本発明の抗体がIGF-IRを認識することが示されたことから、本発明者らはいくつかの本発明の抗体を用いてエピトープマッピングの検討を行った。本発明者らはこれらの実験を特に2.12.1、2.13.2、2.14.3および4.9.2抗体に絞って行った。
【0218】
本発明者らは、本発明の抗体がIGF-IR分子上の同じ部位に結合するか、それとも異なる部位に結合するかを明らかにするためにBIAcore競合試験を行った。上の実施例IIに記載したように、IGF-IRの細胞外ドメイン(ECD)をBIAcoreセンサーチップに結合させた。第1の本発明の抗体を、センサーチップに結合したこのIGF-IRと飽和条件下で結合させた。続いて、後に加えた第2の本発明の抗体が一次抗体のIGF-IRとの結合と競合する能力を測定した。この技法により、本発明者らは、本発明の抗体を複数の異なる結合群へと割り当てることができた。
【0219】
本発明者らはこの実験を、抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3および4.9.2を用いて行った。本発明者らは、2.13.2および4.9.2がIGF-IRの細胞外ドメインの同じ部位と競合することを観察した。残りの抗体である2.12.1および2.14.3は、2.13.2および4.9.2が結合した部位とは異なる、IGF-IR上の互いに異なる部位に結合した。
【0220】
実施例VI:本発明の抗体の種交差反応性
本発明の抗体の種交差反応性を明らかにするために、本発明者らは、免疫沈降、IGF-I誘導性受容体リン酸化の抗体を介した阻止、およびFACS分析を含む、いくつかの実験を行った。
【0221】
免疫沈降実験を行うために、本発明者らは、T25フラスコ内のL-グルタミン(0.29mg/ml)、10%熱失活FBSならびに各500μg/mlのジェネティシン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加したDMEM高グルコース培地に細胞をプレーティングし、集密度を50%とした。続いて、ハンクス緩衝食塩液(HBSS;Gibco BRL)中の本発明の抗体100μlを濃度1μg/mlとなるように添加した。インキュベーター内でプレートを37℃で30分間インキュベートした後に、細胞を100ng/mlのIGF-Iにより室温で10分間刺激した。細胞をRIPA緩衝液(HarlowおよびLane、前記)で可溶化し、2μgの汎特異的SC-713抗IGF-W抗体(Santa Cruz)+プロテインAアガロースビーズにより、4℃で1時間かけてIGF-IRを免疫沈降させた。ビーズをペレット化し、PBS/T(PBS+0.1%Tween-20)で3回洗った後に、5%βMEを含む40μlのレムリ緩衝液中にてビーズを煮沸した。
【0222】
上記の通りに調製した試料を、続いてウエスタンブロット法によって分析した。1レーン当たり12μlの各試料を、1×MES緩衝液(Novex(商標))を通した4〜10%勾配のNovex(商標)ゲルにローディングした。ゲルを150Vで1時間、または200Vで約30分間泳動させた。続いてゲルを、10%メタノールを加えたNovex(商標)トランスファー緩衝液を含む膜に、100mAで一晩または250mAで1〜1.5時間かけて移行させた。続いて膜を完全に乾燥させ、Superblock(Pierce Chemical Co.)を含むTBS(Tris緩衝食塩水、pH 8.0)により室温でブロックした。免疫沈降したIGF-IRを検出するためにIGF-IRブロッティング抗体SC713(Santa Cruz)を添加した。
【0223】
この実験は、本発明の抗体、特に2.12.1、2.13.2、4.17.3および4.9.2を用いて、さまざまな動物からの細胞に対して行った。発明者らは、抗体2.12.1、2.13.2および4.9.2がヒトのIGF-IRとは結合しうるが、イヌ、モルモット、ウサギのIGF-IRとは結合することができないことを見いだした。さらに、これらの抗体は、いずれも旧世界ザルに由来する、COS7およびアカゲザルIGF-IRには結合できたが、新世界ザルであるマーモセットのIGF-IRには結合することができなかった。これらの実験により、本抗体が高度に特異的であることが示された。
【0224】
非ヒト霊長動物におけるIGF-I/IGF-IR結合の抗体を介した阻止
本発明の抗体が旧世界ザル由来のIGF-IRを認識するという本発明者らの観察に続いて、本発明者らは、それらがこれらの旧世界ザルに由来する細胞におけるIGF-I/IGF-IR結合を阻止する能力も検討した。細胞を、T25フラスコ内のL-グルタミン、10%熱失活FBSならびに各500μg/mlのジェネティシン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加したDMEM高グルコース培地に細胞をプレーティングし、集密度を50%とした。続いて、本発明の抗体を添加するか、抗体を含まない培地を対照として添加し、細胞を100ng/mlのIGF-Iによって室温で10分間刺激した。刺激後に細胞を可溶化し、上記のように汎特異的IGF-IR抗体SC713を用いてIGF-IRを免疫沈降させた。続いて、活性化IGF-IRにおけるリン酸化チロシンを検出するために、上記の通りにHRP-PY54抗体を用いてウエスタンブロット分析を行った。
【0225】
本発明者らは、本発明の抗体、特に2.13.2および4.9.2が、COS7細胞およびアカゲザル細胞のいずれにおいても、IGF-Iにより誘発されるIGF-IRのリン酸化を阻止しうることを観察した。 観察された阻害に関するIC50は、COS7およびアカゲザルのIGF-IRについてそれぞれ0.02μg/mlおよび0.005μg/mlであった。
【0226】
本発明の抗体の種間親和性の評価
本発明者らは、他の動物、特に上記の旧世界ザルに由来するIGF-IRに対する本発明の抗体の親和性を評価するためにFACS分析を行った。ヒトおよびサルの細胞のアリコート(5×105個)を、種々の濃度の本発明のビオチン化抗IGF-IR抗体、または陰性対照としてのビオチン化抗キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)抗体(Abgenix)とともに、氷上で1時間インキュベートした。続いて、試料をストレプトアビジン結合RPE(フィコエリトリン)とともに氷上で30分間インキュベートした。結合をフローサイトメトリーによって測定し、蛍光強度(F12-H)と細胞数(カウント数)との関係のヒストグラムをCellQuestソフトウエアを用いて解析した。平均蛍光強度と抗体濃度との関係のグラフから各抗体の結合性(Kd)を算出した。本発明者らはほとんどの実験では、培養ヒトMCF-7細胞のほか、アカゲザルまたはカニクイザル組織培養細胞のいずれかにおける結合を測定した。一定範囲の細胞濃度にわたる結合を測定することにより、抗体の枯渇を調節した。
【0227】
本発明者らは、本発明の抗体、特に2.13.2および4.9.2がヒト、アカゲザルおよびカニクイザルの細胞に結合する能力を調べるために前記のFACS分析を行った。すべての被験細胞系に関して0.1μg/mlの最大半減結合値(Kd)を観測した。
【0228】
実施例VII:IGF-I受容体のダウンレギュレーション
本発明者らは阻止実験を、[125I]-標識IGF-Iの添加までは本質的には上記の実施例IVと同じように行った。この時点で、50%meを含む40μlのレムリ緩衝液中で細胞を煮沸した。続いて試料を上記の実施例VIのようにウエスタンブロット分析によって分析し、IGF-IRレベルの定量化のための汎特異的IGF-IR抗体SC713、および活性化IGF-IRにおけるリン酸化チロシンのレベルを観測するためのHRP-PY54抗体の両方を用いてブロットのプローブ検索を行った。
【0229】
前に観察されたのと同じように(実施例III)、細胞を本発明の抗体で処理した後には、IGF誘導性IGF-IRリン酸化の阻止が観察された(図4)。さらに本発明者らは、このIGF-I誘導性リン酸化の阻止に続いて、これらの細胞におけるIGF-IRのダウンレギュレーションが起こることも観察した。 例えば、図4を参照のこと。本発明の抗体の存在下でのIGF-IRレベルは、IGF-I刺激から16時間後に最も低下した。
【0230】
実施例VIII:インビボでのIGF-IRに対する本発明の抗体の効果
本発明者らは、これまでの実施例に記載したIGF-IRに対する本発明の抗体の効果が、インビボでもみられるか否かを評価した。発表されている方法に従って、無胸腺マウスに腫瘍を誘導した(V.A. Pollackら、「ヒト癌における上皮成長因子受容体に関連したチロシンリン酸化のCP-358,774による阻害:インサイチューでの受容体阻害の動態および無胸腺マウスにおける抗腫瘍効果(Inhibition of epidermal growth factor receptor-associated tyrosine phosphorylation in human carcinomas with CP-358,774: Dynamics of receptor inhibition in situ and antitumor effects in athymic mice)」、J Pharmacol Exp. Ther. 291: 739-748(1999)。簡潔に述べると、IGF-IRをトランスフェクトしたNIH-3T3細胞(5×106個)を、マトリゲル調製物とともに、3〜4週齡無胸腺(nu/nu)マウスに皮下注射した。続いて、注射したマウスに対して、確立した(すなわち約400mm3の)腫瘍が形成された後に、本発明の抗体の腹腔内注射を行った。
【0231】
24時間後に腫瘍を摘出してそれらをホモジネート化し、IGF-IRレベルを測定した。IGF-IRレベルを測定するには、SC-713抗体をブロッキング緩衝液中に最終濃度μg/mlに希釈し、その100μlを、Reacti-Bindヤギ抗ウサギ抗体(GAR)をコーティングしたプレート(Pierce)の各ウェルに添加した。プレートを振盪しながら室温で1時間インキュベートした後に、プレートを洗浄用緩衝液で5回洗った。続いて、上記の通りに調製した腫瘍試料を秤量し、それらを可溶化緩衝液中にホモジネート化した(1ml/100mg)。腫瘍抽出液12.5μlを可溶化緩衝液で最終容積100μlに希釈し、これを96穴プレートの各ウェルに添加した。プレートを振盪しながら室温で1〜2時間インキュベートした後に、プレートを洗浄用緩衝液で5回洗った。続いて、100μlのブロッキング緩衝液中のHRP-PY54またはビオチン化抗IGF-IR抗体を各ウェルに添加し、振盪しながら室温で30分間インキュベートした。続いてプレートを洗浄用緩衝液で5回洗い、プレートを現像した。HRP-PY54でプローブ検索したプレートの現像は、1ウェル当たり100μlのTMBマイクロウェル基質を添加することによって行い、100μlの0.9M H2SO4の添加によって発色現象を停止させた。続いて、10秒間振盪してOD450nmを測定することによってシグナルを定量した。シグナルを総タンパク質に対して標準化した。抗IGF-IR抗体でプローブ検索したプレートの現像は、ブロッキング緩衝液中に希釈した100μlのストレプトアビジン-HRPを各ウェルに添加し、振盪しながら室温で30分間インキュベートした後に、HRP-PY54に関する記載と同じようにして行った。
【0232】
本発明者らは、本発明の抗体、特に2.13.2および4.9.2の腹腔内注射により、総IGF-IRタンパク質[およびIGF-IRホスホチロシン(リン酸化IGF-IR)の両方]の減少によって示されるように、IGF-IR活性が阻害されることを観察した(図6)。さらに、IGF-IRホスホチロシン(リン酸化IGF-IR)の減少も観察された(図5)。いずれの理論にも拘束されることは望まないが、IGF-IRホスホチロシンレベルの低下は、抗体投与後のインビボでのIGF-IRタンパク質のレベル低下によるものか、またはIGF-IRタンパク質レベルの低下と、リガンド(例えば、IGF-IまたはIGF-II)による活性化の阻止に起因するIGF-IRのチロシンリン酸化の減少が相まったことによるものと考えられる。さらに、この阻害は、注入した抗体の投与量に応じたものであった(図6)。これらのデータは、本発明の抗体が、インビトロで観察されたのと類似した様式で、インビボでもIGF-IRを標的としうることを示している。
【0233】
実施例IX:3T3/IGF-IR細胞腫瘍の成長阻害(TGI)
本発明者らは、本発明の抗IGF-IR抗体に腫瘍の成長を阻害する働きがあるか否かを検討した。上記のようにして腫瘍を誘導し(実施例VIII)、確立した触知可能な腫瘍が形成された時点で(すなわち250mm3、6〜9日以内)、マウスに腹腔内注射によって抗体0.20mlを単回投与した。腫瘍サイズを直交する2つの径としてバーニアキャリパーで3日毎に測定し、Geranら「動物腫瘍および他の生物システムに対する化学物質および天然物のスクリーニングのためのプロトコール(Protocols for screening chemical agents and natural products against animal tumors and other biological systems)」、Cancer Chemother. Rep 3: 1-104によって確立された方法を用い、式(長さ×[幅]2)/2を用いて体積を算出した。
【0234】
本発明者らが本発明の抗体を用いてこの分析を行ったところ、抗体2.13.2のみの単回投与により、IGF-IRをトランスフェクトしたNTH-3T3細胞による誘導腫瘍の成長が阻害されることが見いだされた(図7、左図)。さらに、7.5mg/kgアドリアマイシンの静脈内単回投与との併用試験では、2.13.2の単回投与により、既知の腫瘍成長阻害剤であるアドリアマイシンの有効性が強まることが観察された。アドリアマイシンと本発明の抗体2.13.2を併用すると、抗体またはアドリアマイシンの単独投与に比べて7日間の成長遅延が認められた(図7、右図)。
【0235】
実施例X:抗体レベルとIGF-IRダウンレギュレーションとの関係
実施例VIIIの記載の通りに、ヌードマウスに腫瘍を誘導した。続いて、実施例VIIIに記載したように、マウスに125μgの2.13.2を腹腔内注射によって投与した。実施例VIIIに記載したように、腫瘍を摘出してIGF-IRレベルをELISAによって測定した。図8は、血清2.13.2抗体レベルおよびIGF-IR受容体レベルを経時的に示している。本実験により、IGF-IRが本抗体によってダウンレギュレートされること、および、IGF-IRの阻害の程度が抗体の血清中濃度と用量比例関係にあることが示された。
【0236】
実施例XI:抗体とアドリアマイシンとの併用多回投与による3T3/IGF-IR腫瘍の成長阻害
実施例IXの記載の通りに、ヌードマウスに腫瘍を誘導した。約250mm3の皮下腫瘍が確立したマウスに対して第1、8、15および22日に、実施例IXに記載したように、種々の量の2.13.2抗体(i.p.)または7.5mg/kgアドリアマイシン(i.v.)を、単剤または併用の形で投与した。図9は腫瘍サイズと種々の処置との関係を経時的に示している。この実験により、抗IGF-IR抗体を7日毎に1回投与すると腫瘍細胞の増殖が阻害され、既知の腫瘍阻害剤であるアドリアマイシンとの併用によって腫瘍細胞の増殖阻害が強まることが示された。
【0237】
実施例XII:大きな腫瘍の成長阻害
実施例IXの記載の通りに、ヌードマウスに腫瘍を誘導した。2000mm3を幾分下回る大きな皮下腫瘍が確立したマウスに対して、第1および8日に、実施例IXに記載したように、種々の量の2.13.2抗体(i.p.)または7.5mg/kgアドリアマイシン(i.v.)を単剤または併用の形で投与した。図10は、腫瘍サイズと種々の処置との関係を経時的に示している。対照、抗体単独およびアドリアマイシン単独の動物群を、腫瘍サイズが2000mm3を上回った第5日の時点で屠殺した。この実験により、抗IGF-IR抗体とアドリアマイシンとの併用投与は、多回投与を行うと大きな腫瘍に対しても非常に有効であることが示された。
【0238】
実施例XIII:結腸直腸細胞腫瘍の成長阻害
Colo 205細胞(ATCC CCL 222)を用いた点を例外として、実施例IXの記載の通りにヌードマウスに腫瘍を誘導した。Colo 205細胞はヒト結腸直腸腺癌細胞である。約250mm3の皮下腫瘍が確立したマウスに対して、実施例IXに記載したように、種々の量の2.13.2抗体(i.p.)または100mg/kg 5-フルオロデオキシウリジン(5-FU、i.v.)を単剤または併用の形で投与した。図11は、腫瘍サイズと種々の処置との関係を経時的に示している。この実験により、抗IGF-IR抗体の単剤としての単回投与によってヒト結腸直腸癌細胞の増殖が阻害され、既知の腫瘍阻害剤である5-FUの有効性が強められることが示された。
【0239】
Colo 205腫瘍が確立したマウスに対して第1、8、15および22日に、500μgの2.13.2(i.p.)、100mg/kgの5-FU(i.v.)またはそれらの併用による投与を行った。図12は、腫瘍サイズと種々の処置との関係を経時的に示している。この実験により、抗IGF-IR抗体を7日毎に1回投与するとヒト結腸直腸癌細胞の増殖が阻害され、5-FUの有効性が強められることが示された。
【0240】
実施例XIV:乳癌細胞腫瘍の成長阻害
実施例VIIIの記載の通りのヌードマウスに対して、生分解性のあるエストロゲンペレット剤(0.72mg 17-β-エストラジオールペレット剤、放出期間60日;Innovative Research of America)。48時間後に、MCF-7細胞(ATCC HTB-22)を用いた点を例外として、本質的には実施例IXの記載の通りにヌードマウスに腫瘍を誘導した。MCF-7細胞はエストロゲン依存性ヒト乳癌細胞である。約250mm3の皮下腫瘍が確立したマウスに対して、本質的には実施例IXの記載の通りに、50μgの2.13.2抗体(i.p.)を第1、4、7、10、13、16、19および22日に(3日毎1回を7回)に、または6.25mg/kgのタキソール(i.p.)を第1、2、3、4、5日に(1日1回を5回)、単剤または併用の形で投与した。図13は、腫瘍サイズと種々の処置との関係を経時的に示している。この実験により、抗IGF-IR抗体の3日毎の単剤投与によってヒト乳癌細胞の増殖が阻害され、既知の乳癌阻害剤であるタキソールと併用投与するとその有効性も強めることが示された。
【0241】
直前に記載したMCF-7細胞による腫瘍が確立したマウスに対して、本質的には実施例IXの記載の通りに、第1日に種々の量の2.13.2抗体(i.p.)を単剤または3.75mg/kgアドリアマイシン(i.v.)と併用して投与した。図14は、腫瘍サイズと種々の処置との関係を経時的に示している。この実験により、抗IGF-IR抗体の単回投与によって単剤でヒト乳癌細胞の増殖が阻害され、既知の腫瘍阻害剤であるアドリアマイシンの有効性も強めることが示された。
【0242】
直前に記載したMCF-7細胞による腫瘍が確立したマウスに対して、本質的には実施例IXの記載の通りに、250μgの2.13.2抗体(i.p.)を第1、8、15および23日に、または生分解性タモキシフェンペレット剤(25mg/ペレット、塩基非含有、放出期間60日、Innovative Research of America)を、単剤または併用の形で投与した。タモキシフェンペレット剤は腫瘍が確立した後の第1日に移植した。図15は、腫瘍サイズと種々の処置との関係を経時的に示している。この実験により、抗IGF-IR抗体の7日毎の投与が単剤でヒト乳癌細胞の増殖を阻害するとともに、既知の腫瘍阻害剤であるタモキシフェンの有効性も強めることが示された。
【0243】
実施例XVI:類表皮癌細胞腫瘍の成長阻害
A431細胞(ATCC CRL 1555)を用いた点を例外として、本質的には実施例IXの記載の通りにヌードマウスに腫瘍を誘導した。A431細胞はEGFRを過剰発現するヒト類表皮癌細胞である。約250mm3の皮下腫瘍が確立したマウスに対して、実施例IXの記載のように、500μgの2.13.2抗体の第1、8、15、22および29日の投与(i.p.)、または10mg/kgのCP-358,774の27日間にわたる1日1回の経口投与(p.o.)を、単剤または併用として行った。CP-358,774は米国特許第5,747,498号およびMoyerら、Cancer Research 57: 4838-4848(1997)に記載されており、これらは参照として本明細書に組み入れられる。図16は、腫瘍サイズと種々の処置との関係を経時的に示している。この実験により、抗IGF-IR抗体の投与によって、既知のEGF-Rチロシンキナーゼ阻害剤であるCP-358,774がヒト類表皮癌腫瘍の成長を阻害する有効性が増強されることが示された。
【0244】
実施例XVII:抗IGF-IR抗体のインビボでの薬物動態
抗IGF-IR抗体の薬物動態を評価するために、カニクイザルに対して、酢酸緩衝液中にある3mg/kg、30mg/kgまたは100mg/kgの2.13.2抗体の静脈内注射を行った。さまざまな時点でサルから血清を採取し、サルにおける抗IGF-IR抗体濃度を10週まで測定した。機能的な血清抗体レベルを定量するために、ヒトIGF-IRの細胞外ドメイン(IGF-I-sR、R&D Systems、カタログ番号391GR)を96穴プレートに結合させた。各試料が標準曲線の線形的な範囲内に収まるようにサル血清(1:100〜1:15,000に希釈)をアッセイプレートに添加し、すべての抗IGF-IR抗体がIGF-I-sRに結合すると考えられる条件下でインキュベートした。プレートを洗った後に、標識した抗ヒトIgG抗体をプレートに添加し、抗ヒトIgG抗体が抗IGF-IR抗体に結合すると考えられる条件下でインキュベートした。続いてプレートを洗って現像し、対照標準曲線および線形回帰フィッティングを用いて抗IGF-IR抗体の量を定量化した。図17は2.13.2の血清中濃度を経時的に示している。この実験により、抗IGF-IR抗体の半減期が4.6〜7.7日で、容積分布が74〜105mL/kgであることが示された。さらにこの実験により、投与した量はサルにおいて用量比例性があることが示されたが、このことは抗IGF-IR抗体が3mg/kgという最も少ない用量でも、体内の結合可能なIGF-IR結合部位をすべて飽和させることを示している。
【0245】
実施例XVIII:インビボでの抗IGF-IR抗体とアドリアマイシンとの併用療法によってIGF-IRがダウンレギュレートされる
実施例IXの記載の通りにヌードマウスに腫瘍を誘導した。約400mm3の皮下腫瘍が確立したマウスに対して、実施例IXに記載したように、250μgの2.13.2抗体(i.p.)または7.5mg/kgアドリアマイシン(i.v.)の単回注射を単剤または併用の形で行った。薬剤の投与から72時間後に、実施例VIIIの記載のように腫瘍を摘出し、同じ量の腫瘍抽出液をドデシルリン酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)および抗IGF-IR抗体SC-713(Santa Cruz)を用いるウエスタンブロット分析にかけた。図18は、対照マウス(各パネルの最初の3レーン)、抗体のみを投与したマウス(上のパネル)、アドリアマイシンのみを投与したマウス(中央のパネル)ならびに抗体およびアドリアマイシンを投与したマウス(下のパネル)の腫瘍細胞におけるIGF-IR量を示している。各レーンは個々のマウスの個々の腫瘍からの同量のタンパク質を表している。この実験により、アドリアマイシンの単独投与はIGF-IRレベルに対してほとんど効果がないこと、および、抗体の単独投与はIG-IRレベルをある程度低下させることが示された。驚いたことに、アドリアマイシンと抗体との併用投与はIGF-IRレベルを劇的に低下させ、このことからアドリアマイシンおよび抗体の併用によってIGF-IRレベルが大きくダウンレギュレートされることが示された。
【0246】
本明細書中に引用したすべての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が参照として組み入れられるように具体的および個別に示されている場合と同程度に、参照として本明細書に組み入れられる。理解を容易にする目的で、上記の本発明を例示および実施例によってある程度詳細に説明してきたが、本発明の開示に鑑みて、添付する請求の趣旨または範囲を逸脱することなく、ある種の変更または修正を加えうることは当業者には容易に明らかになると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0247】
図1A】6種のヒト抗IGF-IR抗体に由来する軽鎖可変領域のヌクレオチド配列の、相互同士および生殖系列配列とのアライメントを示している。図1Aは、抗体2.12.1(配列番号:1)、2.13.2(配列番号:5)、2.14.3(配列番号:9)および4.9.2(配列番号:13)の軽鎖(VL)の可変領域のヌクレオチド配列の相互同士および生殖系列Vκ A30配列(配列番号:39)とのアライメントを示している。これらのアライメントは、各抗体のVLのCDR領域も示している。図1A〜1Cの共通配列をそれぞれ配列番号:53〜55に示している。
図1B】6種のヒト抗IGF-IR抗体に由来する軽鎖可変領域のヌクレオチド配列の、相互同士および生殖系列配列とのアライメントを示している。図1Bは、抗体4.17.3のVLのヌクレオチド配列(配列番号:17)と生殖系列Vκ O12配列(配列番号:41)とのアライメントを示している。これらのアライメントは、各抗体のVLのCDR領域も示している。図1A〜1Cの共通配列をそれぞれ配列番号:53〜55に示している。
図1C】6種のヒト抗IGF-IR抗体に由来する軽鎖可変領域のヌクレオチド配列の、相互同士および生殖系列配列とのアライメントを示している。図1Cは、抗体6.1.1のVLのヌクレオチド配列(配列番号:21)と生殖系列Vκ A27配列(配列番号:37)とのアライメントを示している。これらのアライメントは、各抗体のVLのCDR領域も示している。図1A〜1Cの共通配列をそれぞれ配列番号:53〜55に示している。
図2A】6種のヒト抗IGF-IR抗体に由来する重鎖可変領域のヌクレオチド配列の、相互同士および生殖系列配列とのアライメントを示している。図2Aは、抗体2.12.1のVHのヌクレオチド配列(配列番号:3)と生殖系列VH DP-35配列(配列番号:29)とのアライメントを示している。これらのアライメントは抗体のCDR領域も示している。図2A〜2Dに関する共通配列をそれぞれ配列番号:56〜59に示している。
図2B】6種のヒト抗IGF-IR抗体に由来する重鎖可変領域のヌクレオチド配列の、相互同士および生殖系列配列とのアライメントを示している。図2Bは、抗体2.14.3のVHのヌクレオチド配列(配列番号:11)と生殖系列VIV-4/4.35配列(配列番号:43)とのアライメントを示している。これらのアライメントは抗体のCDR領域も示している。図2A〜2Dに関する共通配列をそれぞれ配列番号:56〜59に示している。
図2C】6種のヒト抗IGF-IR抗体に由来する重鎖可変領域のヌクレオチド配列の、相互同士および生殖系列配列とのアライメントを示している。図2Cは、抗体2.13.2(配列番号:7)、4.9.2(配列番号:15)および6.1.1(配列番号:23)のVHのヌクレオチド配列の、相互同士および生殖系列VH DP-47配列(配列番号:31)とのアライメントを示している。これらのアライメントは抗体のCDR領域も示している。図2A〜2Dに関する共通配列をそれぞれ配列番号:56〜59に示している。
図2D】6種のヒト抗IGF-IR抗体に由来する重鎖可変領域のヌクレオチド配列の、相互同士および生殖系列配列とのアライメントを示している。図2Dは、抗体4.17.3のVHのヌクレオチド配列(配列番号:19)と生殖系列VH DP-71配列(配列番号:35)とのアライメントを示している。これらのアライメントは抗体のCDR領域も示している。図2A〜2Dに関する共通配列をそれぞれ配列番号:56〜59に示している。
図3】抗IGF-IR抗体2.13.2、4.9.2および2.12.1がIGF-Iの3T3-IGF-IR細胞との結合を阻害することを示している。
図4】抗IGF-IR抗体4.9.2が、IGF-Iにより誘発される受容体のチロシンリン酸化を阻害し(上図)、細胞表面でのIGF-IRのダウンレギュレーションを誘導することを示している(下図)。
図5】抗IGF-IR抗体2.13.2および4.9.2が、3T3-IGF-IR腫瘍におけるIGF-IRホスホチロシンシグナルを減少させることを示している。
図6】抗IGF-IR抗体2.13.2および4.9.2が、3T3-IGF-IR腫瘍におけるIGF-IRを減少させることを示している。
図7】抗IGF-IR抗体2.13.2が、単独(左図)またはアドリアマイシンとの併用下(右図)でインビボでの3T3-IGF-IR腫瘍の成長を阻害することを示している。
図8】抗IGF-IR抗体2.13.2の血清レベルと3T3-IGF-IR腫瘍におけるIGF-IRダウンレギュレーションとの間の関係を示している。
図9】抗IGF-IR抗体2.13.2の単独またはアドリアマイシンとの併用下での多回投与により、インビボでの3T3-IGF-IR腫瘍の成長が阻害されることを示している。
図10】抗IGF-IR抗体2.13.2がアドリアマイシンとの併用下で、インビボでの大型の腫瘍の成長を阻害することを示している。
図11】抗IGF-IR抗体2.13.2が、単独または5-デオキシウリジン(5-FU)との併用下でインビボでのColo 205腫瘍の成長を阻害することを示している。
図12】抗IGF-M抗体2.13.2の単独または5-FUとの併用下での多回投与により、インビボでのColo 205腫瘍の成長が阻害されることを示している。
図13】抗IGF-IR抗体2.13.2の単独またはタキソールとの併用下での多回投与により、インビボでのMCF-7腫瘍の成長が阻害されることを示している。
図14】抗IGF-IR抗体2.13.2が、単独(左図)またはアドリアマイシンとの併用下(右図)でインビボでのMCF-7腫瘍の成長を阻害することを示している。
図15】抗IGF-IR抗体2.13.2の単独またはタモキシフェンとの併用下での多回投与によってインビボでのMCF-7腫瘍の成長が阻害されることを示している。
図16】抗IGF-IR抗体2.13.2の単独または上皮成長因子受容体(EGF-R)チロシンキナーゼ阻害剤CP-358,774との併用下での多回投与により、インビボでのA431腫瘍の成長が阻害されることを示している。
図17】カニクイザルにおける抗IGF-IR抗体2.13.2の単回静脈内注射の薬物動態学的評価を示している。
図18】抗IGF-IR抗体2.13.2とアドリアマイシンとの併用により、インビボで3T3-IGF-IR腫瘍上のIGF-Iのダウンレギュレーションが増加することを示している。
図19A】2.13.2および2.12.1の重鎖および軽鎖の種々の領域における変異の数を、生殖系列配列と比較して示したものである。
図19B】抗体2.13.2および2.12.1の重鎖および軽鎖からのアミノ酸配列と、それらの由来である生殖系列配列とのアライメントを示している。図19Bは、抗体2.13.2の重鎖のアミノ酸配列(配列番号:45)と、生殖系列配列DP-47(3-23)/D6-19/JH6のもの(配列番号:46)とのアライメントを示している。図19B〜Eに関して、シグナル配列はイタリック体であり、CDRには下線を付し、可変ドメインは太字であり、フレームワーク(FR)変異にはアミノ酸残基の上方にプラス記号(「+」)を付して強調し、CDR変異にはアミノ酸残基の上方に星印を付して強調している。
図19C】抗体2.13.2および2.12.1の重鎖および軽鎖からのアミノ酸配列と、それらの由来である生殖系列配列とのアライメントを示している。図19B〜Eに関して、シグナル配列はイタリック体であり、CDRには下線を付し、可変ドメインは太字であり、フレームワーク(FR)変異にはアミノ酸残基の上方にプラス記号(「+」)を付して強調し、CDR変異にはアミノ酸残基の上方に星印を付して強調している。
図19D】抗体2.13.2および2.12.1の重鎖および軽鎖からのアミノ酸配列と、それらの由来である生殖系列配列とのアライメントを示している。図19Cは、抗体2.13.2の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号:47)と、生殖系列配列A30/Jk2のもの(配列番号:48)とのアライメントを示している。図19Dは、抗体2.12.1の重鎖のアミノ酸配列(配列番号:49)と、生殖系列配列DP-35(3-11)/D3-3/JH6のもの(配列番号:50)とのアライメントを示している。図19B〜Eに関して、シグナル配列はイタリック体であり、CDRには下線を付し、可変ドメインは太字であり、フレームワーク(FR)変異にはアミノ酸残基の上方にプラス記号(「+」)を付して強調し、CDR変異にはアミノ酸残基の上方に星印を付して強調している。
図19E】抗体2.13.2および2.12.1の重鎖および軽鎖からのアミノ酸配列と、それらの由来である生殖系列配列とのアライメントを示している。図19Eは、抗体2.12.1の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号:51)と、生殖系列配列A30/Jklのもの(配列番号:52)とのアライメントを示している。図19B〜Eに関して、シグナル配列はイタリック体であり、CDRには下線を付し、可変ドメインは太字であり、フレームワーク(FR)変異にはアミノ酸残基の上方にプラス記号(「+」)を付して強調し、CDR変異にはアミノ酸残基の上方に星印を付して強調している。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]