(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697874
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01P 15/125 20060101AFI20150319BHJP
G01P 15/08 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
G01P15/125 Z
G01P15/08 101B
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-4592(P2010-4592)
(22)【出願日】2010年1月13日
(65)【公開番号】特開2010-164564(P2010-164564A)
(43)【公開日】2010年7月29日
【審査請求日】2013年1月15日
(31)【優先権主張番号】10 2009 000 167.0
(32)【優先日】2009年1月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス クラッセン
【審査官】
里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−043426(JP,A)
【文献】
特開2008−145440(JP,A)
【文献】
特表2008−544243(JP,A)
【文献】
米国特許第04104920(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/00−15/16
G01P 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主平面(100)を有する基板(2)と震動質量体(3)と少なくとも部分的に片持梁式での支持を行う少なくとも1つの第1の電極(4)とが設けられており、
前記震動質量体(3)は、吊り下げ領域(5)において、前記主平面(100)に対して平行に見てトーション軸(6)を中心として運動可能に前記基板(2)に固定されており、かつ、前記トーション軸(6)に関して非対称な質量分布を有しており、
前記第1の電極(4)は結合領域(7)において前記基板(2)に接続されている、
センサ装置(1)において、
前記震動質量体(3)のうち前記基板(2)に近い側の面は前記トーション軸(6)に関して対称に構成されており、
前記結合領域(7)は前記トーション軸(6)に対して垂直かつ前記主平面(100)に対して平行な方向で見て前記吊り下げ領域(5)の近傍に配置されているか、または、前記吊り下げ領域(5)に直接に接して配置されている
ことを特徴とするセンサ装置(1)。
【請求項2】
前記震動質量体(3)は、前記基板(2)から遠い側の面に、非対称な質量分布を形成するための少なくとも1つの質量部材(10)を有している、請求項1記載のセンサ装置(1)。
【請求項3】
前記震動質量体(3)の前記基板(2)から遠い側の面にさらに補償部材(11)が配置されており、前記トーション軸(6)は前記主平面(100)に対して平行に見て、前記質量部材(10)と前記補償部材(11)とのあいだに配置されている、請求項1または2記載のセンサ装置(1)。
【請求項4】
前記震動質量体(3)は第1の作用面および第2の作用面を有しており、前記第1の作用面は固定の前記第1の電極(4)に対応し、前記第2の作用面は固定の第2の電極(4’)に対応し、前記第1の作用面の面積は前記第2の作用面の面積に等しい、請求項1から3までのいずれか1項記載のセンサ装置(1)。
【請求項5】
前記第1の作用面の幾何学的形状は前記第2の作用面の幾何学的形状に等しい、請求項4記載のセンサ装置(1)。
【請求項6】
前記第1の作用面および前記第2の作用面は前記トーション軸(6)に関して対称に構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のセンサ装置(1)。
【請求項7】
前記第1の作用面は前記震動質量体(3)の前記基板(2)から遠い側の第1の領域と前記質量部材(10)の領域とを有しており、前記第2の作用面は前記震動質量体(3)の前記基板(2)から遠い側の第2の領域と前記補償部材(11)の領域とを有している、請求項6記載のセンサ装置(1)。
【請求項8】
前記結合領域(7)は前記トーション軸(6)に対して垂直かつ前記主平面(100)に対して平行な方向で見て前記吊り下げ領域(5)の近傍で、前記吊り下げ領域(5)に直接に接して配置されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載のセンサ装置(1)。
【請求項9】
前記トーション軸(6)に対して垂直かつ前記主平面(100)に対して平行な方向で見たときの前記吊り下げ領域(5)から前記結合領域(7)までの距離(8)は、前記トーション軸(6)に対して垂直かつ前記主平面(100)に対して平行な方向で見たときの前記震動質量体(3)の延長部の最大長さ(9)の50%より小さい、請求項1から8までのいずれか1項記載のセンサ装置(1)。
【請求項10】
前記トーション軸(6)に対して垂直かつ前記主平面(100)に対して平行な方向で見たときの前記吊り下げ領域(5)から前記結合領域(7)までの距離(8)は、前記トーション軸(6)に対して垂直かつ前記主平面(100)に対して平行な方向で見たときの前記震動質量体(3)の延長部の最大長さ(9)の20%より小さい、請求項1から8までのいずれか1項記載のセンサ装置(1)。
【請求項11】
前記トーション軸(6)に対して垂直かつ前記主平面(100)に対して平行な方向で見たときの前記吊り下げ領域(5)から前記結合領域(7)までの距離(8)は、前記トーション軸(6)に対して垂直かつ前記主平面(100)に対して平行な方向で見たときの前記震動質量体(3)の延長部の最大長さ(9)の5%より小さい、請求項1から8までのいずれか1項記載のセンサ装置(1)。
【請求項12】
前記トーション軸(6)に対して垂直かつ前記主平面(100)に対して平行な方向で見て前記結合領域(7)が前記第1の電極(4)のうち前記トーション軸(6)に近い領域に配置されているか、または、前記主平面(100)に対して平行な方向で見て前記結合領域(7)の面積が前記第1の電極(4)の面積より小さい、請求項1から11までのいずれか1項記載のセンサ装置(1)。
【請求項13】
前記主平面(100)に対して垂直な方向で見て前記第1の電極(4)が前記震動質量体(3)と前記基板(2)とのあいだに配置されているか、または、前記主平面(100)に対して垂直な方向で見て前記震動質量体(3)が前記第1の電極(4)と前記基板(2)とのあいだに配置されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のセンサ装置(1)。
【請求項14】
前記主平面(100)に対して垂直な方向で見て、前記震動質量体(3)の上方および下方に前記第1の電極(4)が1つずつ配置されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のセンサ装置(1)。
【請求項15】
前記センサ装置(1)は前記第1の電極(4)と同じ構造の第2の電極(4’)を有しており、該第2の電極(4’)は前記トーション軸(6)に関して前記第1の電極(4)に鏡面対称に配置されている、請求項1から14までのいずれか1項記載のセンサ装置(1)。
【請求項16】
前記結合領域(7)は前記トーション軸(6)に沿って見たとき前記震動質量体(3)に関してほぼ中央に配置されている、請求項1から15までのいずれか1項記載のセンサ装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載された、少なくとも1つの主平面(主延在平面)を有する基板と震動質量体とが設けられており、震動質量体は、主平面に対して平行なトーション軸を中心として運動可能であり、かつ、トーション軸に関して非対称な質量分布を有する、センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
こうしたセンサ装置は一般に知られている。例えば、欧州公開第0244581号明細書からは、シリコンプレート上に、それぞれ非対称に構成された回転質量体を有する2つの同形の振り子がエッチング技術によって形成されており、各振り子の回転質量体がそれぞれトーションロッドに固定されているセンサが公知である。
【0003】
また、欧州公開第0773443号明細書からは、マイクロメカニカル加速度センサが公知である。ここでは、第1の半導体ウェハ上に可変容量を形成する少なくとも1つの第1の電極が設けられており、第2の半導体ウェハ上に非対称に吊り下げられた振動子の形態の可動の第2の電極が設けられている。振動子が非対称に吊り下げられているため、第1の半導体ウェハのウェハ面に対して垂直方向に第1の電極の回転軸線を中心とした回転モーメントが発生し、この回転モーメントに基づく振動子の偏向によって第1の電極と第2の電極とのあいだの電気容量が変化し、この変化分が加速度の尺度として検出される。
【0004】
しかし、こうした加速度センサでは、第1の電極の非対称の質量分布のために、基板の表面に対向する第1の電極の下面は回転軸線に関して対称のジオメトリが得られず、第1の電極と基板とのあいだに電位差が発生すると、シリコンの表面にトラップされた表面電荷によって第1の電極へ作用する力が発生してしまう。これは、第1の電極の非対称のジオメトリのために表面電荷の分布も回転軸線に関して非対称となってしまうからである。特に、温度に応じてまたはセンサの耐用期間に応じて表面電荷が変化すると、力の作用によって振動子が歪み、望ましくないオフセット信号が生じて、センサの測定精度が低下するおそれがある。
【0005】
さらに、こうした加速度センサには、外部負荷、例えば外部のケーシングからの機械的応力や熱負荷によって基板の撓みが生じた場合に、第1の電極から第2の電極までの距離が変化して、前述したケースと同様に望ましくないオフセットが生じ、センサの測定精度が低下することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州公開第0244581号明細書
【特許文献2】欧州公開第0773443号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基礎とする課題は、センサ装置で望ましくないオフセット信号の発生するおそれを低減し、簡単かつ低コストに測定精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、震動質量体のうち基板に近い側の面がトーション軸に関して対称に構成されていることにより解決される。また、前述した課題は、結合領域がトーション軸に対して垂直かつ主平面に対して平行な方向で見て吊り下げ領域に配置されているか、および/または、吊り下げ領域に直接に接して配置されていることにより解決される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のセンサ装置の第1の実施例の斜視図である。
【
図2】本発明のセンサ装置の第2の実施例の斜視図である。
【
図3】本発明のセンサ装置の第3の実施例の上面図である。
【
図4】本発明のセンサ装置の第4の実施例の斜視図である。
【
図5】本発明のセンサ装置の第5の実施例の斜視図である。
【
図6】本発明のセンサ装置の第6の実施例の斜視図である。
【
図7】本発明のセンサ装置の第7の実施例の上面図である。
【
図8】本発明のセンサ装置の第8の実施例の斜視図である。
【
図9】本発明のセンサ装置の第9の実施例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のセンサ装置は、従来技術のセンサ装置に比べて、一方では簡単かつ低コストに測定精度が向上し、他方では望ましくないオフセット信号の発生するおそれが低減されるという利点を有する。特に、表面電荷または機械的応力に対するセンサ装置の敏感度が低減される。
【0011】
表面電荷に対するセンサ装置の敏感度の低減は、震動質量体のうち基板に近い側の面がトーション軸に関して対称に構成され、震動質量体と基板とのあいだの電位差による力の作用がトーション軸の両側で相互に補償されることにより達成される。有利には、震動質量体にかかる力がほぼゼロとなり、温度や耐用期間に応じて表面電荷が変化しても、震動質量体の望ましくない偏向が生じない。
【0012】
また、機械的応力に対するセンサ装置の敏感度の低減は、結合領域がトーション軸に対して垂直かつ主平面に対して平行に吊り下げ領域内に配置されるかまたは吊り下げ領域に直接に隣接して配置されることによって達成される。こうして、第1の電極も震動質量体も基板の比較的小さい共通の領域に固定されるので、基板の撓みが生じた場合にも第1の電極と震動質量体とのあいだのジオメトリは殆ど変化しなくなる。つまり結合領域および吊り下げ領域はつねに同じだけ撓み、第1の電極から震動質量体までの相対距離はほぼ不変となる。機械的応力に対するセンサ装置の敏感度が低減されることにより、特に有利には、センサ装置を比較的低コストにモールドパッケージにパッケージングすることができる。
【0013】
有利には、いずれの場合にも、震動質量体の下面を対称に構成して表面電荷に対する敏感度を低減し、また、結合領域を吊り下げ領域内に配置して機械的応力に対する敏感度を低減する。なぜなら、基板が震動質量体に対して撓むと、主平面に対して垂直方向で見て基板から震動質量体までの距離が変化してしまい、そこで生じる表面電荷が震動質量体と基板とのあいだに発生する静電作用を増幅してしまうからである。したがって、応力に対する敏感度も表面電荷に対する敏感度も同様に低減されなければならない。
【0014】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項のほか、実施例および図面に記載されている。
【0015】
有利な実施形態では、震動質量体は、基板から遠い側の面に、非対称な質量分布を形成するための少なくとも1つの質量部材を有している。このため、震動質量体では、基板から遠い側の面でトーション軸に関して非対称な質量分布が得られるものの、基板に近い側の面にはトーション軸に関して対称なジオメトリが得られ、有利である。質量部材は震動質量体の基板から遠い側の面に特にエピタキシプロセスによって堆積される。
【0016】
有利な実施形態では、さらに、震動質量体の基板から遠い側の面に補償部材が配置され、トーション軸は主平面に対して平行に見て質量部材と補償部材とのあいだに配置されている。特に有利には、震動質量体によって生じる静電作用を補償する補償部材が設けられる。特に、質量部材の一方側に作用する寄生容量が補償部材によって補償される。補償部材は質量部材よりも軽量に構成されているので、補償部材によるトーション軸の他方側の重量の補償は生じない。補償部材によって補償すべき静電作用は、質量部材と固定の第1の電極とのあいだの静電作用、すなわち、主平面に対して垂直に見て震動質量体の上方または下方、主平面に対して平行に見て質量部材の側方にかかる静電作用であるが、トーション軸の他方側においても、補償部材と有利には第1の電極と同様に構成された固定の第2の電極とのあいだに同じ大きさの静電作用が発生する。こうして静電作用の和が補償されてほぼゼロとなる。
【0017】
別の有利な実施形態では、震動質量体は第1の作用面および第2の作用面を有しており、第1の作用面は固定の第1の電極に対応し、第2の作用面は固定の第2の電極に対応し、第1の作用面の面積は第2の作用面の面積に等しく、有利には、第1の作用面の幾何学的形状は第2の作用面の幾何学的形状に等しい。特に有利には、第1の電極と第1の作用面とのあいだの静電作用が第2の電極と第2の作用面とのあいだの静電作用によって補償される。こうして、トーション軸の両側で発生し震動質量体の基板に近い側の面と基板から遠い側の面とに作用する静電作用が相互に補償される。したがって震動質量体の表面電荷によって生じる力の有効和は有利にはほぼゼロとなる。なお、本発明における作用面とは、第1の電極または第2の電極に対して直接に静電作用の生じる震動質量体の面のことである。
【0018】
別の有利な実施形態では、第1の作用面および第2の作用面はトーション軸に関して対称に構成されており、有利には、第1の作用面は震動質量体の基板から遠い第1の領域と質量部材の領域とを含み、第2の作用面は震動質量体の基板から遠い第2の領域と補償部材の領域とを含む。有利には、第1の作用面および第2の作用面は、震動質量体、質量部材および/または補償部材の領域であって、特に有利には、主平面に対して平行な方向および主平面に対して垂直な方向に配向されている。さらに有利には、トーション軸の一方側での第1の電極と質量部材とのあいだの静電作用がトーション軸の他方側での第2の電極と補償部材とのあいだの静電作用によって補償され、その際にもトーション軸に関する重量の変化は生じない。
【0019】
別の有利な実施形態では、トーション軸に対して垂直かつ主平面に対して平行な方向で見たときの吊り下げ領域から結合領域までの距離は、トーション軸に対して垂直かつ主平面に対して平行な方向で見たときの震動質量体の延長部の最大長さの50%より小さく、有利には20%より小さく、さらに有利には5%より小さい。特に有利には、吊り下げ領域および結合領域が基板上の比較的小さい面積内に配置され、基板の撓みによって震動質量体から第1の電極までの距離が変化してしまうおそれが小さくなることが保証される。特に有利には、結合領域および吊り下げ領域はトーション軸の近傍に配置され、第2の電極をセンサ装置に取り付けるときに完全に対称に配置することが容易になる。
【0020】
別の有利な実施形態では、トーション軸に対して垂直かつ主平面に対して平行な方向で見たとき結合領域が第1の電極のうちトーション軸に近い領域に配置されているか、および/または、主平面に対して平行な方向で見たとき結合領域の面積が第1の電極の面積より小さい。このようにすれば、比較的簡単に、結合領域を介して第1の電極をトーション軸の近傍に固定することができる。第1の電極の片持梁式の支持領域はトーション軸に対して垂直または平行な方向で見て震動質量体の部分領域から突出しており、これにより、主平面に対して垂直な方向で見たとき、トーション軸によって分離されている震動質量体の2つの面の一方と第1の電極の片持梁式の支持領域とが重なる。また、特に有利には、結合領域の面積が小さいため、基板の撓みによって結合領域にかかる機械的応力が最小化される。
【0021】
別の有利な実施形態では、主平面に対して垂直な方向で見て第1の電極が震動質量体と基板とのあいだに配置されているか、または、震動質量体が第1の電極と基板とのあいだに配置されている。特に有利には、第1の電極によって、震動質量体の下方または上方での基板に対する震動質量体の偏向度を測定することができる。震動質量体の上方に配置される第1の電極は、特に、製造プロセスにおいて震動質量体の上方に堆積される付加的なエピタキシ層によって実現される。
【0022】
別の有利な実施形態では、主平面に対して垂直な方向で見て、震動質量体の上方および下方に第1の電極が1つずつ配置されている。このようにすると、震動質量体の偏向度が、震動質量体の上方においても震動質量体の下方においても、同じ構造の電極によって測定可能となるので有利である。有利には、トーション軸の一方側のみの偏向運動の全微分評価が可能となる。
【0023】
別の有利な実施形態では、センサ装置は第1の電極と同じ構造の第2の電極を有しており、この第2の電極は有利にはトーション軸に関して第1の電極に鏡面対称に配置される。これにより、有利には、トーション軸の一方側のみの偏向運動の全微分評価が可能となる。
【0024】
別の有利な実施形態では、結合領域はトーション軸に沿って見たとき震動質量体に関してほぼ中央に配置されている。特に有利には、基板の撓みによって、主平面に対して平行かつトーション軸に対して垂直に見たときにセンサ装置のジオメトリにかかる影響が低減される。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例を図示し、以下に詳細に説明する。図中、同一の要素には同一の参照番号を付してある。また、いちど説明した要素の説明は省略する。
【0026】
図1には、本発明の第1の実施例のセンサ装置1の斜視図が示されている。センサ装置1は基板2を有しているが、ここでは、基板2の主平面100にかかる機械的応力をわかりやすく示すために過度に撓められた状態で示してある。また、センサ装置1は吊り下げ領域5によって基板2に固定された震動質量体3を有しており、この震動質量体3はトーション軸6を中心として基板2に対して相対的に回転可能である。ここで、吊り下げ領域5は特に撓みばねおよび/またはねじりばねを含む。
【0027】
震動質量体3は、トーション軸6の一方側に、トーション軸6に関して非対称な質量分布を形成するための質量部材10を有している。これにより、センサ装置1で主平面100に対して垂直方向に加速度がかかったとき、震動質量体3に回転モーメントが作用する。このとき震動質量体3に偏向が生じ、その度合が震動質量体3の上方に配置された第1の電極4および第2の電極4’によって容量的に評価される。つまり、震動質量体3は、主平面100に対して垂直な方向で見て、基板2と電極4,4’とのあいだに配置されている。
【0028】
第1の電極4は結合領域7によって基板2に固定された片持梁式の電極として構成されている。基板2の撓みが震動質量体3と第1の電極4とのあいだのジオメトリに与える影響、すなわち、基板2の撓みが主平面100に対して垂直方向で見たときの震動質量体3から第1の電極4までの距離に与える影響ができるだけ小さくなるように、結合領域7は吊り下げ領域5の近傍に配置される。結合領域7はここでは第1の電極4のうちトーション軸6に近い領域に配置されているので、トーション軸6に対して垂直かつ主平面100に対して水平の方向で見たときのトーション軸6から結合領域7までの距離は最小となる。主平面100に対して平行な方向で見て、結合領域7の面積は第1の電極4の面積の数分の1である。第2の電極4’は第1の電極4とほぼ同様に構成されており、トーション軸6に関して第1の電極4に鏡面対称に配置されている。このため、第2の電極4’は、第2の結合領域7’を介して、基板2の吊り下げ領域5の近傍に固定されている。
【0029】
本発明のセンサ装置1は、特に、z方向すなわち主平面100に対して垂直な方向に感応性を有する加速度センサであり、有利にはモールドケーシング内にパッケージングされている。図示されていない別の実施例によれば、第1の電極4および第2の電極4’が震動質量体3と基板2とのあいだに配置されるか、または、第1の実施例の第1の電極4および第2の電極4’に加えて設けられる第1の付加電極44および第2の付加電極44’が震動質量体3と基板2とのあいだに配置される。さらに別の実施例として、第1の電極4および第2の電極4’がそれぞれ複数の第1の結合領域7および複数の第2の結合領域7’を有していてもよい。特に有利には、第1の電極4および第2の電極4はそれぞれ、トーション軸6に対して平行な方向で見て震動質量体3の両側に第1の結合領域7および第2の結合領域7’を有する。このとき、震動質量体3は特に有利には2つの吊り下げ領域5によって基板2に固定され、各吊り下げ領域5はトーション軸6に沿って震動質量体3の両側に配置される。
【0030】
図2には、第2の実施例のセンサ装置1の斜視図が示されている。第2の実施例は
図1の第1の実施例とほぼ同様であるが、震動質量体3がトーション軸6に関して非対称の質量分布を形成するための質量部材10を有さず、その代わりに、トーション軸6の一方側に延長部3’を有する点が異なっている。震動質量体3の延長部3’はトーション軸6に関して震動質量体3の非対称の質量分布を形成する。第2の実施例のセンサ装置1は第1の実施例のセンサ装置とは異なり、震動質量体3がトーション軸6に対して平行に作用する加速度に対して不感であるという利点を有する。これは、トーション軸6に対して垂直な別の回転軸線を中心とした回転モーメントが発生しないためである。
【0031】
図3には、第3の実施例のセンサ装置の上面図が示されている。第3の実施例は
図2の第2の実施例とほぼ同様であるが、震動質量体3がトーション軸6の近傍に中央開口3"を有し、この中央開口3"内で、吊り下げ領域5,第1の結合領域7および第2の結合領域7’がトーション軸6に対して平行な方向で見て震動質量体3の中央に配置される点が異なっている。
【0032】
図4には、第4の実施例のセンサ装置1の斜視図が示されている。第4の実施例も
図2の第2の実施例とほぼ同様であるが、第1の電極4および第2の電極4’が震動質量体3と基板2とのあいだに配置されている点が異なっている。
【0033】
図5のa,bには、第5の実施例のセンサ装置1を異なる方向から見た2つの斜視図が示されている。第5の実施例は
図3の第3の実施例とほぼ同様であるが、第1の電極4および第2の電極4’が震動質量体3と基板2とのあいだに配置されている点が異なっている。
【0034】
図6には、第6の実施例のセンサ装置1の斜視図が示されている。第6の実施例は
図1に示されている第1の実施例とほぼ同様であるが、震動質量体3のうち基板2に近い側の面がトーション軸6に関して対称に構成されている点、つまり、震動質量体3の下面がトーション軸に関して面積においても形状においても等しく構成されている点が異なっている。特にトーション軸6の両側の寄生容量の大きさが等しくなる。また、製造プロセス中に震動質量体3の下面にかかり、震動質量体3と基板2とのあいだに静電作用を生じさせる表面電荷も同様にトーション軸に関して対称となり、震動質量体3に対する有効回転モーメントが発生しなくなる。有利には、
図1の第1の実施例の震動質量体3の下面もトーション軸6に関して対称に構成される。ただし、
図6の第6の実施例の震動質量体3は、
図1の第1の実施例とは異なり、震動質量体3の質量部材10の側の反対側に補償部材11を有する。震動質量体3の質量部材10の側には第1の作用面が存在しており、この第1の作用面は、主平面100に対して平行な少なくとも1つの第1の部分領域と、主平面100に対して垂直かつトーション軸6に対して平行な第1の電極4の属する第2の部分領域とを有する。震動質量体3の静止位置においてトーション軸6に関して非対称の質量分布を達成するため、また、対称な静電力分布を形成するために、震動質量体3に補償部材11が設けられるのである。補償部材11は、主平面100に対して平行な少なくとも1つの第3の部分領域と、主平面100に対して垂直かつトーション軸6に対して平行な第4の部分領域とを有し、これら2つの部分領域が第1の作用面とほぼ同じ形状およびほぼ同じ面積を有する第2の作用面を形成するように構成される。第1の作用面および第2の作用面はトーション軸6に関して対称である。
【0035】
図7には、第7の実施例のセンサ装置1の上面図が示されている。第7の実施例は
図6の第6の実施例とほぼ同様であるが、
図3の実施例のごとく震動質量体3が中央開口3"を有し、この中央開口内で、吊り下げ領域6,第1の結合領域7および第2の結合領域7’がトーション軸に対して平行な方向で見て震動質量体3の中央に配置される点が異なっている。
【0036】
図8には、第8の実施例のセンサ装置1の斜視図が示されている。第8の実施例は
図6の第6の実施例とほぼ同様であるが、震動質量体3と基板2とのあいだに、基板2に対する震動質量体3の偏向の度合を評価するための第1の付加電極44および第2の付加電極44’が配置される点が異なっている。ここではトーション軸6は第1の付加電極44と第2の付加電極44’とのあいだに延在している。
【0037】
図9には、第9の実施例のセンサ装置1が示されている。第9の実施例は
図8の第8の実施例とほぼ同様であるが、第1の付加電極44がトーション軸6の一方側で震動質量体3のほぼ全面に重畳しており、第2の付加電極44’がトーション軸6の他方側で震動質量体3のほぼ全面に重畳している点が異なっている。
【符号の説明】
【0038】
1 センサ装置、 2 基板、 3,3’,3" 震動質量体、 4,4’ 電極、 5 吊り下げ領域、 6 トーション軸、 7,7’ 結合領域、 9 延長部の長さ、 10 質量部材、 11 補償部材、 44,44’ 付加的電極、 100 主平面