(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は係る事実を考慮し、支持体に支持される振動体に設置することなく、この振動体から発生する振動を利用して発電ができる発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1態様の発明は、支持体に揺動可能に支持されると共に振動する振動体を支持する装置本体と、前記装置本体に移動可能に設けられた第1錘と、前記第1錘に設けられた第1部材と該第1部材に対して相対移動可能な第2部材とを備え前記相対移動によって電力を発生する発電手段と、を有する
発電装置である。
【0012】
第1態様の発明では、装置本体が支持体に揺動可能に支持されている。この装置本体は、振動する振動体を支持する。
発電装置は、第1部材と第2部材とを備えた発電手段を有する。第1部材は第1錘に設けられ、第1錘は装置本体に移動可能に設けられている。第2部材は、第1部材に対して相対移動可能となっている。そして、発電手段は、第1部材と第2部材との相対移動によって電力を発生する。
【0013】
よって、振動体に振動が発生したときに、この振動が装置本体を介して第1部材に伝達される。これにより第1部材が振動し、第1部材に対して第2部材が相対移動するので電力が発生する。すなわち、振動する振動体の振動エネルギーを発電手段により電気エネルギーに変換して電力を発生させることができる。
【0014】
また、発電装置は、支持体に振動体を支持する支持部材であるので、支持体に支持される振動体に発電装置を設置することなく、この振動体から発生する振動を利用して発電ができる。
【0015】
また、発電手段(第1部材に対する第2部材の相対移動)により電力を発生させるときに、第1部材の振動を抑える抵抗力(例えば、第1部材を磁石とし、第2部材をコイルとして電磁誘導によりコイルから電力を発生させる場合における、コイルに発生する逆起電力)が第2部材から第1部材へ作用する場合、第1部材の振動の振幅は小さくなってしまう。
【0016】
これに対して
第1態様の発電装置では、第1部材が第1錘に設けられているので、第1錘の質量により第1部材の慣性力が大きくなる。これによって、第2部材から第1部材へ作用する抵抗力により抑制される第1部材の振動を低減することができる。すなわち、振動体の振動に対する第1部材の振動の増幅倍率の低下を低減することができ、第1部材を効果的に振動させることができる。
【0017】
発電手段の発電量は、第1部材と第2部材との相対移動量が大きいほど大きくなる。よって、振動体に発生する振動エネルギーを効果的に電気エネルギーに変換することができ、大きな電力を発生させることができる。
【0018】
第2態様の発明は、
第1態様の発電装置において、前記第1部材は磁石又はコイルであり、前記第2部材はコイル又は磁石である。
【0019】
第2態様の発明では、第1部材を磁石又はコイルとし、第2部材をコイル又は磁石とすることにより、磁石に対してコイルが相対移動したときに、電磁誘導の原理によってコイルから電力を発生させることができる。
【0020】
ここで、発電手段により電力を発生させるときにコイルには逆起電力が発生し、これによって磁石の振動を抑える抵抗力がコイルから磁石へ作用してしまう。これに対して
第2態様の発電装置では、磁石又はコイルが第1錘に設けられているので、第1錘の質量により磁石又はコイルの慣性力が大きくなる。これによって、コイルから磁石へ作用する抵抗力により抑制される磁石又はコイルの振動を低減することができる。すなわち、振動体の振動に対する磁石又はコイルの振動の増幅倍率の低下を低減することができ、磁石又はコイルを効果的に振動させることができる。
【0021】
発電手段の発電量は、磁石とコイルとの相対移動量が大きいほど大きくなる。よって、振動体に発生する振動エネルギーを効果的に電気エネルギーに変換することができ、大きな電力を発生させることができる。
【0022】
第3態様の発明は、
第1又は第2態様の発電装置において、前記装置本体には第2錘が設けられ、該装置本体は前記振動体を揺動可能に支持する。
【0023】
第3態様の発明では、装置本体に第2錘が設けられている。そして、この装置本体は振動体を揺動可能に支持する。
【0024】
ここで、第1錘及び第2錘が設けられている装置本体(
第3態様の装置本体)によって振動体が支持体に支持される構成の振動系を振動系S
1とし、第2錘が設けられ第1錘が設けられていない装置本体によって振動体が支持体に支持される構成の振動系を振動系S
2とし、第1錘及び第2錘が設けられていない装置本体によって振動体が支持体に支持される構成の振動系を振動系S
3とすると、振動系S
2は、振動体の質量により構成される1質点と、装置本体自体の質量及び第2錘の質量により構成される1質点とによって、2質点系を構成する。
【0025】
これによって、振動系S
2には2つの固有振動数が生じ、2次固有振動数を2番目のピークにしてこの付近の振動数に対する伝達加振力倍率(=支持体へ伝達される加振力/振動体に加わる加振力)が、振動系S
3の場合よりも引き上げられて大きくなる。
【0026】
よって、
第3態様の発電装置は、振動系S
2を構成する装置本体に第1錘が設けられ、この第1錘に設けられた第1部材と、第2部材との相対移動により電力を発生するものなので、振動系S
1を構成する装置本体から第1錘を取り外したとき(振動系S
2)の2次固有振動数を、振動体に生じる振動の卓越振動数又は振動体の固有振動数や、これらの振動数付近の振動数と等しくすれば、振動体の振動に対する第1部材の振動の増幅倍率が大きい振動数で効果的に電力を発生させることができる。
【0027】
また、装置本体に伝達された振動エネルギーが発電により消費されるので、振動系S
2における2次固有振動数のピーク値が引き下げられ、2次固有振動数及び2次固有振動数付近の振動数に対する防振効果(振動体から支持体へ伝達される加振力を低減する効果)を向上させることができる。
【0028】
また、振動系S
2の2次固有振動数よりも高い振動数における伝達加振力倍率の傾きが大きく(急勾配に)なるので、振動体に生じる高い振動数の振動に対する高い防振効果を期待することができる。
【0029】
第4態様の発明は、
第1〜第3態様の何れか1態様の発電装置において、前記振動体はダクトであり、前記支持体は水平部材である。
【0030】
第4態様の発明では、水平部材に支持された状態で振動するダクトの振動エネルギーを発電手段により電気エネルギーに変換して電力を発生させることができる。
【0031】
第5態様の発明は、
第1〜第3態様の何れか1態様の発電装置において、前記振動体は階段であり、前記支持体は水平部材である。
【0032】
第5態様の発明では、水平部材に支持された状態で振動する階段の振動エネルギーを発電手段により電気エネルギーに変換して電力を発生させることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明は上記構成としたので、支持体に支持される振動体に設置することなく、この振動体から発生する振動を利用して発電ができる発電装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面を参照しながら、本発明の発電装置を説明する。
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0036】
図1の立面図に示すように、空調用のダクト10が、支持体としての床スラブ12に吊り支持されている。ダクト10は、略水平に配置された鋼製のアングル材38に載置されている。アングル材38は、床スラブ12から吊り下げられて下端部がアングル材38の左右端部付近に固定された2つの吊り部材14によって支持されている。ダクト10は、ダクト10内を流れる空気により加振されたり、又は空調ファン等の機械振動が伝達されたりして、振動する振動体となる。
【0037】
図1、及び
図2の拡大図に示すように、吊り部材14は、鋼棒16、18及び装置本体20によって構成されている。
図3に示すように、装置本体20は、対向して配置された縦に長い長方形状の側板22A、22Bと、側板22A、22Bの上端部に左右端部が接合された正方形状の上板24と、側板22A、22Bの下端部に左右端部が接合された正方形状の下板26とによって構成された四角柱状の筐体である。
【0038】
鋼棒16の上端部は床スラブ12に固定され、鋼棒16の下端部は装置本体20の上板24に連結されている。鋼棒16の下端部は、上板24の略中央に形成された貫通孔28を貫通し、鋼棒16の下端部にダブルナット30によって固定された円板状の保持部材32と、上板24の下面に固定された円板状の保持部材34との間に配置されたコイルバネ36を介して上板24に連結されている。このような構成によって、装置本体20は、床スラブ12に揺動可能に支持されている。
【0039】
アングル材38は、ダブルナット30によって鋼棒18の下端部に固定され、鋼棒18の上端部は装置本体20の下板26に連結されている。鋼棒18の上端部は、下板26の略中央に形成された貫通孔40を貫通し、鋼棒18の上端部にダブルのナット30によって固定された円板状の保持部材32と、下板26の上面に固定された円板状の保持部材34との間に配置されたコイルバネ36を介して下板26に連結されている。このような構成によって、装置本体20は、ダクト10を揺動可能に支持している。
【0040】
装置本体20の内部(側板22Aと側板22Bとの間の空間)には、第2錘としての鉄製の錘42が設けられている。錘42は厚みを有する板状の部材であり、錘42の左右端部が側板22A、22Bの内壁に固定されている。すなわち、装置本体20が上下方向に揺動するときに、錘42は装置本体20と一体となって上下方向に揺動する。なお、錘42は、必要とする質量が得られれば鉄以外の材料によって形成してもよい。
【0041】
図2に示すように、発電装置44は、装置本体20、発電手段46及び錘54によって構成されている。発電手段46は、第1部材としての円柱状の磁石48と、第2部材としてのコイル50とを備えている。
【0042】
第1錘としての鉄製の錘54は、円板状に形成されている。また、錘54は、錘42の上面に設置されたコイルバネ52に支持されており、装置本体20に対して上下方向に移動可能となっている。錘54の上面には、磁石48が固定されている。なお、錘54は、必要とする質量が得られれば鉄以外の材料によって形成してもよい。
【0043】
コイル50は、コイル50の軸が略鉛直となるように(コイル面が略水平となるように)装置本体20の内部に配置され、外壁の一部が側板22A、22Bの内壁に固定されている。磁石48は、コイル50の下方に配置され、コイル50に対して上下方向に相対移動可能となっている。すなわち、磁石48が上方へ移動したときに、磁石48はコイル50内へ挿入される。
【0044】
これらの構成により、発電手段46は、磁石48とコイル50との上下方向の相対移動によって電力を発生する。
そして、
図1、2に示すように、錘54及び錘42が設けられている装置本体20によってダクト10が床スラブ12に支持される構成により、振動系S
1が構築されている。
【0045】
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0046】
第1の実施形態の発電装置44では、
図1、2に示すように、ダクト10に振動が発生したときに、この振動が装置本体20を介して磁石48に伝達される。これにより磁石48が振動し、磁石48に対してコイル50が相対移動するので、電磁誘導の原理によってコイル50から電力が発生する。すなわち、振動する振動体としてのダクト10の振動エネルギーを発電手段46により電気エネルギーに変換して電力を発生させることができる。
【0047】
また、発電装置44は、支持体としての床スラブ12に振動体としてのダクト10を支持する支持部材であるので、支持体に支持される振動体に発電装置を設置することなく、この振動体から発生する振動を利用して発電ができる。
【0048】
ここで、発電手段46により電力を発生させるときにコイル50には逆起電力が発生し、これによって磁石48の振動を抑える抵抗力がコイル50から磁石48へ作用してしまう。これに対して発電装置44では、錘54に磁石48が固定されており錘54と磁石48とが一体となっているので、錘54の質量により磁石48の慣性力が大きくなる。これによって、コイル50から磁石48へ作用する抵抗力により抑制される磁石48の振動を低減することができる。すなわち、ダクト10の振動に対する磁石48の振動の増幅倍率の低下を低減することができ、磁石48を効果的に振動させることができる。
【0049】
発電手段46の発電量は、磁石48とコイル50との相対移動量が大きいほど大きくなる。よって、振動体としてのダクト10に発生する振動エネルギーを効果的に電気エネルギーに変換することができ、大きな電力を発生させることができる。
【0050】
また、発電装置44は、以下に説明する効果を得ることができる。
図4は、
図5〜7に示す振動系モデル56、58、60の数値シミュレーション結果を示したものである。
【0051】
図5に示す振動系モデル56は、振動系S
1のモデルである。
図1、2で示した各部と対応する振動系モデル56の構成要素には、同符号を付している。なお、装置本体20自体の質量と錘42の質量とを合計した質量を中間マス68としている。
【0052】
図6に示す振動系モデル58は、振動系モデル56から発電手段46、コイルバネ52及び錘54を無くした構成の振動系S
2のモデルである。すなわち、振動系S
2は、錘42が設けられ、錘54と磁石48とが設けられていない装置本体20によってダクト10が床スラブ12に支持される構成の振動系である。
図1、2で示した各部と対応する振動系モデル58の構成要素には、同符号を付している。
【0053】
図7に示す振動系モデル60は、振動系モデル58から1つのコイルバネ36及び中間マス68を無くした構成の振動系S
3のモデルである。すなわち、振動系S
3は、錘42、54、磁石48及び鋼棒18の上端部を下板26に連結するコイルバネ36が設けられていない装置本体20によってダクト10が床スラブ12に支持される構成の振動系である。
図1、2で示した各部と対応する振動系モデル60の構成要素には、同符号を付している。
【0054】
図4の値62、64、66は、振動系S
1、S
2、S
3(振動系モデル56、58、60)における、ダクト10に加わる加振力の振動数に対する伝達加振力倍率(=床スラブ12へ伝達される加振力K
2/ダクト10に加わる加振力K
1)の値である。
図4のグラフの横軸がダクト10に加わる加振力の振動数を示し、縦軸が伝達加振力倍率を示している。
【0055】
図4に示すように、振動系S
1(値62)において、伝達加振力倍率が1以下となる(床スラブ12へ伝達される加振力K
2の大きさが、ダクト10に加わる加振力K
1以下となる)振動数で振動体としてのダクト10が振動すれば、ダクト10から支持体としての床スラブ12へ伝達される加振力を低減する防振効果を得ることができる。
【0056】
また、振動体としてのダクト10に加わる加振力の振動数において、伝達加振力倍率が1以下となるように振動系S
1の伝達加振力倍率特性を設定すれば、ダクト10から支持体としての床スラブ12へ伝達される加振力を低減する防振効果を得ることができる。
【0057】
ここで、振動系S
2は、ダクト10の質量により構成される1質点と、装置本体20自体の質量及び錘42の質量により構成される1質点とによって、2質点系を構成する。
これによって、
図4に示すように、振動系S
2(値64)には2つの固有振動数が生じ、2次固有振動数を2番目のピークにしてこの付近の振動数に対する伝達加振力倍率が、振動系S
3の値66よりも引き上げられて大きくなる。
【0058】
よって、発電装置44は、振動系S
2を構成する装置本体20に錘54と磁石48とが設けられ、錘54に固定された磁石48と、コイル50との相対移動により電力を発生するものなので、振動系S
2(値64)における加振力K
2(伝達加振力倍率)の大きさよりも振動系S
1(値62)における加振力K
2(伝達加振力倍率)の大きさが小さくなる振動数(
図4の場合には、値P
1から値P
2の間の振動数)で振動体としてのダクト10が振動すれば、発電装置44によって、振動系S
2(値64)における加振力K
2の大きさと、振動系S
1(値62)における加振力K
2の大きさとの間に差を生じさせている分の振動エネルギーを電気エネルギーに変換し、電力を発生させることができる。
【0059】
また、振動体としてのダクト10に加わる加振力の振動数において、振動系S
2における加振力K
2の大きさよりも振動系S
1における加振力K
2の大きさが小さくなるように振動系S
1の伝達加振力倍率特性を設定すれば、発電装置44によって、振動系S
2における加振力K
2の大きさと、振動系S
1における加振力K
2の大きさとの間に差を生じさせている分の振動エネルギーを電気エネルギーに変換し、電力を発生させることができる。
【0060】
また、発電装置44は、振動系S
2を構成する装置本体20に錘54と磁石48とが設けられ、錘54に固定された磁石48と、コイル50との相対移動により電力を発生するものなので、振動系S
1を構成する装置本体20から錘54と磁石48とを取り外したとき(振動系S
2)の2次固有振動数が、ダクト10に生じる振動の卓越振動数又はダクト10の固有振動数や、これらの振動数付近の振動数と等しくなれば、ダクト10の振動に対する磁石48の振動の増幅倍率が大きい振動数で効果的に電力を発生させることができる。
振動系S
1を構成する装置本体20から錘54と磁石48とを取り外したとき(振動系S
2)の2次固有振動数が、ダクト10に生じる振動の卓越振動数又はダクト10の固有振動数と等しくなるのが好ましい。
【0061】
また、振動体としてのダクト10に加わる加振力の振動数において、振動系S
1を構成する装置本体20から錘54と磁石48とを取り外したとき(振動系S
2)の2次固有振動数が、ダクト10に生じる振動の卓越振動数又はダクト10の固有振動数や、これらの振動数付近の振動数と等しくなるように振動系S
1の伝達加振力倍率特性を設定すれば、ダクト10の振動に対する磁石48の振動の増幅倍率が大きい振動数で効果的に電力を発生させることができる。
振動系S
1を構成する装置本体20から錘54と磁石48とを取り外したとき(振動系S
2)の2次固有振動数が、ダクト10に生じる振動の卓越振動数又はダクト10の固有振動数と等しくなるように振動系S
1の伝達加振力倍率特性を設定するのが好ましい。
【0062】
また、発電手段46によって発電することにより、装置本体20に伝達された振動エネルギーが消費されるので、振動系S
2における2次固有振動数のピーク値が引き下げられ(
図4の矢印70)、振動系S
2の2次固有振動数及び2次固有振動数付近の振動数に対する防振効果(振動体としてのダクト10から支持体としての床スラブ12へ伝達される加振力を低減する効果)を向上させることができる。
【0063】
また、振動系S
2の2次固有振動数よりも高い振動数における伝達加振力倍率の傾きが大きく(急勾配に)なるので、振動体としてのダクト10に生じる高い振動数の振動に対する高い防振効果を期待することができる。
【0064】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
【0065】
なお、第1の実施形態では、第1錘としての錘54に第1部材としての磁石48を固定した例を示したが、
図8の拡大図に示すように、第1錘としての錘74にコイルバネ72を介して第1部材としての磁石76を設けてもよい。
【0066】
図8の発電装置78では、円柱状の錘74が、錘42の上面に設置されたコイルバネ52に支持されており、装置本体20に対して上下方向に移動可能となっている。錘74には円柱状の凹部80が形成されており、この凹部80の底面82上にコイルバネ72が設置されている。コイルバネ72は、円柱状の磁石76を支持している。凹部80の内壁には第2部材としてのコイル84が固定されている。また、コイル84の下方には磁石76が配置されており、磁石76が上方へ移動したときに磁石76はコイル84内に挿入される。そして、コイル84と磁石76との相対移動により電力を発生させる。
【0067】
このような構成により、ダクト10に振動が発生したときに、この振動が装置本体20及びコイルバネ52、72を介して磁石76に伝達される。これにより、磁石76を、発電装置44の磁石48よりも大きく振動させることができる。よって、第1部材としての磁石76と第2部材としてのコイル84との相対移動量を大きくすることが可能なので、より大きな電力を発生させることができる。また、同じ発電量を得ようとした場合、磁石76とコイル84とによって構成される発電手段86を、発電装置44の発電手段46よりも小さくすることができる。例えば、発電装置78の磁石76を発電装置44の磁石48よりも小さくすることができる。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0069】
第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図9の拡大図に示すように、第2の実施形態の発電装置88は、第1の実施形態の発電装置44の構成要素から、装置本体20の下部に設けられているコイルバネ36を無くしたものである。
【0070】
発電装置88では、鋼棒18の上端部が、下板26の略中央に形成された貫通孔40を貫通し、ダブルナット30によって下板26に固定されている。このような構成によって、装置本体20に鋼棒18が連結され、装置本体20がダクト10を支持している。また、装置本体20には第2錘(
図2の錘42)が設けられていない。スプリングバネ52は、装置本体20の内部に設けられた薄く軽量の板部材90の上面に設置されている。
【0071】
そして、
図9に示すように、錘54が設けられている装置本体20によってダクト10が床スラブ12に支持される構成により、振動系S
4(不図示)が構築されている。
【0072】
次に、本発明の第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0073】
第2の実施形態の発電装置88では、
図9に示すように、ダクト10に振動が発生したときに、この振動が装置本体20を介して磁石48に伝達される。これにより磁石48が振動し、磁石48に対してコイル50が相対移動するので、電磁誘導の原理によってコイル50から電力が発生する。すなわち、振動する振動体としてのダクト10の振動エネルギーを発電手段46により電気エネルギーに変換して電力を発生させることができる。
【0074】
また、発電装置88は、以下に説明する効果を得ることができる。
図10は、
図7、11に示す振動系モデル60、92の数値シミュレーション結果を示したものである。
【0075】
図11に示す振動系モデル92は、振動系S
4のモデルである。すなわち、振動系モデル92は、振動系モデル60に、発電手段46、コイルバネ52及び錘54を設けた構成のモデルである。
図1、9で示した各部と対応する振動系モデル92の構成要素には、同符号を付している。
【0076】
図10の値66、94は、振動系S
3、S
4(振動系モデル60、92)における、ダクト10に加わる加振力の振動数に対する伝達加振力倍率(=床スラブ12へ伝達される加振力K
2/ダクト10に加わる加振力K
1)の値である。
図10のグラフの横軸がダクト10に加わる加振力の振動数を示し、縦軸が伝達加振力倍率を示している。また、値94は、ダクト10の質量に対する錘54の質量の割合のマス比を20%とした場合の値である。
【0077】
図10に示すように、振動系S
4(値94)において、伝達加振力倍率が1以下となる(床スラブ12へ伝達される加振力K
2の大きさがダクト10に加わる加振力K
1以下となる)振動数で振動体としてのダクト10が振動すれば、ダクト10から支持体としての床スラブ12へ伝達される加振力を低減する防振効果を得ることができる。
【0078】
また、振動体としてのダクト10に加わる加振力の振動数において、伝達加振力倍率が1以下となるように振動系S
4の伝達加振力倍率特性を設定すれば、ダクト10から支持体としての床スラブ12へ伝達される加振力を低減する防振効果を得ることができる。
【0079】
ここで、振動系S
4(値94)において、錘54、コイルバネ52及び発電手段46によって構成される振動系S
5の固有振動数付近の振動数でノッチ96が生じる。
図10では、振動系S
3の固有振動数を25Hzとし、振動系S
5の固有振動数を70Hzとしたときに、振動系S
5の固有振動数である70Hz付近の振動数でノッチ96が生じている例が示されている。そして、このノッチ96により、振動系S
3(値66)における加振力K
2(伝達加振力倍率)の大きさよりも振動系S
4(値94)における加振力K
2(伝達加振力倍率)の大きさが小さくなる領域(
図10の場合には、値P
3から値P
4の間の領域)が得られる。
【0080】
よって、発電装置88は、振動系S
3の振動系モデル60に錘54、コイルバネ52及び発電手段46を設け、発電手段46により電力を発生するものなので、振動系S
3(値66)における加振力K
2(伝達加振力倍率)の大きさよりも振動系S
4(値94)における加振力K
2(伝達加振力倍率)の大きさが小さくなる振動数(
図10の場合には、値P
3から値P
4の間の振動数)で振動体としてのダクト10が振動すれば、発電装置88によって、振動系S
3(値66)における加振力K
2の大きさと、振動系S
4(値94)における加振力K
2の大きさとの間に差を生じさせている分の振動エネルギーを電気エネルギーに変換し、電力を発生させることができる。
【0081】
また、振動体としてのダクト10に加わる加振力の振動数において、振動系S
3における加振力K
2の大きさよりも振動系S
4における加振力K
2の大きさが小さくなるように振動系S
4の伝達加振力倍率特性を設定すれば、発電装置88によって、振動系S
3における加振力K
2の大きさと、振動系S
4における加振力K
2の大きさとの間に差を生じさせている分の振動エネルギーを電気エネルギーに変換し、電力を発生させることができる。
【0082】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0083】
第3の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図12の立面図に示すように、第3の実施形態では、ダクト10が床スラブ12上に支持されている。ダクト10は、床スラブ12上に設置された架台98に略水平に載置されている。架台98は、略水平に配置されてダクト10を支持する受け部材100と、この受け部材100の左右端部から下方に向かって略鉛直に設けられた脚部材102とによって構成されている。受け部材100及び脚部材102は角パイプによって形成されており、脚部材102の下端部には鋼棒104の上端部が固定されている。
【0084】
図13の拡大図に示すように、鋼棒104の下端部には、第3の実施形態の発電装置106が設けられている。発電装置106は、装置本体108、第1錘としての錘54、及び発電手段46によって構成されている。
【0085】
装置本体108は、円筒部材110と、円筒部材110の上端部に設けられた円板状の上部材112と、円筒部材110の下端部に設けられた円板状の下部材114とによって構成された鋼製の筐体である。
【0086】
下部材114の下面には、第2錘としての鉄製の錘116が固定されている。錘116は厚みを有する板状の部材であり、装置本体108が上下方向に揺動するときに、錘116は装置本体108と一体となって上下方向に揺動する。なお、錘116は、必要とする質量が得られれば鉄以外の材料によって形成してもよい。
【0087】
錘116の下面には円板状のゴム部材118が固定されている。すなわち、装置本体108は、ゴム部材118を介して床スラブ12上に支持されている。このような構成によって、装置本体108は、床スラブ12に揺動可能に支持されている。
【0088】
上部材112の上面には円板状のゴム部材120が固定され、ゴム部材120の上面には鋼製の接続部材122が固定されている。接続部材122は、円板部材124と、円板部材124の略中央に略鉛直に設けられた円筒部材126とによって構成されている。そして、円筒部材126に形成された穴部128に鋼棒104の下端部が挿入され固定されている。このような構成によって、装置本体108は、ダクト10を揺動可能に支持している。また、装置本体108には、第1の実施形態の発電装置44と同様の構成の発電手段46が設けられている。
【0089】
これまでの説明からわかるように第3の実施形態では、
図12に示すように、第1の実施形態で説明した振動系S
1と上下反対の構成の振動系S
6が構築されている。すなわち、第1の実施形態の振動系S
1は、振動体(ダクト10)、弾性体(コイルバネ36)、装置本体20、弾性体(コイルバネ36)、支持体(床スラブ12)の順に下方から上方へ振動が伝達される構成であるのに対して、第3の実施形態の振動系S
6は、振動体(ダクト10)、弾性体(ゴム部材120)、装置本体108、弾性体(ゴム部材118)、支持体(床スラブ12)の順に上方から下方へ振動が伝達される構成となっている。また、第1、第3の実施形態では共に、発電手段46が装置本体(装置本体20、108)に設けられている。
【0090】
次に、本発明の第3の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0091】
図12、13に示すように、第3の実施形態の振動系S
6は、第1の実施形態の振動系S
1の構成を上下反対にしただけなので、第1の実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
すなわち、ダクト10に振動が発生したときに、この振動が装置本体108を介して磁石48に伝達されて磁石48が振動するので、コイル50から電力を発生させることができる。
【0092】
また、発電装置106は、支持体としての床スラブ12に振動体としてのダクト10を支持する支持部材であるので、支持体に支持される振動体に発電装置を設置することなく、この振動体から発生する振動を利用して発電ができる。
【0093】
また、錘54により磁石48の慣性力を大きくして、ダクト10の振動に対する磁石48の振動の増幅倍率の低下を低減することによって、振動体としてのダクト10に発生する振動エネルギーを効果的に電気エネルギーに変換することができ、大きな電力を発生させることができる。
【0094】
また、振動系S
6において、伝達加振力倍率が1以下となる(床スラブ12へ伝達される加振力の大きさがダクト10に加わる加振力以下となる)振動数で振動体としてのダクト10が振動すれば、ダクト10から支持体としての床スラブ12へ伝達される加振力を低減する防振効果を得ることができる。
【0095】
また、振動体としてのダクト10に加わる加振力の振動数において、伝達加振力倍率が1以下となるように振動系S
6の伝達加振力倍率特性を設定すれば、ダクト10から支持体としての床スラブ12へ伝達される加振力を低減する防振効果を得ることができる。
【0096】
また、振動系S
6の構成要素から第1錘54と磁石48とを無くした振動系S
7(不図示)における加振力(伝達加振力倍率)の大きさよりも振動系S
6における加振力(伝達加振力倍率)の大きさが小さくなる振動数で振動体としてのダクト10が振動すれば、発電装置106によって、振動系S
7における加振力の大きさと、振動系S
6における加振力の大きさとの間に差を生じさせている分の振動エネルギーを電気エネルギーに変換し、電力を発生させることができる。
【0097】
また、振動体としてのダクト10に加わる加振力の振動数において、振動系S
7における加振力の大きさよりも振動系S
6における加振力の大きさが小さくなるように振動系S
6の伝達加振力倍率特性を設定すれば、発電装置106によって、振動系S
7における加振力の大きさと、振動系S
6における加振力の大きさとの間に差を生じさせている分の振動エネルギーを電気エネルギーに変換し、発電効果を得ることができる。
【0098】
また、振動系S
6を構成する装置本体108から錘54と磁石48とを取り外したとき(振動系S
7)の2次固有振動数が、ダクト10に生じる振動の卓越振動数又はダクト10の固有振動数や、これらの振動数付近の振動数と等しくなれば、ダクト10の振動に対する磁石48の振動の増幅倍率が大きい振動数で効果的に電力を発生させることができる。
【0099】
また、振動体としてのダクト10に加わる加振力の振動数において、振動系S
6を構成する装置本体108から錘54と磁石48とを取り外したとき(振動系S
7)の2次固有振動数が、ダクト10に生じる振動の卓越振動数又はダクト10の固有振動数や、これらの振動数付近の振動数と等しくなるように振動系S
6の伝達加振力倍率特性を設定すれば、ダクト10の振動に対する磁石48の振動の増幅倍率が大きい振動数で効果的に電力を発生させることができる。
【0100】
また、発電手段46によって発電することにより、装置本体108に伝達された振動エネルギーが消費されるので、振動系S
7における2次固有振動数のピーク値が引き下げられ、振動系S
7の2次固有振動数及び2次固有振動数付近の振動数に対する防振効果(振動体としてのダクト10から支持体としての床スラブ12へ伝達される加振力を低減する効果)を向上させることができる。
【0101】
また、振動系S
7の2次固有振動数よりも高い振動数における伝達加振力倍率の傾きが大きく(急勾配に)なるので、振動体としてのダクト10に生じる高い振動数の振動に対する高い防振効果を期待することができる。
【0102】
以上、本発明の第1〜第3の実施形態について説明した。
【0103】
なお、第1、第2の実施形態では、鋼棒16と上板24とをコイルバネ36を介して連結した例を示したが、装置本体20を床スラブ12に揺動可能に支持するものであればよい。
また、第1の実施形態では、鋼棒18と下板26とをコイルバネ36を介して連結した例を示したが、ダクト10を装置本体20に揺動可能に支持するものであればよい。
例えば、コイルバネ36を、ポリウレタン、ポリプロピレン等の発泡材料や、シリコーンゲル等の高分子ゲルなどによって形成されたゴム部材としてもよい。
【0104】
また、第3の実施形態では、錘116の下面にゴム部材118を固定した例を示したが、装置本体108を床スラブ12に揺動可能に支持するものであればよい。
また、第3の実施形態では、鋼棒104の下端部と装置本体108の上面とをゴム部材120を介して連結した例を示したが、ダクト10を装置本体108に揺動可能に支持するものであればよい。
例えば、ゴム部材118、120を、ポリウレタン、ポリプロピレン等の発泡材料や、シリコーンゲル等の高分子ゲルなどによって形成されたゴム部材、又はコイルバネとしてもよい。
【0105】
また、第1〜第3の実施形態では、第1部材を磁石48、76とし、第2部材をコイル50、84とした発電手段46の例を示したが、第1部材をコイルとし、第2部材を磁石としてもよい。
【0106】
また、発電手段は、第1部材と第2部材との相対移動によって電力を発生するものであればよい。例えば、第2部材としてのコイル内に第1部材としての磁石を相対移動可能に配置してもよいし、第2部材としてのコイルから離した位置で、コイル面に対向するように第1部材としての磁石を配置し、コイル面に対する磁石の離間と接近とを繰り返すようにしてもよい。また、例えば、発電手段として、圧電効果に基づいて電力を発生させる方法、人工筋肉を動かすことによって生じる電力を利用する方法や、静電式の発電装置を用いてもよい。
【0107】
また、第1〜第3の実施形態では、第1部材としての磁石48が、第1錘としての錘54の上面に固定されている例を示したが、第1部材は第1錘に設けられていればよい。例えば、第1部材の上に第1錘を固定してもよいし、第1部材の内部に第1錘を配置してもよいし、第1錘の内部に第1部材を配置してもよい。これらも「第1錘に設けられた第1部材」を意味する。
【0108】
また、第1〜第3の実施形態で示した錘42、54、74、116は、装置本体20、108自体や磁石48、76によって必要な重量が得られる場合には設けなくてもよい。
【0109】
また、第1〜第3の実施形態では、振動体をダクト10とした例を示したが、振動体は、支持体に支持された状態で振動するものであればよい。例えば、水道配管、二重床構造の床ボード、吊り階段、吊り支持構造の連絡橋、吊り支持構造の天井ボード等を振動体とすることができる。
【0110】
図14には、発電装置44を構成する装置本体20を介して、支持体としての床スラブ12に振動体としての水道配管130が吊り支持されている例が示されている。
図15には、発電装置106を構成する装置本体108を介して、支持体としての床スラブ12上に振動体としての水道配管130が支持されている例が示されている。
図16には、発電装置106を構成する装置本体108を介して、二重床構造を構成する振動体としての床ボード132が支持体としての床スラブ12上に支持されている例が示されている。
図17には、発電装置44を構成する装置本体20を介して、支持体としての梁(不図示)に振動体としての階段134が吊り支持されている例が示されている。
【0111】
また、第1〜第3の実施形態では、支持体を床スラブ12とした例を示したが、支持体は振動体を支持できるものであればよい。例えば、支持体を水平部材としてもよい。ここで、水平部材とは、略水平に配置される部材を意味する。例えば、床スラブ、梁等の構造部材が水平部材として挙げられる。
【0112】
また、第1〜第3の実施形態では、発電手段46、86が、装置本体20、108の内部に設けられている例を示したが、装置本体の外部に発電手段が設けられていてもよいし、発電手段を構成する第1部材又は第2部材が装置本体の外部に設けられていてもよい。
【0113】
また、ゴムハンガー等の接続部材を介して、床スラブにダクトが吊り支持されているような既存の設備に対しては、この接続部材を第1〜第3の実施形態の発電装置44、78、88に交換するだけでよいので、改修工事においても容易に適用することができる。
【0114】
以上、本発明の第1〜第3の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第3の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。