【実施例】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を、HSP70の発現の誘導、それによるメラニン産生抑制等の作用を説明しながら、より詳細に説明していく。
【0023】
なお、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の実施の形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0024】
(実施例1:細胞培養法におけるHSP70の効果の確認)
<細胞培養法及びHSP過剰発現株の作成>
マウスメラノーマ由来のB16細胞(理研バイオリソースセンター)を、DMEM培地(10%の牛胎児血清、100U/mLのペニシリン、100U/mLのストレプトマイシン)で、5%炭酸ガス雰囲気下37℃で培養した。次に、リポフェクタミン(TM2000:Invitrogen社)を用いて、pcDNA3.1−human HSP70、又はpcDNA3.1をB16細胞に導入した後、200μg/mLのG418(Sigma社)を用いて、G418耐性クローンであるHSP70過剰発現株を選択した。また、HSP70の発現は、イムノブロット法により調べた。
【0025】
<薬剤添加法、及び熱ショック処理法>
メラニン発現を誘導する作用のあるIBMXをDMSOに溶解した。次に、IBMXをDMEM培地に100μmol/Lで希釈した後、培地交換を行い、5%炭酸ガス雰囲気下37℃で各時間、B16細胞を培養した。熱ショック処理は、5%炭酸ガス雰囲気下42℃にて1時間、B16細胞を培養することにより行った。さらに5%炭酸ガス雰囲気下37℃で6時間、B16細胞を培養した後、B16細胞を実験に用いた。
【0026】
<イムノブロット法>
熱ショックを1時間行い、更に6時間培養した後、又はIBMX 100μmol/L存在下、48時間培養した後、細胞を遠心して回収した。次に、回収物をPBS(リン酸緩衝生理食塩水:137mmol/L NaCl, 2.7mmol/L KCl, 1.5mmol/L KH
2PO
4, 4.3mmol/L NaHPO
4)で洗った後、RIPA buffer [50mmol/L Tris−HCl (pH 7.2), 150mmol/L NaCl, 1% NP−40, 1% Sodium, deoxycolate, 0.05% SDS]に溶解し、遠心後の上清を全細胞抽出液として実験に用いた。
【0027】
各サンプルのタンパク質量を、Bio−Rad protein assay kit (bradford法:Bio Rad社)により求め、同量のタンパク質量に揃えた後、実験に使用した。サンプルはポリアクリルアミドを用いてSDS−PAGEを行い、PVDF膜にトランスファーした。その後、1次抗体 (against HSP70、HSP25、HSP47、HSP90 (Stressgen社)、 1:1000 dilution、 against actin、Tyrosinase (Santa Cruz Biothechnology社)、 1:1000 dilution)、及び2次抗体で免疫ブロットし、SuperSignal WestDura(化学発光法:Pierce社)により目的のバンドをLAS−3000 miniを用いて検出した。
【0028】
<メラニン定量法>
IBMX 100μmol/L存在下、72時間培養した後、細胞を遠心して回収しPBSで洗った後、1N NaOHに溶解し、100℃/30分加熱した。遠心後の上清を全細胞抽出液として実験に用いた。各サンプルのタンパク質量を、Bio−Rad protein assay kitにより求め、同量のタンパク質量に揃えた後、490nmの吸光度を、プレートリーダー(Fluostar Galaxy社)により測定した。
【0029】
<Real−time RT−PCR法>
IBMX 100μmol/L存在下、48時間培養した後、RNeasy kit(Qiagen社)を用いて細胞から全RNAを抽出した。
RNA 2.5μgを、first−strand cDNA synthesis kit(TAKARA Bio社)を用いて逆転写し、cDNAを合成した。合成したcDNAは、iQ SYBR GREEN Supermix(Bio Rad社)を用いてreal−time RT−PCRに利用し、Opticon Monitor Softwareを用いて解析した。PCR反応は、50℃で2分、90℃で10分の後に、95℃で30秒、63℃で60秒のサイクルを、45サイクルという条件で行った。特異性は、反応生成物をテンプレート(−)及び逆転写(−)のコントロールと一緒にアガロースゲル電気泳動を行って確認した。それぞれの反応において、GAPDH遺伝子を内部標準として用いた。
【0030】
プライマーは、Primer3 Web site(http://frodo.wi.mit.edu/cgi−bin/primer3/primer3_ www.cgi)により設計した。プライマーの配列を以下に記載する。
【0031】
Tyrosinase 5'-ctcctggcagatcatttgt-3' 5'-ggttttggctttgtcatggt-3'
GAPDH 5'-aactttggcattgtggaagg-3' 5'-acacattgggggtaggaaca-'
【0032】
<統計学的的解析>
以下の実施例を含め、すべての値は、平均値±標準偏差[standard deviation (SD)]で示している。有意差検定は、Tukey's testを用い
た。pの値が0.05未満になったとき有意な差があると判定した。
【0033】
<結果>
その結果を、
図1乃至
図7に示す。
図1は、B16細胞の熱ショックによるHSP70の発現誘導を示す結果であり、
図2は、IBMXによるメラニン産生誘導に対する熱ショックの影響を示す結果である。
図1及び
図2に示す結果から判明するように、熱ショックによりHSP70が発現誘導されており、IBMXによるメラニンの産生誘導の抑制にHSP70が関与していることが示された。
【0034】
図3は、熱ショックによる種々のHSPの発現誘導を示す結果である。熱ショックにより、HSP70だけでなく、HSP25等も発現誘導されていることが判明した。
【0035】
図4は、HSP70過剰発現株におけるHSP70の誘導を示す結果である。
図5は、HSP70過剰発現株におけるIBMXによるメラニン誘導に対するHSP70の影響を示す結果である。
以上の
図1〜
図5に示す結果から、HSP70過剰発現株においても同様にIBMXによるメラニンの発現誘導が抑制されることが見られ、特に
図4及び
図5の結果からは、HSP70が単独でも、IBMXによるメラニンの発現誘導を抑制することに関与していることが示された。
【0036】
図6乃至
図7は、HSP70過剰発現株において、IBMXによるチロシナーゼのタンパク質の発現誘導、及びチロシナーゼmRNAの発現誘導が抑制されたことを示す。
図6は、チロシナーゼのタンパク質の発現結果を、
図7は、チロシナーゼのmRNAの発現結果を示すものである。
図中に示す結果より、IBMXによるチロシナーゼの発現誘導をHSP70が抑制することが示された。すなわち、HSP70は、チロシナーゼの発現を抑制することで、メラニンの産生を抑制していることが示された。
【0037】
以上の実施例1の結果から、HSP70の発現誘導が、メラニンの産生を抑制することが確認された。そこで、アルニカ、サルビア、及びマジョラムがHSP70の合成を誘導するか否か、以下の実施例2以降で検討した。
【0038】
(実施例2:アルニカ抽出物、サルビア抽出物、及びマジョラム抽出物の調製)
HSP70発現誘導剤を構成するアルニカ抽出物は、以下のように調整した。まず、生のアルニカ(丸善製薬)を粉砕した後、凍結乾燥し、ミキサーでさらに粉砕した。なお、乾燥したアルニカを用意した場合は、アルニカを水に戻した後、アルニカをミキサーにより粉砕した。その後、粉砕したアルニカを凍結乾燥し、ミキサーでさらに粉砕した。次に、凍結乾燥した粉砕物にエタノールを加え、3時間抽出し、濾過して濾液を得た。その後、濾液を乾燥状態になるまで濃縮し、アルニカ抽出物を得た。サルビア抽出物及びマジョラム抽出物も、同様の方法により得た。
【0039】
(実施例3:アルニカ抽出物によるHSP70発現誘導の確認)
培養液を満たした直径100mmの培養皿に、4×10
5個のメラノーマ細胞B16(理研バイオリソースセンター)を播種し、5%炭酸ガス雰囲気下に37℃にて24時間培養した。この培養液に、実施例2で得たアルニカ抽出物を、濃度2.5×10
-2mg/mL、5.0×10
-2mg/mL、7.5×10
-2mg/mL、又は10.0×10
-2mg/mLで添加し、さらに12時間又は24時間培養した。なお、コントロールとして、アルニカ抽出物を添加しなかった細胞も、12時間又は24時間培養した。
【0040】
次に、細胞培養液をSDS−PAGE電気泳動にかけた後、抗HSP70抗体を用いたウエスタン・ブロット法によりHSP70の発現量を測定した。その結果、
図8に示すように、10.0×10
-2mg/mLのアルニカ抽出物を添加した細胞培養液からは、HSP70のバンドが明確に確認された。12時間培養した場合と、24時間培養した場合とで、有意な差は認められなかった。
【0041】
これに対し、アルニカ抽出物を添加しなかった細胞培養液からは、HSP70のバンドは確認されなかった。なお、アルニカ抽出物の濃度が7.5×10
-2mg/mL以下の場合も、HSP70のバンドは確認されなかった。したがって、適切な濃度のアルニカ抽出物は、HSP70の誘導発現作用を有することが示された。
【0042】
(実施例4:アルニカ抽出物によるHSP70発現誘導の確認)
培養液を満たした直径100mmの培養皿に、4×10
5個又は24×10
5個の表皮細胞PAM212を播種し、5%炭酸ガス雰囲気下に37℃にて24時間培養した。この培養液に、実施例2で得たアルニカ抽出物を、濃度5.0×10
-2mg/mL、7.5×10
-2mg/mL、10.0×10
-2mg/mL、又は20.0×10
-2mg/mLで添加し、さらに24時間培養した。なお、コントロールとして、アルニカ抽出物を添加しなかった細胞も、24時間培養した。
【0043】
次に、細胞培養液をSDS−PAGE電気泳動にかけた後、抗HSP70抗体を用いたウエスタン・ブロット法によりHSP70の発現量を測定した。その結果、4×10
5個の表皮細胞PAM212を播種した場合は、
図9に示すように、7.5×10
-2mg/mLのアルニカ抽出物を添加した細胞培養液から、HSP70のバンドが明確に確認された。また、5.0×10
-2mg/mL及び10.0×10
-2mg/mLのアルニカ抽出物を添加した細胞培養液からも、HSP70のバンドが確認された。
【0044】
24×10
5個の表皮細胞PAM212を播種した場合は、20.0×10
-2mg/mLのアルニカ抽出物を添加した細胞培養液から、HSP70のバンドが明確に確認された。また、10.0×10
-2mg/mLのアルニカ抽出物を添加した細胞培養液からも、HSP70のバンドが確認された。
【0045】
これに対し、アルニカ抽出物を添加しなかった細胞培養液からは、HSP70のバンドは確認されなかった。なお、24×10
5個の表皮細胞PAM212を播種した場合、アルニカ抽出物の濃度が7.5×10
-2mg/mL以下であると、HSP70のバンドは確認されなかった。したがって、適切な濃度のアルニカ抽出物は、HSP70の誘導発現作用を有することが示された。
【0046】
(実施例5:サルビア抽出物によるHSP70発現誘導の確認)
培養液を満たした直径100mmの培養皿に、4×10
5個のメラノーマ細胞B16を播種し、5%炭酸ガス雰囲気下に37℃にて24時間培養した。この培養液に、実施例2で得たサルビア抽出物を、濃度50×10
-2mg/mL、70×10
-2mg/mL、80×10
-2mg/mL、又は100×10
-2mg/mLで添加し、さらに24時間培養した。なお、コントロールとして、サルビア抽出物を添加しなかった細胞も、24時間培養した。
【0047】
次に、細胞培養液をSDS−PAGE電気泳動にかけた後、抗HSP70抗体を用いたウエスタン・ブロット法によりHSP70の発現量を測定した。その結果、
図10に示すように、80×10
-2mg/mL以上のサルビア抽出物を添加した細胞培養液から、HSP70のバンドが明確に確認された。
【0048】
これに対し、サルビア抽出物を添加しなかった細胞培養液からは、HSP70のバンドは確認されなかった。したがって、適切な濃度のサルビア抽出物は、HSP70の誘導発現作用を有することが示された。
【0049】
(実施例6:マジョラム抽出物によるHSP70発現誘導の確認)
培養液を満たした直径100mmの培養皿に、4×10
5個のメラノーマ細胞B16を播種し、5%炭酸ガス雰囲気下に37℃にて24時間培養した。この培養液に、実施例2で得たマジョラム抽出物を、濃度40×10
-2mg/mL、50×10
-2mg/mL、60×10
-2mg/mL、又は70×10
-2mg/mLで添加し、さらに24時間培養した。なお、コントロールとして、マジョラム抽出物を添加しなかった細胞も、24時間培養した。
【0050】
次に、細胞培養液をSDS−PAGE電気泳動にかけた後、抗HSP70抗体を用いたウエスタン・ブロット法によりHSP70の発現量を測定した。その結果、
図11に示すように、60×10
-2mg/mL以上のマジョラム抽出物を添加した細胞培養液から、HSP70のバンドが明確に確認された。
【0051】
これに対し、マジョラム抽出物を添加しなかった細胞培養液からは、HSP70のバンドは確認されなかった。したがって、適切な濃度のマジョラム抽出物は、HSP70の誘導発現作用を有することが示された。
【0052】
(実施例7:アルニカ抽出物によるチロシナーゼ活性の抑制)
培養液を満たした直径100mmの培養皿に、4×10
5個のメラノーマ細胞B16を播種し、5%炭酸ガス雰囲気下に37℃にて24時間培養した。次に、培養液に、実施例2で得たアルニカ抽出物を、2.5×10
-2mg/mL、5.0×10
-2mg/mL、7.5×10
-2mg/mL、又は10.0×10
-2mg/mLの濃度で添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、アルニカ抽出物を添加しなかった細胞も、24時間培養した。
【0053】
さらに、メラニン発現を誘導する作用のあるIBMXを、濃度が100μmol/Lとなるよう培養液に添加し、48時間培養した。なお、コントロールとして、IBMXを添加しなかった細胞も、48時間培養した。細胞を回収し、0.1%Triton-X100(Sigma社)含有PBS100μLでサスペンドした後、30分間超音波処理した。基質となるL−DOPA200μLを96well plateに添加し、あらかじめ37度に保温しておいた。サンプルのタンパク質量をBradford法により求め、0.1%Triton-X100含有PBSでタンパク濃度100μg/50μLに調整した後、保温しておいたL−DOPAに50μL添加し、37度で1時間定温放置しながら490nmにおける吸光度の変化を測定した。ここで、
図12に示すように、アルニカ抽出物及びIBMXを添加しなかった場合のチロシナーゼ活性を100%とすると、アルニカ抽出物を添加せず、IBMXを100μmol/L添加した場合のチロシナーゼ活性は約380%近くまで上昇した。しかし、IBMXに加えてアルニカ抽出物を添加した場合のチロシナーゼ活性は、アルニカ抽出物を添加しなかった場合と比較して、顕著に減少した。よって、アルニカ抽出物にチロシナーゼ活性の抑制能があることが示された。
【0054】
(実施例8:アルニカ抽出物によるメラニン発現の抑制)
培養液を満たした直径100mmの培養皿に、4×10
5個のメラノーマ細胞B16を播種し、5%炭酸ガス雰囲気下に37℃にて24時間培養した。次に、培養液に、実施例2で得たアルニカ抽出物を、2.5×10
-2mg/mL、5.0×10
-2mg/mL、7.5×10
-2mg/mL、又は10.0×10
-2mg/mLの濃度で添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、アルニカ抽出物を添加しなかった細胞も、24時間培養した。
【0055】
また、アルニカ抽出物を添加して24時間培養した後、さらに、メラニン発現を誘導する作用のあるIBMXを、濃度が100μmol/Lとなるよう培養液に添加し、72時間培養した。なお、コントロールとして、IBMXを添加しなかった細胞も、72時間培養した。
【0056】
その後、実施例1と同様の方法により、メラニンの発現量を測定した。ここで、アルニカ抽出物及びIBMXを添加しなかった場合のメラニン量を100%とすると、
図13に示すように、IBMXを添加せず、アルニカ抽出物を添加した場合のメラニン量は、アルニカ抽出物及びIBMXの両方を添加しなかった場合と比較して、顕著に減少した。
【0057】
また、アルニカ抽出物を加えず、IBMXを100μmol/L添加した場合のメラニンの発現量は約170%近くまで上昇した。しかし、IBMXに加えてアルニカ抽出物を添加した場合のメラニン量は、アルニカ抽出物を添加しなかった場合と比較して、顕著に減少した。よって、アルニカ抽出物に、メラニン発現の抑制能があることが示された。
【0058】
(実施例9:サルビア抽出物によるメラニン発現の抑制)
培養液を満たした直径100mmの培養皿に、4×10
5個のメラノーマ細胞B16を播種し、5%炭酸ガス雰囲気下に37℃にて24時間培養した。次に、培養液に、実施例2で得たサルビア抽出物を、25×10
-2mg/mL、50×10
-2mg/mL、75×10
-2mg/mL、又は100×10
-2mg/mLの濃度で添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、サルビア抽出物を添加しなかった細胞も、24時間培養した。
【0059】
また、サルビア抽出物を添加して24時間培養した後、さらに、メラニン発現を誘導する作用のあるIBMXを、濃度が100μmol/Lとなるよう培養液に添加し、72時間培養した。なお、コントロールとして、IBMXを添加しなかった細胞も、72時間培養した。
【0060】
その後、実施例1と同様の方法によりに、メラニンの発現量を測定した。ここで、サルビア抽出物及びIBMXを添加しなかった場合のメラニン量を100%とすると、
図14に示すように、IBMXを添加せず、サルビア抽出物を添加した場合のメラニンの発現量は、サルビア抽出物及びIBMXの両方を添加しなかった場合と比較して、顕著に減少した。
【0061】
また、サルビア抽出物を加えず、IBMXを100μmol/L添加した場合のメラニンの発現量は約170%近くまで上昇した。しかし、IBMXに加えてサルビア抽出物を添加した場合のメラニンの発現量は、サルビア抽出物を添加しなかった場合と比較して、顕著に減少した。よって、サルビア抽出物に、メラニン発現の抑制能があることが示された。
【0062】
(実施例10:マジョラム抽出物によるメラニン発現の抑制)
培養液を満たした直径100mmの培養皿に、4×10
5個のメラノーマ細胞B16を播種し、5%炭酸ガス雰囲気下に37℃にて24時間培養した。次に、培養液に、実施例2で得たマジョラム抽出物を、10×10
-2mg/mL、20×10
-2mg/mL、30×10
-2mg/mL、又は50×10
-2mg/mLの濃度で添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、マジョラム抽出物を添加しなかった細胞も、24時間培養した。
【0063】
また、マジョラム抽出物を添加して24時間培養した後、さらに、メラニン発現を誘導する作用のあるIBMXを、濃度が100μmol/Lとなるよう培養液に添加し、72時間培養した。なお、コントロールとして、IBMXを添加しなかった細胞も、72時間培養した。
【0064】
その後、実施例1と同様の方法によりに、メラニンの発現量を測定した。ここで、マジョラム抽出物及びIBMXを添加しなかった場合のメラニンの発現量を100%とすると、
図15に示すように、IBMXを添加せず、マジョラム抽出物を添加した場合のメラニンの発現量は、マジョラム抽出物及びIBMXの両方を添加しなかった場合と比較して、顕著に減少した。
【0065】
また、マジョラム抽出物を加えず、IBMXを100μmol/L添加した場合のメラニンの発現量は約175%近くまで上昇した。しかし、IBMXに加えてマジョラム抽出物を添加した場合のメラニンの発現量は、マジョラム抽出物を添加しなかった場合と比較して、顕著に減少した。よって、マジョラム抽出物に、メラニン発現の抑制能があることが示された。
【0066】
(実施例11:アルニカ抽出物によるチロシナーゼmRNA発現の抑制)
培養液を満たした直径100mmの培養皿に、4×10
5個のメラノーマ細胞B16を播種し、5%炭酸ガス雰囲気下に37℃にて24時間培養した。次に、培養液に、実施例2で得たアルニカ抽出物を、2.5×10
-2mg/mL、5.0×10
-2mg/mL、7.5×10
-2mg/mL、又は10.0×10
-2mg/mLの濃度で添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、アルニカ抽出物を添加しなかった細胞も、24時間培養した。
【0067】
アルニカ抽出物を添加して24時間培養した後、さらに、メラニン発現を誘導する作用のあるIBMXを、濃度が100μmol/Lとなるよう培養液に添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、IBMXを添加しなかった細胞も、24時間培養した。その後、mRNAを抽出し、アルニカ抽出物及びIBMXを添加しなかった場合のチロシナーゼmRNAの相対発現量を1とすると、
図16に示すように、IBMXを添加せず、7.5×10
-2mg/mL及び10.0×10
-2mg/mLのアルニカ抽出物を添加した場合のチロシナーゼmRNAの相対発現量は、アルニカ抽出物及びIBMXを添加しなかった場合と比較して、わずかに低下した。
【0068】
また、アルニカ抽出物を加えず、IBMXを100μmol/L添加した場合のチロシナーゼmRNAの相対発現量は約2.0近くまで上昇した。しかし、IBMXに加えてアルニカ抽出物を添加した場合のチロシナーゼmRNAの相対発現量は、アルニカ抽出物を添加しなかった場合と比較して、顕著に減少した。
【0069】
(実施例12:アルニカ抽出物によるチロシナーゼ発現の抑制)
培養液を満たした直径100mmの培養皿に、4×10
5個のメラノーマ細胞B16を播種し、5%炭酸ガス雰囲気下に37℃にて24時間培養した。この培養液に、実施例2で得たアルニカ抽出物を、濃度1.0×10
-2mg/mL、2.5×10
-2mg/mL、5.0×10
-2mg/mL、又は10.0×10
-2mg/mLで添加し、さらに24時間培養した。なお、コントロールとして、アルニカ抽出物を添加しなかった細胞も、24時間培養した。
【0070】
次に、メラニン発現を誘導する作用のあるIBMXを、濃度が100μmol/Lとなるよう培養液に添加し、48時間培養した。なお、コントロールとして、IBMXを添加しなかった細胞も、48時間培養した。その後、細胞培養液をSDS−PAGE電気泳動にかけた後、抗チロシナーゼ抗体を用いたウエスタン・ブロット法により成熟型チロシナーゼ及び未成熟型チロシナーゼの発現量を測定した。その結果、
図17に示すように、アルニカ抽出物の未成熟型チロシナーゼの発現量への影響は確認されなかったものの、添加したアルニカ抽出物の濃度が上昇するにつれて、成熟型チロシナーゼの発現量が低下したことが示された。よって、アルニカ抽出物は、成熟型チロシナーゼの発現を抑制することが示された。
【0071】
(実施例13:サルビア抽出物によるチロシナーゼ発現の抑制)
培養液を満たした直径100mmの培養皿に、4×10
5個のメラノーマ細胞B16を播種し、5%炭酸ガス雰囲気下に37℃にて24時間培養した。この培養液に、実施例2で得たサルビア抽出物を、濃度25×10
-2mg/mL、50×10
-2mg/mL、75×10
-2mg/mL、又は100×10
-2mg/mLで添加し、さらに24時間培養した。なお、コントロールとして、サルビア抽出物を添加しなかった細胞も、24時間培養した。
【0072】
次に、メラニン発現を誘導する作用のあるIBMXを、濃度が100μmol/Lとなるよう培養液に添加し、48時間培養した。なお、コントロールとして、IBMXを添加しなかった細胞も、48時間培養した。その後、細胞培養液をSDS−PAGE電気泳動にかけた後、抗チロシナーゼ抗体を用いたウエスタン・ブロット法により成熟型チロシナーゼ及び未成熟型チロシナーゼの発現量を測定した。その結果、
図18に示すように、サルビア抽出物の未成熟型チロシナーゼの発現量への影響は確認されなかったものの、添加したサルビア抽出物の濃度が上昇するにつれて、成熟型チロシナーゼの発現量が低下したことが示された。よって、サルビア抽出物は、成熟型チロシナーゼの発現を抑制することが示された。
【0073】
(実施例14:マジョラム抽出物によるチロシナーゼ発現の抑制)
培養液を満たした直径100mmの培養皿に、4×10
5個のメラノーマ細胞B16を播種し、5%炭酸ガス雰囲気下に37℃にて24時間培養した。この培養液に、実施例2で得たマジョラム抽出物を、濃度10×10
-2mg/mL、20×10
-2mg/mL、30×10
-2mg/mL、又は50×10
-2mg/mLで添加し、さらに24時間培養した。なお、コントロールとして、マジョラム抽出物を添加しなかった細胞も、24時間培養した。
【0074】
次に、メラニン発現を誘導する作用のあるIBMXを、濃度が100μmol/Lとなるよう培養液に添加し、48時間培養した。なお、コントロールとして、IBMXを添加しなかった細胞も、48時間培養した。その後、細胞培養液をSDS−PAGE電気泳動にかけた後、抗チロシナーゼ抗体を用いたウエスタン・ブロット法により成熟型チロシナーゼ及び未成熟型チロシナーゼの発現量を測定した。その結果、
図19に示すように、マジョラム抽出物の未成熟型チロシナーゼの発現量への影響は確認されなかったものの、添加したマジョラム抽出物の濃度が上昇するにつれて、成熟型チロシナーゼの発現量が低下したことが示された。よって、マジョラム抽出物は、成熟型チロシナーゼの発現を抑制することが示された。
【0075】
(実施例15:皮膚外用剤)
以下の処方により、皮膚外用剤(クリーム剤)を得た。
スクワラン 20重量%
ミツロウ 5
精製ホホバ油 5
グリセリンモノステアレート 2
ソルビタンモノステアレート 2
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2
グリセリン 5
アルニカ抽出物 1
精製水 100とする残部
【0076】
(実施例16:美白化粧料)
(1)ローション
以下の処方により、ローションを得た。
ソルビット 2重量%
1,3−ブチレングリコール 2
ポリエチレングリコール1000 1
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(25EO) 2
エタノール 10
テプレノン 1
防腐剤 適量
精製水 100とする残部
【0077】
(2)乳液
以下の処方により、乳液を得た。
スクワラン 1重量%
グリセリン 1
ステアリルアルコール 0.3
ソルビタンモノステアレート 1.5
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2
1,3−ブチレングリコール 5
アルニカ抽出物 1
精製水 100とする残部