(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正部が、前記発光体の雰囲気温度の測定値と、前記関係を取得した時の前記発光体の雰囲気温度と、の差による、前記蛍光体の雰囲気温度の算出誤差を補正する、請求項3に記載の蛍光式温度センサ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る蛍光式温度センサは、
図1に示すように、発光体2と、発光体2の雰囲気温度を測定する温度測定器3と、発光体2から励起光を照射される蛍光体1と、蛍光体1の蛍光強度の減衰特性を測定する蛍光測定器4と、蛍光強度の減衰特性に基づき、蛍光体1の雰囲気温度を算出する温度算出部302と、を備える。さらに、蛍光式温度センサは、発光体2の雰囲気温度の測定値に基づき、蛍光体1の算出される雰囲気温度を補正する補正部303を備える。
【0011】
発光体2は、
図2に示すように、例えば円筒状のパッケージ21と、パッケージ21の開口を覆う光学窓22と、パッケージ21の内部に配置された発光素子23と、を備える。パッケージ21には、メタルCANパッケージ及び樹脂成型パッケージ等が使用可能である。光学窓22には、石英ガラス等からなる透明板及びレンズ等が使用可能である。発光素子23には、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)及び半導体レーザ(LD:Laser Diode)等の半導体発光素子が使用可能である。より具体的には、発光素子23には、AlGaInPをチップ材料とする四元素系発光素子、及びInGaNをチップ材料とする三元素系発光素子が使用可能である。例えば、発光素子23には、
図1に示す通電制御部501が接続される。通電制御部501は、発光素子23を点滅するように通電(ON/OFF)を制御し、発光素子23から蛍光体1の励起光を断続的に放射させる。
【0012】
発光体2に対向して、ダイクロイックミラー11が配置されている。ダイクロイックミラー11は、励起光を反射して、励起光の進行方向を直角に折り曲げる。ダイクロイックミラー11で反射された励起光は、レンズ12及び光導波路15を経て、蛍光体1に到達する。なお、光導波路15には、光ファイバ等が使用可能である。
【0013】
蛍光体1は、蛍光物質、又は遷移金属がドープされた蛍光物質からなる。遷移金属がドープされた蛍光物質としては、ルビー等のCr
3+系材料、Mn
2+系材料、Mn
4+系材料、及びFe
2+系材料が使用可能である。あるいは、蛍光体1は、ユウロピウム(Eu)がドープされたアルミン酸ストロンチウム(SrAl
2O
4系)からなる。蛍光体1は、熱伝導性の保護容器16に格納されていてもよい。
【0014】
発光体2から励起光を照射された蛍光体1は、蛍光を発する。
図3に示すように、蛍光強度は、発光体2の発光強度に依存して、時間経過とともに一定の値まで増加する。また、発光体2を消灯すると、蛍光強度は時間経過とともに減衰する。励起光が消光した瞬間と比較して蛍光強度が1/eに低下するまでに要する時間は、蛍光体1の蛍光寿命τとして定義される。なお、eは自然対数である。
【0015】
なお、
図1に示す蛍光測定器4等には、応答遅れ(励起光等の入力光が無くなっても、すぐには出力が無くならない現象)が生じ得る。したがって、励起光を発する発光体2を消灯した直後から、予め測定した(センサ全体の)応答遅れの時間よりも長い時間が経過した後に測定された蛍光強度と比較して1/eの蛍光強度に低下するまでに要する時間を、蛍光体1の蛍光寿命τとして定義してもよい。
【0016】
図4は、蛍光体1の雰囲気温度を複数に振った場合の、励起光消光後の蛍光体1の蛍光強度の例を示している。ここで、第1の温度条件下で、蛍光体1の雰囲気温度は最も低く、第2乃至第5の温度条件下で、蛍光体1の雰囲気温度は順次高くなる。
図4に示すように、蛍光体1の蛍光寿命τは、蛍光体1の雰囲気温度が上昇するとともに、短くなる傾向にある。したがって、
図5に示すように、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性と、蛍光体1の雰囲気温度T
Fと、の関係を予め取得しておけば、蛍光の減衰特性を測定することにより、
図1に示す蛍光体1の雰囲気温度T
Fを算出することが可能となる。なお、蛍光体1の雰囲気温度T
Fとは、例えば、蛍光体1又は蛍光体1を覆う保護容器16に接する気体の温度である。
【0017】
蛍光体1が発した蛍光は、光導波路15及びレンズ12を経て、ダイクロイックミラー11に到達する。さらに、蛍光は、ダイクロイックミラー11を透過して、蛍光測定器4に到達する。蛍光測定器4は、例えば、フォトダイオード等の受光素子を含む。発光体2、ダイクロイックミラー11、レンズ12、及び蛍光測定器4は、例えば筺体10の内部に配置されている。また、筺体10と光導波路15は、例えば光導波路15を固定するコネクタ14及びコネクタ14を保持するアダプタ13を介して固定されている。
【0018】
発光体2の雰囲気温度T
Eを測定する温度測定器3は、例えば筺体10上に配置されている。温度測定器3には、例えば、サーミスタ及び白金温度センサ等が使用可能である。温度測定器3が測定する発光体2の雰囲気温度T
Eとは、例えば、発光体2に接する気体の温度である。温度測定器3は、例えば、発光体2の近傍に配置されるが、発光体2に接する気体の温度と等価な温度が測れる範囲内において、温度測定器3の配置は任意である。
【0019】
蛍光測定器4及び温度測定器3には、中央演算処理装置(CPU)300が接続されている。蛍光測定器4は、増幅器等を介してCPU300に接続されていてもよい。CPU300には、関係記憶部401を含むデータ記憶装置400が接続されている。関係記憶部401は、
図5に示すような、発光体2の所定の雰囲気温度T
E_Oの下で予め取得された、蛍光体1の蛍光寿命τ等の減衰特性と、蛍光体1の雰囲気温度T
Fと、の関係を保存する。発光体2の所定の雰囲気温度T
E_Oは、例えば25℃である。なお、関係記憶部401は、蛍光体1の減衰特性及び雰囲気温度の関係を、式として保存していてもよいし、表として保存していてもよい。
【0020】
図1に示すCPU300は、減衰特性測定部301を含む。減衰特性測定部301は、蛍光測定器4が測定した蛍光体1の蛍光強度の時間変化を観測し、蛍光体1が発した蛍光の蛍光寿命τ等の減衰特性の測定値を得る。温度算出部302は、CPU300に含まれている。温度算出部302は、蛍光体1の減衰特性の測定値と、関係記憶部401に保存されている減衰特性及び雰囲気温度の関係と、に基づいて、蛍光体1の雰囲気温度T
F_Cを算出する。
【0021】
ここで、蛍光体1の蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性は、蛍光体1の雰囲気温度T
Fのみならず、発光体2の雰囲気温度T
Eの影響を受ける場合もある。
図6は、四元素系発光素子を含む発光体2の雰囲気温度T
Eを変化させた場合の、発光体2が発する励起光のスペクトルを示すグラフである。
図7に示すように、励起光のピーク波長は、発光体2の雰囲気温度T
Eが上昇するほど、長くなる傾向にある。この場合、
図1に示す蛍光体1の雰囲気温度T
Fが一定であっても、蛍光体1の蛍光の減衰特性は、励起光のピーク波長の変動に依存して変動する。そのため、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時の発光体2の雰囲気温度T
E_Oと、蛍光体1の雰囲気温度を測定する時の発光体2の雰囲気温度T
Eと、が異なると、温度算出部302が算出する蛍光体1の雰囲気温度T
F_Cに誤差が生じうる。
【0022】
図8は、蛍光体1の雰囲気温度T
Fを30℃に保ち、発光体2の雰囲気温度T
Eを変動させた場合に、温度算出部302が算出する蛍光体1の雰囲気温度T
F_Cの例を示すグラフである。発光体2の雰囲気温度T
Eが、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時と同じ25℃である場合、温度算出部302は、蛍光体1の雰囲気温度T
F_Cを正確に算出している。しかし、発光体2の雰囲気温度T
Eが、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時と異なる50℃に上昇すると、温度算出部302が算出する蛍光体1の雰囲気温度T
F_Cは、実際の蛍光体1の雰囲気温度T
Fより低くなっている。
【0023】
これに対し、第1の実施の形態に係る蛍光式温度センサは、
図1に示すデータ記憶装置400に含まれる補正情報記憶部402をさらに備える。ここで、温度測定器3で測定された発光体2の雰囲気温度の測定値T
Eと、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時の発光体2の雰囲気温度T
E_Oと、の差は、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時からの発光体2の雰囲気温度の変化量ΔT
Eとして、下記(1)式で与えられる。また、温度算出部302が算出する蛍光体1の雰囲気温度T
F_Cと、蛍光体1の実際の雰囲気温度T
Fと、の差は、蛍光体1の雰囲気温度の算出誤差ΔT
Fとして、下記(2)式で与えられる。
ΔT
E = T
E - T
E_O ・・・(1)
ΔT
F = T
F_C - T
F ・・・(2)
【0024】
補正情報記憶部402は、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時からの発光体2の雰囲気温度の変化量ΔT
Eに対する、温度算出部302が算出する蛍光体1の雰囲気温度の誤差ΔT
Fの比である、下記(3)式で与えられる補正係数C
1を保存する。
C
1 = (T
F_C - T
F) / (T
E - T
E_O)
= ΔT
F / ΔT
E ・・・(3)
【0025】
CPU300に含まれる補正部303は、温度測定器3から、発光体2の雰囲気温度T
Eの測定値を受信する。なお、発光体2は発光中に発熱するため、補正部303、発光体2の非発光タイミングを判断して、温度測定器3から、発光体2の雰囲気温度T
Eの測定値を受信してもよい。また、補正部303は、発光体2が消灯するごとに温度測定器3から発光体2の雰囲気温度T
Eの測定値を受信してもよいし、発光体2の周期的な発光タイミングにおいて任意の間隔で温度測定器3から発光体2の雰囲気温度T
Eの測定値を受信してもよい。
【0026】
補正部303は、発光体2の雰囲気温度の測定値T
Eと、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時の発光体2の雰囲気温度T
E_Oと、の差をとり、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時からの発光体2の雰囲気温度の変化量の測定値ΔT
Eを算出する。また、補正部303は、下記(4)式に示すように、補正係数C
1に、発光体2の雰囲気温度の変化量の測定値ΔT
Eを乗じ、蛍光体1の雰囲気温度の算出誤差ΔT
Fの値を算出する。
ΔT
F = C
1 ×ΔT
E
=(ΔT
F / ΔT
E) ×ΔT
E ・・・(4)
【0027】
さらに補正部303は、下記(5)式に示すように、温度算出部302が算出した蛍光体1の雰囲気温度の算出値T
F_Cから、蛍光体1の雰囲気温度の算出誤差ΔT
Fの値を引き、蛍光体1の補正された雰囲気温度T
F_Aを算出する。
T
F_A = T
F_C -ΔT
F ・・・(5)
【0028】
CPU300には、さらに入力装置321、出力装置322、プログラム記憶装置323、及び一時記憶装置324が接続される。入力装置321としては、スイッチ及びキーボード等が使用可能である。関係記憶部401に保存される蛍光体1の減衰性及び蛍光体1の雰囲気温度の関係と、補正情報記憶部402に保存される補正係数C
1とは、例えば、入力装置321を用いて入力される。
【0029】
出力装置322としては、光インジケータ、デジタルインジケータ、及び液晶表示装置等が使用可能である。出力装置は、スピーカ等の音響機器を含んでいてもよい。出力装置322は、補正部303の算出結果に基づき、蛍光体1の雰囲気温度を表示する。プログラム記憶装置323は、CPU300に接続された装置間のデータ送受信等をCPU300に実行させるためのプログラムを保存している。一時記憶装置324は、CPU300の演算過程でのデータを一時的に保存する。
【0030】
次に
図9に示すフローチャートを用いて第1の実施の形態に係る温度の測定方法について説明する。
(a)ステップS101で、
図1に示す温度測定器3は発光体2の雰囲気温度を測定し、CPU300に伝送する。CPU300の補正部303が、発光体2の雰囲気温度の測定値を受信する。ステップS102で、発光体2は励起光を放射し、ステップS103で蛍光体1は蛍光を発する。蛍光測定器4は、蛍光強度を測定し、CPU300に伝送する。CPU300の減衰特性測定部301が、蛍光の測定値を受信する。
【0031】
(b)ステップS104で、発光体2は励起光の放射を停止し、ステップS105で減衰特性測定部301は、蛍光強度の測定値の時間変化に基づいて、蛍光寿命τ等の減衰特性の測定値を得る。減衰特性測定部301は、減衰特性の測定値を温度算出部302に伝送する。ステップS106で温度算出部302は、関係記憶部401から、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性と、蛍光体1の雰囲気温度と、の予め取得された関係を読み出す。さらに温度算出部302は、蛍光寿命τ等の減衰特性の測定値と、関係記憶部401から読み出した関係と、に基づいて、蛍光体1の雰囲気温度T
F_Cを算出する。温度算出部302は、算出した蛍光体1の雰囲気温度T
F_Cを補正部303に伝送する。
【0032】
(c)ステップS107で、補正部303は、補正情報記憶部402から上記(3)式で与えられる補正係数C
1を読み出す。ステップS108で、補正部303は、関係記憶部401から、蛍光の減衰特性と、蛍光体1の雰囲気温度と、の関係を取得したときの発光体2の雰囲気温度T
E_Oを読み出す。さらに補正部303は、温度測定器3が測定した発光体2の雰囲気温度の測定値T
Eと、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時の発光体2の雰囲気温度T
E_Oと、の差をとり、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時からの発光体2の雰囲気温度の変化量の測定値ΔT
Eを算出する。
【0033】
(d)ステップS109で、補正部303は、上記(4)式に示すように、補正係数C
1に、発光体2の雰囲気温度の変化量の測定値ΔT
Eを乗じ、蛍光体1の雰囲気温度の算出誤差ΔT
Fの値を算出する。ステップS110で、補正部303は、上記(5)式に示すように、温度算出部302が算出した蛍光体1の雰囲気温度の算出値T
F_Cから、蛍光体1の雰囲気温度の算出誤差ΔT
Fの値を引き、蛍光体1の補正された雰囲気温度T
F_Aを算出する。その後、補正部303は、出力装置322に蛍光体1の補正された雰囲気温度T
F_Aを出力する。
【0034】
以上説明した第1の実施の形態に係る蛍光式温度センサ及び温度の測定方法によれば、発光体2の雰囲気温度T
Eが、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時の発光体2の雰囲気温度T
E_Oと異なっていても、蛍光体1の雰囲気温度T
Fを正確に測定することが可能となる。なお、
図10に示すように、温度測定器53を、発光体2のパッケージ21の内部に配置してもよい。これにより、発光素子23の発光強度に影響を与える発光素子23近傍の温度をより正確に測定することが可能となる。また、温度測定器3が測定した発光素子23の雰囲気温度T
Eが所定の閾値以上になった場合は、測定を中止してもよい。
【0035】
なお、補正情報記憶部402に保存される補正係数C
1は、以下の手順で予め取得される。まず、蛍光体1を恒温層に格納し、蛍光体1の雰囲気温度T
Fを一定に保つ。次に、発光体2を温度調整可能な容器に格納する。その後、発光体2の雰囲気温度T
Eを、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時の発光体2の雰囲気温度T
E_Oから変化させながら、温度算出部302で蛍光体1の雰囲気温度T
F_Cを算出することを繰り返す。これにより、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時からの発光体2の雰囲気温度の変化量ΔT
Eと、温度算出部302が算出する蛍光体1の雰囲気温度T
F_Cと蛍光体1の実際の雰囲気温度T
Fとの差と、の関係が複数得られる。得られた関係を例えば最小自乗法で1次関数に近似する。例えば、この1次関数の傾きが、補正係数C
1として取得される。
【0036】
(第1の実施の形態の変形例)
図11は、温度測定器3による発光体2の雰囲気温度の測定値T
Eと、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時の発光体2の雰囲気温度T
E_Oと、の差が25℃であった場合の、温度算出部302が算出する蛍光体1の雰囲気温度T
F_Cと、蛍光体1の実際の雰囲気温度T
Fと、の差である、蛍光体1の雰囲気温度の算出誤差ΔT
Fを示している。
図11に示すように、蛍光体1の雰囲気温度の算出誤差ΔT
Fは、蛍光体1の雰囲気温度T
Fに依存して変化しうる。
【0037】
したがって、
図1に示す補正情報記憶部402は、上記(3)式で与えられる補正係数C
1を、
図12に示すように、蛍光体1の雰囲気温度T
Fごとに保存してもよい。具体的には、補正情報記憶部402は、補正係数C
1と、蛍光体1の雰囲気温度T
Fと、の関係を表す式を保存してもよいし、補正係数C
1と、蛍光体1の雰囲気温度T
Fと、の関係を示す表を保存してもよい。この場合、
図1に示す補正部303は、温度算出部302が算出した蛍光体1の雰囲気温度T
F_Cに対応する補正係数C
1を、補正情報記憶部402から読み出す。さらに、補正部303は、温度算出部302が算出した蛍光体1の雰囲気温度T
F_Cに対応する補正係数C
1に、発光体2の雰囲気温度の変化量の測定値ΔT
Eを乗じ、蛍光体1の雰囲気温度の算出誤差ΔT
Fの値を算出して、蛍光体1の補正された雰囲気温度T
F_Aを算出する。これにより、蛍光体1の雰囲気温度T
Fをより正確に測定することが可能となる。
【0038】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、温度算出部302が算出した蛍光体1の雰囲気温度の算出値T
F_Cを補正部303が補正する例を示した。これに対し、減衰特性測定部301が測定した蛍光体1の減衰特性を補正部303が補正してもよい。
図13は、蛍光体1の雰囲気温度T
Fを30℃に保ち、発光体2の雰囲気温度T
Eを25℃から50℃に変動させた場合に、減衰特性測定部301が測定した蛍光体1の蛍光寿命τの例を示すグラフである。
図13に示すように、発光体2の雰囲気温度T
Eが上昇すると、蛍光体1の蛍光寿命τは長くなる傾向にある。
【0039】
したがって、例えば関係記憶部401に保存されている
図5に示す関係を取得した時の発光体2の雰囲気温度T
E_Oが25℃である場合、発光体2の雰囲気温度T
Eが50℃に上昇すると、温度算出部302で算出される蛍光体1の雰囲気温度の算出値T
F_Cが、蛍光体1の実際の雰囲気温度T
Fよりも低くなりうる。
【0040】
そこで、第2の実施の形態において、
図1に示す補正情報記憶部402は、上記(1)式で与えられる発光体2の雰囲気温度の変化量ΔT
Eに対する、蛍光体1の減衰特性の変化量Δτの比を、下記(6)式で与えられる補正係数C
2として保存する。
C
2 = Δτ / ΔT
E ・・・(6)
また、補正部303は、下記(7)式に示すように、補正係数C
2に、発光体2の雰囲気温度の変化量の測定値ΔT
Eを乗じ、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時からの発光体2の雰囲気温度の変化によって生じた蛍光体1の減衰特性の変化量Δτの値を算出する。
Δτ = C
2 ×ΔT
E
=(Δτ / ΔT
E) ×ΔT
E ・・・(7)
【0041】
さらに補正部303は、下記(8)式に示すように、減衰特性測定部301が得た蛍光体1の減衰特性の測定値τから、発光体2の雰囲気温度の変化によって生じた蛍光体1の減衰特性の変化量Δτの値を引き、蛍光体1の補正された減衰特性τ
Aを算出する。
τ
A = τ -Δτ ・・・(8)
第2の実施の形態において、温度算出部302は、蛍光体1の補正された減衰特性τ
Aと、関係記憶部401に保存されている減衰特性及び雰囲気温度の関係と、に基づいて、蛍光体1の補正された雰囲気温度T
F_Aを算出する。
【0042】
次に
図14に示すフローチャートを用いて第2の実施の形態に係る温度の測定方法について説明する。
(a)まず、
図9に示した第1の実施の形態に係る温度の測定方法のステップS101乃至ステップS104と同様に、ステップS201乃至ステップS204を実施する。次に、ステップS205で減衰特性測定部301は、蛍光強度の測定値の時間変化に基づいて、蛍光寿命τ等の減衰特性の測定値を得る。減衰特性測定部301は、減衰特性の測定値を補正部303に伝送する。
【0043】
(b)ステップS206で、補正部303は、補正情報記憶部402から上記(6)式で与えられる補正係数C
2を読み出す。ステップS207で、補正部303は、関係記憶部401から、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性と、蛍光体1の雰囲気温度と、の関係を取得したときの発光体2の雰囲気温度T
E_Oを読み出す。さらに補正部303は、温度測定器3による発光体2の雰囲気温度の測定値T
Eと、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時の発光体2の雰囲気温度T
E_Oと、の差をとり、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時からの発光体2の雰囲気温度の変化量の測定値ΔT
Eを算出する。
【0044】
(c)ステップS208で、補正部303は、上記(7)式に示すように、補正係数C
2に、発光体2の雰囲気温度の変化量の測定値ΔT
Eを乗じ、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時からの発光体2の雰囲気温度の変化によって生じた蛍光体1の減衰特性の変化量Δτの値を算出する。ステップS209で、補正部303は、上記(8)式に示すように、減衰特性測定部301が得た蛍光体1の減衰特性の測定値τから、発光体2の雰囲気温度の変化によって生じた蛍光体1の減衰特性の変化量Δτの値を引き、蛍光体1の補正された減衰特性の値τ
Aを算出する。その後、補正部303は、蛍光体1の補正された減衰特性の値τ
Aを、温度算出部302に伝送する。
【0045】
(d)ステップS210で温度算出部302は、関係記憶部401から、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性と、蛍光体1の雰囲気温度と、の予め取得された関係を読み出す。さらに温度算出部302は、蛍光体1の補正された減衰特性の値τ
Aと、関係記憶部401から読み出した関係と、に基づいて、蛍光体1の補正された雰囲気温度T
F_Aを算出する。その後、温度算出部302は、出力装置322に蛍光体1の補正された雰囲気温度T
F_Aを出力する。
【0046】
以上説明した第2の実施の形態に係る蛍光式温度センサ及び温度の測定方法によっても、蛍光体1の雰囲気温度T
Fを正確に測定することが可能となる。なお、第2の実施の形態において、補正情報記憶部402に保存される補正係数C
2は、以下の手順で予め取得される。まず、蛍光体1を恒温層に格納し、蛍光体1の雰囲気温度T
Fを一定に保つ。次に、発光体2を温度調整可能な容器に格納する。その後、発光体2の雰囲気温度T
Eを、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時の発光体2の雰囲気温度T
E_Oから変化させながら、減衰特性測定部301で蛍光体1の蛍光寿命τ等の減衰特性を測定することを繰り返す。これにより、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時からの発光体2の雰囲気温度の変化量ΔT
Eと、蛍光体1の減衰特性の変化量Δτと、の関係が複数得られる。得られた関係を例えば最小自乗法で1次関数に近似する。例えば、この1次関数の傾きが、補正係数C
2として取得される。
【0047】
(第2の実施の形態の変形例)
図15は、発光体2の雰囲気温度の測定値T
Eと、関係記憶部401に保存されている関係を取得した時の発光体2の雰囲気温度T
E_Oと、の差が25℃であったことによる、蛍光体1の蛍光寿命の変化量Δτを示している。
図15に示すように、蛍光体1の蛍光寿命の変化量Δτは、蛍光体1の雰囲気温度T
Fに依存する蛍光体1の蛍光寿命τによって異なる。
【0048】
したがって、
図1に示す補正情報記憶部402は、上記(6)式で与えられる補正係数C
2を、
図16に示すように、蛍光体1の蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性ごとに保存してもよい。具体的には、補正情報記憶部402は、補正係数C
2と、蛍光体1の蛍光寿命τと、の関係を表す式を保存してもよいし、補正係数C
2と、蛍光体1の蛍光寿命τと、の関係を示す表を保存してもよい。
【0049】
この場合、
図1に示す補正部303は、減衰特性測定部301が得た蛍光体1の蛍光寿命の測定値τに対応する補正係数C
2を、補正情報記憶部402から読み出す。さらに、補正部303は、減衰特性測定部301が得た蛍光体1の蛍光寿命の測定値τに対応する補正係数C
2に、発光体2の雰囲気温度の変化量の測定値ΔT
Eを乗じ、蛍光体1の蛍光寿命の変化量Δτの値を算出する。さらに補正部303は、減衰特性測定部301が得た蛍光体1の減衰特性の測定値τから、発光体2の雰囲気温度の変化によって生じた蛍光体1の減衰特性の変化量Δτの値を引き、蛍光体1の補正された減衰特性τ
Aを算出する。これにより、蛍光体1の雰囲気温度T
Fをより正確に測定することが可能となる。
【0050】
(その他の実施の形態)
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、第1の実施の形態において、
図1に示す温度測定器3は、消灯中の発光体2の雰囲気温度を測定すると説明した。これに対し、温度測定器3は、点灯中の発光体2の雰囲気温度を測定してもよい。この場合、発光体2の点灯による雰囲気温度の上昇を予め計測し、雰囲気温度の所定の閾値の設定に反映させればよい。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。