特許第5697916号(P5697916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5697916通常動作中に収集されたデータを用いた車両校正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697916
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】通常動作中に収集されたデータを用いた車両校正
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20150319BHJP
   F02D 41/14 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   F02D45/00 376B
   F02D45/00 340D
   F02D45/00 324
   F02D41/14 310L
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-166276(P2010-166276)
(22)【出願日】2010年7月23日
(65)【公開番号】特開2011-27110(P2011-27110A)
(43)【公開日】2011年2月10日
【審査請求日】2013年5月30日
(31)【優先権主張番号】61/228,391
(32)【優先日】2009年7月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595179505
【氏名又は名称】ハーレー−ダビッドソン・モーター・カンパニー・グループ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】トニー ニコシア
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ランバーガー
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ ゼルナー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド クロスターマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン チャピン
(72)【発明者】
【氏名】カール リンガーフェルト
(72)【発明者】
【氏名】マイケル シンプソン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー スタンポアー
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−522900(JP,A)
【文献】 特開2006−234822(JP,A)
【文献】 特表平06−504348(JP,A)
【文献】 特開平11−353006(JP,A)
【文献】 特開平01−200033(JP,A)
【文献】 特開2001−050082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 43/00―45/00
F02D 41/00―41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、エンジン制御ユニットと、出力パラメータの値を検出するセンサと、入力パラメータに応じて前記エンジンを制御するアクチュエータとを含む車両を校正する方法であって、
校正コンピューターシステムにて、車両に選択的に取り付け可能な車両通信インターフェースモジュールからデータを受信し、車両の動作中に車両から受信したデータを記録し、前記データが、複数の調整されたアクチュエータ値と、前記複数の調整されたアクチュエータ値のそれぞれに対するスロットル位置を表す値及びエンジン速度の対応する組み合わせとを含み、各調整されたアクチュエータ値が、前記エンジン制御ユニットにより自動的に生成され、
校正コンピューターシステムにより、スロットル位置を表す値及びエンジン速度の第1組み合わせに対応する前記車両通信インターフェースモジュールに記憶された調整されたアクチュエータ値の数を判断し、
前記第1組み合わせに対する調整されたアクチュエータ値の数が閾値を超えたとき、校正コンピューターシステムにより、前記第1組み合わせに対応する複数の調整されたアクチュエータ値に基づいて前記第1組み合わせ用の1つの更新されたデータテーブル入力を、スロットル位置を表す値とエンジン速度の組み合わせにそれぞれ対応する複数の所定のアクチュエータ値を規定するデータテーブルを更新するために、自動的に生成し、
前記更新されたデータテーブルを生成した後に、前記エンジン制御ユニットに、前記第1組み合わせ用の更新されたデータテーブル入力を含む更新されたデータテーブルを転送することを含む、方法。
【請求項2】
閉ループモードで車両のエンジンを作動し、
前記閉ループモードでは、
現在のエンジン速度を判断し、
スロットル位置を表す現在値を判断し、
前記データテーブルから、現在のエンジン速度と現在のスロットル位置に対応するアクチュエータ値にアクセスし、
前記センサから出力パラメータの現在値を受け、
目標値に対して前記出力パラメータの現在値を比較し、
前記目標値と前記出力パラメータの現在値との間の比較に基づいてアクチュエータ値を調整し、
前記入力パラメータの値として前記調整されたアクチュエータ値を用いて前記アクチュエータを動作し、
前記調整されたアクチュエータ値、前記現在のエンジン速度及び前記スロットル位置を表す現在値を、車両に取り付けられる離脱可能な前記車両通信インターフェースモジュールに記録することを含み、
車両が運転されている間、前記閉ループモードで前記エンジンを作動することを繰り返すことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記更新されたデータテーブル入力を生成することは、前記第1組み合わせに対応する前記調整されたアクチュエータ値の平均値を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
校正コンピューターシステムにより、前記車両通信インターフェースモジュールに記憶された対応する調整されたアクチュエータ値の数が閾値を超える1つ以上の追加のスロットル位置を表す値及びエンジン速度の組み合わせを自動的に特定し、
各特定された追加の組み合わせに対して対応する調整された値の平均値を算出し、
前記対応する算出された平均値を用いて各特定された追加の組み合わせに対する前記更新されたデータテーブル内の値を記憶することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記センサは、車両の排気系に配置され、前記出力パラメータは、前記センサにより測定される空燃比である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
車両は、更に、前記アクチュエータを含む燃料噴射システムを更に含み、前記入力パラメータは、前記燃料噴射システムにより提供される燃料の量、又は、前記燃料噴射システムにより提供される燃料の量を判断するために前記エンジン制御ユニットにより解釈される目標体積効率を表す、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記車両通信インターフェースモジュールは、ハウジング、メモリ及びボタンを含み、
前記アクチュエータ値は、前記ボタンが押されたあと前記車両通信インターフェースモジュールに記録されるだけである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記センサ及び前記アクチュエータは、前記エンジンの第1シリンダに対応し、
車両は、更に、前記エンジンの第2シリンダに対応する第2センサ及び第2アクチュエータを含み、
当該方法は、前記車両通信インターフェースモジュールに記録される複数の調整された第2のアクチュエータ値に基づいて第2の更新されたデータテーブルを生成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記更新されたデータテーブルに記憶される複数のアクチュエータ値のそれぞれに対応するエンジン速度及びスロットル位置は、エンジン速度の範囲及びスロットル位置の範囲を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記更新されたデータテーブルを生成することは、前記第1組み合わせに対する前記アクチュエータ値の提案された変更をユーザが受け入れるか断るかを可能とすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記スロットル位置を表す値は、マニフォルド空気圧値、又は、前記スロットル位置の相対位置を指示するパーセンテージ値である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
エンジン速度の範囲とスロットル位置を表す値の範囲の組み合わせにそれぞれ対応する複数の燃料インジェクタ設定値を規定する校正テーブルを記憶するエンジン制御モジュールであって、センサにより検出される空燃比に基づいて前記校正テーブルからの燃料インジェクタ設定値を自動的に調整する閉ループモードで車両を動作するエンジン制御モジュールを備える車両用の校正システムであって、
前記エンジン制御モジュールに選択的に接続可能な車両通信インターフェースモジュールと、
前記エンジン制御モジュールと前記車両通信インターフェースモジュールに選択的に接続可能な校正コンピューターシステムとを含み、
前記車両通信インターフェースモジュールは、
前記車両に選択的に取り付け可能であり、前記車両に取り付けられるとき、前記車両の動作を制限することなく前記車両により支持されるハウジングと、
前記エンジン制御モジュールから受信されたデータであって、複数の調整された燃料インジェクタ設定値と、前記複数の調整された燃料インジェクタ設定値のそれぞれに対してスロットル位置を表す値とエンジン速度の対応する組み合わせとを含むデータを記憶する第1コンピューター読み取り可能メモリとを含み、
前記校正コンピューターシステムは、
プロセッサと、
指令を含む第2コンピューター読み取り可能メモリとを含み、該指令は、前記プロセッサにより実行されるときに、前記校正コンピューターシステムをして、
前記車両通信インターフェースモジュールの前記第1コンピューター読み取り可能メモリ上に記憶されたデータを受け、
前記スロットル位置を表す値及びエンジン速度の第1組み合わせに対応する、前記第1コンピューター読み取り可能メモリ上に記憶された調整された燃料インジェクタ設定値の数を判断し、
前記第1組み合わせに対応する調整された燃料インジェクタ設定値の数が閾値よりも大きいときに、前記第1組み合わせに対応する複数の調整された燃料インジェクタ設定値に基づいて、1つの更新された校正テーブル入力を、該1つの更新された校正テーブル入力で前記校正テーブルを更新するために、自動的に生成し、
前記エンジン制御モジュールが前記校正コンピューターシステムに接続されるときに、前記エンジン制御モジュールに、前記更新された校正テーブル入力を含む更新された校正テーブルを送信することをさせる、校正システム。
【請求項13】
前記車両通信インターフェースモジュールの前記第1コンピューター読み取り可能メモリは、エンジンの第1シリンダ及び第2シリンダのそれぞれに対するエンジン制御モジュールから受信した調整された燃料インジェクタ設定値を記憶する、請求項12に記載の校正システム。
【請求項14】
前記指令は、前記プロセッサにより実行されるときに、前記校正コンピューターシステムをして、更に、
エンジン速度及びスロットル位置の第2組み合わせに対応する、前記第1コンピューター読み取り可能メモリ上に記憶された前記第2シリンダに対する調整された燃料インジェクタ設定値の数を判断し、
前記第2組み合わせに対応する前記第2シリンダに対する調整された燃料インジェクタ設定値の数が閾値を超えたとき、前記第1組み合わせに対応する前記第2シリンダに対する調整された燃料インジェクタ設定値に基づいて、更新された燃料インジェクタ設定値を算出することによって、更新された第2校正テーブルを生成し、
前記エンジン制御モジュールが前記校正コンピューターシステムに接続されるときに、前記エンジン制御モジュールに、前記更新された第2校正テーブルを送信することをさせる、請求項13に記載の校正システム。
【請求項15】
前記指令は、前記プロセッサにより実行されるときに、前記校正コンピューターシステムをして、更に、前記第1組み合わせに対する燃料インジェクタ設定値の提案された変更を受け入れる又は断るユーザからの選択を受信することをさせる、請求項12に記載の校正システム。
【請求項16】
前記スロットル位置を表す値は、マニフォルド空気圧値、又は、前記スロットル位置の相対位置を指示するパーセンテージ値である、請求項12に記載の校正システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年7月24日に出願された米国仮出願No.61/227,391号、タイトル“Method and Apparatus for Automatic Engine Calibration to Optimize Volumetric Efficiency”の利益を主張し、その全体内容がここでの参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、一般的に、所望のレベルにエンジン性能を調整するためのエンジンパラメータの校正に関する。より詳細には、本発明は、所望の条件下でエンジンの体積効率を最適化するためのエンジンパラメータの校正に関する。
【背景技術】
【0003】
エンジン性能は、しばしば、動力出力及び燃料経済性を含む多様な計量を考慮することによって測定される。車両の意図した使用に依存して、異なる重み付けは、理想的な性能を達成するために最適されるべき計量に付与される。次いで、性能を最適化するために車両に変更がなされる。例えば、機械的な変更は、レース中に車両により提供される馬力を改善するために自動二輪車のエンジン又は排気系になされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許7,546,200号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、かかる機械的な変更は、燃料を効率的に処理する車両の能力に悪影響を及ぼす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施例では、本発明は、通常動作条件下で車両の体積効率を最適化するシステム及び方法を提供する。車両システムは、目標空燃比を達成するために閉ループで燃料噴射システムにより提供される燃料の量のような車両パラメータを調整する。携帯型の車両通信インターフェースモジュールは、車両の通常動作を禁止することなく車両に選択的に取り付けられる。次いで、車両は、車両が最適化されている通常条件下で運転される(例えば、レースコース上で)。車両通信インターフェースモジュールは、車両に取り付けられたとき、車両システムによりなされる調整を記録する。次いで、これらの記録された値は、車両システムがデフォルト値として使用する校正テーブルを更新するために使用される。
【0007】
携帯型の車両通信インターフェースを使用することによって、車両用の校正データは、実際の実世界の動作条件に基づいて更新されることができる。従って、校正データは、もはや、ダイナモメータのような、制御された条件下での車両の性能に基づいて推定される必要はない。
【0008】
その他の実施例では、本発明は、車両を校正する方法を提供する。車両は、エンジンと、エンジン制御ユニットと、出力パラメータの値を検出するセンサと、入力パラメータに応じて前記エンジンを制御するアクチュエータとを含む。本方法は、校正コンピューターシステムに車両通信インターフェースモジュールからデータを転送することを含む。車両通信インターフェースモジュールは、選択的に車両に取り付け可能であり、車両の通常動作中に車両から受信したデータを記録する。転送されたデータは、複数の調整されたアクチュエータ値と、複数の調整されたアクチュエータ値のそれぞれに対するスロットル位置及びエンジン速度の対応する組み合わせとを含む。調整されたアクチュエータ値は、スロットル位置を表す値及びエンジン速度のそれぞれの組み合わせに対する事前に設定されたアクチュエータ値を規定する記録されたデータテーブルにアクセスすることによって、エンジン制御ユニットにより生成された値である。種々の実施例では、スロットル位置を表す値は、実際のスロットル位置のパーセント値若しくは割合測定値、スロットル制御位置若しくは測定されたマニフォルド空気圧値を含むことができる。このとき、エンジン制御ユニットは、センサにより測定されるような出力の現在値と目標値との間の比較に基づいて、アクチュエータ値を調整する。
【0009】
データが転送された後、校正コンピューターシステムは、スロットル位置及びエンジン速度の第1組み合わせに対応する、車両通信インターフェースモジュールに記憶された調整されたアクチュエータ値の数を判断する。記憶された値の数が閾値を超えたとき、校正コンピューターシステムは、第1組み合わせに対応する調整されたアクチュエータ値に基づいて、更新されたデータテーブル入力を算出する。更新されたデータテーブルは、次いで、車両のエンジン制御ユニットに転送される。
【0010】
更なるその他の実施例では、本発明は、車両用の校正システムを提供する。校正されるべき車両は、エンジン速度の範囲とスロットル位置を表す値の範囲の組み合わせにそれぞれ対応する複数の燃料インジェクタ設定値を規定する校正テーブルを記憶する。車両は、また、センサにより検出される空燃比に基づいて校正テーブルからの燃料インジェクタ設定値を調整する閉ループモードで動作する。校正システムは、車両通信インターフェースモジュール及び校正コンピューターを含む。
【0011】
車両通信インターフェースモジュールは、ハウジング及びコンピューター読み取り可能メモリを含む。ハウジングは、選択的に取り付け可能であり、車両に取り付けられるとき、前記車両の通常動作を制限することなく前記車両により支持される。コンピューター読み取り可能メモリは、車両のエンジン制御モジュールから受信されたデータを記憶する。データは、調整された燃料インジェクタ設定値と、現在のスロットル位置及び現在のエンジン速度の対応する組み合わせを示す。
【0012】
校正コンピューターは、車両通信インターフェースモジュールに選択的に接続可能であり、そのメモリに記憶されたデータを受信する。校正コンピューターは、当該データを処理し、エンジン速度の範囲及びスロットル位置の範囲の複数の組み合わせのそれぞれに対する調整された燃料インジェクタ設定値の数を判断する。記憶された調整された値の数が閾値を超える各組み合わせに対して、コンピューターは、第1組み合わせに対応する調整された燃料インジェクタ設定値に基づいて第1組み合わせに対する更新された校正テーブル入力を生成する。更新された校正テーブルは、次いで、自動二輪車のエンジン制御モジュールにコンピューターから送信される。ある実施例では、車両通信インターフェースモジュールは、コンピューター及びエンジン制御モジュールの双方に接続され、更新された校正テーブルは、コンピューターからエンジン制御モジュールに車両通信インターフェースモジュールを介して送信される。
【0013】
本発明の他の局面は、詳細な説明及び添付図面を考慮することにより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本発明の一実施例による携帯型車両通信インターフェースモジュールに適合される、特に自動二輪車である車両の側面図。
図1B図1Aの車両通信インターフェースモジュールの側面図。
図2図1Aの自動二輪車のエンジンを校正するシステムの概略図。
図3A図1Aの自動二輪車を校正するために使用される模範的な体積効率データテーブル。
図3B図1Aの自動二輪車を動作するために使用される模範的な空燃比データテーブル。
図4図3A及び3Bのデータテーブル及び図1Bの車両通信インターフェースモジュールを使用して図1Aの自動二輪車を動作する方法を示すフローチャート。
図5図1Bの車両通信インターフェースモジュールにより記憶されたデータに基づいて図3Aの体積効率データテーブルを更新する方法を示すフローチャート。
図6A図1Bの車両通信インターフェースモジュールにより記録されるサンプル値を示すテーブル。
図6B】所定の集合へと分類された図6Aのサンプル値を示す一連のテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例を詳説する前に、理解されるべきこととして、本発明は、図面に図示された又は次の説明に付与された構造及び配置の詳細にその用途が限定されるものでない。本発明は、他の実施例が可能であり、種々の態様で実現ないし実施されることができる。
【0016】
図1Aは、校正されるべき、特に自動二輪車101である車両を示す。ここで説明される自動二輪車101を校正するシステム及び方法は、特定のセットの条件下で駆動するために自動二輪車の性能を最適化するだろう。例えば、自動二輪車101は、最適なレース性能のために校正されてもよい。自動二輪車101は、エンジン103を含み、エンジン制御モジュール(ECM)104を備える。ECM104は、所定のセットのパラメータによりエンジンの動作を制御する。
【0017】
車両通信インターフェースモジュール(VCI)105は、自動二輪車101のハンドルバーに取り付けられて示されている。VCI105は、携帯型の取り外し可能な装置であり、ECM104に選択的に接続される。VCI105は、ケーブル、ストラップ若しくは任意の他の適切な締結具を用いて、図1Aに示すように、自動二輪車101のハンドルバーに取り付けられることができる。更に、ある実施例では、ドッキングクレードルは、自動二輪車101に実装されることができ、VCI105は、自動二輪車101上のどこに配置されてもよいドッキングクレードルにVCI105を接続することによって、自動二輪車101に取り付けられることができる。
【0018】
VCI105が自動二輪車101に取り付けられるとき、VCI105は、ECM104に通信的に結合される。データは、VCI105にECM104からから送信され、VCI105の内部メモリに記憶される。このデータは、自動二輪車101の性能特性を表し、以下で詳説されるような動作中にECM104によりなされる調整を示すデータ若しくは車両エンジンに実装されるセンサにより生成されるデータを含んでよい。VCI105は、車両の通常動作に干渉することなく自動二輪車101に取り付けられることができるように個別的に大きさが設定される。自動二輪車101は、VCI105が取り付けられつつ、レースコースのような環境下で運転されることができる。従って、VCI105は、ダイナモメータのような模擬環境を必要とすることなく実世界の条件下で車両性能を捕捉することができる。
【0019】
VCI105は、自動二輪車101がレーストラックのような実世界条件下で作動されている間に、かかる性能データを収集できるが、VCI105は、また、自動二輪車101がダイナモメータ上で動作されているときにデータを収集するために使用されることもできる。かかる場合、VCI105は、ECM104及び校正コンピューター203(後述)の双方に接続されることができ、校正コンピューター203に直接記憶されるデータを提供するパススルー(pass-through)インターフェースとして機能する。
【0020】
図1Bに示すように、VCI105は、ボタン107、発光ダイオード109及びインターフェースコネクタ111を含む。ボタン107は、以下で詳説するような記録モードを開始するためにユーザにより押されることができる。LED109は、VCI105の動作状態について情報を提供する。例えば、LED109は一色で光られる場合、これは、VCI105が正確にECM104に取り付けられ、アクティブであり、ECM104からデータを受信していることを示す。LED109が点滅している場合、これは、VCI105のメモリがいっぱいであり、記憶されたデータが、異なるデバイスに転送されなければならず、メモリが、追加のデータをVCI105上に記憶できる前にリセットすることを示す。インターフェースコネクタ111は、ケーブルを介して若しくは直接的にECM104にVCI105を接続する。VCI105は、インターフェースコネクタ111を介して校正コンピューターに接続されることもできる。後述するように、校正コンピューターは、VCI105上に記憶されたデータを解析し、自動二輪車101により使用される校正データテーブルを更新する。ある実施例では、VCI105は、任意の時間でECM104及び校正コンピューターの一方のみに接続するために使用されることができる単一のインターフェースコネクタ111のみを含む。他の実施例では、VCI105は、複数のインターフェースコネクタを含む。インターフェースコネクタ(複数も可)111は、これらに限定されないが、USB,CAT−5及びRS−232を含む、標準的な若しく独自の接続タイプであることができる。
【0021】
図2は、自動二輪車101を校正するために互いに通信する構成要素の部位の概略図を提供する。上述のように、ECM104は、選択的にVCI105に接続可能であり、インターフェースコネクタを介してVCI105にデータを送信する。VCI105は、校正コンピューター203に選択に接続可能でもある。校正コンピューター203は、VCI105に記録されるデータを解析し、自動二輪車101の動作中の使用のための更新されたデータテーブルを生成するソフトウェアアプリケーションを実行する。ある実施例では、校正コンピューター203は、ECM104に選択的に接続可能であり、接続されるとき、校正コンピューター203は、ECM104に、更新されたデータテーブルを含むデータを送信する。
【0022】
ある実施例では、校正コンピューター203は、データがECM104に送信されるべきときにECM104に直接的に接続される。他の実施例では、校正コンピューター203は、VCI105を介してECM104に接続され、VCI105は、ECM104に校正コンピューター203からのデータを送信するパススルーインターフェースとして機能する。ある実施例では、校正コンピューター203から送信される更新されたデータテーブルは、ECM104及びVCI105の双方に記憶される。
【0023】
ECM104は、自動二輪車101の動作を制御するために使用される所定のパラメータを記憶するメモリ205を含む。メモリ205は、また、エンジン103の動作を制御するためにプロセッサ207により実行される指令も記憶する。VCI105は、ECM104から受信した性能データを記憶するメモリを含み、上述の如く、ボタン213及びLED215を含む。VCI105は、また、LED215の動作を制御する論理回路を含み、ECM104から受信したデータの記憶を管理する。
【0024】
校正コンピューター203は、一実施例では、メモリ217、プロセッサ219及びユーザインターフェース221を含むデスクトップコンピューターである。ユーザインターフェース221は、キーボード、マウス及びモニタを含む。校正コンピューター203は、HARLEY-DAVIDSON(登録商標)により提供されるSCREAMIN'EAGLE PRO SUPER TUNERパッケージのようなソフトウェアパッケージを走らす。ソフトウェアパッケージは、VCI105に記録されるデータを処理し、また、ECM104に更新された校正情報を通信する。校正コンピューターは、本例では標準的なデスクトップコンピューターであるが、他の実施例では、校正コンピューターは、ここで説明するような校正及び調整処理のために特別に設計されたデバイスであることができる。
【0025】
上述のように、ECM104は、自動二輪車101のエンジン103の動作を制御するために使用される所定のパラメータを記憶する。図3A及び3Bは、ECM104に記憶される2つのデータテーブルを示す。図3Aのテーブルは、エンジン速度及びスロットル位置の各組み合わせに対して目標体積効率を規定する。体積効率は、シリンダの容量に比較したときのエンジンのシリンダに入る燃料及び空気の量のパーセントを指す。エンジンに供給される空気の量は、スロットル位置に基づいて固定されるので、与えられたスロットル位置での体積効率は、燃料インジェクタにより提供される燃料の量を変化させることによって修正されることができる。
【0026】
ECM104は、テーブルに記憶された体積効率値及び既知のスロットル位置を使用して、燃料噴射システムを介してエンジンに提供される燃料の量を判断する。図3Aのテーブルは、1つのスロットル位置設定値に1つのエンジン速度設定値を合わせることにより規定されるが、これらの値は、範囲を表すことが意図される。例えば、スロットル制御が22%に位置されるとき1600RPMで動作しているエンジンを提供するための燃料の量を判断するため、システムは、適切な値範囲(即ち1500RPM,20%スロットル)を特定する。かかる条件下では、エンジンに対する目標体積効率は、102.0である。この値に基づいて、ECM104は、燃料噴射システムを介してエンジンに供給する燃料の量を決定する。
【0027】
他の実施例では、ECM104は、図3Aのテーブルからのデータ、エンジン速度及びスロットル位置を使用して、より特別な体積効率値を算出する。例えば、エンジンが1750RPMで動作しており、スロットル位置が22%であるとき、ECM104は、105.0と106.0の間の体積効率値を算出するだろう。これは、スロットル位置22%は、それぞれ105.0と106.0の体積効率値に対応するテーブルにより定義された20%と25%の間に入るためである。
【0028】
同様に、図3Aのデータテーブルは、エンジン速度及びスロットル位置の組み合わせに基づいて体積効率を規定しているが、他の実施例では、テーブルは、エンジン性能の他の組み合わせに基づいて体積効率を規定することができる。例えば、スロットル位置をパーセント値で判断することに代えて、あるシステムは、測定されたマニフォルド空気圧(図3Bのテーブルに示すように)の観点からテーブルのX軸を規定してもよい。更に他のシステムでは、スロットル位置値は、ツイストグリップスロットル制御に対応する位置値で置換されることができる。
【0029】
図3Bのデータテーブルは、エンジン速度とマニフォルド空気圧の各組み合わせに対する目標空燃比を規定する。マニフォルド空気圧は、エンジン内に位置するセンサにより測定される。空燃比は、自動二輪車の排気に配置されたセンサにより検出される酸素の量により算出される。エンジン内に噴射される燃料の量は、空燃比に影響するので、図3Bのデータテーブルに定義される空燃比は、与えられたエンジン速度及びスロットル位置に対して図3Aのデータテーブルで規定されるような体積効率に関係する。
【0030】
ECM104は、目標空燃比を達成するために閉ループモードで動作しているときに体積効率を調整する。かくして、閉ループモードで動作しているとき、図3Aのデータテーブルで規定される体積効率は、ECM104により開始点として使用され、目標空燃比を達成するために必要に応じて上下に調整される。これらの調整は、ECM104にVCI105が取り付けられているときにVCI105に記録され、ECM104により使用されるための図3Aのデータテーブルの更新されたバージョンを生成するために使用される。図4は、VCI105に、規定された体積効率値への調整を記録するために、開ループ及び閉ループの双方でECM104を動作させる方法を示す。
【0031】
自動二輪車101が始動されるとき(ステップ401)、初期的に開ループ動作モードに入る。ECM104は、エンジン速度及びスロットル位置を判断し(ステップ403)、目標体積効率を特定するために、図3のデータテーブルにアクセスする(ステップ405)。ECM104は、次いで、アクセスされた値に基づいて燃料噴射を調整する(ステップ407)。開ループでのステップは、規定されたパラメータのセットが満足されるまで繰り返される。次いで、ECM104は、閉ループモードで動作し始める。規定されたパラメータのセットは、これに限られないが、次のうちの1つ以上を含むことができる:所定の時間間隔、バッテリ電圧、最小エンジン速度及び最小車速。
【0032】
ECM104は、閉ループモードに入るとき、図3Bのデータテーブルに規定されるような目標空燃比と観測される空燃比との間の比較に基づいて、記憶された体積効率テーブルからアクセスされた値を調整し始める。この実施例では、ECM104は、更新された値で、体積効率テーブルに記憶される値を上書きしない。ECM104は、再び、エンジン速度及びスロットル位置を判断し(ステップ409)、データテーブルから目標体積効率にアクセスする(ステップ411)。しかし、閉ループモードでは、ECM104は、また、図3Bのデータテーブルに規定されるような目標空燃比と観測される空燃比とを比較する(ステップ413)。空燃比が低すぎる場合は、体積効率がそれに応じて増加される(ステップ415)。高すぎる場合は、体積効率がそれに応じて減少される(ステップ417)。
【0033】
種々の技術は、体積効率値をどの程度調整すべきかを決定するために使用でき、これに限定されないが、比例積分偏差(PID)コントローラ若しくは他の数学的計算を実現する。しかし、この実施例では、体積効率値は、空燃比と目標値との間の差に比例して調整される。例えば、空燃比が目標値よりも10%低い場合は、体積効率値は、10%増加される。
【0034】
体積効率値を調整した後、ECM104は、通信バスに調整された値を出力する(ステップ419)。VCI105がECM104に接続されるとき、VCI105は、通信バス上のデータを検出する。VCI105の記録モードが作動されている場合(ステップ421)、ECM104は、閉ループモードを繰り返し追加のデータを記憶し続ける前に、調整された体積効率、現在のエンジン速度及び現在のスロットル位置をVCI105に記憶する(ステップ423)。VCI105の記録モードが作動されていない場合は、調整値は、記録されず、ECM104は、閉ループの開始に戻る(ステップ409)。
【0035】
VCI105に記憶されたデータは、次いで、図3Aのデータテーブルを更新するために校正コンピューター203により使用される。図5に示すように、VCI105が校正コンピューター203に接続された後、校正コンピューター203は、ローカルメモリデバイスに記録データの全てをコピーする(ステップ501)。校正コンピューター203は、次いで、エンジン速度及びスロットル位置の組み合わせによりデータをソート(分類)する(ステップ503)。例えば、(1)エンジン速度が750から1000RPMの間であり、且つ、(2)スロットル位置が0.0から2.2%の間であるときに記録された全ての調整された値は、第1集合に分類される。
【0036】
データテーブル上の値を変更する前に、校正コンピューター203は、十分のデータが収集されたか否かを判定する。データが適切な集合へと分類された後、校正コンピューター203は、第1集合(例えば、エンジン速度が750から1000RPMの間であり、且つ、スロットル位置が0.0から2.2%の間であるときに記録された全ての調整された値)を検査することにより開始する(ステップ505)。第1集合に対する記憶された値の数が所定閾値よりも少ない場合(ステップ507)、校正コンピューターは、データテーブルの値を変更することなく次の集合に進む(ステップ509)。
【0037】
しかしながら、集合に対する記憶された値の数が閾値よりも大きい場合、校正コンピューター203は、当該集合に対する記憶値の平均を算出し(ステップ511)、当該集合に対するテーブル内の値を、算出された平均値で置き換える(ステップ513)。校正コンピューター203は、データテーブル内の全ての集合が考慮されるまでこの評価及び置換の処理を繰り返す。校正コンピューターが最後の集合に達するとき(ステップ515)、ユーザは、データテーブルへの提案された変更を承認するか拒絶するかを促される(ステップ517)。かくして、値が劇的に変化するように見える場合は、ユーザは、不正確な異常値が変更に起因していると想定し、当該値に対してデータテーブルを更新することを拒みうる。
【0038】
更新されたデータテーブルがユーザにより承認された後、校正コンピューター203は、ECM104が接続されたか否かを判断する。ECM104が接続された場合は、更新されたデータテーブルは、校正コンピューター203からECM104に送信され、記憶される(ステップ521)。ECM104が接続されていない場合は、校正コンピューター203は、ユーザに適切にECM104に接続するように指示する。データテーブルが更新された後、ECM104は、図4に示すような開又は閉ループモードで自動二輪車101を動作しているときに、更新されたデータテーブルを使用する。更新コンピューター203は、ECM104に直接接続されることができ、又は、VCI105を介してECM104に接続されることができる。
【0039】
図6Aは、図4の方法により自動二輪車101の動作中にVCI105に記憶されうる値の例を示す。記録されたデータを複数の集合に分類した後(図5のステップ503)、データは、図6Bに示すように分類される。この例では、図3Aのデータテーブル内の容積効率値を上書きする前に必要とされる値の閾値は4である。集合1に示すように、4つの調整された容積効率値は、エンジンが750から1000RPMの間で動作し且つスロットルが20から25%の間にセットされている間に記録された。これらの値に基づいて、校正コンピューター203は、平均値89.5を算出し、図3Aのデータテーブルにおけるエンジン速度及びスロットル位置のこの組み合わせに対して割当てられていた値88.0と置換する。
【0040】
3つの値だけが、エンジンが3000から3250RPMの間で動作し且つスロットルが60.0から65.0%の間にセットされている間に記録されていた。この数は、閾値(即ち4)を越えないので、このエンジン速度及びスロットル位置の組み合わせに対する値は、図3Aのデータテーブルにおいて上書きされない。
【0041】
4つの値は、エンジンが3000から3250RPMの間で動作し且つスロットルが15.0から20.0%の間にセットされている間に記録されていた。従って、校正コンピューター203は、平均値93.6を算出し(図5のステップ511)、図3Aのデータテーブルにおいて現在の106.0の値を変更することを推奨する(図5のステップ513)。しかし、ユーザは、この推奨された変更は、前回の値と顕著に異なることに気付く場合がある。この差は、異常測定により生じる。大きな差により、ユーザは、データテーブル内のこの値を変更することを拒むことができ、第1集合に対して提案された変更のみを承認する(ステップ517)。データテーブルは、更新された後、校正コンピューター203からECM104に送信され、その後、自動二輪車101の動作中に使用される。
【0042】
尚、請求項に明示的に言及されている以外、本発明の意図された範囲は、上述の特別な例を超えて延在する。例えば、上記の例は、実世界の動作条件中に調整された容積効率値をモニタするシステムを開示するが、本発明は、閉ループモードで動作しているときにECMにより調整される他の値をモニタするために適用されうる。同様に、システムの種々の構成要素(例えば、VCI,ECM及び校正コンピューター)間のインターフェースは、選択的に接続可能な有線接続として開示されているが、他の実施例は、構成要素間の通信インターフェースとして無線接続を利用しうる。本発明の種々の特徴及び効果は、次の請求項に示される。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B