(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開口部の開口率((前記開口部の面積/前記区画部の面積)×100)は、10〜75%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の浮上分離装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る浮上分離装置の構成の一例を示す模式断面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る浮上分離装置の構成の一例を示す模式上面図である。
図1に示す浮上分離装置1は、浮上槽10、流入部11、排出部12、バッフル13、整流板14、浮上物スキマー15、沈殿物掻き寄せ機16、整流板スクレーパー17、を備える。
【0016】
本実施形態では、整流板14が浮上槽10内に設置され、浮上槽10が垂直方向の上部20a及び下部20bに区画される。また、整流板14には、処理水を通水させる複数の整流孔14aが形成されている。
【0017】
本実施形態では、浮上槽10の周壁10aは円筒形とされ、浮上槽10の底部10bは中央に向かって低位となるホッパ状とされている。また、底部10bの中央には、被処理物質のうちの沈殿物を溜めるピット18が設けられている。ピット18には、不図示の沈殿物排出口が設けられ、沈殿物排出管19が接続されている。
【0018】
浮上槽10には、集水口10cが設けられ、集水口10cは浮上槽10の下部20b側、すなわち整流板14より垂直方向下方に配置される。
【0019】
浮上槽10には、被処理物質のうち、液面に浮上した浮上物23(いわゆるスカム)を排出するための浮上物ポット24が設けられ、浮上物ポット24には、浮上物排出管44が接続されている。
【0020】
本実施形態では、流入部11は、ガイド筒26と、ガイド筒26内に設けられる導入管28とを有する。導入管28は浮上槽10の底部10bの中央に形成されたピット18から浮上槽10内に延設され、ガイド筒26に設けられた嵌挿孔に挿入されている。導入管28には、被処理水流入管30が接続され、被処理水流入管30には加圧水流入管32が接続されている。ガイド筒26は、整流板14に設けられた嵌挿孔に挿入され、底部10bや、周壁10aにフレームなどで固定される。
【0021】
本実施形態では、ガイド筒26の開口部26aは、浮上槽10の上部20aで開口しており、ガイド筒26の開口部26aから浮上槽10の上部20aに(加圧水を混合させた)被処理水を供給させる。ここで、本実施形態のように、整流板14により浮上槽10が上部20a及び下部20bに区画されている場合には、少なくともガイド筒26の開口部26aが上部20aで開口していればよい。なお、流入部11がガイド筒26を備えていない場合には、導入管28の開口部28aが上部20aで開口している必要がある。
【0022】
バッフル13は、浮上槽10の液面を流入部11から供給される被処理水の上流側液面と被処理水の下流側液面とに区画するものである。流入部11から供給される被処理水は、浮上槽10の周壁10aに向かって流れるから、流入部11とバッフル13との間の液面が上流側液面となり、バッフル13と浮上槽10の周壁10aとの間の液面が下流側液面となる。そして、バッフル13には、
図2に示すように、上流側液面と下流側液面とが連通する開口部13aが複数設けられている。
【0023】
本実施形態では、排出部12は、処理水取出管38、水位調整槽40、処理水排出管42を備える。処理水取出管38の一端は、浮上槽10に設けられた集水口10cに接続されており、処理水取出管38の他端は、水位調整槽40の入口に接続されている。また、水位調整槽40の出口には処理水排出管42が接続されている。
【0024】
本実施形態の浮上物スキマー15は、羽根、螺旋羽根等のスクレーパー部を有している。本実施形態の浮上物スキマー15は、モータ66に設置されたシャフトに固定されており、モータ66が駆動することにより、浮上物スキマー15が回転する。
【0025】
本実施形態の沈殿物掻き寄せ機16は、羽根、螺旋羽根等のスクレーパー部を有している。本実施形態の沈殿物掻き寄せ機16は、ガイド筒26に取り付けられると共に、支持体68により沈殿物掻き寄せ機16の角度調整、補強がなされている。このように、沈殿物掻き寄せ機16をガイド筒26に取り付ける場合には、ガイド筒26をモータ66に設置されたシャフトに取り付け、モータ66の駆動により、沈殿物掻き寄せ機16及びガイド筒26を一体に回転させることが、構造が複雑にならない点で、好ましい。
【0026】
本実施形態の整流板スクレーパー17は、羽根、螺旋羽根等のスクレーパー部を有している。本実施形態の整流板スクレーパー17は、ガイド筒26に取り付けられ、上記説明したように、モータ66の駆動により、整流板スクレーパー17及びガイド筒26を一体に回転させることが、構造が複雑にならない点で好ましい。
【0027】
次に、本実施形態に係る浮上分離装置1による運転方法の一例を説明する。まず、被処理水流入管30から被処理水を流入させると共に、加圧水流入管32から高圧下で気体を溶解させた加圧水を流入させる。加圧水は、処理水の一部を加圧タンクに導入し、ここにおいて高圧下で空気を溶解させて生成する。
【0028】
加圧水流入管32を通る加圧水は、被処理水流入管30を通る被処理水に混合される。被処理水及び加圧水からなる混合液は被処理水流入管30から、導入管28に供給される。被処理水及び加圧水は導入管28を介し、導入管28の開口部28aからガイド筒26内に供給される。ガイド筒26内に供給された被処理水及び加圧水は、ガイド筒26の開口部26aから浮上槽10の上部20aに流入し、浮上槽10の液面に向かって上昇する。浮上槽10の上部20a(及びガイド筒26内)は、大気圧状態であるため、加圧水に溶解していた気体が気泡として析出し、被処理水中の被処理物質(SS成分、油分等)に付着し、浮上物23として液面上に浮上する。なお、気泡の発生方法としては、上記のように加圧水を用いる方法に制限されるものではなく、その他に、例えば、界面活性剤等の気泡発生剤を被処理水に添加する方法等であってもよい。また、被処理水自体を空気溶解タンクに導入し、ここで被処理水に直接空気を溶解する全量加圧方式を採用してもよい。
【0029】
液面に浮上した被処理物質(浮上物23)は、回転する浮上物スキマー15のスクレーパー部により浮上物23が半径方向外側に移動させられ、浮上槽10に設けられた浮上物ポット24に集められ、浮上物排出管44から排出される。
【0030】
通常、浮上分離装置1の水面積負荷(浮上槽10の水平断面積に対する処理水量(線速度LV))を高くすると、ガイド筒26の開口部26aから浮上槽10の周壁10aに向かって流れる被処理水の流速も速くなるため、浮上槽10の液面に乱れが生じやすく、液面に浮上した浮上物23の再沈降を招く虞がある。しかし、本実施形態では、ガイド筒26の開口部26aから浮上槽10の上部20aに供給された被処理水は、ガイド筒26の開口部26aから浮上槽10の周壁10aに向かって流れ(流入部11から供給される被処理水の上流側を流れ)、バッフル13に到達した後、バッフル13に設けられた開口部13aを通るか又はバッフル13を潜って、流入部11から供給される被処理水の下流側へ流れる。これにより、水面積負荷(浮上槽10の水平断面積に対する処理水量(線速度LV))を高くしても、バッフル13の外側(下流側)での表面流速が低下するため、浮上槽10の液面が乱れ難くなり、液面に浮上した浮上物23の再沈降を抑制することができる。すなわち、本実施形態では、高速処理を行っても処理水の水質の悪化を抑制することができる。
【0031】
浮上槽10の上部20aで、被処理物質が除去された処理水は、整流板14に設けた整流孔14aを通り、浮上槽10の下部20bに供給される。整流板14を設けることにより、上部20aから下部20bへ流れる処理水の流れが整流されるため、上部20aから下部20bへ流れる処理水の流速は、整流板14の整流効果により、どの場所でもほぼ均一となる。その結果、浮上槽10の上部20a全体を浮上分離処理に使用することが可能となり、効率的に気泡を被処理物質に付着させることができるため、処理能力を向上させることができる。さらに、気泡が付着しても浮上することができない比重の重い被処理物質(沈殿物)や、気泡が十分付着しなかった被処理物質が、上部20aから下部20bへ流れる処理水の流速が速い箇所の底部10bに局所的に沈殿することが抑えられ、底部10b全体に沈殿する。このように、被処理物質の除去において、浮上槽10全体を有効に使用することができるため、装置の小型化、浮上分離槽装置の高速処理が可能となる。
【0032】
次に、整流板14に形成された整流孔14aを通って、浮上槽10の下部20bに供給された処理水は、浮上槽10の集水口10cから処理水取出管38を通り、水位調整槽40に供給される。水位調整槽40に設けられた可動堰41の高さを調整することで、浮上槽10における水位を調整でき、浮上槽10の水位が浮上物23の浮上物ポット24への排出に適した水位に調整される。そして、処理水が水位調整槽40の出口から処理水排出管42へ排出される。なお、可動堰41を間欠的に上昇させ、これによって浮上槽10内の浮上物23を浮上物ポット24へオーバーフローさせることも可能である。
【0033】
一方、気泡が付着しても浮上することができない比重の重い被処理物質(沈殿物)や、気泡が十分付着しなかった被処理物質は、整流板14上や浮上槽10の底部10bに沈殿する。整流板14に沈殿した沈殿物は、回転する整流板スクレーパー17のスクレーパー部により掻き取られ、整流板14の整流孔14aから排出される。また、浮上槽10の底部10bに沈殿した沈殿物は、回転する沈殿物掻き寄せ機16のスクレーパー部により、掻き寄せられ、浮上槽10のピット18に集められ、沈殿物排出管19から排出される。このようにして、被処理水の処理が行われる。
【0034】
本実施形態で用いられる浮上槽10の周壁10aは円筒形であるが、矩形とされてもよい。しかし、浮上槽10の周壁10aを円筒状にするとともに、ガイド筒26の開口部26aを浮上槽10の中心部(整流板14が設けられている場合は、浮上槽10の上部20aの中心部)において垂直方向上方に開口させることが好ましい。上記構成によって、被処理水はガイド筒26の開口部26aから放射状に拡がりながら流れる分散流れとなって、浮上槽10の周壁10aに達する。その結果、開口部26aから供給された被処理水の流れは、浮上槽10の周壁10aに到達するまでに緩やかになり、周壁10aに沿って流れる被処理水の下降流も緩やかになる。したがって、急速な下降流によって生じる処理水の水質の悪化は抑制される。
【0035】
本実施形態では、
図1に示すように、バッフル13は、浮上槽10の液面を周回するように、浮上物スキマー15等に設置されることが好ましい。これにより、浮上物スキマー15と共にバッフル13の開口部13aを移動させることができるため、流入部11から供給される被処理水の上流側液面に浮上した浮上物23が、上流側液面で留まり難くなるため、浮上物23を効率的に排出することができる。
【0036】
本実施形態のバッフル13の形状は、特に制限されるものではないが、浮上槽10が円筒状であれば、
図2に示すように、開口部13aを含めたバッフル13の形状は浮上槽10の周壁10aと同様に円状であることが好ましい。
【0037】
バッフル13は、浮上槽10の半径(
図2に示すR)に対する流入部11からバッフル13(区画部)までの距離(
図2に示すL)が0.2〜0.8(L/R)の範囲となる位置に設置されることが好ましく、0.4〜0.7の範囲となる位置に設置されることがより好ましい。L/Rが0.2未満であると、流入部11からバッフル13までの距離が短いため、流入部11から出た被処理水がバッフル13で、下降流となり易くなる。その結果、浮上槽10全体を浮上分離処理に使用することができず、処理能力を十分に確保することができない場合がある。また、L/Rが0.8を超えると、流入部11からバッフル13までの距離が遠いため、水面積負荷(浮上槽10の水平断面積に対する処理水量(線速度LV))を高くした場合にバッフル13の外側(下流側)で主に起こる被処理物質を浮上させる面積が減少し、被処理物質を効率的に浮上させることができない場合がある。また、浮上物ポット24は浮上物23を系外に排出するために最低限の大きさを確保することが好ましいが、L/Rが0.8を超えると浮上物ポット24の設置が困難となる場合がある。
【0038】
また、前記浮上分離装置において、バッフル13の下端は、浮上槽10の液面から10mm〜500mmの範囲の深さ位置にあることが好ましく、30mm〜300mmの範囲の深さ位置にあることがより好ましい。バッフル13の下端が浮上槽10の液面から10mm未満の深さ位置にある場合、水面積負荷(浮上槽10の水平断面積に対する処理水量(線速度LV))を高くすると、浮上槽10の液面が乱れ、液面に浮上した浮上物23が再沈降し易くなる場合がある。また、バッフル13の下端が浮上槽10の液面から500mmを超える深さ位置にある場合、流入部11から出た被処理水がバッフル13で、下降流となり易くなるため、浮上槽10全体を浮上分離処理に使用することができず、処理能力を十分に確保することができない場合がある。
【0039】
また、バッフル13に形成される開口部13aの開口率((開口部の面積/前記バッフル13の面積)×100)は、10〜75%の範囲であることが好ましく、20〜60%の範囲であることがより好ましい。バッフル13に形成される開口部13aの開口率が10%未満であると、流入部11から供給される被処理水の上流側液面に浮上した浮上物23を下流側液面側に送ることが困難となるため、浮上物23を効率的に排出することができず、浮上物23の再沈降が生じてしまう場合がある。また、バッフル13に形成される開口部13aの開口率が75%を超えると、浮上槽10の液面の乱れを抑える面積が減少するため、液面に浮上した浮上物23が再沈降し易くなる場合がある。
【0040】
本実施形態では、流入部11は、ガイド筒26と、ガイド筒26内に設けられる導入管28と、を有するが、流入部11は、浮上槽10に被処理水を導入し、被処理水を浮上槽10の液面方向に導くことができる構成であれば特に制限されるものではなく、例えば、流入部11は、ガイド筒26を備えず、導入管28から構成されていてもよい。
【0041】
本実施形態のガイド筒26の開口部26aは、上記でも説明したように、浮上槽10の周壁10aが円筒状である場合、浮上槽10の中心部(整流板14が設けられる場合は、浮上槽10の上部20aの中心部)に配置されることが好ましい。ここで、中心部とは、浮上槽10の水平断面における中心から周壁10aまでの距離に対し、中心から1/3以内の領域である。また、ガイド筒26の開口部26aが、浮上槽10の液面付近に位置すると、ガイド筒26の開口部26aから供給される被処理水が液面に噴き上げて、液面を乱し、液面に浮上した浮上物23の再沈降を招く虞があるため、液面から下方に位置することが好ましい。なお、流入部11が、ガイド筒26を備えず、導入管28から構成されている場合には、導入管28の開口部28aが、浮上槽10の中心部に配置されることが好ましく、また、液面から下方に位置することが好ましい。
【0042】
ガイド筒26の開口部26aの形状(流入部11が導入管28から構成されている場合は、導入管28の開口部28aの形状)は、特に制限されるものではないが、ガイド筒26の開口部26aから供給される被処理水が放射状に分散し易くなる点で、浮上槽10において上方に向けてテーパ状に広がっていることが好ましい。また、ガイド筒26の開口部26aの水平断面積は、特に制限されるものではないが、流入部11を流れる被処理水の流速を適切に制御することができる点で、好ましくは浮上槽10の水平断面積の1/30〜1/3の範囲、より好ましくは浮上槽10の水平断面積の1/20〜1/8の範囲とするのがよい。ガイド筒26の開口部26aの水平断面積が浮上槽10の水平断面積の1/30より小さいと、開口部26aから出る際の被処理水の流速が速くなるため、開口部26aから浮上槽10の周壁10aに向かって流れる被処理水の流速も速くなり、浮上槽10の液面に乱れが生じやすく、液面に浮上した浮上物23の再沈降を招く虞がある。また、浮上槽10の周壁10aに沿って流れる被処理水の下降流も速くなるため、整流板14の全体を有効に利用することができず、その整流効果が減少し、処理水の水質が悪化する可能性がある。また、開口部26aの水平断面積が浮上槽10の水平断面積の1/3より大きいと、浮上槽10の面積を確保することが難しくなり、浮上槽10の水面積負荷が大きくなり、効率的な浮上処理が行えなくなる。
【0043】
本実施形態では、浮上槽10内に整流板14を必ずしも設置する必要はないが、浮上槽10内を流れる被処理水の下降流を均一にすることができる点で、浮上槽10内に整流板14を設置することが好ましい。
【0044】
本実施形態では、浮上分離装置1に浮上物スキマー15を必ずしも設置する必要はないが、浮上物23を効率的に排出することができる点で、浮上分離装置1に浮上物スキマー15を設置することが好ましい。浮上物スキマー15は、液面に浮上した浮上物23を掻き寄せることができるものであれば、本実施形態の構成に制限されるものではない。
【0045】
本実施形態では、浮上分離装置1に整流板スクレーパー17及び沈殿物掻き寄せ機16を必ずしも設置する必要はないが、沈殿物を効率的に排出することができるため、メンテナンス回数を減らし、装置の長期連続運転が可能となる点で、整流板スクレーパー17及び沈殿物掻き寄せ機16を設置することが好ましい。沈殿物掻き寄せ機16は、浮上槽10の底部10bに沈殿した沈殿物を掻き寄せることができるものであれば、本実施形態の構成に制限されるものではない。整流板スクレーパー17は、整流板14に沈殿した沈殿物を掻き取り、整流板14の整流孔14aから下方に落下排出することができるものであれば、本実施形態の構成に制限されるものではない。
【0046】
なお、浮上物スキマー15、沈殿物掻き寄せ機16、整流板スクレーパー17の回転数は同一でなく、それぞれ異ならせてもよい。しかし、同一回転数とすれば、減速機構等が不要で、駆動機構を簡単にすることができる。
【0047】
図3は、本発明の他の実施形態に係る浮上分離装置の構成の一例を示す模式断面図である。
図4は、本発明の他の実施形態に係る浮上分離装置の構成の一例を示す模式上面図である。
図3に示す浮上分離装置2において、浮上槽50の周壁50aは矩形であり、浮上槽50内は、上部開放の隔壁50bにより、流入部52と浮上室54に区画されている。また、浮上室54には、整流板55が設置され、整流板55により浮上室54が垂直方向上部59a及び下部59bに区画される。整流板55は、処理水を通水させる複数の整流孔55aが形成されている。
【0048】
浮上室54には、バッフル57が設置されており、バッフル57により、浮上槽50の液面は流入部52から供給される被処理水の上流側液面と下流側液面とに区画される。また、
図4に示すように、バッフル57には、流入部52から供給される被処理水の上流側液面と下流側液面とが連通する開口部57aが設けられている。また、
図4に示すように、バッフル57は浮上室54の短手方向に沿って設けられている。
【0049】
流入部52には、被処理水流入管30が接続されている。被処理水流入管30には加圧水流入管32が接続されている。浮上室54の底部には、被処理物質のうちの沈殿物を溜めるピット18が設けられており、ピット18の沈殿物排出口には沈殿物排出管19が接続されている。浮上室54の下部には、処理水排出管42が接続されている。浮上槽10には、液面に浮上した浮上物(いわゆるスカム)を排出するための浮上物ポット24が設けられ、浮上物ポット24には、浮上物排出管44が接続されている。
【0050】
図3に示す浮上分離装置2には、浮上室54の底部に沈殿した沈殿物を掻き寄せる沈殿物掻き寄せ機63、浮上室の液面に浮上した浮上物を掻き取る浮上物スキマー61、不図示であるが整流板55に沈殿した沈殿物を掻き取り整流板55の整流孔55aから下方に排出する整流板スクレーパーが設けられる。
【0051】
沈殿物掻き寄せ機63及び浮上物スキマー61の構成は特に制限されるものではないが、
図3に示す沈殿物掻き寄せ機63及び浮上物スキマー61は、浮上室54の底部で所定の間隔を隔てて配置される2つのローラ65a,65bと、これらのローラ65a,65bに掛けられる無端ベルト69と、無端ベルト69上に形成される羽根等のスクレーパー部とを備える。また、2つのローラ65a,65bのうちの一方のローラには、不図示のモータが接続される。モータが駆動することにより、ローラ65a,65b、無端ベルト69が回転する。
【0052】
次に、本実施形態に係る浮上分離装置2による運転方法の一例を説明する。浮上分離装置2において、被処理水流入管30(及び加圧水流入管32)から流入部52に流入した加圧水及び被処理水は、液面に向かって上昇して、流入部52の開口部52aから、隣接する浮上室54の上部59aに流入する。浮上室54の上部59aでは、被処理水中の被処理物質が浮上物として液面上に浮かび、浮上物が除去された処理水は整流板55の整流孔55aを通り、処理水排出管42から排出される。
【0053】
上記でも説明したように、浮上分離装置2の水面積負荷(浮上槽50の水平断面積に対する処理水量(線速度LV))を高くすると、浮上室54の表層を流れる被処理水の流速も速くなるため、浮上室54の液面に乱れが生じやすく、液面に浮上した浮上物の再沈降を招く虞がある。しかし、本実施形態では、流入部52の開口部52aから浮上室54の上部59aに供給された被処理水は、流入部52から供給される被処理水の上流側の表層を流れ、バッフル57に到達した後、バッフル57に設けられた開口部57aを通るか又はバッフル57を潜って、流入部52から供給される被処理水の下流側へ流れる。これにより、水面積負荷(浮上槽50の水平断面積に対する処理水量(線速度LV))を高くしても、バッフル57の外側(下流側)での表面流速が低下するため、浮上槽50の液面が乱れ難くなり、液面に浮上した浮上物の再沈降を抑制することができる。すなわち、本実施形態では、高速処理を行っても処理水の水質の悪化を抑制することができる。
【0054】
浮上室54の液面に浮上した浮上物は、浮上物スキマー61により、浮上物ポット24に掻き寄せられ、浮上物排出管44から排出される。整流板55に沈殿した沈殿物は、不図示の整流板スクレーパーにより掻き寄せられ、整流孔55aから排出される。また、浮上室54の底部に沈殿した沈殿物は、沈殿物掻き寄せ機63により、ピット18に掻き寄せられ、沈殿物排出管19から排出される。
【0055】
バッフル57は、流入部52側の浮上槽50の側壁から流入部52と反対側の浮上槽50の側壁までの距離(
図4に示すR)に対する流入部52からバッフル57(区画部)までの距離(
図4に示すL)が0.2〜0.8(L/R)の範囲となる位置に設置されることが好ましく、0.4〜0.7の範囲となる位置に設置されることがより好ましい。L/Rが0.2未満であると、流入部52からバッフル57までの距離が短いため、流入部52から出た被処理水がバッフル57で、下降流となり易くなる。その結果、浮上槽50全体を浮上分離処理に使用することができず、処理能力を十分に確保することができない場合がある。また、L/Rが0.8を超えると、流入部52からバッフル57までの距離が遠いため、水面積負荷(浮上槽50の水平断面積に対する処理水量(線速度LV))を高くした場合にバッフル57の外側(下流側)で主に起こる被処理物質を浮上させる面積が減少し、被処理物質を効率的に浮上させることができない場合がある。
【0056】
また、バッフル57の下端は、浮上槽50の液面から10mm〜500mmの範囲の深さ位置にあることが好ましく、30mm〜300mmの範囲の深さ位置にあることがより好ましい。バッフル57の下端が浮上槽50の液面から10mm未満の深さ位置にある場合、水面積負荷(浮上槽50の水平断面積に対する処理水量(線速度LV))を高くすると、浮上槽50の液面が乱れ、液面に浮上した浮上物が再沈降し易くなる場合がある。また、バッフル57の下端が浮上槽50の液面から500mmを超える深さ位置にある場合、流入部52から出た被処理水がバッフル57で、下降流となり易くなるため、浮上槽50全体を浮上分離処理に使用することができず、処理能力を十分に確保することができない場合がある。
【0057】
また、バッフル57に形成される開口部57aの開口率((開口部の面積/バッフルの面積)×100)は、10〜75%の範囲であることが好ましく、20〜60%の範囲であることがより好ましい。バッフル57に形成される開口部57aの開口率が10%未満であると、流入部52から供給される被処理水の上流側液面に浮上した浮上物を下流側液面側に送ることが困難となるため、浮上物23を効率的に排出することができず、浮上物の再沈降が生じてしまう場合がある。また、バッフル57に形成される開口部57aの開口率が75%を超えると、浮上槽50の液面の乱れを抑える面積が減少するため、液面に浮上した浮上物が再沈降し易くなる場合がある。
【実施例】
【0058】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
図1の浮上分離装置1を用い、下記の条件で被処理水の浮上分離処理を行い、浮上分離後の処理水の濁度を測定した。浮上分離装置に供給する被処理水は、予め凝集処理槽(サイズ:3000L、1600mmΦ×高さ2000mm)で、下記の条件で凝集処理したものを用いた。
【0060】
<試験条件>
被処理水:相模原地下水にカオリンを10mg/L、フミンを1mg/L添加したもの
被処理水濁度:平均8.7度
凝集処理時に用いた凝集剤:ポリ塩化アルミニウム(PAC)を30mg/L添加
凝集時の被処理水pH:7(pH調整剤としてHCl、NaOHを添加)
被処理水流量:50m
3/hr
加圧水比:20%
通水速度:30.9m/h
浮上物スキマー速度:2分/周
【0061】
<浮上分離装置サイズ>
浮上槽:1600mmΦ
ガイド筒:300mmΦ
【0062】
<バッフル>
流入部からバッフルまでの距離(L)/浮上槽の半径(R)を0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8に設定した(L=80、160、240、320、400、480、560、640mm)。バッフルの下端を浮上槽の液面から60mmの深さ位置とした。バッフルに設けられる開口部の開口率((開口部の面積/バッフルの面積)×100)を20%とした。
【0063】
(実施例2)
実施例2では、流入部からバッフルまでの距離(L)/浮上槽の半径(R)を0.5に設定した(L=400mm)。バッフルの下端を浮上槽の液面から5、10、30、60、100、300、500、750mmの深さ位置とした。バッフルに設けられる開口部の開口率((開口部の面積/バッフルの面積)×100)を20%とした。これら以外は、実施例1と同様の条件で行った。
【0064】
(実施例3)
実施例3では、流入部からバッフルまでの距離(L)/浮上槽の半径(R)を0.5に設定した(L=400mm)。バッフルの下端を浮上槽の液面から60mmの深さ位置とした。バッフルに設けられる開口部の開口率((開口部の面積/バッフルの面積)×100)を5、10、20、40、60、75、90%とした。これら以外は、実施例1と同様の条件で行った。
【0065】
図5は、実施例1における処理水濁度の結果を示す図である。
図5に示すように、バッフルが浮上槽に設置されていれば、L/Rがいずれの値でも、処理水の平均濁度は2度以下となった。これは、バッフルを設置することにより、浮上槽の液面の乱れが抑制されるため、浮上物の再沈降が抑制され、処理性能が向上するためである。特に、L/Rを0.2〜0.8の範囲に設定することにより、処理水の平均濁度は0.5以下となり、L/Rを0.4〜0.7の範囲に設定することにより、処理水の平均濁度は0.4以下となり、良好な水質の処理水が得られた。
【0066】
図6は、実施例2における処理水濁度の結果を示す図である。
図6に示すように、バッフルが浮上槽に設置されていれば、バッフルの下端を浮上槽の液面からいずれの深さ位置にしても、処理水の平均濁度は1.2度以下となった。特に、バッフルの下端を浮上槽の液面から10〜500mmの範囲に設定することにより、処理水の平均濁度は0.5以下となり、バッフルの下端を浮上槽の液面から30〜300mmの範囲に設定することにより、処理水の平均濁度は0.4以下となり、良好な水質の処理水が得られた。
【0067】
図7は、実施例3における処理水濁度の結果を示す図である。
図7に示すように、バッフルが浮上槽に設置されていれば、バッフルに設けられる開口部の開口率がいずれの値でも、処理水の平均濁度は1.4以下となった。特に、開口部の開孔率を10〜70%の範囲に設定することにより、処理水の平均濁度は0.5以下となり、開口部の開孔率を20〜60%の範囲に設定することにより、処理水の平均濁度は0.4以下となり、良好な水質の処理水が得られた。