特許第5697925号(P5697925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5697925磁気共鳴イメージング装置、スライス位置設定方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697925
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置、スライス位置設定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   A61B5/05 370
【請求項の数】13
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2010-190448(P2010-190448)
(22)【出願日】2010年8月27日
(65)【公開番号】特開2012-45192(P2012-45192A)
(43)【公開日】2012年3月8日
【審査請求日】2013年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100106541
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 信和
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆男
【審査官】 宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−224546(JP,A)
【文献】 特開平04−035648(JP,A)
【文献】 特開平06−189934(JP,A)
【文献】 特開平07−051248(JP,A)
【文献】 特開平08−007080(JP,A)
【文献】 特開平08−289888(JP,A)
【文献】 特開2003−210430(JP,A)
【文献】 特開2004−298634(JP,A)
【文献】 特開2006−129937(JP,A)
【文献】 特開2008−132019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の椎間板を撮影する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記被検体から収集された磁気共鳴信号に基づいて、椎間板の間隔を算出する椎間板間隔算出手段と、
脳脊髄液の基準モデルが有する複数のランドマークの間隔を、前記椎間板の間隔に基づいて調整するランドマーク間隔調整手段と、

前記ランドマークの間隔が調整された前記基準モデルを、前記被検体の脳脊髄液に合わせて変形し、前記被検体の脳脊髄液に対して位置決めする基準モデル位置決め手段と、

前記基準モデル位置決め手段により位置決め後の複数のランドマークの各々を変位させるランドマーク変位手段と、

前記複数のランドマークの各々を横切り椎間板を横切るライン上の磁気共鳴信号に関するプロファイルを作成するプロファイル作成手段と、

前記プロファイルに基づいて、前記椎間板に、前記椎間板のスライス位置を位置決めするための基準点を設定する基準点設定手段と、

前記基準点に基づいて、前記椎間板に対してスライス位置を位置決めするスライス位置決め手段と、
を有する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記椎間板間隔算出手段は、前記椎間板の間隔を、前記磁気共鳴信号に基づいて作成された周波数スペクトルに基づいて算出するものである、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記プロファイル作成手段において作成されるプロファイルは、前記ランドマーク変位手段における変位前後のランドマークを横切り椎間板を横切るラインであって当該ランドマーク間で互いに平行なライン上のプロファイルを含む、請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記プロファイル作成手段において、前記複数のランドマークの各々を横切り椎間板を横切るラインは、当該ランドマークとその隣のランドマークとを結ぶ線分、又は当該ランドマークの両隣のランドマークを結ぶ線分に垂直となるように規定されている、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記椎間板の長軸方向を検出する長軸方向検出手段を有し、
前記スライス位置決め手段は、前記基準点と前記長軸方向に基づいて、前記椎間板のスライス位置を位置決めする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記プロファイルは、前記磁気共鳴信号の信号強度を表す信号強度プロファイルである、請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記プロファイル作成手段により作成された複数のプロファイルの各々の特徴量を算出する特徴量算出手段を有し、
前記基準モデル位置決め手段は、
前記複数のプロファイルの各々の特徴量に基づいて、前記ランドマークの位置を調整する、請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記特徴量は、信号強度の積分値である、請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記基準モデル位置決め手段は、前記複数のプロファイルの各々の信号強度の積分値の加算値を用いて、前記ランドマークの位置を調整する、請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
背骨の位置を検出する背骨検出手段を有し、
前記基準モデル位置決め手段は、前記背骨の位置を含むサジタル面をスキャンすることにより得られたサジタル画像データを用いて、前記ランドマークの間隔が調整された前記基準モデルを、前記被検体の脳脊髄液に対して位置決めする、請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記被検体のコロナル画像データに基づいて、前記周波数スペクトルを作成する、請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
被検体の椎間板のスライス位置を設定するスライス位置設定方法であって、
前記被検体から収集された磁気共鳴信号に基づいて、椎間板の間隔を算出する椎間板間隔算出ステップと、
脳脊髄液の基準モデルが有する複数のランドマークの間隔を、前記椎間板の間隔に基づいて調整するランドマーク間隔調整ステップと、

前記ランドマークの間隔が調整された前記基準モデルを、前記被検体の脳脊髄液に合わせて変形し、前記被検体の脳脊髄液に対して位置決めする基準モデル位置決めステップと、

前記基準モデル位置決め手段により位置決め後の複数のランドマークの各々を変位させるランドマーク変位ステップと、

前記複数のランドマークの各々を横切り椎間板を横切るライン上の磁気共鳴信号に関するプロファイルを作成するプロファイル作成ステップと、

前記プロファイルに基づいて、前記椎間板に、前記椎間板のスライス位置を位置決めするための基準点を設定する基準点設定ステップと、

前記基準点に基づいて、前記椎間板に対してスライス位置を位置決めするスライス位置決めステップと、
を有する、スライス位置設定方法。
【請求項13】
被検体の椎間板を撮影する磁気共鳴イメージング装置のプログラムであって、
前記被検体から収集された磁気共鳴信号に基づいて、椎間板の間隔を算出する椎間板間隔算出処理と、
脳脊髄液の基準モデルが有する複数のランドマークの間隔を、前記椎間板の間隔に基づいて調整するランドマーク間隔調整処理と、

前記ランドマークの間隔が調整された前記基準モデルを、前記被検体の脳脊髄液に合わせて変形し、前記被検体の脳脊髄液に対して位置決めする基準モデル位置決め処理と、

前記基準モデル位置決め手段により位置決め後の複数のランドマークの各々を変位させるランドマーク変位処理と、

前記複数のランドマークの各々を横切り椎間板を横切るライン上の磁気共鳴信号に関するプロファイルを作成するプロファイル作成処理と、

前記プロファイルに基づいて、前記椎間板に、前記椎間板のスライス位置を位置決めするための基準点を設定する基準点設定処理と、

前記基準点に基づいて、前記椎間板に対してスライス位置を位置決めするスライス位置決め処理と、
を計算機に実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の椎間板を撮影する磁気共鳴イメージング装置、スライス位置設定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、椎間板のスライス位置を自動的に決定し、椎間板の撮影を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-51248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スライス位置が椎間板からずれてしまうと、椎間板の医学的診断をすることが難しくなるので、椎間板のスライス位置は、できるだけ椎間板の中心付近を横切るように設定することが望まれる。しかし、椎間板の厚さは薄く、被検体によっては、椎間板が変形していることもあるので、場合によっては、スライス位置が椎間板からずれてしまうことがある。スライス位置を椎間板に一致させるには、オペレータがスライス位置を手動で設定すればよいが、これでは、オペレータの手間が増えてしまうという問題がある。したがって、オペレータにできるだけ手間をかけることなく、スライス位置の精度を高めることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、被検体の椎間板を撮影する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記被検体から収集された磁気共鳴信号に基づいて、周波数スペクトルを作成する周波数スペクトル作成手段と、
前記周波数スペクトルに基づいて、椎間板の間隔を算出する椎間板間隔算出手段と、
脳脊髄液の基準モデルが有する複数のランドマークの間隔を、前記椎間板の間隔に基づいて調整するランドマーク間隔調整手段と、
前記ランドマークの間隔が調整された前記基準モデルを、前記被検体の脳脊髄液に合わせて変形し、前記被検体の脳脊髄液に対して位置決めする基準モデル位置決め手段と、
前記複数のランドマークの各々を変位させるランドマーク変位手段と、
前記複数のランドマークの各々を横切るライン上の磁気共鳴信号に関するプロファイルを作成するプロファイル作成手段と、
前記プロファイルに基づいて、前記椎間板に、前記椎間板のスライス位置を位置決めするための基準点を設定する基準点設定手段と、
前記基準点に基づいて、前記椎間板に対してスライス位置を位置決めするスライス位置決め手段と、を有する、である。

本発明の第2の態様は、被検体の椎間板のスライス位置を設定するスライス位置設定方法であって、
前記被検体から収集された磁気共鳴信号に基づいて、周波数スペクトルを作成する周波数スペクトル作成ステップと、
前記周波数スペクトルに基づいて、椎間板の間隔を算出する椎間板間隔算出ステップと、
脳脊髄液の基準モデルが有する複数のランドマークの間隔を、前記椎間板の間隔に基づいて調整するランドマーク間隔調整ステップと、
前記ランドマークの間隔が調整された前記基準モデルを、前記被検体の脳脊髄液に合わせて変形し、前記被検体の脳脊髄液に対して位置決めする基準モデル位置決めステップと、
前記複数のランドマークの各々を変位させるランドマーク変位ステップと、
前記複数のランドマークの各々を横切るライン上の磁気共鳴信号に関するプロファイルを作成するプロファイル作成ステップと、
前記プロファイルに基づいて、前記椎間板に、前記椎間板のスライス位置を位置決めするための基準点を設定する基準点設定ステップと、
前記基準点に基づいて、前記椎間板に対してスライス位置を位置決めするスライス位置決めステップと、
を有する、スライス位置設定方法である。

本発明の第3の態様は、被検体の椎間板を撮影する磁気共鳴イメージング装置のプログラムであって、
前記被検体から収集された磁気共鳴信号に基づいて、周波数スペクトルを作成する周波数スペクトル作成処理と、
前記周波数スペクトルに基づいて、椎間板の間隔を算出する椎間板間隔算出処理と、
脳脊髄液の基準モデルが有する複数のランドマークの間隔を、前記椎間板の間隔に基づいて調整するランドマーク間隔調整処理と、
前記ランドマークの間隔が調整された前記基準モデルを、前記被検体の脳脊髄液に合わせて変形し、前記被検体の脳脊髄液に対して位置決めする基準モデル位置決め処理と、
前記複数のランドマークの各々を変位させるランドマーク変位処理と、
前記複数のランドマークの各々を横切るライン上の磁気共鳴信号に関するプロファイルを作成するプロファイル作成処理と、
前記プロファイルに基づいて、前記椎間板に、前記椎間板のスライス位置を位置決めするための基準点を設定する基準点設定処理と、
前記基準点に基づいて、前記椎間板に対してスライス位置を位置決めするスライス位置決め処理と、
を計算機に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0006】
脳脊髄液の基準モデルが有する複数のランドマークの間隔を、被検体の椎間板の間隔に基づいて調整しているので、被検体の椎間板の間隔に応じたスライス位置を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置の概略図である。
図2】MRI装置100の処理フローの一例を示す図である。
図3】コロナルスキャンが実行されるときのスライス位置を示す図である。
図4】オペレータ13が選択したコロナル画像ICの一例を示す図である。
図5】コロナル画像ICをフーリエ変換することにより得られた周波数スペクトルの一例である。
図6】背骨の位置の検出方法を説明する図である。
図7】スキャンされるサジタル面SAを示す図である。
図8】サジタル画像データSIの一例を示す図である。
図9】脳脊髄液の基準モデルMCの作成手順の説明図である。
図10】脳脊髄液の基準モデルMCのランドマークMの間隔を、椎間板の間隔SPに基づいて調整するときの様子を示す図である。
図11】脳脊髄液の基準モデルMCを被検体12の脳脊髄液に合わせて変形し、被検体12の脳脊髄液に対して位置決めするときの説明図である。
図12】ランドマークMを横切るライン上の信号強度プロファイルを説明する図である。
図13】ランドマークMを横切るライン上の信号強度プロファイルを説明する図である。
図14】ランドマークM〜Mの各々に対して得られた信号強度プロファイルを示す概略図である。
図15】ランドマークMの位置を変位させたときの信号強度プロファイルを示す図である。
図16】椎間板DKに、スライス位置を位置決めするときの基準点を設定するときの説明図である。
図17】全ての椎間板DK〜DKに、スライス位置を位置決めするための基準点が設定されたときの様子を示す図である。
図18】各椎間板DK〜DKの長軸方向LD〜LDを示す図である。
図19】スライス位置を示す図である。
図20】サジタル画像データSIの中におけるスライス位置SL〜SLを示す図である。
図21】第2の形態のMRI装置200の概略図である。
図22】MRI装置200の処理フローの一例を示す図である。
図23】信号強度プロファイルP〜Pの各々の信号強度の積分値Intを示す図である。
図24】変位させた後の複数のランドマークを示す図である。
図25】変位後のランドマークM〜M(白丸)を横切る信号強度プロファイルP′〜P′を示す図である。
図26】信号強度プロファイルP′〜P′の各々の信号強度の積分値Int′を示す図である。
図27】ランドマークの位置の調整方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0009】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置の概略図である。
磁気共鳴イメージング装置(MRI装置 MRI:Magnetic Resonance Imaging)100は、磁場発生装置2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0010】
磁場発生装置2は、被検体12が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、送信コイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場B0を印加し、勾配コイル23は、勾配磁場を印加する。また、送信コイル24はRFパルスを送信する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0011】
テーブル3は、被検体12を支持するためのクレードル31を有している。クレードル31は、ボア21に移動できるように構成されている。クレードル31によって、被検体12はボア21に搬送される。
【0012】
受信コイル4は、被検体12の胸部から腹部に渡って取り付けられており、磁気共鳴信号を受信する。
【0013】
MRI装置100は、更に、シーケンサ5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、中央処理装置9、入力装置10、および表示装置11を有している。
【0014】
シーケンサ5は、中央処理装置9の制御を受けて、パルスシーケンスを実行するための情報を送信器6および勾配磁場電源7に送る。具体的には、シーケンサ5は、中央処理装置9の制御を受けて、RFパルスの情報(中心周波数、バンド幅など)を送信器6に送り、勾配磁場の情報(勾配磁場の強度など)を勾配磁場電源7に送る。
【0015】
送信器6は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、RFコイル24を駆動する駆動信号を出力する。
【0016】
勾配磁場電源7は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、勾配コイル23を駆動する駆動信号を出力する。
【0017】
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号を信号処理し、中央処理装置9に伝送する。
【0018】
中央処理装置9は、シーケンサ5および表示装置11に必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取った信号に基づいて画像を再構成するなど、MRI装置100の各種の動作を実現するように、MRI装置100の各部の動作を制御する。中央処理装置9は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。中央処理装置9は、周波数スペクトル作成手段9A〜スライス位置決め手段9Jを有している。
【0019】
周波数スペクトル作成手段9Aは、コロナル画像データIC(図4参照)に関する周波数スペクトルを作成する。
【0020】
背骨検出手段9Bは、周波数スペクトル作成手段9Aにより作成された周波数スペクトルFS(図5参照)に基づいて、被検体12の背骨がどこに位置しているかを検出する。
【0021】
椎間板間隔算出手段9Cは、周波数スペクトルFS(図5参照)に基づいて、被検体12の椎間板の間隔SPを算出する。
【0022】
ランドマーク間隔調整手段9Dは、脳脊髄液の基準モデルMCが有する複数のランドマークM〜Mの間隔δi,i+1を、算出された椎間板の間隔SPに基づいて調整する(図10参照)。
【0023】
基準モデル位置決め手段9Eは、ランドマークの間隔が調整された基準モデルMCを、被検体12の脳脊髄液に合わせて変形し、前記被検体12の脳脊髄液に対して位置決めする(図11参照)。
【0024】
ランドマーク変位手段9Fは、複数のランドマークM〜Mの各々を変位させる。
プロファイル作成手段9Gは、複数のランドマークの各々を横切るライン上の磁気共鳴信号に関するプロファイルを作成する。
【0025】
基準点設定手段9Hは、プロファイル作成手段9Gが作成したプロファイルに基づいて、椎間板に、椎間板のスライス位置を位置決めするための基準点を設定する。
【0026】
長軸方向検出手段9Iは、椎間板の長軸方向を検出する。
スライス位置決め手段9Jは、基準点設定手段9Hにより設定された基準点と、長軸方向検出手段9Iにより検出された椎間板の長軸方向とに基づいて、椎間板のスライス位置を位置決めする。
【0027】
中央処理装置9は、周波数スペクトル作成手段9A〜スライス位置決め手段9Jの一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0028】
入力装置10は、オペレータ13の操作に応じて、種々の命令を中央処理装置9に入力する。表示装置11は種々の情報を表示する。
【0029】
MRI装置100は、上記のように構成されている。次に、MRI装置100の処理フローについて説明する。
【0030】
図2は、MRI装置100の処理フローの一例を示す図である。
ステップS1では、複数のコロナル画像を得るためのスキャン(以下、「コロナルスキャン」と呼ぶ)が実行される。
【0031】
図3は、コロナルスキャンが実行されるときのスライス位置を示す図である。
MRI装置100は、事前に設定された条件に従って、コロナルのスライス面CP〜CPを自動で設定し、コロナルスキャンを実行する。コロナルスキャンを実行することにより、各スライス面CP〜CPにおけるコロナル画像の磁気共鳴信号を収集することができる。尚、コロナルスキャンは、3Dスキャンでもよいし2Dスキャンでもよい。磁気共鳴信号は、受信コイル4(図1参照)で受信され、受信器8に送信される。受信器8は、受信コイル4から伝送された信号に対して、デジタル処理を含む所定の信号処理を行い、中央処理装置9に出力する。中央処理装置9では、受信器8から得られた信号に基づいて、複数のコロナル画像を再構成する。オペレータ13は、再構成された複数のコロナル画像を表示装置11に表示させ、複数のコロナル画像の中から、背骨を横切っているコロナル画像を選択する。図4に、オペレータ13が選択したコロナル画像ICの一例を示す。オペレータ13がコロナル画像ICを選択したら、ステップST2に進む。
【0032】
ステップST2では、周波数スペクトル作成手段9A(図1参照)が、オペレータ13が選択したコロナル画像データICを、z軸方向にフーリエ変換し、周波数スペクトルを作成する(図5参照)。
【0033】
図5は、コロナル画像ICをフーリエ変換することにより得られた周波数スペクトルの一例である。図5(a)は、コロナル画像ICを示す図、図5(b)は、周波数スペクトルFSを示す図である。
【0034】
周波数スペクトルFSは、3次元のグラフで表されている。周波数スペクトルFSの横軸は、コロナル画像ICのx軸方向の位置であり、縦軸は周波数fである。また、周波数スペクトルFSのグラフの紙面の垂直方向は、スペクトル強度を表している。周波数スペクトルFSを作成した後、ステップST3に進む。
【0035】
ステップST3では、背骨検出手段9B(図1参照)が、ステップST2で作成した周波数スペクトルFSに基づいて、被検体12の背骨がx軸上のどこに位置しているかを検出する。以下に、背骨の位置の検出方法について説明する(図6参照)。
【0036】
図6は、背骨の位置の検出方法を説明する図である。
図6(a)は、図5と同じ図であり、図6(b)、(c)、および(d)は、それぞれ、x=x1、x2、およびx3の位置における周波数スペクトルFS1、FS2、およびFS3を示す図である。
【0037】
背骨では、椎間板がz軸方向に並んでいるので、椎間板がz軸方向に繰り返し現れるという周期性が見られる。したがって、背骨の位置における周波数スペクトルには、椎間板の周期性によって、スペクトル強度が大きくなるピークQが現れる。一方、背骨の周囲の部位では、このような周期性は見られないので、周波数スペクトルには、スペクトル強度が大きくなるピークQは現れにくい。したがって、x軸方向の各位置における周波数スペクトルごとに、スペクトル強度のピークQを求め、ピークQが最大値になるときのx軸方向の位置を検出することにより、背骨の位置を検出することができる。
【0038】
例えば、図6には、x軸方向の各位置における周波数スペクトルとして、x=x1における周波数スペクトルFS1と、x=x2における周波数スペクトルFS2と、x=x3における周波数スペクトルFS3とが示されている。周波数スペクトルFS1にはピークQ(=Q1)が現れ、周波数スペクトルFS2にはピークQ(=Q2)が現れ、周波数スペクトルFS3にはピークQ(=Q3)が現れている。これらのピークQ1、Q2、およびQ3を比較すると、ピークQ2が最も大きい。したがって、x=x1、x2、およびx3の中では、ピークQ2の現れる位置x2が、背骨の位置の可能性が最も高い。上記の説明では、x=x1、x2、およびx3の位置における周波数スペクトルのピークQのみが説明されているが、x=x1、x2、およびx3以外の位置における周波数スペクトルについても、ピークQを求めておき、求めたピークQの中から、ピークQの最大値を検出することによって、背骨の位置を検出することができる。
【0039】
第1の形態では、x軸方向の位置x2における周波数スペクトルFS2に、最大のピークQ(=Q2)が現れるとする。したがって、背骨検出手段9Bは、x=x2を、背骨のx軸上の位置として検出する(尚、周波数f=0におけるスペクトル強度のピークは、椎間板の周期性とは無関係に現れるので、背骨を検出するときに考慮するピークからは除外されている)。椎間板の背骨のx軸上の位置x2を検出した後、ステップST4に進む。
【0040】
ステップST4では、ステップST3で検出されたx軸上の位置x2を含むサジタル面のスキャン(以下、「サジタルスキャン」と呼ぶ)を実行する。
【0041】
図7は、スキャンされるサジタル面SAを示す図である。
サジタル面SAをスキャンすることにより得られた磁気共鳴信号は、受信コイル4(図1参照)で受信され、受信器8に送信される。受信器8は、受信コイル4から伝送された信号に対して、デジタル処理を含む所定の信号処理を行い、中央処理装置9に出力する。中央処理装置9では、受信器8から得られた信号に基づいて、サジタル面の画像データ(以下、「サジタル画像データ」と呼ぶ)を作成する。図8に、サジタル画像データSIの一例を示す。サジタルスキャンが終了した後、ステップST5に進む。
【0042】
ステップST5では、椎間板間隔算出手段9C(図1参照)が、周波数スペクトルFS(図6参照)に基づいて、被検体12の椎間板の間隔SPを算出する。x軸方向の位置x2における周波数スペクトルFS2には、椎間板が持つ周期性によって、スペクトル強度が大きくなるピークQ(=Q2)が現れるので、このピークQ2が現れるときの周波数f2を用いて、椎間板の間隔SPを算出することができる。ただし、実際の椎間板は一定の間隔で並んでいるわけではなく、多少のばらつきがあるので、椎間板の間隔SPの値は、椎間板が一定の間隔で並んでいると見なしたときの値として、算出される。尚、x軸方向の位置x2における周波数スペクトルFS2には、椎間板が持つ周期性によって、ピークQ2の他に、別のピークも現れる(例えば、ピークQ21)。したがって、ピークQ2における周波数f2に加えて、別のピークQ21における周波数f21も用いて、椎間板の間隔SPを算出してもよい。第1の形態では、算出された椎間板の間隔SPは、SP=SPであるとする。椎間板の間隔SP(=SP)を算出した後、ステップST6に進む。
【0043】
ステップST6では、ランドマーク間隔調整手段9D(図1参照)が、脳脊髄液の基準モデルが有する複数のランドマークの間隔を、ステップST5で算出された椎間板の間隔SPに基づいて調整する。尚、脳脊髄液の基準モデルは、被検体12を撮影する前に事前に作成されているものである。以下に、脳脊髄液の基準モデルの作成手順について説明する。
【0044】
図9は、脳脊髄液の基準モデルMCの作成手順の説明図である。
脳脊髄液の基準モデルMCは、複数の被検体SU〜SUの脳脊髄液のデータDC〜DCに基づいて作成されている。脳脊髄液のデータDCは、複数のランドマークLM(i=1〜x)を有している。ランドマークLMは、被検体SUの脳脊髄液の特徴点を表している。ここでは、被検体SUの脳脊髄液の領域の中で、椎間板DK(i=1〜x)に隣接する位置a(i=1〜x)を、脳脊髄液の特徴点としている。したがって、ランドマークLM〜LMは、椎間板DK〜DKと同じ間隔で並んでいる。
【0045】
上記の説明では、被検体SUの脳脊髄液のデータDCについて説明したが、他の被検体SU〜SUの脳脊髄液のデータDC〜DCも、被検体SUの脳脊髄液のデータDCと同様に、脳脊髄液の特徴点を表すランドマークLMを有している。
【0046】
脳脊髄液の基準モデルMCは、複数の被検体SU〜SUの脳脊髄液のデータDC〜DCに基づいて作成されている。脳脊髄液の基準モデルMCが有するランドマークは、符号「M(i=1〜x)」で表されており、隣り合うランドマークMおよびMi+1の間隔は、符号「δi,i+1」で表されている。例えば、隣り合うランドマークMおよびMの間隔は、「δ1,2」であり、隣り合うランドマークMおよびMk+1の間隔は、「δk,k+1」である。ランドマーク間隔調整手段9Dは、上記のようにして作成された脳脊髄液の基準モデルMCのランドマークMの間隔を、ステップST5で算出された椎間板の間隔SPに基づいて調整する(図10参照)。
【0047】
図10は、脳脊髄液の基準モデルMCのランドマークMの間隔を、椎間板の間隔SPに基づいて調整するときの様子を示す図である。
【0048】
図10(a)は、ランドマークMの間隔を調整する前の基準モデルを表し、図10(b)は、ランドマークMの間隔を調整した後の基準モデルを表す。
【0049】
第1の形態では、隣り合うランドマークMおよびMi+1の間隔δi,i+1が、ステップST5において算出された椎間板の間隔SPに一致するように、ランドマークMの間隔を調整する。ステップST5では、SP=SPと算出されているので、δi,i+1=SPとなるように、ランドマークMの間隔が調整される。ランドマークMの間隔を調整した後、ステップST7に進む。
【0050】
ステップST7では、基準モデル位置決め手段9Eが、ランドマークMの間隔が調整された脳脊髄液の基準モデルMCを、被検体12の脳脊髄液に合わせて変形し、被検体12の脳脊髄液に対して位置決めする(図11参照)。
【0051】
図11は、脳脊髄液の基準モデルMCを被検体12の脳脊髄液に合わせて変形し、被検体12の脳脊髄液に対して位置決めするときの説明図である。
【0052】
図11(a)は、脳脊髄液の基準モデルMCを被検体12の脳脊髄液に合わせて変形する前の様子を概略的に示す図、図11(b)は、脳脊髄液の基準モデルMCを被検体12の脳脊髄液に合わせて変形し、被検体12の脳脊髄液に対して位置決めした後の様子を概略的に示す図である。
【0053】
基準モデル位置決め手段9Eは、ランドマークMの間隔が調整された脳脊髄液の基準モデルMCを、被検体12の脳脊髄液に合わせて変形する場合、ステップST4で得られたサジタル画像データSIを用いる。サジタル画像データSIには、被検体12の脳脊髄液が含まれているので、サジタル画像データSIを用いることによって、基準モデルMCを、被検体12の脳脊髄液に合わせて変形することができる。脳脊髄液の基準モデルMCを被検体12の脳脊髄液に合わせて変形する方法としては、アフィン(Affine)変換などを使用することができる。脳脊髄液の基準モデルMCを被検体12の脳脊髄液に合わせて変形し、被検体12の脳脊髄液に対して位置決めした後、ステップST8に進む。
【0054】
ステップST8では、プロファイル作成手段9G(図1参照)が、ランドマークM〜Mを横切るライン上の信号強度プロファイルを作成する。以下に、信号強度プロファイルについて説明する。
【0055】
図12は、ランドマークMを横切るライン上の信号強度プロファイルを説明する図である。図12には、図11(b)に示す被検体12の椎間板DK〜DKと、ランドマークM〜Mとの位置関係が示されている。
【0056】
プロファイル作成手段9Gは、先ず、ランドマークMを横切るラインLを規定する。ラインLは、ランドマークMと隣のランドマークMとを結ぶ線分LS12に垂直となるように規定される。そして、プロファイル作成手段9Gは、ラインL上の信号強度プロファイルPを作成する。信号強度プロファイルPは、ラインLの右側に示されている。椎間板DKは周囲の組織よりも信号強度が大きいので、信号強度プロファイルPの中の信号強度の大きい部分は、ラインLと椎間板DKとの交差する部分Cの信号強度を表している。交差する部分Cの長さが長いほど、信号強度プロファイルPの中の信号強度の大きい部分の幅Wは広がり、一方、交差する部分Cが長さが短いほど、幅Wは狭くなる。尚、信号強度プロファイルPには、脳脊髄液の信号強度は省略されている。
【0057】
上記のようにして、ランドマークMを横切るラインL上の信号強度プロファイルPを得ることができる。次に、ランドマークMを横切るライン上の信号強度プロファイルについて説明する。
【0058】
図13は、ランドマークMを横切るライン上の信号強度プロファイルを説明する図である。
【0059】
プロファイル作成手段9Gは、ランドマークMを横切るラインLを規定する。ラインLは、ランドマークMの両隣のランドマークMおよびMを結ぶ線分LS13に垂直となるように規定する。そして、プロファイル作成手段9Gは、ラインL上の信号強度プロファイルPを作成する。信号強度プロファイルPは、ラインLの右側に示されている。椎間板DKは周囲の組織よりも信号強度が大きいので、信号強度プロファイルPの中の信号強度の大きい部分は、ラインLと椎間板DKとの交差する部分Cの信号強度を表している。交差する部分Cの長さが長いほど、信号強度プロファイルPの中の信号強度の大きい部分の幅Wは広がり、一方、交差する部分Cが長さが短いほど、幅Wは狭くなる。尚、信号強度プロファイルPには、脳脊髄液の信号強度は省略されている。
【0060】
上記のようにして、ランドマークMを横切るラインL上の信号強度プロファイルPを得ることができる。以下同様に、図12又は図13に示す方法に従って、他のランドマークM〜Mを横切るライン上の信号強度プロファイルを作成する(図14参照)。
【0061】
図14は、ランドマークM〜Mの各々に対して得られた信号強度プロファイルを示す概略図である。
【0062】
ランドマークM〜Mx−1を横切るラインL〜Lx−1は、ランドマークMを横切るラインLと同様に、ランドマークM〜Mx−1の各々の両隣のランドマークを結ぶ線分に対して垂直のラインとして規定される。また、ランドマークMを横切るラインLは、ランドマークMと隣のランドマークMx−1とを結ぶ線分LSx−1,xに垂直となるように規定される。プロファイル作成手段9Gは、各ラインL〜L上の信号強度プロファイルP〜Pを作成する。信号強度プロファイルP〜Pを作成した後、ステップST9に進む。
【0063】
ステップST9では、ランドマークM〜Mの各々を変位させ、変位後のランドマークを横切るライン上の信号強度プロファイルを作成する。本形態では、先ず、ランドマークMを変位させ、変位後のランドマークを横切るライン上の信号強度プロファイルを作成する(図15参照)。
【0064】
図15は、ランドマークMを変位させたときの信号強度プロファイルを示す図である。
【0065】
先ず、ランドマーク変位手段9F(図1参照)が、ランドマークMを変位させる。本形態では、ランドマークMをラインLに対して垂直方向に、Δxずつ変位させる。図15には、変位後のランドマークを、符号「M1a」、「M1b」、「M1c」、および「M1d」で示してある。図15では、説明の便宜上、変位後のランドマークの個数を4個としてあるが、変位後のランドマークの個数は、4個より少なくてもよいし、4個より多くてもよい。ランドマークMを変位させた後、プロファイル作成手段9Gは、変位後のランドマークM1a、M1b、M1c、およびM1dの各々を横切るラインL1a〜L1dを規定する。そして、各ラインL1a〜L1d上の信号強度プロファイルP1a〜P1dを作成する。したがって、ランドマークMを変位させる前の信号強度プロファイルPに加えて、ランドマークMを変位させた後の信号強度プロファイルP1a〜P1dが得られる。信号強度プロファイルを作成した後、ステップST10に進む。
【0066】
ステップST10では、基準点設定手段9H(図1参照)が、ランドマークを変位させる前の信号強度プロファイルをと、ランドマークを変位させた後の信号強度プロファイルとに基づいて、椎間板に、スライス位置を位置決めするための基準点を設定する。ここでは、先ず、図15に示すランドマークMを変位させる前の信号強度プロファイルPと、ランドマークMを変位させた後の信号強度プロファイルP1a〜P1dとに基づいて、椎間板DKに、スライス位置を位置決めするときの基準点を設定する(図16参照)。
【0067】
図16は、椎間板DKに、スライス位置を位置決めするときの基準点を設定するときの説明図である。
【0068】
基準点設定手段9Hは、椎間板DKに基準点を設定するために、先ず、信号強度プロファイルP、P1a、P1b、P1c、およびP1dの各々について、信号強度の大きい部分が現れているか否かを判断する。信号強度プロファイルP、P1a、P1b、P1c、およびP1dのうち、信号強度プロファイルP、P1a、P1b、およびP1cについては、椎間板DKを横切っているので、信号強度の大きい部分が現れる。しかし、信号強度プロファイルP1dについては、椎間板DKを横切っていないので、信号強度の大きい部分が現れない。したがって、基準点設定手段9Hは、信号強度プロファイルP、P1a、P1b、およびP1cについては、信号強度の大きい部分が現れているが、信号強度プロファイルP1dについては、信号強度の大きい部分が現れていないと判断する。尚、信号強度プロファイルP、P1a、P1b、P1c、およびP1dの各々に、信号強度の大きい部分が現れているか否かを判断するやり方の一例としては、予め信号強度のしきい値を決めておき、信号強度プロファイルP、P1a、P1b、P1c、およびP1dの中に、しきい値よりも信号強度の大きい部分が現れているか否かによって判断するやり方が考えられる。
【0069】
次に、基準点設定手段9Hは、信号強度の大きい部分が現れている信号強度プロファイルP、P1a、P1b、およびP1cについて、信号強度の大きい部分の幅W、W1a、W1b、およびW1cを計算する。そして、基準点設定手段9Hは、信号強度プロファイルP、P1a、P1b、およびP1cの中から、信号強度の大きい部分の幅Wが最も広いプロファイルを特定する。ここでは、幅W、W1a、W1b、およびW1cのうち、幅W1aが最大値であったとする。したがって、基準点設定手段9Hは、信号強度プロファイルP1aを、幅Wが最も広い信号強度プロファイルとして特定する。
【0070】
基準点設定手段9Hは、信号強度プロファイルP1aを特定した後、幅W1aの中間の位置V1aを求める。信号強度プロファイルP1aは、ラインL1a上のプロファイルであるので、幅W1aの中間の位置V1aを求めることにより、位置V1aがラインL1a上ではどの位置に対応しているかを特定することができる。基準点設定手段9Hは、ラインL1a上の位置V1aに、スライス位置を位置決めするときの基準点Rを設定する。尚、基準点Rの位置は、必ずしも、幅W1aの中間の位置V1aである必要はなく、幅W1aの中間の位置V1aからずれた位置を、基準点Rの位置としてもよい。基準点Rを設定した後、ステップST11に進む。
【0071】
ステップST11では、全ての椎間板に、スライス位置を位置決めするための基準点が設定されたか否かを判断する。ここでは、まだ、椎間板DKの基準点Rのみしか設定されていないので、ステップST9に戻る。
【0072】
ステップST9では、次のランドマークMを変位させ、変位後のランドマークMを横切る信号強度プロファイルを求める。そして、ステップST10に進み、椎間板DKに基準点Rを設定したときと同様の方法で、椎間板DKに基準点Rを設定する。基準点Rを設定したら、ステップST11に進み、全ての椎間板に、スライス位置を位置決めするための基準点が設定されたか否かを判断する。以下同様に、ステップST11において、全ての椎間板に、スライス位置を位置決めするための基準点が設定されたと判断されるまで、ステップST9〜ST11のループを繰り返し実行する。
【0073】
図17は、全ての椎間板DK〜DKに、スライス位置を位置決めするための基準点が設定されたときの様子を示す図である。
【0074】
図17に示すように、全ての椎間板DK〜DKに基準点R〜Rが設定されたら、ステップST11において、全ての椎間板に基準点が設定されたと判断し、ステップST12に進む。
【0075】
ステップST12では、長軸方向検出手段9I(図1参照)が、椎間板DK〜DKの各々の長軸方向を検出する。椎間板の長軸方向は、例えば、主成分分析(PCA)によって検出することができる。図18に、各椎間板DK〜DKの長軸方向LD〜LDを示す。椎間板の長軸方向を検出した後、ステップST13に進む。
【0076】
ステップST13では、スライス位置決め手段9J(図1参照)が、椎間板DK〜DKの基準点R〜Rと、椎間板の長軸方向LD〜LDとに基づいて、椎間板DK〜DKのスライス位置を位置決めする(図19参照)。
【0077】
図19は、スライス位置を示す図である。
スライス位置決め手段9Jは、基準点R〜Rを通って椎間板の長軸方向LD〜LDに延在するラインを、各椎間板のスライス位置SL〜SLとする。尚、図20に、サジタル画像データSIの中におけるスライス位置SL〜SLを示す。スライス位置SL〜SLを位置決めしたら、ステップST14に進み、スライス位置SL〜SLに従って、本スキャンを実行し、フローを終了する。
【0078】
本形態では、背骨の周波数スペクトルを作成し、周波数スペクトルに基づいて椎間板の間隔を算出する。そして、脳脊髄液の基準モデルMCの複数のランドマークM〜Mの間隔を、算出した椎間板の間隔に一致させた後、基準モデルMCを被検体12の脳脊髄液に合わせて変形している。したがって、複数のランドマークM〜Mを、椎間板DK〜DKの近傍に設定することができる。また、ランドマークM〜Mを椎間板DK〜DKの近くで変位させて、変位前のランドマークを横切るライン上の信号強度プロファイルと、変位後のランドマークを横切るライン上の信号強度プロファイルとを作成している。したがって、得られた信号強度プロファイルに基づいて、椎間板DK〜DKに、スライス位置を位置決めするための基準点を設定することができる。本形態では、オペレータが特定したコロナル画像IC(図4参照)を特定した後は、ステップST2〜ST13に従って、椎間板DK〜DKのスライス位置を自動的に位置決めすることができる。したがって、オペレータの作業負担を軽減することが可能となる。
【0079】
また、脳脊髄液の基準モデルMCのランドマークM〜Mの間隔を、算出した被検体12の椎間板の間隔に一致させているので、被検体12の椎間板の間隔に応じて、最適な位置にスライス位置を位置決めすることができる。
【0080】
尚、第1の形態では、長軸方向検出手段9Iを備えている。しかし、椎間板のスライス位置を精度よく設定できるのであれば、必ずしも長軸方向検出手段9Iを備える必要はない。
【0081】
尚、第1の形態では、プロファイル作成手段9Gは、信号強度のプロファイルを作成している。しかし、椎間板にスライス位置を十分な精度で設定することができるのであれば、信号強度のプロファイルとは別の磁気共鳴信号に関するプロファイルを作成してもよい。
【0082】
(2)第2の形態
図21は、第2の形態のMRI装置200の概略図である。
第2の形態では、中央処理装置9は、特徴量算出手段9Kを備えている。特徴量算出手段9Kは、プロファイル作成手段9Gにより作成されたプロファイルの特徴量を算出する。また、基準モデル位置決め手段9Eは、特徴量算出手段9Kにより算出された特徴量に基づいて、基準モデルMCのランドマークの位置を調整する。尚、その他の構成は、第1の形態と同じであるので、説明は省略する。
【0083】
次に、上記のように構成された第2の形態のMRI装置200の動作について説明する。
【0084】
図22は、MRI装置200の処理フローの一例を示す図である。
ステップST1〜ステップST8は、第1の形態と同様であるので、説明は省略する。ステップST8において、信号強度プロファイルP〜Pを作成した後(図14参照)、ステップST81に進む。
【0085】
ステップST81では、特徴量算出手段9K(図21参照)が、信号強度プロファイルP〜Pの各々の特徴量を算出する。第2の形態では、信号強度プロファイルP〜Pの各々の信号強度の積分値Intを、特徴量として算出する(図23参照)。
【0086】
図23は、信号強度プロファイルP〜Pの各々の信号強度の積分値Intを示す図である。
【0087】
図23では、信号強度プロファイルP〜Pの各々の積分値Intは、Int=Int1〜Intxで示されている。積分値Int1〜Intxを算出した後、ステップST82に進む。
【0088】
ステップST82では、ランドマーク変位手段9F(図21参照)が、複数のランドマークM〜Mの間隔δi,i+1を椎間板の間隔SPに一致させたままで、複数のランドマークM〜Mを変位させる(図24参照)。
【0089】
図24は、変位させた後の複数のランドマークを示す図である。
図24では、変位前の複数のランドマークM〜Mを黒丸で示し、一方、変位後の複数のランドマークM〜Mを白丸で示してある。変位後のランドマークM〜M(白丸)の間隔は、変位前のランドマークM〜M(黒丸)の間隔と同様に、「SP0」に保持されている。ランドマークの変位量は、例えば、数ピクセル程度である。ランドマークを変位させた後、ステップST83に進む。
【0090】
ステップST83では、ステップST8と同様の手順で、変位後のランドマークM〜M(白丸)を横切る信号強度プロファイルP′〜P′を求める。図25に、変位後のランドマークM〜M(白丸)を横切る信号強度プロファイルP′〜P′を示す。信号強度プロファイルP′〜P′を求めた後、ステップST84に進む。
【0091】
ステップST84では、ステップST81と同様の手順で、信号強度プロファイルP′〜P′の各々の特徴量(信号強度の積分値Int′)を算出する。図26に、信号強度プロファイルP′〜P′の各々の信号強度の積分値Int′=Int1′〜Intx′を示す。積分値Int′を算出した後、ステップST85に進む。
【0092】
ステップST85では、基準モデル位置決め手段9E(図21参照)が、積分値Int(図23参照)と積分値Int′(図26参照)に基づいて、基準モデルMCの複数のランドマークM〜Mの位置を調整する。以下に、この調整のやり方について、図27を参照しながら説明する。
【0093】
図27は、ランドマークの位置の調整方法の説明図である。
基準モデル位置決め手段9Eは、先ず、信号強度プロファイルP〜Pの積分値Int1〜Intxの加算値ADD=αと、信号強度プロファイルP′〜P′の積分値Int1′〜Intx′の加算値ADD=α′とを算出する。そして、加算値αおよびα′を比較し、加算値αの方が大きい場合、基準モデル位置決め手段9Eは、ランドマークM〜Mを、黒丸で示された位置に調整する。一方、加算値α′の方が大きい場合、基準モデル位置決め手段9Eは、ランドマークM〜Mを、白丸で示された位置に調整する。第2の形態では、α′>αであるとする。したがって、基準モデル位置決め手段9Eは、ランドマークM〜Mを、白丸で示された位置に調整する。ランドマークM〜Mを、白丸で示された位置に調整した後、ステップST9に進む。
【0094】
ステップST9〜ST14は、第1の形態と同じ処理であるので説明は省略する。このようにして、フローが終了する。
【0095】
第2の形態では、信号強度プロファイルP〜Pの積分値Int1〜Intxの加算値ADD=αと、信号強度プロファイルP′〜P′の積分値Int1′〜Intx′の加算値ADD=α′とを算出し、ランドマークM〜Mを、加算値ADDが大きくなるときの位置に調整している。このようにランドマークM〜Mの位置を調整することによって、ランドマークM〜Mの位置を、椎間板に対して、より最適な位置に調整することが可能となる。
【0096】
尚、第2の形態では、積分値の加算値ADDを算出しているが、加算値ADDの代わりに積分値の平均値を算出し、積分値の平均値の比較結果に基づいて、ランドマークM〜Mの位置を調整してもよい。
【0097】
また、第2の形態では、変位後のランドマークの組合せとして、一通りのランドマークの組合せしか規定していない(図24図27に示す白丸参照)。しかし、変位後のランドマークの組合せとして、複数通りのランドマークの組合せを規定してもよい。この場合、各組合せに対して加算値ADDを求め、加算値ADDが最大となるときの位置に、ランドマークM〜Mの位置を調整すればよい。
【0098】
更に、第2の形態では、プロファイルの特徴量として、信号強度の積分値を算出しているが、椎間板にスライス位置を十分な精度で設定することができるのであれば、別の特徴量を算出してもよい。
【符号の説明】
【0099】
2 磁場発生装置
3 テーブル
4 受信コイル
5 シーケンサ
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 中央処理装置
10 入力装置
11 表示装置
12 被検体
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
31 クレードル
9A 周波数スペクトル作成手段
9B 背骨検出手段
9C 椎間板間隔算出手段
9D ランドマーク間隔調整手段
9E 基準モデル位置決め手段
9F ランドマーク変位手段
9G プロファイル作成手段
9H 基準点設定手段
9I 長軸方向検出手段
9J スライス位置決め手段
9K 特徴量算出手段
図1
図2
図3
図7
図9
図10
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図4
図5
図6
図8
図11
図20