(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697941
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
F02M 35/16 20060101AFI20150319BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20150319BHJP
B60K 13/02 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
F02M35/16 S
F02M35/10 101D
B60K13/02 D
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-238672(P2010-238672)
(22)【出願日】2010年10月25日
(65)【公開番号】特開2012-92676(P2012-92676A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌裕
【審査官】
中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−059790(JP,A)
【文献】
特開2006−022659(JP,A)
【文献】
特開2002−317720(JP,A)
【文献】
特開2002−322952(JP,A)
【文献】
特開2004−106773(JP,A)
【文献】
米国特許第07370620(US,B1)
【文献】
特開2008−120263(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/077719(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0252343(US,A1)
【文献】
特開昭54−048383(JP,A)
【文献】
米国特許第4212659(US,A)
【文献】
米国特許第5034036(US,A)
【文献】
米国特許第5794733(US,A)
【文献】
独国特許出願公開第19931225(DE,A1)
【文献】
特開2000−170612(JP,A)
【文献】
特開2000−320414(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1249597(EP,A1)
【文献】
特開2004−339962(JP,A)
【文献】
特開2005−088886(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/156235(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0005232(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00−15/10
F02M 35/00−35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車両のキャブ後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側に開口した空気取入口から外気をエンジン用吸気として取り入れる吸気ダクトであって、前記空気取入口を上側に有するダクト本体と、該ダクト本体の内部に収容されて前記空気取入口まで到る複数の流路を区画形成する内部仕切り部品とを備え、前記ダクト本体が前記内部仕切り部品を外部から挿し入れるための挿入穴を適宜位置に開口し、前記内部仕切り部品が前記ダクト本体内への収容時に前記挿入穴を塞ぐ被覆板を背面に具備し且つ外気と共に吸い込まれた雨や雪が壁面に衝突して水滴となったものを集めて前記ダクト本体下部のサイドブランチ部に流し込み得るよう樋状のドリップチャンネルを下端部に設けていることを特徴とする吸気ダクト。
【請求項2】
ダクト本体がブロー成形により形成され、該ダクト本体の一部を成形後に切除することで挿入穴が開口されていることを特徴とする請求項1に記載の吸気ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トラック等の大型の運搬車両は、普通乗用車と比べて未舗装の悪路を走行する機会が多い為、エンジンの吸気としては、塵埃が多く含まれている地面付近の空気ではなく、地面から十分高い部分の清浄な空気を取り入れることが好ましく、また、地面付近では雨水や積雪の跳ね上げを一緒に取り込んでしまう虞れもあるため、地面から十分高い部分で空気だけを確実に取り入れることが好ましい。
【0003】
この為、大型の運搬車両においては、
図7に一例を示すように、エアクリーナ1に直立するよう接続したエアクリーナ入口ダクト2に対し、キャブ3の後面に据え付けられた吸気ダクト4を可撓性のブーツ5を介して接続し、前記吸気ダクト4の上側に開口した空気取入口6から外気を取り入れ得るようにしてある。
【0004】
斯かる吸気ダクト4に関し、空気取入口6から吸引される外気の流速(流量)について本発明者らが調べたところ、いくら空気取入口6が大きな開口面積で形成されていても、外気は空気取入口6の下側から偏って吸引されていて、該空気取入口6の上側からは殆ど吸引されていないことが判明しており、このように空気取入口6の下側に外気の吸引が偏ることで流速が上昇し、空気取入口6の下側から雨や雪、埃を吸い込み易くなることが懸念されている。
【0005】
そこで、空気取入口6から吸引される外気の流速分布を均一化するため、吸気ダクト4内を複数の流路に分割して多室化を図ることが検討されているが、従来においては、吸気ダクト4内を複数の流路に分割するに際し、
図8に断面図で示す如く、ブロー成形時に吸気ダクト4の一部を金型(図示せず)で挟み付けて潰すことで仕切壁7を作り、この仕切壁7により流路A,Bを分割することが行われている。
【0006】
尚、一般的な吸気ダクトに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−317720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の如きブロー成形時に吸気ダクト4の一部を金型で挟み付けて潰すことで仕切壁7を作るという従来の手法では、吸気ダクト4の一部を潰すことにより流路断面積が小さくなってしまい、吸気抵抗の増加を招いてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、吸気抵抗の増加を招くことなく内部を複数の流路に分割して多室化を図り得るようにした吸気ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、運搬車両のキャブ後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側に開口した空気取入口から外気をエンジン用吸気として取り入れる吸気ダクトであって、前記空気取入口を上側に有するダクト本体と、該ダクト本体の内部に収容されて前記空気取入口まで到る複数の流路を区画形成する内部仕切り部品とを備え、前記ダクト本体が前記内部仕切り部品を外部から挿し入れるための挿入穴を適宜位置に開口し、前記内部仕切り部品が前記ダクト本体内への収容時に前記挿入穴を塞ぐ被覆板を
背面に具備し且つ外気と共に吸い込まれた雨や雪が壁面に衝突して水滴となったものを集めて前記ダクト本体下部のサイドブランチ部に流し込み得るよう樋状のドリップチャンネルを下端部に設けていることを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにすれば、別途製作された内部仕切り部品を挿入穴からダクト本体の内部に挿し入れて収容させるだけで該ダクト本体内を複数の流路に区画形成することが可能となり、しかも、内部仕切り部品の被覆板により前記挿入穴を塞ぐことも可能となるので、従来の如き吸気ダクトの一部を金型で挟み付けて潰すことで仕切壁を作る手法と比較して、流路断面積を大きく保つことが可能となり、これにより吸気抵抗の増加を回避することが可能となる。
【0012】
更に、本発明の吸気ダクトをより具体的に実施するに際しては、ダクト本体をブロー成形により形成し、該ダクト本体の一部を成形後に切除することで挿入穴を開口することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明の吸気ダクトによれば、ダクト本体内の流路断面積を大きく保ったまま内部を複数の流路に区画形成することができるので、吸気抵抗の増加を招くことなく内部を複数の流路に分割して多室化を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1のダクト本体内に収容される内部仕切り部品の斜視図である。
【
図4】ダクト本体内に内部仕切り部品を収容させる前の状態を示す断面図である。
【
図5】ダクト本体内に内部仕切り部品を収容させた状態を示す断面図である。
【
図6】
図1の空気取入口の前面をルーバーで被覆した状態を示す斜視図である。
【
図7】一般的な吸気ダクトの一例を示す概略図である。
【
図8】吸気ダクトの一部を潰して流路を分割した従来構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1〜
図6は本発明を実施する形態の一例を示すもので、
図7と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0017】
図1〜
図3に示す如く、本形態例における吸気ダクト8は、ブロー成形により成形され且つその成形後に空気取入口6a,6b,6c,6d,6e,6fを切除して上側に開口せしめたダクト本体9(
図1参照)と、該ダクト本体9の内部に収容されて前記空気取入口6a,6b,6c,6d,6e,6fまで到る複数の流路A,B,C,D,E,F(
図3参照)を区画形成する内部仕切り部品10(
図2参照)とにより構成されている。
【0018】
即ち、前記内部仕切り部品10は、ダクト本体9内を前後に分割する縦隔壁11と、該縦隔壁11により前後に分割されたダクト本体9内を更に左右方向に分割する側壁12とを備えて別途製作されたもので、前記ダクト本体9内に収容させることで六つの流路A,B,C,D,E,F(
図3参照)を前記ダクト本体9内に区画形成し得るようにしてある。
【0019】
また、前記内部仕切り部品10には、各流路A,B,C,D,E,Fの夫々を各空気取入口6a,6b,6c,6d,6e,6fの夫々に個別に連通せしめ得るようガイド部13,14,15,16,17が形成されており、ここに図示している例では、縦隔壁11で分割された後側の流路A,B,Cが上段側の空気取入口6a,6b,6cと連通し、縦隔壁11で分割された前側の流路D,E,Fが下段側の空気取入口6d,6e,6fと連通するようになっている。
【0020】
ここで、
図4に示す如く、前記ダクト本体9内に内部仕切り部品10を収容させるにあたっては、ダクト本体9の背面に、内部仕切り部品10を外部から挿し入れるための挿入穴18が成形後の切除により開口され、また、内部仕切り部品10の背面には、ダクト本体9内への収容時に前記挿入穴18を塞ぐ被覆板19が具備されており、
図5に示す如く、内部仕切り部品10を挿入穴18を通してダクト本体9内に挿し入れた状態において、前記挿入穴18を前記内部仕切り部品10の被覆板19により塞いでタッピングビス20等により固定し得るようにしてある。
【0021】
図中21,22は内部仕切り部品10における縦隔壁11及び被覆板19の下端部に設けられた樋状のドリップチャンネルを示し、外気と共に吸い込まれた雨や雪が壁面に衝突して水滴となったものを前記各ドリップチャンネル21,22で集めてサイドブランチ部23(
図1参照)に流し込み得るようにしてある。
【0022】
尚、
図6に示す如く、前記各空気取入口6a,6b,6c,6d,6e,6f(
図1参照)の前面には、雨や雪の吸い込みを極力回避し得るようルーバー24を被覆しておくことが好ましい。
【0023】
而して、以上のように吸気ダクト8を構成すれば、別途製作された内部仕切り部品10を挿入穴18からダクト本体9の内部に挿し入れて収容させるだけで該ダクト本体9内を複数の流路A,B,C,D,E,Fに区画形成することが可能となり、しかも、内部仕切り部品10の被覆板19により前記挿入穴18を塞ぐことも可能となるので、従来の如き吸気ダクトの一部を金型で挟み付けて潰すことで仕切壁を作る手法と比較して、流路断面積を大きく保つことが可能となり、これにより吸気抵抗の増加を回避することが可能となる。
【0024】
従って、上記形態例によれば、ダクト本体9内の流路断面積を大きく保ったまま内部を複数の流路A,B,C,D,E,Fに区画形成することができるので、吸気抵抗の増加を招くことなく内部を複数の流路A,B,C,D,E,Fに分割して多室化を図ることができる。
【0025】
尚、本発明の吸気ダクトは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、ダクト本体内の分割形式には図示以外の形式を採用しても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
3 キャブ
6a,6b,6c,6d,6e,6f 空気取入口
8 吸気ダクト
9 ダクト本体
10 内部仕切り部品
18 挿入穴
19 被覆板
A,B,C,D,E,F 流路