特許第5697943号(P5697943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697943
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】車両用電動ファン
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   H02K5/10 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-239053(P2010-239053)
(22)【出願日】2010年10月25日
(65)【公開番号】特開2012-95402(P2012-95402A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 信哉
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−140299(JP,A)
【文献】 特開平09−009551(JP,A)
【文献】 特開平10−070861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを巻回したステータと、
前記ステータを支持するとともに、車両のラジエータに固定されるステータ支持部材と、
前記ステータ支持部材に軸受を介して回転自在に支持されるとともに、水平方向に延出する回転軸と、
前記ステータの前面側と外周側を覆うように有底円筒状に形成され、周壁部にマグネットが設置されるとともに、底壁部が前記回転軸に一体回転可能に結合されるロータと、を有する電動モータと、
前記電動モータによって回転駆動されるとともに、有底円筒状のファンボスと、
該ファンボスの外周面から径方向外側に突出する複数の送風ブレードと、を有するファン本体と、を備えた車両用電動ファンにおいて、
前記電動モータは、前記ステータ支持部材に、前記ロータの周壁部の開口側の端縁の外周を覆う略円筒状の水浸入規制壁が設けられ、
前記ファンボスの周壁部の開口側の縁部は、前記水浸入規制壁の水排出部とオーバーラップするように前記水浸入規制壁の外周側に配置され、
前記水浸入規制壁の内周面の鉛直下方領域に、当該水浸入規制壁の付根部と前記ロータの開口側の端縁との離間幅を部分的に拡大する凹部が設けられていることを特徴とする車両用電動ファン
【請求項2】
前記水浸入規制壁の内周面は円形曲面に形成され、前記凹部は、前記内周面における前記付根部が所定深さだけ段差状に窪むように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用電動ファン
【請求項3】
前記凹部は、前記水浸入規制壁の付根部から延出端に亙る範囲に連続する断面略V字状の溝によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用電動ファン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のラジエータ冷却のために用いられる車両用電動ファンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のラジエータ冷却ファンに用いられる電動モータとして、アウタロータ型のブラシレスモータが用いられることがある。
この電動モータは、ステータ支持部材であるブラケットに、励磁用の複数のコイルを巻回したステータが取り付けられ、そのステータの外周側に、内周面に複数のマグネットを取り付けた有底円筒状のロータが回転可能に配置され、各コイルにタイミングをずらして電流を流すことによってロータを回転させるようになっている。ロータの底壁部の軸心には回転軸が一体に取り付けられ、その回転軸がブラケットに軸受を介して回転自在に支持されている。
【0003】
また、車両に用いられるこの種の電動モータとして、ロータの周壁部の開口側の端縁を外周側から覆う略円筒状の水浸入規制壁がブラケットに一体に設けられたものがある。水浸入規制壁は、ロータの周壁部の開口側の端縁を外周側から覆うことにより、ロータの内周側への水の流入を制限している。ただし、ロータはブラケットに対して相対的に回転する部品であることから、水浸入規制壁とロータの周壁部の間には隙間があり、雨水の吹き込み等によって水滴が水浸入規制壁の内周側に回り込むことがある。こうして、水浸入規制壁の内周側に回り込んだ水滴は重力によって水浸入規制壁の内周面を伝い、水浸入規制壁の下方領域においてロータの周壁部との隙間を通して外部に排出される。
【0004】
また、インナロータ型の電動モータにおいても、モータケース内に排水構造を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この電動モータは、ロータを回転自在に収容するモータケースの下端にケース内外を連通する水抜き孔が設けられるとともに、モータケースの下方領域の内面に、内壁を伝った水滴を水抜き孔方向に誘導するテーパ面が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−21775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したアウタロータ型の電動モータの場合、水浸入規制壁とロータの間の隙間はできる限り狭める必要があるため、一旦水浸入規制壁の内周側に回り込んだ水滴は外部に排出されにくくなる。このため、上述したアウタロータ型の電動モータを備えた車両用電動ファンに上述したインナーロータ型の電動モータの技術を適用し、水浸入規制壁の鉛直下方領域の内面にテーパ面を設け、水浸入規制壁の内周側に回り込んだ水滴をテーパ面を通して外部に排出することを検討している。
【0007】
しかし、こうして得られた車両用電動ファンにおいても、水浸入規制壁の内周面の鉛直下方領域のテーパ面の付根部に表面張力の作用によって水滴が付着して残ってしまう可能性が考えられる。そして、こうして付根部に付着した水滴は冷寒時に凍結し、水浸入規制壁とロータの間の隙間で両者に跨って固着してしまう可能性がある。
特に、アウタロータ型の電動モータを採用する車両用電動ファンにおいては、ロータが有底円筒状に形成されてその軸長が長くなる傾向にあるため、モータ全体の軸長の増大を避けるためにロータとブラケットの隙間をできる限り狭めることが望まれている。このため、アウタロータ型の電動モータを採用する車両用電動ファンでは、水浸入規制壁の付根部で凍結した水滴が水浸入規制壁とロータの間で両者に固着する可能性が高くなる。
【0008】
そこでこの発明は、水浸入規制壁の内周側の残留水の凍結によるステータ支持部材とロータとの固着を防止して、冷寒時にも安定した始動性能を維持することのできる車両用電動ファンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る車両用電動モータでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、コイルを巻回したステータと、前記ステータを支持するとともに、車両のラジエータに固定されるステータ支持部材と、前記ステータ支持部材に軸受を介して回転自在に支持されるとともに、水平方向に延出する回転軸と、前記ステータの前面側と外周側を覆うように有底円筒状に形成され、周壁部にマグネットが設置されるとともに、底壁部が前記回転軸に一体回転可能に結合されるロータと、を有する電動モータと、前記電動モータによって回転駆動されるとともに、有底円筒状のファンボスと、該ファンボスの外周面から径方向外側に突出する複数の送風ブレードと、を有するファン本体と、を備えた車両用電動ファンにおいて、前記電動モータは、前記ステータ支持部材に、前記ロータの周壁部の開口側の端縁の外周を覆う略円筒状の水浸入規制壁が設けられ、前記ファンボスの周壁部の開口側の縁部は、前記水浸入規制壁の水排出部とオーバーラップするように前記水浸入規制壁の外周側に配置され、前記水浸入規制壁の内周面の鉛直下方領域に、当該水浸入規制壁の付根部と前記ロータの開口側の端縁との離間幅を部分的に拡大する凹部が設けられていることを特徴とするものである。
これにより、水浸入規制壁の内周面の鉛直下方領域に流れ込んだ水滴は凹部とロータの隙間を通して外部に排出されるようになる。また、一部の水滴は、表面張力によって凹部内の水浸入規制壁の付根部側領域に付着して残る可能性があるが、残った水滴はロータの開口側の端縁に対して大きく離間することになる。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る車両用電動ファンにおいて、前記水浸入規制壁の内周面は円形曲面に形成され、前記凹部は、前記内周面における前記付根部が所定深さだけ段差状に窪むように形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る車両用電動ファンにおいて、前記凹部は、前記水浸入規制壁の付根部から延出端に亙る範囲に連続する断面略V字状の溝によって構成されていることを特徴とするものである。
これにより、水浸入規制壁の内周面の鉛直下方領域に流れ込んだ水滴は略V字状の溝に沿ってスムーズに外部に排出されるようになる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、水浸入規制壁の内周面の鉛直下方領域に、水浸入規制壁の付根部とロータの開口側の端縁との離間幅を部分的に拡大する凹部が設けられているため、凹部内の水浸入規制壁の付根部側に水滴の一部が表面張力によって残存して冷寒時に凍結することがあっても、凍結してできた氷塊が水浸入規制壁とロータに跨って固着するのを確実に防止することができる。
したがって、この発明によれば、冷寒時においても安定した始動性能を維持することができる。
【0012】
請求項に係る発明によれば、水浸入規制壁の内周面の鉛直下方領域に設けられる凹部が、水浸入規制壁の付根部から延出端に亙る範囲に連続する断面略V字状の溝によって構成されているため、水滴を断面略V字状の溝に沿ってスムーズに流し、表面張力による水滴の残存自体もより少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の一実施形態の車両用電動ファンを用いたラジエータ冷却ファンの縦断面図である。
図2】この発明の一実施形態のステータ支持部材の斜視図である。
図3】この発明の一実施形態のステータ支持部材の要部を拡大した斜視図である。
図4】この発明の他の実施形態のステータ支持部材の要部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、車両用電動ファン1(以下、「電動ファン1」と呼ぶ。)を鉛直方向に沿って切った断面図である。なお、図中矢印Fは、車両の前方側を指している。以下の説明においては、矢印Fの指す方向を「前」、矢印Fの指す方向と逆の方向を「後」と呼ぶものとする。
この電動ファン1は、車両のラジエータ冷却用として用いられ、図示しないラジエータの前方側に設置される。この電動ファン1は、駆動部である電動モータ2(車両用電動モータ)と、電動モータ2によって回転駆動されるファン本体3とを備えている。
【0015】
電動モータ2は、アウタロータ型のブラシレスモータによって構成され、励磁用の複数のコイル10が巻回されたステータ11と、ステータ11を支持するブラケット12(ステータ支持部材)と、ブラケット12に回転自在に支持される回転軸13と、この回転軸13に一体回転可能に結合されたロータ14と、ロータ14の回転をフィードバックしてコイル10の通電を制御する制御ユニット15と、を備えている。
【0016】
ブラケット12は、全体が略円盤状に形成され、その外周縁部に締結部である複数の固定アーム12aが延設されている。固定アーム12aは、ファン本体3の周囲を取り囲んで送風を案内するファンシュラウド16に締結固定され、ファンシュラウド16は、ラジエータの前方側に固定設置されるようになっている。
また、ブラケット12の前面側の中央には円筒状のボス部12bが突設されており、そのボス部12bには、外周側でステータ11を固定する略円筒状のステータ固定パイプ17(ステータ支持部材)が取り付けられている。
【0017】
ステータ固定パイプ17は、一端側がボス部12b内に圧入固定され、他端側がボス部12bの前端部から前方に突出している。ステータ固定パイプ17のボス部12bから前方に突出した領域の外周面には、ステータ11のステータコア18が嵌合固定されている。ステータコア18には、放射方向に突出する複数のティース18aが設けられ、その各ティース18aに絶縁部材であるインシュレータ19を介して前記コイル10が巻回されている。
【0018】
また、ブラケット12の前面側の外周縁には、略円筒状の水浸入規制壁25がボス部12bと同軸に形成されている。ブラケット12の前面には、さらに、水浸入規制壁25よりも小径の第1円筒壁26と、第1円筒壁26よりも小径の第2円筒壁27とがボス部12bと同軸に形成されている。
水浸入規制壁25は、ブラケット12の上部外周側から、電気接点や制御ユニット15の配置されている中心側に流入しようとする水滴を外周面に沿わせて下方に滴下させ、水滴の中心方向への浸入を規制するように機能する。第1,第2円筒壁26,27は、基本的に水浸入規制壁25と同様に機能し、水滴の中心方向への浸入を二重、三重に規制するようになっている。
【0019】
回転軸13は、車体前後方向に沿うように略水平に延出し、一対の軸受20A,20Bを介してブラケット12のボス部12bとステータ固定パイプ17とに回転自在に支持されている。回転軸13の後端部は軸受20Aから後方側に突出し、その突出端に回転検出用のセンサリング21が取り付けられている。このセンサリング21を用いて検出された回転軸13の回転は、ロータ14の回転情報として制御ユニット15に出力される。一方、回転軸13の前端部は軸受20Bから前方側に突出し、その突出部分にロータ14とファン本体3とが取り付けられるようになっている。
具体的には、回転軸13の前部側の突出領域には、軸受20Bに隣接してロータ支持部22が拡径して形成されるとともに、そのロータ支持部22に隣接してロータ支持部22よりも小径のファン固定部23が形成されている。そして、回転軸13のファン固定部23よりも先端側にはファン固定部23よりも小径の雄ねじ部24が形成されている。
【0020】
ロータ14は、有底円筒状のロータヨーク28の周壁部29の内面に複数のマグネット30…が円周方向に沿って取り付けられている。また、ロータヨーク28の底壁部31の中央には、周壁部29と同側に突出するボス部32が形成され、そのボス部32が回転軸13のロータ支持部22の外周に圧入固定されている。なお、ロータ14は、周壁部29に設置されたマグネット30がステータ11の外周面に対峙し、底壁部31がステータ11の前面側を覆うように回転軸13に組み付けられている。
【0021】
また、ロータヨーク28の周壁部29の開口側(後端側)の縁部には径方向外側に屈曲したフランジ33が突設されている。このフランジ33を含むロータヨーク28の開口側の縁部は、ロータ14が回転軸13と軸受20A,20Bを介してブラケット12に組み付けられた状態において、ブラケット12の水浸入規制壁25と第1円筒壁26の間のスペースに配置され、水浸入規制壁25と第1円筒壁26に対して軸方向で所定量オーバーラップするようになっている。なお、フランジ33は、ロータヨーク28の周壁部29の外周面に滴下した水滴が、周壁部29の開口側に流れ込むのを規制する規制壁として機能するとともに、ロータヨーク28の補強部としても機能する。
【0022】
一方、ファン本体3は、有底円筒状のファンボス34と、ファンボス34の外周面から径方向外側に突出する複数の送風ブレード35と、を備えている。このファンボス34と送風ブレード35は樹脂によって一体に形成されている。ファンボス34の底壁の中央には、開口36が形成されるとともに、その開口36を閉塞するように別体の金属プレート37が後面側から取り付けられている。この金属プレート37は、ファン本体3を回転軸13に直接固定するための軸固定部を構成するものであり、その中央部には、回転軸13のファン固定部23が嵌入される嵌合孔38が形成されている。ファン本体3は、金属プレート37が座金39とともに回転軸13のファン固定部23に嵌合され、金属プレート37から突出した回転軸13の雄ねじ部24にナット40を締め込むことによって回転軸13に一体に結合されている。また、金属プレート37とともにファン固定部23に嵌合された座金39は、回転軸13上のファン固定部23よりも大径のロータ支軸部22の近傍部に当接し、それにより、ロータ14の底壁部31と金属プレート37の間に軸方向に離間するスペースSが確保されている。 この実施形態の場合、軸固定部である金属プレート37はファンボス34の底壁に複数のビス41によって固定されている。
また、ファンボス34の周壁部の開口側の縁部は、ブラケット12の水浸入規制壁25の外周面と一部オーバーラップするように配置されている。
【0023】
図2は、ブラケット12の単品を前方側から見た斜視図であり、図3は、図2のブラケット12の一部を拡大して示した図である。
これらの図に示すように、ブラケット12の最外周側に配置される水浸入規制壁25は、鉛直下方領域を除く内周面の全域が円形曲面に形成されている。この円形曲面をなす内周面の領域を、以下では内周面の一般部50と呼ぶものとする。水浸入規制壁25の内周面の鉛直下方領域には、内周面の一般部50に対して付根部側が所定深さdだけ段差状に窪む凹部51が形成されている。水浸入規制壁25の内周面は、図1に示すように、ロータ14がブラケット12に組み付けられた状態において、ロータ14の周壁部29の開口側の端縁(フランジ33を含む)に隙間をもって対峙する部分であるが、鉛直下方領域の凹部51は、一般部50に対して径方向外側に窪んでいるため、この部分ではロータ14の開口側の縁部との離間幅が他の部位(一般部50)に対して部分的に拡大している。
【0024】
凹部51は、水浸入規制壁25の付根部(ブラケット12の垂立面から略水平に立ち上がる部位)から延出端に亙る範囲に溝状に形成されている。この凹部51の底面51aは、付根部から延出端に向かって下方に傾斜する傾斜面とされている。
したがって、水浸入規制壁25の内周側に回り込んだ水滴は、図2で矢印wで示すように、水浸入規制壁25の内周面やブラケット12の垂立面、第1円筒壁26の外周面等を伝って下方に流れ落ち、下方領域の凹部51に流れ込んだ後にロータ14の開口側の縁部と凹部51の間の隙間を通して外部に排出されることになる。
【0025】
ここで、水浸入規制壁25に形成される凹部51の窪みの深さdは、凹部51内の水浸入規制壁25の付根部側のコーナに水滴が表面張力によって付着し、その水滴が凍結して氷塊となった場合に、その氷塊がロータ14の開口側の縁部と接触することがない深さに設定されている。
なお、図2図3において、53,54は、第1円筒壁25と第2円筒壁26の内周面の各鉛直下方領域に形成された水滴排出用のテーパ面である。
【0026】
以上の構成において、電動モータ2のコイル10に通電が行われると、ステータ11とロータ14の間に回転力が発生し、ファン本体3がロータ14と一体となって回転してラジエータに冷却風を供給するようになる。
また、雨水の吹き込み等によって電動ファン1に水がかかると、その水滴の一部がファンボス34とブラケット12の隙間に入り、さらにブラケット12の水浸入規制壁25の内周側に回り込むことがあるが、この水滴は第1円筒壁26と第2円筒壁27によってさらに内側への流入を可及的に制限される。水浸入規制壁25の内周側に入り込んだ水滴は重力によって下方に流れ落ち、前述のようにロータ14の開口側の縁部と凹部51の間の隙間を通して電動ファン1の外部に排出される。
【0027】
この実施形態の車両用電動ファン1の電動モータ2においては、水浸入規制壁25の内周面の鉛直下方領域に、水浸入規制壁25の付根部とロータ14の開口側の端縁との離間幅を部分的に拡大する凹部51が設けられているため、凹部51の付根部側のコーナ付近に表面張力によって水滴が付着して、そのまま水滴が凍結することがあっても、凍結してできた氷塊が水浸入規制壁25とロータ14を固着させる不具合を確実に回避することができる。
したがって、この電動モータ2では、冷寒時に固着した氷塊によってロータ14の回転が阻害されることがないため、常時安定した始動性能を維持することができる。
【0028】
図4は、この発明の他の実施形態の車両用電動ファン1の電動モータのブラケット112の一部を示す斜視図である。
この実施形態の車両用電動ファン1の電動モータは、ブラケット112の水浸入規制壁25の内周面の鉛直下方領域の形状が異なるだけで、他の部位の構成や適用される電動モータの構成等は上記の実施形態と同様となっている。このため、上記の実施形態と同一部分には同一符号を付し、重複する説明は省略するものとする。
この実施形態のブラケット112は、水浸入規制壁25の内周面の鉛直下方領域に、水浸入規制壁25の付根部側から延出端側に向かって下方に傾斜するテーパ溝60が設けられ、テーパ溝60の円周方向(幅方向)の中央の最も低い位置に断面略V字状の溝61が水浸入規制壁25の付根部から延出端に亙るように形成されている。この実施形態では、断面略V字状の溝61が、水浸入規制壁25の付根部とロータの開口側の端縁との離間幅を部分的に拡大する凹部を構成している。
【0029】
この実施形態の車両用電動ファン1の電動モータの場合、ブラケット112の水浸入規制壁25の内周面の鉛直下方領域に、一端が水浸入規制壁25の付根部に達するように、断面略V字状の溝61が形成されているため、溝61の付根部側のコーナに表面張力によって水滴が付着して凍結することがあっても、凍結してできた氷塊が水浸入規制壁25とロータ14を固着させる不具合を回避することができる。また、断面略V字状の溝61は周囲の水滴を低位側に誘導する機能があるため、テーパ溝60の付根部側に表面張力によって水滴が滞留しようとした場合にも、その水滴を断面略V字状の溝61を通して外部に排出することができる。
【0030】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…車両用電動ファン
2…電動モータ
3…ファン本体
10…コイル
11…ステータ
12,112…ブラケット(ステータ支持部材)
13…回転軸
14…ロータ
17…ステータ固定パイプ(ステータ支持部材)
25…水浸入規制壁
29…周壁部
30…マグネット
34…ファンボス
35…送風ブレード
51…凹部
61…溝(凹部)
図1
図2
図3
図4