(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
矩形シート状の基材の長手方向に所定間隔で連続して形成されている複数の矩形領域に格子状に配設されている複数の凹部のそれぞれに複数のノズルを用いてインクジェット方式によりインクを塗布する塗布方法であって、
前記基材をその長手方向に所定の張力を掛けて所定の高さで保持すると共に、当該長手方向に垂直な短手方向に位置決めする第1の保持工程と、
前記位置決めされた基材を前記所定の高さに位置する面で受け止める第2の保持工程と、
前記複数のノズルを前記保持された基材から外れた、当該基材の側部近傍の待機位置で待機させる待機工程と、
前記短手方向および前記所定の高さに保持された前記基材を、前記矩形領域の単位で供給する基材供給工程と、
前記供給された矩形領域の基材を吸着固定する矩形領域固定工程と、
前記矩形領域の、前記長手方向におけるX位置誤差と、前記短手方向におけるY位置誤差とを求めるアライメント情報算出工程と、
最初に供給される所定数の矩形領域の形状の歪みを検出する歪み検出工程と、
前記検出された、矩形領域の形状の歪みに基づいて、前記複数の凹部のそれぞれに対してインクを吐出するノズルを決定するマッピングデータを作成するマッピングデータ作成工程と、
前記X位置誤差に基づき、前記矩形領域に対する前記複数のノズルのX方向の位置を補正する工程と、
前記複数のノズルの前記矩形領域に対する位置が補正された後に、前記複数のノズルを前記待機位置から前記短手方向に平行な第1の塗布スキャン方向に移動させながら、当該複数のノズルの中の前記マッピングデータに基づいて選択されたノズルから、前記吸着固定された矩形領域に配設されている複数の凹部のそれぞれにインクを吐出させるインク吐出工程とを備える塗布方法。
前記Y位置誤差に基づいた、前記矩形領域に対する前記複数のノズルのY方向の位置の補正は、前記インク吐出工程において行われることを特徴とする、請求項1に記載の塗布方法。
前記アライメント情報算出工程においては、さらに、前記平行誤差に基づき、前記矩形領域に対する前記複数のノズルの配列方向の傾きを算出し、前記短手方向に対して前記算出された傾きだけ補正して第2の塗布スキャン方向を求め、
前記インク吐出工程においては、前記複数のノズルを前記第2の塗布スキャン方向に移動させながらインクを塗布させることを特徴とする、請求項13に記載の塗布方法。
前記マッピングデータは、塗布スキャンが行われる矩形領域の1つ前の矩形領域に塗布されるテストパターンの検査結果に基づいて更新されることを特徴とする、請求項17に記載の塗布方法。
矩形シート状の基材の長手方向に所定間隔で連続して形成されている複数の矩形領域に格子状に配設されている複数の凹部のそれぞれに複数のノズルを用いてインクジェット方式によりインクを塗布する塗布装置であって、
前記基材をその長手方向に所定の張力を掛けて所定の高さで保持すると共に、当該長手方向に垂直な短手方向に位置決めする第1の保持手段と、
前記位置決めされた基材を前記所定の高さに位置する面で受け止める第2の保持手段と、
前記複数のノズルを前記保持された基材から外れた、当該基材の側部近傍の待機位置で待機させる待機手段と、
前記短手方向および前記所定の高さに保持された前記基材を、前記矩形領域の単位で供給する基材供給手段と、
前記供給された矩形領域の基材を吸着固定する矩形領域固定手段と、
前記矩形領域の、前記長手方向におけるX位置誤差と、前記短手方向におけるY位置誤差とを求めるアライメント情報算出手段と、
最初に供給される所定数の矩形領域の形状の歪みを検出する歪み検出手段と、
前記検出された、矩形領域の形状の歪みに基づいて、前記複数の凹部のそれぞれに対してインクを吐出するノズルを決定するマッピングデータを作成するマッピングデータ作成手段と、
前記X位置誤差に基づき、前記矩形領域に対する前記複数のノズルのX方向の位置を補正するX位置補正手段と、
前記複数のノズルの前記矩形領域に対する位置が補正された後に、前記複数のノズルを前記待機位置から前記短手方向に平行な第1の塗布スキャン方向に移動させながら、当該複数のノズルの中の前記マッピングデータに基づいて選択されたノズルから、前記吸着固定された矩形領域に配設されている複数の凹部のそれぞれにインクを吐出させるインク吐出手段とを備える塗布装置。
前記Y位置誤差に基づいた、前記矩形領域に対する前記複数のノズルのY方向の位置の補正は、前記インク吐出手段によって行われることを特徴とする、請求項20に記載の塗布装置。
前記アライメント情報算出手段は、さらに、前記平行誤差に基づき、前記矩形領域に対する前記複数のノズルの配列方向の傾きを算出すると共に前記短手方向に対して前記算出された傾きだけ補正して第2の塗布スキャン方向を求め、
前記インク吐出手段は、前記複数のノズルを前記第2の塗布スキャン方向に移動させながらインクを塗布させることを特徴とする、請求項32に記載の塗布装置。
前記マッピングデータは、塗布スキャンが行われる矩形領域の1つ前の矩形領域に塗布されるテストパターンの検査結果に基づいて更新されることを特徴とする、請求項37に記載の塗布装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る塗布装置2の上流側には巻出部1が設けられると共に、下流側には巻取部3が設けられている。巻出部1、塗布装置2、および巻取部3は、それぞれが軸Axに沿って配置されている。樹脂フィルムFは、巻出部1においてロールWr1の状態で保持されると共に、巻取部3によって巻き取られて、ロールWr3の状態で保持される。なお、樹脂フィルムFは巻出部1のリールR1でガイドされて、軸Axに平行なX方向に繰り出される。なお、X方向は、樹脂フィルムFの長手方向でもある。巻取部3は塗布装置2から繰り出された樹脂フィルムFをリールR3でガイドしながら巻き取る。本発明においては、画像表示器の基材、すなわちインクが塗布される対象物はガラス基板の代わりに可撓性を有する長尺の矩形のシート状の樹脂フィルムFが用いられる。
【0016】
図2に示すように、樹脂フィルムFは、従来のガラス基板の1枚に取って代わるものではなく、複数枚のガラス基板が連続して長尺状に構成されたものに対応している。これにより、その可撓性ゆえに個々では取り扱いが困難な樹脂フィルムFをより容易に取り扱うと共に、複数枚のガラス基板に相当する領域に迅速、連続的、かつ正確にインクを塗布することを図っている。
【0017】
樹脂フィルムFには、インクが塗布されることによって、画像表示器における画素となるべき凹部P(
図2)が予め格子状のパターンに形成されている。凹部Pを画素要素Pと呼ぶ。本実施の形態では、樹脂フィルムFとして、ポリエチレンテレフタレートからなる、厚さが約100μmのシート状のフィルムが使用されるが、これに限られるものではない。凹部Pは、樹脂フィルムFにエンボス加工等により形成される。
【0018】
図1に戻って、巻出部1、塗布装置2、および巻取部3は、それぞれ、自身の動作を制御する制御器1C、制御器2C、および制御器3Cを含む。制御器1Cと制御器2CはラインL1で相互に接続され、制御器2Cと制御器3CはラインL2で相互に接続されている。制御器1Cは自身の動作状態を示す制御信号Sc12をラインL1を介して制御器2Cに送信し、制御器3Cは自身の動作状態を示す制御信号Sc32をラインL2を介して制御器2Cに送信する。制御器2Cは、受信した制御信号Sc12および制御信号Sc32に基づいて、全体としての塗布動作を決定して、ラインL1を介して制御器1Cに対する制御信号Sc21を送信し、ラインL2を介して制御器3Cに対する制御信号Sc23を送信する。このようにして、塗布動作が制御される。後ほど
図7、
図8および
図9を参照して、実施例における制御器2Cによる塗布動作制御について詳述する。
【0019】
樹脂フィルムFは床FLからリールR1およびR3の外周上端高さHRで、その長手方向(X方向)に所定の張力が掛かった状態で、リールR1およびリールR3によって保持されると共に、X方向に所定枚数の画像表示器に相当する分だけ間欠移動しながら搬送されて、塗布装置2に供給される。このように1回の間欠移動動作によって搬送される樹脂フィルムFの領域を搬送単位Utと呼ぶ。
【0020】
図3を参照して、搬送単位Utについて簡単に説明する。樹脂フィルムFは中心軸Afに沿って延在する長尺のシートであり、中心軸Afが上述の軸Axと平行になるように配置される。
図3(a)には、搬送単位Utに1枚分の画像表示器に相当する画像表示領域Sが形成されている例が示されている。画像表示領域Sの形状は、製造される画像表示器の形状の相似形であることが望ましい。本実施の形態においては、画像表示領域Sは矩形状である。画像表示領域Sは、中心軸Afに平行な方向(
図3に示すD(Af)方向)に長さLsxだけ延在し、中心軸Afに垂直な方向(
図3に示すD(Yf)方向)に長さLsyだけ延在している。なお、樹脂フィルムFに準じて、長さLsxおよび長さLsyをそれぞれ画像表示領域Sの長さおよび幅と呼ぶ。
【0021】
画像表示領域Sには、画素要素である凹部Pが格子状のパターンに形成されている。凹部Pは上述の通り、エンボス加工等により形成されるが、この加工の際に樹脂フィルムFにかけられる圧力や熱等によって、矩形状の画像表示領域Sの形状が、例えば平行四辺形状に歪むことがある。
【0022】
図3(b)には、搬送単位Utに複数枚の画像表示領域S1・・・Sn(nは2以上の整数)が形成されている例が示されている。本例においては、9(3×3)枚の画像表示領域S1〜Snが規則正しく配列されている。画像表示領域S、およびS1〜Snは、それぞれ従来のガラス基板の1枚に相当する。画像表示領域S1〜Sn(n=9)は、
図3(a)の画像表示領域Sが、凹部Pを有しない部分によってn(n=9)個に分割されたものと同等である。このような場合も、凹部Pを形成する加工の際に樹脂フィルムFにかけられる圧力や熱等によって、画像表示領域S1〜Snそれぞれの形状が、例えば平行四辺形状に歪むことがある。
【0023】
図1に示すように、塗布装置2においては、樹脂フィルムFは、床FLから高さHRになるように設置された吸着プレート8の上面にガイドされる。これにより、樹脂フィルムFは、巻出部1、塗布装置2、および巻取部3の間で、ほぼ高さHRの位置で張力が掛かった状態で保持かつ搬送される。塗布装置2は、
図1において、吸着プレート8より下部に位置する塗布ベース2Bと、吸着プレート8を含み塗布ベース2Bより上部に位置する塗布ユニット2Gとに大別される。
【0024】
このように、樹脂フィルムFは、その短手(軸Axに垂直な)方向であるY(幅)方向およびX(長さ)方向に関してリールR1およびリールR3によっておおよそ位置決め(ガイド)され、Z(高さ)方向に関してはリールR1、吸着プレート8、およびリールR3によって位置決め(ガイド)されている。
【0025】
所定の枚数の画像表示器に相当する樹脂フィルムFの搬送単位Utが吸着プレート8上に供給(載置)される。そして、吸着プレート8は樹脂フィルムFを吸着固定する。吸着固定された樹脂フィルムFに対して、複数のインクジェットノズル13(
図5)を備えるインクジェットヘッドバー5が相対移動しながら、前記インクジェットノズル13により、画素要素である複数の凹部Pから任意に選択される凹部Pに対して、インクが塗布される。塗布装置2(主に、塗布ユニット2G)の構成およびその動作について、
図2および
図6を参照して後ほど詳述する。
【0026】
好ましくは、インクが塗布された樹脂フィルムFは、塗布装置2と巻取部3との間に設けられた装置(図示せず)において、乾燥および検査等の処理が行われる。その後、樹脂フィルムFは巻取部3において、ロール状に巻き取られる。
【0027】
図2を参照して、塗布ユニット2Gの構成について説明する。樹脂フィルムFには連続する3つの搬送単位Ut1、Ut2、およびUt3が形成されている。そして、搬送単位Ut1、Ut2、およびUt3のそれぞれには、1枚の画像表示器に相当する画像表示領域S1、S2、およびS3が形成されている。上述のように、本例においては画像表示領域Sは、従来のガラス基板の1枚に相当するが、複数のガラス基板に相当するように構成しても良い。
【0028】
塗布ユニット2Gは、フロントフレームFRf、バックフレームFRb、塗布ガントリ4、カメラガントリ6、および吸着プレート8(保持ステージ)を含む。フロントフレームFRfおよびバックフレームFRbは、軸Ax(X方向)に垂直なY方向に平行に延在するように塗布装置2のベース(図示せず)に固定されている。なお、フロントフレームFRfは上流(巻出部1)側に、バックフレームFRbは下流(巻取部3)側に配置されている。つまり、フロントフレームFRfおよびバックフレームFRbは、X方向、Y方向、およびZ方向に関して固定されている。
【0029】
塗布ガントリ4は、フロントフレームFRfおよびバックフレームFRbに対して、Y方向にスライド可能に取り付けられると共に、図示されていない駆動手段によってY方向に高精度にスライドされる。塗布ガントリ4には、インクを樹脂フィルムFに対して塗布するインクジェットヘッドバー5が保持されている。インクジェットヘッドバー5は、軸Axに平行な軸A5に沿って所定長Lだけ延在する。インクジェットヘッドバー5の延在長Lは、画像表示領域Sの長さLsxより長く設定されている。また、インクジェットヘッドバー5は、図示されていない駆動手段により、軸A5上の任意の点(好ましくは、中心)を通るZ軸(図示せず)を中心として任意の角度θだけ回転可能に保持されている。さらに、インクジェットヘッドバー5は、その回転軸がX方向に所定の距離△Xだけ、左右に移動可能に保持されている。
【0030】
つまり、インクジェットヘッドバー5は、X方向(軸Ax)に対して0°以上θ°以下の範囲の角度を成した状態で、X方向に△Xだけスライドできるように構成されている。なお、インクジェットヘッドバー5は、樹脂フィルムFへのインク塗布動作が開始する迄、或いはインク塗布動作間は、樹脂フィルムFを外れたホームポジションHPで待機させられる。ホームポジションHPは、好ましくは、画像表示領域Sに形成された複数の凹部(画素要素)Pの中で最初にインクが塗布される凹部Pに間近の位置が好ましいが、メンテナンス、フラッシング待機、ヘッド交換、および清掃などの作業性を考慮して決定される。これについては、後ほど詳述する。
【0031】
カメラガントリ6は、塗布ガントリ4と同様に、Y方向にスライド可能にフロントフレームFRfおよびバックフレームFRbに取り付けられていると共に、図示されていない駆動装置によってY方向に高精度にスライドされる。カメラガントリ6は、それぞれX方向に高精度にスライドできるエリアカメラ7およびスキャンカメラ9を保持している。エリアカメラ7およびスキャンカメラ9は、図示されていない駆動手段により、X方向に高精度にスライドされる。
【0032】
エリアカメラ7は、インクジェットヘッドバー5を樹脂フィルムFに対して位置合わせするための、樹脂フィルムFのマーク(図示せず)の検出及び、樹脂フィルムFの画像表示領域Sの歪みを検出するための計測に用いられる。スキャンカメラ9は、樹脂フィルムFの画像表示領域Sの歪みを検出するための計測及び、樹脂フィルムFの画像表示領域S以外の所定の部分にテストパターンとして吐出されたインクを検出するための計測に用いられる。エリアカメラ7およびスキャンカメラ9は、インクジェットヘッドバー5の樹脂フィルムFに対する位置合わせや、画像表示領域Sの歪みの検出及び吐出されたインクの検出のため、図示しない駆動機構およびガイド機構によってX方向に駆動される。エリアカメラ7およびスキャンカメラ9は、Y方向にも駆動される。
【0033】
図4を参照して、インクジェットヘッドバー5について説明する。本例においては、インクジェットヘッドバー5には、3つのヘッドユニット10a、10b、および10c(必要に応じて、ヘッドユニット10と総称する)がX方向に所定の距離D2だけ離間して平行に設けられている。以降、距離D2を必要に応じてヘッドユニット離間距離D2と称する。ヘッドユニット10は、それぞれ異なる色調のインクを吐出する3つのヘッドモジュール11a、11b、および11c(必要に応じて、ヘッドモジュール11と総称する)が設けられている。ヘッドモジュール11がX方向にインクを塗布できる長さをヘッドモジュール塗布幅Wmと呼ぶ。なお、ヘッドモジュール塗布幅Wmに関しては、後ほど
図5を参照して説明する。
【0034】
ヘッドモジュール11a、11b、および11cは所定の距離D1ずつX方向にシフトして配置されている。以降、距離D1を必要に応じてヘッドモジュールシフト距離D1と称する。なお、ヘッドモジュールシフト距離D1はヘッドモジュール塗布幅Wmに相当し、ヘッドユニット離間距離D2はヘッドモジュール塗布幅Wmの2倍(2Wm)に相当する。つまり、1つのヘッドユニット10がX方向にインクを塗布できる長さをヘッドユニット塗布幅Wuと称する。ヘッドユニット塗布幅Wuはヘッドモジュール塗布幅Wmの3倍(3Wm)である。結果、インクジェットヘッドバー5をY方向に移動させることによって、X方向にヘッドユニット塗布幅Wuの3倍の長さに渡ってインクを樹脂フィルムFに塗布することができる。なお、ヘッドユニット塗布幅Wuは、通常90mm程度である。
【0035】
本例においては、インクジェットヘッドバー5のX方向の塗布幅は3・Wuである。しかしながら、必要に応じて、L(Lは自然数)個のヘッドユニット10を設けることにより、塗布幅をL・Wuとすることができる。インクジェットヘッドバー5のX方向の塗布幅L・Wuは次式(1)を満たす。
L・Wu≧Lsx ・・・・ (1)
【0036】
図5を参照して、ヘッドモジュール11について説明する。ヘッドモジュール11は、X方向を長辺とし、Y方向を短辺とする矩形状の吐出面を有している。ヘッドモジュール11には、X方向を長辺とし、Y方向を短辺とする矩形状の吐出面を有する塗布ヘッド12が複数個(本例においては5)、Y方向に隣接して設けられている。つまり、ヘッドモジュール11の吐出面は、複数の塗布ヘッド12の吐出面で構成されている。
【0037】
塗布ヘッド12の吐出面には、X方向に所定の間隔で配列された、同一の色調のインクを吐出する複数のノズル13がY方向に複数段(本例においては、2段)に渡って設けられている。なお、上述のように、ヘッドモジュール11はそれぞれ同一色調のインクを吐出するので、1つのヘッドモジュール11に設けられている全てのノズル13は同一色調のインクを吐出できる。樹脂フィルムFの凹部P、つまり画素要素への塗布は1つのヘッドモジュール11に設けられているノズル13の全てを使用する必要はなく、1つの画素要素を塗布するのに必要なノズル数を自由に選択できる。
【0038】
しかしながら、ノズル13は、完全に全く同じものを作製するのは困難であるため、ノズル毎に微妙にインクの吐出量が異なる。この吐出量の差は微妙な差であるが、広範囲の領域を塗布した場合は、この微妙な違いが塗布ムラとなって現れる。本発明の出願人は、この塗布ムラを解消する塗布方法を特願2009−221161号において提案している。同塗布法においては、インクジェットヘッドバー5に設けられている同一色調のインクを吐出できる全てのノズル13から吐出量が所定の値になるようにする任意のノズルを選択して、隣接する画素要素とのインクの塗布量の違いを十分に小さな違いにすることにより、塗布ムラの解消を図っている。つまり、インクジェットヘッドバー5に設けられている同一色調のノズル13の全てから、任意に組み合わせたノズル13にのみインクを対象の画素要素(凹部P)に吐出させるように制御している。
【0039】
画像表示領域Sの形状は、上述した通り、凹部Pを形成する加工時に樹脂フィルムFにかけられる圧力や熱等によって、例えば平行四辺形状に歪むことがある。画像表示領域Sの形状の歪みは、凹部Pの形状の歪みまたは位置ずれをもたらすため、樹脂フィルムFに対するインクの塗布不良の原因となり得る。この画像表示領域Sの形状の歪みは、樹脂フィルムFのロールWr1単位で同様のパターンの歪みが生じる場合も、同一のロールWr1において画像表示領域Sごとに異なるパターンの歪みが生じる場合もある。
【0040】
この問題に対し、本発明においては、樹脂フィルムFのロールWr1において、最初に供給される所定枚数の画像表示領域Sの形状の歪みの検出を行い、検出した歪みのデータに基づいて、樹脂フィルムFのロールWr1単位で同様のパターンの歪みが生じているか否かを判断する。本発明においては、同様のパターンの歪みが生じていると判断した場合に、前記所定枚数の画像表示領域Sに対して検出した歪みのデータに基づいて、後述するマッピングデータDmを作成し、以後は画像表示領域Sの歪みの検出を行うことなく前記マッピングデータDmに基づいて、樹脂フィルムFに対するインクの塗布を行う。上記判断ステップにおいて、画像表示領域Sごとに異なるパターンの歪みが生じていると判断した場合は、マッピングデータDmの作成や樹脂フィルムFに対するインクの塗布は行わない。
【0041】
上述した、本発明に係る塗布方法について
図7を参照して説明する。塗布装置2(制御器2C)の動作が開始すると、まずステップS1において、本処理における各種パラメータが初期化される。次にサブルーチン#100において、画像表示領域Sが塗布装置2に供給され、塗布ユニット2Gに対する画像表示領域Sの位置ずれ、すなわち画像表示領域S単位での樹脂フィルムFの位置ずれが検出される。
【0042】
次にサブルーチン#200において、最初に供給される所定数の画像表示領域Sの形状の歪みの検出をエリアカメラ7またはスキャンカメラ9にて行い、検出した歪みのデータに基づいて、樹脂フィルムFのロールWr1単位での画像表示領域Sの形状の歪みを判定する。ロールWr1単位で同様のパターンの歪みが生じていると判定した場合は検出した歪みのデータに基づいて、後述するサブルーチン#400A、#400Bで当該ロールWr1の画像表示領域Sに対して塗布スキャンを行う際に使用するマッピングデータDmを作成する。
【0043】
次にサブルーチン#300において、サブルーチン#100で検出した位置ずれのデータに基づき、画像表示領域Sすなわち樹脂フィルムFに対して、塗布装置2のインクジェットヘッドバー5の位置ずれが補正される。その後サブルーチン#400Aにおいて、上記マッピングデータDmに基づいて、当該画像表示領域Sに対する1回目の塗布スキャンを行う。
【0044】
画像表示領域Sに対する1回目の塗布スキャンが完了した後、サブルーチン#500においてテストパターンの塗布および検査を行い、検査結果に基づいてマッピングデータDmを更新する。更新されたマッピングデータDmは、次に供給される画像表示領域Sに対する塗布スキャン時に使用される。サブルーチン#500の処理と並行して、サブルーチン#400Bにおいて、当該画像表示領域Sに対する2回目以降の塗布スキャンが行われる。
【0045】
当該画像表示領域Sに対する塗布スキャンが完了すると、サブルーチン#600において、インクジェットヘッドバー5は所定の位置に移動されて待機する。樹脂フィルムF単位での画像表示領域Sに対する塗布スキャンが完了していなければ、処理はサブルーチン#100に戻って、画像表示領域Sに対する塗布スキャンが継続される。樹脂フィルムF単位での塗布スキャンが完了していれば、処理は終了する。
【0046】
(実施例)
図6、
図7、
図8、
図9、
図10、
図11および
図12を参照して、本発明の実施例に係る塗布方法および塗布装置について説明する。本実施例における塗布ユニット2Gとインクジェットヘッドバー5と制御器2Cとのそれぞれを、塗布ユニット2Ga(
図6)、インクジェットヘッドバー5a(
図6)、制御器2Caとして以下に説明する。同様に、塗布装置2も塗布装置2aとして識別する。なお、塗布装置2aと制御器2Caについては、
図1を援用する。
【0047】
上述のように、本実施例における塗布ユニット2Gaは、インクジェットヘッドバー5がインクジェットヘッドバー5aに交換されている点を除いて、塗布ユニット2Gと同様に構成されている。インクジェットヘッドバー5aは、インクジェットヘッドバー5と同様に、X方向(軸Ax)に対して0°以上θ°以下の範囲の角度を成した状態で、X方向に△Xだけスライドできるように構成されている。なお、θおよび△Xはそれぞれ次式(2)および(3)を満たす。
0≦θ≦1° ・・・・(2)
0≦△X≦Wu ・・・・(3)
【0048】
次に、
図7、
図8、および
図9を参照して、主に制御器2Ca(
図1を援用)の動作を中心に、本実施例における塗布装置2aによる樹脂フィルムFに対するインク塗布動作について説明する。上述のように、樹脂フィルムFはリールR1、リールR3、および吸着プレート8によって、X方向、Y方向、およびZ方向に関してガイドされた状態で、塗布装置2aによる塗布動作が開始される。なお、インクジェットヘッドバー5aは、樹脂フィルムFへのインク塗布動作が開始する迄、或いはインク塗布動作の合間は、樹脂フィルムFを外れたホームポジションHPで待機させられる。ホームポジションHPは、好ましくは、画像表示領域Sに形成された複数の凹部(画素要素)Pの中で最初にインクが塗布される凹部Pに間近の位置が好ましいが、メンテナンス、フラッシング待機、ヘッド交換、および清掃などの作業性を考慮して決定される。
【0049】
動作が開始すると、まず、ステップS1において、本処理における各種パラメータが初期化される。具体的には、ロールWr1単位の樹脂フィルムFの画像表示領域Sの枚数を示す画像表示領域カウンタCs及び画像表示領域S単位の塗布スキャン動作の回数を示す塗布スキャンカウンタCaがそれぞれ0にセットされ、画像表示領域S単位の最大塗布スキャン回数を示す画像表示領域最大塗布スキャン値Camax及び樹脂フィルムFの単位で塗布されるべき画像表示領域Sの枚数を示す樹脂フィルム最大塗布枚数Csmaxのそれぞれが所定の値に設定され、マッピングデータDmが所定の値Dに設定される。塗布スキャンとは、インクジェットヘッドバー5a(塗布ガントリ4)が、画像表示領域Sに対して、Y方向(ホームポジションHPとカメラガントリ6との間)に1回移動しながらインクを塗布することを言う。マッピングデータDmは、インクジェットヘッドバー5aが所定の座標(画像表示領域Sに対するインクジェットヘッドバー5aの相対位置)にある時に、どのノズル13からインクを吐出するかを、個々の凹部(画素要素)Pについて規定するデータである。さらに、ロールWr1においてその形状の歪みの検出を行う画像表示領域Sの枚数を示す歪み検出枚数Cdが所定の値に設定されると共に、後述する画像表示領域Sの(樹脂フィルムFの中心軸Afに平行な)D(Af)方向に対する傾きである姿勢誤差Sθの最大許容値であるSθmaxが所定の値に設定される。さらに、後述する画像表示領域SのX方向に対する傾きである平行誤差Eθの最大許容値であるEθmaxが所定の値に設定される。
【0050】
次に
図7におけるサブルーチン#100において、画像表示領域Sが塗布装置2に供給され、塗布ユニット2Gに対する画像表示領域Sの位置ずれが検出される。サブルーチン#100の詳細な処理は、
図8のフローチャートにおけるステップS2〜S8で表わされる。
【0051】
まず、ステップS2において、塗布装置2(制御器2C)から巻出部1(制御器1C)および巻取部3(制御器3C)に対して、樹脂フィルムFを1枚の画像表示領域S分だけ、吸着プレート8(塗布ユニット2G)上に供給するように要求する制御信号Sc21およびSc23が出力される。巻出部1および巻取部3は、制御信号Sc21およびSc23に応答して、リールR1およびR3をX方向に回転させて、それぞれ樹脂フィルムFを張力を掛けながら、1枚の画像表示領域Sを吸着プレート8上に供給する。そして、巻出部1(制御器1C)および巻取部3(制御器3C)は、制御信号Sc12およびSc32を出力して、画像表示領域Sの供給完了を塗布装置2に知らせる。
【0052】
ステップS4において、塗布装置2(制御器2C)は、制御信号Sc12およびSc32に応答して、巻出部1(制御器1C)および巻取部3(制御器3C)に対して、供給された画像表示領域Sを吸着プレート8上に載置させる制御信号Sc21およびSc23を出力する。巻出部1(制御器1C)および巻取部3(制御器3C)は、それぞれ、制御信号Sc21およびSc23に応答して、画像表示領域S(搬送単位Ut)を吸着プレート8上に載置させた後に、制御信号Sc12およびSc32を出力する。塗布装置2(制御器2C)は、制御信号Sc12およびSc32に応答して、吸着プレート8により画像表示領域Sを吸着固定させる。
【0053】
ステップS5において、画像表示領域カウンタCsに1が加算される(Cs=Cs+1)。加算後のカウンタCsは、現在塗布装置2に供給されている画像表示領域Sが、樹脂フィルムFにおいて、何枚目の画像表示領域Sであるかを表す。つまり、上述のステップS1において、画像表示領域カウンタCsは0に設定されているので、画像表示領域カウンタCsは1、つまり、動作開始直後には樹脂フィルムFの1枚目の画像表示領域Sが吸着プレート8上に吸着固定されていることが示される。
【0054】
ステップS6において、制御器2Cは塗布ユニット2Gのカメラガントリ6およびエリアカメラ7を起動して、樹脂フィルムF(画像表示領域S)の所定の領域に設けられているマーク(図示せず)を検出する。
【0055】
ステップS8において、ステップS6で得られた検出結果に基づいて、画像表示領域Sのアライメント情報IAaを生成する。アライメント情報IAaは、X位置誤差Ex、Y位置誤差Ey、平行誤差Eθ、および補正塗布スキャン方向Emを含む。X位置誤差Exは画像表示領域SのX方向における位置ずれ量であり、Y位置誤差Eyは画像表示領域SのY方向における位置ずれ量であり、平行誤差Eθは画像表示領域SのX(軸Ax)方向に対する傾き(非平行度)であり、補正塗布スキャン方向Emはインクジェットヘッドバー5a(ヘッドモジュール11)が移動されて塗布スキャンが実行される方向である。平行誤差Eθおよび補正塗布スキャン方向Emの意味については後ほど説明する。
【0056】
次に
図7におけるサブルーチン#200において、最初に供給される所定数の画像表示領域Sの形状の歪みの検出および、樹脂フィルムFのロールWr1単位での画像表示領域Sの形状の歪みの判定を行い、マッピングデータDmを作成する。サブルーチン#200の詳細な処理は、
図8のフローチャートにおけるステップS50〜S64およびステップS80〜S92で表わされる。
【0057】
樹脂フィルムFの、最初に供給される所定枚数(歪み検出枚数)Cd枚分の画像表示領域Sに対してのみ、以下に説明するステップS50〜S64およびステップS80〜S92において、画像表示領域Sの歪みの検出及び、検出した歪みに基づいたマッピングデータDmの作成等を行う。本実施の形態において画像表示領域Sの歪みは、画像表示領域Sの輪郭の形状と、画像表示領域Sの樹脂フィルムF上の位置とに基づき判定する。マッピングデータDmの作成には、画像表示領域Sの輪郭の形状と共に、樹脂フィルムF上の位置を考慮する必要があるからである。画像表示領域Sの樹脂フィルムF上の位置は、具体的には画像表示領域Sの(樹脂フィルムFの中心軸Afに平行な)D(Af)方向に対する傾きである姿勢誤差Sθで判定する。
【0058】
ステップS50において、カウンタCsを参照して、現在吸着プレート8上に吸着固定されている画像表示領域Sが、当該ロールWr1において1枚目から歪み検出枚数Cd枚目までの画像表示領域Sである(カウンタCs≦Cd)か否かが判断される。Yesと判断される場合は、以下に説明するステップS80〜S92およびS54〜S64において、画像表示領域Sの歪みの検出及びマッピングデータDmの作成等が行われる。Noと判断される場合は、処理は以下に説明するステップS10に進み、インクジェットヘッドバー5aのX方向の位置が補正される。
【0059】
ステップS80〜S92において、制御器2Cは塗布ユニット2Gのカメラガントリ6およびスキャンカメラ9を起動して、画像表示領域Sの歪み、すなわち画像表示領域Sの輪郭の形状と、画像表示領域SのD(Af)方向に対する傾きである姿勢誤差Sθとを検出するための計測を行う。但し、画像表示領域Sの姿勢誤差Sθが所定の許容範囲内に収まるのであれば、姿勢誤差Sθの検出は行わなくてよい。
【0060】
以下、
図8、
図9、
図10、
図11及び
図12を参照して、画像表示領域Sの輪郭の形状及び姿勢誤差Sθの検出方法について説明する。
図8におけるステップS80〜S86が姿勢誤差Sθの検出工程であり、ステップS88〜92が画像表示領域Sの輪郭の形状の検出工程である。上述の通り、ステップS80〜S86は必要に応じて行う。
【0061】
まず、ステップS80において、画像表示領域Sの四辺それぞれについて、
図10(a)において点線で囲んで示す所定数のエリアを、エリアカメラ7またはスキャンカメラ9を用いて撮像する。
図10(a)に示す例では、画像表示領域Sの、D(Af)方向に平行な辺にn個、D(Yf)方向に平行な辺にm個の撮像対象エリアを設けており、Ar11〜Armnとして示している。この撮像の対象となるのは、画像表示領域Sと、樹脂フィルムFの凹部Pを有しない部分との境界である。従って、撮像対象エリアAr11〜Armnは、画像表示領域Sの四辺から1列目の凹部Pを含むように設定される。
【0062】
次に、ステップS82において撮像された凹部Pの画像を処理することにより、
図10(b)に示すように、各凹部Pの重心Pgの座標を算出する。ステップS84において
図10(c)に示すように、画像表示領域Sの同一辺上の凹部Pの重心Pgの近似直線Lpgを求める。この近似直線Lpgを、画像表示領域Sの四辺それぞれについて求める。
ステップS86において
図11(d)に示すように、これらの近似直線Lpgが、D(Af)方向あるいはD(Yf)方向に対してなす傾きSθ1〜Sθ4を、画像表示領域Sの四辺それぞれについて算出する。これらの傾きSθ1〜Sθ4を、画像表示領域Sの姿勢誤差Sθと総称する。なお、画像表示領域Sの形状に歪みが無い場合は、上記近似直線LpgはD(Af)方向あるいはD(Yf)方向に対して平行であり、傾きSθ1〜Sθ4は0度である。
【0063】
ステップS88において、
図11(d)に示すように、画像表示領域Sの四辺それぞれの傾きSθ1〜Sθ4を基に、画像表示領域Sの四隅の角度SA1〜SA4を算出する。画像表示領域Sの形状に歪みが無い場合は、その四隅の角度SA1〜SA4は90度である。なお、ステップS80〜S86の工程による姿勢誤差Sθの検出を行わない場合は、角度SA1〜SA4は、エリアカメラ7またはスキャンカメラ9を用いた撮像により直接計測するとよい。
【0064】
その後、ステップS90において、角度SA1〜SA4を基に、
図11(e)に示すように、画像表示領域Sの頂点の、理想位置(画像表示領域Sの形状に歪みが無い場合の、画像表示領域Sの頂点の位置)に対するY方向のずれ量ΔAy1〜ΔAy4を、次式(7)により算出する。
ΔAyn=(画像表示領域Sの長さ(理想値)Lsx・1/2)・cosSAn ・・・(7)
【0065】
画像表示領域Sの頂点の、上記理想位置に対するX方向のずれ量ΔAx1〜ΔAx4は、次式(8)により算出する。
ΔAxn=(画像表示領域Sの幅(理想値)Lsy・1/2)・sinSAn ・・・(8)
【0066】
算出されたX方向のずれ量ΔAx1〜ΔAx4及びY方向のずれ量ΔAy1〜ΔAy4に基づき、ステップS92において
図11(e)に示すように、画像表示領域Sの輪郭の形状を算出する。後述するステップS62において、算出された画像表示領域Sの輪郭の形状および画像表示領域Sの姿勢誤差Sθに基づいて、マッピングデータDmを作成する。
【0067】
なお、画像表示領域Sの形状の歪みの検出方法は上記に限られない。例えば、画像表示領域Sに複数のサブ領域を設定し、個々のサブ領域の輪郭の形状に基づいて画像表示領域Sの形状を算出すると、より高い精度で画像表示領域Sの形状の歪みを検出することができる。このようなサブ領域は、画像表示領域Sの各辺を等分して設定することが望ましい。
【0068】
図12に示す例では、画像表示領域Sに12個のサブ領域SD1〜SD12を設定している。
図12(a)に示すのは、画像表示領域Sの形状に歪みが無い場合のサブ領域SD1〜SD12である。個々のサブ領域SD1〜SD12の輪郭の形状の算出は、上述のステップS80〜S92で説明した画像表示領域Sの輪郭の形状の算出方法を援用して行うことができる。すなわち、サブ領域SD1〜SD12についてその四隅の角度を算出してサブ領域SD1〜SD12それぞれの輪郭の形状を算出し、それらサブ領域SD1〜SD12の輪郭の形状に基づいて画像表示領域Sの形状を算出することができる。このようにすると、
図12(b)に示すような、画像表示領域Sが平行四辺形状以外の形状に歪んでいる場合でも、画像表示領域Sの輪郭の形状を算出することができる。画像表示領域Sが平行四辺形状以外の形状に歪んでいる場合は、当該画像表示領域S内の凹部Pの歪みは均等でないと考えられるが、このような場合でも、マッピングデータDmを精度良く作成することができる。
【0069】
ステップS54において、ステップS80〜S92で求めた画像表示領域Sの形状の歪みが許容範囲内(マッピングデータDmの作成が可能)であるか否かを判断する。この判断は、ステップS88で求めた画像表示領域Sの四隅の角度SA1〜SA4、及び必要に応じて、ステップS86で求めた画像表示領域Sの姿勢誤差Sθである傾きSθ1〜Sθ4を、あらかじめ設定された閾値と比較することにより行う。上述の通り、角度SA1〜SA4は画像表示領域Sの輪郭の形状により決定される数値であり、姿勢誤差Sθは画像表示領域Sの樹脂フィルムF上の位置により決定される数値である。
【0070】
ステップS54においてNo(マッピングデータDmの作成が不可能)と判断される場合は、処理はステップS64に進んで、エラー処理(ライン停止、メンテナンス等)を行う。
【0071】
ステップS54においてYes(マッピングデータDmの作成が可能)と判断される場合は、処理はステップS56に進み、先に求めた画像表示領域Sの歪みの値を保存する。次にステップS58において、カウンタCsを参照して、現在吸着プレート8上に吸着固定されている画像表示領域Sが、当該ロールWr1における歪み検出枚数Cd枚目の画像表示領域Sである(カウンタCs=Cd)か否かが判断される。Noと判断される場合は、処理はステップS2に戻って、次の画像表示領域Sが吸着プレート8上に供給され、画像表示領域Sの歪みの検出が継続される。つまり、当該ロールWr1において1枚目から(Cd−1)枚目までの画像表示領域Sに対しては、インクの塗布スキャンは行われない。そして、歪み検出枚数Cd枚目の画像表示領域Sの歪みの検出が完了した時点(Cs=Cd)で、Yesと判断されて、処理は次のステップS59に進む。
【0072】
ステップS59において、ステップS56で保存した、1枚目から歪み検出枚数Cd枚目までの画像表示領域Sの歪みの値を参照して、これらの歪みのパターンのばらつきが許容範囲内であるか否かを判断する。Noと判断される場合は、当該ロールWr1において画像表示領域Sごとに異なるパターンの歪みが生じていると考えられる。この場合、ステップS80〜S92で求めた画像表示領域Sの形状の歪みに基づいて作成したマッピングデータDmを用いて樹脂フィルムFに対するインクの塗布を行うと、塗布不良になる可能性が高いと判断される。そのため処理はステップS61に進んで、エラー処理(ライン停止、メンテナンス等)を行う。
【0073】
ステップS59においてYesと判断される場合は、処理はステップS60に進み、1枚目から歪み検出枚数Cd枚目までの画像表示領域Sの歪みの値の平均値を算出する。その後、処理はステップS62に進んで、ステップS60で求めた画像表示領域Sの歪みの値の平均値に基づいて、当該ロールWr1の画像表示領域Sに対する塗布スキャンに使用するマッピングデータDmを作成する。なお、マッピングデータDmの作成に使用される、画像表示領域Sの歪みの値は平均値に限られず、他の方法で統計処理した値を使用してもよい。
【0074】
ステップS62においてマッピングデータDmが作成された後、処理はステップS10に進み、インクジェットヘッドバー5aのX方向の位置が補正される。その後、歪み検出枚数Cd枚目及びそれ以降の画像表示領域Sに対する塗布スキャンが行われる。
【0075】
次に
図7におけるサブルーチン#300において、サブルーチン#100で検出した位置ずれのデータに基づき、画像表示領域Sに対して、インクジェットヘッドバー5aの位置ずれが補正される。サブルーチン#300の詳細な処理は、
図9のフローチャートにおけるステップS10〜S14およびステップS70で表わされる。
【0076】
インクジェットヘッドバー5aの位置ずれ補正処理の説明に先立って、ステップS8において求めた平行誤差Eθの意味について簡単に説明する。画像表示領域Sが吸着プレート8上に正しく位置決めされている場合には、X位置誤差Ex、Y位置誤差Ey、および平行誤差Eθはゼロであり、樹脂フィルムFの延在中心軸Afは軸Axと一致する。この場合は、画像表示領域Sの形状の歪みに対応できれば画像表示領域Sに対する塗布スキャンは問題無く行われるので、ステップS62において作成されたマッピングデータDmを使用して塗布スキャンを行えばよい。しかしながら、画像表示領域Sが正しく位置決めされていない場合には、塗布開始の前にインクジェットヘッドバー5aの姿勢、位置、およびインクの吐出開始位置を補正する必要がある。具体的には、
図2に示すように、平行誤差Eθが0の場合は、X位置誤差Exに基づいて塗布ガントリ4をX方向に移動させ、Y位置誤差Eyに基づいてインクジェットヘッドバー5aのインク塗布開始タイミング(位置)を修正すれば対応できる。
【0077】
一方、平行誤差Eθがゼロでない場合、インクジェットヘッドバーの軸A5が画像表示領域Sに設けられた複数の凹部Pの中心軸Af(X)方向の配列に対して、平行誤差Eθだけ傾いている。つまり、軸A5方向に配列された複数のノズル13(ヘッドモジュール11)が、画像表示領域S(複数の凹部P)に対して平行に対向していないことを意味する。よって、平行誤差Eθが0の場合のように、X位置誤差Exに基づいて塗布ガントリ4をX方向に移動させ、Y位置誤差Eyに基づいてインクジェットヘッドバー5aのインク塗布開始タイミング(位置)を修正しても対応できない。
【0078】
よって、本実施例においては、インクジェットヘッドバー5aを平行誤差Eθ分だけ回転させて、傾いた画像表示領域Sの中心軸Af方向に並んだ画素要素(画像表示領域S)に対して平行に位置させた状態で、インクジェットヘッドバー5aの画像表示領域Sに対するX位置、インクジェットヘッドバー5aのインク塗布開始タイミングの修正を可能にすることを意図している。
【0079】
ステップS10において、X位置補正が行われる。具体的には、X位置誤差Exに基づいて、インクジェットヘッドバー5aのX方向の位置が補正される。
【0080】
ステップS70において、平行誤差Eθを参照して、画像表示領域SのX方向に対する傾きが、許容範囲内であるか否かが判断される。Yesと判断される場合は、後述するステップS12において行われるインクジェットヘッドバー5aのθ補正は不要であると判断されるため、ステップS14に進んで塗布スキャンの準備を行う。この場合、後述する塗布スキャン時のM補正も不要である。
【0081】
ステップS70においてNoと判断される場合は、ステップS72に進んで、平行誤差Eθが最大許容値であるEθmax以下である(平行誤差Eθ≦Eθmax)か否かが判断される。Yesと判断される場合は、ステップS12に進んでインクジェットヘッドバー5aのθ補正を行う。Noと判断される場合は、ステップS74に進んで、エラー処理(樹脂フィルムFの位置を人手により修正する等)を行う。平行誤差Eθの最大許容値であるEθmaxは、インクジェットヘッドバー5aの可動範囲等を考慮して決定される。
【0082】
ステップS12において、θ補正が行われる。具体的には、平行誤差Eθに基づいて、インクジェットヘッドバー5aがθ回転される。結果、インクジェットヘッドバー5aのノズル13の列は、画像表示領域Sの画素要素(凹部P)のX方向配列に対して平行に対向する。
【0083】
ステップS14において、塗布ガントリ4(インクジェットヘッドバー5a)がホームポジションHPから本来の塗布開始位置まで移動される。つまり、上述のステップS10およびS12において、インクジェットヘッドバー5aがホームポジションHPでX位置補正およびθ補正された後に、インクジェットヘッドバー5aはホームポジションHPより塗布開始位置に移動する。つまり、塗布開始位置に到達した時点では、インクジェットヘッドバー5aのX位置補正およびθ補正は不要である。
【0084】
また、X位置補正及びθ補正に時間が掛かる場合でも、インクジェットヘッドバー5aはホームポジションHP上にあるので、塗布直前までフラッシングを行うことができ、インク乾きによるノズル詰まりを防止できる。なお、両ステップにおける処理の順番は前後しても良いし、同時であってもよい。
【0085】
次に
図7におけるサブルーチン#400Aにおいて、上記マッピングデータDmに基づいて、当該画像表示領域Sに対する1回目の塗布スキャンを行う。サブルーチン#400Aの詳細な処理は、
図9のフローチャートにおけるステップS16〜S20で表わされる。サブルーチン#400Aの処理とサブルーチン#400B(画像表示領域Sに対する2回目以降の塗布スキャン)の処理とは同一であり、
図9においては、サブルーチン#400として表わされる。
【0086】
ステップS16において、ステップS10およびS12において修正された姿勢および位置で、インクジェットヘッドバー5aによる画像表示領域Sに対する塗布スキャンが開始される。なお、Y位置誤差Eyに基づいて、画像表示領域Sに対するインクの吐出開始タイミングが補正される。塗布スキャン時にインクジェットヘッドバー5aが移動される方向については後述する。
【0087】
X位置補正およびθ補正を行った後のインクジェットヘッドバー5aを、軸Ax(塗布装置2)に対して垂直(バックフレームFRbおよびフロントフレームFRfに対して平行)に移動させると、インクジェットヘッドバー5aは、樹脂フィルムFの中心軸Afに対して、πではなく(π−θ)の角度で交差(傾斜)して移動する。画像表示領域Sに対するインクジェットヘッドバー5a(ノズル13)の位置関係を、中心軸Afが軸Axに平行に供給された時と同じ状態として塗布スキャンするためには、インクジェットヘッドバー5aを樹脂フィルムFの中心軸Afに平行に対向しながら、中心軸Afに対してπで交差して移動する必要がある。軸Axに対してθだけ傾斜した、中心軸Af(樹脂フィルムF)に対して、πで交差する塗布スキャン方向を補正塗布スキャン方向Emと呼ぶ。
【0088】
図6に示すように、補正塗布スキャン方向Emは、中心軸Af(樹脂フィルムF)に対して垂直(π)、軸Ax(塗布装置2、X方向)に対してθで交差する。よって、軸Axに対して垂直な方向Mに対してθで交差する。同図において、補正塗布スキャン方向Emを斜辺とし、方向Mを隣辺とし、軸Ax(X方向)に平行な底辺から成る直角三角形が成立する。斜辺の長さを画像表示領域Sの幅Lsyとすると、底辺の長さ△Mxは次式(5)で表される。
△Mx=Lsy・Sinθ ・・・・(5)
【0089】
画像表示領域Sの中心軸Afに平行な両端部に位置する対応する凹部Pは、軸Axに関して△Mx=Lsy・Sinθだけずれている。よって、インクジェットヘッドバー5aをY方向(軸Axに垂直)に移動させるのと同時にSinθだけX方向(軸Axに平行)に移動させれば、インクジェットヘッドバー5aは中心軸Afに平行に対向しながら、中心軸Afに対してπで交差して塗布スキャンできる。つまり、補正塗布スキャン方向Emはθの関数である。
【0090】
よって、本実施例においては、インクジェットヘッドバー5aはX方向(軸Axに平行)に△Xだけスライドできると共に、さらに△Mxだけスライドできる。なお、△Mxは次式(6)を満たす。
0≦△Mx≦Lsy・Sinθ ・・・・(6)
【0091】
このようにして、本実施例においては、インクジェットヘッドバー5aを樹脂フィルムFの中心軸Afに平行に対向しながら、中心軸Afに対してπで交差して塗布スキャンできる。つまり、画像表示領域Sに対するインクジェットヘッドバー5a(ノズル13)の位置関係が、中心軸Afが軸Axに平行に供給された時と同じ状態で塗布スキャンできる。
【0092】
インクジェットヘッドバー5aが画像表示領域Sにおけるカメラガントリ6側(ホームポジションHPの反対側)に到達した時点で、1回の塗布スキャン動作が完了する。ステップS17において、塗布スキャンカウンタCaに1が加算される(Ca=Ca+1)。加算後のカウンタCaは、現在塗布装置2に供給されている画像表示領域Sに対して、既に完了している塗布スキャン動作の回数を表す。
【0093】
ステップS18において、カウンタCaを参照して、直前に完了した塗布スキャン動作が、当該画像表示領域Sに対する1回目の塗布スキャンである(カウンタCa=1)か否かが判断される。Yesと判断される場合は、以下に説明するステップS28〜S40において、テストパターンの塗布、検査、及び検査結果に基づいてマッピングデータDmの更新等が行われると共に、処理はステップS16に戻って、画像表示領域Sの画素要素に対する塗布スキャンが継続される。Noと判断される場合は、ステップS20において、カウンタCaを参照して、画像表示領域Sに対する塗布スキャンが完了したか否かが判断される。
【0094】
ステップS20においてNoと判断される場合は、処理はステップS16に戻って、画像表示領域Sの画素要素に対する塗布スキャンが継続される。そして、画像表示領域Sの塗布スキャンが完了した時点(Ca=Camax)で、Yesと判断されて、処理は次のステップS22に進む。ステップS22以降の処理については後述する。
【0095】
画像表示領域Sに対する1回目の塗布スキャンが完了した後、
図7におけるサブルーチン#500においてテストパターンの塗布および検査を行い、検査結果に基づいてマッピングデータDmを更新する。サブルーチン#500の詳細な処理は、
図9のフローチャートにおけるステップS28〜S40で表わされる。
【0096】
上述のステップS18において、直前に完了した塗布スキャン動作が、当該画像表示領域Sに対する1回目の塗布スキャンである(Ca=1)と判断された場合に行われるステップS28〜S40の処理について説明する。まず、ステップS28において、画像表示領域Sにおけるカメラガントリ6側(ホームポジションHPの反対側)に到達したインクジェットヘッドバー5aの全てのノズル13が、樹脂フィルムFの画像表示領域S以外の所定の部分に対して、所定のテストパターンにインクを吐出する。なお、テストパターンを塗布する箇所は、樹脂フィルムFにおける、画像表示領域S以外の部分であればよく、カメラガントリ6側の部分には限られない。
【0097】
次に、ステップS30において、ステップS28で形成されたテストパターンを、スキャンカメラ9(カメラガントリ6)で撮影する。このテストパターンの撮影と、画像表示領域Sに対する2回目以降の塗布スキャン(ステップS16)とは、同時に行うことができる。
【0098】
ステップS32において、撮影されたテストパターンのデータを画像処理して検査する。具体的には、テストパターンの画像から、ノズル毎の吐出位置と吐出量とを求める。ステップS34において、検査結果を、塗布装置2の制御器2Cにフィードバックする。
【0099】
ステップS36において、制御器2C内に格納されたマッピングソフトが、画像処理されたデータ(ノズル毎の吐出位置と吐出量)が所定のパターンを満たしているか否かに基づいて、異常があるノズルを特定すると共に、検査結果が許容範囲内であるか否かを判断する。判断の結果は、塗布装置2が行う塗布工程を、その前工程及び後工程と併せて統括するコンピュータに送信される。Noと判断される場合は、処理はステップS40に進んで、エラー処理(ライン停止、メンテナンス等)を行う。併せて、現在塗布スキャンを行っている画像表示領域Sも不良である可能性が高い旨を、上記コンピュータに送信する。
【0100】
ステップS36においてYesと判断される場合は、ステップS38においてマッピングデータDmの更新(リマッピング)が行われる。具体的には、ステップS36で求めた、異常があるノズルを特定する情報に基づいて、マッピングデータDmを更新し(個々の凹部(画素要素)Pについて、インクジェットヘッドバー5aが所定の座標に位置した時に、どのノズル13からインクを吐出するかの規定を修正する)、更新後のマッピングデータをDm(Cs)とする。後述するように、このマッピングデータDm(Cs)は、(Cs+1)枚目の画像表示領域Sに対する塗布スキャンに使用される。
【0101】
このように、本実施例においては、画像表示領域Sが塗布装置2に供給される度にテストパターンの塗布及び検査を行い、その検査結果に基づいてマッピングデータDmを更新して、次に供給される画像表示領域Sの塗布スキャンに反映する。塗布処理を連続して行うと、インクの乾燥や異物発生によってノズルからのインク吐出量が減少したり、ノズルが詰まったりする可能性があり、その場合、使用されたノズルから、予定された量のインクが吐出されない。本実施例においては、直前の画像表示領域Sに対する各ノズルからのインク吐出位置と吐出量をカメラで確認し、マッピングデータDmに反映させることで、使用するノズルの選択と、吐出座標を変更するので、連続して画像表示領域Sを塗布しても、塗布ムラのないカラーフィルタを製造することができる。
【0102】
当該画像表示領域Sに対する塗布スキャンが完了すると、
図7におけるサブルーチン#600においてインクジェットヘッドバー5aは所定の位置に移動されて待機する。サブルーチン#600の詳細な処理は、
図9のフローチャートにおけるステップS22〜S26で表わされる。樹脂フィルムF単位での画像表示領域Sに対する塗布スキャンが完了していなければ、処理はサブルーチン#100に戻って、画像表示領域Sに対する塗布スキャンが継続される。樹脂フィルムF単位での塗布スキャンが完了していれば、処理は終了する。
【0103】
ステップS20においてYesと判断される場合(画像表示領域Sの塗布スキャンが完了(Ca=Camax)した場合)は、処理は次のステップS22に進む。ステップS22において、塗布ガントリ4はホームポジションHPに戻り、ステップS24で待機モードに入る。ホームポジションHPにおいては、フラッシングや、ブリーディングおよびクリーニングなどのノズル詰まり防止処理が適時行われる。なお、ホームポジションHPは、樹脂フィルムFから離反した位置にあるので、フラッシングや、ブリーディングおよびクリーニングの際のインクによって、樹脂フィルムFが不用意に汚染されることが防止される。さらにステップS25において、画像表示領域S単位の塗布スキャン動作の回数を示す塗布スキャンカウンタCaが初期化される(Ca=0)。
【0104】
ステップS26で、樹脂フィルムFの単位で塗布スキャンを完了している(Cs=Csmax)か否か、つまり、塗布スキャンされていない画像表示領域Sが残っているか否かが判断される。Noの場合、処理はステップS2に戻り上述の処理を繰り返す。上述したように、Cs枚目の画像表示領域Sに対する塗布スキャン時には、(Cs−1)枚目の画像表示領域Sに対して行ったテストパターン検査に基づいて更新されたマッピングデータDm(Cs−1)が使用される。ステップS26において、本画像表示領域SにおいてYes(樹脂フィルムFの単位で塗布スキャンを完了している(Cs=Csmax))と判断された時点で塗布処理が終了する。
【0105】
本実施例において、凹部Pは格子状のパターンに形成されているが、凹部Pの形状や配置はこれに限らず、所定の形状の凹部が所定のパターンで均等に配列されているものに適用できることは言うまでもない。そのような例としては、六角形の凹部がハニカム状に配置されているものを挙げることができる。
【0106】
上述のように、本実施例においては、ホームポジションHP上でフラッシングを行いながら樹脂フィルムFの傾斜に対するインクジェットヘッドバー5aのX位置補正およびθ補正が行われる。その後、インクジェットヘッドバー5aは塗布開始位置に移動して、即塗布スキャンが開始されるので、X位置補正およびθ補正と塗布スキャン開始との間にノズル13の詰まりの発生を防止できる。この意味より、ホームポジションHPと塗布開始位置との距離は、クリーニングサイクルに要する時間を考慮して決定される。
【0107】
つまり、インクジェットヘッドバー5a(塗布ガントリ4)の移動速度をVとして、ホームポジションHPと塗布開始位置との距離をDとし、フラッシングインターバルをTiとすると、次式(4)が成立する。
D≦V・Ti/K ・・・・(4)
【0108】
なお、フラッシングインターバルTiは、ノズル13が詰まらない範囲内で任意に設定可能であり、Kは自然数である。K=1の場合は、インクジェットヘッドバー5aはホームポジションHPから塗布開始位置に移動する間にフラッシングを行うことはない。K≧2の場合、(K−1)がインクジェットヘッドバー5aがホームポジションHPから塗布開始位置に移動する間にフラッシングを行う回数を意味する。移動中のフラッシングは、トレイ等の上で行うように設定される。
【0109】
また、本実施例においては、Cs枚目の画像表示領域Sに対する塗布スキャン時には、(Cs−1)枚目の画像表示領域Sに対して行ったテストパターン検査に基づいて更新されたマッピングデータDm(Cs−1)が使用される。しかしながら、カメラガントリ6の移動速度やテストパターンのデータを画像処理する演算速度が十分に速ければ、Cs枚目の画像表示領域Sに対して行ったテストパターン検査に基づいて更新されたマッピングデータDm(Cs)を使用して、当該Cs枚目の画像表示領域Sに対する塗布スキャンを行うことが可能である。
【0110】
さらに、Cs枚目の画像表示領域Sに対して行ったテストパターン検査に基づいて更新されたマッピングデータDm(Cs)を、その後供給される複数枚の画像表示領域Sに対する塗布スキャンに使用することも可能である。このようなマッピングデータDmの適用は、画像表示領域Sの歪み検出が終了し、塗布スキャンが開始された当初に供給される複数枚の画像表示領域Sに対してその都度テストパターン検査を行い、その検査結果のばらつきが小さい(所定の範囲内である)場合に行うことが望ましい。
【0111】
なお、本発明においては、従来の個々のガラス基板とは異なり、複数の画像表示領域Sが連続的に形成されたシート状の樹脂フィルムFにインクジェット印刷が行われる。そのために、個々のガラス基板の位置及び姿勢の補正が行われる代わりに、樹脂フィルムFの傾きに応じて画像表示領域Sに対する塗布装置側の位置及び姿勢の補正が行われる。また、樹脂フィルムFの画像表示領域Sに形成される凹部Pは、ガラス基板上に形成される区画とは異なり、形成時の加工により画像表示領域Sの形状が歪む場合がある。このような画像表示領域Sの歪みへの対応は、最初に供給される所定枚数の画像表示領域Sに対してその形状の歪みの検出を行い、検出した歪みのデータに基づいてマッピングデータDmを作成することにより行う。
【0112】
さらに、隣り合う画像表示領域Sに関して、画像表示領域Sの歪み及び樹脂フィルムFの傾きのばらつきは、個々のガラス基板の位置及び姿勢のばらつきに比べて小さく、再現性も高い。よって、連続する画像表示領域Sでの塗布装置側の補正量は小さいので、補正に要する工数も小さく、連続する画像表示領域Sに対して高速にインクの塗布を行うことができるとともに、1つ前の画像表示領域Sに塗布されたテストパターンに基づいて作成されたマッピングデータDmを、現画像表示領域Sに適応することにより、より迅速且つ効率的なインク塗布を可能としている。
【0113】
本発明の塗布方法は、可撓性を有する画像表示器の製造以外に、従来の画像表示器の製造、ナノインクを用いた配線パターンの形成、有機TFT(Thin Film Transistor)用液を用いたTFTの形成等に適用できる。