特許第5697970号(P5697970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697970
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   A61B6/03 331
   A61B6/03 330B
   A61B6/03 371
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-285757(P2010-285757)
(22)【出願日】2010年12月22日
(65)【公開番号】特開2012-130542(P2012-130542A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100106541
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 信和
(72)【発明者】
【氏名】今井 靖浩
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−269048(JP,A)
【文献】 特開2008−018044(JP,A)
【文献】 特開昭57−072629(JP,A)
【文献】 特開2008−302099(JP,A)
【文献】 特開2010−187812(JP,A)
【文献】 特開2003−079611(JP,A)
【文献】 特開2009−160394(JP,A)
【文献】 特開2004−321587(JP,A)
【文献】 特開2009−261915(JP,A)
【文献】 特開2006−158690(JP,A)
【文献】 特開2004−261224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源と、X線検出器と、前記X線源を被検体の周りに回転しながら多数のガントリ角度で投影データを収集するスキャン手段とを備えたX線CT装置であって、
前記被検体のAP方向をファンビームの中心としたX線投影によるスカウトデータを取得する取得手段と、
前記被検体のAP方向における位置を検出する検出手段と、
前記被検体のAP方向における位置と、前記X線源、前記X線検出器および前記回転中 心の幾何学的位置関係とに基づいて、前記取得手段により取得されたAP方向のスカウトデータが表す画像のスケールを特定する特定手段と、
前記取得されたAP方向のスカウトデータが表す画像上で操作者により指定されたラテラル方向の範囲と、前記特定されたスケールとに基づいて、前記投影データの収集時におけるX線照射出力を所定レベルより小さくするガントリ角度の角度範囲を制御する制御手段とを備えているX線CT装置。
【請求項2】
前記取得手段は、前記被検体のラテラル方向をファンビームの中心としたX線投影によるスカウトデータを取得し、
前記検出手段は、前記取得されたラテラル方向のスカウトデータを用いて前記被検体のAP方向における位置を検出する請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記取得されたラテラル方向のスカウトデータが表す前記被検体の透過X線強度またはX線吸収度のプロファイルに基づいて、前記被検体のAP方向における位置を検出する請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記取得されたラテラル方向のスカウトデータが表す画像における前記被検体の認識結果に基づいて、前記被検体のAP方向における位置を検出する請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記取得されたラテラル方向のスカウトデータが表す画像上で操作者により指定された位置情報に基づいて、前記被検体のAP方向における位置を検出する請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記検出手段は、撮影テーブルの高さ位置情報に基づいて前記被検体のAP方向の位置を検出する請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記特定されたスケールに基づいて求められる、前記指定されたラテラル方向の範囲に対応する実空間上での範囲に応じて、前記X線照射出力を所定レベルより小さくするガントリ角度の角度範囲を制御する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記指定されたラテラル方向の範囲は、前記回転中心を中心とする所定の円周上の範囲をAP方向に投影した範囲と対応付けされており、
前記制御手段は、前記円周上の範囲に対応する角度範囲を、前記X線照射出力を所定レベルより小さくするガントリ角度の角度範囲に設定する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記検出手段は、前記被検体のAP方向における位置として、前記被検体の前記回転中心からのずれ量を検出し、
前記特定手段は、前記被検体の体軸が前記回転中心に一致している場合におけるAP方向のスカウトデータが表す画像のスケールに、前記検出されたずれ量によって求められる補正倍率を乗算して、前記取得されたAP方向のスカウトデータが表す画像のスケールを特定する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT(Computed Tomography)装置に関し、詳しくは、被検体の放射線感受性の高い部位のX線被曝量を低減することができるX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置を用いた撮影法として、被検体の体表面近くに存在する放射線感受性の高い部位のX線被曝量を低減する撮影法が種々提案されている。そのうちの1つとして、X線源の回転角度すなわちガントリ(gantry)角度が、放射線感受性の高い部位へのX線透過長が相対的に短くなるような所定の角度範囲にあるときに、X線照射出力を通常レベルより小さく制御する撮影法が知られている(特許文献1,要約、特許文献2,要約等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−321587号公報
【特許文献2】特開2010−269048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、撮影空間における放射線感受性の高い部位の位置や大きさは、被検体の撮影テーブル(table)上の位置、被検体の体格や姿勢、撮影部位等によって異なる。
【0005】
そこで、上記の撮影法においては、X線照射出力を通常レベル(level)より小さくするガントリ角度の角度範囲を正確にかつ容易に設定できるよう、操作者が被検体のスカウト(scout)画像上で所望のシールド(shield)範囲を指定し、その範囲のX線被曝量が低減されるような上記角度範囲を設定することが考えられる。この場合、指定したシールド範囲が実際の撮影空間のどの範囲に対応するかを、スカウト画像のスケール(scale)を基に求める必要がある。
【0006】
スカウト画像のスケールは、通常、被検体の体軸がアイソセンタ(iso-center)すなわちX線源の回転中心と一致していることを前提として、その場合におけるスカウト撮影時の被検体の投影拡大率を用いて決める。投影拡大率は、被検体がX線源からのファンビーム(fan
beam)X線によって何倍に拡大されてX線検出器面に投影されるかを示す値であり、X線源、X線検出器および被検体の幾何学的な位置関係に基づいて算出される。
【0007】
しかしながら、実際の撮影では、撮影テーブルの高さ調整が不十分であったり、関心部位が被検体の中心から外れていたりして、被検体の体軸がアイソセンタと高さ方向でずれている場合がある。この場合には、真の投影拡大率が想定値と異なるため、スカウト画像のスケールに誤差が生じ、スカウト画像上で指定されたシールド範囲に対応する実際の撮影空間での範囲にも誤差が生じることになる。その結果、X線照射出力を通常レベルより小さくするガントリ角度の角度範囲を正確に設定することができず、被検体の放射線感受性の高い部位のX線被曝量を的確に低減することができない。
【0008】
このような事情により、被検体の放射線感受性の高い部位のX線被曝量を的確に低減することができるX線CT装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の観点の発明は、X線源と、X線検出器と、前記X線源を被検体の周りに回転しながら多数のガントリ角度で投影データを収集するスキャン手段とを備えたX線CT装置であって、前記被検体のAP方向およびラテラル方向のスカウトデータを取得する取得手段と、前記取得手段により取得されたラテラル方向のスカウトデータを用いて、前記被検体のAP方向における位置を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記被検体のAP方向における位置と、前記X線源、前記X線検出器および前記回転中心の幾何学的位置関係とに基づいて、前記取得手段により取得されたAP方向のスカウトデータが表す画像のスケールを特定する特定手段と、前記取得されたAP方向のスカウトデータが表す画像上で操作者により指定されたラテラル方向の範囲と、前記特定されたスケールとに基づいて、前記投影データの収集時におけるX線照射出力を所定レベルより小さくするガントリ角度の角度範囲を制御する制御手段とを備えているX線CT装置を提供する。
【0010】
第1の観点の発明は、X線源と、X線検出器と、前記X線源を被検体の周りに回転しながら多数のガントリ角度で投影データを収集するスキャン(scan)手段とを備えたX線CT装置であって、前記被検体の少なくともAP方向のスカウトデータを取得する取得手段と、前記被検体のAP方向における位置を検出する検出手段と、前記被検体のAP方向における位置と、前記X線源、前記X線検出器および前記回転中心の幾何学的位置関係とに基づいて、前記取得手段により取得されたAP方向のスカウトデータが表す画像のスケールを特定する特定手段と、前記取得されたAP方向のスカウトデータが表す画像上で操作者により指定されたラテラル(lateral)方向の範囲と、前記特定されたスケールとに基づいて、前記投影データの収集時におけるX線照射出力を所定レベルより小さくするガントリ角度の角度範囲を制御する制御手段とを備えているX線CT装置を提供する。
【0011】
第2の観点の発明は、前記取得手段が、前記被検体のラテラル方向のスカウトデータを取得し、前記検出手段が、前記取得されたラテラル方向のスカウトデータを用いて前記被検体のAP方向における位置を検出する上記第1の観点のX線CT装置を提供する。
【0012】
第3の観点の発明は、前記検出手段が、前記取得されたラテラル方向のスカウトデータが表す前記被検体の透過X線強度またはX線吸収度のプロファイル(profile)に基づいて、前記被検体のAP方向における位置を検出する上記第2の観点のX線CT装置を提供する。
【0013】
第4の観点の発明は、前記検出手段が、前記取得されたラテラル方向のスカウトデータが表す画像における前記被検体の認識結果に基づいて、前記被検体のAP方向における位置を検出する上記第2の観点のX線CT装置を提供する。
【0014】
第5の観点の発明は、前記検出手段が、前記取得されたラテラル方向のスカウトデータが表す画像上で操作者により指定された位置情報に基づいて、前記被検体のAP方向における位置を検出する上記第2の観点のX線CT装置を提供する。
【0015】
第6の観点の発明は、前記検出手段が、撮影テーブルの高さ位置情報に基づいて前記被検体のAP方向における位置を検出する第1の観点のX線CT装置。
【0016】
第7の観点の発明は、前記制御手段が、前記特定されたスケールに基づいて求められる、前記指定されたラテラル方向の範囲に対応する実空間上での範囲に応じて、前記X線照射出力を所定レベルより小さくするガントリ角度の角度範囲を制御する上記第1の観点から第6の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0017】
第8の観点の発明は、前記指定されたラテラル方向の範囲が、前記回転中心を中心とする所定の円周上の範囲をAP方向に投影した範囲と対応付けされており、前記制御手段が、前記円周上の範囲に対応する角度範囲を、前記X線照射出力を所定レベルより小さくするガントリ角度の角度範囲に設定する上記第1の観点から第7の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0018】
第9の観点の発明は、前記検出手段が、前記被検体のAP方向における位置として、前記被検体の前記回転中心からの相対位置を検出し、前記特定手段が、前記被検体の体軸が前記回転中心に一致している場合におけるAP方向のスカウトデータが表す画像のスケールに、前記検出された相対位置によって求められる補正倍率を乗算して、前記取得されたAP方向のスカウトデータが表す画像のスケールを特定する上記第1の観点から第8の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0019】
ここで、「ガントリ角度」は、X線源の回転方向における位置を示す回転角度であり、「ビュー(view)角度」あるいは「投影角度」ともいう。
【0020】
「X線源」は、例えば「X線管」であり、「X線照射出力」の「所定レベル」は、X線管の管電圧を一定にしたときの一定の管電流や、自動露出機構により決定された変調する管電流などである。
【0021】
「スカウトデータ」は、本スキャン前に行われるスカウトスキャンによって取得されるデータである。「スカウトスキャン」としては、例えば、ガントリ角度を一定にして被検体または走査ガントリを被検体の体軸方向に移動させながら、本スキャンのときよりも低線量のX線ビームを被検体に照射して投影データを収集するスキャンを考えることができる。
【0022】
「AP方向」とは、被検体の前後方向であり、AP(前から後ろ)の向きとPA(後ろから前)の向きの両方を含む。
【0023】
「ラテラル方向」とは、被検体の左右方向であり、左向きと右向きの両方を含む。
【0024】
「スケール」とは、画像が表す空間の実際の寸法を規定する尺度であり、例えば1画素辺りに対応する実空間上での距離である。
【発明の効果】
【0025】
上記観点の発明によれば、AP方向のスカウトデータが表す画像のスケールを、検出した被検体のAP方向の位置から特定するので、その画像の正確なスケールを求めることができる。そして、その画像上で指定されたシールド範囲が実際の撮影空間のどの範囲に対応するかを正確に求めることができるので、X線照射出力を所定レベルより小さくするガントリ角度の角度範囲を正確に設定することができる。その結果、被検体の放射線感受性の高い部位のX線被曝量を的確に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第一実施形態に係るX線CT装置の構成を概略的に示す図である。
図2】ガントリ角度θを説明するための図である。
図3】第一実施形態に係る被検体の保護部位を説明するための図である。
図4】第一実施形態のX線CT装置によるX線CT画像撮影処理の動作を示すフロー(flow)図である。
図5】ラテラル方向のスカウトデータが表すX線吸収度のy方向のプロファイルの一例を示す図である。
図6】X線管のX線焦点、X線検出器の検出面、アイソセンタ、および被検体の中心位置との関係の一例を示す図である。
図7】第一実施形態に係るシールド範囲を指定するための画面の一例を示す図である。
図8】第一実施形態に係るシールド範囲を示す矩形領域と仮想的なシールド部材との対応関係を示す図である。
図9】第一実施形態に係る被曝低減X線照射によるスキャンにおけるガントリ角度とX線照射出力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、発明の実施形態について説明する。なお、これにより発明が限定されるものではない。
【0028】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係るX線CT装置100の構成を概略的に示す図である。このX線CT装置100は、操作コンソール1と、撮影テーブル10と、走査ガントリ20とを備えている。
【0029】
操作コンソール1は、操作者からの入力を受け付ける入力装置2と、被検体の撮影を行うための各部の制御や画像を生成するためのデータ(data)処理などを行う中央処理装置3と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、画像を表示するモニタ(monitor)6と、プログラム(program)やデータなどを記憶する記憶装置7とを備えている。
【0030】
撮影テーブル10は、被検体40を載せて走査ガントリ20の開口部に搬送するクレードル(cradle)12を備えている。クレードル12は、撮影テーブル10に内蔵するモータ(motor)で昇降および水平直線移動される。なお、ここでは、被検体40の体軸方向すなわちクレードル12の水平直線移動方向をz方向、鉛直方向をy方向、z方向およびy方向に垂直な水平方向をx方向とする。また、被検体40は、仰向けの状態でクレードル12に載置される場合を想定する。
【0031】
走査ガントリ20は、回転部15と、回転部15を回転可能に支持する本体部20aとを有する。回転部15には、X線管21と、X線管21を制御するX線コントローラ(controller)22と、X線管21から発生したX線ビーム81をコリメート(collimate)するコリメータ(collimator)23と、被検体40を透過したX線ビーム81を検出するX線検出器24と、X線検出器24の出力を投影データに変換して収集するデータ収集装置25と、X線コントローラ22,コリメータ23,DAS25の制御を行う回転部コントローラ26とが搭載されている。本体部20aは、制御信号などを操作コンソール1や撮影テーブル10と通信する制御コントローラ29を備えている。回転部15と本体部20aとは、スリップリング(slip
ring)30を介して電気的に接続されている。
【0032】
図2は、ガントリ角度θを説明するための図である。
【0033】
ガントリ角度θは、回転中心ICの周りに回転するX線管21の回転角度である。ここでは、ファンビームFの中心線が鉛直下向きになるときのガントリ角度をθ=0とする。
【0034】
図3は、被検体Hの保護部位を説明するための図である。
【0035】
ここでは、図3に示すように、被検体Hの頭部を撮影部位とし、被検体Hの体表面近くに存在する放射線感受性の高い部位である左眼球ELおよび右眼球ERを含む保護部位Pを想定する。
【0036】
図4は、X線CT装置100によるX線CT画像撮影処理の動作を示すフロー図である。
【0037】
ステップ(step)S1では、被検体Hの頭部に対するスカウトスキャンを行って、AP方向およびラテラル方向のスカウトデータをそれぞれ取得する。
【0038】
ステップS2では、被検体HのAP方向すなわちy方向あるいは高さ方向におけるアイソセンタからのずれ量を検出する。この被検体Hのy方向のずれ量ΔYの検出を次に説明する。
【0039】
まず、被検体Hのy方向の中心位置Ymを求める。
【0040】
例えば、図5に示すように、ラテラル方向のスカウトデータが表す被検体Hのyz面方向のX線吸収度をz方向に積算して、X線吸収度のy方向のプロファイルPRを求める。次に、このプロファイルPRのy方向の重心位置、すなわちプロファイル面積をy方向に均等に二分する位置を、被検体Hのy方向の中心位置Ymとして求める。重心位置の代わりに、プロファイル幅を均等に二分する中央位置などを用いてもよい。
【0041】
また例えば、ラテラル方向のスカウトデータが表すラテラルスカウト画像において被検体Hを認識し、認識された被検体Hの領域からy方向の中心位置Ymを求める。
【0042】
また例えば、ラテラル方向のスカウトデータが表すラテラルスカウト画像上で、操作者が被検体Hのy方向の中心位置と考える所望位置を指定し、その所望位置を中心位置Ymとする。
【0043】
また例えば、撮影テーブル10の高さ位置情報に基づいて、中心位置Ymを検出する。被検体のAP方向すなわちy方向の厚みは、成人か小児かの情報や、その他の被検体情報等からある程度推測できるので、撮影テーブル10の高さが分かれば、被検体の中心位置Ymも所定の誤差内で求めることができる。
【0044】
そして、アイソセンタICのy方向の位置Yicからこの中心位置Ymまでの距離(Yic−Yg)を、被検体Hのy方向のずれ量ΔYとする。
【0045】
ステップS3では、被検体Hのy方向のずれ量ΔYを基に、AP方向のスカウトデータが表すAPスカウト画像のスケールを補正する。このAPスカウト画像のスケールの補正を次に説明する。
【0046】
図6は、X線管21のX線焦点f、X線検出器24の検出面s、アイソセンタIC、および被検体Hの中心位置Ymとの関係の一例を示している。
【0047】
この例において、被検体Hの中心位置YmがアイソセンタICに一致している場合、被検体HのAP方向の投影拡大率k0は、おおよそX線焦点fとアイソセンタICとの距離rと、X線焦点fと検出面sとの距離2rとの比である2r/rとなる。
【0048】
一方、被検体Hの中心位置YmがアイソセンタICから下方すなわち−y方向にΔYだけずれている場合の投影拡大率k1は、おおよそX線焦点fとアイソセンタICとの距離rにΔYを加算した距離r+ΔYと、X線焦点fと検出面sとの距離2rとの比である2r/(r+ΔY)となる。
【0049】
そこで、被検体Hの中心位置YmがアイソセンタICから−y方向にΔYだけずれている場合には、APスカウト画像のスケールを、被検体Hの中心位置YmがアイソセンタICに一致している場合を想定したスケールSC0に、補正倍率k1/k0すなわち(r+ΔY)/rを乗算して、SC0・(r+ΔY)/rに補正する。
【0050】
ステップS4では、補正されたスケールでAPスカウト画像を生成するとともに、ラテラルスカウト画像を生成する。
【0051】
ステップS5では、X線CT装置に保護対象部位の自動検出機能が搭載されているか否かを判定する。自動検出機能が搭載されているときはステップS6へ進み、搭載されていないときはステップS7に進む。
【0052】
ステップS6では、APスカウト画像および/またはラテラルスカウト画像に対して保護対象部位の自動検出処理を行い、検出された保護対象部位を含むシールド範囲を指定する。そして、ステップS8に進む。なお、この自動検出処理には、パターン(pattern)認識処理やテンプレートマッチング(template matching)処理など、既知の画像認識処理を用いることができる。
【0053】
ステップS7では、操作者は、入力装置2を操作して、APスカウト画像Gapおよびラテラルスカウト画像Glt上で、保護対象部位Pすなわち左眼球ELおよび右眼球ERを含む部位を囲むようにシールド範囲を指定する。
【0054】
例えば、図7に示すように、シールド範囲を指定するための画面をモニタ6に表示する。この画面には、APスカウト画像Gapおよびラテラルスカウト画像Gltが表示される。また、APスカウト画像Gap上には矩形領域Rapが、ラテラルスカウト画像Glt上には矩形領域Rltが、それぞれ半透明に表示される。矩形領域RapおよびRltはシールド範囲を示すものであり、図8に示すように、撮影空間で被検体Hの体表面を覆う仮想的なシールド部材SDを表している。つまり、矩形領域Rapは、この仮想的なシールド部材SDをAP方向すなわちy方向に投影した領域を表しており、矩形領域Rltは、この仮想的なシールド部材SDをラテラル方向すなわちx方向に投影した領域を表している。仮想的なシールド部材SDは、例えばアイソセンタICを中心とする所定の円周に沿うように湾曲している。この円周は、例えば撮像視野SFOVの輪郭を表す円周や、被検体Hの体表面に近接する円(真円または楕円)CNの円周などとすることができる。体表面に近接する円CNは、APスカウト画像Gapおよびラテラルスカウト画像Gltから被検体Hのおおよその大きさが分かるので、その大きさから求めることができる。仮想的なシールド部材SDは、ここでは左右対称であるが、左右非対称であってもよい。
【0055】
操作者は、入力装置2を操作して、これら矩形領域RapおよびRltを移動させたり変形させたりすることで、仮想的なシールド部材SDが保護対象部位Pを覆うように調整する。なお、矩形領域RapおよびRltは、互いに連動して移動および変形する。
【0056】
操作者が入力装置2を操作して確定指令を入力すると、X線照射出力を通常レベルより小さくするガントリ角度θの角度範囲として、例えばこの仮想的なシールド部材SDの円周方向の範囲に対応する角度範囲−βu≦θ≦βuを設定する。また、このような被曝低減X線照射によるスキャンを行うz方向の範囲として、例えばこの仮想的なシールド部材SDのz方向範囲Rzを設定する。
【0057】
APスカウト画像は、補正されたスケールで生成されているので、この仮想的なシールド部材SDが実際の撮影空間のどの範囲に対応しているかを正確に求めることができ、X線照射出力を通常レベルより小さくするガントリ角度θの角度範囲を正確に設定することができる。
【0058】
なお、シールド範囲は、APスカウト画像Gap上のみで指定してもよい。
【0059】
ステップS8では、被曝低減X線照射によるスキャンを行って投影データを収集する。すなわち、z方向範囲Rzをスキャンするときに、図9に示すように、ガントリ角度θが0≦θ≦βuおよびπ−βu≦θ≦2πにあるときのX線照射出力のレベルを、通常レベルL1より小さいレベルL2にして投影データを収集する。
【0060】
ステップS9では、投影データに対して画像再構成処理を行い、CT画像を生成する。
【0061】
ステップS10では、CT画像をモニタ6に表示する。
【0062】
このような第一実施形態のX線CT装置によれば、APスカウト画像のスケールを、検出した被検体の高さ方向すなわちAP方向のアイソセンタICからのずれ量から補正するので、APスカウト画像を正確なスケールで生成することができる。そして、そのAPスカウト画像上で指定されたシールド範囲が実際の撮影空間のどの範囲に対応するかを正確に求めることができるので、X線照射出力を通常レベルより小さくするガントリ角度θの角度範囲を正確に設定することができる。その結果、被検体の放射線感受性の高い部位である眼球EL,ERのX線被曝量を的確に低減することができる。
【0063】
(第二実施形態)
第二実施形態では、被検体Hのy方向の位置を検出し、検出した被検体Hのy方向の位置と、X線焦点f、検出器面sおよびアイソセンタICの幾何学的な位置関係とに基づいて、APスカウト画像のスケールを直接求める。
【0064】
このような第二実施形態のX線CT装置によれば、被検体Hの体軸がアイソセンタICと一致している場合のAPスカウト画像のスケールを想定値として用意しておかなくても、第一実施形態と同様に、APスカウト画像を正確なスケールで生成することができる。
【0065】
(他の実施形態)
上記と同様にして、例えば甲状腺、乳房(乳腺)、生殖器等へのX線被曝量を低減することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 操作コンソール
2 入力装置
3 中央処理装置
5 データ収集バッファ
6 モニタ
7 記憶装置
10 撮影テーブル
12 クレードル
15 回転部
20 走査ガントリ
21 X線管
22 X線コントローラ
23 コリメータ
24 X線検出器
25 データ収集装置
26 回転部コントローラ
29 制御コントローラ
30 スリップリング
100 X線CT装置
F X線ビーム
H 被検体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9