【実施例】
【0049】
実施例1
テロマーBアルコール[F(CF
2)
n(CH
2CH
2)OH、n=平均7、70.6g、0.17mol、75モル%]、1−オクタノール[C
8H
17OH、7.4g、0.057mol、25モル%]および無水リン酸[P
2O
5、14.2g、0.10mol、モル%]を反応させた。混合物を僅かに過剰の5%水性アンモニアでpH8.5に中和し、水[44.6g、2.5mol]と2−プロパノール[(CH
3)
2CHOH、93.9g、1.6mol]との混合物に溶解させ、パーフルオロアルキルエチル−オクチルホスフェートエステルのアンモニウム塩(式2)の溶液をもたらした。表面張力を試験方法2によって測定し、表1に示す。
【0050】
実施例2〜4
実施例2については、50モル%のテロマーBアルコールおよび50モル%の1−オクタノールを;実施例3については、25モル%のテロマーBアルコールおよび75モル%の1−オクタノール(実施例3)を;並びに実施例4については、12.5モル%のテロマーBアルコールおよび87.5モル%の1−オクタノールを使用して実施例1におけるようにパーフルオロアルキルエチル−オクチルホスフェートエステルのアンモニウム塩の溶液を調製した。様々な重量%での脱イオン水中のこれらの混合ホスフェートの表面張力を試験方法2によって測定し、表1に示す。
【0051】
比較例A
比較例Aは、100モル%のテロマーBアルコールを使用し、1−オクタノールを全く使用しないで実施例1におけるように調製した。様々な重量%での脱イオン水中の比較例Aについての試験方法2による表面張力測定は、表1に示す通りである。
【0052】
【表3】
【0053】
表1は、実施例(混合パーフルオロアルキルエチル/オクチルホスフェートエステル)が全て比較例A(オクチルエステル基なしのパーフルオロアルキルエチルエステル)と比較してより低い表面張力を示したことを示す。50:50モル比のパーフルオロアルキルエチル/オクチルホスフェートエステルの実施例2が最も低い表面張力を有する。最も低いフルオロアルコール含有率(12.5モル%)の実施例4でさえも、全75モル%のフルオロアルコールについて3つのパーフルオロアルキルホスフェートアンモニウム塩(1:1:1)、3〜7重量%;(1:1:2)、17〜21重量%;および(2:1:1)、11〜15重量%を含有する、比較例Aより小さい表面張力を有した。
【0054】
実施例5
混成スルホエトキシレート(式5)の合成は、パーフルオロヘキシルエチルスルホニルクロライドの2段階調製の後、Dow Chemical(Midland,MI)から市販されている、TERGITOL 15−S−シリーズ(15−S−n、R(OCH
2CH
2)
nOH)との縮合反応によって達成した。TERGITOL 15−S−シリーズ製品名および構造における「n」に関連した数は、第二級アルコールエトキシレートのエチレンオキシド鎖の平均数である。
【0055】
パーフルオロヘキシルエチルアイオダイド[C
6F
13CH
2CH
2I、沸点138〜210℃、301g、0.63mol]、酢酸[CH
3COOH、沸点118℃、3.4g、0.06mol]、エタノール[CH
3CH
2OH、沸点78℃、112g、2.44mol]およびチオシアン酸カリウム[KSCN、沸点500℃、75.7g、0.78mol]を、磁気撹拌しながら80℃で12時間還流させ、そのとき残存する未反応アイオダイドは、GC分析によって確認されるように、0.5%より下であった。混合物を60℃に冷却し、15インチHg(50.7kPa)の僅かな減圧下に中程度のフリットガラスフィルタ漏斗によって固形分を除去した。暖かい固体フィルタケーキを100gの暖かい(60℃)エタノールで洗浄した。エタノール溶媒をろ液から蒸留し、パーフルオロヘキシルエチルチオシアネート生成物を、暖かい(55℃)脱イオン水で洗浄した。パーフルオロヘキシルエチルチオシアネート生成物は、室温で黄橙色固体であった(C
6F
13CH
2CH
2SCN、230g、収率90%)。
【0056】
(FIDを備えたAgilent Technologies 6850ガスクロマトグラフを使用して、50〜300℃(8℃/分)の温度範囲にわたってキャピラリーカラム[HP−1(30m×0.32mm)]を用いて行われる)GCクロマトグラフィー分析は、チオシアネート[保持時間4.305分]が99%純度であることを示した。
1H NMR(500MHz;MeOD)δ2.70−2.80(m,2H),δ4.45−4.50(m,2H)。
【0057】
上記の通り調製したパーフルオロヘキシルエチルチオシアネート[C
6F
13CH
2CH
2SCN、沸点<300℃、224g、0.55mol]および酢酸[CH
3COOH、沸点118℃、116g、1.94mol]を油浴で45℃に加熱し、機械攪拌機でかき混ぜた。パーフルオロヘキシルエチルチオシアネート1モル当たり塩素の0.002モル/分の速度で塩素[沸点−34℃、130g、1.85mol]を反応物中へバブリングさせ、自動注射器によって10時間にわたってチオシアネート試薬1モル当たり脱イオン水の0.004モル/分の速度で脱イオン水[44g、2.47mol]を同時に滴々添加した。パーフルオロヘキシルエチルチオシアネート出発原料の濃度がGC分析によって測定されるように0.5%より下になるまでこの酸化反応を行った。生成物を100mLの70℃脱イオン水、次に100mLの60℃3.5%NaCl溶液で洗浄した。パーフルオロヘキシルエチルスルホニルクロライド生成物(C
6F
13CH
2CH
2SO
2Cl、242g、収率99%)は黄色液体であった。ガスクロマトグラフィー分析は、パーフルオロヘキシルスルホニルクロライド(保持時間4.542分)が99%純度であることを示した。
1H NMR(500MHz;CH
3OD)δ2.70−2.80(m,2H)、δ4.45−4.50(m,2H)。
【0058】
上記の通り調製したパーフルオロヘキシルエチルスルホニルクロライド[C
6F
13CH
2CH
2SO
2Cl、沸点>200℃、10g、0.02mol]およびTERGITOL 15−S−12[C
13H
27(OCH
2CH
2)
12OH、沸点>200℃、17.8g、0.02mol]を油浴で加熱し、磁気回転棒でかき混ぜた。窒素掃引を液体表面でバブリングさせた。反応の温度が75℃に達したときに、反応物は均一におよび透明になった。温度を80℃に7時間保持した。生成物は、透明な、黄褐色の液体(C
6F
13CH
2CH
2SO
2(OCH
2CH
2)
12OC
13H
27、25.5g、収率100%)であった。
1H NMR(500MHz;CDCl
3)δ0.80(5,2H)、δ1.00−1.05(d,2H)、δ1.20(m,2H)、δ1.30−1.40(m,2H)、δ2.90−3.00(m,2H)、δ3.45−3.50(t,3H)、δ3.50−3.60(m,2H)、δ3.70−3.80(m,2H)、δ4.45−4.50(m,2H)。
【0059】
実施例6
式3の混成エトキシレートの合成は、パーフルオロヘキシルプロピレンオキシドとTERGITOL(登録商標)15−S−シリーズ界面活性剤(例えば、15−S−n、R(OCH
2CH
2)
nOH)で代表されるアルコールエトキシレートとのルイス(Lewis)酸触媒反応によって形成した。
【0060】
マグネチックスターラーで穏やかにかき混ぜ、窒素掃引しながらパーフルオロヘキシルアイオダイド[C
6F
13I、沸点117℃、1500g、3.36mol]およびトリスアリルボレート[B(OCH
2CHCH
2)
3、171℃、306g、1.68mol]を油浴で64℃に加熱した。反応の温度を60〜70℃に保った。VAZO 64(本件特許出願人(Wilmington,DE)から入手可能な、プロパンニトリル、2−メチル、2,2’−アゾビス、NCC(CH
3)
2NNC(CH
3)
2CN、融点102℃、11g、0.07mol)を、3時間毎に2g増分で添加した。発熱が第1および第2のVAZO 64添加後に観察された。合計10gのVAZO 64を反応物に添加してしまった後は発熱反応は全くなかった。暖かい60℃の脱イオン水[H
2O、750g、41.6mol]および塩[NaCl、35g、0.6mol]を添加してボレートエステルを加水分解した。反応物を次に加熱して共沸蒸留を実施し、揮発性有機化合物(大部分はアリルアルコール)を除去した。反応物を冷却し、水層および有機層を分離した。冷却後、ヨードヒドリン生成物(C
6F
13CH
2CH(I)CH
2OH、1500g、収率99%)は白色固体であった。ガスクロマトグラフィー分析は、FIDを備えたAgilent Technologies 6850ガスクロマトグラフを使用して、50〜300℃(8℃/分)の温度範囲にわたってキャピラリーカラム[HP−1(30m×0.32mm)]を用いて行った。GC分析は、パーフルオロヘキシルヨードヒドリン[保持時間8.932分]が98.5%純度であることを示した。
1H NMR(500MHz;CDCl
3)δ2.6−2.8(m,2H)、δ2.8−3.0(m,H)、δ3.7−3.8(m,2H)、δ4.2−4.4(m,H)。
【0061】
上に調製したパーフルオロヘキシルヨードヒドリン[C
6F
13CH
2CH(I)CH
2OH、沸点>200℃、750g、1.5mol]および無水メタノール[CH
3OH、沸点65℃、150g、0.19mol]を機械撹拌機によってかき混ぜ、5℃より下に冷却した。水酸化カリウム[KOH、91g、1.09mol]を脱イオン水で50%(w/w)に希釈し、反応温度を6℃より下に保ちながら3時間の期間にわたって反応物に滴々添加した。出発ヨードヒドリンの濃度が0.5%より下になるまで反応を続けた(GC分析によって監視した)。反応物を室温に暖め、次に10%硫酸水素塩溶液[NaHSO
4、400g、2.94mol]で中和した。パーフルオロヘキシルプロピレンオキシド生成物(C
6F
13CH
2CHOCH
2、沸点154℃)を減圧下に蒸留した。集められた生成物(456g、収率81%)は透明な無色液体であった。GC分析は、パーフルオロヘキシルプロピレンオキシド(保持時間3.352分)が92.4%純度であることを示した。
1H NMR(500MHz;CDCl
3)δ2.2−2.5(m,2H)、δ2.6−2.7(m,H)、δ2.8−2.9(m,2H)。
【0062】
上記の通り調製したパーフルオロヘキシルプロピレンオキシド[C
6F
13CH
2CHOCH
2、沸点154℃、25g、0.07mol]、TERGITOL(登録商標)15−S−12[R(OCH
2CH
2)
12OH、沸点>200℃、50.8g、0.07mol]、および三フッ化ホウ素エーテラート[BF
3(C
2H
5)
2O、沸点125℃、0.15g、1.06mmol]を油浴で90℃に暖め、1時間にわたって乾燥窒素雰囲気中磁気撹拌棒でかき混ぜた。温度が85℃に達したとき、反応物は均一で透明になった。温度を90℃で4時間保持した。縮合生成物は、底部に少量の沈降物ありで透明な橙色液体であった(C
6F
13CH
2CHOHCH
2(OCH
2CH
2)
12OC
13H
27、77g、収率100%)。GC分析は、混成エトキシレート(保持時間7.101分)が78.0%純度であることを示した。
1H NMR(500MHz;CDCl
3)δ0.80(5,2H)、δ1.00−1.05(d,2H)、δ1.20(m,2H)、δ1.30−1.40(m,2H)、δ2.15−2.25(m,H)、δ2.30−2.40(m,2H)、δ3.40−3.50(m,3H)、δ3.55−3.65(m,2H)、δ3.70−3.80(m,2H)、δ4.05−4.15(m,2H)。
【0063】
比較例B
比較例Bは、テロマーBアルコールとエチレンオキシドとの反応によって調製される、フルオロエトキシレート(R
fCH
2CH
2(CH
2CH
2O)
nH、nは約7である)であった。周囲圧力で不活性窒素雰囲気中、かき混ぜ機およびドライアイス冷却器、表面下ガス注入管をガラスフラスコに備え付けた。次のおおよその分布(mの4%は2〜4であり、mの35%は6であり、mの30%は8であり、mの17%は10であり、mの8%は12であり、mの6%は14以上である)を有する、F(CF
2)
mCH
2CH
2OHのフッ素化アルコール(244g、約0.55モル)をフラスコに仕込み、次に不活性ガスのスパージング下に80℃に加熱することによって脱水した。水素化ホウ素ナトリウム(1.02g、0.027モル)およびヨウ素(1.8g、0.007モル)を添加し、混合物を撹拌し、140〜145℃に加熱した。ガス注入管を通してガスを反応物表面下にバブリングさせることによってエチレンオキシドの仕込みを開始し、エチレンオキシドの遅い還流が冷却器中で観察されるように添加の速度を維持した。生じたフロオロアルキルエトキシレート生成物は、1分子当たり平均して約7個のエチレンオキシド単位を有した。試験方法2によって表面張力測定を行った。試験方法4に従って臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。結果を表2に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
表2は、両方ともパーフルオロアルキル基および炭化水素基が存在する、実施例5および6が、比較例B(パーフルオロアルキルエチルエトキシレート)と比較して類似の臨界ミセル濃度(CMC)を有したことを示す。即ち、本発明の界面活性剤は、完全フッ素化界面活性剤と比較したときでさえ、非常に低い濃度で表面張力を低下させるのに有効である。
【0066】
実施例6の混成界面活性剤を使用して水と炭化水素溶媒(例えば、シクロヘキサン)との間の界面張力および動的界面張力(即ち、時間の関数としての界面張力)を低下させた。この現象は、コーティングの改善、乳濁液の生成に、および消火用途に有用である。実施例6および比較例Bの界面張力測定(mN/m)は、脱イオン水中0.01%濃度で実施した。界面張力は、試験方法3を使用してシクロヘキサンとの界面で測定した。結果を表3に記載する。
【0067】
【表5】
【0068】
表3は、実施例6が比較例Bよりもシクロヘキサンと低い界面張力を一貫して有したことを示す。水とハロゲン化液体との間の界面での界面張力は、実施例6を使用して低下した。これは、例えばテトラフルオロエチレンの重合を行う目的で水性媒体中でハロゲン化材料の乳濁液を生成するのに特に有用である。
【0069】
本件特許出願人(Wilmington,DE)から入手可能な、CF
3CHFCHFCF
2CF
3との界面で、脱イオン水中0.01%濃度で対の末端を有する混成界面活性剤実施例6の界面張力(mN/m)を測定した。試験方法3に従って界面張力を測定した。結果を表4に記載する。
【0070】
【表6】
【0071】
表4は、フルオロカーボン/炭化水素混成(実施例6)が完全フッ素化比較例Bよりも一貫して良好に界面張力を低下させたことを示す。
【0072】
試験方法5によって、脱イオン水で0.1%活性成分での混成界面活性剤実施例5および6並びに比較例Bの起泡性を測定した。結果を表5に記載する。
【0073】
【表7】
【0074】
表5のデータは、実施例6のフルオロカーボン/炭化水素混成エトキシレートが、例えば、発泡が望ましくない特質であるコーティング用途においてそれを有用なものにして、完全フッ素化比較例Bより低い起泡性を有したことを示す。実施例5のフルオロカーボン/炭化水素混成エトキシレートは、例えば、それを消火用途において泡「ブランケット」を発生させるのに有用なものにして、完全フッ素化比較例Bより大きい起泡性を有した。
【0075】
Rohm & Haas(Philadelphia,PA)から入手可能な、RHOPLEX 3829、配合物N−29−1、床磨き剤に、1.0%の活性成分の量で、比較例Bおよび実施例6を添加し、試験方法1に従って湿潤およびレベリングを試験した。結果を表6に記載する。
【0076】
【表8】
【0077】
50%のフッ素含有率の比較例Bを含有する、実施例6は、ブランクと比較してレベリングにおいて秀でており、完全フッ素化された比較例Bと比較して類似のレベリング性能を有した。このように、フルオロアルキルおよび炭化水素基を含有する本発明の界面活性剤は意外にも、完全フッ素化界面活性剤と比較したときでさえ、非常に低い濃度で優れたレベリングを示す。
【0078】
比較例Cおよび実施例7
アルコールエトキシレートおよびフルオロアルコールエトキシレートを使用する、クエン酸のエステル化を行って式6の混合エステルを生成した。攪拌機、Dean−Starkトラップ付き冷却器、およびサーモスタットコントロラ−付き加熱マントルを備えた、2つの別個の500mLの丸底4つ口フラスコに、表7に記載する試薬を仕込んだ。
【0079】
【表9】
【0080】
乾燥窒素下に反応器を穏やかな還流に加熱した。沸騰が約111℃〜112℃で始まった。沸騰温度は、次の2時間にわたって115℃〜166℃まで徐々に上昇し、少量の水がDean−Starkトラップに集まり始めた。約3時間後に、約1mLの水がいずれの場合にも捕捉された。温度を次に沸点より下に下げ、0.3gのp−トルエンスルホン酸一水和物を各反応器に添加した。加熱を再開し、内容物を一夜還流させた。
【0081】
トラップを次に検査した;比較例Cは約1.4mLの水を有し、実施例7は約1.9mLの水を有し、それぞれが約20mLのトルエンを有した。還流をもう8時間続け、その時間の間にトラップをもう4回排水させた。次に、トルエンを留去し、各容器から約65mLの追加のトルエンを得た。容器を次に一夜放冷した。
【0082】
かき混ぜながら各容器に室温で炭酸水素ナトリウム(25mLの水中0.34gの溶液10mL)を添加した。発泡は少なかった。生成物の両方を別個の500mLの1口丸底フラスコに添加し、ロータリーエバポレーターでトルエンを生成物からストリッピングした。各フラスコへの15gの2−プロパノールの添加によって発泡を制御した。50%水/2−プロパノールの追加のアリコートを添加し、トルエンの臭いが残っていなくなるまでトルエンのストリッピングを続けた。得られた生成物は次の通りであった:
比較例C:HOC(CH
2CO
2X)
2CO
2X、 X=(CH
2CH
2O)
7CH
2CH
2R
f R
f平均=C
7F
15
実施例7(混合エステル):
12.5% HOC(CH
2CO
2X)
2CO
2X、
12.5% HOC(CH
2CO
2Y)
2CO
2Y
25% HOC(CH
2CO
2X)(CH
2CO
2Y)CO
2X
25% HOC(CH
2CO
2X)(CH
2CO
2Y)CO
2Y
ここで、
X=(CH
2CH
2O)
7CH
2H
2R
fおよび
Y=(CH
2CH
2O)
10(CH
2)
15CH
3(R
f平均=C
7F
15)
【0083】
試験方法2に従って、比較例Cおよび実施例7の表面張力を測定した。結果を表8に記載する。
【0084】
【表10】
【0085】
実施例7の混成界面活性剤は、2倍ほど多くのフッ素化エトキシレートで調製された、比較例Cと比較して同等の性能を有した。このように実施例7は、フッ素効率の増大を付与して、50%のフッ素含有率で匹敵する性能を実証した。
【0086】
実施例8
機械攪拌機アセンブリ、熱電対、および窒素ラインに連結された還流冷却器を備えた250mLの3つ口フラスコに、R
fCH
2CH
2(CH
2CH
2O)
7H、[R
f平均=C
7F
15、150.0g、205mmol]を仕込んだ後、粉状の水酸化カリウム[KOH、90%、18.4g、329mmol]を仕込んだ。苛性の添加は僅かな発熱および生成懸濁液の暗色化をもたらした。混合物を10分間撹拌し、0℃に冷却し、エピクロロヒドリン[CH
2OCHCH
2Cl、27.5mL、350mmol]を滴々添加した。完全に添加すると、反応混合物を周囲温度に暖まるに任せ、更に55℃で12時間撹拌した。ジエチルエーテル(200mL)を反応混合物に添加し、懸濁液をろ過した。固形分をジエチルエーテル(50mL)で洗浄した。減圧(200mbar)下に最初は周囲温度で、最後には70℃で集めたろ液を十分に乾燥させた。式7のパーフルオロアルキルプロピレンオキシド生成物は、粘稠な琥珀色オイルであった(R
fCH
2CH
2Q(CH
2CH
2O)
nCH
2CHOCH
2、R
f平均=C
7F
15、Q=O、n
平均=8、178g、98%)。
1H NMR(CDCl
3)δ2.31(m,2H,CF
2CH
2)、2.49(m,1H,CH
2CH(O)CH
2)、2.67(m,1H,CH
2CH(O)CH
2)、3.05(m,1H,CH
2CH(O)CH
2)、3.32(m,1H,CH
2CH(O)CH
2)、3.05(m,1H,CH
2CH(O)CH
2)、3.40−3.65(m,32H,OCH
2)、3.68(m,3H,CH
2CH(O)CH
2およびCF
2CH
2CH
2O)。
【0087】
機械攪拌機アセンブリ、熱電対、および窒素ラインに連結された還流冷却器を備えた250mLの3つ口フラスコに、上記の通り調製したパーフルオロアルキルプロピレンオキシド[R
fCH
2CH
2Q(CH
2CH
2O)
nCH
2CHOCH
2、138.5g、176mmol]およびDow Q2−5211[HO(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2CH
2Si(CH
3)
3O[Si(CH
3)]
xOSi(CH
3)
3、109g、176mmol]を仕込んだ。三フッ化ホウ素エーテラート[BF
3(C
2H
5)
2O、2.5g、18mmol]を添加し、反応混合物を50℃で5時間撹拌した。Amberlyst A−21(18mmol)およびメタノール(CH
3OH、50mL)を添加した。30分の撹拌後、混合物をろ過した。減圧(200mbar)下に全揮発分を除去した。ヘプタメチルトリシロキサン付加生成物は、式7、
R
fCH
2CH
2O(CH
2CH
2O)
nCH
2CHOHCH
2O(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2CH
2Si(CH3)[OSi(CH3)3]2の琥珀色オイルであった。
1H NMR(CDCl
3)δ−0.08(s,3H,SiCH
3)、−0.01(s,18H,SiCH
3)、0.35(m,2H,SiCH
2)、0.85(m,1H)、1.53(m,3H,SiCH
2CH
2)、2.33(m,2H,SiCH
2CH
2CH
2)、3.32(m,2H,SiC
3H
9OCH
2)、3.40−3.65(m,32H,OCH
2)、3.68(m,3H,CH
2CH(O)CH
2およびCF
2CH
2CH
2O)。
【0088】
試験方法2を使用して実施例8および比較例Bの表面張力を測定した。結果を表9に記載する。
【0089】
【表11】
【0090】
表9のデータは、比較例Bより50%少ないフッ素を含有する実施例8が、約0.10%以上の濃度で比較例Bに匹敵する性能を有することを示す。
【0091】
実施例9
熱電対およびマグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコで、POCl
3(1.3g、8.6ミリモル)を25mLの乾燥テトラヒドロフランに溶解させた。氷浴を使用して溶液を0℃に冷却した。15mLの乾燥テトラヒドロフラン中にフッ素化アルコール、C
6F13CH
2CH
2OH(3.1g、8.6ミリモル)およびトリエチルアミン(2.1g、21ミリモル)を含有する別個の溶液を反応器にゆっくり添加した。反応を0℃で1〜2時間進行させた。次に、15mLの乾燥テトラヒドロフラン中の炭化水素アルコール、1−オクタノール(1.1g、8.6ミリモル)の溶液を反応マスにゆっくり添加した。反応物を周囲温度で一夜撹拌した。次に、固形分をろ過し、ロトバプ(rotovap)を使用して溶媒を蒸発させた。生じたオイルを10mLのテトラヒドロフランに希釈し、1mLの水に溶解させた0.34g(8.6mmol)のNaOHを反応マスに添加した。混合物を室温で一夜撹拌した。次に、ロトバプを使用して溶媒を蒸発させ、生じた固形分を50mLのクロロホルムで洗浄し、ろ過した。真空オーブン内で120℃および150mmHg(20kPa)で最終生成物を乾燥させた。生成物は、式1(式中、R
fはC
6F13であり、AはCH
2CH
2であり(sおよびeはそれぞれ0であり、mは2であり)、QはOP(O)(O
−M
+)(O)であり、MはNaであり、kは0であり、RはC
8H
17であり、bは1である)の化合物であった。試験方法2を使用して表面張力を測定した。結果を表11に記載する。
【0092】
実施例10〜16
表10に記載するような量で異なる炭化水素アルコールを使用して、実施例9の方法を用いた。生成物は、式1(式中、R
fはC
6F13であり、AはCH
2CH
2であり(sおよびeはそれぞれ0であり、mは2であり)、QはOP(O)(O
−M
+)(O)であり、MはNaであり、kは0であり、bは1であり、そして実施例10についてはRはC
8H
17であり、実施例11についてはRはC
4H
9であり、実施例12についてはRはC
5H
11であり、実施例13についてはRはC
7H
15であり、実施例14についてはRはC
9H
19であり、実施例15についてはRはC
10H
21であり、実施例16についてはRは(CH
2)
2C
6H
13である)の化合物であった。試験方法2を使用して表面張力を測定した。結果を表11に記載する。
【0093】
実施例17〜20
実施例9の方法を以下を変更して用いた。実施例17においては、フッ素化アルコールおよび1−オクタノールを一緒に混合し、一工程で添加した。実施例18においては、1−オクタノールを先ず添加し、フッ素化アルコールを第2工程で添加した。実施例19および20においては、表10に示されるような、異なる量のフッ素化アルコールおよびi−オクタノールを用いた。得られた生成物は、実施例9と同じものであった。試験方法2を使用して表面張力を測定した。結果を表11に記載する。
【0094】
比較例D
2倍量のフッ素化アルコールを反応させ、炭化水素アルコールを全く使用しなかったことを除いて、実施例9の方法を用いた。得られた生成物は、式1に類似のものあったが、Rの代わりに第2のR
f基を含有し、その結果、各R
fはC
6F13であり、AはCH
2CH
2であり(sおよびeはそれぞれ0であり、mは2であり)、QはOP(O)(O
−M
+)(O)であり、MはNaであり、kは0であり、bは1である。
【0095】
比較例E
2倍量の炭化水素アルコール、1−オクタノールを反応させ、フッ素化アルコールを全く使用しなかったことを除いて、実施例9の方法を用いた。得られた生成物は、式1に類似のものあったが、R
fの代わりに第2のR基を含有し、その結果、各RはC
8H
17であり、AはCH
2CH
2であり(sおよびeはそれぞれ0であり、mは2であり)、QはOP(O)(O
-M
+)(O)であり、MはNaであり、kは0であり、bは1である。
【0096】
【表1】
【0097】
【表13】
【0098】
表11は、実施例9〜20並びに比較例DおよびEについての表面張力結果を示す。平均結果および標準偏差は、界面活性剤の3つの異なる溶液の個々の試験から得られた。表11に明記されるような各界面活性剤のフッ素含有率は、乾燥した界面活性剤についてであり、試験方法6によって測定した。概して、実施例9〜20は全て、溶液中0.5、0.1および0.05重量%の濃度で、より低いフッ素含有率を有するのに、比較例Dに類似のまたはそれより秀でた性能を実証した。実施例の幾つかは、溶液中0.01重量%の濃度で秀でた性能を実証した。実施例9、16、17、18および19の性能はそれそれ、水の表面張力を20ダイン/cm(mN/m)より下に低下させるために溶液中にたったの0.05重量%を必要とした。
【0099】
実施例21〜27
フッ素化アルコールが表12に示される量のC
4F9CH
2CH
2OHであり、炭化水素アルコールが表12に示される量で示される通りであったことを除いて、実施例9の方法を用いた。生成物は、式1(式中、R
fはC
4F9であり、AはCH
2CH
2であり(sおよびeはそれぞれ0であり、mは2であり)、QはOP(O)(O
−M
+)(O)であり、MはNaであり、kは0であり、bは1であり、そして実施例21についてはRはC
4H
9であり、実施例22についてはRはC
5H
11であり、実施例23についてはRはC
6H
13であり、実施例24についてはRはC
7H
15であり、実施例25についてはRはC
8H
17であり、実施例26についてはRはC
9H
19であり、実施例27についてはRはC
10H
21である)の化合物であった。試験方法2を使用して表面張力を測定した。結果を表13に記載する。
【0100】
比較例F
2倍量のフッ素化アルコールを反応させ、炭化水素アルコールを全く使用しなかったことを除いて、実施例9の方法を用いた。得られた生成物は、式1に類似のものあったが、Rの代わりに第2のR
f基を含有し、その結果、各R
fはC
4F9であり、AはCH
2CH
2であり(sおよびeはそれぞれ0であり、mは2であり)、QはOP(O)(O
−M
+)(O)であり、MはNaであり、kは0であり、bは1である。
【0101】
【表14】
【0102】
【表15】
【0103】
表13は、実施例21〜27の混成ホスフェートについての表面張力結果を示す。混成界面活性剤を非混成比較例Fに対して比較した。各界面活性剤のフッ素含有率は、表13に明記されるように合成のために使用された試薬の量から計算した。概して、実施例21〜27は、より低いフッ素含有率を有するのに、比較例Fに類似の性能を実証した。実施例25〜27は概して、秀でた性能を実証した。より短い炭化水素基Rをそれぞれ含有する、実施例21〜24は、より長鎖の炭化水素基Rをそれぞれ含有する、実施例25〜27ほど有効ではなく、フッ素が減少するにつれて、より長い炭化水素テールが望ましいことを示唆した。フッ素効率の最も顕著な向上は、実施例26および27について観察された。これらの2つの界面活性剤は、比較例Fよりはるかに少ないフッ素を使用しながら水の表面張力を20ダイン/cm(mN/m)より下に低下させることができた。
【0104】
塗料での試験
実施例15、18、および比較例Dの5重量%水性分散液を調製した。表14に記載される量でこれらのそれぞれを100gのVISTA 6400塗料に添加して70ppm(マイクログラム/g)のフッ素を付与した。0.28gの量でこれらのそれぞれを100gのVISTA 6400塗料に添加して表15に記載されるようなフッ素含有率を付与した。この塗料をポリエステル試験パネルに塗布し、試験方法7に従ってブロッキングを試験した。得られたデータを表14および15に示す。
【0105】
【表16】
【0106】
表14は、同じフッ素含有率で実施例15および18に対して比較例Dのブロッキング性能を比較する。試験は、試験サンプルを0〜10で評価する試験方法7に従って実施した。より高いブロッキング評点は、より良好なブロッキング性能を表す。実施例15および18の両方は、比較例Dより秀でた性能を実証した。これらの2つの実施例はまた、同じレベルのフッ素濃度でのそれらのより高いブロッキング評点によって実証されるようにフッ素効率を向上させる。
【0107】
【表17】
【0108】
表15は、同じ重量含有率で実施例15および18に対して比較例Dのブロッキング性能を比較する。試験は、試験サンプルを0〜10で評価する試験方法7に従って実施した。より高いブロッキング評点は、より良好なブロッキング性能を表す。実施例15および18の両方は、比較例Dよりかなり低いフッ素含有率で秀でた性能を実証した。これらの結果は、実施例の混成性によって付与されるフッ素効率の向上と一致する。
本出願は、特許請求の範囲に記載の発明を含め、以下の発明を包含する。
(1) 式1
(R
f−A)
a−Q−([B]
k−R)
b 式1
[式中、
aおよびbは、それぞれ独立して1又は2であり;
R
fは、任意に少なくとも1個の酸素で中断されている、2〜約20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
Rは、C
1〜C
20直鎖、分岐鎖若しくは環式のアルキル、又はC
6〜C
10アリールであり;
Bは−(CH
2CHR
1O)
x−であり、
kは0又は1であり、xは1〜約20であり、
Aは、−(CH
2)
m[(CHR
1CH
2O)]
s−[(CH
2)
m(CH)
tCHOH(CH
2)
m]
e−であり、
(式中、
各mは、独立して0〜3であり、sは0〜約30であり、tは0又は1であり、eは0又は1であり、
R
1はH又はCH
3である)
Qは、−OP(O)(O
-M
+)(O)−、
−O−、
−S−(CH
2)
m−C(O)−O−、
−SO
2−O−、
−CH
2CH
2O−C(O)CH
2C(OH)(V)CH
2C(O)O−、
−(CH
2CH
2O)
xCH
2CH(OH)−(CH
2CH
2O)
x−(CH
2)
m−Si[OSi(R
2)
3]
2−、
−SO
2NR
2−、若しくは
−(CH
2CH
2O)zC(O)CH(SO
3-M
+)CH
2C(O)(OCH
2CH
2)
z−(式中、zは1〜約15である)、又は
sが正の整数であるとき、結合であり、
Vは−C(O)OR
3であり、R
3は、H、CH
3またはR
fであり;
R
2はC
1〜C
4アルキルであり、
M
+は、1族金属であるか又はアンモニウム(NH
xR
2y)
+カチオンであり(式中、x+y=4であり、R
2はC
1〜C
4アルキルである)、
但し、Qが−OP(O)(O
-M
+)(O)−であるとき又はQが−(CH
2CH
2O)
z−C(O)CH(SO
3-M
+)CH
2C(O)(OCH
2CH
2)
z−であるとき、s又はeの少なくとも1つは正の整数である]
の界面活性剤。
(2) 次式
R
f−(CH
2)
n−O−P(O)(OR)(O
-M
+)
(式中、
R
f、n、R
1、およびMは、(1)で定義された通りである)
を有する、(1)に記載の界面活性剤。
(3) 次式
R
fCH
2CH(OH)CH
2O(CHR
1CH
2O)
xR
(式中、
R
f、R
1、xおよびRは、(1)で定義された通りである)
を有する、(1)に記載の界面活性剤。
(4) 次式
R
f(CH
2)
2S(CH
2)
2C(O)O(CHR
1CH
2O)
xR
(式中、
R
f、R
1、xおよびRは、(1)で定義された通りである)
を有する、(1)に記載の界面活性剤。
(5) 次式
R
f(CH
2)
2S(O
2)O(CHR
1CH
2O)
xR
(式中、
R
f、R
1、xおよびRは、(1)で定義された通りである)
を有する、(1)に記載の界面活性剤。
(6) 次式
R
f(CH
2)
2O(CHR
1CH
2O)
xC(O)CH
2C(OH)(C(O)OH)CH
2C(O)O(CHR
1CH
2O)
xR
(式中、
R
f、R
1、xおよびRは、(1)で定義された通りである)
を有する、(1)に記載の界面活性剤。
(7) 次式
R
f(CH
2)
2O(CHR
1CH
2O)
xCH
2CH(OH)[(CH
2)
3O]
x(CH
2)
2Si(CH
3)[OSi(CH
3)
3]
2
(式中、
R
f、R
1、およびxは、(1)で定義された通りである)
を有する、(1)に記載の界面活性剤。
(8) 次式
R
f(CH
2)
2S(O
2)N(R
3)(CHR
1CH
2O)
xR
(式中、
R
f、R
1、R
3、xおよびRは、(1)で定義された通りである)
を有する、(1)に記載の界面活性剤。
(9) 次式
R
fCH
2CH
2(OCHR
1CH
2O)
xC(O)CH(SO
3-M
+)CH
2C(O)(OCHR
1CH
2)
yOR
(式中、
R
f、R
1、x、M、yおよびRは、(1)で定義された通りである)
を有する、(1)に記載の界面活性剤。
(10) 媒体を(1)に記載の式1の組成物と接触させることを含む、媒体の表面張力を低下させる方法。
(11) 基材に堆積する前に、(1)に記載の式1の化合物をコーティングベースに添加する工程を含む、コーティングされる基材に耐ブロッキング性を付与する方法。
(12) (10)又は(11)に記載の方法に従って処理された基材。