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特許5697985衛星ナビゲーション・システムから受信した信号の適応処理のための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697985
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】衛星ナビゲーション・システムから受信した信号の適応処理のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/37 20100101AFI20150319BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   G01S19/37
   H04B1/16 R
【請求項の数】22
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2010-535950(P2010-535950)
(86)(22)【出願日】2008年10月31日
(65)【公表番号】特表2011-508186(P2011-508186A)
(43)【公表日】2011年3月10日
(86)【国際出願番号】US2008012342
(87)【国際公開番号】WO2009073071
(87)【国際公開日】20090611
【審査請求日】2011年9月30日
(31)【優先権主張番号】11/998,123
(32)【優先日】2007年11月28日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505093552
【氏名又は名称】トップコン ジーピーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】ツォドジジュスキー,マーク,アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイツェル,ビクター,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ポテキン,オレグ
(72)【発明者】
【氏名】ユダノフ,セルゲイ
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−28945(JP,A)
【文献】 特開2003−258769(JP,A)
【文献】 特開2004−170422(JP,A)
【文献】 特開2006−217601(JP,A)
【文献】 特開2006−162501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00〜19/55、
5/00〜5/14
H04W 64/00
G08G 1/00〜99/00
H04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機座標を決定するために複数のナビゲーション衛星から受信した搬送波信号を処理するように構成された適応受信機であって、
受信搬送波信号の完全位相を評価するように構成された協働追跡システムと、
案内ステータスと、被案内ステータスと、オープン・ステータスと、探索ステータスとを備える、複数のステータスのうちの1つを示すステータス・コマンドを生成するように構成された複数のチャネル・インジケータと、
前記案内ステータスで動作するように構成された適応チャネルが、第1のしきい値を上回る信号対雑音比(SNR)を有する受信搬送波信号の位相を追跡する自律広帯域位相ロック・ループ(PLL)を備え、前記チャネルが、変動する搬送周波数のターゲット指示用の制御コードを生成するようにさらに構成され、
前記被案内ステータスで動作するように構成された適応チャネルが、第2のしきい値を上回り、前記第1のしきい値を下回るSNRを有する受信搬送波信号の位相を追跡する狭帯域PLLを備え、前記チャネルが、前記ターゲット指示と、ナビゲーション衛星の移動によって生じる周波数変化の予測とを使用するようにさらに構成され、
前記オープン・ステータスで動作するように構成された適応チャネルが、スタンバイ・モードのオープンPLLを備え、衛星移動によって生じる周波数変化の予測と前記協働追跡システムからのターゲット指示とを使用して、衛星遮蔽中に完全位相を外挿し、前記衛星遮蔽が終わったとき、ロッキングの準備をするように構成され、
前記探索ステータスで動作するように構成された適応チャネルが、搬送波信号を探索し、ロックするように構成される
ように、それぞれ前記ステータス・コマンドに応答して構成可能な複数の適応チャネルと
を備える適応受信機。
【請求項2】
前記チャネル・インジケータが、適応チャネルの信号品質を推定するように構成された、請求項1に記載の適応受信機。
【請求項3】
前記チャネル・インジケータが、周期Tで周期的に適応チャネルの前記信号品質を推定するように構成された、請求項2に記載の適応受信機。
【請求項4】
前記周期Tが、0.1〜10sの範囲から選択される、請求項3に記載の適応受信機。
【請求項5】
前記チャネル・インジケータの各々が信号対雑音比を決定し、
=[(I+(Q
に基づいてエネルギー品質信号Sを発生し、
およびQが、前記PLL帯域幅に対してほぼ逆の時間を求める摺動平均法によって平滑化された入力信号の直交成分である、
請求項2に記載の適応受信機。
【請求項6】
インジケータは、前記エネルギー品質信号が前記第1のしきい値を超える場合、案内ステータス・コマンドを出力し、前記エネルギー品質信号が前記第2のしきい値を超えるが、前記第1のしきい値よりも小さい場合、被案内ステータス・コマンドを出力し、前記エネルギー品質信号が前記第2のしきい値よりも小さい場合、オープン・ステータス・コマンドを出力し、適応チャネルにオープン・ステータスが所定の時間より長い間割り当てられた場合、探索ステータス・コマンドを出力する、請求項5に記載の適応受信機。
【請求項7】
前記第1のしきい値が40〜45dB/Hzの間隔内にあり、前記第2のしきい値が2〜30dB/Hzの間隔内にある、請求項6に記載の適応受信機。
【請求項8】
チャネル・インジケータが、前記エネルギー品質信号Sを発生するエネルギー・インジケータと、
=Σabs(Q/I
に従って位相品質信号Spを発生する位相インジケータとを備え、
前記エネルギー・インジケータがエネルギー品質信号Sを発生する、請求項2に記載の適応受信機。
【請求項9】
前記位相品質信号Sが、0.2〜0.5rad等しいしきい値を上回る場合、PLLがオープン・ステータスになる、請求項8に記載の適応受信機。
【請求項10】
変動する搬送周波数のターゲット指示のための前記制御コードが、前記自律広帯域PLLの周波数レジスタから得られる、請求項1に記載の適応受信機。
【請求項11】
前記制御コードが、最小二乗法で処理され、前記狭帯域PLLのためのターゲット指示を形成するために衛星方向に投射される、請求項10に記載の適応受信機。
【請求項12】
前記協働追跡システムが、いくつかの案内チャネルと被案内チャネルとによる狭帯域の個々のループと、座標x、y、z、cτによる4つの比例共通ループとを備える、請求項1に記載の適応受信機。
【請求項13】
前記広帯域PLLと前記狭帯域PLLとから測定された完全位相のベクトルが、前記共通ループの入力に送信され、完全位相の最適な推定値とチャネルごとの位相増分のターゲット指示とを出力するために処理される、請求項12に記載の適応受信機。
【請求項14】
前記推定値と前記ターゲット指示とが、信号がある期間遮蔽されるオープン・チャネルにおいて使用される、請求項13に記載の適応受信機。
【請求項15】
前記協働追跡システムが、周期Tで、
1)完全位相予測を、
【数1】
で計算するステップと、ただし、
【数2】
は、前の周期T、すなわち(i−1)番目の完全位相の最終推定値であり、
χi−1は、アキュムレータΣでの値であり、
【数3】
は、衛星移動によって生じる(i−1)番目およびi番目の周期Tからの時間の完全位相増分の予測であり、
2)前記観測された完全位相
【数4】
とその予測
【数5】
との間の差を、
【数6】
で計算するステップと、
3)広帯域PLLと狭帯域PLLとを備えるチャネルのみについて前記LSM処理差
【数7】
を使用して前記チャネルのためのターゲット指示
【数8】
を計算するステップと、ただし、
このステップを実行するために、前記協働追跡システムが、
a)次元J+Kをもつ能動衛星について、差
【数9】
のベクトルを編集するステップと、
b)ユニットカラムを追加して、前記能動衛星について方向余弦の行列Hを編集するステップと、
c)能動衛星Wについて重み係数のベクトルを編集するステップと、
d)前記能動衛星Wについて行列G=(HWH)−1を計算するステップと、
e)幾何学座標Δx、Δy、Δzおよび時間cΔτの偏差の4成分ベクトルを得るために、前記行列Gと前記差のベクトルを乗算するステップと、
f)広帯域PLLと狭帯域のPLLとオープンPLLとを備えるチャネルに関連する搬送波信号を送信する衛星を使用して、別の行列Hを生成するステップと、
h)すべての前記衛星のためのターゲット指示を得るために、この行列Hに幾何学座標および時間の偏差の4成分ベクトルを乗算するステップと
を実行し、
4)広帯域PLLと狭帯域PLLとを備えるチャネルについて、
【数10】
で、残差を計算するステップと、
5)状態ベクトルを、
=xi−1+βδ
【数11】
で補正するステップと、
6)オープンPLLを有する適応チャネルのNCOの補正位相を、
【数12】
で計算するステップと
を実行するように構成された、請求項14に記載の適応受信機。
【請求項16】
オープン・ステータスを有する前記適応チャネルが、前記遮蔽が終わったとき、被案内チャネル中のターゲット指示ブロックからの周波数ターゲット指示と、前記協働追跡システムからの位相補正とを受信するようにさらに構成された、請求項1に記載の適応受信機。
【請求項17】
各周期Tで、ナビゲータが、座標を計算するために、案内チャネルと被案内チャネルとからの完全位相、ならびに前記協働追跡システムからのオープン・チャネルの完全位相推定値を使用する、請求項1に記載の適応受信機。
【請求項18】
受信機座標を決定するために複数の適応チャネルを使用して複数のナビゲーション衛星から受信した搬送波信号を処理するための方法であって、
協働追跡システムによって受信搬送波信号の完全位相を評価することと、
案内ステータスと、被案内ステータスと、オープン・ステータスと、探索ステータスとを備える、複数のステータスのうちの1つを示すステータス・コマンドを、複数のチャネル・インジケータによって生成することと、
案内ステータス・コマンドに応答して、自律広帯域位相ロック・ループ(PLL)が、第1のしきい値を上回る信号対雑音比(SNR)を有する受信搬送波信号の位相を追跡する案内ステータスで動作するように適応チャネルを構成することであって、前記チャネルが、変動する搬送周波数のターゲット指示のための制御コードを生成するようにさらに構成された、構成することと、
被案内ステータス・コマンドに応答して、狭帯域PLLが、第2のしきい値を上回り、前記第1のしきい値を下回るSNRを有する信号を追跡し、前記ターゲット指示と、ナビゲーション衛星の移動によって生じる周波数変化の予測とを使用する、被案内ステータスで動作するように適応チャネルを構成することと、
オープン・ステータス・コマンドに応答して、PLLが開き、完全位相が外挿され、衛星移動によって生じる周波数変化の予測と、前記協働追跡システムからのターゲット指示とを使用して、衛星遮蔽が終わったとき、再ロッキングを実施する準備がなされる、スタンバイ・モードで動作するように適応チャネルを構成することと、
探索ステータスに応答して、搬送波信号をさらに探索し、ロックすることを保証する探索ステータスで動作するように適応チャネルを構成することと
を含む方法。
【請求項19】
前記複数のチャネル・インジケータを使用して適応チャネルの信号品質を推定することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記推定することが、
=[(I+(Q
に基づいてエネルギー品質信号Sを発生することをさらに含み、
およびQが、前記PLL帯域幅に対してほぼ逆の時間を求める摺動平均法によって平滑化された入力信号の直交成分である、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
チャネル・インジケータは、前記エネルギー品質信号が前記第1のしきい値を超える場合、案内ステータス・コマンドを出力し、前記エネルギー品質信号が前記第2のしきい値を超えるが、前記第1のしきい値よりも小さい場合、被案内ステータス・コマンドを出力し、前記エネルギー品質信号が前記第2のしきい値よりも小さい場合、オープン・ステータス・コマンドを出力し、適応チャネルにオープン・ステータスが所定の時間より長い間割り当てられた場合、探索ステータス・コマンドを出力する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
狭帯域PLLを備える前記適応チャネルのターゲット指示ブロックからの周波数ターゲット指示と、前記協働追跡システムからの位相補正とを、オープンPLLを備える適応チャネルによって受信することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、衛星ナビゲーション・システム受信機に関し、より詳細には、そのような受信機の信頼性を高めることに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、GPS(米国)、GLONASS(ロシア)およびGALILEO(ヨーロッパ)などの衛星ナビゲーション・システム(ナビゲーション衛星とも呼ばれる)を使用して、ナビゲーション受信機を所有しているユーザの位置を正確に決定する。ナビゲーション受信機は、いくつかの衛星によって同時に送信された無線信号を受信し、処理する。これらの無線信号は、擬似ランダム・バイナリ・コード(PRコード)によって変調された搬送波信号を含む。コードは、一般に、バイナリ情報シンボルによって逆変調される。
【0003】
各受信機は、その受信機を所有しているユーザとともに移動する。ユーザとともに移動する受信機は、しばしばローバと呼ばれる。ディファレンシャル・ナビゲーション(DN)では、ローバと基地局はナビゲーション衛星から同じ衛星信号を受信する。ローバは、各ナビゲーション衛星が信号を送信する時間に対する、ローバが衛星信号を受信する時間の時間遅延を測定する。ローバは、信号が衛星から受信機まで伝搬するのにかかる時間を測定することによって、衛星と受信機との間の距離(すなわち、擬似距離)を測定する。擬似距離は、この時間オフセットに光速を乗算したものである。
【0004】
上述のように、基地局は、ローバと同じ衛星信号を受信する。基地局の正確な座標は知られており、基地局は測定中は概して固定である。基地局は、衛星の信号を受信し、処理して測定値を生成するナビゲーション受信機を有する。これらの信号測定値は、通信チャネル(たとえば、無線)を介してローバに送信される。ローバは、それ自体のナビゲーション受信機を用いて得られたそれ自体の測定値とともに、基地局から受信したこれらの測定値を使用して、その位置を正確に決定する。ローバは、ローバの測定値中の強相関誤差の大部分を補償するために基地局の測定値を使用することができるので、ディファレンシャル・ナビゲーション・モードでは位置決定が改善される。
【0005】
衛星ごとに、ローバによって測定される時間遅延は、スケールを使用して測定される。PRコード遅延を測定するための比較粗スケールがある。コード遅延は、ローバのローカルで生成されたコードと、衛星から受信したコードとの間のオフセットである。コード遅延はPRコード位相としても知られている。遅延は搬送周波数の位相によっても測定できる。そのような測定は、小さい曖昧でないレンジ(搬送周波数の周期)を有するが、一般により正確である。
【0006】
ローバは、2つのループを使用して遅延を測定する。位相ロック・ループ(PLL)を使用して搬送波位相を追跡する。遅延ロック・ループ(DLL)を使用してコード遅延を測定する。
【0007】
さらに、ローバはチャネルを含む。チャネルは、単一の衛星からの信号を追跡するために必要な回路からなる。特に、単一の衛星チャネルは、衛星からの1つの周波数上の単一のコードおよび搬送波に対するコード遅延および搬送波遅延を測定するための基本的な構造単位として考えることができる。各チャネルは、公的にアクセス可能な信号、たとえば、GPS C/A信号もしくはGPS L2C、場合によってはGPS L3もしくはGLONASS C/Aなどとともに作動する。
【0008】
受信信号の処理では、(入力回路およびフィルタ処理回路ならびに周波数変換器を通過した)この信号の連続した乗算積の累積を行う。基準搬送波および基準コードは受信機で生成される。基準搬送波は所与の衛星用の受信信号の搬送波に対応し、基準コードは同じ衛星のPRコードに対応する。乗算および累積を受け持つ構成要素は相関器と呼ばれ、それに対応するプロセスは相関と呼ばれる。
【0009】
衛星信号の受信機用のチャネルを設計するにはいくつかの方法がある。各チャネルは一般に3つの経路を含む。第1の経路は同相相関信号Iを計算する。第1の基準搬送波が入力信号搬送波と同相であり、基準コードが入力信号を変調するPRコードのコピーである場合、この相関信号を得ることができる。
【0010】
基準搬送波の位相誤差φおよび基準コードの時間オフセットεが存在するとき、(簡単のために)干渉を無視して、信号Iを次のように表すことができる。
I=μU(ε)cosφ
ただし、μはバイナリ情報シンボルであり、
は受信信号の振幅であり、
(ε)は、(受信機のフィルタを通過した後の)PRコードと、入力信号用のPRコードのローカルで生成された複製である基準コードとの相互相関関数である。
【0011】
第2の経路は直交相関信号Qを計算する。第2の基準搬送波を第1の基準搬送波からπ/2だけシフトすると、この信号を得ることができる。基準搬送波信号の相関は入力信号の直交成分を生成する。基準コードは第1の経路の基準コードと同じである。信号Qは次のように書くことができる。
Q=μU(ε)sinφ
直交信号QおよびIは、PLL位相弁別器のために使用される。
【0012】
第3の経路は、DLLを制御するために使用される相関信号dlを計算する。この信号を得るために、入力搬送波と同相の第1の基準搬送波が使用され、基準コードは、入力PRコード・チップの符号の変化に一致する短いストローブ・パルスからなる。ストローブ・パルスの符号は、ストローブ・パルスに従うチップの符号に一致することに留意されたい。
【0013】
受信機の個々のチャネルのDLLおよびPLLが信号にロックするために、遅延探索システムは受信信号の遅延および周波数を探索する。遅延探索システムは、基準コードの初期遅延を入力PRコード遅延にできるだけ近くなるように設定する。初期遅延の設定された誤差がDLLロック・イン・レンジの限界を超えない場合、DLLは一定の均衡点で停止する。(周波数探索システムを含むことができる)遅延探索システムは、基準搬送波の初期周波数をPLLロック・イン・レンジを超えない誤差で設定することもできる。
【0014】
受信機の動作中に、ある物体が受信アンテナを遮蔽すると、短期の信号損失のためにDLLおよびPLLにおける追跡の損失が生じることがある。この場合、遮蔽が除去された後、遅延探索システムは、再び信号にロックして、追跡を再開しなければならない。
【0015】
遅延を測定する場合、PLL帯域幅およびDLL帯域幅は、しばしば動誤差の量を低減するように選択される。考えられるファクタには、衛星および受信機の移動、受信機基準発振器の周波数変動、大気を介した波の伝搬の遅延の変動、基準信号発生器の不安定性などがある。
【0016】
帯域幅が増加するにつれて、従来、動誤差は減少する。しかしながら、ある帯域幅を超えて帯域幅を増加することは、(受信機の固有雑音によって生じる誤差を含む)付加干渉からの誤差が増加するので、しばしば不可能である。さらに、帯域幅が増加するにつれて、サイクルスリップおよびロックの損失のリスクが高くなる。衛星が低い、または衛星が群葉によって部分的に遮蔽されるなどのために、衛星信号が弱いチャネルの場合、このリスクはしばしば高い。したがって、制御ループが頑強な動作を行うことができる信号対雑音比(SNR)のしきい値を制限する、よく知られている制約がある。
【0017】
2001年11月6日に発行された米国特許第6,313,789号には、広い帯域幅において共通妨害を追跡することによって上述の制約を解決する方法が記載されている。特に、その特許には、個々のPLLを使用して各可視衛星の搬送波信号の位相を追跡することと、共通ベクトル・ループを使用して衛星の共通搬送波位相妨害を追跡することが記載されている。対応するPLLからの制御信号によって基準コードのクロック・レートを補正するための個々のDLLも各チャネルにある。
【0018】
共通制御ループをもつ受信機では、各チャネルにおける個々のPLLからの信号を予測され補正された信号に加算し、その合計を使用して、各チャネルにおける個々のデジタル数値制御発振器(NCO)の周波数を制御する。予測信号は、衛星移動を予測することによって計算される。衛星移動の予測は、搬送周波数の適切なドップラー周波数シフトを補償すること、ならびに予測を行う他のファクタを含む。補正信号は、受信機チャネルをグループ化する共通ベクトル・ループの出力において発生する。共通ベクトル・ループの入力は、N個のチャネルにおけるPLL弁別器の出力信号のベクトル成分を有するN次元ベクトルである。このベクトルは、最小二乗法(LSM)によって変換される。変換の結果、信号は、動的(ループ)フィルタに供給され、さらに各衛星の方向に投射され、それによって対応する補正信号を形成する。
【0019】
共通ベクトル・ループおよびN個の個々のPLLは多重ループ制御システムを形成する。搬送波位相に作用するいくつかの外的影響は、チャネルのすべてに共通である。それらは受信機移動および基準発振器の周波数変動を含む。これらの影響は主に共通ベクトル・ループによって追跡される。他の外的影響はチャネルごとに異なる。それらは、大気遅延の一部、衛星搭載基準発振器の周波数変動、および予測される衛星移動の誤差を含む。これらの影響は主に個々のPLLによって追跡される。
【0020】
共通の影響の衝撃が、個々の影響の衝撃と比較してはるかにより大きくなるにつれて、共通ベクトル・ループは、一般に、帯域幅がはるかに広くなり、個々のPLLに対して一定でなくなる。個々のPLL信号からの補正が個々のDLLに適用されると、コード遅延の追跡も共通ベクトル・ループからの恩恵を受ける。
【0021】
しかしながら、個々の回路と共通PLLの両方を使用することは、個々のループの互いの相互作用に対するリスクを提示する。したがって、近接するチャネルからの1つのチャネル上の干渉であるチャネル間干渉が生じることがある。チャネル間干渉は、異なるチャネルのうちの1つのチャネルのPLLで発生した後、それらのチャネルのPLLにおける追跡損失またはサイクルスリップをもたらすことがある。チャネル間干渉を制圧するために、各チャネルにおける信号品質は信号対雑音比に対して連続的に推定される。
【0022】
代替的に、PLL弁別器の出力信号が各チャネルにおける信号品質の許容限度を超えることが観測される。信号品質が許容しきい値を下回ると、警報信号が発生する。この警報信号が時間通りに発生した場合、信号品質が容認できるレベルに戻るまで、対応するチャネルは共通ループを使用しない。特に、警報信号が発生したとき、衛星信号を一時的に遮蔽するチャネルは共通ループを使用しない。遮蔽されたチャネルの測定値は、座標計算に使用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第6,313,789号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一実施形態によれば、適応ナビゲーション受信機は別個の衛星チャネルを含む。チャネルは、独立して動作し、チャネルのうちの1つまたは複数は、広帯域幅PLLを使用して強力な衛星信号を追跡することができる。これらのチャネルは案内ステータスを維持する。
【0025】
1つまたは複数のチャネルは、狭帯域幅PLLを使用することによって、より弱い信号を追跡することもできる。狭帯域幅PLLの動作は、受信機の動きによって生じる妨害の補償によって補正できる。これらのチャネルは被案内ステータスを維持する。
【0026】
ローカルの物体からの遮蔽のために衛星信号が失われた場合、影響を受けたチャネルを協働追跡システムによってサポートすることができる。協働追跡システム内で、補正を計算することができる。補正により、遮蔽の時間中に測定値の外挿が可能になり、信号が再び受信されたときの高速なPLLの再獲得が保証される。チャネル・インジケータにより、測定のプロセスおよび衛星チャネルのパラメータの変更における信号品質の推定が可能になる。信号が失われたとき、1つまたは複数のチャネルがオープン・ステータスを維持する。残りのチャネルは探索ステータスを維持する。
【0027】
本発明のこれらおよび他の利点は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照すれば当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態による複数のチャネルをもつ適応ナビゲーション受信機のブロック図である。
図2】本発明の一実施形態による図1の複数のチャネル中の案内チャネルのより詳細なブロック図である。
図3】本発明の一実施形態による図1の複数のチャネル中の被案内チャネルのより詳細なブロック図である。
図4】本発明の一実施形態による図1の複数のチャネル中のオープン・チャネルのより詳細なブロック図である。
図5】本発明の一実施形態による協働追跡システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
異なるナビゲーション衛星システムの衛星、またはコンスタレーション中の異なる位置をもつ衛星の信頼性は、変動することがある。特に、衛星から受信した信号の品質は、異なる観測周期(すなわち、観測セッション)中にかなり変化することがある。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、「適応」ナビゲーション受信機は、受信信号の品質に応じて動作が変動するチャネルを含む。図1は、動作が変動する複数のチャネルを有する適応受信機100のブロック図を示す。各チャネルは、1つまたは複数のPLLおよびDLLを含む。したがって、各チャネルは衛星を追跡することができる。
【0031】
各チャネルは、4つの可能なステータスのうちの1つを周期的に(周期Tで)収集する。各ステータスは、異なるパラメータおよび/または機能的アプリケーションを有する。ステータス周期Tは、座標情報を出力する周期に対応し、たとえば、0.1sから10sまで選択される。
【0032】
一実施形態では、各チャネルは、次の4つのステータスのうちの1つを維持する(すなわち、割り当てられ、保持する)ことができる。
・案内ステータス、
・被案内ステータス、
・オープン・ステータス(開回路とも呼ばれる)、または
・探索ステータス。
本明細書で使用する、案内チャネル108など、案内ステータスを有するチャネルは、案内チャネルと呼ばれる。同様に、被案内チャネル112など、被案内ステータスを有するチャネルは、被案内チャネルと呼ばれる。オープン・チャネル116など、開回路を有するチャネルは、オープン・チャネルと呼ばれる。探索ステータスを有するチャネルは、探索チャネルと呼ばれる。したがって、受信機では、各周期Tで、異なるステータスをもつ異なる数のチャネルがある。
・Jは案内チャネル108の数であり、
・Kは被案内チャネル112の数であり、
・Rはオープン・チャネル116の数であり、
・残りのチャネルは探索チャネル120である。
以下でより詳細に説明するように、チャネルは、それらのステータスに応じて異なる機能を有する。
【0033】
受信機100は、衛星から受信した信号を処理するいくつかのステップを実行する。探索システムは、チャネルごとにターゲット指示を出力し、周波数および遅延にロックされた信号をも出力する。25Hzの帯域幅をもつ一実施形態では、3次PLLが周波数ターゲット指示を使用してロッキングを開始する。本明細書では、これらの3次PLLを自律PLLとも呼ぶ。
【0034】
次いで、受信機100は、情報シンボルの限界を決定し、エフェメリスをも受信する。各チャネルにおけるシンボル限界が決定されると、信号品質を推定するチャネル・インジケータが動作を開始する。さらに、エフェメリスを受信すると、受信機は、その座標を決定し、(衛星移動によって生じる)予測される速度および加速度を計算する。次いで、以下でより詳細に説明するように、協働追跡システムが動作を開始する。
【0035】
案内チャネルおよび被案内チャネルの出力(すなわち、位相および擬似距離)がナビゲータ124に送信される。よく知られているように、ナビゲータ124は、協働追跡システム128からの出力とともに、これらの位相および擬似距離を使用して、受信機100の座標を決定する。
【0036】
より詳細には、各j番目の案内チャネル108(持続時間Tをもつ各周期で4≦j≦J)に関して、各j番目の案内チャネル108は、1つのj番目の衛星からの信号を自律的に処理する。案内チャネルは、完全位相および擬似距離を一緒に測定する自律PLLおよび被案内DLLを含む。上述のように、完全位相および擬似距離は、受信機の座標を決定するためにナビゲータ124に送信される。案内チャネルの数は、(時間推定値を含む)測定された座標の数と同じである。等価なPLL帯域幅は、受信機の動きによって生じる動的妨害を追跡するのに十分に広い帯域幅(たとえば、20〜25Hz)とすることができる。
【0037】
被案内チャネルのターゲット指示ブロック用の信号は、自律PLL(図1のfNCO122)から案内チャネル中で発生する。さらに、チャネル中のDLLは被案内である。被案内DLLは、PLLから遅延レートに関する情報を収集する。DLL帯域幅は、PLLの帯域幅よりも狭くなることがある(たとえば、1〜4Hz)。
【0038】
一実施形態では、各チャネルは、対応するチャネル・インジケータ・ブロックを有する。チャネル・インジケータ・ブロックは、関連するチャネルのステータスを変更することができる。特に、チャネル・インジケータ・ブロックは、受信した衛星信号のパラメータを分析し、必要ならば、関連するチャネルのステータスを変更するコマンドを出力する。各チャネル・インジケータは、コヒーレント・エネルギー・インジケータまたは位相(角度)インジケータとすることができる。チャネル・インジケータの入力値は、直交信号成分I、Qである。コヒーレント・エネルギー・インジケータの一実施形態では、成分I、Qは、PLL帯域幅に対してほぼ逆の時間を求める摺動平均法によって平滑化される。たとえば、案内PLLの場合、その時間は40msである。したがって、信号IおよびQが決定される。
【0039】
(持続時間Tをもつ)各周期で、エネルギー品質信号が発生し、次式によって与えられる。
=[(I+(Q
信号Sは入力信号電力に比例し、再計算して、所与の衛星のチャネルについて、エネルギー潜在力の推定値、または1Hz帯域内の信号対雑音比(SNR)を得ることができる。エネルギー品質信号は、PLLの相対的な追跡精度を特徴付けることができる。これにより、この信号を使用して、LSM変換における重み係数Wを割り当てることが可能になる。
【0040】
位相品質信号は、位相検波器中でも発生する。位相検波器はPLL弁別器と同様である。この信号は、さらに(たとえば、演算子Σを用いて)平滑化される。
=Σabs(Q/I
ステータスを変更するコマンドは、信号Sに基づいて、あるいは信号SИSの組合せに従って生成される。
【0041】
一実施形態では、信号Sは、高しきい値および低しきい値と比較される。Sが高しきい値と同じ場合、検討中のチャネルは案内チャネルと考えられる。Sが低しきい値と高しきい値の間にある場合、チャネルは被案内チャネルである。Sが低しきい値よりもより小さい場合、開回路が割り当てられる。一実施形態では、高しきい値は40〜45dB/HzのSNRで設定され、低しきい値は25〜30dB/Hzのレベルで設定される。別の実施形態では、Sが低しきい値よりも小さい場合、あるいはSが0.2〜0.5radを超える場合、開回路が割り当てられる。チャネル・インジケータはあらゆるステータスで機能するが、しきい値はステータスに応じて異なる方法で設定できる。
【0042】
より詳細には、各k番目の被案内チャネル112(持続時間Tをもつ各周期で0≦k≦K)に関して、信号が広帯域PLLにとって(チャネル・インジケータによれば)弱すぎる場合、各k番目の被案内チャネルはk番目の衛星信号を処理する。被案内チャネルの等価なPLL帯域(たとえば、5〜7Hz)は、案内チャネルのそれ(たとえば、20〜25Hz)よりも狭い。受信機の動きを確実に追跡するために、案内チャネルから情報を受信する、ターゲット指示ブロックからの案内信号が、被案内チャネルPLLに適用される。
【0043】
被案内チャネルの完全位相および擬似距離は、ナビゲータ124に転送される。さらに、チャネル・インジケータからのコマンドは、被案内チャネルのステータスを被案内ステータスから案内ステータスまたは開回路に変更することができる。
【0044】
チャネル・インジケータのブロックが、r番目の信号の電力がPLLを確実に追跡するために十分でないことを示す場合、および/またはその測定値が異常な場合、開回路はr番目の衛星チャネル(0≦r≦R)に割り当てられる。そのような状況は、一般に長時間持続せず、ローカルの物体からの短期の遮蔽、または激しい干渉による信号のフェージングによって生じることがある。チャネルは、たとえば、10〜20sの間、開回路を有することができ、次いで、チャネルは被案内ステータスまたは探索ステータスを得る。
【0045】
オープン・チャネルの測定値は、ナビゲータ124に送信されないが、遮蔽された信号の位相を追跡することは、外挿のために依然として行われている。一実施形態では、オープン・チャネルの追跡システムは、スタンバイ・モードで作動し、コマンドがステータスを変更するのを待つ。ステータスを(「案内」ステータスまたは「被案内」ステータスに)変更するコマンドが受信されると、スタンバイ・モードは、新しい探索およびロックなしにr番目の衛星信号の追跡が再開することを保証する。さらに、PLLは、サイクルスリップなしに同じ定常点で追跡を開始する。
【0046】
探索チャネルは、衛星信号を探索し、衛星信号にロックする。探索チャネルは、周波数および信号遅延によって新たに現れた衛星を探索することができる。観測セッションの初めに、大部分の受信機チャネルは探索ステータスを割り当てられる。セッションでは、可視ゾーン中の新しい衛星に関する情報、または所定の周期(たとえば、10〜20s)の間に信号が失われたチャネルに関する情報に基づくコマンドに従って、空いているチャネルに探索ステータスが割り当てられる。
【0047】
上述のように、受信機100は協働追跡システム128をも含む。協働追跡システム128は受信機100の衛星追跡能力を改善する。この改善は、2つのタイプの同時PLL(すなわち、二重回路PLL)に基づく。1つのPLL回路は、受信機ダイナミクスと内部発振器とを含む、受信機の見掛けのダイナミクスを追跡する。このPLL回路は、視野内のすべての衛星の総電力を使用し、20Hz程度の広い帯域幅を有することができる。第2のタイプのPLL回路は、各衛星チャネルの見掛けのダイナミクスを追跡するように設計される。チャネルごとに専用の二重回路PLLがある。これらの個々のループは、約2Hzの比較的狭い帯域幅を有する。協働追跡システム128は、高い干渉の領域内での衛星信号の追跡を可能にする。
【0048】
より詳細には、協働追跡システムは、衛星信号を逃したとき、案内チャネルおよび被案内チャネルの完全位相を共同処理し、推定し、スタンバイ・モードでオープン・チャネルの位相補正を実行する。周波数および遅延による特殊な探索なしに信号が出現するとすぐに、補正はチャネルのステータスを開回路から被案内ステータスに変更する。それは、PLLが同じ定常点に保持されることをも保証する。
【0049】
さらに、協働追跡システム128は、1つまたは複数のオープン・チャネル116を含むすべてのチャネルの位相を推定することができる。協働追跡システム128は、位相を推定するとき、受信機の移動によって生じるオープン・チャネルの位相変化を考慮することができる。一実施形態では、アクティブ・チャネル(すなわち、追跡を生成するチャネル)に関する情報を使用する。さらに、遮蔽時間中の低速の個々の位相ドリフトの補正を外挿することができる。
【0050】
図2は、図1の案内チャネル108のうちの1つのより詳細なブロック図である。特に、図2は、1つのj番目の案内チャネル用のPLLの一実施形態を示す。PLLは、j番目の衛星信号搬送波の完全位相を測定し、被案内チャネル用の制御信号fjNCOを出力する。
【0051】
ステータス変更コマンドによって制御されるスイッチがある。スイッチは、追加のブロックを接続し、メイン・ブロックのパラメータを変更することができる。
【0052】
完全位相の測定は、周波数位相制御とともにデジタル3次(無定位)PLLによって実施される。PLLの制御周波数は、たとえば、150〜250Hzの範囲内で選択される。位相検波器(PD)205は、次式に従って誤差信号Zd207を出力する。
Zd=atan(Q/I
雑音余裕度を高めるために、いくつかのステップを行うことができる。たとえば、受信したバイナリ・シンボル
【数1】
の符号を、評価し、除去することができる。したがって、次式を計算する。
【数2】
この後、PLLの帯域幅と同じ帯域幅を有するフィルタで、成分
【数3】
をフィルタ処理することができる。フィルタ処理の結果は
【数4】
である。次いで、式
【数5】
を使用して誤差信号207を計算する。
【0053】
誤差信号207は、無定位次数とPLL帯域幅とを決定するループ・フィルタを通る。一実施形態では、ループ・フィルタは、アキュムレータΣ208およびΣ209をもつ2つの積分回路を含む。ループ・フィルタは、伝達関数αをもつ比例回路210をも含む。PLL帯域幅は、たとえば、20〜25Hzの範囲内の値を有する。
【0054】
ループ・フィルタの積分回路の出力は、NCO212の周波数を制御する。アキュムレータ・ブロック214およびデジタル移相器215を使用して、比例回路210の出力はNCO212の出力位相に位相シフトを追加し、基準信号が直交成分の前者に発生する。
【0055】
案内PLLのNCO212に適用される周波数は、計算されたドップラー周波数シフトZsj1...Zs4(衛星移動)とループ・フィルタからの周波数シフトとの合計として生成される。後者のシフトは、基準不安定性によって生じるシフトとドップラー・シフト(受信機移動)との合計である。
【0056】
第1のスイッチ218および第2のスイッチ220は、一度に5ms間(すなわち、5msの周期)、閉じている。スイッチ218、220が閉じているとき、周波数制御信号が被案内チャネルに適用される。
【0057】
図3は、図1に示すk番目の被案内チャネル112のうちの1つのより詳細なブロック図である。一実施形態では、被案内チャネルは2つの主要な構成要素を含む。第1の構成要素は主回路310である。第2の構成要素はターゲット指示ブロック315である。
【0058】
上述のように、位相検波器205は信号Zd207をループ・フィルタに出力する。被案内チャネルの2次ループ・フィルタは、伝達関数αをもつ比例回路320と、アキュムレータΣ325をもつ積分回路とからなる。次いで、予測信号Zsk327が、k番目の衛星の移動によって生じる周波数変化を補償するためにループに送信され、ターゲット指示ブロック315から案内信号fが送信される。PLLは、被案内チャネルのNCO330によって閉じられる。
【0059】
NCO330の周波数制御が使用される場合、各案内PLLからの共通周波数制御信号335が被案内チャネル中の行列G337に供給される。(図2のNCO212に示すように)NCO330の別個の周波数位相制御が使用される場合、各案内PLLからの等価な周波数制御信号が行列G337に供給される。等価な周波数制御信号は、積分回路の共通出力からの実際の周波数制御信号と、比例回路によって生成された(サイクルTを制御することによって分割された)NCO位相のシフトとの合計である。同じ信号は、DLLを制御することに使用される。
【0060】
ターゲット指示ブロック315は、各案内衛星から(j番目の衛星から)制御コードfjNCO335を受信する。対応する案内衛星の周波数変化の予測が、この制御コード335から減算される。得られた差は、LSM(行列G)337で処理され、次いで、被案内チャネル(行列H)340の衛星方向に投射される。したがって、被案内チャネルについて(各k番目のチャネルについて)案内信号fが形成される。
【0061】
図4は、オープン・チャネルの一実施形態のより詳細なブロック図である。ある瞬間にループを開くコマンドは、チャネル・インジケータから送信される。次の周期Tの開始から、このチャネルのNCO405は、r番目の衛星の移動予測の信号と協働追跡システムからの信号とによって制御される。
【0062】
r番目の衛星の加速度の予測410はアキュムレータΣ415に送信され、アキュムレータ415は現在の周波数増分を出力する。この値は、開く瞬間に同じ衛星の予測された周波数420に追加される。次いで、行列H(たとえば、図3の行列H340)のr番目のチャネルの出力からの(Tの周期の)周波数推定値425が、加算ブロック430に送信される。得られた周波数は、衛星信号の遮蔽中にNCO405を制御する。NCO405の出力435を使用して、チャネル・インジケータに送信される直交成分I、Qを生成する。
【0063】
衛星信号がもはや(たとえば、群葉によって)遮蔽されなくなると、チャネル・インジケータは信号のステータスを「被案内」ステータスに変更するコマンドを出力する。NCO位相は、さらに(以下でより詳細に説明するように)協働追跡システムからの信号440によって補正される。
【0064】
一実施形態では、衛星信号が、たとえば、10〜20sより長い間失われた場合、オープン・チャネルは探索チャネルに変更される。
【0065】
図5は、協働追跡システム500の一実施形態のブロック図である。案内チャネルおよび被案内チャネルの完全位相φ、φは、協働追跡システム500に入力される。
【0066】
オープン・チャネルのためのターゲット指示
【数6】
505は、これらのオープン・チャネルの完全位相から生成される。衛星が遮蔽されたとき、ターゲット指示
【数7】
505を使用して、NCO位相を予測し、補正する。スイッチ510a、510bが閉じているとき、このことが行われる。
【0067】
一実施形態では、協働追跡システム500は、(案内衛星および被案内衛星の数に従う)(J+K個の)狭帯域の個々のループと、(たとえば、座標x、y、z、cτに従う)複数(たとえば、4個)の比例共通ループとを含む。
【0068】
共通ループ(より正確には、それらの行列G515およびH520)は、受信した衛星信号を使用して、完全位相φの組から、すべての衛星のためのターゲット指示
【数8】
(たとえば、信号525)を生成する。これらのターゲット指示は、受信機の移動および水晶変動によって生じた(LSMで得られた)完全位相増分の推定値に等しい。
【0069】
各個々のループは、大気変動、エフェメリス誤差および搭載基準の不安定性によって生じる影響のレート推定値x530を生成する。この推定値を使用して、(オープン・チャネルにおける)衛星の遮蔽時の完全位相
【数9】
535を予測する。遮蔽中に、完全位相
【数10】
535は、受信機の座標を決定するために使用できる情報をナビゲータ540に提供することができる。
【0070】
個々のループの最適パラメータは周期Tに依存する。たとえば、T=1sでは、最適パラメータは、α=0.51、β=0.09、Δf=0.17Hzとすることができる。T=0.1sでは、最適パラメータは、α=0.51、β=0.009、Δf=1.32Hzとすることができる。T=0.02sでは、最適パラメータは、α=0.16、β=10−3、Δf=2Hzとすることができる。
【0071】
協働追跡システム500での計算のシーケンスは次の通り行われ、ただし、上付き文字SVは、値が衛星移動予測の計算で得られることを意味する。
iは周期T(元期)の数であり、
jは衛星チャネルの数である。
1)完全位相予測の計算。
【数11】
ただし、
【数12】
は、前の元期、すなわち(i−1)番目の完全位相の最終推定値であり、
χi−1は、アキュムレータΣ中の値であり、
【数13】
は、衛星の移動によって生じる(i−1)番目およびi番目の元期からの時間の完全位相増分の予測である。
2)観測された完全位相
【数14】
とその予測
【数15】
との間の差の計算。
【数16】
3)能動(案内および被案内)衛星のみについてLSM処理の差
【数17】
を使用した、すべてのチャネルについてのターゲット指示
【数18】
の計算。これを行うために、以下のステップを実行する。
a)(次元J+Kをもつ)能動衛星について、差
【数19】
のベクトルを編集する。
b)ユニットカラムを追加して、これらの衛星について方向余弦の行列Hを編集する。
c)能動衛星について重み係数Wのベクトルを編集する。
d)これらの衛星について行列G=(HWH)−1を計算する。
e)行列Gに差のベクトルを乗算し、それによって幾何学座標Δx、Δy、Δzおよび時間cΔτの偏差の4成分ベクトルを得る。
f)すべての衛星(案内チャネル、被案内チャネル、オープン・チャネル)を使用して、別の行列Hを生成する。
g)この行列Hに幾何学座標および時間の偏差の4成分ベクトルを乗算し、それによって、すべての衛星のためのターゲット指示を得る。
4)案内チャネルおよび被案内チャネルについての残差の計算。
【数20】
5)状態ベクトルの補正。
=xi−1+βδ
【数21】
6)オープン・チャネルNCOの補正位相の計算。
【数22】
すべてのこれらの計算は、周期Tで生成される。値
【数23】
は、衛星遮蔽の瞬間に決定され、遮蔽の時間中、その値は変化しない。
【0072】
前述の発明を実施するための形態は、あらゆる点で例示的および代表的であるが、限定的ではないとして理解されるものであり、本明細書で開示された本発明の範囲は、特許法によって許可される最大限の幅に従って解釈されるものとして、発明を実施するための形態からではなくむしろ特許請求の範囲から決定されるものである。本明細書で図示および説明した実施形態は本発明の原理を例示するものにすぎず、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく様々な変更が当業者によって実施できることを理解されたい。当業者は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく様々な他の特徴の組合せを実施することができる。
図1
図2
図3
図4
図5