【文献】
J. Bacteriol. ,1977年,Vol.130, No.1,pp.429-440
【文献】
J. Gen. Microbiol.,1962年,Vol.27,pp.41-50
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの活性が親株に比べ低下又は喪失した微生物の作製
本発明は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性が親株に比べて低下又は喪失した微生物を用いたL−アミノ酸の製造法を提供する。したがって、本発明の製造法に用いられる微生物は、L−アミノ酸を生成する能力を有し、かつアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を有する微生物の、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を低下又は喪失させることにより得ることができる。
【0012】
本発明における親株とは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を有する微生物であれば、野生株であってもよいし、該野生株から人工的に育種された株でもよく、また親株はL−アミノ酸を生成する能力を有していてもよいし、有していなくてもよい。親株が有するL−アミノ酸を生成する能力は、該親株が元来有するものであっても良いし、後述する方法によって人工的に付与されるものであっても良い。親株がL−アミノ酸を生成する能力を有していない場合、該親株のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を低下又は喪失させることに加え、後述する方法によってL−アミノ酸を生成する能力を人工的に付与することにより、本発明の方法で用いられる微生物を取得することができる。
【0013】
親株としては、例えば、Neidhardt, F.C.らにより記載されている細菌(Escherichia coli and Salmonella, Editor in Chief: F.C. Neidhardt, ASM Press, Washington D.C., 1996, (1201ページ、Table 1))をあげることができる。好ましくは、例えば、エシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、シュードモナス属又はストレプトマイセス属等に属する細菌を挙げることができ、より好ましい細菌としてはエシェリヒア・コリ、コリネバクテリウム・グルタミクム、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス、コリネバクテリウム・ラクトファーメンタム、コリネバクテリウム・フラバム、コリネバクテリウム・エフィシェンス、バチルス・サチルス、バチルス・メガテリウム、セラチア・マルセッセンス、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・エルギノーサ、ストレプトマイセス・セリカラー又はストレプトミセス・リビダンスを挙げることができ、特に好ましくはエシェリヒア・コリを挙げることができる。
【0014】
L-アミノ酸を生成する能力を有する微生物は、公知の方法により親株を改良し、L−アミノ酸を生成する能力を人工的に付与することにより取得することができる。該公知の方法としては、
(a)L−アミノ酸の生合成を制御する機構の少なくとも1つを緩和又は解除する方法、
(b)L−アミノ酸の生合成に関与する酵素の少なくとも1つを発現強化する方法、
(c)L−アミノ酸の生合成に関与する酵素遺伝子の少なくとも1つのコピー数を増加させる方法、
(d)L−アミノ酸の生合成経路から該L−アミノ酸以外の代謝産物へ分岐する代謝経路の少なくとも1つを弱化又は遮断する方法、及び
(e)親株に比べ、L−アミノ酸のアナログに対する耐性度が高い細胞株を選択する方法、
などをあげることができ、上記公知の方法は単独又は組み合わせて用いることができる。
上記(a)〜(e)の具体的な方法は、上記(a)の方法に関してはAgric. Biol. Chem., 43, 105-111 (1979)、J. Bacteriol., 110, 761-763 (1972)及びAppl. Microbiol. Biotechnol., 39, 318-323 (1993)などに記載されている。上記(b)の方法に関しては、Agric. Biol. Chem., 43, 105-111 (1979)及びJ. Bacteriol., 110, 761-763 (1972)などに記載されている。上記(c)の方法に関しては、Appl. Microbiol. Biotechnol., 39, 318-323 (1993)及びAgric. Biol. Chem., 39, 371-377 (1987)などに記載されている。上記(d)の方法に関しては、Appl. Environ. Microbiol., 38, 181-190 (1979)及びAgric. Biol. Chem., 42, 1773-1778 (1978)などに記載されている。上記(e)の方法に関しては、Agric. Biol. Chem., 36, 1675-1684 (1972)、Agric. Biol. Chem., 41, 109-116 (1977)、Agric. Biol. Chem. , 37, 2013-2023 (1973)及びAgric. Biol. Chem., 51, 2089-2094 (1987)などに記載されている。上記文献等を参考に各種アミノ酸を生成、蓄積する能力を有する微生物を取得することができる。
【0015】
さらに上記(a)〜(e)のいずれか又は組み合わせた方法によるアミノ酸を生成、蓄積する能力を有する微生物の育種方法については、Biotechnology 2nd ed., Vol.6, Products of Primary Metabolism (VCH Verlagsgesellschaft mbH, Weinheim, 1996) section 14a, 14bやAdvances in Biochemical Engineering/ Biotechnology 79, 1-35 (2003)、アミノ酸発酵、学会出版センター、相田 浩ら(1986)に多くの例が記載されており、また上記以外にも具体的なアミノ酸を生成、蓄積する能力を有する微生物の育種方法は、特開2003-164297、Agric. Biol. Chem., 39, 153-160 (1975)、Agric. Biol. Chem., 39, 1149-1153 (1975)、特開昭58-13599、J. Gen. Appl. Microbiol., 4, 272-283 (1958)、特開昭63-94985、Agric. Biol. Chem., 37, 2013-2023 (1973)、WO97/15673、特開昭56-18596、特開昭56-144092及び特表2003-511086など数多くの報告があり、上記文献等を参照することにより1種以上のアミノ酸を生産する能力を有する微生物を取得することができる。
【0016】
本発明におけるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼは、具体的には配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;又は配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質であり得る。
【0017】
配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列とは、例えば、1〜100個、好ましくは1〜50個、より好ましくは1〜30個、さらにより好ましくは1〜20個、最も好ましくは1〜10個、1〜5個、3個、2個又は1個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列であり得る。
【0018】
配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列とは、例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは97%、98%又は99%以上の相同性を有するアミノ酸配列をいう。アミノ酸配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J. Mol. Biol., 215, 403(1990)]。BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメータは例えばscore=50、wordlength=3とすることができる。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いることができる。
【0019】
本発明の製造法に用いられる微生物において、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性が親株に比べて低下又は喪失していることは、当該分野で公知の方法にしたがって測定することができるが、例えば、本発明の製造法に用いられる微生物及び親株それぞれについて、J Bacteriol., 130(1), 429-40 (1977)に記載の方法によりアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの活性を測定し、それらを比較することにより確認できる。
【0020】
本発明の製造法に用いられる微生物は、例えば、親株を通常の突然変異処理法、組み換えDNA技術等による遺伝子置換法、細胞融合法、あるいは、形質導入法等の、微生物に変異を導入することのできる方法、又はアンチセンス法等のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子の発現を抑制できる方法等に供することよって製造することができる。
【0021】
突然変異処理法としては、例えば、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)を用いる方法(微生物実験マニュアル、1986年、131頁、講談社サイエンティフィック社)、エチルニトロソウレア、ベンゾピレン、アクリジン色素等による処理、及び紫外線照射法等をあげることができる。また、種々のアルキル化剤や発癌物質も変異原として用いることができる。変異原を細胞に作用させる方法としては、例えば、組織培養の技術 第三版(朝倉書店) 日本組織培養学会編(1996)、ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genet.), 314 (2000)等に記載の方法が用いられ得る。
【0022】
組み換えDNA技術による遺伝子置換法としては、aspCのDNAに1以上の塩基の置換、欠失、又は付加を導入し、相同組み換え等により該DNAを親株の染色体に組み込み、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNAを置換する方法をあげることができる。
【0023】
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNAとしては、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAであればいずれでもよく、例えば、配列番号1記載の塩基配列を有するDNAをあげることができる。aspCのDNAとしては例えば、GenBank/EMBL/DDBJ Accession NC000913. 2, gi:49175990の配列の983741から984931番目までの塩基配列を有するDNAをあげることができる。
【0024】
あるいは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNAは、配列番号1で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAであり得る。ストリンジェント条件下とは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons,6.3.1-6.3.6, 1999に記載される条件、例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)/45℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.2×SSC/0.1% SDS/50〜65℃での一回以上の洗浄等が挙げられるが、当業者であれば、これと同等のストリンジェンシーを与えるハイブリダイゼーションの条件を適宜選択することができる。
【0025】
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNAはまた、配列番号1で表される塩基配列と80%以上の相同性を有し、かつアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAであってもよい。好ましくは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNAとしては、配列番号1で表される塩基配列と少なくとも85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。塩基配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメータは例えばScore=100、wordlength=12とし得る。
【0026】
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNAは、公知のエシェリヒア・コリ由来のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNA塩基配列情報に基づいて、PCR法等により取得することができる。
【0027】
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNAに1以上の塩基の置換、欠失、又は付加を導入する方法としては、例えば、Molecular cloning: a laboratory manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)〔以下、モレキュラー・クローニング第3版と略す〕、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、等に記載されている部位特異的変異導入法に準ずる方法をあげることができる。
【0028】
また、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼのORF(オープンリーディングフレーム)中に薬剤耐性を付与する遺伝子を挿入したDNA断片をPCR法により作製することもできる。
【0029】
変異を有するDNA断片を親株へ導入する方法としては、例えば、ファージ由来のλRedリコンビナーゼを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 6640 (2000), Mol. Microbiol., 55, 137(2005), Biosci. Biotechnol. Biochem., 71, 2905 (2007)]をあげることができる。
【0030】
抗生物質耐性マーカーに応じた抗生物質に耐性を示す株を取得することにより、該組み換え体プラスミドが染色体に組み込まれた形質転換株を取得することができる。
【0031】
さらに、変異体DNAと共に染色体上に組み込まれた枯草菌レバンシュークラーゼによって大腸菌がシュークロース感受性となることを利用した選択法や、ストレプトマイシン耐性の変異rpsL遺伝子を有する大腸菌に野生型rpsL遺伝子を組み込むことによって大腸菌がストレプトマイシン感受性となることを利用した選択法[Mol. Microbiol., 55, 137(2005), Biosci. Biotechnol. Biochem., 71, 2905 (2007)]等を用いて、親株の染色体上のアスパラギン酸アミノトランフェラーゼをコードするDNAが変異体DNAに置換された株を取得することができる。
【0032】
以上の方法で、親株の染色体上の遺伝子置換を行うことができるが、上記の方法に限らず、微生物の染色体上の遺伝子を置換できる方法であれば他の遺伝子置換法も用いることができる。
【0033】
親株の染色体上のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNAに置換、欠失、又は付加を導入する方法としては、他にもバクテリオファージや接合を利用する方法をあげることができ、例えば、Bacterial and Bacteriophage Genetics, Springer-Verlag (1981-2000)に記載の方法をあげることができる。
【0034】
変異を導入する塩基の数は、置換、欠失、又は付加によって、該DNAがコードするアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を低下又は喪失させることができる数であれば限定されないが、例えば1〜300個、好ましくは1〜150個、より好ましくは1〜100個、さらにより好ましくは1〜50個、最も好ましくは1〜30個、1〜20個、1〜10個、1〜5個、3個、2個又は1個であり得る。
【0035】
変異を導入する部位は、該変異によってアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を低下又は喪失させることができる部位であれば必ずしもアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNAの有する塩基配列中に限られないが、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNAの転写・翻訳調節領域(以下、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子という)中であることが好ましく、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNAの有する塩基配列中であることがさらに好ましい。
【0036】
塩基置換を導入してアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を低下又は喪失させる方法としては、例えば、ナンセンス変異の導入による方法があげられる。ナンセンス変異を導入する方法としては、例えば、終止コドンを含むプライマー及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNAを用いてPCRを行い、得られたナンセンス変異が導入されたアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするDNAを用いて親株の染色体上のaspCを置換する方法があげられる。
【0037】
塩基配列の欠失を導入することによってアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を低下又は喪失させる方法としては、例えば、PCRを用いてアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子の5’側と3’側を増幅し、得られた断片をPCRにより結合させて得られるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子を染色体に組み込む方法等をあげることができる。
【0038】
塩基配列を欠失させたアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子の例としては、例えば、以下の方法により得られる遺伝子をあげることができる。まず、配列番号9、又は10と16のプライマーを用いて、大腸菌由来のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子の5’側を、配列番号11、又は12と15のプライマーを用いて3’側を増幅する。増幅された2つの断片を鋳型として、配列番号9、又は10と11、又は12のプライマーを用いてPCRを行うことにより配列番号1記載の塩基配列の第1〜988番目の塩基が欠失したアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子を得る。
【0039】
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子に変異を導入せずにアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を低下させることもできる。このような方法として、例えば、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードする標的mRNAの有する塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列又はその一部を含むオリゴヌクレオチド又はRNAを該微生物に導入し、標的mRNAと特異的かつ安定した二重鎖を形成して結合することにより、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子の発現を抑制する、いわゆるアンチセンス法をあげることができる。
【0040】
「標的mRNAの有する塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列又はその一部」とは、標的のmRNAに特異的に結合することができ、且つ該mRNAからのタンパク質の翻訳を阻害し得るものであれば、その長さや位置に特に制限はないが、配列特異性の面から、標的配列に相補的もしくは実質的に相補的な部分を少なくとも10塩基以上、好ましくは約15塩基以上、より好ましくは約20塩基以上含むものである。
【0041】
アンチセンスRNAのほか、標的mRNAに相補的なオリゴRNAとその相補鎖とからなる二本鎖RNA(いわゆるsiRNA)又は標的mRNAに対するリボザイムを導入することによってもまた、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を低下させることができる。
【0042】
上記の操作を行って得られた微生物の中から、前述のようにアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を測定し、親株と比較することによって、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性が低下又は喪失した微生物を得ることができる。
【0043】
2.本発明の製造法
本発明はまた、上記1の方法で調製された、L−アミノ酸を生成する能力を有し、かつアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性が親株に比べて低下又は喪失した微生物を培地に培養し、培養物中にL−アミノ酸を生成、蓄積させ、該培養物からL−アミノ酸を採取することによる、L−アミノ酸の製造法を提供する。
【0044】
本発明の製造法で用いられる培地は、炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンなど本発明の微生物の増殖、及びL−アミノ酸の生合成に必要な栄養素を含む限り、合成培地、天然培地のいずれでもよい。
【0045】
炭素源としては、使用する微生物が資化できる炭素源であればいずれでもよく、グルコース、フラクトースのような糖質、エタノール、グリセロールのようなアルコール類、酢酸のような有機酸類などをあげることができる。
【0046】
窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、アミン等の窒素化合物、ペプトン、大豆加水分解物のような天然窒素源などをあげることができる。
【0047】
無機塩としては、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、炭酸カリウムなどをあげることができる。
【0048】
ビタミンとしては、ビオチンやチアミンなどをあげることができる。さらに必要に応じて本発明の微生物が生育に要求する物質(例えばアミノ酸要求性の微生物であれば要求アミノ酸)を添加することができる。
【0049】
培養は、好ましくは振とう培養や通気攪拌培養のような好気的条件で行う。培養温度は20〜50℃、好ましくは20〜42℃、より好ましくは28〜38℃である。培養pHは5〜9、好ましくは6〜7.5である。培養時間は、5時間〜5日間、好ましくは16時間〜3日間である。
【0050】
培養物中に蓄積したL−アミノ酸は、通常の精製方法によって採取することができる。例えばL−アミノ酸は、培養後、遠心分離などで菌体や固形物を除いたあと、イオン交換、濃縮、結晶分別によって採取することができる。
【0051】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0052】
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子を欠失した菌株の造成
(1)cat−sacBカセットの作製
クロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)とレバンシュークラーゼ遺伝子(sacB)を含むDNA断片は以下のようにして調製した。
pHSG398(タカラバイオ社製)を鋳型として0.1μg、配列番号3の配列を有する合成DNA、及び配列番号4の配列を有する合成DNAをプライマーとして各0.5μmol/L、2.5unitsのPyrobest DNAポリメラーゼ(タカラバイオ製)、5μLのPyrobest DNAポリメラーゼ用×10緩衝液(タカラバイオ製)、各200μmol/LのdNTP(dATP、dGTP、dCTP及びdTTP)を含む反応液50μLを調製し、96℃で15秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間の工程を30回繰り返すことによりPCR反応を行った。増幅されたDNA断片を常法にて精製した後、制限酵素BamHIとSalIで消化し、アガロース電気泳動によりDNA断片を分離した後、Wizard SV Gel and PCR Clean−Up System(Promega社製)(以下、DNA断片精製キットと略す)を用いて精製し、クロラムフェニコール耐性遺伝子断片を得た。
さらにpMOB3(ATCC77282由来)を鋳型として配列番号5の配列を有する合成DNA、及び配列番号6の配列を有する合成DNAをプライマーにして同様にPCR反応を行い、常法にて精製した。得られたDNA断片を制限酵素SphIとSalIで消化した後、アガロース電気泳動とDNA精製キットを用いて精製し、レバンシュークラーゼ遺伝子断片を得た。pHSG298(タカラバイオ社製)を制限酵素BamHIとSphIで消化し、アガロース電気泳動とDNA断片精製キットを用いて精製した。上記3つのDNA断片をDNA Ligation Kit Ver.2.1(タカラバイオ社製)を用いて連結し、大腸菌DH5αのコンピテントセル(TOYOBO社製)を形質転換して、クロラムフェニコール耐性を指標に形質転換体を選択した。選択した形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてその構造を解析することによりクロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)とレバンシュークラーゼ遺伝子(sacB)を含むpHSGcatsacBが取得されていることを確認した。得られたプラスミドを鋳型に配列番号7の配列を有する合成DNA、及び配列番号8の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い、DNA断片精製キットにより精製して、クロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)とレバンシュークラーゼ遺伝子(sacB)が含まれるDNA断片(以下、cat−sacBカセットと略す)を得た。
【0053】
(2)aspC破壊用DNA断片、及びaspC領域に挿入したマーカーの除去用DNA断片の作製
各DNA断片は以下のようにして作製した。
大腸菌MG1655株ゲノムDNA(ATCC700926D−5)を鋳型として0.1μg、配列番号9の配列を有する合成DNA、及び配列番号11の配列を有する合成DNAをプライマーとして各0.5μmol/L、2.5unitsのLA Taq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ製)、5μLのLA Taq DNAポリメラーゼ用×10緩衝液(タカラバイオ製)、各400μmol/LのdNTP(dATP、dGTP、dCTP及びdTTP)を含む反応液50μLを調製し、94℃で1分間、55℃で30秒間、72℃で7分間の工程を30回繰り返すことによりPCR反応を行って、aspCを含むDNA断片を増幅した。得られたDNA断片を鋳型に、配列番号9の配列を有する合成DNAと配列番号13の配列を有する合成DNAをプライマーとして用いaspC遺伝子の5’側領域を、配列番号11の配列を有する合成DNAと配列番号14の配列を有する合成DNAをプライマーとして用い3’側領域をそれぞれPCR反応で増幅し、得られたDNA断片をDNA断片精製キットで精製し、得られたDNA断片をDNA断片精製キットで精製した。
次にこの2断片と上記(1)で得られたcat−sacBカセットを混合してこれを鋳型とし、配列番号10の配列を有する合成DNAと配列番号12の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い3断片の連結と増幅を行った。この操作により得られたDNA断片はaspC遺伝子の5’側配列と3’側配列の間にクロラムフェニコール耐性遺伝子とレバンシュークラーゼ遺伝子が挿入された構造をもっている。このDNA断片をaspC破壊用DNA断片として用いた。
さらに配列番号9の配列を有する合成DNA、及び配列番号11の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応で増幅されたaspC遺伝子を含むDNA断片を鋳型にして、配列番号9の配列を有する合成DNAと配列番号16の配列を有する合成DNAをプライマーとして用いaspC遺伝子の5’側領域を、配列番号11の配列を有する合成DNAと配列番号15の配列を有する合成DNAをプライマーとして用い3’側領域をそれぞれPCR反応で増幅し、得られたDNA断片をDNA断片精製キットで精製した。
次にこの2断片を混合してこれを鋳型とし、配列番号10の配列を有する合成DNAと配列番号12の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い2断片の連結と増幅を行った。この操作により得られたDNA断片はaspC遺伝子の5’側領域と3’側領域が直接つながっており、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするaspC遺伝子の大部分が欠損した構造になっている。このDNA断片をaspC領域に挿入したマーカーの除去用DNA断片として用いた。
【0054】
(3)遺伝子置換法によるBW25113株へのaspC欠失変異の導入
上記(2)で得られたaspC破壊用DNA断片をDatsenkoらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97,6640(2000)]に従って大腸菌BW25113/pKD46(CGSC#7739としてYale 大学The Coli Genetic Stock Centerより入手可能)に導入し、染色体DNAとの相同組換えを起こさせた。クロラムフェニコール耐性を指標に形質転換体を選択し、出現したコロニーを採取して、シュークロース60g/Lを含むLB寒天培地〔トリプトン(ディフコ社製)10g、塩化ナトリウム5g、酵母エキス(ディフコ社製)5g、バクトアガー(ディフコ社製)20gを水1Lに含みpH7.2に調整した培地〕上で生育しない株を選抜した後、次にaspC領域に挿入したマーカーの除去用DNA断片を同様に導入した。シュークロース非感受性、かつクロラムフェニコール感受性となった株を選抜して、cat−sacBカセットの削除に成功した株、BWC/pKD46株を得た。また、確認のため、得られた株の染色体DNAを公知の方法で抽出し、これを鋳型として配列番号10の配列を有する合成DNAと配列番号12の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行ったところ、マーカー除去用DNA断片と同じ長さのDNA断片が増幅された。
【実施例2】
【0055】
BW25113株、及びaspC欠失変異株によるL−グルタミン酸生産試験
実施例1で得たaspC欠損株BWC/pKD46株からpKD46プラスミドを脱落させBWC株を得た。具体的には8mLのLB液体培地を入れた試験管に植菌して42℃一晩振とう培養を行い、得られた培養液をLB寒天培地〔トリプトン(ディフコ社製)10g、塩化ナトリウム5g、酵母エキス(ディフコ社製)5g、バクトアガー(ディフコ社製)20gを水1Lに含みpH7.2に調整した培地〕にストリークし、出現したコロニーの中からアンピシリン100mg/Lを含むLB寒天培地で生育できなくなったものを選抜した。
aspC変異株BWC株、及び親株であるBW25113株(CGSC#7736)をLB寒天培地で30℃、24時間培養した後、それぞれをLB液体培地〔トリプトン(ディフコ社製)10g、塩化ナトリウム5g、酵母エキス(ディフコ社製)5gを水1Lに含みpH7.2に調整した培地〕350mLの入った三角フラスコに植菌し、30℃で16時間培養した。
得られた種培養液20mLを、本培養培地〔グルコース45g、酵母エキスパウダー(AY−80;アサヒフードアンドヘルスケア社製)10g/L、硫酸アンモニウム10g、塩化ナトリウム2g/L、リン酸水素二カリウム1.0g、硫酸マグネシウム7水和物0.5g、硫酸鉄7水和物278mg、硫酸マンガン5水和物10mg、チアミン塩酸塩8mgを水1Lに含む。滅菌後に硫酸でpH7.0に調整。〕780mLの入ったジャーファーメンターに植菌し、攪拌回転数毎分800回転、通気毎分1L、30℃で16時間培養した。
遠心分離により培養液から菌体を除去し、上清中のL−アミノ酸の蓄積量をBankらの方法[Anal.Biochem.,240,167(1996)]に従って高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。
結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子aspCを欠損させたBWC株では、L−グルタミン酸(Glu)の生産量が親株BW25113株に比べて明らかに向上していた。
【実施例3】
【0058】
プロリン生産菌及び当該菌株のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子欠失株の造成
(1)プロリン分解酵素遺伝子putA破壊用DNA断片、putA領域に挿入したマーカーの除去用DNA断片、proB破壊用DNA断片、及びproB74変異導入用DNA断片の作製
各DNA断片は以下のようにして作製した。
大腸菌MG1655株ゲノムDNAを鋳型に、配列番号17の配列を有する合成DNA、及び配列番号19の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い、putAを含むDNA断片を増幅した。得られたDNA断片を鋳型にputAの5’領域を配列番号17の配列を有する合成DNAと配列番号21の配列を有する合成DNAで、putAの3’領域を配列番号19の配列を有する合成DNAと配列番号22の配列を有する合成DNAでそれぞれPCR反応により増幅し、得られたDNA断片をDNA断片精製キットで精製した。次にこの2断片と実施例1の(1)で得られたcat−sacBカセットを混合してこれを鋳型とし、配列番号18の配列を有する合成DNAと配列番号20の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い3断片の連結と増幅を行った。この操作により得られたDNA断片はputA遺伝子の5’側配列と3’側配列の間にクロラムフェニコール耐性遺伝子とレバンシュークラーゼ遺伝子が挿入された構造をもっている。このDNA断片をputA破壊用DNA断片として用いた。
さらに配列番号17の配列を有する合成DNA、及び配列番号19の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応で増幅されたputA遺伝子を含むDNA断片を鋳型にして、配列番号17の配列を有する合成DNAと配列番号24の配列を有する合成DNAをプライマーとして用いputA遺伝子の5’側領域を、配列番号19の配列を有する合成DNAと配列番号23の配列を有する合成DNAをプライマーとして用い3’側領域をそれぞれPCR反応で増幅し、得られたDNA断片をDNA断片精製キットで精製した。次にこの2断片を混合してこれを鋳型とし、配列番号18の配列を有する合成DNAと配列番号20の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い2断片の連結と増幅を行った。この操作により得られたDNA断片はputA遺伝子の5’側領域と3’側領域が直接つながっており、putA遺伝子の大部分が欠損した構造になっている。このDNA断片をputA領域に挿入したマーカーの除去用DNA断片として用いた。
次に大腸菌MG1655株ゲノムDNAを鋳型に、配列番号25の配列を有する合成DNA、及び配列番号27の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い、proBを含むDNA断片を増幅した。得られたDNA断片を鋳型にproBの5’’領域を配列番号25の配列を有する合成DNAと配列番号29の配列を有する合成DNAで、proBの3’領域を配列番号27の配列を有する合成DNAと配列番号30の配列を有する合成DNAでそれぞれPCR反応により増幅し、得られたDNA断片をDNA断片精製キットで精製した。次にこの2断片と実施例1の(1)で得られたcat−sacBカセットを混合してこれを鋳型とし、配列番号26の配列を有する合成DNAと配列番号28の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い3断片の連結と増幅を行った。この操作により得られたDNA断片はproB遺伝子の5’側配列と3’側配列の間にクロラムフェニコール耐性遺伝子とレバンシュークラーゼ遺伝子が挿入された構造をもっている。このDNA断片をproB破壊用DNA断片として用いた。
さらに配列番号25、及び27の合成DNAをプライマーとしてPCR反応で増幅されたproB遺伝子を含むDNA断片を鋳型にして、配列番号25の配列を有する合成DNAと配列番号32の配列を有する合成DNAをプライマーとして用いproB遺伝子の5’側領域を、配列番号27の配列を有する合成DNAと配列番号31の配列を有する合成DNAをプライマーとして用い3’側領域をそれぞれPCR反応で増幅し、得られたDNA断片をDNA断片精製キットで精製した。次にこの2断片を混合してこれを鋳型とし、配列番号26の配列を有する合成DNAと配列番号28の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い2断片の連結と増幅を行った。この操作により得られたDNA断片はproB遺伝子の319番目の塩基がAからGに置換されている。この変異が導入されたproB74がコードするγグルタミルキナーゼはプロリンによるフィードバック阻害が解除されていることが報告されている[Gene,64,199(1988)]。この操作によって得られたDNA断片をproB74変異導入用DNA断片として用いた。
【0059】
(2)遺伝子置換法によるBW25113株へのputA欠失変異の導入
プロリン分解酵素遺伝子putA破壊用DNA断片、及びputA領域に挿入したマーカーの除去用DNA断片を用い、BW25113/pKD46に実施例1の(3)と同様の操作を行ってBWA/pKD46株を得た。
【0060】
(3)遺伝子置換法によるBWA株へのaspC欠失変異の導入
aspC破壊用DNA断片、及びaspC領域に挿入したマーカーの除去用DNA断片を用い、BWA/pKD46株に実施例1の(3)と同様の操作を行ってBWAC/pKD46株を得た。
【0061】
(4)遺伝子置換法によるproB74変異の導入
proB破壊用DNA断片、及びproB74変異導入用DNA断片を用い、BWA/pKD46株、及びBWAC/pKD46株に実施例1の(3)と同様の操作を行ってBWAP/pKD46株、及びBWACP/pKD46株をそれぞれに得た。
【実施例4】
【0062】
BWAP株、及びBWACP株によるL−プロリン生産試験
実施例3で得たBWAP/pKD46株及びaspC欠損株BWACP/pKD46からpKD46プラスミドを脱落させ、BWAP株及びBWACP株をそれぞれ得た。BWAP株、及びBWACP株をLB寒天培地で30℃、24時間培養し、菌株をそれぞれLB液体培地8mLの入った試験管に植菌し、30℃で16時間培養した。
得られた種培養液0.4mLを、それぞれ、本培養培地〔グルコース20g、酵母エキスパウダー(AY−80;アサヒフードアンドヘルスケア社製)4g/L、硫酸アンモニウム10g、塩化ナトリウム2g/L、リン酸水素二カリウム1.0g、硫酸マグネシウム7水和物0.5g、硫酸鉄7水和物278mg、炭酸カルシウム25gを水1Lに含む。滅菌後に硫酸でpH7.0に調整。〕8mLの入った試験管に植菌し、30℃で30時間培養した。
遠心分離により培養液から菌体を除去し、上清中のL−アミノ酸の蓄積量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。
結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
BWAP株に比べてaspCを欠損させたBWACP株では、L−プロリン(Pro)の生産量が明らかに向上していた。
【実施例5】
【0065】
アルギニン生産菌及び当該菌株のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子欠失株の造成
(1)N―アセチルグルタミン酸合成酵素遺伝子argA破壊用DNA断片、argA215変異導入用DNA断片、argR破壊用DNA断片、及びargR領域に挿入したマーカーの除去用DNA断片の作製
大腸菌MG1655株ゲノムDNAを鋳型に、配列番号33の配列を有する合成DNA、及び配列番号35の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い、argAを含むDNA断片を増幅した。得られたDNA断片を鋳型にargAの5’’領域を配列番号33の配列を有する合成DNAと配列番号37の配列を有する合成DNAで、argAの3’領域を配列番号35の配列を有する合成DNAと配列番号38の配列を有する合成DNAでそれぞれPCR反応により増幅し、得られたDNA断片をDNA断片精製キットで精製した。次にこの2断片と実施例1の(1)で得られたcat−sacBカセットを混合してこれを鋳型とし、配列番号34の配列を有する合成DNAと配列番号36の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い3断片の連結と増幅を行った。この操作により得られたDNA断片はargA遺伝子の5’側配列と3’側配列の間にクロラムフェニコール耐性遺伝子とレバンシュークラーゼ遺伝子が挿入された構造をもっている。このDNA断片をargA破壊用DNA断片として用いた。
さらに配列番号33の配列を有する合成DNA、及び配列番号35の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応で増幅されたargA遺伝子を含むDNA断片を鋳型にして、配列番号33の配列を有する合成DNAと配列番号40の配列を有する合成DNAをプライマーとして用いargA遺伝子の5’側領域を、配列番号35の配列を有する合成DNAと配列番号39の配列を有する合成DNAをプライマーとして用い3’側領域をそれぞれPCR反応で増幅し、得られたDNA断片をDNA断片精製キットで精製した。
次にこの2断片を混合してこれを鋳型とし、配列番号34の配列を有する合成DNAと配列番号36の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い2断片の連結と増幅を行った。この操作により得られたDNA断片はargA遺伝子の56番目の塩基がAからGに置換されている。この変異が導入されたargA215がコードするN−アセチルグルタミン酸合成酵素はアルギニンによるフィードバック阻害が解除されていることが報告されている[Appl.Environ.Microbiol.,64,1805(1998)]。この操作によって得られたDNA断片をargA215変異導入用DNA断片として用いた。
次に大腸菌MG1655株ゲノムDNAを鋳型に、配列番号41の配列を有する合成DNA、及び配列番号43の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い、argRを含むDNA断片を増幅した。得られたDNA断片を鋳型にargRの5’領域を配列番号41の配列を有する合成DNAと配列番号45の配列を有する合成DNAで、argRの3’領域を配列番号43の配列を有する合成DNAと配列番号46の配列を有する合成DNAでそれぞれPCR反応により増幅し、得られたDNA断片をDNA断片精製キットで精製した。次にこの2断片と実施例1の(1)で得られたcat−sacBカセットを混合してこれを鋳型とし、配列番号42の配列を有する合成DNAと配列番号44の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い3断片の連結と増幅を行った。この操作により得られたDNA断片はargR遺伝子の5’側配列と3’側配列の間にクロラムフェニコール耐性遺伝子とレバンシュークラーゼ遺伝子が挿入された構造をもっている。このDNA断片をargR破壊用DNA断片として用いた。
さらに配列番号41の配列を有する合成DNA、及び配列番号43の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応で増幅されたargR遺伝子を含むDNA断片を鋳型にして、配列番号41の配列を有する合成DNAと配列番号48の配列を有する合成DNAをプライマーとして用いargR遺伝子の5’側領域を、配列番号43の配列を有する合成DNAと配列番号47の配列を有する合成DNAをプライマーとして用い3’側領域をそれぞれPCR反応で増幅し、得られたDNA断片をDNA断片精製キットで精製した。次にこの2断片を混合してこれを鋳型とし、配列番号42の配列を有する合成DNAと配列番号44の配列を有する合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い2断片の連結と増幅を行った。この操作により得られたDNA断片はargR遺伝子の5’側領域と3’側領域が直接つながっており、argR遺伝子の大部分が欠損した構造になっている。このDNA断片をargR領域に挿入したマーカーの除去用DNA断片として用いた。
【0066】
(2)遺伝子置換法によるBW25113株へのargA215変異の導入
N―アセチルグルタミン酸合成酵素遺伝子argA破壊用DNA断片、及びargA215変異導入用DNA断片を用い、BW25113/pKD46株に実施例1の(3)と同様の操作を行って目的の株を得た。
【0067】
(3)遺伝子置換法によるargR欠失変異の導入
argR破壊用DNA断片、及びargR領域に挿入したマーカーの除去用DNA断片を用い、上記(2)で得られた株に実施例1の(3)と同様の操作を行ってBWR/pKD46株を得た。
【0068】
(4)遺伝子置換法によるBWR株へのaspC欠失変異の導入
aspC破壊用DNA断片、及びaspC領域に挿入したマーカーの除去用DNA断片を用い、BWR株に実施例1の(3)と同様の操作を行って目的の株、BWRC/pKD46株を得た。
【実施例6】
【0069】
BWR株、及び当該菌株のaspC欠失株によるL−アルギニン、L−シトルリン、及びL−オルニチン生産試験
実施例5で得たBWR/pKD46株、及びaspC欠損株BWRC/pKD46からpKD46プラスミドを脱落させBWR株、及びBWRC株を得た。実施例4と同じ方法で、BWR、BWRCの各菌株のアミノ酸の生産試験を行った。
結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
aspCを欠損させたBWRC株では、L−アルギニン(Arg)の生産量が親株BWR株に比べて明らかに向上していた。またL−シトルリン(Cit)、L−オルニチン(Orn)に関しても親株BWR株に比べてBWRC株が高い生産性を示した。
【実施例7】
【0072】
ヒドロキシプロリン生産菌及び当該菌株のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子欠失株の造成
実施例3の(2)、及び(3)にて作製したBWA/pKD46株、及びBWAC/pKD46株からpKD46プラスミドを脱落させBWA株、及びBWAC株を得たのち、文献[J.Biosci.Bioeng.,90,522(2000)]記載のプラスミドpWFP1をDowerらの方法[Nucleic Acids Research,16,6127(1988)]にしたがってエレクトロポレーション法により導入し、アンピシリン耐性を指標にそれぞれの形質転換体を得た。
【実施例8】
【0073】
BWA/pWFP1株、及び当該菌株のaspC欠失株BWAC/pWFP1株によるL−プロリン及びL−ヒドロキシプロリン生産試験
実施例4と同じ方法で、実施例7で作製したBWA/pWFP1、BWAC/pWFP1の各菌株のアミノ酸生産試験を行った。
結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
aspCを欠損させたBWAC/pWFP1株では、L−プロリン(Pro)、及びL−ヒドロキシプロリン(Hyp)の生産量がBWA/pWFP1株に比べて明らかに向上していた。