(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伝動ケースは、前方上方から後方下方へ向けて後下がりの傾斜姿勢で設けてあり、前記伝動チェーンの巻回領域内を通して前記第2中間軸を配設し、前記伝動チェーンの巻回領域の外側で、かつ前記第2中間軸よりも上方側に前記第1中間軸を配設してある請求項1記載の耕耘作業機。
前記伝動ケースの後端部の上側に前記第1中間軸又は第2中間軸の一方を配設し、前記第1中間軸又は第2中間軸の外周に沿って突出部を形成し、その突出部の後面側で、かつ前記耕耘爪軸の上方位置から外れた後方側箇所に耕耘ロータカバーの取付部を設けてある請求項1又は2記載の耕耘作業機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の耕耘作業機においては、第1爪軸とは逆転方向に回転駆動されるロータリ耕耘爪を第2爪軸に装着して、第1爪軸に装着されたロータリ耕耘爪による機体前進方向への推進力に対して逆方向の抵抗を与えられるので、機体のダッシングを抑制できる点では有用なものである。
しかしながら、この構造では耕耘爪軸を枢支する後下がり姿勢の伝動ケースの下端部で、伝動上手側の耕耘出力軸から伝動チェーンを介して駆動力が伝達される入力用駆動スプロケットの周辺箇所で、前記伝動チェーンと伝動ケース内面との間に、前記第2爪軸の入力ギヤに咬合する伝動ギヤを装着した第2中間軸と、前記第1爪軸に入力された動力を逆転して前記第2中間軸の伝動ギヤに伝える逆転ギヤを装着した第1中間軸とを備えるものであるため、この伝動ケースの下部が比較的大型化し易く、その伝動ケースの下部を含めて耕耘爪軸の上部を覆う耕耘ロータカバーも大型化し易いという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、機体進行方向と同方向の推進力を発生するように回転するロータリ耕耘爪を装着した第1爪軸と、それとは逆方向に回転するロータリ耕耘爪を装着した第2爪軸との間におけるギヤ伝動機構を工夫して、伝動ケース等の小型化を図り得た耕耘作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、請求項1に記載のように、
前方上方から後方下方へ向けて後下がりの傾斜姿勢に設けられた伝動ケースの
後方下端部から左右両側に突出させた耕耘爪軸にロータリ耕耘爪を装備させた耕耘作業機であって、前記耕耘爪軸を、伝動上手側から駆動力が伝達される第1爪軸と、その第1爪軸よりも前記伝動ケースからの突出量が少ない筒軸状で、かつ第1爪軸に外嵌して前記第1爪軸からギヤ伝動機構を介して駆動力が伝えられる左右一対の第2爪軸とで構成し、前記第1爪軸の前記伝動ケース内に存在する箇所に、伝動上手側の耕耘出力軸から伝動チェーンを介して駆動力が伝達される入力用駆動スプロケットを装着し、前記第2爪軸の前記伝動ケース内に存在する箇所に、前記ギヤ伝動機構を介して第1爪軸からの駆動力が伝達される入力ギヤを設け、前記ギヤ伝動機構は、前記第1爪軸に入力された動力を逆転する第1中間軸と、その第1中間軸から伝えられた逆転動力を前記左右の第2爪軸の各入力ギヤに伝達する一対の伝動ギヤを装着した第2中間軸とを備え、前記第1中間軸又は第2中間軸
の一方を、前記伝動チェーンの巻回領域内を通して前記伝動ケースに枢支
し、前記第1中間軸又は第2中間軸の他方を、前記伝動チェーンの巻回領域外の前記伝動ケース内で、かつ前記伝動チェーンの巻回領域の後端よりも前方側で前記第1爪軸の上方に位置させてあることを特徴とする。
【0007】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明の耕耘作業機では、伝動上手側の耕耘出力軸から入力用駆動スプロケットへの動力伝達用の伝動チェーンの巻回領域を、第1中間軸又は第2中間軸の何れかの中間軸の配設用空間として有効利用したものであるから、前記第1中間軸又は第2中間軸の両方を前記伝動チェーンの巻回領域から外れた外側位置で伝動ケース内に配設してある従来構造のものに比べ、伝動ケース下部における前記伝動チェーンの外側への張り出し量が少なくて済み、伝動ケース下部の大型化を免れ、伝動ケースの小型化を図り得たものである。
【0008】
〔解決手段2〕
本発明における耕耘作業機の第2の解決手段は、前記伝動ケースは、前方上方から後方下方へ向けて後下がりの傾斜姿勢で設けてあり、前記伝動チェーンの巻回領域内を通して前記第2中間軸を配設し、前記伝動チェーンの巻回領域の外側で、かつ前記第2中間軸よりも上方側に前記第1中間軸を配設してあることを特徴とする。
【0009】
〔作用及び効果〕
上記の解決手段2にかかる本発明の耕耘作業機では、左右の第2爪軸の各入力ギヤに咬合する一対の伝動ギヤを装着した第2中間軸が、伝動チェーンの巻回領域内を通して伝動ケースに装着され、逆転ギヤを装着した第1中間軸よりも下方側に位置することになる。これによって、一対の伝動ギヤを装着して前記第1中間軸よりもギヤ数が多く重量も大きくなり易い第2中間軸を、できるだけ下方側に位置させることができ、少しでも重心を下げて耕耘作業機の姿勢安定化を図り得る利点がある。
【0010】
〔解決手段3〕
本発明の耕耘作業機における第3の解決手段では、前記伝動ケースの後端部の上側に前記第1中間軸又は第2中間軸の一方を配設し、前記第1中間軸又は第2中間軸の外周に沿って突出部を形成し、その突出部の後面側で、かつ前記耕耘爪軸の上方位置から外れた後方側箇所に耕耘ロータカバーの取付部を設けてあることを特徴とする。
【0011】
〔作用及び効果〕
上記のように構成された解決手段3にかかる本発明の耕耘作業機では、伝動ケースの後端部の上側に配設された、第1中間軸又は第2中間軸の一方の外周に沿って突出部を形成しているので、第1中間軸又は第2中間軸の両方の外側に沿う突出部を形成する場合に比べて、突出部の外周側の曲率が大きくなる傾向があり、この突出部存在箇所での伝動ケースの剛性を増強し易い点で好都合である。
また、上記突出部には、第1中間軸又は第2中間軸を軸支するための軸受け構造が存在することになるので、ロータリカバー取付部が設けられる突出部付近の強度が全体的に向上し、ケース割れなどの不具合を避け易い構造を得られる点で有用である。
そして、耕耘ロータカバーの取付部は、前記突出部の後面側で、かつ耕耘爪軸の上方位置から外れた後方側箇所に設けてあるので、耕耘ロータカバーの取付部や、その耕耘ロータカバーの取付部と耕耘ロータカバーとを接続するステーなどの存在箇所に、耕耘作業に伴う飛散土壌が堆積し難くなる傾向がある。
つまり、耕耘爪軸の上方位置近くに耕耘ロータカバーの取付部や前記ステーなどが存在すれば、それらに衝突した土壌が回転を止められて耕耘ロータカバーの取付部や前記ステー付近に堆積してしまう虞があるが、上述したように耕耘ロータカバーの取付部や前記ステーの存在箇所が耕耘爪軸の上方位置から外れた位置であることにより、このような不具合を避けやすい。例えば、ダウンカット時の耕耘爪で持ち上げられる土壌は、その上昇過程で衝突して回転方向の運動が止められるとそのまま落下して堆積せず、また、アッパーカット時の耕耘爪で持ち上げられた土壌は、その下降過程で衝突して回転方向の運動が止められても、突出部の後面側で横側方に土壌の逃げだしが可能な開放空間が存在しているので、少し横側方へ逃げながら下降方向へ落下して堆積を免れ易いという利点がある。
〔解決手段4〕
本発明の耕耘作業機における第4の解決手段では、前記ギヤ伝動機構は、前記第1爪軸に固定された出力ギヤと、その出力ギヤと咬合するように前記第1中間軸に装着された逆転ギヤと、前記逆転ギヤと咬合するように前記第2中間軸に装着された中継伝動ギヤとを備え、前記逆転ギヤは、前記出力ギヤ及び前記中継伝動ギヤよりも大径の単一のギヤによって構成されていることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する。
〔耕耘作業機の全体構成〕
図1は、本発明に係る耕耘作業機の一例である歩行型耕耘機を示す全体側面図である。
この図に示すように、歩行型耕耘機は、エンジン11を搭載した機体フレーム10の後方側に操縦ハンドル12を備え、前記機体フレーム10を支持する左右一対の駆動自在なタイヤ式の走行車輪13,13を装備した自走機体1と、前記自走機体1の機体フレーム10の後部側に連結されたロータリー耕耘装置2とを備えて構成されている。
【0014】
前記機体フレーム10は、前記左右一対の車軸13a,13aを支持するミッションケース3(伝動ケースに相当する)と、このミッションケース3から機体前方向きに延出したエンジン支持フレーム10Aとで構成されている。前記操縦ハンドル12はミッションケース3の後方側から後方上方へ向けて延出されている。
前記ミッションケース3は、
図2に示されるように、前記左右一対の車軸13a,13aを支持するように上下方向に立設されたケース部分と、前記ロータリー耕耘装置2を支持するように前方上方から後方下方へ向けて後下がりの傾斜姿勢で設けた後傾ケース部分とを一体に形成してある。
【0015】
前記操縦ハンドル12は、ミッションケース3の後部側のケース外周部分に設けたハンドル支持部3fから自走機体1の後方上方向きに延出されている。
この操縦ハンドル12には、エンジン11からの動力を前記ミッションケース3内の伝動装置に対して断続する主クラッチ14を入り切り操作するためのクラッチレバー15や、図示しないアクセル操作具、及び、ブレーキ操作具などの操縦操作具を設けてある。
【0016】
図1に示すように、前記ロータリー耕耘装置2は、前記ミッションケース3の後部側に設けられた耕耘爪軸20と、その耕耘爪軸20に取り付けられて回転駆動されるロータリ耕耘爪21と、接地抵抗棒22とを備える他、ロータリ耕耘爪21の上部を覆う耕耘ロータカバー23と、整地板24とを備えている。
【0017】
〔動力伝達系の構成〕
エンジン11からの動力が、走行推進軸としての前記車軸13a,13a、及び、耕耘爪軸20に伝達される際の動力伝達系の構成について説明する。
【0018】
図1及び
図2に示すエンジン11の出力軸11aに設けた出力プーリ11bと、ミッションケース3の入力軸30に設けた入力プーリ30aとにわたって、ベルト伝動機構によって構成される前記主クラッチ14を備えてある。
主クラッチ14は、前記出力プーリ11bと入力プーリ30aとにわたって巻回された伝動ベルト14aと、この伝動ベルト14aを緊張する状態と弛緩する状態とに切換操作可能なテンションプーリ14bとを備えている。このテンションプーリ14bが前記操縦ハンドル12に備えられたクラッチレバー15に連係されているので、前記操縦ハンドル12に備えられたクラッチレバー15の操作にともなって、前記主クラッチ14を入り状態と切り状態とに、切換操作することができる。
【0019】
図2に示すように、前記ミッションケース3内には、エンジン11からの動力が伝えられる入力軸30がケース上部に配設され、走行推進軸としての前記車軸13a,13aが前方下部に、かつ、耕耘爪軸20が後方下部にそれぞれ配置されている。
さらに、このミッションケース3内には、前記車軸13a,13aに対して伝動チェーン35を介して駆動力を伝達する走行出力軸33、前記耕耘爪軸20に対して伝動チェーン36を介して駆動力を伝達する耕耘出力軸31、及び前記入力軸30の駆動力を減速して前記走行出力軸33へ伝達する減速伝動軸32を備えてある。
【0020】
前記入力軸30、及び耕耘出力軸31の上部側には、変速操作用のシフト操作軸37,38が設けられ、このシフト操作軸37,38のそれぞれに変速操作用のシフター37a,38aを設けてある。
前記各シフター37a,38aは、それぞれ前記入力軸30に備えられたスライド操作可能なシフトギヤ30b、及び耕耘出力軸31に備えられたスライド操作可能なシフトギヤ31bを係止して、ミッションケース3の上部側に設けた変速操作レバー17によって、各シフトギヤ30b,31bを各別にスライド操作自在に構成してある。
【0021】
前記入力軸30、及び耕耘出力軸31に備えられた各シフトギヤ30b,31bは、前記耕耘出力軸31及び減速伝動軸32のそれぞれに設けてある各伝動ギヤに対して選択的に係合可能に構成してあって、これらの各シフトギヤ30b,31b及び前記耕耘出力軸31及び減速伝動軸32のそれぞれに設けてある各伝動ギヤによって、周知のギヤ変速機構からなる変速機構Tが構成されている。
この変速機構Tでは、前記入力軸30から伝達される動力を、前記走行出力軸33に対して高低変速、及び耕耘出力軸31を介して逆転して伝達するように変速操作可能に構成してある。そして、前記耕耘出力軸31に対しては、前記入力軸30から伝達される動力を断続して、耕耘爪軸20側への駆動力の伝達を断続できるように構成してある。
【0022】
前記変速操作レバー17は、
図1に示すように、エンジンカバー16の後部側に設けたガイド溝付きのレバーガイド18を挿通して後方上方側へ延出してあり、操縦ハンドル12を把持する操縦者が手を伸ばして変速操作可能な操縦ハンドル12の前方位置に備えられている。
【0023】
前記走行出力軸33には走行出力用スプロケット33aが固定され、前記車軸13a,13aには走行入力用スプロケット13bが固定されていて、これらの走行出力用スプロケット33aと走行入力用スプロケット13bとにわたって走行動力伝達用の伝動チェーン35が掛張されている。
また、左右一対の走行車輪13,13に備えられる車軸13a,13aは、一方の車軸13aに固定の走行入力用スプロケット13bに伝達された動力を、デフ機構34を介して他方の車軸13aに伝達されるように構成してある。このデフ機構34は、
図2に示されているように、デフロックレバー34a、連係ロッド34b、操作レバー34cを介してミッションケース3の外部に設けた図示しない操作具によって、外部から手動操作でデフロック状態とデフロック解除状態とに切換可能に構成してある。
【0024】
前記耕耘出力軸31には出力用駆動スプロケット31aが固定され、耕耘爪軸20には入力用駆動スプロケット20aが固定されていて、これらの出力用駆動スプロケット31aと入力用駆動スプロケット20aとにわたって耕耘動力伝達用の伝動チェーン36が掛張されている。
そして、このミッションケース3内には、
図2乃至
図4に示すように、耕耘爪軸20を構成する第1爪軸40と第2爪軸50とのうちの、第2爪軸50に対して逆転動力を伝達するギヤ伝動機構60を設けてある。
【0025】
〔耕耘爪軸駆動構造〕
耕耘爪軸20の駆動構造は次のように構成されている。
まず、耕耘爪軸20について説明すると、耕耘爪軸20は、
図3に示すように、前記耕耘動力伝達用の伝動チェーン36、及び前記出力用駆動スプロケット31aを介して伝動上手側の耕耘出力軸31からの駆動力を伝達される第1爪軸40と、その第1爪軸40からギヤ伝動機構60を介して駆動力が伝えられる左右一対の第2爪軸50,50とで構成されている。
【0026】
前記第1爪軸40は、ミッションケース3の左右両側壁3a,3bに両端側を支持されていて、かつミッションケース3の内部空間の左右方向でのほぼ中央位置に、前記入力用駆動スプロケット20aが一体に固定された中実の軸で構成されている中央爪軸部分41と、その中央爪軸部分41の左右両端側に外嵌されて、前記中央爪軸部分41とともに径方向に貫通する連結ピン43を介して一体回動自在に連結される筒状の端部筒軸部分42,42とで構成されている。
【0027】
この第1爪軸40に対しては、
図1及び
図3に示されているように、前記端部筒軸部分42,42の外周に溶接して放射方向に立設された水平方向断面がコの字状のブラケット44に対して、取付用ボルト・ナット45を用いて各ロータリ耕耘爪21が着脱可能に取り付けられている。
図3では、前記端部筒軸部分42に立設される各ブラケット44のそれぞれを、便宜上展開して上下に振り分けられた状態で図示しているが、
図1に示されるように、中央側のブラケット44a,44b同士、及び端部側のブラケット44c,44d同士は互いに180度ずれて位相し、その中央側のブラケット44a,44bと端部側のブラケット44c,44dとの間では90度ずれて位相した状態で固定されている。したがって
図1に示されるように、前記端部筒軸部分42,42の外周に立設されたコの字状のブラケット44は、側面視では90度ずつ周方向に位相のずれた箇所で放射方向に向けられている。
【0028】
前記左右一対の第2爪軸50,50は、
図3に示されるように、ミッションケース3の左右方向での中央位置を基準にして左右対称の形状に形成してあり、さらに各第2爪軸50,50は、
図4に示されるように、ミッションケース3の内部空間に位置して第1爪軸40からの駆動力が前記ギヤ伝動機構60を介して伝達される入力ギヤ53を一体に備えた内側筒軸部分51と、ミッションケース3の外側位置で逆転用ロータリ耕耘爪25を装着可能な角筒状のブラケット54が外周に立設された外側筒軸部分52とを備えて構成されている。
前記逆転用ロータリ耕耘爪25のブラケット54は、
図1に示されているように、耕耘爪軸20の周方向で、前記中央側のブラケット44a,44bと端部側のブラケット44c,44dとが立設されている箇所の中間位置に立設されている。
【0029】
前記内側筒軸部分51は、前記第1爪軸40の中央爪軸部分41に対して相対回動自在に外嵌する筒状部分のうちで、前記入力ギヤ53が外周側に位置する筒状部分の内周側にニードルベアリング55を装着し、前記入力ギヤ53が存在する箇所よりも外側に相当する外周側にスプライン溝51aを形成してある。
そして、この内側筒軸部分51のうち、
図4に示すところの左側の第2爪軸50の内側筒軸部分51におけるミッションケース3の内部側の端部は、前記第1爪軸40の中央爪軸部分41に溶接固定された出力ギヤ41aとの間で、中央爪軸部分41の外周に装着してあるカラー58に接当して、ミッションケース3の内方側への移動を規制されている。
この内側筒軸部分51のミッションケース3よりも外側へ延出された外端側への移動規制は、ミッションケース3の左右両側壁3a,3bに形成された爪軸支持孔3cに軸受け部材として装着されたボールベアリング56のインナーレースに接当する段部51bを、この内側筒軸部分51の構成部材として一体化された前記入力ギヤ53の横側面に備えることによって、ミッションケース3の外方側への位置規制が行われている。
【0030】
また、内側筒軸部分51のうち、右側の第2爪軸50の内側筒軸部分51におけるミッションケース3の内部側の端部は、第1爪軸40の中央爪軸部分41の中央箇所に大径部分41bが存在することによって形成される段部41cの右側にカラー58を装着して、そのカラー58との接当によってミッションケース3の内方側への移動を規制されている。そして、この右側の内側筒軸部分51においても、外端側の位置規制は前記左側の内側筒軸部分51と全く同様であるため説明は省略する。
【0031】
前記外側筒軸部分52は、前記内側筒軸部分51の外周側に形成されたスプライン溝51aに係合するスプライン52aを内周側に形成して、前記内側筒軸部分51に対してミッションケース3の外側から係合可能に構成してある。この外側筒軸部分52の内端側は、前記内側筒軸部分51の外周側に位置する入力ギヤ53の横側面との接当によって位置規制され、外端側は前記第1爪軸40の中央爪軸部分41に外嵌させた軸受け部材としてのボールベアリング47のアウターレースに接当する段部52bを備えて、ミッションケース3の外方側への位置規制が行われている。
【0032】
したがって、前記外側筒軸部分52をミッションケース3の外方側へ抜き出す際には、前記第1爪軸40の連結ピン43を外して端部筒軸部分42を取り外し、かつ第1爪軸40の中央爪軸部分41に外嵌させてあるボールベアリング47のストッパーリング47aを取り外して、ボールベアリング47ごと外側筒軸部分52をミッションケース3の外方側へ抜き出すことができる。
尚、
図4中における符号57は、前記外側筒軸部分52の内周側と第1爪軸40の中央爪軸部分41の外周との間に泥土や塵埃が侵入することを回避するように、外側筒軸部分52の内周側と第1爪軸40の中央爪軸部分41の外周との間に着脱自在に嵌着された閉塞部材であり、符号48は第1爪軸40の端部筒軸部分42のミッションケース3側の端部に一体に設けられた椀状のカバー体であり、前記外側筒軸部分52の外周側端部を覆うように設けてあって、泥土や雑草などの入り込みを制限するためのものである。
【0033】
前記外側筒軸部分52及び内側筒軸部分51の外周側は、次のように支持されている。
図3及び4に示すように、ミッションケース3の左右両側壁3a,3bの爪軸支持孔3cに軸受け部材としてのボールベアリング56を嵌着してある。このボールベアリング56が前記外側筒軸部分52及び内側筒軸部分51の外周側を回動自在に支持し、前記外側筒軸部分52の内周側と第1爪軸40の中央爪軸部分41の外周側とが前記ボールベアリング47で相対回動自在に支持され、かつ、前記内側筒軸部分51の内周側と第1爪軸40の中央爪軸部分41の外周側とがニードルベアリング55で相対回動自在に支持されている。
このように、ミッションケース3の左右両側壁3a,3bに対して回動自在に支持された外側筒軸部分52及び内側筒軸部分51からなる第2爪軸50,50を備え、その第2爪軸50,50に対して相対回動自在に支持されている第1爪軸40も、前記ミッションケース3の左右両側壁3a,3bの爪軸支持孔3cに軸受け部材としてのボールベアリング56を介して支持されているので、耕耘爪軸20の全体が前記ミッションケース3の左右両側壁3a,3bに対して回動自在に支持された状態となる。
【0034】
図4における符号3dは、前記ミッションケース3の左右両側壁3a,3bの爪軸支持孔3cに装着されたボールベアリング56の外側で、ミッションケース3側への雨水や塵埃の入り込みを規制するためのシール材であり、このシール材3dの外側を、ミッションケース3の左右両側壁3a,3bの外側に固定された薄い板金製で化粧板を兼ねるシール保護板3e、及び前記シール保護板3eよりも厚肉の板金製で、前記第2爪軸50,50の外側筒軸部分52の外周側に溶接固定されて一体的に回動する保護板52cで保護するように構成してある。
【0035】
〔ギヤ伝動機構〕
次に、第1爪軸40から左右一対の第2爪軸50,50に対して駆動力を伝えるギヤ伝動機構60について説明する。
図3及び
図5に示されているように、ギヤ伝動機構60は、前記第1爪軸40の中央爪軸部分41に溶接固定された出力ギヤ41aと咬合する逆転ギヤ63を一体回動するように溶接して固定してある第1中間軸61と、前記逆転ギヤ63と咬合する中継伝動ギヤ64、及び左右の第2爪軸50の各入力ギヤ53,53に咬合する一対の伝動ギヤ65,65を一体回動するように溶接して固定してある第2中間軸62とを備えて構成されている。
前記出力ギヤ41aと中継伝動ギヤ64とは同径のギヤで構成され、前記一対の伝動ギヤ65,65は中継伝動ギヤ64よりも大径のギヤで構成され、入力ギヤ53,53と同径のギヤで構成されている。従って出力ギヤ41aから出力された動力と逆回転で同速の回転動力が入力ギヤ53,53に伝達される。
前記逆転ギヤ63は前記出力ギヤ41a、中継伝動ギヤ64、伝動ギヤ65,65、及び入力ギヤ53,53よりも大径に構成してあるが、これは、前記第1爪軸40と、第1中間軸61と、第2中間軸62とを三角配置するために寸法設定されたものである。
【0036】
そして、
図3及び
図5に示すように、前記第1中間軸61と第2中間軸62とのうち、前記中継伝動ギヤ64、及び左右一対の伝動ギヤ65,65を備えた第2中間軸62は、前記耕耘出力軸31と耕耘爪軸20との間に掛張した伝動チェーン36の巻回領域S内を通して、左右の軸端部がミッションケース3の左右の側壁3a,3bに枢支されている。尚、前記伝動チェーン36の巻回領域Sとは、前記出力用駆動スプロケット31a及び入力用駆動スプロケット20aの存在位置を除く範囲の領域である。
前記第1中間軸61は、
図5に示すように、前記耕耘出力軸31と耕耘爪軸20との間に掛張した伝動チェーン36の巻回領域Sの外側で、かつ第2中間軸62及び耕耘爪軸20よりも高い位置で、左右の軸端部がミッションケース3の左右の側壁3a,3bに枢支されている。
【0037】
前記第1中間軸61が配設されたミッションケース3の後端部では、耕耘爪軸20の上方側に相当する箇所のミッションケース3の一部が上方側へ突出した形状に形成され、この突出した形状部分によって構成される突出部39の内部に、前記伝動チェーン36の巻回領域Sの外側に位置する第1中間軸61を配設してある。
前記突出部39は、耕耘爪軸20の上方側に相当する箇所で、前記耕耘出力軸31と耕耘爪軸20とを結ぶ仮想線分から上方側へ離れる側に膨出するように、後方上方に延長された左右の側壁3a,3bの延長部分と、これらの延長部分の延長端側どうしを連結する外周壁とで構成されている。突出部39の外周壁は、耕耘出力軸31と耕耘爪軸20とを結ぶ仮想線分と平行なミッションケース3の前後中間部の上側外周壁から後方に延出された直線状の直線部分39Xと、この直線部分39Xから連続するように逆転ギヤ63の外周に沿って円弧状に湾曲する湾曲部分39Yとで構成されている。湾曲部分39Yは、その前端部が第1中間軸61の直上方又は直上方近傍の位置で直線部分39Xと連設し、その下端部が第1中間軸61よりも低い位置で中央爪軸部分41の後方側のミッションケース3の後側外周壁の直線部分に連設するように形成されている。
【0038】
また、前記突出部39の外側には、
図5及び
図6に示されているように、接地抵抗棒22及び耕耘ロータカバー23を所定姿勢で取り付けるための支持ステー26の下端側に対する取付部39aが形成されている。この取付部39aは、左右一対の分割体で構成されているミッションケース3の合わせ面のフランジ部分の一部を部分的に後方上方側へ突出させて形成してあり、その取付部39aの後部に前記支持ステー26の前端部を上下一対の連結ボルト27で連結するように構成してある。
前記取付部39aは、前記突出部39の後面側で、かつ前記伝動チェーン36の巻回領域Sの外側に配設された第1中間軸61及び耕耘爪軸20の上方位置から外れた後方側箇所に設けてある。また、この取付部39aは、前記耕耘出力軸31と耕耘爪軸20とを結ぶ仮想線分から上方側へ離れる側に膨出した突出部39の最大突出箇所を含んでその後方側に設けてあり、側面視で上下方向に長い帯板状に形成されている。
前記支持ステー26の後端側には、
図6(b)に示されるように、左右方向の一方側へ折り曲げられて耕耘ロータカバー23の下部内面側に接する当て板部分26aが一体に形成してあり、この当て板部分26aに対して耕耘ロータカバー23を連結ボルト27で連結することによって、前記耕耘ロータカバー23を前記取付部39aに固定してある。
【0039】
前記支持ステー26には、
図1及び
図6に示すように、接地抵抗棒22を挿通して保持可能な抵抗棒取付部28を一体に溶接して固定してある。前記接地抵抗棒22は、耕耘対象の地面に下端部を食い込ませて機体前進方向の駆動にある程度の抵抗を与えるとともに、抵抗棒取付部28に対する接地抵抗棒22の取付高さ位置の調節によって耕深を設定するためのものであり、この構造では、前記耕耘ロータカバー23を取り付けるための前記支持ステー26に対して抵抗棒取付部28を固定することによって、接地抵抗棒22に作用する牽引負荷が、耕耘ロータカバー23に作用することなく、支持ステー26を介してミッションケース3に作用し、強度メンバーであるミッションケース3によって前記牽引負荷を受けられるように構成してある。
【0040】
上記の耕耘爪軸20は、前記耕耘出力軸31側の出力用駆動スプロケット31aと耕耘爪軸20側の入力用駆動スプロケット20aとの間に掛張した伝動チェーン36によって、前記第1爪軸40に、
図1の紙面では反時計方向の回転である正転方向(ダウンカット方向)の回転駆動力を伝え、第2爪軸50に、前記ギヤ伝動機構60を介して、
図1の紙面では時計方向の回転である逆転方向(アッパーカット方向)の回転駆動力が伝えられるように構成してある。
【0041】
〔別実施形態の1〕
上記の実施形態では、伝動ケースとして、走行系の伝動機構と耕耘作業装置系の伝動機構とが単一のケース内に収められたミッションケース3を用いた例を示したが、これに限らず、例えば、走行系の伝動機構と耕耘作業装置系の伝動機構とを別々の伝動ケースに内装した構造のものであったり、走行系の伝動機構を備えずに、耕耘作業装置系の伝動機構のみを備えて、耕耘作業装置の回転駆動力を利用して走行を行うように構成されたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0042】
〔別実施形態の2〕
上記の実施形態では、伝動チェーン36の巻回領域Sの外側に位置する第1中間軸61を配設し、伝動チェーン36の巻回領域Sの内側に第2中間軸62を配設した構造のものを例示したが、これに限らず、伝動チェーン36の巻回領域Sの外側に第2中間軸62を配設し、伝動チェーン36の巻回領域Sの内側に第1中間軸61を配設した構造であってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。