(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸化剤として過マンガン酸カリウムを用い、前記酸化剤消費量測定工程において前記マイクロ波の照射を停止した後、前記試料容器にシュウ酸ナトリウム及び硫酸を含む混合液を添加して酸化反応を停止させる請求項5又は請求項6に記載の化学的酸素消費量の測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
本発明者は、CODの測定に当たり、試料を入れた複数の反応瓶(試料容器)を回転テーブル式の電子レンジ内に配置して加熱を行ったところ、反応瓶の位置によって加熱むら(反応むら)が生じ測定精度がばらつくことを知見した。このことから、精度よくCODを求めるには、マイクロ波発生光源からできるだけ近い距離で、なおかつその距離が、マイクロ波発生源から常に一定になるように測定試料を配置する工夫が必要であることに想到した。
【0011】
そこで、複数の反応瓶内の試料を均等に加熱するため、複数の反応瓶を同一円上に配置するための器具を試作し、各反応瓶に同じ成分の試料を入れて回転テーブル式の電子レンジで加熱したところ、板材を固定するために設けた柱状部材に隣接した反応瓶に入れた試料は、柱状部材に隣接しない反応瓶に入れた試料に比べ、COD値が約20%高くなることを知見した。これは、反応瓶の内側に隣接した柱がマイクロ波の少なくとも一部を反射し、マイクロ波の強度が高まり、酸化反応がより促進されたためであると解釈される。
【0012】
本発明者はさらに検討を重ねた結果、同一円上に配置された各反応瓶に対してそれぞれマイクロ波の少なくとも一部を反射させるマイクロ波反射部を設けることで、各試料を効率的に加熱することができるとともに、例えば、同一試料に対し測定精度±5%以内で試料間の測定精度のばらつきを抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
本発明の加熱補助器具は、複数の試料容器をそれぞれ位置決めし、同一円上に配置されている複数の位置決め部と、前記複数の位置決め部が配置されている円の中心と前記複数の位置決め部のそれぞれとの間に配置されているマイクロ波反射部と、を有して構成されている。
図1及び
図2は、本発明に係る加熱補助器具の構成の一例を概略的に示している。本実施形態に係る加熱補助器具4は、試料容器を位置決めするための孔(位置決め孔)16,17を有する位置決め部材8と、マイクロ波の少なくとも一部を反射するマイクロ波反射部材9から構成されている。
【0014】
‐位置決め部材‐
位置決め部材8は、複数の試料容器を支持するとともに同一円上に位置決めする手段として機能する。
本実施形態では、位置決め部材8は、底板5、中板6、上板7から構成されている。中板6と上板7にはそれぞれ同一円上の8箇所に位置決め孔16,17が一定の間隔で同様に設けられており、中板6の各孔16と上板7の各孔17が位置合わせされていることで8箇所の位置決め部を構成している。
【0015】
位置決め部材8を構成する材質としては、ガラス、プラスチック、セラミックス(陶器、磁器)等が挙げられる。各孔16,17に配置された試料容器内の試料をマイクロ波によって効率的に加熱するため、特に中板6及び上板7はマイクロ波の透過性が高い材料が好ましい。また、上板7及び中板6は、試料容器内の試料の状態を観察し易くする観点から、透明であることが好ましい。
【0016】
さらに、耐熱性、取り扱い性、コスト等の観点から、位置決め部材8は耐熱プラスチック製のものが好ましい。具体的には、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。
【0017】
図3に示すように各試料容器1を中板6及び上板7の孔16,17に挿入して位置決めすることで、加熱補助器具4を移動するときなどに試料容器1を安定して支えて倒れることを防ぐことができる。
なお、位置決め部材8を構成する板材は3枚に限定されず、例えば、中板6又は上板7の一方を省いてもよい。
【0018】
位置決め部材8を構成する板材5,6,7の形状は特に限定されないが、試料容器1をそれぞれ位置決めする複数の孔16,17を同一円上に設けること、また、マイクロ波を照射して加熱させる際に各孔16,17が配置されている円周方向に回転させることから、各板材5,6,7は円形状であることが好ましい。
特に、本発明に係る加熱補助器具4を用いて回転テーブル式の電子レンジによってマイクロ波照射を行う場合、底板5が電子レンジに付属されている回転テーブルの内径にほぼ一致する形状であれば、位置合わせが容易であるため好ましい。
【0019】
位置決め孔16,17の形状は特に限定されず、使用する試料容器1の形状や大きさ等に応じて決めればよい。
位置決め孔16,17の数は、板材6,7の大きさや使用する試料容器1の大きさにもよるが、孔(位置決め部)16,17の数が多いほど一度に多くの試料を加熱でき、効率の向上を図ることができる。一方、加熱後の反応停止操作を容器(反応瓶)1本ずつ行う場合は、試料の数が多いほど最初に反応を停止した試料と、最後に反応を停止した試料との間に時間差が生じ、残熱により最後に反応停止した試料はCODが高くなる可能性がある。なお、本発明者の実験では10検体程度であれば問題ないと考えられる。
また、位置決め孔16,17は各板材6,7の同一円上に配置されるが、試料容器間での加熱むらをより小さくする観点から、等間隔で配置されていることが好ましい。
【0020】
本発明における位置決め部は、試料容器1の安定性等の観点から貫通孔16,17であることが好ましいが、複数の容器1を同一円上に位置決めすることができれば貫通孔16,17に限定されず、他の形態を採用してもよい。例えば、中板6及び上板7は設けず、底板5に位置決め用の複数の窪み(凹部)を同一円上に設けてもよいし、あるいは、底板5の表面に位置決め用の円形等の複数のマークを同一円上に設けてもよい。
【0021】
‐マイクロ波反射部材‐
マイクロ波反射部材9は、位置決め部16,17が配置されている円C1の外側から中心に向けてマイクロ波が照射されたときに、各孔16,17に位置決めされている試料容器1に向けてマイクロ波の少なくとも一部を反射する手段として機能する。
本実施形態では、
図2に示すように、位置決め孔16,17が配置されている円C1の中心と各孔16,17のそれぞれとの間に、各孔16A〜16H,17A〜17Hに隣接し、かつ、位置決め部と一対一の関係で8本のマイクロ波反射部材9A〜9Hが配置されている。
【0022】
マイクロ波反射部材9を構成する材質は、照射されたマイクロ波の少なくとも一部を反射させる材質であれば限定されないが、耐熱性の高いことが好ましく、金属、プラスチック等が挙げられる。金属の場合には、火花放電を生じないよう加工されたものが好ましい。また、プラスチックの場合には、マイクロ波反射性、耐熱性のほか、取り扱い性、コスト等の観点から耐熱性の高いものが好ましく、例えば、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。
【0023】
マイクロ波反射部材9の形状や配置は、加熱補助器具4の位置決め孔16,17に挿入されている各試料容器1に対して周囲からマイクロ波を照射したときに各試料容器1に照射されたマイクロ波の少なくとも一部を反射させることができれば特に限定されず、円柱、角柱などの柱状のほか、板状や波状の部材でもよい。
【0024】
いずれの形状にせよ、マイクロ波反射部材9は、位置決め孔16,17が配置されている円C1の同心円C2上に配置されていることが好ましい。このような配置により、各位置決め孔16,17と各マイクロ波反射部材9との距離が等しくなり、容器間(試料間)の加熱むらをより確実に小さくすることができる。
【0025】
位置決め孔16,17が配置されている円C1の内側で各孔16,17に隣接するようにマイクロ波反射部材9がそれぞれ配置されていることで、加熱補助器具4の周囲からマイクロ波が照射されたときに、マイクロ波照射源からのマイクロ波が直接、各試料容器1に吸収されるほか、各容器1に隣接するマイクロ波反射部材9によって少なくとも一部反射されたマイクロ波が各容器1に吸収され、容器内部の試料が加熱される。そのため、容器内部の試料をより効率的に加熱するとともに、試料間での加熱むらを小さくすることができる。
【0026】
なお、本発明におけるマイクロ波反射部は、必ずしも各孔(位置決め部)に一対一となるように別個に設けられている必要はない。例えば、
図4に示すように、中板6及び上板7の中心部を貫通するように円柱状のマイクロ波反射部材19を1つ設け、このマイクロ波反射部材19の周囲を囲むように位置決め孔16,17を設けてもよい。また、例えば、
図5に示すように位置決め孔16,17に挿入された容器に対向する平面を有する多面体のマイクロ波反射部材29を設けてもよい。
【0027】
また、位置決め部材8とマイクロ波反射部材9(19,29)は、耐熱性プラスチックによって一体ものとして成形されていてもよい。
【0028】
次に、本実施形態に係る加熱補助器具4を用いた加熱装置及びCODの測定方法について説明する。
本発明に係る加熱装置は、前記加熱補助器具4と、前記加熱補助器具4に対して前記複数の位置決め部16,17が配置されている円C1の外側からマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、前記マイクロ波照射手段に対して、前記加熱補助器具4を前記複数の位置決め部16,17が配置されている円周方向に相対的に回転させる回転手段と、を有する。
【0029】
また、本発明に係るCOD測定方法は、前記加熱補助器具4の前記複数の位置決め部16,17に、試料水及び酸化剤がそれぞれ入った複数の試料容器1をそれぞれ位置決めする位置決め工程と、前記加熱補助器具4に対して前記複数の位置決め部16,17が配置されている円の外側からマイクロ波を照射するとともに、前記マイクロ波を照射するマイクロ波照射手段に対して、前記加熱補助器具4を前記複数の位置決め部16,17が配置されている円周方向に相対的に回転させることにより前記試料水に含まれる被酸化物質を酸化させる酸化工程と、前記マイクロ波の照射を停止した後、前記試料容器中の前記酸化剤の消費量を測定する酸化剤消費量測定工程とを含む。
【0030】
図6は、本発明に係る化学的酸素消費量の測定方法のフローの一例を示している。以下の説明において、試薬の種類及び量、加熱出力、加熱時間、温度等の具体例を示すが、これらは一例であり、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0031】
‐位置決め工程‐
まず、
図3に示したように、加熱補助器具4の各孔(位置決め部)16,17に反応瓶(試料容器)1をそれぞれ挿入して位置決めする。例えば、各反応瓶1にCODを測定する水(試料水)をNo.1〜No.8の順に10mL入れ、200g/L水酸化ナトリウム(NaOH)を0.1mL加え、さらに酸化剤として5mM過マンガン酸カリウム(KMnO
4)1mLを加える。なお、複数の反応瓶1に、水、酸化剤等をそれぞれ所定量入れ、これらの反応瓶1を加熱補助器具4の各位置決め孔16,17に挿入してもよい。
【0032】
試料を入れる反応瓶1としては、ガラス製で市販のバイアル瓶を好ましく用いることができ、沸騰による液の飛び散りを抑えるため、細口のものが特に好ましい。例えば、50mLの採血管瓶を好ましく用いることができるが、これに限定されるものではない。また、反応瓶1には予め瓶番号および標線2を設けておくことが好ましい。
【0033】
本発明においては、突沸を防ぐ手段を講じておくことが好ましい。突沸は測定を不能とさせるだけでは無く、高周波誘電加熱装置の破損の原因にもなり、場合によっては作業者に対して危害が及ぶ可能性もある。
【0034】
突沸防止策として一般には、沸騰石を用いる方法、ガラスビーズを用いる方法、ガラス製キャピラリーチューブを用いる方法、反応瓶の底にスリを入れる方法などが挙げられる。これらの方法は本発明でも突沸防止策として採用することができるが、攪拌子3を用いることが好ましい。マイクロ波を照射する前に反応瓶に攪拌子を入れておくことで、突沸を防ぐとともに、後に酸化剤の消費量を測定するために滴定する際、被滴定液を撹拌する際にも引き続き利用することができる。
【0035】
攪拌子としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂でコーティングされた撹拌子3(特に米粒形状のもの)を用いることが好ましい。本発明者の実験によれば、フッ素樹脂でコーティングされた撹拌子を用いれば、ガラスコーティグした攪拌子を用いる場合よりもマイクロ波によって効果的に加熱することができる。
【0036】
‐酸化工程‐
次いで、加熱補助器具4を回転させながらマイクロ波を照射して加熱することにより試料水中の被酸化物質を酸化させる。
マイクロ波を照射する装置としては、例えば、
図7に示すように、マイクロ波照射手段12のほか、加熱補助器具4を回転させる回転テーブル11と、排気ファン14を備えた高周波誘電加熱装置10を用いることが好ましく、市販の回転テーブル式の電子レンジを用いることができる。なお、本発明では、加熱補助器具4をマイクロ波照射手段に対して相対的に回転させればよく、マイクロ波照射手段を回転させる手段を設けてもよい。
【0037】
位置決め孔16,17に反応瓶1を配置した加熱補助器具4を電子レンジの回転テーブル11上に配置し、マイクロ波発生源12からマイクロ波を例えば5分間照射して加熱する。電子レンジ10の庫内では、側壁面に設けられているマイクロ波発生源12から加熱補助器具4に向けてマイクロ波が照射されるとともに、回転テーブル11の回転によって加熱補助器具4が回転する。これにより、各反応瓶1内の試料に対して満遍なく、均等にマイクロ波が照射され、しかも各反応瓶1に隣接するマイクロ波反射部材9によって少なくとも一部反射されたマイクロ波も照射されるため、各試料が迅速に加熱されて酸化反応が進行する。
所定時間マイクロ波を照射して加熱した後、マイクロ波の照射を停止する。
【0038】
‐酸化剤消費量測定工程‐
マイクロ波の照射を停止した後、試料容器1中の酸化剤の消費量を測定する。酸化剤の消費量を測定する方法は特に限定されないが、例えば以下の手順によって行うことができる。
マイクロ波の照射を停止した後、電子レンジ10の庫内から加熱補助器具4ごと取り出し、各反応瓶1中に反応停止液を所定量添加して酸化反応を停止させる。反応停止液としては、12.5mM−シュウ酸ナトリウム(Na
2C
2O
4)1mL、硫酸(50%)1mLを順次加えてもよいし、12.5mM−Na
2C
2O
4及び硫酸を含む混合液を1mL加えてもよい。このような混合液を用いれば、Na
2C
2O
4(1mL)、硫酸(1mL)を各瓶に別々に入れる場合よりも手間が省けるため、COD測定をさらに効率化することができる。
【0039】
反応停止液を添加した後、滴定試薬として5mM−KMnO
4を滴下して滴定を行う。例えば、50〜60℃に保温し、
図8に示すように、マグネチックスターラ20の上に反応瓶1を載せて撹拌しながら、5mM過マンガン酸カリウムで滴定を行う。
ここでガラス製のマイクロビュレット(1mL容量)を用いてもよいが、本発明に係るCOD測定方法では、試料及び試薬の量がJIS等の公定法の1/10以下にすることもでき、その場合、滴定に使用する試薬量も1/10以下になる。
【0040】
微量の滴定試薬を用いる場合には、電動マイクロピペット(電子ピペッター)15を用いることが好ましい。電動マイクロピペット15は、一定量を分注するという本来の機能の他、数多くの分注機能を持っており、中でも、オペレータが任意の量を分注できる、いわゆる連続分注機能を持つものが多い。この機能を活用すれば微量滴定がより簡易になる。例えば、バイオヒット・ジャパン株式会社製「eLINE(1000μL、1ch」を用いることができる。50〜60℃に加熱した状態で電子ピペッターによって滴下することで高精度に滴定を行うことができる。
【0041】
さらに自動滴定装置を用いて滴定を行うことも可能である。なお、種々の必要試薬を反応瓶に分注する際は、JIS K 0970 (1989)で規格化されているプッシュボタン式液体用微量体積計を用いると操作がより一層簡易になることから好ましい。
【0042】
上記操作により、酸化工程における酸化剤の消費量が算出され、酸化剤の消費量から試料水に含まれていた被酸化物質の含有量を特定することができる。
【0043】
以上のように、本発明によれば、複数本の反応瓶中の試料を同時にかつ均一に加熱できるため、迅速かつ精度よくCODを測定することができる。
また、本発明によれば、試料や試薬の使用量をJIS等の方法に比べて大幅に少量化することで試薬コストおよび廃液処理コストを削減でき、省スペースでよりコストを抑えたCOD測定が可能となる。
【0044】
また、本発明のCOD測定方法は、JIS等の公定法に比べて格段に簡易に実施することができるため、例えば、工場排水中のCODの日常的管理や自主的管理において有効であると同時に、河川、湖沼、海水中のCODの測定など環境管理、さらには環境教育上の教材としても活用可能である。
【0045】
上記実施形態では、CODの測定方法について説明したが、本発明の加熱補助器具4はCODの測定方法に限らず、実施すべき測定、分析等に応じて試料を用いることで、他の測定、分析等において複数の試料を同時に均等に加熱する工程に有効に利用することができる。例えば、水中の水銀の含有量を測定する場合の加熱工程に適用することができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
‐標準液の調製‐
本発明の方法によるCODとJIS法によるCOD(以下、COD
Mn)との相関性を調べるため、L−グルタミン酸−ラクトース一水和物標準液(以下G−L標準液と略称する)を以下の手順で調製した。
【0048】
L−グルタミン酸を105℃で3時間加熱し、放冷後、その0.600gを60℃の水約300mLに溶解し冷却した。
次にラクトース一水和物を80℃で3時間加熱し、放冷後その0.120gをはかりとり、前記の溶液に溶かし、全量フラスコ1000mLに入れ、水を標線まで加えた。この溶液を標準原液とし、10倍に希釈した溶液をCOD
Mn標準液として用いた。この標準液のCOD
Mn値は10±0.5mg/Lである。
【0049】
上記標準液をCOD
Mnでは、25、50、75、100mL用い、本発明の方法においてはその1/10量の、2.5、5.0、7.5、10mL用いて以下の手順でCODの測定を行った。
【0050】
<比較例1>
‐JIS法のCOD
Mn‐
JIS K 0102 17.(2008)に規定されている方法によりCOD測定を行った。
300mLの三角フラスコに試料の適量を加えて水で100mLとした後、硫酸(1+2)を10mL、硝酸銀(200g/L)を5mL加えて良く撹拌した。その後、5mM過マンガン酸カリウムを10mL加え、100℃の湯煎器で30分間加熱した。
30分後、12.5mMシュウ酸ナトリウムを10mL加え、50〜60℃に保温してビュレットを用いて5mM過マンガン酸カリウムで滴定を行い、その滴定結果をaとする。別に空試験として蒸留水に対し同様の操作を行い、その滴定結果をbとするとCODは下記式(1)より求まる。
COD=(a−b)×f×(1000/V)×0.2 (1)
a:試料の滴定値(mL)
b:空試験の滴定値(mL)
f:5mM過マンガン酸カリウムのファクター
V:試料量(mL)
【0051】
<実施例1>
図1及び
図2に示すように、中板6と上板7にそれぞれ同一円上で均等間隔となるように8箇所の位置決め孔16,17と、各孔16,17よりも内側で各孔16,17に一対一の関係で隣接するように8本のポリカーボネート製の支柱9を設けた加熱補助器具4と、10mL容量の標線2を付した8個の反応瓶1を用意し、孔16,17の位置番号(No.1〜No.8)と瓶番号が一致するように各反応瓶1を各孔16,17にそれぞれ挿入した。
【0052】
各反応瓶1には、試料の適量と水を加えて標線2まで満たした。また、PTFE撹拌子3を各反応瓶に1個ずつ加えた。
次に200g/L水酸化ナトリウムを0.1mL、5mM過マンガン酸カリウムを1mLずつ、No.1〜No.8の順で各反応瓶に加えた。
【0053】
次いで、反応瓶1が配置された加熱補助器具4を高周波誘電加熱装置10(Panasonic社製、商品名:NE−EH211)の庫内に入れた。このとき、加熱補助器具4の底板5が高周波誘電加熱装置10の回転テーブル11の内径に収まるように配置した。
高周波誘電加熱装置の蓋体13を閉め、加熱出力500Wで5分間加熱を行った。
【0054】
5分間の加熱後、高周波誘電加熱装置の蓋体13を開け、反応瓶1が配置された加熱補助器具4を取り出し、No.1〜No.8の順で反応停止液を1mL加えた。反応停止液としては、12.5mMのシュウ酸ナトリウムと硫酸(1+2)との混合溶液を用いた。
【0055】
次いで、50〜60℃に保温し、マグネチックスターラ20の上に反応瓶1を載せて撹拌しながら、5mM過マンガン酸カリウムで滴定を行い、その滴定結果をaとした。
別に空試験として蒸留水に対し同様の操作を行い、その滴定結果をbとすると本発明の方法によるCODは、前記式(1)によって求められる。
【0056】
G−L標準液の種々の分量に対し、JISのCOD
Mnで行った結果を
図8に、本発明の方法で行った結果を
図9に、そして、両者の相関を
図10に示す。
図8及び
図9ともに、G−L標準液添加量(G−L標準液濃度)に対し、直線ではなくやや飽和曲線となっている。これは、G−L標準液添加量が少ないほど、反応途中に残っている過マンガン酸イオンの濃度が相対的に高くなり、酸化分解率が幾分大きくなるためであり合理的な結果と言える。そして、この
図8と
図9のデータを基に作製された相関図(
図10)は、G−L標準液に対し、本発明の方法によるCODとJIS法によるCOD
Mnとの間に、0.9以上の良好な相関が得られることを示している。
【0057】
<比較例2>
回転テーブル式の高周波誘電加熱装置10の庫内の回転テーブル上に反応瓶1を複数本ランダムに配置したこと以外は実施例1と同様にしてCODの測定を行った。その結果、配置された場所によってCOD値に差が生じ、精度の高い測定が不能となることが分かった。
回転テーブルの外周付近に配置された反応瓶のCODは、内側および中心に配置されたものよりも約20%高い酸化分解値となった。このことは、マイクロ波光源12から近い位置において、より酸化反応が促進されたものと解される。
【0058】
<比較例3>
同一円上で均等間隔となるように8箇所の位置決め孔と、各位置決め孔に対して孔よりも内側で一つ置きにマイクロ波反射部材(ポリカーボネート製)を4本設けた加熱補助器具と、10mL容量の標線を付した8個の反応瓶1を用意し、位置番号(No.1〜No.8)と瓶番号が一致するように各反応瓶を各孔にそれぞれ挿入した。
その後、実施例1と同様にしてマイクロ波による加熱を行った後、滴定したところ、支柱に隣接していない反応瓶に入れた試料は、支柱に隣接した反応瓶に入れた試料に比べ、COD値が約20%低くなっており、測定むらが大きかった。
【0059】
以上、本発明について説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。例えば、実施形態及び実施例では、八検体を同時に加熱し、CODを測定する場合について説明したが、検体数は八検体に限定されるものではない。また上記実施例では、下水試験方法におけるCOD
−アルカリ性法に基づいた方法について紹介したが、JISのCOD
Mn法の試料及び試薬量を1/10以下にした場合に対しても適用可能である。