(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下側固定刃と上側可動刃により用紙搬送方向と直交する方向に用紙を裁断する裁断機構と、該裁断機構の用紙搬送上流側に配置されて前記用紙を前記裁断機構へ供給する第1搬送ローラ対と、前記裁断機構の用紙搬送下流側に配置された第2搬送ローラ対と、前記第1、第2搬送ローラ対及び前記裁断機構をそれぞれ独立に駆動する駆動部と、該駆動部の作動を制御する制御部と、を備え、前記用紙の後端切除領域(Sr)の用紙搬送方向長さ(Lr)が、所定値(Dn)以上の時には、前記後端切除領域(Sr)を、用紙搬送下流端から順次、所定細断単位長さ(Lr0)に裁断し、分割する、用紙加工装置の制御方法において、
前記制御部は、前記後端切除領域(Sr)中の最後端分割領域(Sr1)の用紙搬送方向長さ(Lr1)が、前記裁断機構の裁断位置(P1)と前記第1搬送ローラ対のニップ位置(P2)との間の距離に相当する最小基準長さ(D1)以上、かつ、前記最小基準長さ(D1)に前記所定細断単位長さ(Lr0)を加えた最大基準長さ(D2)未満である場合には、前記最後端分割領域(Sr1)の下流端縁裁断直後、前記裁断機構の上下の刃を開いた状態に保ち、かつ、前記第1搬送ローラ対を、通常搬送速度よりも低速の制限搬送速度で駆動するように、前記駆動部を制御することを特徴とする、用紙加工装置の制御方法。
前記所定細断単位長さ(Lr0)は、前記裁断機構と前記第2搬送ローラ対との用紙搬送方向の間隔(D3)以下に設定されている、請求項1又は2に記載の用紙加工装置の制御方法。
【背景技術】
【0002】
用紙加工装置として、前記裁断機構と共に、用紙搬送方向と平行に用紙を裁断するスリット形成機構及び用紙に折り目を形成する折り型形成機構等を、カセット方式により適宜組み合わせて使用する装置が、開発されている。
【0003】
図16は、用紙加工装置の裁断機構を示しており、裁断機構201は、上側可動刃201aと下側固定刃201bとを備え、上側可動刃201aを昇降駆動することにより、裁断位置P1にて用紙Nを用紙搬送方向Fと直交する方向に裁断する。裁断機構201の用紙搬送上流側と用紙搬送下流側には、それぞれは上下一対の搬送ローラ202a、202b及び203a、203bからなる搬送ローラ対202,203が配置され、また、用紙搬送下流側の搬送ローラ対203の用紙搬送下流側には紙受け部204が配置されている。
【0004】
図14は、一枚の用紙Nから用紙加工装置により加工される製品(成果物)Qの配列パターンの一例を示しており、この配列パターンでは、裁断加工及び折り型形成加工により、折り目を有する4枚の製品Qが製作される。具体的には、スリット形成機構によって、用紙搬送方向Fと平行な複数のスリット線Eで用紙Nを裁断することにより、用紙搬送幅方向Wの両端及び中間の切除範囲Kを切除し、折り型形成機構によって、用紙搬送方向Fと直交する用紙搬送幅方向Wの折り線Gに沿って折り目を形成し、裁断機構201(
図16)によって、用紙搬送幅方向Wの複数の裁断線C、Crで用紙Nを裁断することにより、前端切除領域(前端マージン)Sf、中間切除領域Sm及び後端切除領域(後端マージン)Srを切除する。
【0005】
図14のような配列パターンで用紙Nを加工する場合、裁断工程においては、
図16に示すように、裁断された前端切除領域Sfの切除片(いわゆるドブ)及び中間切除領域Smの切除片は、裁断機構201と用紙搬送下流側の搬送ローラ対203との間を通って下方に放出され、一方、後端切除領域Srの切除片は、裁断機構201と用紙搬送上流側の搬送ローラ対202との間を通って下方に放出される。
【0006】
ところで、後端切除領域Srは、製品Qの大きさ、数及び配列によって、用紙搬送方向長さLrが異なっており、後端切除領域Srの用紙搬送方向長さLrが大きくなり過ぎると、裁断後、下方に放出できなくなることがある。たとえば、
図17に示すように、後端切除領域Srの用紙搬送方向長さLrが、裁断機構201の裁断位置P1と用紙搬送上流側の搬送ローラ対202のニップ位置P2との距離D1より大きい場合、裁断後の後端切除領域Srの切除片は、通常搬送速度V1で回転する搬送上流側の搬送ローラ対202により、勢い良く搬送方向Fに送り出される。これにより、下側固定刃201bを乗り越えて裁断機構201の用紙搬送下流側で滞留したり、用紙搬送下流側の搬送ローラ対203に挟持されて紙受け部204に排出されたり、あるいは、下側固定刃201bの上で滞留したりする。これらの現象は、用紙詰まりや裁断不良の原因になる。
【0007】
この対策として、本件出願人は、後端切除領域Srの用紙搬送方向長さLrが、所定値以上の場合に、
図18に示すように、後端切除領域Srを、用紙搬送下流端から順に、所定細断単位長さLr0毎に細かく裁断分割する制御方法を考え出している(特許文献1)。前記所定細断単位長さLr0は、細断された分割領域Sr0の切除片が、
図16の裁断機構201と用紙搬送下流側の搬送ローラ対203との隙間から下方に放出できる程度の長さに、設定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図19乃至
図24は、
図18のように後端切除領域Srを裁断分割する場合の裁断工程を、順に示している。
図19及び
図20に示す初期の搬送及び裁断工程では、後端切除領域Srの後端部が用紙搬送上流側の搬送ローラ対202によって挟持された状態で裁断され、裁断された所定細断単位Lr0の分割領域Sr0の切除片は、裁断機構201と用紙搬送下流側の搬送ローラ対203の間から下方に放出される。
【0010】
ところが、後端切除領域Srの裁断分割作業が進み、後端切除領域Srの残存部分が短くなり、
図21のように、後端切除領域Srの後端縁Nbが用紙搬送上流側の搬送ローラ対202のニップ位置P2を通過してしまうと、
図22ように、裁断動作の反動により、後端切除領域Srの残存部分の後端縁Nbが浮き上がり、続いて、
図23のように、後端切除領域Srの残存部分は、下側固定刃201bと用紙搬送上流側の下側搬送ローラ202bとで係止され、落下せずに滞留する。その後、
図24のように、用紙搬送上流側の搬送ローラ対202が、通常搬送速度V1で回転すると、次の用紙Nの前端部と先行する前記後端切除領域Srの残存部分の後端部が重なり、次の用紙Nと共に搬送される。これにより、用紙が詰まったり、用紙に傷が付いたり、あるいは後端切除領域Srの残存部分が紙受け部204まで排出される等の問題が生じていた。
【0011】
本発明の目的は、用紙の後端切除領域を細かく裁断分割して排出する工程を有する用紙加工装置の制御方法において、裁断機構で切除され、下方に排出されるべき切除片が、裁断機構の近傍で滞留することなく、速やかに下方に排出できる、用紙加工装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、下側固定刃と上側可動刃により用紙搬送方向と直交する方向に用紙を裁断する裁断機構と、該裁断機構の用紙搬送上流側に配置されて前記用紙を前記裁断機構へ供給する第1搬送ローラ対と、前記裁断機構の用紙搬送下流側に配置された第2搬送ローラ対と、前記第1、第2搬送ローラ対及び前記裁断機構をそれぞれ独立に駆動する駆動部と、該駆動部の作動を制御する制御部と、を備え、前記用紙の後端切除領域(Sr)の用紙搬送方向長さ(Lr)が、所定値(Dn)以上の時には、前記後端切除領域(Sr)を、用紙搬送下流端から順次、所定細断単位長さ(Lr0)に裁断し、分割する、用紙加工装置の制御方法において、前記制御部は、前記後端切除領域(Sr)中の最後端分割領域(Sr1)の用紙搬送方向長さ(Lr1)が、前記裁断機構の裁断位置(P1)と前記第1搬送ローラ対のニップ位置(P2)との間の距離に相当する最小基準長さ(D1)以上、かつ、前記最小基準長さ(D1)に前記所定細断単位長さ(Lr0)を加えた最大基準長さ(D2)未満である場合には、前記最後端分割領域(Sr1)の下流端縁裁断直後、前記裁断機構の上下の刃を開いた状態に保ち、かつ、前記第1搬送ローラ対を、通常搬送速度よりも低速の制限搬送速度で駆動するように、前記駆動部を制御する。
【0013】
本発明は、上記内容に加え、好ましくは、次の構成を備えている。
(a)前記第1搬送ローラ対の下側搬送ローラが、前記駆動部により駆動される。
【0014】
(b)前記所定細断単位長さ(Lr0)は、前記裁断機構と前記第2搬送ローラ対との用紙搬送方向の間隔(D3)以下に設定されている。
【0015】
(c)前記通常搬送速度は約600mm/秒以上であり、前記制限搬送速度は約500mm/秒以下である。
【発明の効果】
【0016】
(1)本発明によると、用紙の後端切除領域(Sr)の用紙搬送方向長さ(Lr)が長く、そのため、後端切除領域(Sr)の用紙搬送下流端から順に、所定細断単位長さ(Lr0)に細かく裁断分割して排出する場合に、所定細断単位長さ(Lr0)に裁断された切除片だけでなく、最後に残る最後端分割領域(Sr1)の切除片も、滞留することなく、速やかに裁断機構と用紙搬送上流側の第1搬送ローラ対との間から、下方に排出することができる。これにより、用紙が詰まったり、用紙に傷が付いたり、あるいは製品に混ざって紙受け部に排出される、等の課題が解消される。
【0017】
(2)用紙加工装置の作業能率を向上させるには、用紙の通常搬送速度を増加させる必要があるが、通常搬送速度を増加させた場合でも、一時的に用紙搬送上流側の第1搬送ローラ対の搬送速度を低くするだけで、前記課題を解消することができるので、作業能率を向上させながらも、前記課題を解消することができる。
【0018】
(3)裁断機構を開いた状態に保ちつつ、用紙搬送上流側の第1搬送ローラ対を、通常搬送速度より低速に制御するだけであるので、特別な機構を追加する必要がなく、安価に実施することができる。
【0019】
(4)構成(a)によると、用紙搬送上流側の第1搬送ローラ対は、下側搬送ローラが駆動ローラとなっているので、駆動側の下側搬送ローラにより、最後端分割領域(Sr1)の切除片の用紙搬送上流端縁を、確実に、下方に案内することができる。
【0020】
(5)構成(b)によると、所定細断長さ(Lr0)に裁断された切除片は、裁断機構と第2搬送ローラ対との間から、確実に下方に排出される。
【0021】
(6)構成(c)によると、通常搬送速度及び制限搬送速度をそれぞれ約600mm/秒以上及び約500mm/秒以下に設定することにより、前記課題を解決しつつ、作業能率を可及的に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[用紙加工装置の全体構成]
図1は本発明に係る制御方法を実施する用紙加工装置の模式縦断面図である。この
図1において、用紙加工装置は、装置本体1の用紙搬送方向Fの下流端部に紙受け部2を備え、用紙搬送方向Fの上流端部に給紙部3を備え、該給紙部3と紙受け部2との間に、略水平な搬送経路5が構成されている。給紙部3には給紙ローラ8が配置され、搬送経路5には、複数の搬送ローラ対9、10、11、12、13等が用紙搬送方向Fに間隔をおいて配置されると共に、主たる加工機構として、用紙搬送上流側から用紙搬送下流側に向けて、スリット形成機構20、折り型形成機構21及び裁断機構22が配置されている。また、装置本体1内の下端部には、スリット、裁断等の加工により発生するくず紙片を収容するくず箱23が配置されている。
【0024】
スリット形成機構20の用紙搬送上流側には、リジェクト機構25及びCCDセンサー26が配置され、スリット形成機構20の用紙搬送下流側には、切除片落とし機構27が配置されている。スリット形成機構20、折り型形成機構21及び裁断機構22は、それぞれ着脱可能なユニットとして構成されており、カセット方式により、装置本体1内の所望の位置に着脱できる構造となっている。したがって、加工の種類に応じて、各機構20,21,22の配置順序を変更したり、あるいは他の機構(面取り機構、ミシン目形成機構等)と取り替えたり、追加したりすることができる。
【0025】
各搬送ローラ対9,10,11,12,13は、動力伝達機構を介して各ローラ駆動部41、42,43,44にそれぞれ連結されており、各ローラ駆動部41,42,43,44は制御部45に電気的に接続されている。制御部45には、CPUや、RAM及びROM等の記憶装置が内蔵されており、制御部45のインターフェースには、各種作業設定情報を入力し、かつ、表示するための操作パネル46並びにCCDセンサー26が電気的に接続されている。
【0026】
搬送経路5には、さらに、用紙Nの前端縁(用紙搬送下流端縁)Naあるいは用紙後端縁(用紙搬送上流端縁)Nbを検出する複数の光透過式の用紙検出センサー31,32,33,34、35が配置されており、それぞれ制御部45のインターフェースに電気的に接続されている。最も用紙搬送上流側の第1の用紙検出センサー31は、CCDセンサー26の用紙搬送上流側近傍に配置され、次の第2の用紙検出センサー32は,スリット形成機構20の用紙搬送上流側近傍に配置され、次の第3の用紙検出センサー33は,スリット形成機構20の途中に配置され、次の第4の用紙検出センサー34は、折り型形成機構21の用紙搬送上流側近傍に配置され、最も用紙搬送下流側の第5の用紙検出センサー35は、紙受け部2の用紙搬送上流側近傍に配置されている。
【0027】
最も搬送方向上流側の第1の用紙検出センサー31は、給紙部3から用紙Nが供給された後、搬送ローラ対9で把持された用紙Nの前端縁Na又は後端縁Nbを検出し、検出した用紙位置を基準にして、搬送経路5上で搬送されている各用紙Nの位置を一義的に検出する。
【0028】
第2の用紙検出センサー32及び第3の用紙検出センサー33は、用紙Nの詰まりを検出する。第4の用紙検出センサー34は、搬送経路5が長くなって搬送経路5上の用紙Nの用紙搬送方向Fの位置ずれ(搬送誤差)の累積が起こった場合に備えて、第1の用紙検出センサー31で得られた用紙位置情報を修正して、当該用紙位置情報をより正確なものにするために補助的に設置している。第5の用紙検出センサー35は、紙受け部2への製品Qの搬出を検出したり、詰まり等を検出する。
【0029】
本発明は、用紙加工装置のうち、裁断機構22及びその近傍の搬送ローラ対12,13等の制御に関するものであるので、それら以外の各加工機構及び各部については、簡単に説明する。
【0030】
[給紙部3]
給紙部3は、吸引搬送ベルト機構を内蔵しており、給紙トレイ3a上に積載された所定枚数の用紙Nを、吸引搬送ベルト機構8a及び給紙ローラ8bにより、上端から順に、一枚ずつ搬送経路5に供給する。給紙ローラ8及び吸引搬送ベルト機構は、給紙用駆動部47に接続され、該給紙用駆動部47は制御部45に電気的に接続されている。
【0031】
[CCDセンサー26]
CCDセンサー26は、前記操作パネル46による各種作業設定情報の手動入力とは別に、自動的に前記作業設定情報を読み取ることができるように設置されている。具体的には、
図14に示すような用紙Nの前端隅部に印刷された位置マークM1の画像を読み取って、用紙Nの用紙搬送方向F及び用紙搬送方向と直交する用紙搬送幅方向Wの加工の基準位置を検出するとともに、用紙Nの前端部に印刷されたバーコードM2の画像を読み取って用紙Nに施されるべき各種作業設定情報を取得する。作業設定情報としては、たとえば、用紙Nの用紙搬送方向Fの全長La及び全幅に加え、加工される製品Qの寸法、数及び配置に応じた各裁断線C,C,Cr、E及び折り線Gの位置等である。なお、
図14の長さLbは、用紙Nの前端縁Naから後端切除領域Srの搬送下流端の裁断線Crまでの長さを示している。
【0032】
[リジェクト機構25]
図1のリジェクト機構25は、印刷された位置マークM1やバーコードM2が不鮮明であるためにCCDセンサー26による読取が不能であった場合、その用紙Nに対して、作動し、読取不能の用紙Nを落下させて廃棄トレイ25aで回収する。
【0033】
[スリット形成機構20]
スリット形成機構20は、該実施の形態では、用紙搬送方向Fに3つのユニット部を並べており、各ユニット部には、上下の回転刃からなる回転刃対36が、それぞれ搬送幅方向Wに間隔を置いて2組ずつ配置されている。下側の回転刃は、動力伝達機構を介してモータ等の回転刃駆動機構48に連結されている。すなわち、回転刃駆動部48の駆動力で下側の各回転刃を回転させることにより、用紙Nに対して、用紙搬送方向Fと平行にスリットを形成するようになっている。前記各回転刃対36の搬送幅方向Wの間隔は任意に変更可能である。
【0034】
[切除片落とし機構27]
切除片落とし機構27は、前記スリット形成機構20の裁断によって生じる切除片(
図14の切除領域K)を、搬送経路5の外側に排除するためのものであり、用紙Nが切除片落とし機構27を通過する際に、前記切除片をくず箱23へ落下させる。
【0035】
[折り型形成機構21]
折り型形成機構21は、上端凹部を有する下型21Bと、前記凹部に嵌合する下端凸部を有する上型21Aとを備えており、前記上型21Aは、モータ等の型駆動部49に動力伝達機構を介して連結されている。すなわち、折り型駆動部49の駆動力で上型21Aを下降させることにより、用紙Nに対して、用紙搬送方向Fと直交する用紙搬送幅方向Wに折り目を形成する。
【0036】
[裁断機構22]
裁断機構22は、用紙搬送幅方向Wに延びる下側固定刃22Bと上側可動刃22Aとから構成されており、上側可動刃22Aは、動力伝達機構を介してモータ等の裁断駆動部50に連結されている。なお、説明の都合上、裁断機構22の用紙搬送上流側の搬送ローラ対12を第1搬送ローラ対、裁断機構22の用紙搬送下流側の搬送ローラ対13を第2搬送ローラ対と称して、以下説明する。ちなみに、前記第1の搬送ローラ対12及び第2の搬送ローラ対13は、ローラ駆動部43,44にそれぞれ連結された駆動側の下側搬送ローラ12B,13Bと、従動側の上側搬送ローラ12A、13Aとから構成されている。
【0037】
図2は、裁断機構22の具体例であり、下側固定刃22Bは用紙搬送幅方向Wに延びるように略水平に配置され、上側可動刃22Aは、水平に対して、刃先部22Aaから刃元部22Abに行くに従って低くなるように傾斜しており、用紙搬送方向Fの上流側に配置された上側ガイド体29に沿って上下方向に移動する。
【0038】
上側可動刃22Aの刃元部22Abは、平行リンク機構51、クランク機構52及びギヤ伝動機構53を介して、裁断駆動部(駆動モータ)50に連動連結されており、裁断駆動部50の駆動動力により、上側可動刃22Aは、傾斜状態を保って上下方向に平行移動される。
【0039】
図3に示すように、裁断機構22は、上端の用紙搬送幅方向Wの両端部に取付片56を備えており、これらの取付片56が、装置本体1の一対の縦壁1aの上端部に設けられた支持台57に、ボルトユニット58により固定されている。また、裁断機構22の下端は、両縦壁1a間に架設されたクロス部材59上に載置されている。
【0040】
前記ボルトユニット58は、振動等によっては緩まないような構造となっている。すなわち、
図5において、ボルトユニット58は、ボルト軸部60と、該ボルト軸部60の上端に固着されたボルト頭部61と、ボルト軸部60に軸方向移動可能に嵌合する押さえリング63と、該押さえリング63とボルト頭部61との間に縮設されたコイルばね62とから構成されている。ボルト軸部60は下端部におねじ部60aが形成されると共に、該おねじ部60aの上端につば部60bが一体に形成されている。押さえリング63は、下面に凹部63aが形成されており、該凹部63a内にボルト軸部60のつば部60bが収納されている。コイルばね62で押さえリング63を下方に付勢することにより、押さえリング63をつば部60bの上面に押し付けている。
【0041】
裁断機構22を組み付ける際には、
図4に示すように、裁断機構22の取付片56を装置本体1の支持台57上に載せ、ボルト軸部60の下端おねじ部60aを、取付片56のボルト挿通孔56aに挿通すると共に、
図6に示すように、支持台57のめねじ孔57aに螺合する。おねじ部60aがめねじ孔57aにねじ込まれると、まず、押さえリング63の下端が取付片56に当接し、さらにねじ込まれることにより、押さえリング63によりコイルばね62が圧縮される。この圧縮されたコイルばね62の弾性力により、ボルト頭部61を介してボルト軸部60を上方に付勢し、おねじ部60aの歯面をめねじ孔57aの歯面に圧接する。これにより、激しい振動に対しても、ボルトユニット58が緩むことはない。
【0042】
[用紙の製品配列パターン]
前述の従来技術の欄で既に説明しているが、
図14に示す製品Qの配列パターンは、一枚の用紙Nから折り目を有する4枚の製品Qを製作するようになっている。基本的には、用紙搬送幅方向Wに延びる4本の裁断線C、Crと、用紙搬送方向Fと平行に延びる4本のスリット線Eと、用紙搬送幅方向Wに延びる4本の折り線Gが設定されており、これらの裁断線C,Cr及びEで用紙Nを裁断し、折り線Gで折り目を形成することにより、折り目を有する4枚の製品Qを製作する。
【0043】
(裁断機構22に関する制御部45による制御内容)
図1の制御部45には、裁断工程に関して、次のような段階のプログラムが組み込まれている。
(1)第1の段階として、
図1の操作パネル46あるいはCCDセンサー26からの各種作業設定情報の入力値に基づき、
図14に示す後端切除領域Srの用紙搬送方向長さLrが、所定値Dn以上か否かを判別する。所定値Dn以上であると判別した場合には、
図15に示すように、後端切除領域Srを、用紙搬送下流端から順に、所定細断単位長さLr0に裁断分割するための分割用の裁断線Cr0、Cr1等を設定する。
【0044】
前記所定細断単位長さLr0は、細断された分割領域Sr0の切除片が、
図8に示すように、裁断機構22と用紙搬送下流側の第2搬送ローラ対13の隙間D3から速やかに下方に放出できる程度の長さに設定されている。裁断分割するか否かの判断基準となる前記所定値Dnは、
図7に示すように、裁断機構22の裁断位置P1と第1搬送ローラ対12のニップ位置P2との距離に相当する後述の最小基準長さD1に、前記所定細断単位長さLr0を加えた長さ(後述する最大基準長さD2)あるいはそれ以上の値に設定される。ただし、長い後端切除領域Srが分割されずにそのまま第2搬送ローラ対13側へ搬送されるのを防ぐために、前記所定値Dnは、前記最大基準長さD2以上で、この最大基準長さD2にさらに所定細断単位長さLr0を加えた長さ未満の値に設定される。
【0045】
(2)第2の段階として、
図10のように、最後に残る最後端分割領域Sr1の用紙搬送方向長さLr1が、裁断位置P1と第1搬送ローラ対12のニップ位置P2との距離に相当する前述の最小基準長さD1以上で、この最小基準長さD1に前記所定細断単位長さLr0を加えた前述の最大基準長さD2未満となった時点で、
図15の分割用の裁断線C0,Cr1等の設定を終了する。
【0046】
該実施の形態では、所定細断単位長さLr0を14mmに設定し、最小基準長さD1を25mmに設定し、最大基準長さD2を28mm(25mm+3mm)に設定しており、細かく裁断分割するか否かの判断基準となる所定値Dnも、39mm(25mm+14mm)に設定してある。
【0047】
たとえば、
図14の後端切除領域Srの用紙搬送方向長さLrが60mmの場合は、所定値Dn=39mmより大きいので、
図15に示すように、後端切除領域Sr内には、用紙搬送下流端側から順に、2本の分割用裁断線Cr0、Cr1が設定され、残る最後端分割領域Sr1は、その搬送方向長さLr1が60mm−14mm×2=32mmとなるので、分割用裁断線が設定されずに残される。すなわち、最後端切除領域Sr1は、その用紙搬送方向長さLr1=32mmが、最小基準長さD1=25mm以上で、最大基準長さD2=39mm未満の範囲に収まるので、分割用裁断線が設定されずに、残されることになる。
【0048】
(3)第3の段階は、裁断機構22及び第1搬送ローラ対12の実質的な動作制御であり、
図7乃至
図12に示すように、後端切除領域Srの裁断線Crでの裁断から、途中、分割用の第1の裁断線Cr0を経て、分割用の第2の裁断線Cr1に至るまでの裁断作業では、第1搬送ローラ対12を通常搬送速度V1(たとえば、600mm/秒あるいはそれ以上)で駆動するように制御し、
図10の分割用の第2の裁断線Cr1での裁断後は、
図11及び
図12に示すように、裁断機構22を開いた状態、すなわち、上側可動刃22Aを上昇させた状態を保ちつつ、通常搬送速度V1よりも低い制限搬送速度V2(たとえば、500mm/秒あるいはそれ以下)で、一時的に、第1搬送ローラ対12を駆動するように、制御する。
【0049】
図13は、前記第3の段階における第1、第2搬送ローラ対12,13及び裁断機構22の動作を、タイムチャートで示したものである。T0は、後端切除領域Srの裁断開始(Cr)から最後端分割領域Sr1の排出完了までの時間を示し、T1,T2,T3は、それぞれ各裁断線Cr及び分割用の裁断線Cr0,Cr1での裁断作業時間を示し、T4,T5は、裁断線Cr、Cr0で裁断後、第1搬送ローラ対12により通常搬送速度V1で搬送される搬送時間を示し、T6は、分割用の第2の裁断線Cr1で裁断後、第1搬送ローラ対12により制限搬送速度V2で最後端分割領域Sr1の切除片を排出する作業時間を示している。
【0050】
[用紙加工装置の全体作業の概要]
(1)
図1において、操作パネル46により、用紙の大きさ、種類及び製品の配列、数及び寸法に関する各種作業設定情報を入力する。なお、この手動入力の代わり、あるいは、手動入力と協働して、CCDセンサー26によるバーコードM2等の読み取りにより、作業設定情報を自動的に入力させることもできる。
【0051】
(2)
図1の給紙部3のトレイ3a上に積載された複数の用紙Nを、吸引搬送ベルト機構8a及び給紙ローラ8bにより、上端から一枚ずつ搬送経路5に供給する。
【0052】
(3)CCDセンサー26により、用紙Nの位置マークM1並びに、必要に応じてバーコードM2を読み取って用紙Nに施されるべき各種作業設定情報を取得する。
【0053】
(4)CCDセンサー44による読取が不能であった場合、その用紙Nに対して、作動し、読取不能の用紙Nを落下させて廃棄トレイ25aで回収する。
【0054】
(5)スリット形成機構20では、用紙搬送方向Fと平行な複数のスリット線Eで用紙Nを裁断する。
【0055】
(6)切除片落とし機構27では、前記スリット形成機構20によって裁断された切除片(
図14の切除領域K)を、くず箱23へ落下させる。
【0056】
(7)折り型形成機構21では、用紙搬送幅方向Wの折り線Gで、折り目を形成する。
【0057】
(8)裁断機構22では、第1搬送ローラ対12により、まず、通常搬送速度V1で用紙Nを裁断機構22に送り込み、
図14の各裁断線C、Crで順次裁断する。裁断された前端切除領域Sf及び中間切除領域Smの各切除片は、
図7のように、裁断機構22と第2搬送ローラ対13との間を通過して、下方のくず箱23に排出される。一方、後端切除領域Srの切除片は、その用紙搬送方向長さLrの値により、次のように異なる方法により排除される。
【0058】
(8−1)
図7において、後端切除領域Srの用紙搬送方向長さLrが、前記所定値Dn以上の場合には、
図7乃至
図10に示すように、後端切除領域Srを、用紙搬送向下流端から順に、所定細断単位長さLr0の分割領域Sr0毎に裁断する。裁断された切除片(Sr0)は、裁断機構22と第2搬送ローラ対13との間から、順次下方のくず箱23に排出する。この場合、第1搬送ローラ対12の搬送速度は、通常搬送速度V1である。
【0059】
そして、
図10のように、分割用の最後の裁断線Cr1が裁断された後は、
図11のように、上側可動刃22Aを上昇させて、裁断機構22を開いた状態に保ち、第1搬送ローラ対12を、制限搬送速度V2でゆっくり回転させる。これにより、最後端切除領域Sr1の切除片は、前部が下側固定刃22Bに支持されつつ、後端縁Nbが、第1搬送ローラ対12の下側の搬送ローラ12Bにより、ゆっくりと前下方にガイドされる。そして、最後に、
図12に示すように、最後端分割領域Sr1は、大きく縦向きに傾斜した状態で、裁断機構22と第1搬送ローラ対12との間を通り、速やかに下方のくず箱23に放出される。
【0060】
(8−2)
図14に示す後端切除領域Srの用紙搬送方向長さLrが、前記所定値Dn未満の場合には、
図7乃至
図10に示すような裁断分割作業を行わない。すなわち、裁断線Crにより裁断後、後端切除領域Srは、裁断機構22と第1搬送ローラ対12との間から下方に排出される。裁断線Crで裁断する時には、少なくとも、製品Qの領域が第2ローラ対13に挟持されているので、前記
図22の従来例のように、後端切除領域Srの後端縁Nbが浮き上がることはなく、滞留する心配はない。
【0061】
ただし、後端切除領域Srの用紙搬送方向長さLrが、所定値Dn未満であっても、前記最小基準値D1より大きい場合には、前記
図11及び
図12のように(前記8−1の制御と同様に)、後端切除領域Srの裁断後、上側可動刃22Aを上昇させて、裁断機構22を開いた状態に保ち、第1搬送ローラ対12を、通常搬送速度よりも低い制限搬送速度V2でゆっくり回転させ、確実に後端切除領域Srの切除片を排出させることもできる。
【0062】
[実施の形態の効果]
(1)
図7乃至
図10のように、用紙Nの後端切除領域Srを、所定細断単位長さLr0毎に細かく裁断し、分割する場合に、
図10に示すように、最後端分割領域Sr1の用紙搬送方向長さLr1が、裁断機構22の裁断位置P1と第1搬送ローラ対12のニップ位置P2との間の距離に相当する最小基準長さD1以上、かつ、前記最小基準長さD1に所定細断単位長さLr0を加えた最大基準長さD2未満である時には、
図11のように、最後端分割領域Sr1の下流端縁裁断直後、裁断機構22を開いた状態に保ち、かつ、第1搬送ローラ対12を、通常搬送速度V1よりも低速の制限搬送速度V2で駆動するので、最後端分割領域Sr1の切除片の後端縁(Nb)は、駆動側の下側搬送ローラ12Bに載せられて、ゆっくりと前下方に導かれ、裁断機構22と第1搬送ローラ対12との間を通過して、確実に下方のくず箱23へ放出される。これにより、用紙が詰まったり、用紙に傷が付いたり、あるいは製品に混ざって紙受け部に排出される、等の課題が解消される。
【0063】
(2)裁断機構22の用紙搬送上流側に配置された第1搬送ローラ対12は、下側搬送ローラ12Bが駆動ローラとなっているので、前記最後端分割領域Sr1をガイドする際、確実に回転し、ガイドすることができる。
【0064】
(3)所定細断単位長さLr0は、裁断機構22と第2搬送ローラ対13との用紙搬送方向Fの間隔D3以下に設定されているので、所定細断単位長さLr0に分割された分割領域Sr0の切除片は、裁断機構22と用紙搬送下流側の第2搬送ローラ対13との間から確実に下方に放出され、滞留することがない。
【0065】
(4)通常搬送速度を約600mm/秒あるいはそれ以上とし、制限搬送速度は約500mm/秒あるいはそれ以下としていると、用紙加工装置全体における作業能率を向上させつつ、前記用紙詰まり等の課題を確実に解消することができる。
【0066】
(1)前記実施の形態の用紙加工装置は、用紙搬送方向Fと直交する用紙搬送幅方向Wに用紙を裁断する裁断機構22と共に、用紙搬送方向Fと平行なスリットを形成するスリット形成機構20及び用紙搬送幅方向Wに折り目を形成する折り型形成機構21を備えているが、裁断機構のみを備えた用紙加工装置や、裁断機構と他の加工機構(ミシン目形成機構、丸み形成機構等も含む)とを適宜組み合わせた用紙加工装置、更には加工機構、搬送ローラ対の数が前記実施の形態と異なる用紙加工装置にも、本発明を適用できることはいうまでもない。