【実施例】
【0033】
<実施例1>
平均粒径0.3μmの酸化チタン100重量部と、平均粒径が6.2μmの炭酸リチウム32.8重量部とをアイリッヒミキサーで10分間混合して乾式混合物を得た。
【0034】
次に、44.3重量部の水に水酸化リチウム・一水和物を5.4重量部溶解させ、水酸化リチウム・一水和物の水溶液を得た。
【0035】
上記の乾式混合物を万能混合機で掻き混ぜながら、上記の水酸化リチウム・一水和物の水溶液を加え10分間捏和混練して混練物を得た。
【0036】
上記の各処理により、本実施例では、酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する炭酸リチウム及び水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の総量の原子比が4.05/5となり、炭酸リチウムに含まれるリチウム元素の量に対する水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の量の原子比が0.14となり、酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせたもの(上記の乾式混合物)に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が0.37となる。
【0037】
上記の混練物をφ2mmの押し出し金型が装着された1軸押出造粒機で押し出しながらカットし、φ2mm×長さ5mm程度の造粒物を得た。そして、その造粒物を800℃で3時間焼成して焼成物を得た。
【0038】
上記の焼成物をジェットミルにて粉砕して微粉状のチタン酸リチウムを得た。
図5は、このチタン酸リチウムのX線回折スペクトル図(X線源:Cu−Kα)である。2θ=18.37°付近にはチタン酸リチウムの主成分であるLi
4Ti
5O
12の(100)面を示すX線回折ピークが現れ、2θ=27.44°付近には残留物であるルチル型酸化チタン(r−TiO
2)の(100)面を示すX線回折ピークが現れている。
【0039】
なお、残留物であるアナターゼ型酸化チタン(a−TiO
2)の(100)面を示すX線回折ピークは2θ=25.30°付近に現れ、副生成物であるLi
2TiO
3の(−133)面を示すX線回折ピークは2θ=43.73°付近に現れるが、本実施例では、残留物であるアナターゼ型酸化チタン(a−TiO
2)および副生成物であるLi
2TiO
3が含まれていない或いは微量にしか含まれていないため、これらのピークは現れていない。
【0040】
<実施例2>
酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせたもの(上記の乾式混合物)に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が0.60となるように、水酸化リチウム・一水和物を溶解させる水の量を変えた以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0041】
<実施例3>
酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせたもの(上記の乾式混合物)に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が0.22となるように、水酸化リチウム・一水和物を溶解させる水の量を変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0042】
<実施例4>
酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせたもの(上記の乾式混合物)に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が0.80となるように、水酸化リチウム・一水和物を溶解させる水の量を変更し、混練物を熱風循環式乾燥機にて150℃で2時間乾燥させた後に1軸押出造粒機で造粒した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0043】
<実施例5>
酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する炭酸リチウム及び水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の総量の原子比が4.02/5で、炭酸リチウムに含まれるリチウム元素の量に対する水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の量の原子比、および酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせた乾式混合物に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が実施例1と同様になるように、原料の配合および水の量を変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0044】
<実施例6>
酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する炭酸リチウム及び水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の総量の原子比が4.27/5で、炭酸リチウムに含まれるリチウム元素の量に対する水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の量の原子比、および酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせた乾式混合物に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が実施例1と同様になるように、原料の配合および水の量を変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0045】
<実施例7>
酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する炭酸リチウム及び水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の総量の原子比が4.35/5で、炭酸リチウムに含まれるリチウム元素の量に対する水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の量の原子比、および酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせた乾式混合物に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が実施例1と同様になるように、原料の配合および水の量を変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0046】
<実施例8>
酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する炭酸リチウム及び水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の総量の原子比が4.00/5で、炭酸リチウムに含まれるリチウム元素の量に対する水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の量の原子比、および酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせた乾式混合物に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が実施例1と同様になるように、原料の配合および水の量を変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0047】
<実施例9>
酸化チタンの平均粒径を1.0μmに変更し、炭酸リチウムの平均粒径を10.5μmに変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0048】
<実施例10>
炭酸リチウムの平均粒径を10.5μmに変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0049】
<実施例11>
炭酸リチウムの平均粒径を2.5μmに変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0050】
<実施例12>
炭酸リチウムの平均粒径を18.5μmに変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0051】
<実施例13>
炭酸リチウムの平均粒径を1.0μmに変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0052】
<実施例14>
炭酸リチウムの平均粒径を25.0μmに変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0053】
<実施例15>
焼成温度を900℃に変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0054】
<実施例16>
焼成温度を700℃に変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0055】
<実施例17>
焼成温度を920℃に変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0056】
<実施例18>
焼成温度を680℃に変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0057】
<実施例19>
炭酸リチウムに含まれるリチウム元素の量に対する水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の量の原子比が0.20で、酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する炭酸リチウム及び水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の総量の原子比、および酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせた乾式混合物に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が実施例1と同様になるように、原料の配合および水の量を変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0058】
<実施例20>
炭酸リチウムに含まれるリチウム元素の量に対する水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の量の原子比が0.08で、酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する炭酸リチウム及び水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の総量の原子比、および酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせた乾式混合物に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が実施例1と同様になるように、原料の配合および水の量を変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0059】
<実施例21>
炭酸リチウムに含まれるリチウム元素の量に対する水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の量の原子比が0.45となり、尚かつ、酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせた乾式混合物に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が0.60で、酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する炭酸リチウム及び水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の総量の原子比が実施例1と同様になるように、原料の配合および水の量を変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0060】
<実施例22>
炭酸リチウムに含まれるリチウム元素の量に対する水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の量の原子比が0.05で、酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する炭酸リチウム及び水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の総量の原子比、および酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせた乾式混合物に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が実施例1と同様になるように、原料の配合および水の量を変更した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0061】
<実施例23>
酸化チタンと、炭酸リチウムと、水酸化リチウム・一水和物の水溶液とを一斉に混合・混錬した以外は実施例1と同様の処理を行った。本実施例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0062】
<比較例1>
乾式混合物と水酸化リチウム・一水和物の水溶液とを合わせた後混練せずに造粒した以外は実施例1と同様の処理を行った。本比較例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0063】
<比較例2>
平均粒径0.3μmの酸化チタン100重量部と、平均粒径が6.2μmの炭酸リチウム37.5重量部とをアイリッヒミキサーで10分間混合して乾式混合物を得た。
【0064】
上記の処理により、本比較例では、酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する炭酸リチウム及び水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の総量の原子比が4.05/5となり、炭酸リチウムに含まれるリチウム元素の量に対する水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の量の原子比が0となり、酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせたもの(上記の乾式混合物)に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が0.00となる。
【0065】
上記の乾式混合物を800℃で3時間焼成して焼成物を得た。この焼成物をジェットミルにて粉砕して微粉状のチタン酸リチウムを得た。本比較例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0066】
<比較例3>
炭酸リチウムの平均粒径を1.0μmに変更した以外は比較例2と同様の処理を行った。本比較例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0067】
<比較例4>
炭酸リチウムの平均粒径を25.0μmに変更した以外は比較例2と同様の処理を行った。本比較例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0068】
<比較例5>
焼成温度を920℃に変更した以外は比較例2と同様の処理を行った。本比較例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0069】
<比較例6>
焼成温度を680℃に変更した以外は比較例2と同様の処理を行った。本比較例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0070】
<比較例7>
炭酸リチウムに含まれるリチウム元素の量に対する水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の量の原子比が0.08となり、尚かつ、酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせ乾式混合物に対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が0.16で、酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する炭酸リチウム及び水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の総量の原子比が実施例1と同様になるように、原料の配合および水の量を変更した以外は比較例1と同様の処理を行った。本比較例のチタン酸リチウムについてもX線回折を行ったが、X線回折スペクトル図の図示は省略する。
【0071】
<分析装置>
上記の実施例1〜23および比較例1〜7で使用した分析装置は、下記の通りである。
X線回折装置:株式会社リガク製Ultima4(Cu−Kα線測定)
【0072】
<電極の作製>
活物質として実施例1〜23および比較例1〜7で得られた各チタン酸リチウムを用いて各電極を作製した。具体的には、まず、ポリフッ化ビニリデン10重量部をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させ、次に導電助剤としてアセチレンブラックを10重量部、実施例1〜23および比較例1〜7で得られたチタン酸リチウム80重量部を加え、ディスパーにて30分混錬することにより塗料を作成した。この塗料をアルミ箔上に65g/m
2程度になるように塗布し、その後150℃で真空乾燥しプレスした後、φ13mの円形状に打ち抜いた。
【0073】
<セルの組み立て>
上記で作製した各電極を用い、
図6に示すコイン型セル20を組み立てた。コイン型セル20は、上ケース25aと下ケース25bとの間に、電極21、対極22、及びセパレータ24を挟み込み、上ケース25aと下ケース25bの周囲をガスケット26で封止し、上ケース25aおよび下ケース25bの内部を電解液23で充填して作製された。
【0074】
対極22には金属リチウム板を用いた。電解液23にはエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート1:1v/v%にLiPF
6を1mol/L溶解したものを用いた。セパレータ24にはポリプロピレン多孔膜を用いた。
【0075】
<電池評価方法>
ここで、上記のようなコイン型セルでは、対極22に金属リチウム板を使用しているため、各電極21の電位は対極22に対して貴となる。よって充放電によるリチウムイオンの挿入・脱離の方向は各電極21をリチウムイオン二次電池の負極として用いたときと反対になる。しかし、以下において、便宜的にリチウムイオンが各電極21から脱離する方向を放電、各電極21に挿入される方向を充電と表現する。
【0076】
上記のコイン型セル20を用いて、充放電レート0.2Cで、室温にて金属リチウム基準で1.0〜2.5Vの電位範囲で充放電を行い、初回放電容量を測定した。
【0077】
<各実施例および各比較例の製造条件および評価結果に関する考察>
図7は、各実施例および各比較例の製造条件および評価結果の一覧を示すテーブルである。
【0078】
(特許文献1で提案されている従来の製造方法との比較)
図8は、
図7に示すテーブルから実施例1,13,14,17,18および比較例2〜6を抜粋したテーブルである。実施例1と比較例2との比較、実施例13と比較例3との比較、実施例14と比較例4との比較、実施例17と比較例5との比較、及び実施例18と比較例6との比較から明らかなように、本発明に係る製造方法は、共通する製造条件を揃えた特許文献1で提案されている従来の製造方法に比べて、チタン酸リチウム中の副生成物Li
2TiO
3や残存物(a−TiO
2、r−TiO
2)が少ないことが実証され、また、本発明に係る製造方法で得られるチタン酸リチウムを電極活物質として用いた電極は、共通する製造条件を揃えた特許文献1で提案されている従来の製造方法で得られるチタン酸リチウムを電極活物質として用いた電極に比べて電極容量が大きくなることも実証された。
【0079】
(混練の必要性および乾式混合の任意性)
図9は、
図7に示すテーブルから実施例1,23および比較例1,2を抜粋したテーブルである。
【0080】
比較例1は、本発明に係る製造方法とも特許文献1で提案されている従来の製造方法とも異なる製法であり、乾式混合物と水酸化リチウム・一水和物の水溶液とを合わせた後混練せずに造粒した以外は本発明に係る製造方法に属する実施例1と同様である。
【0081】
比較例1と比較例2とを比較すれば明らかなように、比較例1の製造方法で得られるチタン酸リチウムは、特許文献1で提案されている従来の製造方法に属する比較例2の製造方法で得られるチタン酸リチウムと大差ない。
【0082】
ところが、実施例1と比較例1とを比較すれば明らかなように、比較例1の製造方法に混練処理を追加して実施例1の製造方法にすることで、チタン酸リチウム中の副生成物Li
2TiO
3や残存物(a−TiO
2、r−TiO
2)を飛躍的に低減することができ、また、電極容量を飛躍的に大きくすることができる。これは、混練が実行されないと、酸化チタンが難水溶性リチウム化合物と水溶性リチウム化合物とで挟まれた構造がほとんど形成されないためであると考えられる。したがって、本発明の製造方法において、混練の処理は必須である。
【0083】
また、実施例23と比較例1,2とを比較すれば明らかなように、乾式混合を実施しなくても、チタン酸リチウム中の副生成物Li
2TiO
3や残存物(a−TiO
2、r−TiO
2)を飛躍的に低減することができ、また、電極容量を飛躍的に大きくすることができる。これは、乾式混合が実行されなくていなくても混練が実行されていれば、酸化チタンが難水溶性リチウム化合物と水溶性リチウム化合物とで挟まれた構造が多く形成されているためであると考えられる。したがって、本発明の製造方法において、乾式混合の処理は任意である。
【0084】
但し、実施例23と実施例1との比較から明らかなように、乾式混合の処理を実行した方が、チタン酸リチウム中の副生成物Li
2TiO
3や残存物(a−TiO
2、r−TiO
2)をより一層低減することができ、また、電極容量をより一層大きくすることができる。これは、混練の前に乾式混合が実行されていれば、酸化チタンが難水溶性リチウム化合物と水溶性リチウム化合物とで挟まれた構造がより一層多く形成されているためであると考えられる。したがって、本発明の製造方法において、混練の前に乾式混合が実行されることが好ましい。
【0085】
(水溶液の量)
図10は、
図7に示すテーブルから実施例1〜4および比較例7を抜粋したテーブルである。
【0086】
比較例7では、酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせたものに対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が0.16と小さく水の量が少ないため、混練の処理が実行できない。水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が0.16であっても混練の処理が実行できるようにするには、水酸化リチウム・一水和物の水溶液とは別に水を加える等の処理(例えば酸化チタンと炭酸リチウムとを水を加えて湿式混合する処理等)を行う必要がある。これに対して、実施例3では、酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせたものに対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が0.22であり、この条件においては水酸化リチウム・一水和物の水溶液とは別に水を加える等の処理を行うことなく混練の処理が実行できる。したがって、酸化チタン及び難水溶性リチウム化合物を合わせたものに対する水溶性リチウム化合物の水溶液の重量比が0.2以上であることが好ましい。
【0087】
また、実施例2では、酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせたものに対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が0.60であり、混練物を乾燥させる処理を行うことなく造粒の処理が実行できる。これに対して、実施例4では、酸化チタン及び炭酸リチウムを合わせたものに対する水酸化リチウム・一水和物の水溶液の重量比が0.80であり、混練物を乾燥させてからでなければ造粒の処理が実行できない。この混練物を乾燥させるのに必要なエネルギーは、酸化チタン及び難水溶性リチウム化合物を合わせたものに対する水溶性リチウム化合物の水溶液の重量比が大きくなればそれに従って大きくなる。混練物を乾燥させるのに必要なエネルギーを勘案して、酸化チタン及び難水溶性リチウム化合物を合わせたものに対する水溶性リチウム化合物の水溶液の重量比は1以下にすることが好ましく、混練物を乾燥させるのに必要なエネルギーが不要となる0.6以下がより好ましい。
【0088】
(異種リチウム化合物間のリチウム元素の原子比)
図11は、
図7に示すテーブルから実施例1,19〜22を抜粋したテーブルである。
【0089】
実施例22と実施例1,19〜21とを比較すれば明らかなように、実施例1の製造方法で得られるチタン酸リチウムは、実施例1,19〜21の製造方法で得られるチタン酸リチウムに比べて初回放電容量が劣っている。これは、実施例22では、炭酸リチウムに含まれるリチウム元素の量に対する水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の量の原子比が0.05と小さく水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の量が少ないため、酸化チタンが難水溶性リチウム化合物と水溶性リチウム化合物とで挟まれた構造の形成量が少なくなることが原因であると考えられる。これに対して、実施例1,19〜21の製造方法で得られるチタン酸リチウムそれぞれについては性能の差はさほどない。したがって、難水溶性リチウム化合物に含まれるリチウム元素の量に対する水溶性リチウム化合物に含まれるリチウム元素の量の原子比は0.08以上が好ましい。但し、難水溶性リチウム化合物に含まれるリチウム元素の量に対する水溶性リチウム化合物に含まれるリチウム元素の量の原子比が大きくなると、水溶性リチウム化合物にかかるコストが高くなるので、0.45以下であることが好ましく、0.14以下であることがより好ましい。
【0090】
(チタン元素とリチウム元素との原子比)
図12は、
図7に示すテーブルから実施例1,5〜8を抜粋したテーブルである。
【0091】
実施例8と実施例1,5,6とを比較すれば明らかなように、実施例8の製造方法で得られるチタン酸リチウムは、実施例1,5,6の製造方法で得られるチタン酸リチウムに比べて初回放電容量が劣っている。これは、焼成時にリチウム元素が揮散するので、酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する難水溶性リチウム化合物及び水溶性リチウム化合物に含まれるリチウム元素の総量の原子比が理論値(Li
4Ti
5O
12のチタン元素の量に対するリチウム元素の量)である4/5の場合はリチウム元素が不足するためであると考えられる。したがって、酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する難水溶性リチウム化合物及び水溶性リチウム化合物に含まれるリチウム元素の総量の原子比は4/5より大きいことが好ましい。
【0092】
実施例7と実施例1,5,6とを比較すれば明らかなように、実施例7の製造方法で得られるチタン酸リチウムは、実施例1,5,6の製造方法で得られるチタン酸リチウムに比べて初回放電容量が劣っている。但し、焼成温度を高くすれば、リチウム元素の揮散量が増加するので、実施例7における酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する炭酸リチウム及び水酸化リチウム・一水和物に含まれるリチウム元素の総量の原子比である4.35/5よりも大きくした方が好ましい場合もある。したがって、酸化チタンに含まれるチタン元素の量に対する難水溶性リチウム化合物及び水溶性リチウム化合物に含まれるリチウム元素の総量の原子比は4.6/5より小さいことが好ましく、4.35/5より小さいことがより好ましい。
【0093】
(酸化チタンおよび難水溶性リチウム化合物の平均粒子径)
図13は、
図7に示すテーブルから実施例1,9〜14を抜粋したテーブルである。
【0094】
実施例13,14と実施例1,9〜12とを比較すれば明らかなように、実施例13,14の製造方法で得られるチタン酸リチウムは、実施例1,9〜12の製造方法で得られるチタン酸リチウムに初回放電容量が比べて劣っている。当該比較から、酸化チタンの平均粒子径に対する難水溶性リチウム化合物の平均粒子径の比に関しては、3より大きく85より小さい範囲であれば、本発明に係る製造方法で得られるチタン酸リチウムの中でも特に優れたチタン酸リチウムが得られると考えられる。したがって、酸化チタンの平均粒子径に対する難水溶性リチウム化合物の平均粒子径の比は3より大きく85より小さいことが好ましく、3.3より大きく83.3より小さいことがより好ましく、4以上83以下がより一層好ましく、8以上62以下が更により一層好ましく、8.3以上61.7以下が最も好ましい。
【0095】
(焼成温度)
図14は、
図7に示すテーブルから実施例1,15〜18を抜粋したテーブルである。
【0096】
実施例17,18と実施例1,15,16とを比較すれば明らかなように、実施例17,18の製造方法で得られるチタン酸リチウムは、実施例1,15,16の製造方法で得られるチタン酸リチウムに比べて初回放電容量が劣っている。したがって、焼成温度は680℃より高くより920℃より低いことが好ましく、700℃以上900℃以下がより好ましい。
【0097】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって示されるものであって、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。