(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698054
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】覆蓋パネル
(51)【国際特許分類】
B65D 88/34 20060101AFI20150319BHJP
B65D 90/00 20060101ALI20150319BHJP
B65D 90/02 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
B65D88/34 A
B65D90/00 N
B65D90/02 Q
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-77328(P2011-77328)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-210961(P2012-210961A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2014年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】505354095
【氏名又は名称】タキロンエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593048249
【氏名又は名称】株式会社中国パラテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】立園 晋哉
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 治
(72)【発明者】
【氏名】野田 俊国
【審査官】
八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03938338(US,A)
【文献】
特許第2702081(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D88/00−90/66
C02F1/00、3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に浮かべて覆蓋する覆蓋パネルにおいて、覆蓋パネルが、天板部と、該天板部の外周に形成された周壁部とを有するとともに、該覆蓋パネルを比重が1未満の合成樹脂製の板材から構成し、板材の浮力のみによって水面に浮かべて用いられることを特徴とする覆蓋パネル。
【請求項2】
前記天板部に小孔が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の覆蓋パネル。
【請求項3】
前記周壁部にスリットが形成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の覆蓋パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の処理槽や貯留槽等の水面を覆うために用いられる覆蓋パネルに関し、特に、水面に浮かべて覆蓋する覆蓋パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、浄水場においては、原水に凝集剤を添加して凝集・沈澱処理した後、この処理水を活性炭処理及び砂濾過処理する処理方法が採用されており、これらの処理は、それぞれ専用の処理槽において行うようにしている。
【0003】
ところで、これらの処理を行う処理槽は、通常、上部を解放したままのものが多く用いられており、このため、大気中の塵埃が処理槽内に侵入したり、処理槽内に太陽光が直接照射されることによって藻類が大量に発生することにより、処理水の処理工程に支障が生じたり、処理水の品質が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、フロートを備えたパネルを水面に浮かべて覆蓋する覆蓋パネルが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
しかしながら、従来の覆蓋パネルは、フロートを設ける必要があることから、強風によって覆蓋パネルが舞い上がり飛散しやすく、また、これを防止するための構造が複雑になり、製造コストが高くなるという問題を有していた。
【0006】
また、水面に浮かべて覆蓋するものではないが、処理槽を覆う技術に関して、水処理における生物処理を促進するために特定の波長領域の光を透過する選択透過性を有するようにした遮光板が提案されている(例えば、特許文献3参照)が、従来の水面に浮かべて覆蓋するものの場合、フロートを設ける必要があることから、生物処理に必要な量の光を透過するように構成することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−173212号公報
【特許文献2】特開2004−224376号公報
【特許文献3】特許第2702081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の覆蓋パネルの有する問題点に鑑み、強風によって覆蓋パネルが舞い上がって飛散しにくく、構造が簡易で、製造コストが低廉な、水面に浮かべて覆蓋する覆蓋パネルを提供することを
目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記
目的を達成するため、本発明の覆蓋パネルは、水面に浮かべて覆蓋する覆蓋パネルにおいて、
覆蓋パネルが、天板部と、該天板部の外周に形成された周壁部とを有するとともに、覆蓋パネルを比重が1未満の合成樹脂製の板材から構成し、板材の浮力のみによって水面に浮かべて用いられることを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記周壁部にスリットを形成することができる。
【0011】
また、前記天板部に小孔を形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の覆蓋パネルによれば、覆蓋パネルを比重が1未満の合成樹脂製の板材から構成し、板材の浮力のみによって水面に浮かべて用いられるようにすることにより、フロートを設ける必要がないことから、強風によって覆蓋パネルが舞い上がって飛散しにくく、構造が簡易で、製造コストが低廉な、水面に浮かべて覆蓋する覆蓋パネルを提供することができる。
【0013】
そして、覆蓋パネルを、天板部と、該天板部の外周に形成された周壁部とを有するようにすることにより、覆蓋パネル同士が重なり合うことを防止するとともに、覆蓋パネルの天板部の下面に空気層が形成されにくく、強風によって覆蓋パネルが舞い上がって飛散しにくくすることができ、覆蓋パネルの設置安定性を向上することができる。
【0014】
また、前記周壁部にスリットを形成することにより、覆蓋パネルの天板部の下面に入り込んだ空気(槽内で発生した気体を含む。)をスリットを通して放出することができ、覆蓋パネルの設置安定性を向上することができる。
【0015】
また、前記天板部に小孔を形成することにより、覆蓋パネルの天板部の下面に入り込んだ空気(槽内で発生した気体を含む。)を小孔を通して放出することができ、覆蓋パネルの設置安定性を向上することができるとともに、小孔を覆蓋パネルを移動させる際の引っ掛け部や隣接設置した覆蓋パネル同士を接続する場合の接続部として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の覆蓋パネルの一実施例を示す説明図である。
【
図2】同覆蓋パネルの変形実施例を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のX−X端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の覆蓋パネルの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に、本発明の覆蓋パネルの一実施例を示す。
この覆蓋パネル1は、水面に浮かべて覆蓋するもので、覆蓋パネル1を比重が1未満の合成樹脂製の板材から構成し、板材の浮力のみによって水面に浮かべて用いることができるようにしている。
【0019】
覆蓋パネル1の形状は、矩形、円形、隣接設置する覆蓋パネルと嵌合する形状等の任意の形状とすることができる。
また、覆蓋パネル1の大きさ及び板材の厚さも、覆蓋する槽の形状に応じて任意の大きさ及び厚みとすることができ、本実施例においては、例えば、縦L1:300〜3000mm、横L2:300〜3000mm、後述の周壁部12の高さL3:数mm〜200mm、板材の厚さ:1〜10mmの平面形状が正方形又は長方形の覆蓋パネル1(図示のものは、縦L1:900mm、横L2:900mm、周壁部12の高さL3:50mm、板材の厚さ:3mm。)を組み合わせて用いるようにしている。
ちなみに、浄水場の緩速濾過池(8210mm×3650mm)に適用する場合は、縦L1:900mm、横L2:900mmの覆蓋パネル1を、縦方向に9列、横方向に4列並べることにより、緩速濾過池の水面をほぼ覆うことができる。
【0020】
覆蓋パネル1を構成する合成樹脂には、比重が1未満の合成樹脂、特に、未発泡で比重が1未満であり、化学的に安定し水に対する溶出成分がなく、硬質で、かつ、引っ張りや折り曲げに対して大きな強度特性を有するポリプロピレン(比重:0.9〜0.92)を好適に用いることができる。
合成樹脂には、耐候性を向上するために、紫外線吸収剤(光安定剤)、酸化防止剤等の合成樹脂添加剤を添加することができる。
【0021】
また、合成樹脂には、処理槽内に太陽光が直接照射されることによって藻類が大量に発生することにより、処理水の処理工程に支障が生じたり、処理水の品質が低下することを防止するために、遮光性を付与する顔料を添加するようにする。
この顔料には、黒色の顔料のほか、緑色の顔料を添加することができる。
特に、緑色の顔料を添加することにより、板材を450〜600nm、より好ましくは、500〜560nmの緑色の波長領域の光を透過する選択透過性を有するように構成することができ、これにより、浄水場の緩速濾過池における生物処理を促進することができる。
【0022】
覆蓋パネル1は、平板状のものを使用することもできるが、本実施例のように、天板部11と、天板部11の外周に形成された周壁部12とから構成することが好ましい。
なお、周壁部12の高さL3は、本実施例においては、50mmに形成するようにしているが、設置状況等に応じて、数mm〜200mm程度の範囲で任意に設定することができる。
これにより、周壁部12によって、隣接設置した覆蓋パネル1同士が重なり合うことを防止するとともに、覆蓋パネル1の天板部11の下面に空気層が形成されにくく、強風によって覆蓋パネル1が舞い上がって飛散しにくくすることができ、覆蓋パネル1の設置安定性を向上することができる。
【0023】
この場合、周壁部12に天板部11に達するスリット(細隙)13を形成することが好ましい。これにより、覆蓋パネル1の天板部11の下面に入り込んだ空気(槽内で発生した気体を含む。)をスリット13を通して放出することができ、覆蓋パネル1の設置安定性を向上することができる。
なお、スリット13は、本実施例においては、合成樹脂製の板材からなる素材を折り曲げ加工して天板部11及び周壁部12を形成する際に、周壁部12の角部を溶接や接着しないようにすることで、容易に形成することができる。
なお、スリット13は、周壁部12の角部の周壁部12の任意の位置に形成することができ、また、その形状も、縦長、横長、円形等の任意の形状とすることができる。
【0024】
また、天板部11には、小孔14、15を形成するようにしている。
これにより、覆蓋パネル1の天板部11の下面に入り込んだ空気(槽内で発生した気体を含む。)を小孔14、15を通して放出することができ、覆蓋パネル1の設置安定性を向上することができるとともに、小孔14、15を覆蓋パネル1を移動させる際の引っ掛け部や隣接設置した覆蓋パネル1同士を接続する場合の接続部として利用することができる。
なお、小孔14、15は、その大きさを、数mm〜10mm程度の範囲で任意に設定することができるが、覆蓋パネル1を移動させる際の引っ掛け部として利用する場合には、それより大きい20〜50mm程度の大きさとすることが望ましく、また、その形状も、円形のほか、長円形等の任意の形状とすることができる。
【0025】
また、
図2に示す本発明の覆蓋パネルの変形実施例のように、天板部11を凹凸形状、具体的には、中心部11aと周縁部11cを凸状に、その中間部11bを凹状に形成し、凹状に形成した中間部11bに小孔14を形成することにより、覆蓋パネル1の強度を高めるとともに、天板部11の上面に降った雨を小孔14を通して排出することができ、覆蓋パネルの設置安定性を向上することができる。
この覆蓋パネルにおいても、
図1に示す実施例と同様、周壁部12に天板部11に達するスリット(図示省略)を形成することが好ましい。
【0026】
このように、この覆蓋パネル1によれば、覆蓋パネル1を比重が1未満の合成樹脂製の板材から構成し、板材の浮力のみによって水面に浮かべて用いられるようにすることにより、フロートを設ける必要がないことから、強風によって覆蓋パネルが舞い上がって飛散しにくく、構造が簡易で、製造コストが低廉な、水面に浮かべて覆蓋する覆蓋パネルを提供することができる。
【0027】
以上、本発明の覆蓋パネルについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の覆蓋パネルは、強風によって覆蓋パネルが舞い上がって飛散しにくく、構造が簡易で、製造コストが低廉である特性を有していることから、水面に浮かべて覆蓋する覆蓋パネルの用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 覆蓋パネル
11 天板部
11a 中心部(凸部)
11b 中間部(凹部)
11c 周縁部(凸部)
12 周壁部
13 スリット
14 小孔
15 小孔