(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この化学発熱装置では、次の課題がある。
【0005】
(1)反応器に水を供給することでアルカリ土類金属酸化物を水和反応させるため、高温を発生させることが困難である。
【0006】
(2)一つの反応器にて水和反応させるため、反応器の内部に存在する水が400℃以上の超臨界流体となる。このため、密閉系の内圧が非常に高くなる。
【0007】
(3)反応器を通過した排ガスで加熱対象である触媒を加熱させるため、熱交換性能が低く、装置の小型化が困難である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、高温を発生させることができると共に、密閉系の内圧を低く抑えることができ、且つ、小型化することができる化学蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の化学蓄熱装置は、水を貯留する容器と、前記容器と密閉状態で接続されて前記容器から水が供給されると共に、前記容器から供給された水により水和反応して反応熱で水蒸気を発生させ加熱により脱水反応を生じる化合物を内蔵する第一反応器と、前記第一反応器と密閉状態で接続されて前記第一反応器から水蒸気が供給されると共に、前記第一反応器から供給された水蒸気により水和反応を生じることで発熱し加熱により脱水反応を生じることで蓄熱し且つ加熱対象と熱的に接触される化学蓄熱材を内蔵する
一対の第二反応器と、
前記第一反応器と一対の前記第二反応器の各々とを接続する配管に設けられた開閉弁と、前記開閉弁を制御して、前記第一反応器から一対の前記第二反応器の各々への水蒸気の供給量及び供給タイミングを調節する制御部と、を備え、
一方の前記第二反応器、他方の前記第二反応器、及び、前記第一反応器は、エンジンの排ガスを排出する排気管の内部に上流側から順に設けられ、一対の前記第二反応器は、その内部に設けられた前記排ガスを流通させるガス流路に前記排ガスを浄化する触媒を前記加熱対象として担持しており、前記制御部は、前記エンジンの始動時の初期段階では、前記第一反応器から一方の前記第二反応器に水蒸気が供給されるように、前記開閉弁を制御し、前記初期段階以後の段階では、前記一対の第二反応器内の前記化学蓄熱材の温度が、当該化学蓄熱材の平衡温度に達していないならば、前記第一反応器から一対の前記第二反応器の各々に水蒸気が供給されるように、前記開閉弁を制御する。
【0010】
この化学蓄熱装置によれば、第一反応器に内蔵された化学蓄熱材が水と反応することで発熱し、さらに水が化学蓄熱材に供給されることで水蒸気が生成され、この水蒸気が第二反応器において化学蓄熱材と水和反応することで発熱される。従って、第一反応器及び第二反応器の二段階で発熱されるので、一つの反応器にて水和反応させた場合に比して、高温を発生させることができる。
【0011】
また、上述のように、第一反応器と第二反応器とに分離すると共に、第一反応器にて高圧の水蒸気をつくりだし、第二反応器にて水蒸気と化学蓄熱材を水和反応させるので、容器、第一反応器、第二反応器、及び、凝縮器を有して構成された密閉系の内圧を低く抑えることができる。
【0012】
さらに、第二反応器に内蔵された化学蓄熱材が加熱対象と熱的に接触されるので、例えば、化学蓄熱材から加熱対象に気体を介して熱伝達する場合に比して、熱交換性能を高めることができる。これにより、化学蓄熱装置を小型化することができる。
【0014】
また、この化学蓄熱装置によれば、開閉弁を制御することで、第一反応器から一対の第二反応器の各々への水蒸気の供給量及び供給タイミングを調節することができる。
【0016】
また、この化学蓄熱装置によれば、第一反応器から一対の第二反応器の各々への水蒸気の供給量及び供給タイミングが調節されることで、加熱対象を適切に加熱することができる。
【0018】
また、この化学蓄熱装置によれば、エンジンの始動時の初期段階では、第一反応器から上流側の一方の第二反応器に水蒸気が供給されるので、この一方の第二反応器に内蔵された化学蓄熱材を急激に発熱させることができる。また、この化学蓄熱材の発熱により触媒から反応熱を発生させることができる。さらに、上流側の一方の第二反応器で発生した熱で、第一反応器及び下流側の他方の第二反応器等を昇温させることができる。
【0019】
また、初期段階以後の段階では、第一反応器に水を供給し水蒸気を生成させる際に必要となる第一反応器の熱容量、又は、第一反応器で生成した水蒸気を下流側の他方の第二反応器に供給した際に必要となる他方の第二反応器の熱容量分を、エンジンの始動時の初期段階で発生する上流側の一方の第二反応器の発熱を利用することでキャンセルすることができる。これにより、触媒を加熱する際の反応性を向上させることができる。また、第一反応器では、より高温の水蒸気を生成することができ、下流側の他方の第二反応器では、昇温を期待することができる。
【0020】
請求項2に記載の化学蓄熱装置は、
水を貯留する容器と、前記容器と密閉状態で接続されて前記容器から水が供給されると共に、前記容器から供給された水により水和反応して反応熱で水蒸気を発生させ加熱により脱水反応を生じる化合物を内蔵する第一反応器と、前記第一反応器と密閉状態で接続されて前記第一反応器から水蒸気が供給されると共に、前記第一反応器から供給された水蒸気により水和反応を生じることで発熱し加熱により脱水反応を生じることで蓄熱し且つ加熱対象と熱的に接触される化学蓄熱材を内蔵する一対の第二反応器と、前記第一反応器と一対の前記第二反応器の各々とを接続する配管に設けられた開閉弁と、前記開閉弁を制御して、前記第一反応器から一対の前記第二反応器の各々への水蒸気の供給量及び供給タイミングを調節する制御部と、エンジンの回転数及び吐出圧を検出する運転状態検出器と、を備え、一対の前記第二反応器は、その内部に設けられた前記排ガスを流通させるガス流路に前記排ガスを浄化する触媒を前記加熱対象として担持しており、前記制御部は、前記運転状態検出器の検出結果に基づき、前記エンジンが部分負荷の運転状態にあると判断した場合には、前記第一反応器から一方の前記第二反応器に水蒸気が供給されるように、前記開閉弁を制御し、前記運転状態検出器の検出結果に基づき、前記エンジンが全負荷の運転状態にあると判断した場合には、前記第一反応器から一対の前記第二反応器の各々に、前記一対の第二反応器内の前記化学蓄熱材の平衡温度に達するまで、水蒸気が供給されるように、前記開閉弁を制御する。
【0021】
この化学蓄熱装置によれば、エンジンの始動時の初期段階において、エンジンが部分負荷の運転状態にある場合、この状態での排ガスエミッションについては、上流側の一方の第二反応器だけを昇温させることで低減することができる。一方、エンジンが全負荷の運転状態にある場合、この状態での排ガスエミッションについては、下流側の他方の第二反応器を昇温させることで低減することができる。
【0034】
請求項3に記載の化学蓄熱装置は、請求項1
または請求項2に記載の化学蓄熱装置において、前記第一反応器が、エンジンの排ガスを排出する排気管の内部に設けられると共に、
前記第一反応器の内部に設けられた前記排ガスを流通させるガス流路に前記排ガスを浄化する触媒を担持しているものである。
【0035】
この化学蓄熱装置によれば、第一反応器の内部に設けられたガス流路には、触媒が担持されているので、脱水反応時には、触媒の反応熱を回収することができる。これにより、第一反応器及び第二反応器に熱を与えて、脱水温度を昇温させることができるので、脱水反応を促進させることができる。また、第一反応器に担持させる触媒として、アンダーフロアー触媒を用いることで化学蓄熱装置の小型化が可能になる。
【0036】
請求項4に記載の化学蓄熱装置は、
水を貯留する容器と、前記容器と密閉状態で接続されて前記容器から水が供給されると共に、前記容器から供給された水により水和反応して反応熱で水蒸気を発生させ加熱により脱水反応を生じる化合物を内蔵する第一反応器と、前記第一反応器と密閉状態で接続されて前記第一反応器から水蒸気が供給されると共に、前記第一反応器から供給された水蒸気により水和反応を生じることで発熱し加熱により脱水反応を生じることで蓄熱し且つ加熱対象と熱的に接触される化学蓄熱材を内蔵する第二反応器と、を備え、前記第一反応器及び前記第二反応器は、エンジンの排ガスを排出する排気管の内部に設けられると共に、前記排気管をその長手方向と直交する方向に切断した場合の同一断面上に配置されており、前記第二反応器は、エンジンの排ガスを排出する排気管の内部に設けられると共に、その内部に設けられた前記排ガスを流通させるガス流路に前記排ガスを浄化する触媒を前記加熱対象として担持している。
【0037】
この化学蓄熱装置によれば、第一反応器及び第二反応器は、排気管の内部に設けられると共に、この排気管をその長手方向と直交する方向に切断した場合の同一断面上に配置されている。従って、脱水反応時には、第一反応器と第二反応器に同じ温度の排ガスを流入させることができる。また、第一反応器と第二反応器の脱水温度を同じとすることで、第一反応器と第二反応器について均等に脱水反応を促進させることができる。
【0038】
請求項5に記載の化学蓄熱装置は、
請求項4に記載の化学蓄熱装置において、前記第一反応器が、前記第二反応器の重力方向下側に設けられると共に、重力方向における前記第二反応器との間に重力方向に貫通して形成された連通路を介して前記第二反応器と連通されているものである。
【0039】
第一反応器と第二反応器の配置は、重力方向に並ぶ縦置きと、水平方向に並ぶ横置きが考えられるが、縦置きにする場合、第一反応器を重力方向で下側に配置することが望ましい。
【0040】
これは容器に貯留された水が第一反応器に過剰に供給され場合、第一反応器で生成した水和反応の熱を水の比熱で消費してしまい、水蒸気の生成を妨げることに加え、液体状態のままの水が第二反応器に直接流入してしまい、第二反応器が高温になることを妨げる恐れがあるからである。
【0041】
この点、この化学蓄熱装置によれば、第一反応器が重力方向で下側に設けられているので、第二反応器が高温になることを抑制することができる。
【0042】
請求項6に記載の化学蓄熱装置は、
請求項4に記載の化学蓄熱装置において、前記第一反応器及び前記第二反応器が、前記排気管の内部に同軸上に配置されているものである。
【0043】
この化学蓄熱装置によれば、第一反応器及び第二反応器は、排気管の内部に同軸上に配置されている。従って、第一反応器で生成した水蒸気が第二反応器に到達するまでに通過する水蒸気の通路を最短で形成することが可能で、圧力損失を低減することができる。これにより、第二反応器の高温化を達成することができる。また、水蒸気の通路を容易に多数形成することができるため、第二反応器のより一層の高温化を達成することができる。
【0044】
請求項7に記載の化学蓄熱装置は、
請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載の化学蓄熱装置において、前記排気管の内部における前記第一反応器及び前記第二反応器よりも上流側に設けられると共に、前記第一反応器に流れる前記排ガスの流量と、前記第二反応器に流れる前記排ガスの流量との割合を調節する流量割合調整部を備えたものである。
【0045】
この化学蓄熱装置によれば、エンジンの運転状態に応じて、第一反応器に流れる排ガスの流量と、第二反応器に流れる排ガスの流量との割合を適切に調節することができる。
【0046】
請求項8に記載の化学蓄熱装置は、
請求項7に記載の化学蓄熱装置において、前記排ガスの温度を検出するガス温度検出器と、前記ガス温度検出器に基づく検出値が予め定められた規定値よりも低い場合には、前記第二反応器に流れる前記排ガスの流量の方が、前記第一反応器に流れる前記排ガスの流量よりも多くなるように、前記流量割合調整部を制御する制御部と、を備えたものである。
【0047】
この化学蓄熱装置によれば、例えば、エンジンの始動時のように、排ガスの温度が低い時には、流量割合調整部によって、第一反応器のガス流路に排ガスが流入しないようにすることができる。
【0054】
請求項9に記載の化学蓄熱装置は、請求項1
〜請求項8のいずれか一項に記載の化学蓄熱装置において、前記第一反応器及び前記第二反応器の少なくとも一方と密閉状態で接続されて前記第一反応器及び前記第二反応器の少なくとも一方から前記脱水反応に伴って生じた水蒸気が供給されると共に、前記第一反応器及び前記第二反応器の少なくとも一方から供給された水蒸気を凝縮させて、該凝縮により得られた水を前記容器に供給する凝縮器を備えたものである。
【0055】
この化学蓄熱装置によれば、第二反応器から供給された水蒸気を凝縮させて、該凝縮により得られた水を容器に供給することができる。
【発明の効果】
【0056】
以上詳述したように、本発明の化学蓄熱装置によれば、高温を発生させることができると共に、密閉系の内圧を低く抑えることができ、且つ、小型化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
[第一実施形態]
はじめに、本発明の第一実施形態について説明する。
【0059】
図1に示されるように、本発明の第一実施形態に係る化学蓄熱装置10は、容器12と、第一反応器14と、第二反応器16と、凝縮器18とを備えている。
【0060】
容器12には、水20が貯留されている。第一反応器14は、ポンプ22及び開閉弁24が設けられた配管26によって容器12と密閉状態で接続されている。この第一反応器14は、図示しないエンジンの排ガス27を排出する排気管28の内部に設けられている。
【0061】
また、
図2に示されるように、第一反応器14の内部には、熱交換部30が設けられており、この熱交換部30の内部には、排ガスを流通させるガス流路32が形成されている。
【0062】
また、第一反応器14は、熱交換部30の周囲に、化合物としての化学蓄熱材34を内蔵している。この化学蓄熱材34は、容器12(
図1参照)から供給された水により水和反応して、この水和反応による反応熱で水蒸気を発生させる。また、この化学蓄熱材34は、排ガスによって加熱されることにより脱水反応を生じる。
【0063】
本実施形態では、化学蓄熱材34として、アルカリ土類金属の水酸化物の1つである酸化カルシウム(CaO)が用いられている。従って、第一反応器14では、以下の如く、水和反応及び脱水反応が可逆的に繰り返し得るようになっている。
CaO + H
2O ⇔ Ca(OH)
2
【0064】
なお、この式に蓄熱量及び発熱量Qを併せて示すと、以下のようになる。
Ca(OH)
2 + Q → CaO + H
2O
CaO + H
2O → Ca(OH)
2 + Q
【0065】
図1に示されるように、第二反応器16は、配管36によって第一反応器14と密閉状態で接続されている。この第二反応器16は、排気管28の内部に設けられると共に、第一反応器14よりも上流側に配置されている。
【0066】
また、
図3に示されるように、第二反応器16の内部には、熱交換部40が設けられており、この熱交換部40の内部には、排ガスを流通させるガス流路42が形成されている。
【0067】
また、第二反応器16は、熱交換部40の周囲に、化学蓄熱材44を内蔵している。この化学蓄熱材44は、第一反応器14(
図1参照)から供給された水蒸気により水和反応を生じることで発熱する。また、この化学蓄熱材44は、排ガスによって加熱されることにより脱水反応を生じることで蓄熱する。本実施形態では、化学蓄熱材44として、例えば、酸化カルシウム(CaO)が用いられている。
【0068】
また、ガス流路42の内部には、排ガスを浄化する触媒46が担持されている。この触媒46は、化学蓄熱材44による加熱対象とされるものであり、熱交換部40を通じて化学蓄熱材44と熱的に接触されている。
【0069】
図1に示されるように、凝縮器18は、開閉弁48が設けられた配管50によって第二反応器16と密閉状態で接続されると共に、配管52によって容器12と密閉状態で接続されている。この凝縮器18は、流体45によって冷却され、第二反応器16から供給された水蒸気を凝縮する構成とされている。
【0070】
そして、この化学蓄熱装置10では、容器12から水が第一反応器14に供給されると、上記化学式で示されるように、第一反応器14に内蔵された化学蓄熱材34が水と水和反応し、この反応熱で水蒸気が発生される。この水蒸気は、第二反応器16に供給され、第二反応器16では、同じく上記化学式で示されるように、第一反応器14から供給された水蒸気と化学蓄熱材44が水和反応することで発熱される。
【0071】
一方、第二反応器16から脱水反応に伴って生じた水蒸気は、凝縮器18に供給される。そして、凝縮器18では、第二反応器16から供給された水蒸気が凝縮されて、該凝縮により得られた水は、容器12に供給される。
【0072】
次に、本発明の第一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0073】
本発明の第一実施形態に係る化学蓄熱装置10によれば、上述のように、第一反応器14に内蔵された化学蓄熱材34が水と反応することで発熱し、さらに水が化学蓄熱材34に供給されることで水蒸気が生成され、この水蒸気が第二反応器16において化学蓄熱材44と水和反応することで発熱される。従って、第一反応器14及び第二反応器16の二段階で発熱されるので、一つの反応器にて水和反応させた場合に比して、高温を発生させることができる。
【0074】
そして、第二反応器16では、触媒46が化学蓄熱材44と熱交換部40を介して熱的に接触されるので、触媒46をより高温とすることができる。これにより、排ガス27に含まれるエミッションをより効果的に浄化することができる。
【0075】
また、第一反応器14に水を直接供給するため、水和反応熱を直ちに水に伝達することができる。これにより、高い反応速度を得ることができるので、触媒46を早期に暖機することができる。
【0076】
また、上述のように、第一反応器14と第二反応器16とに分離すると共に、第一反応器14にて高圧の水蒸気をつくりだし、第二反応器16にて水蒸気と化学蓄熱材44を水和反応させるので、容器12、第一反応器14、第二反応器16、及び、凝縮器18を有して構成された密閉系の内圧を低く抑えることができる。
【0077】
さらに、第二反応器16に内蔵された化学蓄熱材44が加熱対象である触媒46と熱的に接触されるので、例えば、化学蓄熱材から触媒に排ガスを介して熱伝達する場合に比して、熱交換性能を高めることができる。これにより、化学蓄熱装置10を小型化することができる。
【0078】
なお、容器12の水は、ポンプ22により第一反応器14に送液されていたが、自重により第一反応器14に送液されても良い。
【0079】
また、第一反応器14には、化学蓄熱材34が内蔵されていたが、容器12から供給された水により水和反応して反応熱で水蒸気を発生させ加熱により脱水反応を生じるものであれば、その他の化合物が内蔵されていても良い。
【0080】
以上説明した化学蓄熱材34,44の蓄熱・発熱について、
図4を参照しながら補足する。
【0081】
図4は、本発明の第一実施形態における放熱モード時の酸化カルシウムの吸水反応の平衡線、及び、水の気液平衡線を示すグラフである。
図4の横軸は温度の逆数を示し、縦軸は気体の圧力を示している。また、
図4において、実線は酸化カルシウムの吸水反応における平衡線を表しており、破線は水の気液平衡線を表している。
【0082】
図4に示されるように、放熱モードにおいて、初期温度を0℃とした場合、第一反応器及び第二反応器内の温度と圧力は図中のA点となる。ここで第一反応器内に水を供給すると、以下の化学式に示す反応(吸水反応)に伴って、第一反応器内の酸化カルシウム及び水は、図中のA点からB点へ、温度及び圧力がともに増加する。このとき、高温(約150℃)高圧の水蒸気が配管を介して第二反応器へ流入する
【0083】
CaO + H
2O ⇔ Ca(OH)
2
【0084】
そして、第二反応器内の酸化カルシウムは、第一反応器内で生成された高温高圧の水蒸気(図中のB点参照)と、さらに上記化学式に示す反応(吸水反応)をし、560℃程度(図中のC点参照)まで温度が上昇する。この反応における反応熱が、触媒を加熱するために利用される。このため、本実施形態の化学蓄熱装置では、560℃程度の高温の熱を出力することができる。
【0085】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0086】
本発明の第二実施形態では、上述の本発明の第一実施形態に対し、次の如く構成が変更されている。
【0087】
すなわち、
図5に示されるように、本発明の第二実施形態に係る化学蓄熱装置60は、一対の第二反応器16A,16Bを備えている。一方の第二反応器16A、他方の第二反応器16B、及び、第一反応器14は、排気管28の内部に上流側から順に設けられている。なお、一対の第二反応器16A,16Bの構成(化学蓄熱材44を内蔵すると共にガス流路42に触媒46を有する構成)は、上述の第一実施形態における第二反応器16(
図3参照)と同一である。
【0088】
この一対の第二反応器16A,16Bの各々は、配管62によって第一反応器14と密閉状態で接続されている。配管62は、第一反応器14から延びる本管62Aと、この本管62Aと一対の第二反応器16A,16Bの各々とを接続する一対の分岐管62Bとを有している。この一対の分岐管62Bには、開閉弁64,65がそれぞれ設けられている。
【0089】
さらに、一対の第二反応器16A,16Bの各々は、配管50によって凝縮器18と密閉状態で接続されている。配管50は、一対の第二反応器16A,16Bの各々から延びる一対の分岐管50A,50Bと、この一対の分岐管50A,50Bと凝縮器18との間を接続する本管50Cとを有している。
【0090】
また、この化学蓄熱装置60は、開閉弁64,65を制御する制御部66を備えている。この制御部66は、開閉弁64,65を制御して、第一反応器14から一対の第二反応器16A,16Bの各々への水蒸気の供給量及び供給タイミングを調節する。
【0091】
例えば、制御部66は、エンジンの始動時の初期段階では、第一反応器14から一方の第二反応器16Aに水蒸気が供給されるように、開閉弁64,65を制御し、初期段階以後の段階では、一対の第二反応器16A,16B内の化学蓄熱材44の温度が、当該化学蓄熱材44の平衡温度に達していないならば、第一反応器14から一対の第二反応器16A,16Bの各々に水蒸気が供給されるように、開閉弁64,65を制御する。
図6には、エンジン始動後の開閉弁24、開閉弁65、開閉弁64、及び、開閉弁48の切り換えの一例が示されている。
【0092】
次に、本発明の第二実施形態の作用及び効果について説明する。
【0093】
本発明の第二実施形態に係る化学蓄熱装置60によれば、エンジンの始動時の初期段階では、第一反応器14から上流側の一方の第二反応器16Aに水蒸気が供給されるので、この一方の第二反応器16Aに内蔵された化学蓄熱材44を急激に発熱させることができる。また、この化学蓄熱材44の発熱により触媒46から反応熱を発生させることができる。さらに、上流側の一方の第二反応器16Aで発生した熱で、第一反応器14及び下流側の他方の第二反応器16B等を昇温させることができる。
【0094】
また、初期段階以後の段階では、第一反応器14に水を供給し水蒸気を生成させる際に必要となる第一反応器14の熱容量、又は、第一反応器14で生成した水蒸気を下流側の他方の第二反応器16Bに供給した際に必要となる他方の第二反応器16Bの熱容量分を、エンジンの始動時の初期段階で発生する上流側の一方の第二反応器16Aの発熱を利用することでキャンセルすることができる。これにより、触媒46を加熱する際の反応性を向上させることができる。また、第一反応器14では、より高温の水蒸気を生成することができ、下流側の他方の第二反応器16Bでは、昇温を期待することができる。
【0095】
このように、本発明の第二実施形態に係る化学蓄熱装置60によれば、第一反応器14から一対の第二反応器16A,16Bの各々への水蒸気の供給量及び供給タイミングが調節されることで、触媒46を適切に加熱することができる。
【0096】
なお、
図5に示されるように、本発明の第二実施形態に係る化学蓄熱装置60は、エンジンの回転数及び吐出圧を検出する運転状態検出器68を備えると共に、この運転状態検出器68からの検出結果に基づいて、制御部66が、次のように動作するように構成されても良い。
【0097】
すなわち、制御部66は、運転状態検出器68の検出結果に基づき、エンジンが部分負荷の運転状態にあると判断した場合には、第一反応器14から一方の第二反応器16Aに水蒸気が供給されるように、開閉弁64,65を制御する。また、制御部66は、運転状態検出器68の検出結果に基づき、エンジンが全負荷の運転状態にあると判断した場合には、第一反応器14から一対の第二反応器16A,16Bの各々に、一対の第二反応器16A,16B内の化学蓄熱材44の平衡温度に達するまで、水蒸気が供給されるように、開閉弁64,65を制御する。
【0098】
このように構成されていると、エンジンの始動時の初期段階において、エンジンが部分負荷の運転状態にある場合、この状態での排ガスエミッションについては、上流側の一方の第二反応器16Aだけを昇温させることで低減することができる。一方、エンジンが全負荷の運転状態にある場合、この状態での排ガスエミッションについては、下流側の他方の第二反応器16Bを昇温させることで低減することができる。
【0099】
なお、本実施形態において、第二反応器は、二個以上備えられていても良い。
【0100】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
【0101】
本発明の第三実施形態では、上述の本発明の第一実施形態に対し、次の如く構成が変更されている。
【0102】
すなわち、
図7に示されるように、本発明の第三実施形態に係る化学蓄熱装置70において、第一反応器14と第二反応器16とを接続する配管36は、第二反応器16と凝縮器18とを接続する配管50の長手方向中間部に接続されている。また、開閉弁48は、配管50における配管36との接続部と凝縮器18との間に設けられている。
【0103】
そして、この化学蓄熱装置70では、開閉弁48が閉止状態(第一状態)とされると、第一反応器14と第二反応器16とが連通される。一方、開閉弁48が開放状態(第二状態)とされると、第一反応器14と凝縮器18、及び、第二反応器16と凝縮器18とがそれぞれ連通される。
【0104】
また、この化学蓄熱装置70は、開閉弁48を制御する制御部76を備えている。この制御部76は、第一反応器14及び第二反応器16の水和反応時には、開閉弁48を閉止状態として、第一反応器14と第二反応器16とを連通させる。また、この制御部76は、第一反応器14及び第二反応器16の脱水反応時には、開閉弁48を開放状態として、第一反応器14と凝縮器18、及び、第二反応器16と凝縮器18とをそれぞれ連通させる。
図8には、エンジン始動後の開閉弁24及び開閉弁48の切り換えの一例が示されている。
【0105】
次に、本発明の第三実施形態の作用及び効果について説明する。
【0106】
例えば、第一反応器14に内蔵された化学蓄熱材34の脱水反応時に、第一反応器14から発生した水蒸気が、第二反応器16を通過して凝縮器18に到達する構成であると、第一反応器14から発生した水蒸気の凝縮器18までの圧力損失が、第二反応器16から発生した水蒸気の凝縮器18までの圧力損失と比較して大きくなる。従って、第一反応器14に内蔵された化学蓄熱材34の脱水反応を促進させるためには、第一反応器14の脱水温度の高温化が必要になる。
【0107】
この点、この化学蓄熱装置70によれば、第一反応器14及び第二反応器16の脱水反応時には、開閉弁48が開放状態に切り替えられて、第一反応器14と凝縮器18、及び、第二反応器16と凝縮器18とがそれぞれ連通された状態となる。つまり、第一反応器14の化学蓄熱材34から発生した水蒸気が第二反応器16を通過することなく凝縮器18に到達できるように、第一反応器14と凝縮器18とが連通される。従って、第一反応器14から凝縮器18に至るまでの圧力損失を低減することができ、第一反応器14の脱水反応を促進させることが可能になる。
【0108】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。
【0109】
本発明の第四実施形態では、上述の本発明の第一実施形態に対し、次の如く構成が変更されている。
【0110】
すなわち、
図9に示されるように、本発明の第四実施形態に係る化学蓄熱装置80において、第一反応器14からは、配管36に加えて、第一配管82が延びており、この第一配管82は、第二反応器16と凝縮器18とを接続する配管50の長手方向中間部に接続されている。また、配管50における第一配管82との接続部と第二反応器16との間の部分は、第二配管83とされている。
【0111】
また、第一配管82には、第一流量調整弁としての第一開閉弁84が設けられており、第二配管83には、第二流量調整弁としての第二開閉弁85が設けられている。
【0112】
また、この化学蓄熱装置80は、第一開閉弁84及び第二開閉弁85を制御する制御部86を備えている。この制御部86は、第一反応器14及び第二反応器16の脱水反応時に、第一開閉弁84を開放させ、第二開閉弁85を閉止させる。
【0113】
また、この化学蓄熱装置80は、第一反応器14及び第二反応器16の温度又は内部圧力を検出する反応状態検出器88を備えている。そして、制御部86は、反応状態検出器88の検出結果に基づいて、第一反応器14及び第二反応器16の温度又は内部圧力が等しくなるように、第一開閉弁84及び第二開閉弁85を制御する。
図10には、エンジン始動後の開閉弁24、第一開閉弁84、及び、第二開閉弁85の切り換えの一例が示されると共に、第一反応器14及び第二反応器16の温度変化の一例が示されている。
【0114】
次に、本発明の第四実施形態の作用及び効果について説明する。
【0115】
本発明の第四実施形態に係る化学蓄熱装置80によれば、凝縮器18と第一反応器14とを接続する第一配管82の流量が第一開閉弁84によって調整されると共に、凝縮器18と第二反応器16とを接続する第二配管83の流量が第二開閉弁85によって調整される。これにより、第一反応器14及び第二反応器16の夫々の脱水反応を制御することができる。また、このように、第一反応器14及び第二反応器16の夫々の脱水反応を制御することで、触媒46を加熱する第二反応器16の発熱性能の低下を抑制することができる。
【0116】
例えば、第一反応器14の脱水反応が十分に行われない場合、次回システム始動時に第一反応器14に水を供給しても、第二反応器16を高温にするための水蒸気を供給することができない。また、例えば、第二反応器16の脱水反応が十分に行われていない場合、第一反応器14から供給された水蒸気と反応するだけの化学蓄熱材が存在しないため、高温にすることもできない。この化学蓄熱装置80によれば、これらの不具合を解消することができる。
【0117】
また、この化学蓄熱装置80によれば、第二反応器16の方が第一反応器14よりも排気管28の上流側に設けられている。従って、第二反応器16の方が第一反応器14よりも脱水反応時の温度が高くなり、より脱水反応を促進させることができる。
【0118】
ところで、化学蓄熱材44は脱水反応時に吸熱するため、上流側の第二反応器16を通過後の排ガスは、下流側の第一反応器14に至るまでに温度が低下し、第一反応器14の脱水温度が低下して、第一反応器14での脱水が阻害されるという問題がある。
【0119】
ところが、この化学蓄熱装置80では、第一反応器14及び第二反応器16の脱水反応時には、第二反応器16と凝縮器18の間にある第二開閉弁85を閉止して、第二反応器16の脱水反応が一時的に停止される。従って、第二反応器16を通過後の排ガスの温度の低下を抑制でき、第一反応器14の温度を上昇させることができるので、第一反応器14での脱水反応を促進させることができる。
【0120】
また、この化学蓄熱装置80によれば、第一反応器14及び第二反応器16の温度又は内部圧力が等しくなるように、第一開閉弁84及び第二開閉弁85が制御されるので、第一反応器14での脱水反応及び第二反応器16での脱水反応をバランス良く促進させることができる。
【0121】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態について説明する。
【0122】
本発明の第五実施形態では、上述の本発明の第一実施形態に対し、次の如く構成が変更されている。
【0123】
すなわち、
図11に示されるように、本発明の第五実施形態において、第一反応器14は、ガス流路32に排ガスを浄化する触媒96を担持している。この触媒96は、熱交換部30を通じて化学蓄熱材34と熱的に接触されている。
【0124】
次に、本発明の第五実施形態の作用及び効果について説明する。
【0125】
本発明の第五実施形態に係る化学蓄熱装置によれば、第一反応器14の内部に設けられたガス流路32には、触媒96が担持されているので、脱水反応時には、触媒96の反応熱を回収することができる。これにより、第一反応器14及び第二反応器16(
図1参照)に熱を与えて、脱水温度を昇温させることができるので、脱水反応を促進させることができる。また、第一反応器14に担持させる触媒96として、アンダーフロアー触媒を用いることで化学蓄熱装置の小型化が可能になる。
【0126】
[第六実施形態]
次に、本発明の第六実施形態について説明する。
【0127】
本発明の第六実施形態では、上述の本発明の第一実施形態に対し、次の如く構成が変更されている。
【0128】
すなわち、
図12に示されるように、本発明の第六実施形態に係る化学蓄熱装置100において、第一反応器14及び第二反応器16は、排気管28の内部に設けられると共に、排気管28をその長手方向と直交する方向に切断した場合の同一断面上に配置されている。
【0129】
また、
図13に示されるように、第一反応器14は、第二反応器16の重力方向下側に設けられている。重力方向における第一反応器14と第二反応器16との間には、重力方向に貫通する連通路102が形成されており、第一反応器14と第二反応器16とは、この連通路102を介して連通されている。
【0130】
さらに、第一反応器14は、ガス流路32に排ガスを浄化する触媒96を担持している。この触媒96は、熱交換部30を通じて化学蓄熱材34と熱的に接触されている。
【0131】
また、排気管28の内部における第一反応器14及び第二反応器16よりも上流側には、可動フィン104が設けられている。可動フィン104は、排気管28に回動可能に取り付けられており、駆動モータ105によって回動されるようになっている。
【0132】
そして、この化学蓄熱装置100では、駆動モータ105によって可動フィン104の角度が変更されることで、第一反応器14に流れる排ガスの流量と、第二反応器16に流れる排ガスの流量との割合が調節される。この可動フィン104及び駆動モータ105は、本発明における流量割合調整部の一例である。
【0133】
また、この化学蓄熱装置100は、駆動モータ105を制御する制御部106と、排ガスの温度を検出するガス温度検出器108とを備えている。
【0134】
制御部106は、ガス温度検出器108に基づく検出値が予め定められた規定値よりも低い場合には、第二反応器16に流れる排ガスの流量の方が、第一反応器14に流れる排ガスの流量よりも多くなるように、駆動モータ105を制御する。
【0135】
次に、本発明の第六実施形態の作用及び効果について説明する。
【0136】
本発明の第六実施形態に係る化学蓄熱装置100によれば、第一反応器14及び第二反応器16は、排気管28の内部に設けられると共に、この排気管28をその長手方向と直交する方向に切断した場合の同一断面上に配置されている。従って、脱水反応時には、第一反応器14と第二反応器16に同じ温度の排ガスを流入させることができる。また、第一反応器14と第二反応器16の脱水温度を同じとすることで、第一反応器14と第二反応器16について均等に脱水反応を促進させることができる。
【0137】
ところで、第一反応器14と第二反応器16の配置は、重力方向に並ぶ縦置きと、水平方向に並ぶ横置きが考えられるが、縦置きにする場合、第一反応器14を重力方向で下側に配置することが望ましい。
【0138】
これは容器12に貯留された水が第一反応器14に過剰に供給され場合、第一反応器14で生成した水和反応の熱を水の比熱で消費してしまい、水蒸気の生成を妨げることに加え、液体状態のままの水が第二反応器16に直接流入してしまい、第二反応器16が高温になることを妨げる虞があるからである。
【0139】
この点、この化学蓄熱装置100によれば、第一反応器14が重力方向で下側に設けられているので、第二反応器16が高温になることを抑制することができる。
【0140】
なお、上記課題を克服できる場合には、
図14に示されるように、第一反応器14と第二反応器16とは、水平方向に並ぶ横置きとされても良い。
【0141】
また、この化学蓄熱装置100によれば、例えば、エンジンの始動時のように、排ガスの温度が低い時には、可動フィン104によって、第一反応器14のガス流路32に排ガスが流入しないようにすることができる。従って、エンジンの運転状態に応じて、第一反応器14に流れる排ガスの流量と、第二反応器16に流れる排ガスの流量との割合を適切に調節することができる。
【0142】
[第七実施形態]
次に、本発明の第七実施形態について説明する。
【0143】
本発明の第七実施形態では、上述の本発明の第六実施形態に対し、次の如く構成が変更されている。
【0144】
すなわち、
図15に示されるように、本発明の第七実施形態に係る化学蓄熱装置110において、第一反応器14及び第二反応器16は、排気管28の内部に同軸上に配置されている。
【0145】
また、
図16に示されるように、第一反応器14と第二反応器16との間には、環状に形成された第二反応器16の径方向に延びる連通路112が形成されており、第一反応器14と第二反応器16とは、この連通路112を介して連通されている。なお、本実施形態では、一例として、第一反応器14が排気管28の中心側で、第二反応器16が環状に形成されて排気管28の外周側に配置されているが、この逆とされても良い。
【0146】
また、
図15に示されるように、可動フィン104は、第一反応器14と第二反応器16との境界部に対応して一対設けられている。なお、制御部106による駆動モータ105の制御は、上述の第五実施形態と同様である。
【0147】
次に、本発明の第七実施形態の作用及び効果について説明する。
【0148】
本発明の第七実施形態に係る化学蓄熱装置110によれば、第一反応器14及び第二反応器16は、排気管28の内部に同軸上に配置されている。従って、第一反応器14で生成した水蒸気が第二反応器16に到達するまでに通過する水蒸気の通路を最短で形成することが可能で、圧力損失を低減することができる。これにより、第二反応器16の高温化を達成することができる。また、水蒸気の通路を容易に多数形成することができるため、第二反応器16のより一層の高温化を達成することができる。
【0149】
また、この化学蓄熱装置110によっても、例えば、エンジンの始動時のように、排ガスの温度が低い時には、可動フィン104によって、第一反応器14のガス流路42,32に排ガスが流入しないようにすることができる。従って、エンジンの運転状態に応じて、第一反応器14に流れる排ガスの流量と、第二反応器16に流れる排ガスの流量との割合を適切に調節することができる。
【0150】
[第八実施形態]
次に、本発明の第八実施形態について説明する。
【0151】
本発明の第八実施形態では、上述の本発明の第一実施形態に対し、次の如く構成が変更されている。
【0152】
すなわち、
図17に示されるように、本発明の第八実施形態に係る化学蓄熱装置120において、第一反応器14は、排気管28の外部に設けられており、第二反応器16は、排気管28の内部に設けられている。
【0153】
また、第一反応器14は、第二反応器16及び排気管28の少なくとも一方と伝熱部材122を介して熱的に接続されている。
【0154】
また、第一反応器14の化学蓄熱材34には、第二反応器16の化学蓄熱材44よりも脱水反応の温度が低いその他の化学蓄熱材が用いられている。例えば、第二反応器16の化学蓄熱材44に酸化カルシウムが用いられた場合、第一反応器14の化学蓄熱材34としては、酸化マグネシウムを用いることができる。
【0155】
次に、本発明の第八実施形態の作用及び効果について説明する。
【0156】
本発明の第八実施形態に係る化学蓄熱装置120によれば、第一反応器14が排気管28の外部に設けられることで、排ガスの圧力損失を低減することができる。
【0157】
また、第一反応器14は、第二反応器16及び排気管28の少なくとも一方と熱的に接続されている。従って、第一反応器14での脱水反応時に必要な熱は、第二反応器16及び排気管28の少なくとも一方から供給することができる。
【0158】
また、第一反応器14に内蔵された化学蓄熱材34は、第二反応器16に内蔵された化学蓄熱材44よりも脱水反応の温度が低いその他の化学蓄熱材とされている。従って、第一反応器14が排気管28の外部に設けられることで第一反応器14に供給される熱量が少ない場合でも、第一反応器14に内蔵されたその他の化学蓄熱材を脱水反応させることができる。
【0159】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能である。
【0160】
また、上記複数の実施形態のうち、組み合わせ可能な実施形態は、適宜、組み合わされて実施可能である。