特許第5698085号(P5698085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698085
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】バイオセンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20150319BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   G01N27/30 353Z
   G01N27/46 338
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-151428(P2011-151428)
(22)【出願日】2011年7月8日
(65)【公開番号】特開2012-37510(P2012-37510A)
(43)【公開日】2012年2月23日
【審査請求日】2013年4月9日
(31)【優先権主張番号】特願2010-158243(P2010-158243)
(32)【優先日】2010年7月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】松浦 良光
(72)【発明者】
【氏名】神田 周蔵
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−507805(JP,A)
【文献】 特開2007−003361(JP,A)
【文献】 特開2009−229469(JP,A)
【文献】 特開2004−184180(JP,A)
【文献】 特開2008−175795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/327
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板と、前記第一基板と積層されると共に、試料液を吸引するキャピラリを前記第一基板の先端部との間に形成する第二基板と、前記第二基板における少なくとも前記キャピラリに面する領域に形成された親水層とを有するバイオセンサ形成部を複数有し、前記第二基板よりも前記第一基板の方が積層方向の厚みが厚いシート材を形成するシート材形成工程と、
前記シート材に対し、前記キャピラリの先端が前記第一基板及び前記第二基板の先端面に開口されるように、前記各バイオセンサ形成部の先端を前記第一基板側から前記第二基板へ向かう方向に刃を入れて裁断し、複数のバイオセンサを得る裁断工程と、
を備えたバイオセンサの製造方法。
【請求項2】
前記シート材形成工程において、前記第一基板として前記第二基板よりも靭性が高いものを用いる、
請求項1に記載のバイオセンサの製造方法。
【請求項3】
前記裁断工程において、前記第一基板の先端面が、前記第二基板から離間される側に向かうに従って前記第一基板の後端側に向かう傾斜面となるように、前記各バイオセンサ形成部の先端を裁断する、
請求項1又は2に記載のバイオセンサの製造方法。
【請求項4】
前記裁断工程において、前記刃として、前記第一基板及び前記第二基板の先端面との接触面が前記第二基板側から前記第一基板側に向かうに従って前記第一基板の後端側に向かう傾斜面とされた片刃を用いる、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のバイオセンサの製造方法。
【請求項5】
前記裁断工程において、前記刃として、裁断される一対の前記バイオセンサ形成部の配列方向に並ぶ一対の刃部を有する両刃を用いる、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のバイオセンサの製造方法。
【請求項6】
第一基板と、
前記第一基板と積層されると共に、試料液を吸引するキャピラリを前記第一基板の先端部との間に形成する第二基板と、
前記第二基板における少なくとも前記キャピラリに面する領域に形成された親水層と、
を備え、
前記第一基板は、前記第二基板よりも積層方向の厚みが厚く形成されており、
前記第二基板は、前記キャピラリとは反対側へ延出するバリを有するバイオセンサ。
【請求項7】
前記第一基板は、前記第二基板よりも靭性が高く形成されている、
請求項6に記載のバイオセンサ。
【請求項8】
前記キャピラリの先端側は、その先端に向かうに従って前記第一基板及び前記第二基板の積層方向に径が拡がっている、
請求項6又は7に記載のバイオセンサ。
【請求項9】
前記第一基板の先端面は、前記第二基板から離間される側に向かうに従って前記第一基板の後端側に向かう傾斜面として形成されている、
請求項6〜請求項8のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項10】
前記第一基板の先端面は、前記第二基板の先端面よりも前記第二基板の後端側に位置されている、
請求項6〜請求項9のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項11】
前記第一基板のキャピラリに面する領域に試薬または電極を有する、
請求項6〜請求項10のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項12】
前記第一基板のキャピラリに面する領域にも親水層を有する、
請求項6〜請求項11のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項13】
前記試料液として血液を吸引する、
請求項6〜請求項12のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項14】
血糖値を測定するために用いられる、
請求項6〜請求項13のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項15】
請求項6〜請求項14のいずれか一項に記載のバイオセンサに試料液を吸引させる、バイオセンサの試料液吸引方法であって、
前記キャピラリの先端側より前記試料液を点着させ、試料液を前記第二基板における前記第一基板側の面に這わせて、かつ前記試料液が前記第一基板における前記第二基板側の面にも這うようにして、試料液を吸引させる、
バイオセンサの試料液吸引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1の絶縁性基板と、この第1の絶縁性基板に貼り合わされると共に、試料液を吸引するキャピラリを第1の絶縁性基板の先端部との間に形成する第2の絶縁性基板とを備えたバイオセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−3361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のバイオセンサの分野においては、シート材を裁断して複数のバイオセンサを得るバイオセンサの製造方法が知られている。従来、このバイオセンサの製造方法では、第2の絶縁性基板側から刃を入刃して複数のバイオセンサを得るようにしていた。
【0005】
しかしながら、この場合には、第2の絶縁性基板のバリがキャピラリ側に突出し、キャピラリの吸引性能が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、キャピラリの吸引性能を確保することができるバイオセンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の第1態様に係るバイオセンサの製造方法は、第一基板と、前記第一基板と積層されると共に、試料液を吸引するキャピラリを前記第一基板の先端部との間に形成する第二基板と、前記第二基板における少なくとも前記キャピラリに面する領域に形成された親水層とを有するバイオセンサ形成部を複数有し、前記第二基板よりも前記第一基板の方が積層方向の厚みが厚いシート材を形成するシート材形成工程と、前記シート材に対し、前記キャピラリの先端が前記第一基板及び前記第二基板の先端面に開口されるように、前記各バイオセンサ形成部の先端を前記第一基板側から前記第二基板へ向かう方向に刃を入れて裁断し、複数のバイオセンサを得る裁断工程と、を備えている。
【0008】
このバイオセンサの製造方法によれば、親水層が形成された第二基板とは反対側の第一基板側から第二基板へ向かう方向に刃を入刃するので、裁断時に生ずる第二基板のバリが親水層側に突出することを抑制することができる。これにより、裁断時に親水層に剥離や傷等が生じることを抑制することができるので、キャピラリの吸引性能を確保することができる。
【0009】
本発明の第2態様に係るバイオセンサの製造方法は、第1態様に記載のバイオセンサの製造方法における前記シート材形成工程において、前記第一基板として前記第二基板よりも靭性が高いものを用いる方法である。
【0010】
このバイオセンサの製造方法によれば、第一基板として第二基板よりも靭性が高いものを用いているので、第一基板側から刃を入刃したときには、第一基板からキャピラリ側にバリが発生することを抑制することができる。これにより、試料液がキャピラリに吸引される際の障害を無くすことができるか又は少なくすることができるので、キャピラリの吸引性能をより一層確保することができる。
【0011】
しかも、第一基板側から刃を入刃したときには、第一基板の先端部が第二基板側に変形され、その後、刃を後退させたときには、この第一基板の先端部が元の形状に戻る。そして、これにより、第一基板の先端部におけるキャピラリ側の面は、その先端に向かうに従って第二基板から離間されるように傾斜される。従って、これにより、キャピラリの先端側は、その先端に向かうに従って第一基板及び第二基板の積層方向に径が拡がるので、例えば、試料液の量が少なくても、キャピラリの先端に試料液を容易に点着させることができ、且つ、試料液をキャピラリに円滑に吸引させることができる。
【0012】
本発明の第3態様に係るバイオセンサの製造方法は、第1態様又は第2態様に記載のバイオセンサの製造方法における前記裁断工程において、前記第一基板の先端面が、前記第二基板から離間される側に向かうに従って前記第一基板の後端側に向かう傾斜面となるように、前記各バイオセンサ形成部の先端を裁断する方法である。
【0013】
このバイオセンサの製造方法によれば、第一基板の先端面が、第二基板から離間される側に向かうに従って第一基板の後端側に向かう傾斜面として形成される。これにより、キャピラリに試料液を吸引させる際に、試料液を親水層に容易に接触させることができるので、試料液をキャピラリに円滑に吸引させることができる。
【0014】
本発明の第4態様に係るバイオセンサの製造方法は、第1態様〜第3態様のいずれか一つに記載のバイオセンサの製造方法における前記裁断工程において、前記刃として、前記第一基板及び前記第二基板の先端面との接触面が前記第二基板側から前記第一基板側に向かうに従って前記第一基板の後端側に向かう傾斜面とされた片刃を用いる方法である。
【0015】
このバイオセンサの製造方法によれば、刃として、第一基板及び第二基板の先端面との接触面が第二基板側から第一基板側に向かうに従って第一基板の後端側に向かう傾斜面とされた片刃を用いるので、第一基板側から刃を入刃しても、裁断後においては、第一基板の先端面を第二基板の先端面よりも第二基板の後端側に位置させることができる。これにより、キャピラリに試料液を吸引させる際に、試料液を保持する保持体と第一基板の先端面との干渉を抑制して、試料液をキャピラリに円滑に吸引させることができる。
【0016】
本発明の第5態様に係るバイオセンサの製造方法は、第1態様〜第3態様のいずれか一つに記載のバイオセンサの製造方法における前記裁断工程において、前記刃として、裁断される一対の前記バイオセンサ形成部の配列方向に並ぶ一対の刃部を有する両刃を用いる方法である。
【0017】
このバイオセンサの製造方法によれば、刃として両刃を用いるので、第一基板側から刃を入刃しても、裁断後においては、第一基板の先端面を第二基板の先端面よりも第二基板の後端側に位置させることができる。これにより、キャピラリに試料液を吸引させる際に、試料液を保持する保持体と第一基板の先端面との干渉を抑制して、試料液をキャピラリに円滑に吸引させることができる。
【0018】
また、前記課題を解決するために、本発明の第6態様に係るバイオセンサは、第一基板と、前記第一基板と積層されると共に、試料液を吸引するキャピラリを前記第一基板の先端部との間に形成する第二基板と、前記第二基板における少なくとも前記キャピラリに面する領域に形成された親水層と、を備え、前記第一基板は、前記第二基板よりも積層方向の厚みが厚く形成されており、前記第二基板は、前記キャピラリとは反対側へ延出するバリを有する。
【0019】
このバイオセンサによれば、第一基板及び第二基板が刃によって裁断されることに伴って第二基板にバリが形成されているが、このバリは、第一基板側から刃が入刃されることにより、第二基板からキャピラリと反対側に延出されている。従って、この第二基板のバリがキャピラリ側、すなわち、親水層側に突出することが抑制されるので、キャピラリの吸引性能を確保することができる。
【0020】
本発明の第7態様に係るバイオセンサは、第6態様に記載のバイオセンサにおいて、前記第一基板が、前記第二基板よりも靭性が高く形成された構成とされている。
【0021】
このバイオセンサによれば、第一基板は、第二基板よりも靭性が高く形成されているので、第一基板側から刃を入刃したときには、第一基板からキャピラリ側にバリが発生することを抑制することができる。これにより、試料液がキャピラリに吸引される際の障害が無くなるか又は少なくなるので、キャピラリの吸引性能をより一層確保することができる。
【0022】
本発明の第8態様に係るバイオセンサは、第6態様又は第7態様に記載のバイオセンサにおいて、前記キャピラリの先端側が、その先端に向かうに従って前記第一基板及び前記第二基板の積層方向に径が拡がる構成とされている。
【0023】
このバイオセンサによれば、キャピラリの先端側は、その先端に向かうに従って第一基板及び第二基板の積層方向に径が拡がっている。従って、例えば、試料液の量が少なくても、キャピラリの先端に試料液を容易に点着させることができ、且つ、試料液をキャピラリに円滑に吸引させることができる。
【0024】
本発明の第9態様に係るバイオセンサは、第6態様〜第8態様のいずれか一つに記載のバイオセンサにおいて、前記第一基板の先端面が、前記第二基板から離間される側に向かうに従って前記第一基板の後端側に向かう傾斜面として形成された構成とされている。
【0025】
このバイオセンサによれば、第一基板の先端面は、第二基板から離間される側に向かうに従って第一基板の後端側に向かう傾斜面として形成されている。これにより、キャピラリに試料液を吸引させる際に、試料液を親水層に容易に接触させることができるので、試料液をキャピラリに円滑に吸引させることができる。
【0026】
本発明の第10態様に係るバイオセンサは、第6態様〜第8態様のいずれか一つに記載のバイオセンサにおいて、前記第一基板の先端面が、前記第二基板の先端面よりも前記第二基板の後端側に位置された構成とされている。
【0027】
このバイオセンサによれば、第一基板の先端面は、第二基板の先端面よりも第二基板の後端側に位置されている。これにより、キャピラリに試料液を吸引させる際に、試料液を保持する保持体と第一基板の先端面との干渉を抑制して、試料液をキャピラリに円滑に吸引させることができる。
【0028】
本発明の第11態様に係るバイオセンサは、第6態様〜第10態様のいずれか一つに記載のバイオセンサにおいて、前記第一基板のキャピラリに面する領域に試薬または電極を有する構成とされている。
【0029】
このバイオセンサによれば、試料液を試薬と早く混ぜることができる。
【0030】
本発明の第12態様に係るバイオセンサは、第6態様〜第11態様のいずれか一つに記載のバイオセンサにおいて、前記第一基板のキャピラリに面する領域にも親水層を有する構成とされている。
【0031】
このバイオセンサによれば、より早く試料液が反応領域に到着するので、短時間での反応及び測定が可能となる。
【0032】
なお、第13態様及び第14態様に係るバイオセンサは、試料液として血液を吸引したり、血糖値を測定したりするために用いられると好適である。
【0033】
また、本発明の第15態様に係るバイオセンサは、前記キャピラリの先端側より前記試料液を点着させ、試料液を前記第二基板における前記第一基板側の面に這わせて、かつ前記試料液が前記第一基板における前記第二基板側の面にも這うようにして、試料液を吸引させると好適である。
【発明の効果】
【0034】
以上詳述したように、本発明によれば、キャピラリの吸引性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態に係るバイオセンサの分解斜視図である。
図2図1に示されるバイオセンサを2−2線で切断した断面図である。
図3図1に示されるバイオセンサの先端部の要部拡大断面図である。
図4図1に示されるバイオセンサの製造方法の流れを説明する図である。
図5図4に示される刃の拡大図である。
図6図1に示されるバイオセンサの製造方法の変形例における流れを説明する図である。
図7図6に示される刃の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0037】
図1図2に示される本発明の一実施形態に係るバイオセンサ10は、例えば、血液等の試料液を採取して分析するためのものであり、第一基板12と、第二基板14と、スペーサ16と、レジスト18と、カーボン電極20と、試薬22とを備えている。
【0038】
第一基板12及び第二基板14は、それぞれ短冊状に形成されており、第一基板12は、第二基板14よりも靭性が高く形成されている。本実施形態では、一例として、第一基板12は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の伸縮性を有する樹脂フィルムにより形成されており、第二基板14は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂テープにより形成されている。PBT、PETのアイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)は、それぞれ1794[J/m]、686[J/m]であり、第一基板12がPBTで形成され、第二基板14がPETで形成された場合には、第一基板12は、第二基板14よりも靭性が高いことになる。なお、第一基板12の材料は、樹脂製のものが使われることが多く(たとえば、PBT、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)やPVA(ポリビニルアルコール)などある。これに限られない)、また、第二基板14の材料は、樹脂製のものが使われることが多く(たとえば、PBT、PETやPCやPVAなどある。これに限られない)。
【0039】
第二基板14の先端側には、この第二基板14の幅方向に延びるスリット24が形成されている。また、この第二基板14の裏面には、親水性を有する親水層26が形成されている。なお、親水層26は、第二基板14の裏面の全体に形成されていても良く、また、後述するキャピラリ44に面する領域に局所的に形成されていても良い。つまり、この親水層26は、少なくともキャピラリ44に面する領域に形成されていれば良い。なお、本実施形態では、第二基板14の裏面に親水層26が形成されていることとなっているが、第一基板12の第二基板14に面する領域において親水層が形成されていてもよい。
【0040】
スペーサ16は、例えば、両面テープにより形成されており、第二基板14に沿って延在されている。このスペーサ16の先端側には、上述のスリット24と整合する位置に、スペーサ16の幅方向に延びるスリット28が形成されている。また、このスペーサ16におけるスリット28よりも先端側には、このスペーサ16の長手方向に延びる切欠部30が形成されている。この切欠部30は、後述するキャピラリ44を構成するものであり、スペーサ16の先端に開口されている。
【0041】
レジスト18は、カーボン電極20の表面を覆う保護膜として構成されており、その先端側、つまり、上述の切欠部30と整合する位置には、切欠部32が形成されている。カーボン電極20は、複数の電極34,36,38とリード40,42とを有して構成されている。
【0042】
そして、図2に示されるように、以上の各部材は、第二基板14、スペーサ16、レジスト18、カーボン電極20、第一基板12の順で積層されている。また、このように各部材が積層された状態では、上述の切欠部30によって第一基板12及び第二基板14の各先端部の間にキャピラリ44が形成されている。このキャピラリ44は、第一基板12及び第二基板14の先端面12A,14Aに開口されると共に、スリット24,28により形成された空気口46を通じて外部に開放されている。
【0043】
また、図1に示される各電極34,36,38の一部は、切欠部32を通じてキャピラリ44に露出されており、試薬22は、各電極34,36,38の一部と接触するようにキャピラリ44内に配置されている。つまり、第一基板12のキャピラリ44に面する領域には、試薬22または電極34,36,38を有する構成とされている。
【0044】
そして、このバイオセンサ10では、毛細管現象や親水力によりキャピラリ44の先端から試料液が吸引される。また、キャピラリ44に試料液が導入されると、試料液と試薬22との間で反応することによって電気的特性が変化する。そして、このバイオセンサ10を用いた分析方法では、リード40,42が測定器に接続され、この測定器にて上述の電気的特性の変化が検知されることで、試料液の分析が行われる。
【0045】
次に、上記構成とされたバイオセンサ10の製造方法と併せて、この製造方法によって得られたバイオセンサ10の特徴的な構成について説明する。
【0046】
つまり、本発明の一実施形態に係るバイオセンサの製造方法では、先ず、図4の左図に示されるように、上述のバイオセンサ10(図1参照)の基となるバイオセンサ形成部60を複数有するシート材62を形成する。なお、図4の左図に示される想像線Lは、各バイオセンサ形成部60の境界を示している。
【0047】
各バイオセンサ形成部60は、図1に示される第一基板12と、第二基板14と、スペーサ16と、レジスト18と、カーボン電極20と、試薬22とによって構成されている。第一基板12としては、例えば、上述の一例で挙げた材料のように、第二基板14よりも靭性が高いものを用いる。以上の工程は、本発明におけるシート材形成工程に相当する。
【0048】
続いて、このシート材62を裁断する。以下の工程は、本発明における裁断工程に相当する。シート材62の裁断には、一例として、図4の左図に示される製造装置70を用いる。製造装置70は、金型72と、この金型72に一体に形成された刃74を有して構成されている。刃74としては、第一基板12及び第二基板14の先端面12A,14Aとの接触面74Aが第二基板14側から第一基板12側に向かうに従って第一基板12の後端側に向かう傾斜面とされた片刃を用いる。この刃74では、図5に示されるように、接触面74Aと反対側の面74Bは、入刃方向と平行に形成されており、接触面74Aの刃先側には、補強面74Cが形成されている。本実施形態において、刃74の刃先角度θ1,θ2は、一例として、30°とされている。ここのθはこのような5°から50°でもよいが、10°から40°であれば尚良く、15°から30°であればさらによい。
【0049】
そして、図4の左図及び中央図に示されるように、シート材62に対し、キャピラリ44の先端が第一基板12及び第二基板14の先端面12A,14Aに開口されるように、各バイオセンサ形成部60の先端を第一基板12側から刃74によって裁断する。
【0050】
ここで、図4の中央図に示されるように、第一基板12側から刃74を入刃したときには、第一基板12の先端部12Bが第二基板14側に変形され、その後、刃74を後退させたときには、図4の右図に示されるように、この第一基板12の先端部12Bが元の形状に戻る。そして、これにより、第一基板12の先端部12Bにおけるキャピラリ44側の面12Cは、その先端に向かうに従って第二基板14から離間されるように傾斜される。また、これにより、キャピラリ44の先端側44Aは、その先端に向かうに従って第一基板12及び第二基板14の積層方向(Y方向)に径が拡がっている。
【0051】
また、ここでは、図4の中央図に示されるように、刃74を第一基板12及び第二基板14の積層方向と平行に入刃させる。ここで、刃74の接触面74Aは、入刃方向と傾斜する傾斜面とされている。従って、裁断後には、第一基板12の先端面12Aが、第二基板14から離間される側(図3の矢印A側)に向かうに従って第一基板12の後端側(図3の矢印B側)に向かう傾斜面として形成される。
【0052】
つまり、ここでは、第一基板12の先端面12Aが、第二基板14から離間される側に向かうに従って第一基板12の後端側に向かう傾斜面となるように、各バイオセンサ形成部60の先端を裁断する。
【0053】
さらに、図4の右図に示されるように、第一基板12及び第二基板14が第一基板12側から刃74によって裁断されることに伴って第二基板14にバリ48が形成されるが、このバリ48は、刃74の進行方向先側(図3の矢印C側)に延出するように形成される。つまり、このバリ48は、第二基板14からキャピラリ44と反対側に延出されている。
【0054】
また、刃74として上述の片刃が用いられることにより、第一基板12側から刃74を入刃した場合には、裁断後において、第一基板12の先端面12Aが第二基板14の先端面14Aよりも第二基板14の後端側(図3の矢印B側)に位置される。
【0055】
以上により、シート材62から複数のバイオセンサ10が得られる。
【0056】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0057】
以上詳述したように、本発明の一実施形態に係るバイオセンサの製造方法によれば、親水層26が形成された第二基板14とは反対側の第一基板12側から刃74を入刃するので、裁断時に生ずる第二基板14のバリが親水層26側に突出することを抑制することができる。これにより、裁断時に親水層26に剥離や傷等が生じることを抑制することができる。
【0058】
つまり、この製造方法によって製造されたバイオセンサ10によれば、第一基板12及び第二基板14が刃74によって裁断されることに伴って第二基板14にバリ48が形成されている。ところが、このバリ48は、第一基板12側から刃74が入刃されることにより、第二基板14からキャピラリ44と反対側に延出されている。従って、この第二基板14のバリ48がキャピラリ44側、すなわち、親水層26側に突出することを抑制される。これにより、キャピラリ44の吸引性能を確保することができる。
【0059】
また、このバイオセンサの製造方法によれば、第一基板12として第二基板14よりも靭性が高いものを用いているので、第一基板12側から刃74を入刃したときには、第一基板12からキャピラリ44側にバリが発生することを抑制することができる。従って、この製造方法によって製造されたバイオセンサ10によれば、試料液がキャピラリ44に吸引される際の障害が無くなるか又は少なくなるので、キャピラリ44の吸引性能をより一層確保することができる。そして、発生しうるバイオセンサの吸引不良が以下のように減少する。つまり、吸引不良発生率は、拡張構造変更前:42/8000stripsから変更後:0/36740stripsに減少する。
【0060】
しかも、このバイオセンサ10によれば、キャピラリ44の先端側44Aは、その先端に向かうに従って第一基板12及び第二基板14の積層方向に径が拡がっている。従って、例えば、試料液の量が少なくても、キャピラリ44の先端に試料液を容易に点着させることができ、且つ、試料液をキャピラリ44に円滑に吸引させることができる。
【0061】
また、このバイオセンサの製造方法によれば、第一基板12の先端面12Aが、第二基板14から離間される側に向かうに従って第一基板12の後端側に向かう傾斜面として形成される。従って、この製造方法によって製造されたバイオセンサ10によれば、キャピラリ44に試料液を吸引させる際に、試料液を親水層26に容易に接触させることができるので、試料液をキャピラリ44に円滑に吸引させることができる。
【0062】
また、このバイオセンサの製造方法によれば、刃74として上述の片刃を用いるので、第一基板12側から刃74を入刃しても、裁断後においては、第一基板12の先端面12Aを第二基板14の先端面14Aよりも第二基板14の後端側に位置させることができる。従って、この製造方法によって製造されたバイオセンサ10によれば、キャピラリ44に試料液を吸引させる際に、試料液を保持する保持体と第一基板12の先端面12Aとの干渉を抑制して、試料液をキャピラリ44に円滑に吸引させることができる。この場合の保持体とは、試料液が例えば指先の血液である場合には、指先に相当する。
【0063】
また、第一基板12のキャピラリ44に面する領域には、試薬22または電極34,36,38を有する構成とされているので、試料液を試薬22と早く混ぜることができる。
【0064】
なお、電極34,36,38がおかれている面が親水性層であってもよいが、逆の面にある方が、または、両方の面にあっても、電極のある面と逆の面の方が親水性が高ければ、試料液の伝わりがよく、試薬22との混ざりが早くまた均等に混ざりやすくなり、短時間でかつより正確に測定することができる。
【0065】
また、上述の裁断工程においては、図6に示されるように、両刃とされた刃75を用いても良い。つまり、この刃75は、裁断される一対のバイオセンサ形成部60の配列方向(X方向)に並ぶ一対の刃部76を有している。図7に示されるように、本実施形態において、刃部76の刃先角度θ1,θ2は、一例として、それぞれ30°とされており、刃75は、両側に傾斜面75A,75Bを有している。ここのθ1,θ2はこのような5°から50°でもよいが、10°から40°であれば尚良く、15°から30°であればさらによい。
【0066】
なお、本発明における両刃とは、左右対称に形成されている刃のことであり、本発明における片刃とは、左右非対称に形成され、且つ、片方の面が入刃方向に対して傾斜している刃のことである。
【0067】
このようにしても、図6に示されるように、第一基板12側から刃75を入刃した場合には、裁断後において、第一基板12の先端面12Aを第二基板14の先端面14Aよりも第二基板14の後端側に位置させることができる。これにより、キャピラリ44に試料液を吸引させる際に、試料液を保持する保持体と第一基板12の先端面12Aとの干渉を抑制して、試料液をキャピラリ44に円滑に吸引させることができる。
【0068】
また、上述のように、刃74として刃の傾斜面がキャピラリ44の側に向いた片刃を用いることもできるが、両刃である刃75を用いた場合には、片刃を用いた場合に比して、刃先に入力される圧縮荷重が均等に分散されるため、刃先の耐久性、ひいては、生産性を向上させることができる。また、刃先のチッピングによる刃の交換や、刃の耐久性が向上するため、コストダウンすることができる。
【0069】
なお、刃に使われる材料においても、金属製のものであればよく、また、刃先が強度や耐久性をあげるためにされている加工(たとえば、焼き入れ加工やチタン加工やダイアモンド加工)などがあげられるが、これに限定されない。
【0070】
また、金型を用いて打ち抜き加工をする場合に比して、複雑な金型を必要としないので、初期投資が少なくて済むと共に、金型の耐久性も向上させることができる。また、各製造工程を簡素化することができ、硬度の高い刃を使用する必要も無いので、このことによっても、コストダウンすることができる。
【0071】
また、第一基板12のキャピラリ44に面する領域にも親水層を有する構成とされていると、より早く試料液が反応領域に到着するので、短時間での反応及び測定が可能となる。
【0072】
なお、本発明における試料液には、体液、特に、血液や尿が相当する。また、測定物質は、たとえば、グルコースや乳酸、コレステロール、尿酸などである。特に血液みたいに粘性のある測定物質については、上記実施形態のような吸引力を高めた構造が有用である。また、血糖測定に影響を及ぼすヘマトクリットや血球成分は粘性を有しているため、上記実施形態のような吸引力を高めた構造が、血糖値測定おいても有用である。
【0073】
また、本実施形態のバイオセンサ10は、試料液として血液を吸引したり、血糖値を測定したりするために用いられると好適である。つまり、試料液が血液であれば一般的に粘性の対応を有するが、特に短時間での反応を求められる血糖値測定においては、バイオセンサが上記のような形状や特性を有していることがメリットとなる。
【0074】
なお、このバイオセンサ10の試料液吸引方法としては、キャピラリ44の先端側44Aより試料液を点着させ、試料液を第二基板14における第一基板12側の面に這わせて、かつ試料液が第一基板12における第二基板14側の面にも這うようにして、試料液を吸引させると好適である。
【0075】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
10 バイオセンサ
12 第一基板
14 第二基板
16 スペーサ
18 レジスト
20 カーボン電極
22 試薬
26 親水層
24,28 スリット
30,32 切欠部
44 キャピラリ
46 空気口
48 バリ
60 バイオセンサ形成部
62 シート材
図3
図1
図2
図4
図5
図6
図7