(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698088
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】立軸ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/66 20060101AFI20150319BHJP
F04D 13/00 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
F04D29/66 F
F04D13/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-162287(P2011-162287)
(22)【出願日】2011年7月25日
(65)【公開番号】特開2013-24206(P2013-24206A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】兼森 祐治
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−187383(JP,A)
【文献】
実開平06−076677(JP,U)
【文献】
特開平10−115299(JP,A)
【文献】
特開昭54−044202(JP,A)
【文献】
特開2005−240622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端側に吸込水槽内の底部と対向して開口した吸込口を備え、上端側に吐出管が接続され、かつ羽根車を下端側に固定した主軸が配置されているケーシングと、
前記ケーシングの上端側から分岐し、前記吸込水槽の前記底部に向けて前記ケーシングに沿って鉛直方向に延び、かつ常閉の開閉弁が介設された少なくとも1本の縦配管と、
前記ケーシングの外側を間隔をあけて取り囲むように前記縦配管の下端側に接続され、前記吸込水槽の前記底部に向いた複数のノズルを備える環状配管と、
空気吸込渦の発生兆候を検出するセンサと、
前記センサが前記空気吸込渦の発生兆候を検出すると前記開閉弁を開弁させる制御装置と
を備える、立軸ポンプ。
【請求項2】
前記センサは吸込水槽内の水位を検出する水位センサを含み、
前記制御装置は、前記水位センサの検出水位が予め定められた水位を下回ると前記開閉弁を開弁させる、請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項3】
前記センサは前記羽根車よりも下流側には配置された圧力センサを含み、
前記制御装置は、前記圧力センサの検出圧力が予め定められた圧力を下回ると前記開閉弁を開弁させる、請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項4】
前記センサは前記羽根車よりも下流側に配置された流量センサを含み、
前記制御装置は、前記流量センサの検出流量が予め定められた流量を上回ると前記開閉弁を開弁させる、請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項5】
前記センサは前記ケーシングに取り付けられた振動センサであって、
前記制御装置は、前記振動センサの検出振動強度が予め定められた検出振動強度を上回ると前記開閉弁を開弁させる、請求項1に記載の立軸ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立軸ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
下端側に吸込水槽内の底部と対向して開口した吸込口を備え、かつ羽根車を下端側に固定した主軸が配置されているケーシングを備える立軸ポンプでは、吸込水槽内の水位低下時等により吸込口の周囲の水面から吸込口に空気が吸い込まれて渦(空気吸込渦)が発生することが知られている。空気吸込渦は吸込口への水の円滑な吸込を妨げ、振動や騒音の原因となる。
【0003】
特許文献1には、吸込口を備える吸込ベルマウスの外側を取り囲む部材を配置し、この部材と吸込ベルマウスの間に流路を設けることで空気吸込渦の抑制を図った、立軸ポンプが開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1に開示されているような吸込ベルマウスの外側に部材を配置した構造では空気吸込渦を必ずしも確実に抑制できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4117699号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、立軸ポンプにおいて空気吸込渦の発生を効果的に抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下端側に吸込水槽内の底部と対向して開口した吸込口を備え、上端側に吐出管が接続され、かつ羽根車を下端側に固定した主軸が配置されているケーシングと、前記ケーシングの上端側から分岐し、前記吸込水槽の前記底部に向けて前記ケーシングに沿って鉛直方向に延び、かつ常閉の開閉弁が介設された少なくとも1本の縦配管と、前記ケーシングの外側を間隔をあけて取り囲むように前記縦配管の下端側に接続され、前記吸込水槽の前記底部に向いた複数のノズルを備える環状配管と、空気吸込渦の発生兆候を検出するセンサと、前記センサが前記空気吸込渦の発生兆候を検出すると前記開閉弁を開弁させる制御装置とを備える、立軸ポンプを提供する。
【0008】
センサが空気吸込渦の発生兆候を検出すると、制御装置が開閉弁を開弁する。その結果、吸込水槽から吸込口を通ってケーシング内に吸い込まれた水は、縦配管から環状配管へ圧送され、環状配管のノズルから吸込水槽の底部へ向けて噴出される。ノズルから噴出される水流により水面から吸込口に達する空気の流れが破壊されるので、空気吸込渦の発生が効果的に抑制される。
【0009】
前記センサは吸込水槽内の水位を検出する水位センサを含む。この場合、前記制御装置は、前記水位センサの検出水位が予め定められた水位を下回ると前記開閉弁を開弁させる。
【0010】
前記センサは前記羽根車よりも下流側には配置された圧力センサを含んでもよい。この場合、前記制御装置は、前記圧力センサの検出圧力が予め定められた圧力を下回ると前記開閉弁を開弁させる。
【0011】
前記センサは前記羽根車よりも下流側に配置された流量センサを含んでもよい。この場合、前記制御装置は、前記流量センサの検出
流量が予め定められた流量を上回ると前記開閉弁を開弁させる。
【0012】
前記センサは前記ケーシングに取り付けられた振動センサであってもよい。この場合、前記制御装置は、前記振動センサの検出振動強度が予め定められた検出振動強度を上回ると前記開閉弁を開弁させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の立軸ポンプでは、センサが空気吸込渦の発生兆候を検出すると、制御装置が開閉弁を開弁することで環状配管のノズルから吸込水槽の底部へ向けて水が噴出されるので、空気吸込渦の発生を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態の立軸ポンプを示す側方断面図。
【
図2】
図1の立軸ポンプを背面から見た状態を示す背面図。
【
図5】本発明の第2実施形態の立軸ポンプを示す側方断面図。
【
図6】本発明の第3実施形態の立軸ポンプを示す側方断面図。
【
図7】本発明の第4実施形態の立軸ポンプを示す側方断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
図1および
図2は、本発明の実施形態に係る立軸ポンプ1を示す。この立軸ポンプ1は、ポンプ機場の床2に対して開口部2aに差し込まれた状態で固定され、概ね鉛直方向に延びる直管状のケーシング3を備える。
【0016】
ケーシング3の下端側には、外形が円弧状をなすように下向きに漸次拡径した吸込ベルマウス4が配設されている。この吸込ベルマウス4の下端開口からなる吸込口4aは、吸込水槽5の底部5aに対して、例えば吸込口4aの直径の1.3倍程度の距離を隔てて対向配置されている。また、ケーシング3の上端側には、鉛直方向から水平方向に水の流れを変えるように、90度湾曲した吐出ベンド6が配設されている。この吐出ベンド6の吐出口6aには、手動開閉可能な仕切弁7を介設した吐出管8が接続されている。
【0017】
また、ケーシング3内には、軸線に沿って鉛直方向に延びるように主軸9が配置され、この主軸9が軸受10A,10B,10Cにより回転可能に支持されている。主軸9の下端側には羽根車11が固定されている。この羽根車11は、吸込ベルマウス4上に位置するように配設した羽根車ケース12内に、軸受10Cによって配置されている。吐出ベンド6からケーシング3の外部に突出する主軸9の上端は、モータ、減速機等からなる図示しない駆動機構に連結されている。
【0018】
本実施形態の吸込ベルマウス4は、リブ15を介して軸心ベルマウス14が内部に配設された二重構造である。しかし、本発明は吸込ベルマウス4が軸心ベルマウス14を備えない通常の一重構造であっても適用できる。
【0019】
ケーシング3には、仕切弁7より上流側に位置する吐出ベンド6の左右対称の位置に横配管17A,17Bが分岐接続されている。また、一方の横配管17Aから2本の縦配管18A1,18A2の上端が接続され、他方の横配管17Bから2本の縦配管18B1,18B2が接続されている。吐出ベンド6に接続されるこれら4本の縦配管18A1〜18B2の下端に環状配管20が接続され、この環状配管20は連結リブ22を介してケーシング3に連結されている。また、縦配管18A1〜18B2には、横配管17A,17Bの付近に位置するように、常閉の電動バタフライ弁からなる開閉弁19が介設されている。開閉弁19は後述する制御装置26で開閉を制御できる限り、その具体的な構造は特に限定されない。
【0020】
環状配管20は、主軸9の軸線を中心とする円環状であり、吸込ベルマウス4の外側に間隔を隔てて取り囲むように、縦配管18A1〜18B2の下端に接続されている。環状配管20には、
図3に最も明りょうに示すようすに、複数個(本実施形態では8個)のノズル21が周方向に等間隔で設けられている。これらノズル21は、吸込水槽5の底部5aに向けて全て下向きに配置されている。各ノズル21は、主軸9から離れる向きに水流が噴出されるように、平面視で径方向外向きに突設されている。
の役割を兼ねる。
【0021】
吸込水槽5内の水位を検出する水位センサ101が設けられている。この水位センサ101は検出した水位を制御装置26に出力できる限りその形式は特に限定されない。
【0022】
制御装置26は予め設定されたプログラムに従って立軸ポンプ1の動作を制御する。特に、制御装置26は、水位センサ101が検出する水位に基づいて開閉弁19の開閉を制御する。
【0023】
立軸ポンプ1の通常運転時には、仕切弁7は開弁状態であり開閉弁19は閉弁状態である。羽根車11の回転により吸込水槽5内の水が第1および第2吸水路23,24を通して吸込ベルマウス4の吸込口4aから吸い込まれ、ケーシング3から吐出ベンド6を介して吐出管8に排出される。
【0024】
通常運転時の制御装置26には、水位センサ101から常時又は所定の時間間隔で検出水位が送信される。制御装置26は、水位センサ101の検出水位が予め定められた基準水位を下回ると開閉弁19を開弁させる。この基準水位は吸水水槽5内の水位がそれ以下に低下すると、空気吸込渦(
図4に符号Xで模式的に示す)が発生する水位であり、理論、実験、又はそれらの両方から決定できる。言い換えれば、水位センサ101の検出水位が基準水位まで低下したことは空気吸込渦の発生兆候を検出に相当する。基準水位は制御装置26に予め記憶されている。制御装置26が開閉弁19を開弁すると、吸込水槽5内の水は、ケーシング3(吐出ベンド6)から横配管17A,17Bおよび縦配管18A1〜18B2を経て環状配管20へ圧送される。そして、この環状配管20へ圧送された水は、
図1および
図2に示すように、ノズル21から吸込水槽5内に噴出される。ノズル21から噴出される水流により水面から吸込口に達する空気の流れが破壊されるので、空気吸込渦(
図4に符号Xで模式的に示す)の発生が効果的に抑制される。
【0025】
(第2実施形態)
図5に示す本発明の第2実施形態の立軸ポンプ1では、羽根車11よりも下流側、具体的には吐出管8配置された圧力センサ102により空気込吸込渦の発生兆候を検出する。吸込口4aからの吸込流量が増加する程、空気込吸込渦が発生しやすくなる。一方、吸込流量が増加する程、吐出圧力が低下する。従って、空気込吸込渦の発生兆候の検出に相当する吸込流量(基準吸込流量)を理論、実験、又はそれらの両方から決定でき、この基準吸込流量が決定できれば、それに相当する吐出圧力(基準吐出圧力)も決定できる。制御装置26には、基準吐出圧力が記憶されている。
【0026】
通常運転時の制御装置26には、圧力センサ102から常時又は所定の時間間隔で検出された吐出圧力が送信される。制御装置26は、圧力センサ102の検出圧力が基準圧力を下回ると開閉弁19を開弁させる。その結果、吸込水槽5内の水は、ケーシング3(吐出ベンド6)から横配管17A,17Bおよび縦配管18A1〜18B2を経て環状配管20へ圧送されノズル21から吸込水槽5内に噴出される。ノズル21から噴出される水流により水面から吸込口に達する空気の流れが破壊されるので、空気吸込渦(
図4に符号Xで模式的に示す)の発生が効果的に抑制される。
【0027】
第2実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0028】
(第3実施形態)
図6に示す本発明の第3実施形態の立軸ポンプ1では、羽根車11よりも下流側、具体的には吐出管8配置された流量センサ103により空気込吸込渦の発生兆候を検出する。制御装置26には空気込吸込渦の発生兆候の検出に相当する基準吸込流量(前述のように理論、実験、又はそれらの両方から決定できる。)が予め記憶されている。
【0029】
通常運転時の制御装置26には、流量センサ103から常時又は所定の時間間隔で検出流量が送信される。制御装置26は、
流量センサ103の検出流量が基準吸込流量を上回ると開閉弁19を開弁させる。その結果、吸込水槽5内の水は、ケーシング3(吐出ベンド6)から横配管17A,17Bおよび縦配管18A1〜18B2を経て環状配管20へ圧送されノズル21から吸込水槽5内に噴出される。ノズル21から噴出される水流により水面から吸込口に達する空気の流れが破壊されるので、空気吸込渦(
図4に符号Xで模式的に示す)の発生が効果的に抑制される。
【0030】
第3実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0031】
(第4実施形態)
図7に示す本発明の第4実施形態の立軸ポンプ1では、主軸9の吐出ベンド6から吐出した部分を支持する軸受110に取り付けられた振動センサ104により空気込吸込渦の発生兆候を検出する。吸込水槽5内の水位低下時等により吸込口4aの周囲の水面から吸込口4aに吸い込まれる空気量が増加すると立軸ポンプ1の振動が増大する。特に、羽根車11が固定された主軸9の振動が増加する。従って、空気込吸込渦の発生兆候の検出に相当する振動(基準振動)を理論、実験、又はそれらの両方から決定できる。制御装置26には、基準振動が記憶されている。
【0032】
通常運転時の制御装置26には、振動センサ104から常時又は所定の時間間隔で検出された振動が送信される。制御装置26は、圧力センサ102の検出振動が基準振動を上回ると開閉弁19を開弁させる。その結果、吸込水槽5内の水は、ケーシング3(吐出ベンド6)から横配管17A,17Bおよび縦配管18A1〜18B2を経て環状配管20へ圧送されノズル21から吸込水槽5内に噴出される。ノズル21から噴出される水流により水面から吸込口に達する空気の流れが破壊されるので、空気吸込渦(
図4に符号Xで模式的に示す)の発生が効果的に抑制される。
【0033】
第4実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。なお、振動センサ104の
【0034】
なお、本発明は実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0035】
一つの立軸ポンプ1に水位センサ101に加え、圧力センサ102と流量センサ103の少なくとも一方を設け、制御装置26は水位センサ101を含むこれらのセンサの検出値に基づいて空気込吸込渦の発生兆候を検出してもよい。
【0036】
通常運転が長期にわたって実行されない場合等、吸込水槽5内の水を排水するためではなく、排水性能維持等の目的で立軸ポンプ1を運転させる場合がある(管理運転)。この管理運転時に開閉弁19を開弁してノズル21から水流を噴出させてもよい、吸込水槽5の底部5aに堆積していたし渣、砂等の異物は、ノズル21から噴出される水流により吹き上げられて吸込水槽5内の水中に浮遊する。この状態で、仕切弁7を開弁して立軸ポンプ1を通常運転に切り換えれば、異物を水と共に立軸ポンプ1に吸い込んで下流へ圧送することで、吸込水槽5内を清掃できる
【符号の説明】
【0037】
1…立軸ポンプ 3…ケーシング
4…吸込ベルマウス 4a…吸込口
5…吸込水槽 5a…底部
6…吐出ベンド 6a…吐出口
7…仕切弁 8…吐出管
9…主軸 11…羽根車
15…リブ 16…水槽清掃装置
18A1〜18B2…縦配管 19…開閉弁
20…環状配管 21…ノズル
22…連結リブ 26…制御装置
101…水位センサ 102…圧力センサ
103…流量センサ 104…振動センサ
110…軸受