(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のブレーキ機構として、例えば、負圧式ブースタや油圧式ブースタを用いた倍力装置が知られている。この種の倍力装置として、近年、電動モータを倍力源として利用した電動倍力装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に開示された電動倍力装置は、ブレーキペダルの操作によって進退動作する主ピストンと、前記主ピストンと相対変位可能に外嵌された筒状のブースタピストンと、前記ブースタピストンを進退動作させる電動モータとを備えた単一のまとまった機器として構成される。
【0004】
この場合、主ピストン及びブースタピストンをマスタシリンダのピストンとして、それぞれの前端部をマスタシリンダの圧力室に臨ませている。そこで、ブレーキペダルから主ピストンに付与される入力推力と、電動モータからブースタピストンに付与されるブースタ推力とによって、マスタシリンダ内にブレーキ液圧を発生させている。
この装置に用いられている電動モータは、ハウジング本体に固定されたステータと、中空のロータから構成され、ロータの中央を貫通する状態で、ロータにキーを介してボールねじ機構が配設されており、この電動倍力装置専用に設計されたものとなっている。
【0005】
このような専用設計された電動モータを用いると、コストが嵩むばかりか、電動モータとしての汎用性も損なわれてしまうため、電動モータとしては、モータ本体(モータケーシング)とブラケット(基部)とから構成される、汎用性に優れた一般的なものを採用することが提唱される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような汎用性に優れた一般的な電動モータを電動倍力装置(ブレーキシステム)に取付ける場合、軽量化等の目的から、電動モータを格納する部分における、電動モータの駆動力を伝達する駆動力伝達部と接するブラケット(基部)を樹脂製にすることが考えられる。しかしながら、この基部を樹脂製にすると、金属製の駆動力伝達部との間に材質の違いによる微小な間隙が生じてしまう。すると、この間隙がガタの原因となり、ブレーキシステムの外部で発生した振動が伝わって電動モータが振動したり、電動モータの駆動時に伝達歯車同志の噛合い音が発生したりすることがあり、電動モータの振動や、騒音の原因となることがあった。
【0008】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、電動モータ部と、駆動力伝達部との間に生じる取り付け剛性を向上させ、電動モータの振動や、騒音の防止を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、ブレーキ操作に応じた電気信号に基づいてブレーキ液圧を発生させる電動ブレーキアクチュエータにおけるモータシリンダ装置であって、電動モータが格納されているモータケーシングと、基部と、を有する電動モータ部と、
金属製であるとともに、前記電動モータの駆動が伝達される駆動力伝達部と、を有しており、前記基部は、樹脂製であるとともに、前記モータケーシングに結合されており、かつ、前記駆動力伝達部と接しており、
前記基部の前記駆動力伝達部に対する対向面に形成され、前記基部と一体に形成される突起であるガタ防止手段を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、電動モータ部と、駆動力伝達部との間に生じる取り付け剛性を向上させることができる。これにより、電動モータ部の基部と、駆動力伝達部との間の材質の違いによる、ガタを防止することができ、電動モータの振動や、騒音等を抑えることができる。
【0012】
また、本発明によれば、基部と一体化させた突起とすることで、電動モータ部と、駆動力伝達部との組み付けを容易にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電動モータ部と、駆動力伝達部との間に生じる取り付け剛性を向上させ、電動モータの振動や、騒音の防止が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
[第1実施形態]
まず、
図1〜
図3を参照して、本発明における第1実施形態を説明する。
【0023】
図1は、モータシリンダ装置の斜視図、
図2は、第1実施形態に係るモータシリンダ装置の分解斜視図、
図3は、第1実施形態に係るモータシリンダ装置の側面図である。なお、
図2において、電動モータ部72のみ、基部72bからの斜視図となっている。
【0024】
車両用ブレーキシステムにおけるモータシリンダ装置16は以下のような構成を備える。ここで、モータシリンダ装置16は、車両用ブレーキシステムにおけるブレーキ液圧を制御する電動ブレーキアクチュエータとして動作する。
このような、電動ブレーキアクチュエータとして機能するモータシリンダ装置16は、
図1に示すように、電動モータ部72及び駆動力伝達部73を有するアクチュエータ機構74と、前記アクチュエータ機構74によって作動されるシリンダ機構76とを備える。この場合、
図2に示すように、電動モータ部72、駆動力伝達部73、及び、シリンダ機構76は、それぞれ分離可能に設けられる。
【0025】
また、前記アクチュエータ機構74の駆動力伝達部73は、電動モータ部72の出力軸に取り付けられた歯車72dの回転駆動力を伝達するギヤ機構(不図示)と、この回転駆動力を直線運動(直線方向の軸力)に変換してシリンダ機構76のスレーブピストン(不図示)側に伝達するボールねじ構造体(不図示)とを有する。
【0026】
電動モータ部72には、図示しない制御手段からの制御信号(電気信号)に基づいて駆動制御される、例えば、サーボモータ等の電動モータが格納されており、シリンダ機構76の上方に配置されている。このように配置構成することにより、駆動力伝達部73内のグリス等の油成分が重力作用によって電動モータ部72内に進入することを好適に回避することができる。
【0027】
前記電動モータ部72は、有底円筒状に形成され、電動モータを格納しているモータケーシング72aと、前記モータケーシング72aと一体的に結合され、図示しないハーネスが接続される基部72bとから構成される。前記基部72bには、ねじ部材77aを挿通するための挿通孔77bが複数形成され、前記ねじ部材77aを介して電動モータ部72が後記するアクチュエータハウジング75の第1ボディ75aに締結される。符号72cは第1ボディ75aにおける当接面75cと当接する当接面である。
なお、基部72bは樹脂製であり、モータケーシング72aは金属製である。
【0028】
また、この挿通孔77bには、金属材からなる円筒形のカラー部材77dが、基部72bにインサート成形法によって埋設されている。カラー部材77dは、その一端側が当接面72cよりも若干突出しており、電動モータ部72をアクチュエータハウジング75と締結する際に、カラー部材77dの一端側が当接面75cと当接し、カラー部材77dの軸方向両端面がモータケーシング72aのフランジ部とアクチュエータハウジング75の当接面75cとに挟持されることによって、ねじ部材77aの締付け力をこのカラー部材77dによって受けるように構成されている。
このように、ねじ部材77aの締付け応力が樹脂製の基部72bに直接的に加わらなくなるようになっている。
【0029】
駆動力伝達部73は、アクチュエータハウジング75を有し、前記アクチュエータハウジング75内の空間部には、ギヤ機構(不図示)、ボールねじ構造体(不図示)等の駆動力伝達用の機械要素が収納される。前記アクチュエータハウジング75は、シリンダ機構76側に配置される第1ボディ75aと、前記第1ボディ75aのシリンダ機構76と反対側の開口端を閉塞する第2ボディ75bとによって分割構成される。アクチュエータハウジング75を構成する第1ボディ75aと第2ボディ75bとは、4本のボルト83a(
図3)を介して一体的に結合されると共に、互いに分離可能に構成される。なお、駆動力伝達部73を構成する第1ボディ75a及び第2ボディ75bは金属製である。
【0030】
図1及び
図3に示すように、電動モータ部72の基部72bと、アクチュエータハウジング75の第1ボディ75aとの間には、後記する突起201による間隙200が存在している。
【0031】
図2に示すように、第1ボディ75aの上部側には、電動モータ部72を駆動力伝達部73に取り付けるための一対のねじ穴77cが設けられ、一対のねじ部材77aを前記ねじ穴77cに締結することにより電動モータ部72が固定される。また、第1ボディ75aのシリンダ機構76側の端部には、略菱形形状を呈するフランジ部79が設けられ、前記フランジ部79には、略円形状の開口部79aと、シリンダ機構76を取り付けるための一対のねじ穴81cが設けられる。この場合、後記するシリンダ本体82の他端部に設けられたフランジ部82aの挿通孔81bを貫通した一対のねじ部材81aが、前記ねじ穴81cに螺入されることにより、シリンダ機構76と駆動力伝達部73とが一体的に結合される。なお、
図1〜
図5において、駆動力伝達部73における歯車72dとかみ合う歯車の記載が省略されている。
【0032】
そして、
図2に示すように、基部72bにおける第1ボディ75aとの対向面にはガタ防止手段として円形状の突起201が、基部72bと一体となって設けられている。この突起201は、硬質のものでもよいし、軟質のものでもよい。軟質であれば、電動モータ部72と、駆動力伝達部73の組み付け時に、突起201が押しつぶされるようにして、両者を結合させるので、ガタの防止を向上させることができる。
【0033】
なお、第1実施形態において、突起201は円形状としたが、これに限らず、四角形状等としてもよい。また、
図2に示す例では、一方の側に4個、他方の側に8個の計12個の突起201が配置されているが、突起201の位置及び数は、これに限らず、例えば、挿通孔77bを避けるよう、当接面72cの全周に配置されてもよい。
【0034】
第1実施形態によれば、突起201を設けることによって、ねじ部材77aによる締結を強固にすることができる。つまり、電動モータ部72と、駆動力伝達部73との間に生じる取り付け剛性を向上させることができる。これに伴い、ガタを防止することができ、電動モータの振動、騒音等を抑えることができる。
また、基部72bと一体となっている突起201とすることで、電動モータ部72と、駆動力伝達部73との組み付けを容易にすることができる。
【0035】
[第2実施形態]
次に、
図4、
図5を参照して、本発明における第2実施形態を説明する。
なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して、説明を省略する。また、
図4において、電動モータ部72のみ、基部72bからの斜視図となっている。
図4は、第2実施形態に係るモータシリンダ装置の分解斜視図であり、
図5は、第2実施形態に係る基部の端面図である。
図4に示すように、第2実施形態におけるモータシリンダ装置16Aでは、ガタ防止手段として、突起201の代わりに、基部72bと、第1ボディ75aとの間に円環状かつ板状のシム202が挟装される。シム202の材質は、樹脂製、ゴム製、金属製等が考えられる。そして、
図5に示すように、シム202は、組み付け時において挿通孔77bを避けるようなサイズとして構成される。また、シム202は、当接面72c,75cにおいて挟装される。
【0036】
なお、第2実施形態において、シム202の形状を円環状であるとしたが、これに限らず、複数のパーツに分割された構成としてもよい。
この場合、円環状のシム202を取り付けることにできるスペースが基部72b上に確保できるのであれば、シム202を円環状にし、挿通孔77b等の位置関係上、スペースの確保が困難である場合は、シム202を複数のパーツに分割し、空いているスペースに分割された各シム202を配置することが望ましい。また、複数のパーツに分割された場合、各パーツは挿通孔77bを避けるような位置に配置されることが望ましい。なお、シム202は薄い板状であることが望ましいが、これに限らず、厚みを持った構成としてもよい。
【0037】
このようなガタ防止手段として、取り替え可能なシム202を設けることで、ガタの防止による電動モータの振動、騒音を防止するとともに、劣化によるシムの取替えが可能となる。
また、シム202を円環状とすることで、摩擦力を向上させることができ、安定的なシムの固定が可能となる。
さらに、シム202を分割させることで、基部72bや、動力伝達部73において、シム202を設置するスペースが少ない場合でも、空いているスペースにシムを設置することができる。
【0038】
また、モータシリンダ装置16の組み付け時において、第2ボディ75bが下方に位置し、第1ボディ75aが上方に位置するようアクチュエータハウジング75を固定し、第1ボディ75a上にシム202を載置した後、電動モータ部72を組み付けるようにするとよい。あるいは、電動モータ部72を下方に固定し、基部72b上にシム202を載置した後、アクチュエータハウジング75を組みつけてもよい。このようにすることで、シム202の組み付けが容易となる。
【0039】
なお、モータシリンダ装置16は、例えば、エンジン(内燃機関)のみによって駆動される自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等を含む各種車両に対して搭載可能に設けられる。