特許第5698120号(P5698120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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▶ フイルメニツヒ ソシエテ アノニムの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698120
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】温感組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/00 20060101AFI20150319BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20150319BHJP
   A23G 4/00 20060101ALI20150319BHJP
   A23L 1/22 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20150319BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20150319BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20150319BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20150319BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20150319BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150319BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   A23L1/00 H
   A23G3/00 101
   A23G3/30
   A23L1/22 Z
   A61K8/33
   A61K8/34
   A61K8/49
   A61Q13/00 101
   A61Q11/00
   A61Q19/00
   A61K8/35
   A61K8/37
   A61K47/08
   A61K47/10
   A61K47/14
   A61K47/22
   A61K9/10
   A61P11/00
   A61P29/00
   A61K8/42
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-504578(P2011-504578)
(86)(22)【出願日】2009年4月6日
(65)【公表番号】特表2011-516092(P2011-516092A)
(43)【公表日】2011年5月26日
(86)【国際出願番号】IB2009051435
(87)【国際公開番号】WO2009127992
(87)【国際公開日】20091022
【審査請求日】2011年8月17日
(31)【優先権主張番号】61/045,138
(32)【優先日】2008年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ベルナディタ デシエルト
(72)【発明者】
【氏名】アン リー
(72)【発明者】
【氏名】ニコル スタニエク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ザノン
【審査官】 上條 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−010728(JP,A)
【文献】 特開平05−105628(JP,A)
【文献】 特開平07−082142(JP,A)
【文献】 特開2005−143461(JP,A)
【文献】 特開2005−343915(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/109241(WO,A1)
【文献】 特開昭60−075424(JP,A)
【文献】 特開昭50−160438(JP,A)
【文献】 特開平11−269481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/00
A23G 3/34
A23G 4/00
A23L 1/22
A61K 8/33
A61K 8/34
A61K 8/35
A61K 8/37
A61K 8/49
A61K 9/10
A61K 47/08
A61K 47/10
A61K 47/14
A61K 47/22
A61P 11/00
A61P 29/00
A61Q 11/00
A61Q 13/00
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)温感成分、
(ii)冷感成分、
を含有し、その際、(i):(ii)の質量比は1:7〜1:35であり、(i)及び(ii)の合計量が、当該成分が含まれる消費製品の全質量に対して少なくとも0.3質量%であり、かつ、1質量%以下である、温感組成物であって、
前記温感成分の薬剤が、ピペリン、バニリブチルエーテル、及びこれらの2種を含有する混合物から成る群から選択され、
前記冷感成分が、アネトール、メントール、8−p−メンテン−3−オール、3−(3’−p−メンタニルオキシ)−1,2−プロパンジオール、N−エチル−3−p−メンタンカルボキサミド、2−イソプロピル−N,2,3−トリメチルブタンアミド、及びこれら2種又はそれ以上を含む混合物からなる群から選択される、温感組成物。
【請求項2】
さらに、(iii)苦味成分を含有し、該苦味成分(iii)が組成物の全質量に対して0.15質量%未満の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに、(iv)として、(i)〜(iii)の成分のための溶剤を含有し、該溶剤(iv)は、温感組成物の全質量に対して10質量%未満のエタノールを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
口、のど及び胸部への温感を提供するための、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の温感組成物を含有する、食品。
【請求項6】
飲料、アルコール飲料、乳製品、豆製品、スープ、ドレッシング、又は、ソースの形である、請求項5に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレーバー及び風味の分野に関する。特に、本発明は、消費の際に温感を付与する組成物及び当該組成物を含む食品に関する。
【0002】
背景技術
三叉神経によって介在される特定の感覚、例えば冷たい、温かい、辛い及び酸っぱいは、食品、ボディケア製品及び賦香製品中で消費者により歓迎されつつある。これらの三叉神経化合物は、多種多様の食品に独特の特徴を与えることを可能にし、かつこれらは、生体の皮膚上においてさえも感知されるものである。したがってUS6780443, US6890567及びUS6899901(すべてTakasago International Corporation)は、冷感、温感及び刺激感を含む組成物を開示しており、この場合、この目的は、口腔中の原発性の強い感覚、例えばうずく又は刺すような痛みを提供することである。フレーバー及び/又は感覚化合物を有することが知られている化合物を組み合わせて、改変された性質を有する新規活性成分を製造することはよく知られている。たとえば、WO 98/47482は、生理学的冷却剤を含む咳止めドロップのための配合物を開示している。
【0003】
これらの文献には、口、のど及び胸部において温感を提供する課題については、何ら示されていない。
【0004】
医薬産業において、一般用(OTC)医薬品、特に鎮痛薬、例えば風邪症状改善製品、及び特に咳止めシロップは、しばしばエタノールを含み、これは活性成分のための溶剤として作用するのみならず、より重要なのは消費者に対して、口、のど及び胸部の温感を与えるよう作用することであり、これが、医薬によってもたらされる鎮静効果を補うのに役立つ。しかしながら、このような製品におけるエタノールの使用は、通常望ましいものではない。例えば、健康、宗教上の理由又はその他の理由のためにその使用を回避したい消費者もいれば、その使用によりアレルギー反応が生じるのがわかっており、それにより、その使用の回避を余儀なくされる消費者がいるためである。したがって、エタノールによってもたらされるのとほぼ同じ温感を達成し、かつ少なくとも部分的にそのエタノール含量と置き換えることができる生成物を提供することが、消費者の利益につながることが明らかである。
【0005】
US6780443, US6890567及びUS6899901には、この課題は何ら示されておらず、それどころか、顕著に高い量のエタノールを含有する多数の組成物が開示されている。
【0006】
他の観点において、組成物は、好ましくは、刺激的又は悪臭を提供するのを回避すべきであり、それというのも、このような刺激を、さらにただれたのどに提供しうることから、鎮痛のための消費製品、例えば咳止め混合物中で望ましくないためである。
【0007】
したがって、本発明の好ましい課題は、強い刺激臭を有することなく、温感効果を提供することである。特に、製品、特に鎮痛剤においてエタノールを本質的に又は完全に置換することが可能な、清浄な温感の三叉神経性効果を提供するフレーバー感覚組成物を提供することである。
【0008】
特に、本発明の課題は、組成物中の成分が互いに相乗的に作用して、この感覚が口ばかりでなくのど及び胸部において認められるような温感を与えるための組成物を提供することである。
【0009】
発明の要旨
特に本発明は、温感成分及び冷感成分を特定の比で含有する組成物が、口ばかりでなくのど及び胸部においても認知される清浄な温感を提供でき、かつ、この効果のために使用されるエタノールの置換に有効であることを見出した。
【0010】
したがって、本発明は、第1の態様において
(i)温感成分
(ii)冷感成分、
(iii)場合により苦味成分、及び
(iv)場合により成分(i)〜(iii)のための溶剤を含有する温感組成物を提供し、その際、(i):(iii)の質量比は1:3〜1:100であるが、但し、苦味成分(iii)は、組成物の全質量に対して0.15質量%未満で存在し、かつ、溶剤(iv)は、温感組成物の全量に対して10質量%未満のエタノールを含有する。
【0011】
他の態様において、本発明は、消費者の口、のど及び胸部に対して温感をもたらす前記組成物の使用を提供する。
【0012】
他の態様において、本発明は、前記温感組成物を含有する食品、例えばオーラルケア製品、ボディケア製品又は医薬品を提供する。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の組成物は、温感成分及び冷感成分を含有し、その際、温感成分と冷感成分との質量比が1:3〜1:100である。
【0014】
組成物は、好ましくは経口摂取可能な製品において使用される。より好ましくは、医薬品、さらに好ましくは鎮痛剤において使用される。この製品は、固体、液体、ゲル、懸濁液等の形で提供することができる。特に好ましくは、シロップ及び液体核を有する(Liquid-centred)のどあめであり、その際、エタノールは、口、のど及び胸部に対して温感を提供するのに通常役立つものである。
【0015】
それにもかかわらず、本発明の組成物は、前記温感が望ましい他の消費製品において、使用されることが想定される。したがって、当該組成物は飲料、この場合、これはアルコール性又は非アルコール性のもの、チューイングガム、菓子類、香味のある食品等において使用することができる。
【0016】
例えば、ある一定の飲料は、加温又は冷却して消費され、かつしたがって、飲料の加熱手段がない場合においても温感効果を達成することが望ましい。
【0017】
例えば、香味料をいれたワイン、アルコール飲料は、加熱して消費することで、望ましい温感を提供する。本発明の組成物を混合することによって、望ましい温感効果を維持しながらもアルコールの量をさらに減少させることができる。
【0018】
温感成分
本発明による組成物は、1種又はそれ以上の温感化合物から成る温感成分を含有する。温感化合物とは、口腔又は皮膚と接触する際に、熱い、温かみのある感覚を提供する化合物を意味する。特に、温感成分は、熱い、温かみのある感覚を、三斜神経を介して提供する。温感化合物は、主にTRPVI受容体を刺激するものと考えられている。
【0019】
温感化合物は、好ましくは精製された化合物であるが、しかしながら、さらに抽出物の形で提供することもできる。
【0020】
適した温感化合物の例は、以下の式による構造:
【化1】
あるいは、これらの許容可能な塩[式中、Aは非置換の、分枝又は直鎖のC〜C−アルキル基及びBは水素、非置換の、分枝又は直鎖のC〜C−アルキル基である]による構造を有するもの又はその許容可能な塩を含む。一つの実施態様においてAはメチル基を示す。好ましい実施態様において、Aはメチル基を示し、かつ、BはC〜C−アルキル基を示す。特に好ましい実施態様において、温感は、バニリルブチルエーテル及びバニリルエチルエーテルから選択される。バニリルブチルエーテルは、商標Hotact(登録商標)VBE(例えばTakasago, Inc)として市販されている。本発明の組成物における使用に適した他の温感化合物は、ジンゲロール、バニリルプロピルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル、バニリルブチルエーテルアセテート、4−(1−メントキシメチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシメチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシメチル)−2−(2’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシメチル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシメチル)−2−(3’、4’−メチレンジオキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシメチル)−2−(3’’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、レッドペッパーオイル、レッドペッパーオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブ(jambu)オレオレジン、サンショウエクストラクト、サンショウI、サンショウII、サンショウアミド、ブラックペッパーエクストラクト、チャビシン、ピペリン及びスピラントールを含む。他の適した温感化合物は、例えばUS 6,780,443中で開示されている(ここで引用することにより、その全体が含まれるものである)。温感成分は、好ましくはカプサイシンを除き、それというのも、このような成分の消費者に認知される刺激は、本願発明においては望ましくないためである。カプサイシンが含まれるべき場合には、温感組成物の質量に対して0.5質量%未満の量で存在することが好ましい。
【0021】
冷感成分
本発明による組成物はさらに、1種又はそれ以上の冷感化合物から成る冷感成分を含有するが、但し、最終生成物中で、顕著なメントールの味を示すことはない。冷感化合物とは、皮膚又は口腔と接触する際に、三叉神経により介在される冷感を提供する、任意の化合物を意味する。冷感化合物は、主に、TRPM8受容体を活性化する。
【0022】
冷感成分は、好ましくは精製された化合物であるが、しかしながらさらに抽出物の形で提供されてもよい。
【0023】
適した冷感化合物の例は、(3S,5R,6S,9R)−6−イソプロピル−3,9−ジメチル−1−4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−オン及び(3S,5S,6S,9R)−6−イソプロピル−3,9−ジメチル−1−4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−オン(双方ともに、cubebolの名称でFirmenich SAから市販されている)を含む化合物、この場合、この化合物は、以下の式:
【化2】
[式中、Dは直鎖又は分枝の、非置換のC〜C−アルキル基又はアルケニル基であり、かつ、Eは直鎖又は分枝の、ヒドロキシ置換又は非置換のC〜C−アルキル基である]による構造を有するもの又はその塩、例えば(3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール)、これは、Coolact(登録商標)(例えばTakasago, Inc.)の名称で市販されているもの、メントール、メントン、樟脳、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ミントオイル、ペパーミントオイル又はこれらの留分、スペアミントオイル、ユーカリオイル、N−アルキル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−1−メントキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、2−1−メントキシエタン−1−オール、3−1−メントキシプロパン−1−オール、4−1−メントキシブタン−1−オール、1−(2−ヒドロキシ−4−エチルシクロヘキシル)−エタノン、メンチル3−ヒドロキシブタノエート、メンチルラクテート、メントングリセリンケタール、2−(2−1−メンチルオキシエチル)エタノール、メンチルグリオキシレート、N−メチル−2,2−イソプロピルメチル−3−メンチルブタンアミド、メンチル2−ピロリドン−5−カルボキシレート、モノメンチルスクシネート、モノメンチルスクシネートのアルカリ金属塩及びモノメンチルスクシネートのアルカリ土類金属塩、モノメンチルグルタレート、モノメンチルグルタレートのアルカリ金属塩、モノメンチルグルタレートのアルカリ土類金属塩、N−[[5−メチル−2−(1−メチルエチル)シクロヘキシル]カルボニル]グリシン、p−メンタン−3−カルボン酸グリセロールエステル、メントールプロピレングリコールカルボネート、メントールエチレングリコールカルボネート、及び2−(1−メチルプロピル)−1−シクロヘキサノン(Freskomenthe(登録商標)、Givaudan)である。他の冷感化合物は、US特許7,030,273及び6,780,443中で開示されている(ここで引用することによりその全体を含む)。
【0024】
冷感化合物として、メントールフレーバーを提供する化合物を冷感化合物として使用することが望ましい場合には、これは、消費者が最終生成物中でメントールフレーバーを検出することが可能な限界値を下廻る程度に存在することが必要である。例えば、メントール又はメントールフレーバー化合物が、温感組成物の2質量%又はそれ未満の量で存在することが好ましい。これは消費者により認知される冷感成分、温感成分及び場合によっては刺激成分の組合せによって達成可能なのど及び胸部の温感作用が、消費者がさらにメントールフレーバーを認知することにより顕著に減少するためである。したがって、一つの実施態様において、組成物は本質的に、より好ましくは完全にメントール及びメントール誘導体不含であってもよい。
【0025】
苦味成分
本質的ではないが、のど及び胸部における温感が、少量の苦味成分の存在によって強調されうることが見出された。したがって、本発明の組成物は、苦味成分を含有することが好ましい。苦味成分は、苦味官能特性を有する化合物であるか、あるいは、より一般的には抽出物である。苦味は、認識される5種の基本の味(他には甘味、塩味、酸味及び旨味)の一つであり、舌後方の味蕾によって介在される。これは、例えば化合物、成分に即座に帰因しうるものである。本発明の好ましい実施態様において、苦味成分は、トリテルペン、モノテルペンのグルコシド、セスキテルペンラクトン、フムロン、ルプロン、フラボノン、キニン及びこれらの混合物の苦味から選択される。苦味植物抽出物に関する例は、ニガキ抽出(ビターアッシュエクストラトとの呼称されるFEMA No. 2971)、キナ皮抽出物、カモミールオイル(FEMA No. 2272〜2274)、ゲンチアナ根エキス(FEMA No. 2506)、ホップエキス及びオイル(FEMA No. 2578〜2580)、アーティチョーク葉オイル等である。
【0026】
驚くべきことに、増強効果は、極めて少量の苦味成分で達成することができる。例えば、温感組成物の0.15質量%を下廻る量で、さらには0.1質量%又は0.08質量%を下廻る量で存在していてもよい。極めて少量の使用は、消費者に認知される苦味のリスクが顕著に減少することから有利である。
【0027】
溶剤
本発明の組成物は、好ましくは、本発明による組成物の種々の成分を溶解するために少なくとも1種の溶剤又は溶剤混合物を含有するが、但し、溶剤は、感覚組成物の全質量に対して10質量%未満のエタノールを含有する。好ましくは、溶剤は5質量%未満、より好ましくは2質量%未満、最も好ましくは1質量%未満のエタノールを含有するか、あるいは、本質的にエタノール不含である。感覚組成物の製造のために近年使用される溶剤は、例えばベンジルアルコール、プロピレングリコール、トリアセチン、ネオビー、ベジタブルオイル又はリモネンを含む。プロピレングリコールは最も好ましい。溶剤混合物は、同じ溶液中に、疎水性成分及び親水性成分を溶解するのに有用であってもよい。この場合において、エタノールは存在していてもよいが、しかしながら、前記のように極めて低い量である。例えば、本発明の成分は、溶液中で20〜99.9%、好ましくは40〜99.9%、より好ましくは80〜99.9%、さらに好ましくは90〜99.9%の溶剤を含有する溶液の形であってもよい。本発明の範囲内において、別記しない限りにおいて、%は質量%である。同様に、割合が部で示されている場合には、質量部を意味する。
【0028】
さらに本発明の成分は、フレーバー組成物中で典型的に使用される他の成分を有していてもよい。例えば、組成物は他のフレーバーを有していてもよい。さらに組成物は、組成物の技術的要求、例えば安定性又は香りの調性(tonality)残留率を充足させるための助剤を含有していてもよい。今日において、賦香される生成物の型及び生成物配合物の幅は、極めて広範囲に亘り、製品毎及び使用することができる各助剤の定義に応じての頻繁なアプローチの変更がなされる。これは、賦香配合物中で近年使用されている助剤を、本明細書中で列挙しない理由である。しかしながら、いわゆる当業者、例えばフレーバリストであればこれらの成分を、賦香すべき製品及び配合物中に含有されるフレーバー成分の性質との関係において、これらの成分を選択することが可能である。
【0029】
感覚組成物は、1種又はそれ以上の温感材料を含有する温感成分及び1種又はそれ以上の冷感材料を含有する冷感成分を含み、その際、温感成分と冷感成分との質量比は1:3〜1:100であり、より好ましくは1:3〜1:50、最も好ましくは1:7〜1:35である。
【0030】
1:3を下廻る場合において、胸部の温感作用は達成されないが、その一方で1:100を上廻る場合には、冷感成分の量が温感作用を打ち消すことにより、温感を明らかには認知することができない。さらに、1:100の比を上廻る場合には、少量の「メントール」化合物の存在下であっても、顕著なメントールフレーバーが生じうる。
【0031】
さらに、冷感成分及び温感成分の合計量が、存在する生成物の全量に対して少なくとも0.3質量%であることが好ましい。この量を下廻る場合には、胸部温感作用がほとんど感じられないことが見出された。これとは対照的に、冷感成分及び温感成分の合計量が、存在する生成物の全量に対して1質量%を上廻らないことは好ましく、それというのも、これは、望ましくない刺激感を有することが見出されたためである。
【0032】
本発明の組成物は、本発明のすべての成分を溶剤と一緒に、室温で、前記質量比で簡単に混合することによって製造することができる。
【0033】
一の実施態様において、本発明は、消費製品に温感フレーバーを提供するための、より好ましくは、のどおよび胸部の温感フレーバーを提供するための、本発明による組成物を提供する。
【0034】
もう一つの実施態様において、本発明は、消費製品に対して胸部及びのどに温感を付与する方法を提供し、この場合、この方法は、消費製品に対して本発明による組成物を添加する工程を含む。
【0035】
前記使用及び方法において、本発明の組成物は、直接そのままか、あるいは、以下に示すように食品に添加して使用することができる。
【0036】
本発明の組成物は、フレーバーが一般的に添加される段階において消費製品に直接添加することができる。有利には、液体組成物をマトリックス、例えば炭水化物、リン脂質又はタンパク質マトリックス、ゼラチンマトリックス、例えば任意の生物活性マトリックス中にカプセル封入して、本発明によるフレーバー組成物の、保存安定性の乾燥形態を提供することができる。
【0037】
したがって、一の実施態様において、本発明は、本発明の組成物を含む輸送系を提供する。好ましくは、この輸送系は、粒子状組成物及び/又は粉末の形である。例えば、組成物は、噴霧乾燥粉末の標準的な方法の後にカプセル封入されてもよい。例えば、組成物は、室温でガラス状態であるマトリックス中にカプセル封入することができる。例えば、本発明の組成物は、ロッド様の顆粒中にカプセル化することができ、この製造に関してはUS 4,707,367中で開示されている。
【0038】
本発明の組成物は、液体生成物及び/又は固体生成物中で使用することができる。好ましい実施態様において、生成物は液体であり、それというのも、胸部及びのどの温感作用は、このような生成物中でより迅速に達成可能であることが見出されているためである。消費製品は、好ましくは液体の医薬組成物、例えば液体鎮痛剤、飲料、アルコール飲料、乳製品、豆製品、スープ、ドレッシング、ソース、ディップ等から成る群から選択される。
【0039】
一の実施態様において、本発明は、本発明によるオーラルケア製品を提供する。例えば、製品は歯磨きペースト、歯磨きジェル、マウスウォッシュであってもよい。
【0040】
他の実施態様において、本発明は、本発明によるフレーバー組成物を含有する医薬品を提供する。このような製品の例はシロップ、のどあめ、チューイングガム及びタブレット又はカプセルの形で提供される薬剤である。
【0041】
以下の実施例は、これに制限することなく本発明をさらに例証するものである。本発明による試料は数字により示し、かつ比較例は英字により示した。すべての量は別記しない限りにおいて、質量%で示す。
【0042】
例1
感覚組成物の製造
感覚組成物の製造において、第1表に記載された材料を使用した。
【0043】
【表1】
【0044】
試料Aは、5部のCooling agent、5部のCoolact P及び25部のHotact VBEを、965部のプロピレングリコール溶剤中で一緒に混合することによって製造した。
【0045】
試料Bは、100部のメントール、125部のピペリン、125部のWS3、375部のHotact VBEを、9275部のプロピレングリコール溶剤中で一緒に混合することによって製造した。
【0046】
試料Cは、55部のアネトール(polarome)、167部のメントール及び333部のMint piperitaを、445部のトリアセチン中で一緒に混合することによって製造した。
【0047】
試料Dは、100部のWS23を、900部のプロピレングリコール溶剤中で混合することによって製造した。
【0048】
組成物E、F及び1〜4は、種々の量の試料A、B、C及びDを、特定量の5%ショ糖水溶液と一緒に混合することによって製造した。量については、以下の表に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
試料をその後に、6人の訓練されたパネリストチームによって評価した。各パネリストには、舌、口、のど及び胸部における効果を記載するようにお願いした。結果は以下の表に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
結果は、胸部における望ましい温感作用が、温感材料と冷感材料との質量比が1:3又はそれ以上である場合に達成されたことを示す。さらにこの結果は、この作用が、プロピレングリコール溶剤の存在に依存するものではないことを示す。
【0053】
例2
胸部温感組成物を含有するキャンディー
シロップの種々の試料を、以下の方法にしたがって種々の温感組成物を用いて製造した。
【0054】
イソマルト(100g)及び水(30g)を混合し、かつ銅鍋中で160〜165℃に加熱した。165℃で、銅鍋をガス火炎からはずし、かつ温水浴(40℃)中に入れた。数秒後に、銅鍋をはずし、かつ温度を調べた。温度が135℃に達する場合に、混合物をさらにアスパルターム(10%)及びアセスルファム−K(5%)を含有する1%水性溶液で補った。
【0055】
その後に、試料1を添加して、シロップの全量に対して0.3質量%の温感及び冷感材料の合計量を含有する組成物を提供した。煮込んだ塊を、その後に周囲温度(相対湿度に対して40%未満)で、適切なテフロン(登録商標)型中に注ぎ入れ、かつ冷却して、胸部温感組成物を含有するキャンディーを提供した。
【0056】
例3
本発明の温感組成物を含有する糖不含のチューイングガム
糖不含のチューイングガムは、以下の標準的な方法によって製造した:結晶ソルビトール、アセスルファム−K及びアスパルタームを、Turbula型ブレンダー中でブレンドした。半分量のブレンドを、予め加温したSierraガムベース(Cafosa)と一緒に、Winkworth sigmaブレードミキサー中で、50〜55℃で2分に亘って混合した。ブレンドした残りの粉末をその後に、湿潤シロップ(Lycasin(登録商標)80/55, Sorbit(登録商標)、グリセリン)と一緒に添加し、かつさらに7分に亘って混合した。
【0057】
最終的に試料2を添加し、かつ1分に亘って、チューイングガムの全質量に対して0.35%の用量で1分に亘って混合した。
【0058】
例4
本発明による組成物を用いての香味剤(Savory)適用
乾燥ブレンドフレーバーを、以下の組成により製造した:
【表4】