(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698123
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】特性を低下させる添加物なしの高いコランダム含有量を有する熱溶射されたAl2O3層及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 4/10 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
C23C4/10
【請求項の数】17
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-510895(P2011-510895)
(86)(22)【出願日】2009年5月28日
(65)【公表番号】特表2011-522115(P2011-522115A)
(43)【公表日】2011年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2009003797
(87)【国際公開番号】WO2009146832
(87)【国際公開日】20091210
【審査請求日】2012年2月13日
(31)【優先権主張番号】102008026101.7
(32)【優先日】2008年5月30日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フィロフィア−ラウラ トーマ
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ−ミヒャエル ベルガー
(72)【発明者】
【氏名】カール クリストフ シュタール
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ナウマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ラングナー
【審査官】
深草 祐一
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公開第02073169(GB,A)
【文献】
独国特許出願公開第03012515(DE,A1)
【文献】
米国特許第04487841(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00621079(EP,A1)
【文献】
国際公開第2006/116844(WO,A1)
【文献】
SWINDEMAN C J,AN INVESTIGATION OF THERMALLY-SPRAYED ALUMINUM OXIDE COATINGS 以下備考,SEMICONDUCTOR MANUFACTURING, 1995,米国,IEEE,1995年 9月17日,P226-232,FOR HIGH-TEMPERATURE ELECTROSTATIC CHUCKS (ESCS)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/00−4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
>100nmの粒度を有する純粋なα−Al2O3からなる水性又はアルコール性懸濁液を使用して、熱溶射のグループからなる方法を用いて製造される、最大で19%の多孔性及び少なくとも72体積%のα−Al2O3の高い含有量を有することを特徴とする、熱溶射されたAl2O3層。
【請求項2】
前記層はα−Al2O3を少なくとも80体積%含有することを特徴とする、請求項1記載の熱溶射されたAl2O3層。
【請求項3】
前記層は最大10%の多孔性を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の熱溶射されたAl2O3層。
【請求項4】
前記層は>1×1012オーム・cmの比電気抵抗を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の熱溶射されたAl2O3層。
【請求項5】
前記層は、>1×1013オーム・cmの比電気抵抗を有することを特徴とする、請求項4記載の熱溶射されたAl2O3層。
【請求項6】
前記層は、少なくとも97%の酸化アルミニウム純度を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の熱溶射されたAl2O3層。
【請求項7】
前記層は、少なくとも99%の酸化アルミニウム純度を有することを特徴とする、請求項6記載の熱溶射されたAl2O3層。
【請求項8】
前記層は、50%の相対空気湿度を有する空気中で、高電気絶縁性及び耐摩耗性を持続的に維持することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の熱溶射されたAl2O3層。
【請求項9】
前記層は、70%の相対空気湿度を有する空気中で、高電気絶縁性及び耐摩耗性を持続的に維持することを特徴とする、請求項8記載の熱溶射されたAl2O3層。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載されたAl2O3層の製造方法において、前記製造を、>100nmの粒度を有する純粋なα−Al2O3からなる水性又はアルコール性懸濁液を使用して、熱溶射のグループからなる方法を用いて行うことを特徴とする、Al2O3層の製造方法。
【請求項11】
>400nmの粒度を有する純粋なα−Al2O3からなる水性又はアルコール性懸濁液を使用することを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
熱溶射のグループからなる方法として、大気プラズマ溶射を使用することを特徴とする、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
熱溶射のグループからなる方法として、高速フレーム溶射(HVOF)を使用することを特徴とする、請求項10から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記懸濁液のために、少なくとも98%の純度を有するα−Al2O3粉末を使用することを特徴とする、請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記懸濁液のために、少なくとも99.8%の純度を有するα−Al2O3粉末を使用することを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記水性又はアルコール性懸濁液のために、25質量%までの固体含有量を調節することを特徴とする、請求項10から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記層中のα−Al2O3の高い割合を、付加的な熱処理なしで製造することを特徴とする、請求項10から16までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特性を低下させる添加物なしでα−Al
2O
3(コランダム)の高い含有量を有しかつ低い多孔性を有する熱溶射された酸化アルミニウム層に関する。この層は、多様な熱溶射法を用いて、>100nmの大きさを有する懸濁されたα−Al
2O
3粒子を有する水性又はアルコール性懸濁液から製造することができる。本発明は、熱溶射された酸化アルミニウム層の特性を持続的に改善する。この使用は、高いα−Al
2O
3割合に基づいて、高い電気絶縁性及び改善された耐摩耗性を必要とする建築部材において特に有用である。前記層の腐食特性及びそれによる腐食性媒体中での耐性は改善される。更に、改善された耐高温性が生じる、それというのも相転移により体積変化が著しく抑制されるためである。この層と周囲の空気湿度との低下された反応により、この特性の長期間安定性は改善される。
【0002】
熱溶射された酸化アルミニウム層は高い技術的価値を有し、酸化アルミニウム被覆粉末から少なくとも大気プラズマ溶射(APS)により、また高速フレーム溶射(HVOF)のような熱溶射の方法グループからなる他の方法によっても製造される。この層は、主に摩耗保護のため、電気絶縁のため及び誘電体として使用される。使用された方法とは関係なく、この熱溶射されたAl
2O
3層が使用されるときは常に、このことから同時にAl
2O
3焼結セラミックの典型的な特性(高い融点、高温までの高い電気抵抗、極めて良好な機械的特性及び十分な化学的耐性)が連想される。しかしながら、焼結されたAl
2O
3との本質的な相違点は、この出発物質が一般に純粋な熱力学的に安定なコランダム(α−Al
2O
3相)であるにもかかわらず、溶射された層がAl
2O
3の多様な形態(変態)から構成されていることにある。ほぼ全ての層において、遷移アルミナ(以後γ−相)が層中に優勢に存在する。酸化アルミニウムにとって特徴的なこの特性は、既に以前から公知であり、最初にMcPherson(J. Mater. Sei., 8(1973)6, 851 - 858)により、後にMueller及びKreye(Schweissen und Schneiden, 53(2001)6, 336-345)により詳細に記載されていた。DE 33 10 650によると、費用のかかる付加的な方法工程、例えば電子線又はレーザー線を用いた再溶接によりα−Al
2O
3への再転移を達成することができる。熱溶射された層は、しかしながら今のところα−Al
2O
3から優勢な遷移アルミナへの転移を甘受して製造及び使用される。それにより、特にこの機械的特性及び電気的特性は、焼結されたコランダムの優れた特性に到達しない。焼結された材料との相違点は、主に、湿った大気中で使用した場合の可能な吸水性、わずかな機械的特性及び電気絶縁特性にある。この層特性の改善は、多様な用途及び新規用途の開発のために緊急に必要である。
【0003】
層中のこれらの相をα−Al
2O
3に再転移することは、1200℃以上での熱処理によって行うことができる。この極めて高い温度により、この熱処理は特に金属基材上の層のためには適していない。更に、この相転移により、強すぎる体積変化が生じ、この体積変化が層中で欠陥を生じさせる。溶射プロセス中でのこの相転移を抑制するために、α−Al
2O
3に多様な添加物、大抵はCr
2O
3を機械的に混入することができる。この場合、α相の安定化は使用される溶射プロセスに依存し、あまり普及していない水安定化プラズマ溶射(WSP)を用いた場合にだけ達成される。他の解決策は、混晶からなる被覆粉末の使用にある。例えばAl
2O
3−Cr
2O
3混晶の使用が有効である(CC. Stahr, S.Saaro, L-M. Berger, J.Dubsky, K.Neufuss, M.Hermann著, J. Thermal Spray Technology, 18(2007)5-6, 822 - 830)。全ての場合に、この添加物は、純粋なコランダムと比較した特性低下も前提としている。
【0004】
ここ数年において、多様な溶射法のために、出発材料として被覆粉末の代わりに、少なくともナノスケールの粉末の懸濁液又は無機又は有機材料の溶液を使用する方法バリエーションが開発された。この方法バリエーションの利点は、被覆粉末製造における費用のかかる方法工程を回避することにある。懸濁液の使用は、特にAPS(WO 2006/043006 A1)、誘導プラズマ溶射(US 5,609,921)又はHVOF(DE 10 2005 0380 453 A1)にとって公知である。
【0005】
特に、酸化アルミニウム層を懸濁液から製造するための作業も公知である。α−Al
2O
3(粒度27〜43nm)10質量%を有する懸濁液の使用により、主にα−Al
2O
3とわずかなγ−Al
2O
3とからなるが、層中で高い連続気泡及び低い凝集性を有する層が製造される(J. Oberste-Berghaus, S. Bouaricha, J. -G. Legoux, C. Moreau, Proceed. of the International Thermal Spray Conference 2005 - Thermal Spray Connects: Explore its surfacing potential, Basel, Switzerland(2005), CD-ROM version)。α−Al
2O
3割合の極めて高い割合は、ナノスケールのα−Al
2O
3粒子(50〜300nm、γ−Al
2O
3の熱処理により製造)のアルコール性懸濁液から製造された層について記載されている(Z. Chen et al.著, J. Mater. Sei., 39(2004)13, 4171 - 4178)。
【0006】
しかしながら、この層は溶射層について特徴的なラメラ構造がない、焼結された粒子だけからなる。多孔性についての記載はなされていないが、明細書から、この層が高多孔性であり、実際の利用価値はないと推論できる。
【0007】
許容可能な多孔性を有し、α−Al
2O
3の高い割合を有する酸化アルミニウム層の製造は、今日までなされていない。このことは、サスペンション溶射により製造された層を記載するUS 2006/0289405 A1;段落0045〜0047が証明している。この層は11%の多孔性の場合にγ−Al
2O
3 88%からなり、粒度29〜68nmを有するα−Al
2O
3粒子(10質量%)のアルコール性懸濁液から製造された。
【0008】
米国特許US Patent 2002/6,447,848 B1(表2)によると、35nmの粒度の粉末からγ−Al
2O
3からなる層が得られる。
【0009】
本願発明の課題は、特性を低下させる添加物を使用せずにα−Al
2O
3の高い割合を有しかつ実際の使用のために低い多孔性を有する酸化アルミニウム層を提供することである。それにより、酸化アルミニウム層の機械的特性、電気的特性(絶縁性)及び腐食特性が持続的に改善される。この層は、湿った雰囲気中で使用する場合にその特性の高い長期間安定性を有する。上記課題は、この層の付加的な熱処理なしに解決される。
【0010】
同時に、本発明の課題は、本発明によるAl
2O
3層を製造する方法でもある。
【0011】
本発明により、熱溶射されたAl
2O
3層を有する層に関する上記課題は、請求項1に記載されているように解決される。それに所属する従属請求項2〜9は、有利な実施態様である。
【0012】
本発明によるAl
2O
3層の製造方法に関するこの課題は、本発明により、請求項10に記載のように解決される。従属請求項11〜17は、本発明による方法のための有利な実施態様である。
【0013】
本発明による熱溶射された酸化アルミニウム層は、少なくとも72体積%の高いα−Al
2O
3含有量(コランダムの含有量)を有し、最大で19%の多孔性を有する。有利に、この層は、少なくとも80体積%のα−Al
2O
3の割合及び最大で10%の多孔性を有する。このα−Al
2O
3含有量の検出はX線相分析により行い、多孔性の検出は画像分析により行う。この層は、有利に>1×10
12オーム・cm比電気抵抗を有する。特に、この層は>1×10
13オーム・cmの比電気抵抗を有する。この層の純度は、主に使用された出発粉末により影響される。望ましくない場合には、この酸化アルミニウムが溶射プロセスの際に汚染されることがある。有利に、この層は、少なくとも97%の純度を有する。特に、この層は、少なくとも99%の純度を有する。
【0014】
高いコランダム含有量及びわずかな多孔性により、この層は特に、湿った環境中で使用する場合に電気的特性及び機械的特性の極めて高い長期間安定性を示す。有利に、50%の相対湿度を有する空気中でこれらの特性の長期間安定性が達成される。特に、70%の相対湿度を有する空気中でもこれらの特性の長期間安定性が達成される。
【0015】
同様に、本発明の場合に、この酸化アルミニウム層は、粒度>100nmを有する純粋なα−Al
2O
3の水性懸濁液又はアルコール性懸濁液からサスペンション溶射により製造される。原則として、水とアルコールとの混合物からの純粋なα−Al
2O
3の懸濁液も使用することができる。有利に、粒度>400nmを有する純粋なα−Al
2O
3の水性又はアルコール性の懸濁液の製造のために使用される。有利には、この懸濁液は<1mPa・sの低い粘度を有する。高い安定性のために、水性懸濁液の場合に、pH値は3〜5の範囲内に調節される。
【0016】
これらの層は、熱溶射のグループからなる方法により製造される。所定の用途の場合のために、有利に大気プラズマ溶射(APS)が使用される。更に、他の用途の場合のために、有利に高速度フレーム溶射(HVOF)を使用することができる。
【0017】
この層中のα−Al
2O
3の含有量は、同様に低い多孔性で、多様な方法技術的措置により上昇させることができる。これには、APSの場合にプラズマガス組成の最適化又はHVOFの場合に酸素/燃料比の最適化、溶射間隔、基材に対するバーナーの相対速度、並びに懸濁液の流出量が属する。サスペンション溶射により、出発材料として粉末又は顆粒が使用される方法と比べて、<20μmの比較的薄い層を基材の簡単な走行により製造することができる。走行の回数又は処理量の変化によって、層厚を調節することができる。複数回の走行によって、>100μmの厚さを有する本発明による層が容易に製造可能である。
【0018】
有利に、この懸濁液のために高純度のα−Al
2O
3粉末が使用される。α−Al
2O
3粉末のこの純度は、この場合、少なくとも98%(有利に少なくとも99.8%)である。この懸濁液は、フォーカスされた噴流でインジェクタを介してプラズマ火炎内へ又はHVOF火炎内へ噴射される。
【0019】
水性又はアルコール性懸濁液のために、有利に25質量%までの固体含有量が使用される。
【0020】
本発明の場合に、層中でα−Al
2O
3の高い割合が付加的な熱処理なしに製造される。
【0021】
本発明による層の用途は、α−Al
2O
3の高い割合に基づき、特に電気絶縁体のため、誘電体として、及び耐摩耗性及び耐食性の層として有望である。これらの層は、その改善された耐高温性により、相転移の温度より高い温度で使用することができる。この層と周囲の空気湿度との反応が低減されることにより、この層は特性の高い長期間安定性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】HVOFサスペンション溶射により製造されたα−Al
2O
3層のREM写真を示す。
【0023】
本発明による層を、次の実施例において詳細に記載する。
【0024】
実施例1
出発材料として、商品名A−16SG(Almatis GmbH社、ドイツ国)及びd
50の粒度=0.4μm(d
90=1.5μm)を有するα−Al
2O
3粉末(Al
2O
3 純度>99.8%)を使用した。水性(25質量%)懸濁液を、pH値=4がHClの10%の水溶液で調節された蒸留水を用いて製造した。この懸濁液を、最初に15分間磁気撹拌し、その後に超音波浴中で10分間使用し、引き続きもう1回磁気撹拌して、懸濁液中の粒子の凝集を抑制しかつ均質性を改善する。こうして製造された懸濁液は、極めて低い粘度(<1mPa・s)により優れていた。この懸濁液を、圧力容器(Krautzberger GmbH社、ドイツ国)を介して0.5MPaで、0.25mmノズルを用いた噴射により、HVOF装置のバーナー室(Top Gun, GTV mbH、ドイツ国、8mmノズル)中に導入した。この試験は、燃焼ガスとしてエテン(60リットル/min)及び酸素(165リットル/min)を使用して実施した。溶射の直前にサンドブラスト(3barの圧力)により粗面化された鋼/特殊鋼基材を使用した。この溶射間隔は110mmであった。
【0025】
この場合、230μmの層厚が達成される。この層のREM微細構造を
図1に示す。この被覆の多孔性は、NIMH(National Institute of Mental Health, USA)のScionlmageソフトウェアを用いた画像分析により実施される。この被覆の多孔性は、7.5%と算出された。X線相分析により、溶射された層中に74体積%のα−Al
2O
3相が検出された。この層の比電気抵抗は、1.2×10
13オーム・cmであった。
【0026】
実施例2
実施例1と同様に、水性懸濁液を、0.3mmインジェクタによって、大気プラズマ溶射装置(APS、6mmノズル、GTV mbH、ドイツ国)のプラズマ火炎中へ半径方向に噴射した。このインジェクタは、プラズマ火炎の水平軸に沿って15°の角度でバーナーの外側に噴射される。この懸濁液の噴射は、0.2MPaの圧力で行われる。このプラズマ出力は55kWであり、プラズマガスとしてアルゴン(40リットル/min)水素(10リットル/min)混合物を使用した。この溶射間隔は60mmであった。この層(厚さ150μm)は、8.5%の多孔性を有し、α−Al
2O
3相の80体積%の含有量を有する。この層の比電気抵抗は、2.9×10
12オーム・cmであった。
【0027】
実施例3
ここでは、実施例1からの出発粉末20〜25質量%の含有量を有するエタノール中のアルコール性懸濁液を使用した。懸濁液の安定性を高めるために、粉末質量当たり2質量%の有機分散助剤(KV9056, Firma Zschimmer & Schwarz、ドイツ国)を使用した。超音波浴及び磁気撹拌機を用いて、懸濁液の分散性及び均質性を改善することができた。
【0028】
この懸濁液をAPSによって溶射した。このプラズマ出力は38kWであり、プラズマガスとしてアルゴン(40リットル/min)/水素(6リットル/min)を使用した。この溶射間隔は50mmであった。この層(厚さ>110μm)は、19%の多孔性を有していた。X線相分析により、72体積%のα−Al
2O
3相が検出された。この層の比電気抵抗は、1.4×10
12オーム・cmであった。
【0029】
実施例4
実施例3と同様の懸濁液を使用した。この懸濁液をAPSによって溶射した。このプラズマ出力は51kWであり、プラズマガスとしてアルゴン(60リットル/min)/ヘリウム(25リットル/min)を使用した。この層(厚さ>160μm)は、11.5%の多孔性を有していた。X線相分析により、76質量%のα−Al
2O
3相が検出された。
【0030】
本発明によるAl
2O
3層及びその製造方法を用いて、先行技術の全ての欠点を取り除くことができた。