(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698153
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】HF手術装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
A61B17/39
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-548570(P2011-548570)
(86)(22)【出願日】2010年1月25日
(65)【公表番号】特表2012-516724(P2012-516724A)
(43)【公表日】2012年7月26日
(86)【国際出願番号】EP2010000419
(87)【国際公開番号】WO2010089037
(87)【国際公開日】20100812
【審査請求日】2012年4月26日
(31)【優先権主張番号】102009007861.4
(32)【優先日】2009年2月6日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102009012387.3
(32)【優先日】2009年3月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一
(72)【発明者】
【氏名】アイゼレ、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】シャル、ハイコ
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−519080(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0009850(US,A1)
【文献】
実開昭61−96905(JP,U)
【文献】
特表2005−501596(JP,A)
【文献】
特開2007−296304(JP,A)
【文献】
特開2002−177272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのRFジェネレータ(10−13)と、
中性極(24)のための少なくとも1つの中性極出力と、
RF手術器具(20−23)に接続して処置電流を前記RF手術器具に流すための少なくとも2つの出力と、
切替装置(30)と、
を含む、RF手術装置であって、
個別の前記RFジェネレータ(10−13)が各RF手術器具(20−23)に設けられ、全ての前記RF手術器具(20−23)及び前記ジェネレータ(10−13)に対して単一の中性極出力が設けられ、
前記RFジェネレータ(10−13)が同時に処置電流を生成して前記RF手術器具に出力することがないように、前記切替装置(30、30’)は、前記RFジェネレータ(10−13)を制御するような接続で配置されるよう適合されており、
前記切替装置(30、30’)は、前記RFジェネレータ(10−13)による処置電流の放電間に休止期間が存在するよう構成されており、
前記切替装置(30、30’)、及び前記RFジェネレータ(10−13)は、通信インターフェース、及びフィールドバス(33)を含み、前記RFジェネレータは、定義された開始時間及び/又はタイムスロットを受け取り、前記開始時間及び/又は前記タイムスロット中に処置電流を生成するように構成されている、
ことを特徴とする、RF手術装置。
【請求項2】
前記切替装置は、同期パルスによって処置電流を生成していない前記RFジェネレータ(10−13)をスレーブジェネレータとして制御する、コントローラ、又はマスタジェネレータを含む、ことを特徴とする、請求項1のRF手術装置。
【請求項3】
前記マスタジェネレータは、前記RFジェネレータ(10−13)のうちの1つのRFジェネレータ(11)を含む、ことを特徴とする、請求項2のRF手術装置。
【請求項4】
前記切替装置は、接続される前記RFジェネレータ(10−13)の数が決定され、これら複数の前記RFジェネレータ(10−13)に対して同一のシーケンスで制御するように構成されている、ことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のRF手術装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つのRFジェネレータは、常に1つの前記RFジェネレータのみが処置電流を放電するように、予め指定されたクロック周波数で交互に動作するよう構成されている、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のRF手術装置。
【請求項6】
前記クロック周波数は、10から100kHzである、ことを特徴とする、請求項5に記載のRF手術装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1のプリアンブルに従った、少なくとも2つのRFジェネレータを含む、RF手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数多くのRF手術装置が知られている。一般に、これらはRFジェネレータと手術器具とを含む。非常に多くのRF手術器具がいわゆるモノポーラ器具として設計されている。この場合、表面積の大きな中性極(neutral electrode)が患者の体(大抵は大腿部)に良好に接触するように取り付けられ、これにより、処置電極からの実際の処置電流が患者の体と中性極を流れ、RF外科技術による凝固や切開などが行われる。
【0003】
ある種の手術を考慮すると、数名の外科医が同一の患者に対してRF手術器具を同時に扱うことが望ましい。ドイツ特許出願公開第10 2005 007 769号からRF手術装置が知られており、この装置は、いくつかの器具を、それぞれ1つのスイッチを介して単一のRFジェネレータの単一の出力に接続することができる。実に、このようなRF手術装置によって複数の手術を同時に行うことができる。しかし、これらの器具は常に、RFジェネレータによって予め指定された同一の動作モードでしか駆動させることができない。また、既知の構成を考慮すると、1つの問題は、これらの器具、又はアクティブ電極がリレーを介してRFジェネレータの出力に並列に接続されている、ということである。2人の外科医が同時に手術を行った場合、ジェネレータは2つのアクティブ電極に並列で給電する。しかし、このジェネレータによる出力は、アクティブ電極上の組織特性に一致する非均一な態様で分割される。
【0004】
RFジェネレータにおいて、一般的な電流の調節制御を行うことは、もはや不可能である。
【0005】
そこで、2つの器具がRFジェネレータの異なる調節に対処できることを確実にするために、専用のアクティブ電極を1つ、専用の中性極を1つ備える完全に独立した2つのRF手術装置を駆動させることが考えられる。実に、この場合、完全に独立した出力及び動作モード調節を実施できる。しかし、中性極の構成が好ましくない場合、特に双方のRF電流が同時に体の1つの領域を灌流(perfused)した場合、浮動電流によって神経筋刺激が生じる可能性がある。このため、この方法は、危険であるとみなされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、いずれの神経筋刺激も予防されるが手術器具の異なるモードでの動作がなおも可能であるという範囲で、前述のタイプのRF手術装置を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、特許請求項1に従ったRF手術装置によって達成される。
【0008】
特に、この目的は、少なくとも2つのRFジェネレータと、中性極のための少なくとも1つの中性極出力と、RF手術器具に接続して処置電流をRF手術器具に流すための少なくとも2つの出力と、切替装置と、を含むRF手術装置を用いて達成される。その際に、個別のRFジェネレータが各RF手術器具に設けられ、全ての器具及びRFジェネレータに対して単一の中性極構成が設けられている。RFジェネレータが処置電流を同時に生成して器具に出力することがないように、即ち、RFジェネレータが連続的にしかこれを行わないように、切替装置がRFジェネレータを制御するような接続で配置されている。
【0009】
そのため、本発明に従って2つの異なるRFサージカルジェネレータが設けられており、これにより、使用するRF手術器具に適した動作モードに各ジェネレータを切り替えることができる。各ジェネレータは、常に短時間のみであるが、個々に即ち単独で動作されるため、制御動作を行うこともできる。
【0010】
切替装置を別個のユニットとして設けることができる。しかし、切替装置は、SYNCパルス又は同様の制御パルスによって残りのRFジェネレータをスレーブジェネレータとして制御するコントローラか、マスタジェネレータを含むことが好ましい。このようにして、RF手術装置全体をコンパクトに構成することができる。特に、その際、マスタジェネレータは、前述のRFジェネレータのうちの1つを含まなくてはならない。
【0011】
切替装置は、これに接続されるRFジェネレータの数が決定され、RFジェネレータの制御が決定された数と均一のシーケンスで一致するように構成されることが好ましい。このようにして、外科チームは、設備を個別に手動で調節することなく、1つ、2つ又はそれより多くのRFジェネレータ(及びRF手術器具)を扱うことができる。
【0012】
切替装置及びRFジェネレータは、通信インターフェース、例えばフィールドバスを含み、RFジェネレータが定義された開始時間及び/又はタイムスロット(T
On1/2)を受け取り、これを始めとして、及び/又はこの間に、RFジェネレータは、処置電流を生じるように構成されている。ここで、各RFジェネレータごとに十分な持続時間が得られるように、これらのタイムスロットは、調節され、これにより、それぞれのRFジェネレータがこの処置技術に有効な信号を発し、更にこれを制御できることが好ましい。
【0013】
切替装置は、RFジェネレータによる処置電流の放電間に休止期間が存在するよう構成されることが好ましい。このことにより、回路が安定できる、即ち、電流放流動作の残留電流が後に続く電流放流動作の開始時に存在しなくなることが確実になる。このプロセスの利点は、先に述べたとおりである。
【0014】
クロック周波数は、10kHzから100kHzであることが好ましい。このように、一方では、単一のRFジェネレータ(及びこれに接続された単一のRF手術器具)を扱うのとは実際には違いがあることに、外科医が気付くことなく、準連続的な手術を行えることが確実になる。他方では、いくつかのジェネレータ、及びRF手術器具の操作がなお可能である。
【0015】
図面を更に詳しく説明するために用いられる以下の例示的な実施の形態から、本発明の好適な実施の形態を推察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るRF手術装置の実施の形態の極めて概略的な回路図である。
【
図2】出力信号の使用によって2つのRFサージカルジェネレータを制御するための第1の選択肢である。
【
図3】いくつかのRFサージカルジェネレータを制御するための第2の実施の形態である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明では、同一の参照符号が、同一の構成要素又は同一の機能を有する構成要素に使用される。
【0018】
図1に従って、複数のRFジェネレータ10、11、12及び13が設けられている。通常の状態では、1つの中性極24に接続されているこれらのRFジェネレータ10乃至13の出力は、ここでは相互に接続されており、そしてこの単一の中性極24に接続されている。RFジェネレータ10乃至13の更なる出力が、RF手術器具20、21、22及び23に接続されており、これらの器具は、極めて概略的にしか示されていない。RFジェネレータ12、及び関連するRF手術器具22の図の点線は、RFジェネレータの数が本質的に必要に応じたものであることを示すように意図されている。
【0019】
全てのRFジェネレータ10乃至13は、共用バス33を介して互いに接続されているだけでなく、1つの切替装置30にも接続されている。この切替装置30は、切替装置30’(この例ではRFジェネレータ11)としてジェネレータのうちの1つに配置されてもよい。ここでこのように識別されたバス33は、特にRFジェネレータを同期させる機能を有し、RFジェネレータは、知られているように、RF信号(一般に300kHzから4MHz)の動作及び動作停止を極めて短い時間内で行うことができるように制御が可能である。
【0020】
図2は、2つのRFジェネレータのみを示す時間依存図である。
【0021】
切替装置30(又は30’)は、サイクル持続時間T
Modで繰り返されるSYNC
Masterパルスシーケンスを送る。また、切替装置(30、30’)は、遅延時間T
delay、ならびに動作時間T
On1及びT
On2を第2の接続されたジェネレータに出力する。
【0022】
その結果、各SYNC
Masterに続いて制御信号Contrが送られる。この信号Contrは、第1のRFジェネレータ10が時間T
On1の間に出力信号UA
1を送るようにジェネレータを動作させる。遅延時間T
delayに続いて第2の制御信号Contr
2が生成され、この間(T
On2)に第2のジェネレータが出力信号UA
2を送る。その結果、電流I
NEが中性極を流れる。この電流は、
図2の図の一番下に示されており、2つの部分電流UA
1及びUA
2からなる。概して、T
delayは、T
On1よりも大きく、T
delay+T
On2は、T
Modよりも小さい。
【0023】
また、
図2は、次の出力電圧が再び上昇する前に、出力電圧UA
1及びUA
2の各々が落ち着くように期間が選択されていることを示している。
【0024】
このように、それぞれの「時間のスライス(slices of time)」T
On1及びT
On2は、変調(modulation)内で2つのジェネレータに割り当てられ、これらの時間のスライスは、SYNC
Master信号によって同期される。共用の中性極を流れる電流における浮動電流(及び、従って神経筋刺激)の発生を防止するために、時間のスライスは、重複してはならない。
【0025】
ここで、双方のジェネレータは、互いに独立した制御及び動作が可能なため、これらを異なるモード、又は異なる電力設定で動作させてもよい。
【0026】
もちろん、動作モードの選択においては、制約がある。例えば、変調なしの連続的なジェネレータモードは、不可能である。相対的な動作時間の和(デューティサイクル)は、1未満でなくてはならず、相対的な動作時間τは、下記のように定義される。
【0028】
図3に示す動作モードを参照すると、SYNC
Masterパルスは、その動作時間T
1の間に信号を出力するように第1のジェネレータを制御するだけである。追加のRFジェネレータは、第1のジェネレータの動作時間T
On1が過ぎた後に専ら出力信号UA
2を送るよう動作される。第3のジェネレータは、第2のジェネレータによって同じように動作され、その後第4のジェネレータも同様に動作される。SYNC
Masterパルスによる動作がサイクル持続時間T
Modの後に生じるのは、その時のみである。発生した中性(indifferent)電極を流れる電流I
NEは、先ほども述べたように
図2の一番下に示されている。したがって、本実施の形態と
図2の実施の形態との本質的な違いは、RFジェネレータがいわば連鎖的に連続して動作され、第1のジェネレータのみが重畳パルスシーケンスによって動作されることにある。
【0029】
以上、本発明に従って、RFジェネレータを交互に動作させる方法を異なる態様で実施できることが示された。
【符号の説明】
【0030】
10 ジェネレータ
11 ジェネレータ
12 ジェネレータ
13 ジェネレータ
20 RF手術器具
21 RF手術器具
22 RF手術器具
23 RF手術器具
24 中性極
30 切替装置
30” 切替装置
33 バス