(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
打球が成されるフェース面を具備したフェース部と、このフェース部を所定のロフト角で支持すると共に、トップ部、ソール部、トウ部及びヒール部により形成されるキャビティを具備したヘッド本体と、このヘッド本体に止着されるシャフトとを有するアイアン型ゴルフクラブにおいて、
前記フェース部の有効打点領域の中央位置よりもトウ側に最大厚肉部を形成すると共に、前記フェース部の裏面に、前記最大厚肉部よりヒール側に向けて延出するリブを形成し、
前記リブは、前記最大厚肉部からヒール側に向けて断面積が減少されており、
前記最大厚肉部から、さらにトウ側上方、及びトウ側下方に向けて延出するリブを形成し、
前記リブによって3つの領域に区分けされるフェース部は、ソール側の領域の肉厚>トップ側の領域の肉厚>トウ側の領域の肉厚、となるように形成されていることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブ。
打球が成されるフェース面を具備したフェース部と、このフェース部を所定のロフト角で支持すると共に、トップ部、ソール部、トウ部及びヒール部により形成されるキャビティを具備したアイアン型ゴルフクラブヘッドにおいて、
前記フェース部の有効打点領域の中央位置よりもトウ側に最大厚肉部を形成すると共に、前記フェース部の裏面に、前記最大厚肉部よりヒール側に向けて延出するリブを形成し、
前記リブは、前記最大厚肉部からヒール側に向けて断面積が減少されており、
前記最大厚肉部から、さらにトウ側上方、及びトウ側下方に向けて延出するリブを形成し、
前記リブによって3つの領域に区分けされるフェース部は、ソール側の領域の肉厚>トップ側の領域の肉厚>トウ側の領域の肉厚、となるように形成されていることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明に係るアイアン型ゴルフクラブ、及びそのヘッドの実施形態について説明する。
図1から
図3は、本発明の一実施形態を示す図であり、
図1は、アイアン型ゴルフクラブの正面図、
図2は、
図1のA−A線に沿った断面図、そして、
図3は、フェース部を裏面側から見た図である。
【0017】
本実施形態に係るゴルフクラブ1は、シャフト3と、ヘッド本体5と、ヘッド本体5とは別体として形成されたフェース部(材)6とを備えており、前記シャフト3の先端にヘッド本体5を止着して構成されている。前記シャフト3とヘッド本体5は、ゴルフクラブ1を基準水平面Pに対して構えた際、シャフト3の軸線Xと基準水平面Pとの間が所定のライ角αとなるように設定されている。
【0018】
前記ヘッド本体5には、ソケット7を介してシャフト3を挿入して先端領域を止着するホーゼル5aが形成されており、前記フェース部6は、打球が成される平坦状のフェース面6Fを具備し、リング状に形成されたヘッド本体5の開口5bに形成された段部(フェース支持部)5cに対して、所定のロフト角βとなるように、カシメ、溶着、接着などによって止着されている。
【0019】
前記ヘッド本体5およびフェース部6は、例えば、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、炭素鋼、タングステン等の金属材料を用いて鋳造などによって一体形成することが可能であるが、フェース部6については、高強度で薄肉化が図れるように、鍛造によって形成することが好ましい。
【0020】
前記ヘッド本体5は、トップ部5d、ソール部5e、トウ部5f及びヒール部5gを具備しており、これらは開口5bの周囲に形成される段部5cに対して止着されるフェース部周縁に沿ってフェース部周辺から後方に延設されている。この場合、前記トップ部5dは、バック側に延びてその先端側が下方に垂下するように屈曲されると共に、前記ソール部5eは、バック側に延びながら上方に立ち上げられて、その先端がトウ部5f及びヒール部5gの略中間位置まで延びている(
図2参照)。同様に、前記トウ部5f及びヒール部5gは、バック側に延びると共にその先端側が中央に向けて屈曲されており、これにより、ヘッド本体5は、フェース部6の後側が開口したキャビティ構造(キャビティを符号Rで示す)となっている。なお、ソール部5eについては、低重心化が図れるように、ヘッド本体5の構成材料よりも高比重の材料によって形成しても良いし、別途、ウエイト部材を取着したものであっても良い。
【0021】
前記ヘッド本体5およびフェース部6は、ヒール側からトウ側に移行するに従い高さが高くなる形状を有しており、同様の形状を有するフェース部6には、トウ・ヒール方向に沿ってスコアライン6Lが複数本形成されている。なお、
図1に示すように、このスコアライン6Lが形成されている領域がフェース部6の有効打点領域Wとなる。
【0022】
上記したように止着されるフェース部6は、その周囲6fが段部5cに対して当て付けられて支持されており、その後方側がキャビティ構造となっているため、フェース部全体として撓むことが可能となっている。この場合、フェース部6は、中央領域が最も撓み易い領域となるが、上記したように、アイアン型ゴルフクラブのヘッドのフェース部6は、トップ・ソール方向で見ると、ヒール側の長さが短く、トウ側に移行するに連れて長くなる形状となっており、トップ部5dがトウ側に向けて次第に上昇する形状となっている。
【0023】
このため、フェース部として大きく撓む領域は、有効打点領域Wで見た場合、その中央位置Cに対してトウ側となっている。なお、ここでの中央位置Cは、スコアライン6Lが形成される領域(有効打点領域W)のトウ・ヒール方向の中点C1から、基準水平線Pに対して垂線Lを引いた際、その垂線Lにおけるフェース部6のトップ部、及びソール部と交差する点(フェース部のエッジで特定される)P1,P2による線分の中点で定義される。また、ヘッドのスイートスポットSは、フェース部6が止着されたヘッド本体5の重心Gに依存するが、通常、ヘッド本体5は、
図1に示すように、ヒール側にホーゼルを形成するなど、ヒール側に重量偏倚しており、かつ低重心化を図るようにソール部を重量化しているため、スイートスポットSは、中央位置Cと厳密に一致することはないが、上記した理由により、中央位置Cに対しては、ヒール側かつソール側に存在するものと考えられる。
【0024】
ヘッド本体5に止着されるフェース部6は、トウ・ヒール方向に打点がばらついても、撓みバランスの向上が図れるように肉厚変化させた構造となっている。以下、フェース部6の肉厚変化構造について具体的に説明する。
【0025】
前記フェース部6には、上記のように特定される中央位置Cよりもトウ側に最大厚肉部10が形成されている。この最大厚肉部10は、フェース部全体で肉厚を考慮した際、最も肉厚が厚くなっている部分であり、このような厚肉部は、剛性を高めて撓みを抑制する機能を有している。上記したように、フェース部6は、有効打点領域で見た場合、撓み易い部分は、中央位置Cに対してトウ側であるため、この領域に最大厚肉部10を形成したことで、大きく撓む領域の撓みが抑制されるようになる。なお、本実施形態では、後述するように、最大厚肉部10は、中央位置Cに対して、トウ側、かつトップ側に形成されている。
【0026】
この場合、最大厚肉部10は、点によって特定されていても良いし、ある程度の範囲で形成されたもの(平坦面)であっても良い。また、最大厚肉部10は、中央位置Cよりもトウ側に位置していれば良いが、トウ・ヒール方向において、中央位置Cに近付き過ぎると全体の反発を抑制し過ぎる傾向が高まるため、
図1に示すように、有効打点領域Wの範囲の内、トウ側のエッジW1から1/4Wの範囲内に存在するように形成することがトウ側を軽量化でき、低重心化等、重量余力がでて好ましい。
【0027】
また、フェース部6の裏面には、上記した位置に形成される最大厚肉部10よりヒール側に向けて延出するようにリブ12が形成されている。このリブ12は、トウ・ヒール方向に沿って、フェース部6の撓みバランスを向上するように形成されるものであり、具体的には、前記最大厚肉部10からヒール側に向けて、その断面積が減少するように形成されている。通常、リブを形成することで、その周辺領域では剛性が高まって撓みが抑制される効果が得られるが、その剛性については、リブの断面積によって変化する(リブの断面積が小さくなれば、撓み難さは軽減される)。
【0028】
上記したように、フェース部6は、その形状からヒール側が撓み難い構成となっているため、リブ12を形成するに当たり、同じ断面積にすると、ヒール側では、より撓み難くなってしまい、撓みバランスが低下してしまう。本実施形態では、
図3で示すように、トウ側での幅をw1、ヒール側での幅をw2とした場合、w1>w2となるようにリブ12を形成しており、さらに、
図4に示すように、リブ12の高さについても、トウ側での高さをh1、ヒール側での高さh2とした場合、h1>h2となるように形成しており、その断面積をヒール側の方が小さくなるようにしている。
【0029】
このように、リブ12は、トウ側の断面積と比較してヒール側の断面積が減少しているため、リブによる撓み難さの度合いが、ヒール側に移行するに連れて緩和され、フェース部のトウ・ヒール方向における撓みバランスを向上することが可能となる。特に、フェース部全体を薄肉厚化して撓み易い構造とした場合、上記したような断面積が減少するリブを形成しておくことで、撓みバランスの向上が図れるようになる。
【0030】
なお、本実施形態のリブ12は、
図1に示すように、最大厚肉部10から、ヒール側(有効打点領域Wのヒール側のエッジW2)まで延出するように形成されているが、撓みの抑制効果が発揮されるように、少なくとも有効打点領域Wに対して、中央を含む1/2Wの範囲W3内に形成されていれば良い。また、リブ12については、
図3及び
図4に示すように、幅、及び高さが、ヒール側に移行するに連れて連続的に減少するように形成することが好ましく、これにより応力集中し難い構造にすることができる。また、そのリブ12のトウ側端部に連続した一定幅、高さで最大厚肉部10としても良い。
【0031】
また、少なくともリブ12は、フェース部6のボールの打点位置よりもトップ側に形成しておくことが好ましい。具体的には、ヘッド本体5を基準水平面Pに対して規定のロフト角、ライ角に設置した際のボールBの当接点K(打点位置)よりも、リブ全体がトップ側に位置するように形成されていることが好ましい(
図1では、トウ・ヒール方向に沿った当接点Kの位置がラインL2として示されており、リブ12は、このラインL2よりもトップ側となるように形成されている)。リブ12の形成位置をこのように設定しておくことで、打球した際のボールの当たる位置が、リブ12上になってしまう可能性が少なくなり、打感が低下するのを防止することが可能となる。
【0032】
また、リブ12は、上記したラインL2に対してトップ側にあり、かつ、トウ・ヒール方向に延出するように形成されていれば良いが、フェース部は、トップ部が、トウ側に向けて次第に上昇する形状となっていることから、大きく撓むのは、前記中央位置から見てトウ側であり、かつ、トップ側となり易いので、本実施形態では、最大厚肉部10をトウ側、かつ、トップ側に形成し、大きく撓む領域の撓みを抑制するようにして、効率的な撓みの抑制、及び撓みバランスの向上が図れるようにしている。具体的には、有効打点領域Wのトウ側のエッジW1及びヒール側のエッジW2と上記したラインL2との交点をそれぞれP3,P4とし、また、トウ側のエッジW1のトップ側エッジをP5、ヒール側のエッジW2のトップ側エッジをP6とし、さらにP3とP5の中点をP7、P4とP6の中点をP8とした場合、中点P7,P8を結ぶラインL3上に、リブ12が位置するように形成されている。すなわち、このような中点P7,P8同士を結ぶラインL3は、トウ・ヒールの幾何学的中央線に沿う方向となり、補強効果が高く、打点より上方になると考えられることから、このラインL3に沿ってリブ12を形成することで、リブを重量化することなく、効率的に強度向上及び撓みの抑制、並びに撓みバランスの向上が図れるようになる。なお、本実施形態では、
図1に示すように、延出するリブ12の中心線が、上記したように定義されるラインL3と一致するように形成されているが、ラインL3にリブ12の一部が重なるように形成されていても良い。
【0033】
また、フェース部6は、上記した最大厚肉部10、及びリブ12が形成される位置以外については、同一の肉厚であっても良いが、リブ12を境にして、ソール側の領域M1よりもトップ側の領域M2の肉厚が薄く形成されることが好ましい。
【0034】
このように構成することで、打点位置付近(ラインL2付近)のソール側の必要強度が得られ、かつトップ側を軽量化することができるため、重量余力ができ、低重心化等、設計自由度が高くなる。また、ソール部が厚くなっても、トップ側に薄い領域が形成されているので、全体剛性が高くならず、飛距離低下し難くすることができる。
【0035】
また、本実施形態では、上記したリブ12に加え、さらに、最大厚肉部10から延出する2つのリブ22,32が形成されている。この内、リブ22は最大厚肉部10からトウ側上方に向けて延出するように形成されており、トップ部5dの端部位置で交差するように形成されている。また、リブ32は最大厚肉部10からトウ側下方に向けて延出するように形成されており、図に示すように、トウ部5fの略中間位置より下方で交差するように形成することで、フェース部トウ側下方の反発を抑制するようにしても良い。
【0036】
このように、上記したリブ12に加え、更に、最も撓み易い領域(最大厚肉部10)から、フェース部の形状に合わせてリブ22,32を形成したことで、リブ12,22,32による補強効果によって、フェース部全体を薄肉厚化することが可能となり、軽量、高強度で高反発のフェース構造が得られるようになる。
【0037】
また、リブ22,32についても、リブ12と同様、最大厚肉部10から周縁部に向けて、断面積が減少するように形成しておくことが好ましい。
リブ22,32をこのように形成することで、フェース部を効果的に薄肉厚化することができ、軽量、高強度のフェース部にすることが可能となる。
【0038】
さらに、上記したようなリブ(略Y字状のリブ12,22,32)を形成したことで、フェース部6の裏面は、3つの領域が形成されるようになる(上記したソール側の領域M1、トップ側の領域M2、及びトウ側の領域M3)。このような3つの領域M1〜M3については、ソール側の領域M1の肉厚>トップ側の領域M2の肉厚>トウ側の領域M3の肉厚となるように形成しておくことが好ましい。すなわち、トウ側の領域M3の肉厚を最も薄くなるように形成することで、上記したような低重心化等を図れることに加え、全体剛性を抑制することもできる。
【0039】
具体的な肉厚関係としては、最大厚肉部10の肉厚を2.5mmとして、ソール側の領域M1の肉厚を2.1mm、トップ側の領域M2の肉厚を1.8mm、トウ側の領域M3の肉厚を1.5mmに設定することが可能である。この場合、最大厚肉部10の肉厚、及び各領域M1〜M3の肉厚については、適宜変形することが可能であるが、各領域同士の肉厚差については、余り大きくし過ぎると、境界部分で応力集中したり撓みバランスが崩れることから、0.2〜0.5mm程度にしておくことが好ましい。また、各領域内では、必ずしも均一な肉厚にする必要はなく、例えば、周辺領域に移行するにしたがって次第に薄肉厚化するなど、肉厚変化させても良い。
【0040】
さらに、上記した3つのリブ12,22,32は、最大厚肉部10を中心として、所定の交差角度(トウ側交差角度θ1、トップ側交差角度θ2、ソール側交差角度θ3)を持ってフェース部の周辺に延出しているが、各リブの交差角度については、トップ側交差角度θ2、及びソール側交差角度θ3が鈍角(90°より大きい)となるように形成されることが好ましい。すなわち、リブ22,32については、交差角度θ2、θ3が鋭角(直角)になると、上下方向の撓みを抑制してしまい、反発力が低下することから、鈍角となるように形成しておくことが好ましい。なお、トウ側交差角度θ1については、鋭角であっても良いが、フェース部全体を薄肉厚化し、かつ、より撓みバランスの向上が図れるように、交差角度θ1〜θ3については、全て鈍角となるように形成しておくことが好ましい。
【0041】
上記した構成のアイアン型ゴルフクラブによれば、フェース部6の有効打点領域の中央位置Cよりもトウ側に最大厚肉部10を形成したことで、大きく撓む領域の撓みが抑制されるようになる。また、フェース部の裏面に、その最大厚肉部10よりヒール側に向けて延出するリブ12を形成するとともに、そのリブは、最大厚肉部10からヒール側に向けて断面積が減少していることから、ヒール側での撓みの抑制効果を小さくしている。すなわち、ヒール側に移行するにつれて、リブ12による撓み抑制の効果が減少することから、フェース部全体をトウ・ヒール方向で見た場合、バランスの良い撓み状態が得られ、これにより、トウ・ヒール方向で打点がばらついても、打点位置に応じて反発性が極端に相違することがなくなり、飛距離の安定化が図れるようになる。
【0042】
また、そのようなリブを形成したことで、強度を維持しながらフェース部を薄肉厚化して反発性を高めることができ、さらには、フェース部を軽量化することで、設計自由度の向上が図れるようになる。
【0043】
さらに、本実施形態では、上記したように、リブ12に加え、リブ22,32を形成したことで、効率的にフェース部を補強することができ、より薄肉厚化して高反発なフェース構造とすることができる。
【0044】
上記したように形成されるリブ12,22,32の構成については、適宜変形することが可能である。具体的に、
図4〜
図7を参照して、本実施形態のリブ構造について具体的に説明する。
なお、これらの図において、
図4は、
図3のB−B線に沿った断面図、
図5は、
図3のC−C線に沿った断面図、
図6は、
図3のD−D線に沿った断面図、そして、
図7は、
図3のE−E線に沿った断面図である。
【0045】
上述したように、リブ12については、ヒール側に移行するにしたがって断面積が減少するように形成されている。この場合、リブ12の断面形状については、特に限定されることはないが、本実施形態では、断面が略台形状に形成されている。また、リブ12の断面積の減少の仕方については、
図4に示すように、ヒール側に移行するにしたがい、リブの高さを次第に低くするようにし、かつ、
図3に示すように、リブの幅(下底の幅)についてもヒール側に移行するにしたがい、次第に狭くするように形成している。
また、リブ22,32についても、その断面が略台形状に形成されている(リブ12と同様、周縁部に移行するに従い断面積を減少させても良い)。
【0046】
上記したように、リブの断面形状を略台形状にすることで、
図5に示すように、フェース部の裏面に対して、所定の傾斜角度となるテーパ状に厚肉化することができ、直角に切り立つ構成のリブと比較すると、応力集中を緩和することが可能となる。すなわち、リブ12の各テーパ(領域M1側のテーパ12a,領域M2側のテーパ12b)の傾斜角度を、それぞれθ4,θ5とした場合、θ4,θ5を90°未満に設定することで、応力集中を緩和することが可能となる(角度が小さくなるほど、応力集中は緩和される)。
【0047】
なお、上述したように、領域M2の肉厚は、領域M1の肉厚と比較すると、薄く形成されていることから、薄肉厚となる領域M2側の傾斜角度θ5は、厚肉となる領域M1側の傾斜角度θ4以下に設定しておくことが好ましい(θ5≦θ4)。すなわち、このように形成することで、リブ12の両側での応力集中をバランス良く緩和することが可能となる。この場合、各テーパ12a,12bの幅wa,wbについては、wb>waとなるように形成される。
【0048】
一方、傾斜角度θ4、θ5については、θ5>θ4に設定することも可能である。ただし、この場合、テーパ幅が大きくなり重量化するため、各テーパ12a,12bの幅wa,wbについては、wb≦waとなるように形成するのが好ましい。
【0049】
また、リブ32についても、
図6に示すように、断面形状を略台形状にすることで、フェース部の裏面に対して、所定の傾斜角度となるテーパ状に厚肉化することができ、応力集中を緩和することが可能となる。すなわち、リブ32の各テーパ(領域M1側のテーパ32a,領域M3側のテーパ32b)の傾斜角度を、それぞれθ6,θ7とした場合、θ6,θ7を90°未満に設定することで、応力集中を緩和することが可能となる。
【0050】
この場合、上述したように、領域M3の肉厚は、領域M1の肉厚と比較すると、薄く形成されていることから、薄肉厚となる領域M3側の傾斜角度θ7は、厚肉となる領域M1側の傾斜角度θ6以下に設定しておくことが好ましい(θ7≦θ6)。すなわち、このように形成することで、リブ32の両側での応力集中をバランス良く緩和することが可能となる。この場合、各テーパ32a,32bの幅wa´,wb´については、wb´>wa´となるように形成される。
【0051】
なお、傾斜角度θ6、θ7については、θ7>θ6に設定することも可能である。ただし、上記したリブ12と同様、各テーパ32a,32bの幅wa´,wb´については、wb´≦wa´となるように形成するのが好ましい。
【0052】
また、リブ22についても、
図7に示すように、断面形状を略台形状にすることで、フェース部の裏面に対して、所定の傾斜角度となるテーパ状に厚肉化することができ、応力集中を緩和することが可能となる。すなわち、リブ22の各テーパ(領域M3側のテーパ22a,領域M2側のテーパ22b)の傾斜角度を、それぞれθ8,θ9とした場合、θ8,θ9を90°未満に設定することで、応力集中を緩和することが可能となる。
【0053】
この場合、上述したように、領域M3の肉厚は、領域M2の肉厚と比較すると、薄く形成されていることから、薄肉厚となる領域M3側の傾斜角度θ8は、厚肉となる領域M2側の傾斜角度θ9以下に設定しておくことが好ましい(θ8≦θ9)。すなわち、このように形成することで、リブ22の両側での応力集中をバランス良く緩和することが可能となる。この場合、各テーパ22a,22bの幅wa´´,wb´´については、wa´´>wb´´となるように形成される。
【0054】
なお、傾斜角度θ8、θ9については、θ8>θ9に設定することも可能である。ただし、上記したリブ12,32と同様、各テーパ22a,22bの幅wa´´,wb´´については、wa´´≦wb´´となるように形成するのが好ましい。
【0055】
上記した各リブ12,22,32については、いずれも断面が略台形状に形成されていたが、
図8の変形例に示すように、断面を三角形状となるように形成しても良い。このように構成することで、略台形状と比較してリブの軽量化を図ることができ、フェース部全体を、軽量化することが可能となる。
【0056】
さらに、この変形例では、最大厚肉部10を点状としており、この最大厚肉部10からヒール側に延出するリブ12については、ヒール部まで延ばすことなく、途中で終端させている。具体的には、ヒール側(有効打点領域Wのヒール側のエッジW2)から1/4Wの範囲については、リブ12を形成しておらす、これにより、ヒール側を撓み易くして、反発性を向上することが可能となる。また、リブ22,32については、周縁部に向けて断面積が減少するように形成されている。
【0057】
図9は、フェース部の第2の変形例を示す図であり、ヘッド部分の正面図である。
この第2の変形例では、最大厚肉部10Aの位置を、有効打点領域Wの中央位置Cよりもトウ側で、ソール側となるように形成している。このような構成では、リブ12Aの位置が、上記した実施形態のリブ12よりも全体的にソール側にシフトすると共に、リブ22Aが上記した実施形態のリブ22よりも長くなり、かつリブ32Aが上記した実施形態のリブ32よりも短くなる。
【0058】
このため、トップ側の領域M2が、
図1に示すトップ側の領域と比較すると広くなり、これにより、フェース全体を高反発化することが可能になると共に、低重心化を図ることが可能になる。なお、このような構成においても、リブ12Aは、ラインL2よりもトップ側となるように形成しておくことが好ましい。
【0059】
図10及び
図11は、フェース部の第3の変形例を示す図であり、
図10は、ヘッド部分の正面図、
図11は、
図11のF−F線に沿った断面図である。
この変形例では、最大厚肉部10Bの位置を、
図1に示した構成と同様、有効打点領域Wの中央位置Cよりもトウ側かつトップ側に形成しているが、ヒール側に向けて延出するリブ12Bについては、
図1に示す構成と比べて、よりソール側に向くように形成している。具体的には、
図1で定義したヒール側のエッジW2における中点P8よりも下方側で交差するように形成している。
【0060】
上述したように、アイアン型ゴルフクラブヘッドでは、ヒール側における上下方向の長さが短くなり、その部分での反発が低下することから、リブ12Bを、ヒール側のエッジW2における中点P8よりも下方側で交差させることで、ヒール側における薄肉厚領域M2が広くなり、ヒール側での反発性を向上することが可能となる。また、このようなリブ形状によれば、
図1に示した構成と比較して、より多くのスコアライン6Lと交差させることができるので、強度向上が図れ、フェース部6を薄肉厚化することが可能となる。
【0061】
また、リブの形状(ここでは、略Y字状のリブ12B,22B,32Bの内、リブ32Bの断面形状を示す)については、
図11に示すように、フェース部6の裏面から湾曲状に立ち上がるようR面32a´,32b´にすることが好ましい(断面形状が湾曲状に立ち上がるR面)。
リブを、このように湾曲面によって立ち上がる形状にすることで、応力集中を防止することができ、これにより、リブ32を境にした高低差を大きくすることが可能となる。
【0062】
また、このようなリブ形状では、リブのトップ平面32dとの境界部32a´´,32b´´を湾曲面とするのではなく、エッジ状にすることで、高低差が低くてもシャープな印象、及び補強感を与えることができるようになり、キャビティ部分の外観を向上することが可能となる。
【0063】
なお、この変形例においても、
図8に示した構成と同様、最大厚肉部を点状にしたり、断面形状を変形しても良い。また、リブ12Bについては、ヒールまで達しないように構成しても良い。
【0064】
以上、本発明に係るゴルフクラブ、及びゴルフクラブヘッドの実施形態について説明したが、本発明は、有効打点領域の中央位置よりもトウ側に最大厚肉部を形成すると共に、前記フェース部の裏面に、前記最大厚肉部よりヒール側に向けて断面積が減少するリブを延出形成したことに特徴がある。
このため、上記したリブの断面形状については、特別な形態に限定されることはなく、また、断面積の減少の仕方についても、適宜変形することが可能である。例えば、幅を一定にして、高さを変えても良いし、高さを一定にして幅を変えても良い。また、リブが延出する方向については、最大厚肉部からヒール側に向けて延出していれば良く、本実施形態のように、直線状に形成されたもの以外にも、多少、湾曲するような形状であっても差し支えない。また、リブの表面は、上記したように平坦状にしたもの、尖った状態にしたもの以外に、湾曲状に形成されたものであっても良い。また、リブ側面とフェース裏面の繋がりも湾曲状に形成しても良い。さらに、断面積の減少の仕方については、連続的に減少させる以外に、段階的に減少させる構成であっても良い。
【0065】
また、ヘッド本体は、キャビティ構造になっていれば良く、図に示した形状に限定されることはない。例えば、ヘッド本体は、一体形成することなく、異なる材料で複数のパーツを形成しておき、これらを溶接等することで一体化したものであっても良い。また、フェース部については、ヘッド本体と共に一体形成された構成であっても良い。