特許第5698172号(P5698172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5698172-グローブボックス 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698172
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】グローブボックス
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20150319BHJP
   B25J 21/02 20060101ALI20150319BHJP
   B01L 1/00 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   B01D53/26 101B
   B25J21/02
   B01L1/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-56993(P2012-56993)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-188693(P2013-188693A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390020215
【氏名又は名称】株式会社西部技研
(72)【発明者】
【氏名】金 偉力
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−343819(JP,A)
【文献】 特開平01−199621(JP,A)
【文献】 特開平11−000522(JP,A)
【文献】 特開2011−147876(JP,A)
【文献】 特開2012−217879(JP,A)
【文献】 特開2004−148255(JP,A)
【文献】 特開2001−205037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26
F24F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気吸着剤の担持された除湿ロータを有し、前記除湿ロータをその回転方向に対して、第1吸着ゾーン、第1再生ゾーン、第2再生ゾーン、第2吸着ゾーンに分割し、外気を前記第1吸着ゾーンに通過させ、前記第1吸着ゾーンを通過した空気を冷却して前記第2吸着ゾーンに流し、前記第2吸着ゾーンを出た空気の一部を加熱して前記第2再生ゾーンに流すとともに、その残りを供給先のボックスに供給し、前記第2再生ゾーンを出た空
気を加熱して前記第1再生ゾーンに流し、前記第1再生ゾーンを出た空気を前記第1吸着ゾーンに入れるようにしたことを特徴とするグローブボックス。
【請求項2】
第1吸着ゾーンよりも第2吸着ゾーンの面積を小さくし、第1再生ゾーンよりも第2再生ゾーンの面積を小さくしたことを特徴とする請求項1記載のグローブボックス。
【請求項3】
第1再生ゾーンの面積よりも第2再生ゾーンの面積を小さくしたことを特徴とする請求項1記載のグローブボックス。
【請求項4】
第1吸着ゾーンの面積対第1再生ゾーンの面積の比よりも、第2吸着ゾーンの面積対第2再生ゾーンの面積比を大きくしたことを特徴とする請求項1記載のグローブボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
グローブボックスとは、ボックスの内部の湿度が極めて低い状態に維持され、ボックスの外から密封されたゴム手袋(グローブ)を介して手を挿入し、ボックスの中の乾燥した環境を利用した実験などを行うものである。本発明は、除湿のためのエネルギー消費が少ないグローブボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特定のボックスの中の空気を除湿する場合に、冷凍機を用いて結露による除湿を行うとエネルギー消費は少ないのであるが、ボックスの中の空気の湿度をマイナスの露点まで下げるのは困難であった。
【0003】
つまり近年、リチウムイオン電池やリチウムイオン・キャパシタなどの開発や改良が激化している。リチウムは空気中の水分を簡単に吸着して、電池やキャパシタの性能が劣化するため、これらの開発に伴う実験の際に、極めて低い露点の空気や、液体窒素を気化させた窒素で空気をパージしたボックスの中で実験を行う必要がある。液体窒素を用いる場合には、実験の前に液体窒素を準備しておく必要があり、実験中は液体窒素を消耗し続けるので、費用がかさむという問題がある。
【0004】
ここで、シリカゲルやゼオライトを吸着剤とする除湿ロータを用いた除湿機を採用すると、ボックスの中の空気の露点をマイナスまで下げることが容易である。しかし、消費エネルギーが大きくなるという欠点があった。
【0005】
この改善策として、特許文献1に開示された技術のように、除湿ロータの再生を2段階にして、少ないエネルギーで効果的に再生し、省エネルギーで空気の露点を低くするものが発明された。
【0006】
また特許文献2に開示されたものは、除湿ロータへの湿分吸着を2回行って、効果的に露点の低い空気を供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−343818号公報
【特許文献2】特開平1−199621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、特許文献1或いは特許文献2に記載の技術よりも、さらに省エネルギーで低露点の空気を供給するようにする点である。
【0009】
特に、グローブボックス内の環境として、露点がマイナス100度以下になるような、極めて低い湿度を保つ場合には、除湿ロータの再生を行うのに多くのエネルギーを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、除湿ロータをその回転方向に対して、第1吸着ゾーン、第1再生ゾーン、第2再生ゾーン、第2吸着ゾーンに分割し、外気を第1吸着ゾーンに通過させ、第1吸着ゾーンを通過した空気を冷却して第2吸着ゾーンに流し、第2吸着ゾーンを出た空気の一部を加熱して第2再生ゾーンに流すとともに、その残りを供給先のボックスに供給し、第2再生ゾーンを出た空気を加熱して第1再生ゾーンに流し、第1再生ゾーンを出た空気を第1吸着ゾーンに入れるようにしたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のグローブボックスは、第1再生ゾーンを出た空気を外部に放出することなく、再利用するため、湿度の低い空気を無駄にすることなく、消費エネルギーが小さいという利点がある。つまり、第1再生ゾーンを出た空気の湿度が外気の湿度よりも低い場合には、その空気を第1吸着ゾーンに流して、第1吸着ゾーンに入る空気の露点を少しでも低くすることによって、供給空気の露点を低くすることができる。
【0012】
また第2吸着ゾーンを出た空気の一部をパージゾーンなど通さずに直接、加熱して第2再生ゾーンに流すようにしているため、構造が簡単になる。つまり、吸着熱の発生の少ない第2吸着ゾーンを出た空気を第2再生ゾーンに流すようにして、パージゾーンを設ける必要がないようにしている。
【0013】
さらに本発明のものは、第1再生ゾーンを通過する空気の量を第2再生ゾーンを通過する空気の量より大きくし、除湿ロータから多量の湿分を脱着するゾーンに多量の空気を送り、脱着すべき湿分の量が少ないゾーンで、通過する空気の量を少なくして、消費エネルギーを少なくしている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明のグローブボックスの実施例を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、除湿ロータをその回転方向に対して、第1吸着ゾーン、第1再生ゾーン、第2再生ゾーン、第2吸着ゾーンに分割し、外気を第1吸着ゾーンに通過させ、第1吸着ゾーンを通過した空気を冷却して第2吸着ゾーンに流し、第2吸着ゾーンを出た空気の一部を加熱して第2再生ゾーンに流すとともに、その残りを供給先のボックスに供給し、第2再生ゾーンを出た空気を加熱して第1再生ゾーンに流し、第1再生ゾーンを出た空気を第1吸着ゾーンに入れるようにし、これによって、少ないエネルギーで、極めて低い露点(マイナス100度)の空気をボックスに供給し、低露点の雰囲気を有するグローブボックスを提供するという目的を、最小の部品点数で実現した。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例を示す図1に沿って説明する。1は除湿ロータであり、シリカゲルやゼオライトなどの湿気吸着剤が担持され、ハニカムロータ状である。この除湿ロータ1はモータ(一般的であるため、図示せず)によって回転するようにされており、その回転方向に従って、以下のとおり各ゾーンに分割されている。
【0017】
つまり、2は第1吸着ゾーンであり、ここで空気中の湿分が除湿ロータ1に吸着される。3は第1再生ゾーンであり、4は第2再生ゾーンである。両再生ゾーンを通過する高温の空気によって除湿ロータ1は吸着した湿気が脱着される。5は第2吸着ゾーンである。
【0018】
6は第1冷却コイルであり、冷凍機7から冷媒が供給されている。8は吸着ブロアであり、冷却コイル6によって冷却された空気を第1吸着ゾーン2に送るものである。9は第2冷却コイルであり、第1吸着ゾーン2を出た空気を冷却するもので、これも冷凍機7から冷媒が供給されている。そして、この第2冷却コイル9を出た空気は、第2吸着ゾーン5の入口に送られる。
【0019】
10は供給空気加熱器であり、第2吸着ゾーン5から出た空気を必要に応じて加熱するもので、例えば電気ヒータがあるが、冷凍機7のラジエターを用いることも可能である。11はボックスであり、供給空気加熱器で加熱された空気が供給される。またこのボックスの側面には、ゴムで作られた手袋(図示せず)が密封状態に取り付けられている。
【0020】
第2吸着ゾーン5から供給空気加熱器10に行く管路が分岐され、この分岐路の途中に分岐バルブ12が設けられている。この分岐バルブ12によって、分岐される空気量、即ち第2再生ゾーン4に流れる空気の量が調整される。
【0021】
13は第2再生ヒータであり、分岐バルブ12と第2再生ゾーン4の入口との間に設けられ、第2再生ゾーン4に送られる空気を再生可能な温度レベルまで加熱するものである。これには例えば電気ヒータが用いられる。
【0022】
14は第1再生ヒータであり、第2再生ゾーン4を出た空気と外気とが混合された空気を加熱して、第1再生ゾーン3を再生可能な温度レベルまで上げるものである。これも例えば電気ヒータが用いられる。
【0023】
15は再生ブロアであり、第1再生ゾーン3の空気を吸出すもので、この再生ブロア15の出口は第1冷却コイル6に接続されている。つまり第1冷却コイル6に入る空気は、外気と再生ブロア15から出た空気とが混合された状態となる。
【0024】
本発明のグローブボックスは上記の構成よりなり、以下その動作について説明する。先ず、外気は第1冷却コイル6で冷却され、凝縮除湿される。凝縮除湿は、凝縮水が凍ると第1冷却コイル6の表面に氷が生成され、空気の流れが阻害されるために、氷点以下にすることができず、ここで除湿される空気の露点温度は0度以上である。
【0025】
この凝縮除湿されて温度が下がった空気は、吸着ブロア8によって第1吸着ゾーン2に送られる。第1吸着ゾーン2で吸着除湿され、湿度が下がって温度の上昇した空気は第2冷却コイル9で冷却される。第2冷却コイル9を出た空気は冷却によって相対湿度が上昇し、第2吸着ゾーン5に送られる。
【0026】
第2吸着ゾーン5に送られた空気は、第2吸着ゾーン5で吸着除湿が行われ、露点がマイナス100度まで下がり、必要に応じて供給空気加熱器10で加熱されて、乾燥空気の供給先であるボックス11に送られる。このボックス11内で、リチウム電池の試作など、低露点の環境下で行われるべき実験が行われる。
【0027】
第2吸着ゾーン5を出た空気の一部は、分岐バルブ12によって、分岐される空気量、即ち第2再生ゾーン4に流れる空気の量が調整され、第2再生ヒータ13によって加熱されて第2再生ゾーン4に送られる。第2再生ヒータ13に送られた空気の露点はマイナス100度まで下がっているので、第2再生ゾーン4で除湿ロータ1は極めて乾燥した状態まで、再生される。
【0028】
第2再生ゾーン4を出た空気は外気よりも露点が低く、この空気は外気と混合されて風量を増して、第1再生ゾーン3に送られる。つまり第1再生ゾーン3は、湿度が高いために、多くの湿分を放出させる必要があり、大風量で再生することによって再生効率を上げることができる。
【0029】
具体的に各ゾーンの面積比は、第1再生ゾーン3:第2再生ゾーン4:第2吸着ゾーン5:第1吸着ゾーン2=3:1:5:9としている。これによって、第1吸着ゾーン2と第1再生ゾーン3との間の風量比は3:1となり、第1段階での除湿は外気と第2再生ゾーン4から出た空気の混合空気で多量の空気を使って再生を行う。これによって、再生に用いるエネルギーが少なくて済む。低露点の空気を作るための第2段階での除湿は、第2吸着ゾーン5と第2再生ゾーン4との間の風量比は5:1であり、乾燥空気で再生を行うため、できるだけ少量の空気で再生をするようにしており、この点でも省エネルギーとなる。(各ゾーンの風速は同一とする。)
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、上記のとおり少ないエネルギーで極めて低い露点の空気をボックスに供給する事ができ、低露点のグローブボックスに適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 除湿ロータ 2 第1吸着ゾーン 3 第1再生ゾーン 4 第2再生ゾーン 5 第2吸着ゾーン 6 第1冷却コイル 7 冷凍機 8 吸着ブロア 9 第2冷却コイル 10 供給空気加熱器 11 ボックス 12 分岐バルブ 13 第2再生ヒータ 14 第1再生ヒータ 15 再生ブロア
図1