特許第5698174号(P5698174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698174
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】車両用内装材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20150319BHJP
   B60R 21/04 20060101ALI20150319BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20150319BHJP
   F16B 5/06 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   B60R13/02 B
   B60R21/04 A
   F16B19/00 F
   F16B5/06 Q
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-75865(P2012-75865)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-203300(P2013-203300A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2013年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 岳人
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−059164(JP,A)
【文献】 特開2008−049721(JP,A)
【文献】 特開2011−230603(JP,A)
【文献】 特開2005−126000(JP,A)
【文献】 特開平08−132986(JP,A)
【文献】 実開平05−058503(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02,21/04
F16B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のトリムの背面に先端に係止爪を備えたクリップを突設し、該クリップに対して付設部品の周側の底縁近傍に設けたブラケット片の係止孔を挿入して前記係止爪に弾性係着することによって、前記トリムの背面に複数の付設部品を近接して取付けるようにした構造であって、
前記複数の付設部品が隣接した側では、1つのクリップを共用してこれら付設部品のブラケット片を弾性係着可能としてあり、
前記隣接する側のブラケット片は、一方のブラケット片に他方のブラケット片が被い重なるような配置関係となるように配置高さおよび大きさを異ならせてある一方、
前記共用するクリップは、異なる係着高さ位置を規定する複数の係止爪を備え、
前記係着高さ位置の低い係止爪を前記一方のブラケット片の係着固定用として、その一対を係止縁が外向きとなるように対向して形成し、係着高さ位置の高い係止爪を前記他方のブラケット片の係着固定用として、これら一対の係着高さ位置の低い係止爪の中間位置に形成し、
前記共用のクリップの係着高さ位置が低い係止爪に前記一方のブラケット片の係止孔を挿入して弾性係着し、続いて係着高さ位置が高い係止爪に前記他方のブラケット片の係止孔を挿入して弾性係着して、これら複数のブラケット片を多段に弾性係着するようにしたことを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
前記共用のクリップは、先端部の一側に前記係止爪を形成するクリップポストをコ字形に形成し、そのコ字形状の対向部に前記係着高さ位置が低い係止爪を形成し、コ字形状の中央部に前記係着高さ位置が高い係止爪をその係止縁がコ字形状の内側を向くように内向きに形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアトリムやリャサイドトリム等に代表される合成樹脂製の車両用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアトリムの中には、例えば、特許文献1に示されているように、背面に係止爪を備えたクリップを突設し、該クリップにより緩衝部品等の付設部品を係着固定するようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−230603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トリム背面に装着される付設部品は、その周側の底縁近傍に複数のブラケット片を設け、このブラケット片に形成した係止孔を上述のクリップに挿入して、係止爪に係着固定するようにしている。
【0005】
従って、クリップは1つの付設部品に対して、その周側底縁近傍のブラケット数に対応して設けられる。
【0006】
ドアトリムは、コア型とキャビティ型とを備えた成形型によって型成形され、クリップはこの成形型によりドアトリムの背面に一体成形される。
【0007】
このクリップは、前述のように係止爪を備えていて、この係止爪がドアトリムの成形型の離型方向と交差するアンダーカットとなるため、該成形型のクリップ成形部分はスライド駒構造として、このスライド駒によってクリップを成形するようにしている。
【0008】
従って、トリム背面の付設部品数が増えると、その分、クリップ係着による固定点数が増えることによって型費が嵩んでしまう。
【0009】
また、トリム背面に複数の付設部品を近接して配設する場合、複数の付設部品が隣接する側では、成形型にそれぞれ対応する付設部品のクリップ成形用のスライド駒構造を構成するスペースを採れなくなってしまう。
【0010】
このため、複数の付設部品が隣接する側では、クリップ係着に替えて超音波溶着等の固着手段を採用する必要があって、コスト的に不利となってしまう。
【0011】
そこで、本発明は1つのクリップによって複数の付設部品を多段に係着固定することができて、背面に複数の付設部品を隣接配置する場合に有効な車両用内装材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る車両用内装材は、合成樹脂製のトリムの背面に先端に係止爪を備えたクリップを突設し、該クリップに対して付設部品の周側の底縁近傍に設けたブラケット片の係止孔を挿入して前記係止爪に弾性係着することによって、前記トリムの背面に複数の付設部品を近接して取付けるようにした構造としていて、前記複数の付設部品が隣接した側では、1つのクリップを共用してこれら付設部品のブラケット片を弾性係着可能としている。
【0013】
そして、前記隣接する側のブラケット片は、一方のブラケット片に他方のブラケット片が被い重なるような配置関係となるように配置高さおよび大きさを異ならせてある。
一方、前記共用するクリップは、異なる係着高さ位置を規定する複数の係止爪を備え、
前記係着高さ位置の低い係止爪を前記一方のブラケット片の係着固定用として、その一対を係止縁が外向きとなるように対向して形成し、係着高さ位置の高い係止爪を前記他方のブラケット片の係着固定用として、これら一対の係着高さ位置の低い係止爪の中間位置に形成している。
これにより、前記共用のクリップの係着高さ位置が低い係止爪に前記一方のブラケット片の係止孔を挿入して弾性係着し、続いて係着高さ位置が高い係止爪に前記他方のブラケット片の係止孔を挿入して弾性係着して、これら複数のブラケット片を多段に弾性係着するようにしたことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、クリップに設けた複数の係止爪が各々異なる係着高さ位置を規定していて、これらの係止爪によりそれぞれ別の付設部品を多段に係着固定可能である。
【0015】
従って、車両用内装材の背面に複数の付設部品を近接して配設する場合、これら複数の付設部品が隣接する側では、当該クリップによって両付設部品を多段に係着固定できて、一体に型成形するクリップ総数を少なくして、型費を低減することができる。
【0016】
また、上述のように複数の付設部品が隣接する部分でも、クリップ係着によって両付設部品を固定できるので、超音波溶着手段等、別の固着手段が不要となってコスト的に有利に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の対象とする車両用内装材としてのドアトリムを背面側から見た説明図。
図2図1のA範囲部を示す拡大図。
図3図2のB範囲部におけるクリップを示す斜視図。
図4図3のC−C線に沿う断面図。
図5図3のD−D線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、車両用内装材としてドアトリムを、およびその背面に装着される付設部品として緩衝部品を例に採って図面と共に詳述する。
【0019】
図1に示す本実施形態のドアトリム1は、適宜の合成樹脂材をもって型成形され、図外のドアインナパネル面を覆って装着される。
【0020】
ドアトリム1の背面には、ドアインナパネルとの間の空間部に介在して、車両の側面衝突時等に圧潰変形して衝突エネルギーを吸収する複数の緩衝部品11,21を隣接して配設してある。
【0021】
緩衝部品11,21は、何れも適宜の合成樹脂材からなり、一側が開放して閉止端側が先細となるテーパを付与した矩形筒状に形成してある。
【0022】
これらの緩衝部品11,21は、開放端側をドアトリム1の背面に向けた横置き配置として、該ドアトリム1のインパクトエリアの背面に後述するようにクリップ係着して固定してある。
【0023】
これにより、車両の側面衝突やロールオーバー時等に、図外のドアインナパネルが車室内側に変形移動して緩衝部品11,21にその軸方向に相対的に外力が作用すると、それぞれ閉止端コーナー部の切欠部12,22を起点として周側の稜線に亀裂が生じ、軸方向に圧潰して衝突エネルギーを吸収するものである。
【0024】
緩衝部品11,21は、開放端側の底縁に複数の突き当て片13,23を径外方向に張り出して形成してあり、これら底縁と突き当て片13,23により圧潰反力が適切に得られるようにしている。
【0025】
緩衝部品11,21の周側の底縁近傍には、それぞれ複数のブラケット片14,24を外方に向けて突設してある。
【0026】
ブラケット片14,24は、緩衝部品11,21の閉止端と平行に形成し、それらの周縁をフランジアップして補強してある。
【0027】
各ブラケット片14,24は係止孔15,25を備えている一方、ドアトリム1の背面には、これらブラケット14,24の係止孔15,25にそれぞれ対応する位置にクリップ2を突設してある。
【0028】
クリップ2は、先端に係止爪3を備え、緩衝部品11,21をドアトリム1の背面に押圧して、ブラケット片14,24の係止孔15,25をクリップ2に挿入して、各ブラケット片14,24の弾性作用により係止爪3に係着することによって、緩衝部品11,21をドアトリム1の背面に固定するようにしている。
【0029】
クリップ2の係止爪3は、平板状のクリップポスト4の先端部の一側に形成してあり、係止縁3aが上述の係止孔15,25に弾性係着することによって、ブラケット片14,24の係着高さ位置を規定している。
【0030】
ここで、緩衝部品11,21が隣接した部分では、1つのクリップ2を共用してこれら緩衝部品11,21のブラケット片14,24を弾性係着可能としている。
【0031】
この共用のクリップ2は、図3図5に例示するように、異なる係着高さ位置を規定する複数の係止爪3A,3Bを備えている。
【0032】
隣接する側のブラケット片14,24は、例えば、一方のブラケット片14に他方のブラケット片24が被い重なるような配置関係となるように配設高さおよび大きさを異ならせてある。
【0033】
一方、共用のクリップ2は、本実施形態では、係着高さ位置の低い係止爪3Aをブラケット片14の係着固定用として、一対の係止爪3A,3Aを係止縁3a,3aが外向きとなるように対向して形成し、係着高さ位置の高い係止爪3Bをブラケット片24の係着固定用として、これら係止爪3A,3Aの中間位置に形成してある。
【0034】
具体的には、共用のクリップ2のクリップポスト4はコ字形に形成してあって、コ字形状の対向部に係止爪3A,3Aを形成し、コ字形状の中央部に係止爪3Bを形成してある。
【0035】
係止爪3Bは、その係止縁3aがコ字形状の内側を向くように内向きに形成して、係止爪3Aと係止爪3Bの型抜き方向が一致するようにしている。
【0036】
即ち、ドアトリム1は、例えば、その表面側を成形するキャビティ型と背面側を成形するコア型とを備えた成形型により型成形され、クリップ2はその係止爪3が成形型の離型方向に対してアンダーカットとなるため、該クリップ2はコア型に設けたスライド駒により成形される。
【0037】
そこで、係止爪3Bをクリップポスト4のコ字形状の中央部に内向きに形成することにより、係止爪3Aの型抜き方向と係止爪3Bの型抜き方向が揃って、1つのスライド駒による同時成形が成立する。
【0038】
このように、共用のクリップ2を、異なる係着高さ位置を規定する複数の係止爪3A,3Bを備えた構成とすることにより、2つの緩衝部品11と21とが隣接する部分では、この共用のクリップ2の係着高さ位置が低い係止爪3A,3Aにブラケット片14の係止孔15を挿入して弾性係着し、続いて係着高さ位置が高い係止爪3Bにブラケット片24の係止孔25を挿入して弾性係着する。
【0039】
これにより、1つのクリップ2にブラケット片14,24を多段に係着固定することが可能となる。
【0040】
図3図5に示す例では、ブラケット片14の係止孔15を、2つの係止爪3A,3Aと、係止爪3Bとが挿通可能なように大きな開口面積として形成した場合を示している。
【0041】
また、図外のドアインナパネルに対して傾斜したドアトリム1の非平行部の背面にクリップポスト4をコ字形に突設した状態を示しているため、コ字形状の対向部の係止爪3A,3Aは傾斜背面からの突出高さを変えて、係着高さ位置の平行度が得られるようにしている。
【0042】
以上のように本実施形態の構造によれば、クリップ2に設けた複数の係止爪3A,3Bが各々異なる係着高さ位置を規定していて、これらの係止爪3A,3Bによりそれぞれ別の緩衝部品11,21のブラケット片14,24を多段に係着固定可能である。
【0043】
従って、ドアトリム1の背面に複数の緩衝部品11,21を近接して配設する場合、これら複数の緩衝部品11,21が隣接する側では、当該係止爪3A,3Bを備えた共用のクリップ2によって両緩衝部品11,21のブラケット片14,24を多段に係着固定できて、トリム背面に一体に型成形するクリップ総数を少なくすることができる。
【0044】
この結果、ドアトリム1を成形する型費を低減できて、コスト的に有利に得ることができる。
【0045】
また、このように2つの緩衝部品11,21が隣接する部分でも、1つの共用のクリップ2によって両部品11,21を多段に係着して固定できるので、超音波溶着手段等、別の固着手段が不要となって、この面でもコスト的に有利に得ることができる。
【0046】
なお、前記実施形態ではドアトリム1を例に採って説明したが、ルーフトリムやリャサイドトリム,トランクトリム等、他の車両用内装材に適用することができる。
【0047】
また、付設部品として樹脂製緩衝部品11,21を例示したが、他の機能部品であってもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1…ドアトリム(車両用内装材)
2…クリップ
3,3A,3B…係止爪
4…クリップポスト
11,21…緩衝部品(付設部品)
図1
図2
図3
図4
図5