(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698181
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】バリ取り工具
(51)【国際特許分類】
B23B 51/10 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
B23B51/10 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-94608(P2012-94608)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-220512(P2013-220512A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176958
【氏名又は名称】三明電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 ▲いく▼夫
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−051904(JP,U)
【文献】
実開平03−087507(JP,U)
【文献】
実開昭61−205706(JP,U)
【文献】
特表2008−534300(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0222470(US,A1)
【文献】
特開平08−141806(JP,A)
【文献】
実開平06−083212(JP,U)
【文献】
米国特許第05755538(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/10,29/034,
B23D 79/00,
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に装着され、軸の回りで回転する円柱状本体を有し、加工されたワークの貫通孔等に回転しながら挿入され、該貫通孔等の周縁部の複数個所に発生したバリを除去するバリ取り工具において、
該円柱状本体内にホルダー収納室が該円柱状本体の外周面に開口して形成され、該ホルダー収納室にホルダーが該円柱状本体の軸と直角方向に摺動可能に収納され、該ホルダーには刃具が先端部を側方に突き出して取り付けられ、
該円柱状本体の外周部の一部に、エアー供給リングが該円柱状本体の回転を許容して外嵌され、該エアー供給リングの内側に形成されたエアー環状通路がエアー通路を通して該ホルダー収納室に連通し、
該エアー供給リングを通して供給される圧力空気が該ホルダー収納室に供給されたとき、該ホルダーが該刃具の先端部を突き出す方向に摺動することを特徴とするバリ取り工具。
【請求項2】
前記ホルダー収納室内のホルダーには、前記刃具を収納する刃具収納室が設けられ、該刃具収納室が該刃具の周囲に圧力空気を供給するように形成され、前記エアー供給リングを通り前記エアー通路を通して供給される圧力空気が該ホルダー収納室に入り、該刃具の周囲の隙間から空気が噴出するとともに、該ホルダーの隙間から空気が噴出することを特徴とする請求項1記載のバリ取り工具。
【請求項3】
前記刃具に孔が設けられると共に、該孔に連通して該刃具収納室内の該ホルダー側壁に孔が設けられ、前記エアー通路が該刃具の孔に向けて圧力空気を供給することを特徴とする請求項2記載のバリ取り工具。
【請求項4】
前記円柱状本体には、半円柱状切欠部が形成され、該半円柱状切欠部内に前記ホルダーを収納するホルダー収納室が外周面に開口して形成され、該半円柱状切欠部にはカバー体が該半円柱状切欠部の該ホルダー収納室を覆って取り付けられ、該カバー体には、該ホルダー収納室内の前記刃具の孔に連通するエアー通路が設けられたことを特徴とする請求項3記載のバリ取り工具。
【請求項5】
前記円柱状本体の外周部にエアー供給リングが回転自在に外嵌され、該エアー供給リングの内側位置にエアー供給用のエアー環状通路が形成され、該エアー供給リングには、外周部にエアー配管の接続部が設けられ、該エアー環状通路には、該円柱状本体内から該カバー体内に形成されエアー通路が接続されたことを特徴とする請求項4記載のバリ取り工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール盤等の回転軸に取り付けて使用され、ワークに加工された円形孔のバリを除去するバリ取り工具に関し、特に、刃具を出し入れして、ワークの円形孔の両側縁部等、必要な箇所のバリのみを除去することができるバリ取り工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、切削加工などにより、円柱状の中空部を有するワークに円形孔を形成した場合、円形孔の縁部(円形孔が貫通している場合、その両側縁部)にバリが発生する。
【0003】
このような円形孔の加工時に発生するバリを除去する工具として、バリ取り工具が、下記特許文献1により、提案されている。
【0004】
この従来のバリ取り工具は、円柱状のホルダー本体内に、複数のバリ取り用のチップを取り付けたブレードを、ホルダーの半径方向に進出・収納可能に嵌め込み、チップを円柱状のホルダー本体から外周方向に進出するように付勢するコイルばねが設けられ、調整ボルトによりチップの突き出し長を調整するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−205706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の上記バリ取り工具は、調整ボルトによりチップの突き出し長を調整するように構成され、ワーク内の円柱状の中空部の内径に合わせて、チップの突き出し長を予め調整して使用されるが、例えば、ワークに貫通孔を加工した際、貫通孔の両側縁部に発生するバリを除去するために、一工程(ワンパス)でバリ取りを行えることが望ましい。
【0007】
そこで、上記バリ取り工具を使用して、ワークの貫通孔の両側縁部に発生したバリを除去する場合、ワークの貫通孔の両側縁部に発生したバリは、貫通孔の内径より外側に発生するため、貫通孔の内径より大径幅にチップを突き出すように調整して、バリ取り加工を行うこととなる。
【0008】
しかし、このような条件でバリ取り加工を行うと、バリ取り工具が回転しながら、ワークの貫通孔内に進入し、そのまま反対側の端部まで進み、その縁部のバリを除去することとなる。このために、バリは貫通孔の両側縁部のみに発生するにも拘わらず、ワークの貫通孔の内面にチップが強く接触することから、ワークの貫通孔内面を傷付けやすいという課題があった。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、ワーク貫通孔の内面などのワーク表面に傷を付けずに、必要な箇所のみのバリを除去することができるバリ取り工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るバリ取り工具は、回転軸に装着され、軸の回りで回転する円柱状本体を有し、加工されたワークの貫通孔等に回転しながら挿入され、該貫通孔等の周縁部の複数個所に発生したバリを除去するバリ取り工具において、
該円柱状本体内にホルダー収納室が該円柱状本体の外周面に開口して形成され、該ホルダー収納室にホルダーが該円柱状本体の軸と直角方向に摺動可能に収納され、該ホルダーには刃具が先端部を側方に突き出して取り付けられ、
該円柱状本体の外周部の一部に、エアー供給リングが該円柱状本体の回転を許容して外嵌され、該エアー供給リングの内側に形成されたエアー環状通路がエアー通路を通して該ホルダー収納室に連通し、エアー供給リングを通して供給される圧力空気が該ホルダー収納室に供給されたとき、該ホルダーが該刃具の先端部を突き出す方向に摺動することを特徴とする。
【0011】
この発明のバリ取り工具によれば、ワークのバリ取りを行う場合、円柱状本体を回転させながら軸方向に移動させ、ワークの貫通孔等に円柱状本体を挿入していくが、このとき、バリの発生している箇所(例えば貫通孔の両側縁部)のみで、圧力空気をエアー供給リングに供給すれば、その箇所でホルダーが刃具を外周部に押し出すように作用するため、刃具がバリに接触してバリのみを除去し、圧力空気の供給を停止する、バリのない箇所では、ホルダーが刃具を戻すように移動するため、ワークの貫通孔等の表面に実質的に傷付けることなく、バリ取りを行うことができる。
【0012】
ここで、上記バリ取り工具において、上記ホルダー収納室内のホルダーには、
上記刃具を収納する刃具収納室が設けられ、該刃具収納室が該刃具の周囲に圧力空気を供給するように
形成され、上記エアー供給リングを通り前記エアー通路を通して供給される圧力空気が該ホルダー収納室に入り、該刃具の周囲の隙間から空気が噴出するとともに、該ホルダーの隙間から空気が噴出するように形成することが好ましい。これによれば、エアー供給リングを通して圧力空気を供給し、刃具を突出させてバリ取りを行うとき、
刃具の周囲の隙間から空気が噴出するとともに、ホルダーの隙間から空気が噴出するので、刃具の周辺に侵入しやすいバリを吹き飛ばし、バリ屑が刃具の周辺に溜まる不具合を防止することができる。
【0013】
また、上記刃具には孔が設けられると共に、該孔に連通して該刃具収納室内の該ホルダー側壁に孔が設けられ、エアー通路が該刃具の孔に向けて圧力空気を供給するように構成することが好ましい。
【0014】
また、上記円柱状本体には、半円柱状切欠部が形成され、該半円柱状切欠部内に前記ホルダーを収納するホルダー収納室が外周面に開口して形成され、該半円柱状切欠部にはカバー体が該半円柱状切欠部の該ホルダー収納室を覆って取り付けられ、該カバー体には、該ホルダー収納室内の前記刃具の孔に連通するエアー通路を設けることが好ましい。
【0015】
また、上記円柱状本体の外周部にエアー供給リングが回転自在に外嵌され、該エアー供給リングの内側位置にエアー供給用のエアー環状通路が形成され、該エアー供給リングには、外周部にエアー配管の接続部が設けられ、該エアー環状通路には、該円柱状本体内から該カバー体内に形成されエアー通路を接続することが好ましい。
【0016】
この発明によれば、簡単な構造により、円柱状本体の外周部にエアー供給リングを回転自在に取り付けてバリ取り工具を構成し、円柱状本体を回転させながら、必要なときに、エアー配管、エアー環状通路、エアー通路を通して、ホルダー収納室内に圧力空気を供給することができる。これにより、刃具を保持するホルダーがその一側面に圧力空気を受けて外側に摺動するため、必要な部位でのみ圧力空気を供給して、刃具を突き出すように摺動させ、そのエッジ部をワークのバリに接触させ、バリ取りを行うようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバリ取り工具によれば、ホルダー収納室に圧力空気を供給するのみの簡単な構造により、ワーク貫通孔の内面などのワーク表面に傷を付けずに、必要な箇所のみのバリを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態を示すバリ取り工具の正面図である。
【
図4】刃具を取り付けたホルダーとカバー体の分解斜視図である。
【
図5】ホルダーを背面側から見た拡大斜視図である。
【
図6】バリ取り工具の使用状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。このバリ取り工具は、概略的には、ボール盤等の回転軸に装着される、軸の回りで回転する円柱状本体1を有し、加工されたワークWの加工穴Wh(貫通孔)に回転しながら挿入され、加工穴Whの周縁部の複数個所に発生したバリを除去するバリ取り工具である。
【0020】
図3に示すように、円柱状本体1は、上部にシャンク部11を備え、シャンク部11をボール盤等の回転軸のチャック部に挿入し、取付可能となっている。シャンク部11の下側に、フランジ部12が設けられ、そのフランジ部12の下側に環状溝がエアー環状通路7として形成され、そのエアー環状通路7の下側にフランジ部13が設けられる。
【0021】
エアーを供給するためのエアー供給リング6は、このフランジ部12とフランジ部13間のエアー環状通路7を覆うように、且つ円柱状本体1の回転を許容して装着される。エアー供給リング6には、エアー配管18の接続部19を接続するためのエアー管接続部61が設けられ、エアー管接続部61を通して供給される圧力空気をエアー環状通路7に送るようになっている。エアー環状通路7の一部には、円柱状本体1内に形成されたエアー通路8が接続され、エアー環状通路7から供給される圧力空気は、エアー通路8及び後述のカバー体2内のエアー通路21を通り、下方のホルダー収納室3内に供給される。
【0022】
エアー供給リング6は、
図1のように、円柱状本体1の上部に上から挿入され、その上から固定リング9を嵌入し、回転自在の状態で、つまりエアー供給リング6を固定したとき、円柱状本体1の回転を許容する状態で、エアー供給リング6を固定リング9とフランジ部13との間で保持するよう、固定リング9はフランジ部12の外周部に固定ねじで固定される。
【0023】
図3,4のように、円柱状本体1の下部には、半円柱状切欠部10が切欠形成されており、半円柱状切欠部10には半円柱状のカバー体2が被せるように固定される。半円柱状切欠部10内の側面には、直方体形状のホルダー収納室3が形成されている。
【0024】
ホルダー収納室3は横方向の一方の側部が外周部に開口し、ホルダー収納室3内には、直方体形状のホルダー4が、横方向(円柱状本体1の軸と直角方向)に摺動可能に配設される。ホルダー収納室3には、上記エアー通路8、エアー通路21(カバー体2内)が連通接続され、エアー通路8、エアー通路21を通して上記エアー環状通路7にホルダー収納室3は連通し、エアー配管18を通して供給される圧力空気がホルダー収納室3に供給されるようになっている。また、ホルダー収納室3の側壁にガイド溝31が設けられ、ガイド溝31には、ホルダー4の背面に突設されたガイドピン42が挿入され、ホルダー4がホルダー収納室3内を本体の軸と直角方向(水平横方向)に摺動する際のガイドとなっている。
【0025】
ホルダー収納室3内に、軸と直角方向に摺動可能に配設されるホルダー4には、刃具5用の刃具収納室41が右端部に形成され、刃具収納室41にはその右端に開口41aが設けてある。刃具5は正方形(菱形)の平面を有した板状に、超硬金属により形成され、その角部(エッジ部)でバリを除去するようになっており、刃具収納室41に収納された刃具5は、
図4に示すように、そのエッジ部を開口41aから外周部に僅かに突出させて収納される。
【0026】
刃具5の中央には、円形の孔5aが形成され、さらに、刃具収納室41における、その孔5aに対応した位置に孔41bが形成され、カバー体2のエアー通路21から刃具収納室41内に圧力空気が供給されたとき、空気が孔5aから孔41bを通り、ホルダー収納室3の内側面にも侵入可能な構造となっている。
【0027】
ホルダー収納室3の右側面は開口しているため、刃具5を刃具収納室41に収納したホルダー4をホルダー収納室3に収納したとき、刃具5のエッジ部はホルダー4の左右方向への摺動(ガイド溝31とガイドピン42に嵌合範囲内の摺動)に応じて、突き出し状態と収納状態をとることができる。
【0028】
刃具5を刃具収納室41に収納したホルダー4をホルダー収納室3には、正面側から半円柱状のカバー体2が、半円柱状切欠部10の内側に、その切欠部を覆うように取り付けられる。カバー体2には、
図3,4に示すように、縦方向にエアー通路21が形成され、エアー通路21は上端から内側中央のエアー溜り22まで連通している。このエアー溜り22は、半円柱状切欠部10の内面の、刃具収納室41に対応した位置に形成され、エアー溜り22の側面は開口している。カバー体2は、刃具5を刃具収納室41に収納したホルダー4をホルダー収納室3に収納した状態で、半円柱状切欠部10に被せられ、2本の固定ねじ24により円柱状本体1に対し固定される。カバー体2には、固定ねじ24を挿入するための取付孔23が設けられている。
【0029】
カバー体2を取り付けた状態で、エアー通路21を通して供給される圧力空気は、エアー溜り22を介して刃具収納室41内に供給され、刃具5の孔5aから刃具収納室41の孔41bを通り、ホルダー収納室3内に入り、さらに、刃具5の周囲の隙間から、開口41a及びエアー溜り22の開口を通して、外側に空気が噴出するようになっている。
【0030】
図3,4に示すように、ホルダー収納室3の内壁の中央に、長孔状のガイド溝31が形成され、上記の如く、このガイド溝31にはホルダー4の背面に突設されたガイドピン42が挿入され、ガイドピン42とガイド溝31の嵌合により、ホルダー4の水平方向の摺動が所定の範囲に規制される。
【0031】
上記のように、エアー通路8からエアー通路21を通して供給される圧力空気は、刃具5の孔5aから刃具収納室41の孔41bを通り、ホルダー収納室3の内側に入り、さらに、その空気がホルダー収納室3の奥部、つまりホルダー4の左側面側に侵入する構造のため、エアー供給リング6を通して圧力空気がホルダー収納室3に供給されると、ホルダー4は、所定の長さだけ摺動し、刃具5の先端部が外周側に突き出る。
【0032】
一方、圧力空気がホルダー収納室3に供給されない状態で、刃具5を備えたホルダー4は、僅かな外力で摺動可能となっているので、刃具5がワークから収納側への荷重を受けたとき、刃具5を容易に引き戻す方向に移動するようになっている。これにより、刃具5を突出状態から収納状態に戻るために、特別な機構を必要とせず、構造を簡単化することができる。刃具5を収納状態に戻る場合、ワークに刃具5を接触させその反力で戻すことになるため、ワークと刃具5との接触は避けられないが、圧力空気の供給が停止され、ホルダー4の収納側への摺動は微小な外力で可能であるので、ワーク内面に問題となる傷を付けることはない。
【0033】
次に、上記構成のバリ取り工具の動作を説明する。
図6に示すように、バリ取り工具は、その上部のシャンク部11を、ボール盤等の回転軸の先端のチャック部Cに挿入して取り付けられ、ワークWの加工穴Wh(貫通孔)の周囲に発生したバリを除去するために使用される。
【0034】
ワークWには縦方向に加工穴Whが切削加工され、その加工穴Whの縁部にバリが発生している。バリ取り工具の円柱状本体1は、その中心軸とワークWの加工穴Whの中心軸とが一致する位置にセットされる。
【0035】
回転軸の回転駆動により、バリ取り工具はその軸の回りで回転し、さらに、圧力空気がエアー配管18を通して供給されると、圧力空気は、エアー供給リング6の内側のエアー環状通路7からエアー通路8、エアー通路21を通り、ホルダー収納室3内に送られる。
【0036】
これにより、ホルダー収納室3の奥部に圧力空気が回り込み、その圧力を左側面で受けたホルダー4が、開放端に保持する刃具5を外側に突き出す方向に、所定の長さだけ摺動し、円柱状本体1は、刃具5のエッジ部が
図1のように突き出した状態で回転する。その状態で、回転軸の下降によって、円柱状本体1の下部外周面に突出した刃具5が回転しながら下降し、ワークWの加工穴Whに生じたバリに、刃具5のエッジ部が接触する。このとき、ホルダー4は圧力空気を受けて刃具5を突出した状態で定位置に保持され、バリが刃具5のエッジ部に当って除去される。
【0037】
刃具5が回転しながらバリを除去する際、除去されたバリ屑が刃具5と刃具収納室41との隙間、或いはホルダー収納室3の隙間に侵入して溜まりやすい。しかし、圧力空気がエアー通路21から刃具5の孔5aを通って供給されるので、刃具5の周囲の隙間から外側に空気が噴出することとなり、バリ屑がその隙間に溜まることは防止される。また、同様に、刃具収納室41の孔41bからホルダー収納室3内に入った空気がホルダー4の隙間から外側に噴出するので、バリ屑がその隙間に溜まることは防止される。
【0038】
そして、ワークWの加工穴Whの上部のバリが除去されると、エアー配管18からの圧力空気の供給は一端停止し、その状態で、回転軸が下降し、円柱状本体1の刃具5が加工穴Wh内を通過する。このとき、刃具5の先端がワークWの内面から反力を受けることにより、ホルダー4はホルダー収納室3内の収納位置に戻り、刃具5は外周部から内側に引き戻される。このとき、ホルダー4は非常に小さい反力で戻されるため、刃具5のエッジ部がワークWの内面に接触したとしても、問題となる傷が付くことはない。
【0039】
この状態で、バリ取り工具が下降し、刃具5がワークWの加工穴Whの下側の縁部に達したとき、エアー配管18から圧力空気が再びホルダー収納室3内に供給され、これにより、ホルダー4が再び
図6の右方向に摺動し、刃具5のエッジ部が外側に突き出した状態となる。そして、上記と同様に、刃具5のエッジ部が突き出した状態で円柱状本体1が回転するため、ワークWの加工穴Whの下縁部に生じたバリに刃具5のエッジ部が接触し、バリが除去される。
【0040】
このように、ワークWのバリ取りを行う場合、円柱状本体1を回転させながら軸方向に移動させ、ワークWの加工穴Whに円柱状本体1を挿入していくが、このとき、バリの発生している縁部等の箇所のみで、圧力空気をエアー供給リング6に供給すれば、その箇所でホルダー4が刃具5を外周部に押し出すように作用するため、刃具5がバリに接触してバリのみを除去し、圧力空気の供給を停止する、バリのない箇所では、ホルダー4が刃具5を戻すように移動するため、実質的にワークWの加工穴Whの表面に傷付けることなく、バリ取りを行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
1 円柱状本体
2 カバー体
3 ホルダー収納室
4 ホルダー
5 刃具
5a 孔
6 エアー供給リング
7 エアー環状通路
8 エアー通路
9 固定リング
10 半円柱状切欠部
11 シャンク部
12 フランジ部
13 フランジ部
18 エアー配管
19 接続部
21 エアー通路
23 取付孔
31 ガイド溝
41 刃具収納室
41a 開口
41b 孔
42 ガイドピン
61 エアー管接続部