(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繊維集合体に高吸収性ポリマー粒子を混入してなる吸収体を包装シートで包装してなる吸収要素と、この吸収要素の表側を覆う透液性トップシートと、吸収要素の裏側を覆う液不透過性シートとを備えた使い捨ておむつにおいて、
前記包装シートは、少なくとも吸収体の表側に位置する領域に、前記高吸収性ポリマー粒子の吸収前の平均粒径より直径が大きい透過孔を多数有しており、
前記包装シートと前記吸収体の表面との間に、前記包装シートにおける前記透過孔を裏面側から覆う水解性又は水溶性のカバー層が介在されており、
前記高吸収性ポリマー粒子が排泄物の液分の吸収により膨張してその平均粒径が前記包装シートの透過孔の直径よりも大径となりうる、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
前記透過孔の直径が106μmより大きく、前記包装シートにおける前記吸収体の表側に位置する領域の面積に対する当該領域内の前記透過孔の総面積の割合が5%以上、90%以下である、請求項2記載の使い捨ておむつ。
前記カバー層が、JIS P 4501−1993に準じて測定されるほぐれやすさが100秒以内の水解紙からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
前記カバー層も、前記高吸収性ポリマー粒子の吸収前の平均粒径より直径が大きい透過孔を多数有するとともに、このカバー層の透過孔と、前記包装シートの透過孔とが重ならないように配置されており、前記高吸収性ポリマー粒子が排泄物の液分の吸収により膨張してその平均粒径が前記カバー層の透過孔の直径よりも大径となりうる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸収対象が泥状便や水様便における粘性液分のような粘性液の場合は、吸収速度が遅く、おむつ表面にある程度長く残存するため、漏れ易いという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、粘性液の吸収性を向上させた使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は粘性液の吸収性について鋭意研究した結果、吸収体を包む包装シートとして殆ど多くの製品で使用されているクレープ紙が、吸収体への粘性液の吸収を妨げているとの知見を得た。しかし、包装シートの粘性液の透過性を向上させると、吸収体に含まれる高吸収性ポリマー粒子が包装シートを通過しておむつ表面上に漏れ出てしまうという新たな問題が発生する。以下に述べる本発明は、このような知見に基づくものである。
<請求項1記載の発明>
繊維集合体に高吸収性ポリマー粒子を混入してなる吸収体を包装シートで包装してなる吸収要素と、この吸収要素の表側を覆う透液性トップシートと、吸収要素の裏側を覆う液不透過性シートとを備えた使い捨ておむつにおいて、
前記包装シートは、少なくとも吸収体の表側に位置する領域に、前記高吸収性ポリマー粒子の吸収前の平均粒径より直径が大きい透過孔を多数有しており、
前記包装シートと前記吸収体の表面との間に、前記包装シートにおける前記透過孔を裏面側から覆う水解性又は水溶性のカバー層が介在されて
おり、
前記高吸収性ポリマー粒子が排泄物の液分の吸収により膨張してその平均粒径が前記包装シートの透過孔の直径よりも大径となりうる、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【0007】
(作用効果)
本発明では、包装シートとして比較的大径の透過孔を有するものを採用しているため、包装シート内への粘性液の透過速度が顕著に向上する。また単にそれだけでは、高吸収性ポリマー粒子が包装シートを通過しておむつ表面上に漏れ出るおそれがあるが、本発明では水解性又は水溶性のカバー層により透過孔が裏側から覆われているため、吸収前の高吸収性ポリマー粒子はカバー層により遮断され、透過孔からは漏出しない。さらに、粘性液の吸収時にはカバー層が水解又は溶解し、透過孔から吸収体への粘性液の吸収が促進される。この際、カバー層が水解又は溶解しても、その付近の高吸収性ポリマー粒子は吸収により透過孔よりも大径に膨張しているため、透過孔を介して包装シート外に漏出するおそれはない。よって、高吸収性ポリマー粒子の漏出を防止しつつ粘性液の吸収性を向上させることができる。
【0008】
なお、未吸収時の高吸収性ポリマー粒子の平均粒径は、重量基準粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。この場合における重量基準粒度分布は、JIS Z8815−1994に準拠して測定される。すなわち、内径150mm、深さ45mmの710μm、500μm、300μm、150μm及び106μmの目開きのふるいを、目開きの狭いふるいを下にして重ね、一番上の最も目開きの広い710μmのふるいの上に、測定試料50gを入れ、ふるい振動機にて10分間ふるい、各ふるいの上に残った測定試料の重量を測定し、最初の測定試料の重量に基づく各ふるいの上に残った測定試料の重量%を求めることによって測定される。また、吸収後の粒径は、粒子画像分析装置(Malvern社製モフォロギ G3:静止画像解析)等の静止画像解析技術を用い、代表径を長軸最大径として得られる個数基準粒度分布における、積算値50%での粒径を意味する。
【0009】
<請求項2記載の発明>
前記包装シートはクレープ紙からなり、このクレープ紙に前記透過孔が穿孔されている、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【0010】
(作用効果)
吸収体を包む包装シートとしてはクレープ紙が安価であり、吸水性も好ましく、汎用されているが、そのままでは粘性液の吸収性に劣る。よって、このようなクレープ紙に透過孔を穿孔加工し、本発明の包装シートとすることが望ましい。
【0011】
<請求項3記載の発明>
前記透過孔の直径が106μmより大きく、前記包装シートにおける前記吸収体の表側に位置する領域の面積に対する当該領域内の前記透過孔の総面積の割合が5%以上、90%以下である、請求項2記載の使い捨ておむつ。
【0012】
(作用効果)
クレープ紙を用いる場合の透過孔の直径や数は適宜定めることができるが、通常の場合この範囲内とするのが好ましい。なお、透過孔の直径は孔が真円以外の場合は長径を意味し、表面の顕微鏡写真を用いて定規で測定する。
【0013】
<請求項4記載の発明>
前記包装シートは不織布からなり、この不織布の繊維間隙が前記透過孔をなしている、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【0014】
(作用効果)
包装シートとして不織布を用いると、穿孔加工を施さなくても粘性液に対して十分な透過性を得ることができる。
【0015】
<請求項5記載の発明>
前記カバー層が、JIS P 4501−1993に準じて測定されるほぐれやすさが100秒以内の水解紙からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0016】
(作用効果)
このような水解紙を用いた場合、粘性液の吸収時に水解(つまり繊維が分離し粘性液中に分散する)ことにより、繊維が溶けてなくなるわけではないが、粘性液の遮断性は低下又は無くなり、透過孔から吸収体への粘性液の吸収が促進される。このような水解紙は、トイレットペーパーに代表され、安価で利用しやすいという利点がある。
【0017】
<請求項6記載の発明>
前記カバー層が水溶性膜からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0018】
(作用効果)
このような水溶性膜を採用した場合、粘性液の吸収時に粘性液に溶解して無くなるため、透過孔から吸収体への粘性液の吸収が効果的に促進される。
【0019】
<請求項7記載の発明>
前記カバー層も、前記高吸収性ポリマー粒子の吸収前の平均粒径より直径が大きい透過孔を多数有するとともに、このカバー層の透過孔と、前記包装シートの透過孔とが重ならないように配置されて
おり、前記高吸収性ポリマー粒子が排泄物の液分の吸収により膨張してその平均粒径が前記カバー層の透過孔の直径よりも大径となりうる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0020】
(作用効果)
このようにカバー層にも透過孔を設けて粘性液の透過性を向上することで、カバー層の水解又は溶解前(つまり吸収初期)における粘性液の吸収を促進することができ、また包装シート及びカバー層の各透過孔の位置をずらすことにより高吸収性ポリマー粒子が透過孔を介して漏出するのを効果的に防止することができる。なお、カバー層が水溶性の場合より、水解性の場合の方が粘性液の吸収促進が図られ難いという点では、カバー層に透過孔を設けることは、カバー層が水解性の場合に特に適しているといえる。
【0021】
<請求項8記載の発明>
前記高吸収性ポリマー粒子は、未吸収時の粒径が106μm以上のものが全体の99重量%以上であり、
未吸収時の平均粒径が250〜500μmのものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0022】
(作用効果)
本発明では、このような粒度の高吸収性ポリマー粒子を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
以上のとおり、本発明によれば、粘性液の吸収性を向上させた使い捨ておむつとなる、等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
図1〜
図7はテープタイプ使い捨ておむつの一例を示しており、図中の符号Xはファスニングテープを除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示しており、断面図中の点模様部分はホットメルト接着剤の塗布部分を示している。
【0026】
このテープタイプ使い捨ておむつは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートとの間に吸収要素50が介在する部分である吸収性本体部10と、この吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収要素50を有しない部分である腹側エンドフラップ部EF及び背側エンドフラップ部EFとを有するものである。
【0027】
また、このテープタイプ使い捨ておむつは、吸収体の側縁よりも側方に延出する一対のサイドフラップ部SF,SFを有しており、背側におけるサイドフラップ部SF,SFにはファスニングテープ13がそれぞれ設けられている。
【0028】
より詳細には、吸収性本体部10ならびに各サイドフラップ部SF,SFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収性本体部10においては、外装シート12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収要素50、中間シート40、およびトップシート30がこの順に積層されている。トップシート30および液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収要素50よりも前後方向および幅方向において若干大きい寸法を有しており、トップシート30における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部と、液不透過性シート11における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより固着されている。また液不透過性シート11は透湿性のポリエチレンフィルム等からなり、トップシート30よりも若干幅広に形成されている。
【0029】
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)する側部立体ギャザー60,60が設けられており、この側部立体ギャザー60,60を形成するギャザーシート62,62が、トップシート30の両側部上から各サイドフラップ部SF,SFの内面までの範囲に固着されている。
【0030】
以下、各部の素材および特徴部分について順に説明する。
(外装シート)
外装シート12は吸収要素50を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。
【0031】
外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m
2、特に15〜30g/m
2のものが望ましい。
【0032】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0033】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0034】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0035】
(中間シート)
トップシート30を透過した排泄物を吸収体へ移動させ、逆戻りを防ぐために、トップシート30と吸収要素50との間に中間シート(セカンドシートともいわれる)40を設けることができる。この中間シート40は、排泄物を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した排泄物の吸収体からの逆戻りを防止し、トップシート30表面を肌触りを良くするものである。中間シート40は省略することもできる。
【0036】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材を用いることができる。中間シート40はトップシート30に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート40の素材はトップシート30と同程度の融点をもつものが好ましい。また、便中の固形分を透過させることを考慮するならば中間シート40に用いる繊維の繊度は5.0〜7.0dtexであるのが好ましいが、トップシート30における液残りが多くなる。これに対して、中間シート40に用いる繊維の繊度が1.0〜2.0dtexであると、トップシート30の液残りは発生し難いが、便の固形分が透過し難くなる。よって、中間シート40に用いる不織布の繊維は繊度が2.0〜5.0dtex程度とするのが好ましい。
【0037】
図示の形態の中間シート40は、吸収要素50の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0038】
(側部立体ギャザー)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側に、使用面側に突出(起立)する側部立体ギャザー60、60を設けるのは好ましい。
【0039】
この側部立体ギャザー60は、実質的に幅方向に連続するギャザーシート62と、このギャザーシート62に前後方向に沿って伸張状態で固定された細長状弾性伸縮部材63とにより構成されている。このギャザーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、
図1及び
図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0040】
ギャザーシート62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、液不透過性シート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。
【0041】
脚周りにおいては、側部立体ギャザー60の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性伸縮部材63の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして弾性伸縮部材63の収縮力が作用するので、弾性伸縮部材63の収縮力により側部立体ギャザー60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0042】
図示形態と異なり、ギャザーシート62の幅方向内側の部分における前後方向両端部を、幅方向外側の部分から幅方向内側に延在する基端側部分とこの基端側部分の幅方向中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
【0043】
(平面ギャザー)
各サイドフラップ部SF,SFには、ギャザーシート62の固着部分のうち固着始端近傍の幅方向外側において、ギャザーシート62と液不透過性シート11との間に、糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材64が前後方向に沿って伸長された状態で固定されており、これにより各サイドフラップ部SF,SFの脚周り部分が平面ギャザー80として構成されている。脚周り弾性伸縮部材64はサイドフラップ部SFにおける液不透過性シート11と外装シート12との間に配置することもできる。脚周り弾性伸縮部材64は、図示例のように各側で複数本設ける他、各側に1本のみ設けることもできる。
【0044】
(ファスニングテープ)
図1、
図2及び
図5に示されるように、ファスニングテープ13は、おむつの側部に固定されたテープ取付部13C、及びこのテープ取付部13Cから突出するテープ本体部13Bをなすシート基材と、このシート基材におけるテープ本体部13Bの幅方向中間部に設けられた、腹側に対する係止部13Aとを有し、この係止部13Aより先端側が摘み部とされたものである。ファスニングテープ13のテープ取付部13Cは、サイドフラップ部における内側層をなすギャザーシート62及び外側層をなす外装シート12間に挟まれ、かつホットメルト接着剤により両シート62,12に接着されている。また、係止部13Aはシート基材に接着剤により剥離不能に接合されている。
【0045】
乳幼児用おむつにおいては、テープ取付部13Cの寸法のうち、おむつの幅方向の長さX1は10〜50mm、特に20〜40mmであるのが好ましく、前後方向長さY1は、20〜100mm、特に40〜80mmであるのが好ましい。また、テープ本体部13Bの寸法のうち、おむつの幅方向の長さは30〜80mm、特に40〜60mmであるのが好ましく、前後方向の長さ(高さ)は20〜70mm、特に25〜50mmであるのが好ましい。なお、ファスニングテープ13の一部または全部が例えば略テーパ形状をなし、前後方向長さや幅方向長さが一定でない場合は、上記数値範囲は平均値にて定める。ファスニングテープ13の形状は、矩形形状などの左右対称形状でもよいが、幅広の取り付け部分と細長状の先端側部分からなる凸型形状であると、先端側部分の摘み部が摘みやすく、かつ左右の基部間の張力が広範囲に作用するため、好ましい。
【0046】
係止部13Aとしては、メカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(雄材)が好適である。フック材は、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。もちろん、ファスニングテープ13の係止部として粘着材層を設けることもできる。
【0047】
また、テープ取付部からテープ本体部までを形成するシート基材としては、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材を用いることができるが、繊度1.0〜3.5dtex、目付け20〜100g/m
2、厚み1mm以下のスパンボンド不織布、エアスルー不織布、又はスパンレース不織布が好ましい。
【0048】
おむつの装着に際しては、背側のサイドフラップ部SFを腹側のサイドフラップ部SFの外側に重ねた状態で、ファスニングテープを腹側F外面の適所に係止する。ファスニングテープ13の係止箇所の位置及び寸法は任意に定めることができる。乳幼児用おむつにおいては、係止箇所は、前後方向20〜80mm、幅方向150〜300mmの矩形範囲とし、その上端縁と腹側上縁との高さ方向離間距離を0〜60mm、特に20〜50mmとし、かつ製品の幅方向中央とするのが好ましい。
【0049】
ファスニングテープ13は、背側のエンドフラップ部EFと吸収要素50の境界線上にファスニングテープ13のテープ取付部13Cが重なるように取り付けられていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ13の取り付け部分間に働く張力により、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。また、ファスニングテープ13の取り付け部分が、おむつの背側端部(後端部)と離れすぎていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ13のテープ取付部13C間に働く張力がおむつの背側端部にまで及ばないため、おむつの背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすい。従って、背側のエンドフラップ部EFの前後方向長さは、ファスニングテープ13のテープ取付部13Cの前後方向長さと同じか又は短いことが好ましい。
【0050】
(ターゲットシート)
腹側Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所には、係止を容易にするためのターゲット有するターゲットシート12Tを設けるのが好ましい。ターゲットシート12Tは、係止部がフック材13Aの場合、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなるシート基材の表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなるシート基材の表面に剥離処理を施したものを用いることができる。 また、腹側Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示形態の外装シート12が不織布からなる場合であって、ファスニングテープ13の係止部がフック材13Aの場合には、ターゲットシート12Tを省略し、フック材13Aを外装シート12の不織布に絡ませて係止することもできる。この場合、ターゲットシート12Tを外装シート12と液不透過性シート11との間に設けてもよい。
【0051】
(エンドフラップ部)
エンドフラップ部は、吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収要素50を有しない部分であり、前側の延出部分が腹側エンドフラップ部EFであり、後側の延出部分が背側エンドフラップ部EFである。
【0052】
背側エンドフラップEFの前後方向長さは、前述の理由によりファスニングテープ13の取り付け部分の前後方向長さと同じか短い寸法とすることが好ましく、また、おむつ背側端部と吸収要素50とが近接しすぎると、吸収要素50の厚みとコシによりおむつ背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすいため、10mm以上とすることが好ましい。
【0053】
腹側エンドフラップ部EF及び背側エンドフラップ部EFの前後方向長さは、おむつ全体の前後方向長さLの5〜20%程度とするのが好ましく、乳幼児用おむつにおいては、10〜60mm、特に20〜50mmとするのが適当である。
【0054】
(背側伸縮シート)
図示形態では、両ファスニングテープ13間に、幅方向に弾性伸縮する帯状の背側伸縮シート70が設けられ、おむつ背側部におけるフィット性を向上させている。背側伸縮シート70の両端部は両ファスニングテープ13の取り付け部分と重なる部位まで延在されているのが好ましいが、幅方向中央側に離間していても良い。背側伸縮シート70の前後方向寸法は、ファスニングテープ13の取り付け部分の前後方向寸法と概ね同じにするのが適当であるが、±20%程度の寸法差はあってもよい。また、図示のように背側伸縮シート70が背側エンドフラップ部EFと吸収要素50の境界線と重なるように配置されていると、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。背側伸縮シート70は、ゴムシート等のシート状弾性部材を用いても良いが、通気性の観点から不織布や紙を用いるのが好ましい。この場合、伸縮不織布のような通気性を有するシート状弾性部材を用いることもできるが、
図5に示すように、二枚の不織布等のシート基材71をホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせるとともに、両シート基材71間に有孔のシート状、網状、細長状(糸状又は紐状等)等の弾性伸縮部材72を幅方向に沿って伸張した状態で固定したものが好適に用いられる。この場合におけるシート基材71としては、外装シート12と同様のものを用いることができる。弾性伸縮部材72の伸張率は150〜250%程度であるのが好ましい。また、弾性伸縮部材72として細長状(糸状又は紐状等)のものを用いる場合、太さ420〜1120dtexのものを3〜10mmの間隔72dで5〜15本程度設けるのが好ましい。
【0055】
また、図示のように弾性伸縮部材72の一部が吸収要素50を横断するように配置すると、吸収要素50のフィット性が向上するため好ましいが、この場合は、弾性伸縮部材72が吸収要素50と重なる部分の一部又は全部を、切断等の手段により収縮力が働かないようにすると、吸収要素50の背側端部が幅方向に縮まないため、フィット性がさらに向上する。
【0056】
なお、弾性伸縮部材72は、シートの長手方向(おむつの幅方向)にシート基材71の全長にわたって固定されていてもよいが、おむつ本体への取り付け時の縮みやめくれ防止のため、シートの前後方向(おむつの幅方向)端部の5〜20mm程度の範囲においては、収縮力が働かないように、または弾性伸縮部材72が存在しないようにするとよい。
【0057】
背側伸縮シート70は、図示形態では、液不透過性シート11の幅方向両側ではギャザーシート62と外装シート12との間に挟まれ、且つ液不透過性シート11と重なる部位では、液不透過性シート11と吸収要素50との間に挟まれるように設けられているが、液不透過性シート11と外装シート12との間に設けても良いし、外装シート12の外面に設けても良く、またトップシート30と吸収要素50との間に設けてもよい。また、背側伸縮シート70はトップシート30の上に設けても良く、この場合、液不透過性シート11の幅方向両側ではギャザーシート62の上に設けても良い。また、外装シート12を複数枚のシート基材を重ねて形成する場合には、背側伸縮シート70全体を、外装シート12のシート基材間に設けても良い。
【0058】
(吸収要素)
吸収要素50は、尿や軟便などの液を吸収保持する部分である。吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56を包む液透過性の包装シート58とを有している。吸収要素50は、その裏面においてホットメルト接着剤等の接着剤を介して液不透過性シート11の内面に接着することができる。
【0059】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m
2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m
2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0060】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56は、高吸収性ポリマー粒子を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
【0061】
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維の集合体を通り抜けて包装シート58上にある形態も排除されるものではない。
【0062】
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子は、この種の吸収性物品に使用される粒径のものをそのまま使用でき、平均粒径が1000μm以下、好ましくは未吸収時の粒径が106μm以上のものが全体の99重量%以上、特に150〜850μmのものが全体の99重量%以上であるのが望ましい。未吸収時の平均粒径は250〜500μm程度であるのが好ましい。また、高吸収性ポリマー粒子は吸収後の平均粒径が未吸収時の平均粒径の3倍以上、具体的には500μm以上であることが望ましい。なお、未吸収時及び吸収時の高吸収性ポリマー粒子の粒度分布及び平均粒径の定義は前述のとおりである。
【0063】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0064】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0065】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m
2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m
2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m
2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0066】
(吸収体の包装構造)
特徴的には、包装シート58は、少なくとも吸収体56の表側に位置する領域に、高吸収性ポリマー粒子の吸収前の平均粒径より直径が大きく、かつ高吸収性ポリマー粒子の吸収後の平均粒径より直径が小さい透過孔58hを多数有している。また、包装シート58と吸収体56の表面との間に、包装シート58における透過孔を裏面側から覆う水解性又は水溶性のカバー層59が介在されている。
【0067】
このように包装シート58として比較的大径の透過孔58hを有するものを採用すると、包装シート58内への粘性液の透過速度が顕著に向上する。また単にそれだけでは、高吸収性ポリマー粒子56pが包装シート58を通過しておむつ表面上に漏れ出るおそれがあるが、
図8(a)に示すように、水解性又は水溶性のカバー層59により透過孔58hが裏側から覆われているため、吸収前の高吸収性ポリマー粒子56pはカバー層59により遮断され、透過孔58hからは漏出しない。さらに、
図9(a)に示すように、粘性液の吸収時にはカバー層59が水解又は溶解し、透過孔58hから吸収体56への粘性液の吸収が促進される。この際、カバー層59が水解又は溶解しても、その付近の高吸収性ポリマー粒子56pは吸収により透過孔58hよりも大径に膨張しているため、透過孔58hを介して包装シート58外に漏出するおそれはない。よって、高吸収性ポリマー粒子56pの漏出を防止しつつ粘性液の吸収性を向上させることができる。
【0068】
透過孔58hは包装シート58における吸収体56の表側に位置する領域に設けられている限り、吸収体56の表側に位置する領域の一部、例えば肛門対向部を含む一部等のように前後方向中間の一部のみとしたり、吸収体56の表側に位置する領域全体を含む包装シート58の一部の領域のみ(
図9参照)としたり、あるいは包装シート58全体としたりすることができる。
【0069】
包装シート58の素材としては、安価で吸収性に富む点では薄葉紙、特にクレープ紙を用いることが好ましいが、その場合、上記条件の透過孔58hを有しないため穿孔加工による透過孔58hを形成する。このような穿孔加工は、外周面に多数の針状突起を所定パターンで配列した針ロールと、この針ロールと対向する受けロールとの間にクレープ紙を通すことにより実施することができる。この場合における透過孔58hの直径は適宜定めることができるが、106μm以上であることが好ましく、特に150〜250μmであるのが好ましい。また、包装シート58における吸収体56の表側に位置する領域の面積に対する当該領域内の透過孔58hの総面積の割合が5%以上、90%以下であるのが好ましい。なお、透過孔58hの直径は孔が真円以外の場合は長径を意味し、表面の顕微鏡写真を用いて定規で測定する。
【0070】
包装シート58の素材としては、不織布を用い、その繊維間隙を本発明の透過孔58hとすることができ、穿孔加工を施さなくても粘性液に対して十分な透過性を得ることができる。この場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。また、不織布の繊維の繊度等は適宜定めることができるが、繊度は0.5〜5dtex程度、特に2dtex以下であるのが好ましく、繊維目付けは5〜40g/m
2程度、特に10〜30g/m
2程度であるのが好ましく、厚みは0.05〜7mm程度、特に0.3〜3mm程度であるのが好ましい。また厚みは、KES(Kawabata Evaluation SYSTEM)の圧縮試験機を用いて50gf/cm
2の加重下で測定される値を意味する。
【0071】
包装シート58による包装形態としては、
図9(a)に示すように、一枚の包装シート58を吸収体56の裏側の幅方向中間部から一方の側部、表側、他方の側部を経て吸収体56(
図9では省略している)の裏側に戻し、裏側の幅方向中間部で両側部を重ねた形態の他、
図9(b)(c)に示すように、一枚の包装シート58を吸収体56の表側の幅方向中間部から一方の側部、裏側、他方の側部を経て吸収体56の表側に戻し、表側の幅方向中間部で両側部を重ねた形態とすることもできる。また、図示しないが、吸収体56の上面及び側面を覆う部分と下面を覆う部分とを別々の包装シート58で構成したり、吸収体56の上面を覆う部分と側面及び下面を覆う部分とを別々の包装シート58で構成したりすることができ、この場合において各部の包装シート58を別々の素材で構成することもできる。
【0072】
他方、カバー層59は水解性又は水溶性の層であり、透過孔58hを覆いうる限り特に限定されないが、未吸収時の高吸収性ポリマー粒子56pの平均粒径よりも大きな透過孔58hを有しないものが望ましい。具体的には、水解性層としては、JIS P 4501−1993に準じて測定されるほぐれやすさが100秒以内の水解紙を好適に使用することができる。JIS P 8135−1998に準じて測定される前後方向の湿潤引張強度は0.69N/25mm以下が好ましい。このような水解紙を用いた場合、粘性液の吸収時に水解(つまり繊維が分離し粘性液中に分散する)ことにより、繊維が溶けてなくなるわけではないが、粘性液の遮断性は低下又は無くなり、透過孔58hから吸収体56への粘性液の吸収が促進される。このような水解紙は、トイレットペーパーに代表され、安価で利用しやすいという利点がある。
【0073】
カバー層59を水溶性層で構成する場合、水溶性層としては包装シート58と吸収体56との間に水溶性膜を介在させることが好ましい。水溶性膜を採用した場合、粘性液の吸収時に粘性液に溶解して無くなるため、透過孔58hから吸収体56への粘性液の吸収が効果的に促進される。このような水溶性膜としては、オブラートやポリビニルアルコールを原料とした水溶性フィルム等の他、水溶性塗料の塗膜等を用いることができる。この水溶性インクの例からも分かるように、水溶性膜は予め膜状に形成されたものを包装シート58と吸収体56との間に挟む他、包装シート58または吸収体56の表面に膜形成液を塗布することにより形成しても良い。
【0074】
カバー層59は、透過孔58hを覆うことができる限り、
図3等に示すように包装シート58における透過孔58hを有する領域のみに設けたり、
図10(a)に示すように、包装シート58の全体にわたるように、つまり包装シート58の全体が内貼りされるように設けたりすることもできる。また、カバー層59は、包装シート58と同様に、単一の層とする他、包装シート58の各部に対して別々の層を設けることもできる。さらにまた、一枚の水解性紙80を、
図9(c)に示すように、吸収体56の表側の一方の側縁から他方の側部、裏側、一方の側部を経て吸収体56の表側に戻し、表側の他方の側縁まで延在させ、この水解性紙80における吸収体56の表側で重なる部分のうち、裏側に位置する部分をカバー層59とするとともに、これ以外の領域を湿潤紙力増強剤等により水解性を無くす又は低下させて包装シート58とし、表側に位置する部分に透過孔58hを穿孔することも提案される。
【0075】
カバー層59を設けた場合、カバー層59の水解又は溶解前(つまり吸収初期)における粘性液の吸収が一時的に低下する。そこで、
図10(b)に示すように、カバー層59も、高吸収性ポリマー粒子56pの吸収前の平均粒径より直径が大きく、かつ高吸収性ポリマー粒子56pの吸収後の平均粒径より直径が小さい透過孔58hを多数有するものとし、このカバー層59の透過孔58hと、包装シート58の透過孔58hとが重ならないように配置することも提案する。このカバー層59における透過孔58hの直径や数、カバー層59における位置は、包装シート58におけるものと同様の範囲から適宜選択することができる。このようにカバー層59にも透過孔58hを設けて粘性液の透過性を向上することで、カバー層59の水解又は溶解前(つまり吸収初期)における粘性液の吸収を促進することができ、また包装シート58及びカバー層59の各透過孔58hの位置をずらすことにより高吸収性ポリマー粒子56pが透過孔58hを介して漏出するのを効果的に防止することができる。なお、カバー層59が水溶性の場合より、水解性の場合の方が粘性液の吸収促進が図られ難いという点では、カバー層59に透過孔58hを設けることは、カバー層59が水解性の場合に特に適しているといえる。
【実施例】
【0076】
図11(a)に示すように、吸収体56上に包装シート58、中間シート40、トップシート30を積層した従来型吸収構造と、
図11(b)に示すように、吸収体56上にカバー層59、直径500μmの透過孔58hが間隔を空けて、かつ包装シート58における吸収体56の表側に位置する領域の面積に対する当該領域内の透過孔58hの総面積の割合が6%となるように形成された包装シート58、中間シート40、トップシート30を積層した本発明に係る新型吸収構造とを作製し、粘性液の吸収比較試験を行った。なお、両構造においてシート間(吸収体56は非接着)はホットメルト接着剤(図中の点模様部分)を塗布量2.6g/m
2のスパイラル塗布により接合した。
【0077】
(使用素材)
使用素材は次のとおりであった。
・トップシート30
鞘ポリエチレン/芯ポリプロピレンのバイコンポーネント繊維、繊度1.7dtex、繊維目付20g/m
2、厚みは0.5mm程度である親水性エアスルー不織布。
・中間シート40
ポリエチレン、繊度2.0dtex、繊維目付22g/m
2、厚み0.4mmの親水性エアスルー不織布。
・包装シート58
坪量18g/m
2のクレープ紙。
・カバー層59
坪量15g/m
2の水解紙(市販の1プライ・トイレットペーパー)。
・吸収体56
パルプ32重量%及び高吸収性ポリマー粒子40重量%、クレープ16g/m
2、インタック60g/m
2をエアレイド法により成形したエアレイド吸収体56(278g/m
2、厚み10mm。
・高吸収性ポリマー粒子
150〜850μmのものが全体の99重量%以上、重量平均粒子径380μm、吸収後の平均粒径が500μm以上のもの。
・粘性液91
粘度100mPa・sの粘性液(和光堂社製の粉ミルク(商品名「はいはい」)30重量%、イオン水69重量%、カルボキシルメチルセルロース1重量%)
【0078】
(試験方法)
図11に示すように、トップシート30上に内径25mm、高さ100mmの注入筒90を立て、この注入筒90の上から注入筒内に粘性液91を10ミリリットルを入れ、注入直後に装着者の体の動きを再現するため注入筒90を幅方向に10mm程度の振幅で5往復揺らし、注入後5分間での吸収体56の吸収量を測定した。吸収量は、吸収前の吸収体56単体の重量を測定しておき、注入開始から5分経過した時に吸収体56を取り外して重量を測定し、後者から前者を差し引いて求めた。吸収量は3回測定し、平均を算出した。
【0079】
(試験結果)
試験結果を表1に示した。従来型吸収構造及び新型吸収構造のいずれにおいても、注入開始から5分間では全ての粘性液を吸収できなかったが、5分間における吸収量は新型吸収構造が従来型吸収構造よりも多くなった。このことから、新型吸収構造によれば粘性液の吸収が促進される、換言すれば吸収速度が向上することが判明した。
【0080】
【表1】
【0081】
<用語の説明>
用語「前後方向(縦方向)」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの腹側部分と背側部分を重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った際に幅方向と直交する方向を意味する。
【0082】
また、用語「伸長率」は自然長を100%としたときの値を意味する。