特許第5698213号(P5698213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5698213一体型電圧発生手段を備えた空気圧式モーターユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698213
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】一体型電圧発生手段を備えた空気圧式モーターユニット
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/00 20060101AFI20150319BHJP
   B25B 21/00 20060101ALI20150319BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   H02K11/00 R
   B25B21/00 C
   B25B21/00 530Z
   B25F5/00 D
   H02K11/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-501960(P2012-501960)
(86)(22)【出願日】2010年3月26日
(65)【公表番号】特表2012-522479(P2012-522479A)
(43)【公表日】2012年9月20日
(86)【国際出願番号】SE2010000075
(87)【国際公開番号】WO2010110717
(87)【国際公開日】20100930
【審査請求日】2013年3月21日
(31)【優先権主張番号】0900392-2
(32)【優先日】2009年3月27日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100088236
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 輝一
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,アンデルス,アーバン
【審査官】 安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−324120(JP,A)
【文献】 特開昭62−189944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/00
B25B 21/00
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(10)と、脈動する排気出口流量を発生する回転モーター(13)と、圧力空気入口通路(11)と、排気出口通路(12)と、実際のモーターの状態及び/又は動作パラメータ値に応じた信号を通信する電圧依存手段(32)と、前記電圧依存手段(32)に接続された電圧発生手段(34)とを備える空気圧式モーターユニットにおいて、
前記電圧発生手段(34)が、
排気出口通路(12)に配置され且つモーター(13)からの脈動する排気出口流量の圧力パルスに晒され、電圧を発生するように構成された圧電要素(35)と、
前記圧電要素(35)に接続され且つ前記電圧を電圧依存手段(32)に連通する電気回路(39)と、
を備えることを特徴とするモーターユニット。
【請求項2】
前記圧電要素(35)が、モーター(13)の一端部で堅固に固定され弾性的に屈曲可能で且つ反対の自由端部で可動な舌状の形状を有し、圧力パルスが前記舌状圧電要素(35)を中央静止位置から反対方向に揺動するよう作動させ、それよって交流電圧を発生させることを特徴とする請求項1に記載のモーターユニット。
【請求項3】
回転モーター(13)が、回転子(16)を備えたベーンモーター、シリンダー(17)及び2つの相対する端部壁(20、21)から構成され、シリンダー(17)が排気出口開口部(30)を1つ以上有し、前記1つ以上の排気出口開口部(30)のうち1つの開口部の反対側に前記圧電要素(35)を配置することを特徴とする請求項1または2に記載のモーターユニット。
【請求項4】
排気出口流量の圧力パルスが直接的にモーター回転子(16)の回転動作に関わって、前記圧電要素(35)で発生される交流電圧が、圧力パルスの周波数に及び従ってモーター回転子(16)の回転動作に一致する周波数を有することを特徴とする請求項1に記載のモーターユニット。
【請求項5】
電子動作監視ユニット(42)が、排気出口流量の圧力パルス数及び後続の電圧変動を介してモーター回転子(16)でカバーされた回転角度を計算するように設けられていることを特徴とする請求項4に記載のモーターユニット。
【請求項6】
回転モーター(13)が、一回転当り特定数の圧力パルスを発生させ、また動作監視ユニット(42)が、各時間単位で前記特定数の圧力パルスの倍数をカウントすることによって単位時間当りの回転数で回転子速度を計算するように設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載のモーターユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型の電圧発生器を有する空気圧式モーターユニットに関わるものである。特に本発明は、モーターが例えばベーンモーターのような脈動する排気出口流量を有する空気圧式モーターユニットに関わるものである。
【背景技術】
【0002】
上記種類の空気圧式モーターユニットは動力レンチ、グラインダーなどの空気圧式動力工具で際立っているが、製造工業でも頻繁に使用されている。多くの応用例では、モーター動作及び/又は実際のモーターユニットの状態の正確で確実な情報を得る必要がある。これは、好ましくは、モーター速度、電源オフなどのデータを得るための電動型動作検知手段及び/又は蓄積動作時間、モーター温度などを示す手段を使用することで達成される。このような動作及び状況検知手段はモーターユニット上の信号送信センサーからの信号に依存している。この種のセンサーを使用するには、電力が常時アクセス可能な電動工具には何ら問題はないが、空気圧式モーターユニットでセンサーを使用したりデータを転送したりするには、電圧が供給されず外部電源とのケーブル接続も介さず或いはモーターユニット自体に一体化された発生手段を備えることもなくしては、とりわけ不可能である。
【0003】
いくつかの応用例では、圧力空気導管と接続状態か或いは切り離されて通されたケーブルの使用は、モーターユニットに電力を供給するには現実的でなく適さない。これは、そのような応用例ではモーターユニット自体に一体化された電圧発生手段を備えなければならないことを意味している。モーターユニット動作パラメータ或いはモーターユニットの状態に関連する所定のデータは、モーターユニットに内蔵されて一体化された電圧発生手段を動力源としたトランシーバーを含むワイヤレス通信装置を介して遠隔システムに送信されてもよい。
【0004】
ケーブルを介して電力を供給するのに代わって、モーターユニットに内蔵電池を備えることもあるが、むしろ電池は場所を取りしかも十分に小型の電池では寿命が制限されてしまい、センサー及びワイヤレス通信装置を通電するのに必要な大きさのピーク電流を提供することができない。
【0005】
一体化された電圧発生手段を備えた空気圧式モーターユニットの例証は、米国特許第6,840,723号に記載されている。この公知のモーターユニットは、フライス工具スピンドルの一部を形成し、空気圧式タービンを備えている。空気圧式タービンは、電圧発生手段を形成するために、タービン回転子が据置型コイルと共動するよう配置された永久磁石を備えている。この装置で発生される電圧の大きさは速度依存であり、速度加減空気入口弁を作動するために使用される。
【0006】
このような従来の装置は、磁石を取付けるために回転子に特殊な設計を要求する点で、さらにコイルの位置はモーター回転子に相対して明確に定義された配列に制限されている点で、不利である。これは、モーターの設計は電圧発生装置の設計に非常に多くを依存していることを意味している。この公知の電圧発生装置のさらなる欠点は、永久磁石の導入容易度にある。そのような磁石は時間とともに力を失う傾向にあり、衝撃の結果として動作及び出力電圧の信頼性を低くしてしまう。磁石はまた鉄の粒子を引き付けて集め、モーターを詰まらせてモーター動作を害する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
米国特許第6,840,723号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、脈動する排気出口流量と簡潔で耐久性のある設計の電圧発生手段とを備えた回転モーターで構成される空気圧式モーターユニットを提供することにあり、電圧発生手段の位置は、モーター回転子に相対した所定の配列に制限されない。
【0009】
本発明の別の目的は、モーター回転子の回転動作を検知するのに有効な電圧発生手段を有する空気圧式モーターユニットを提供すること、さらに特定の応用例では非常に重要であるモーターユニット回転子の角度位置を決定することにある。
【0010】
本発明のさらなる目的及び利点は、以下の明細書及び特許請求の範囲から明らかになる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態は、添付図面を参照して以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明によるモーターユニットを備える動力レンチの概略部分側面図。
図2】本発明によるモーターユニットの斜視図。
図3図2のモーターユニットの縦断面図。
図4図1のモーターユニットの後方端部の平面図。
図5図3の線IV−IVに沿った断面図。
図6図3で図解されたモーターユニットの部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面に示されたモーターユニットは、空気圧式角度付き(angle type)動力レンチの一部分を形成し、動力レンチハウジングは、モーターユニットハウジング10で構成されている。ハウジング10は圧力空気入口通路11と、排気出口通路12とを備え、空気圧式ベーン型回転モーター13を支持している。回転モーター13は回転子16及びシリンダー17を包含している。回転子16は、シリンダー17と共動するための出力軸18と4枚の摺動羽根19を担持している。モーター13はさらに、前方端部壁20と後方端部壁21とを備えている。端部壁20及び21は2つの玉軸受22、23を支持し、2つの玉軸受によって回転子16が回転可能にジャーナルされている。シリンダー17は、ハウジング10に排気出口通路12と連通する排気出口開口部30を備え、それによって排気をシリンダー19から外気へと連通させている。
【0014】
示された動力レンチは従来型であり、角度駆動付き前方端部と、表示されていない変速機を介してモーター13に連結された出力軸27とを備えている。動力レンチの後方端部は、圧力空気導管接続33と、ハンドル31で操作される絞り弁29によって制御される圧力空気供給通路28とを備えている。動力レンチは従来公知の型でるので詳細は省略する。
【0015】
モーターユニットは、ラジオ周波数のワイヤレス送受信機32の形態で電圧依存装置を備え、それによって動作時間や動作周期などモーターの状態関連データが遠隔配置のプロセス監視/制御ユニット42へ送られる。ラジオ周波数(RF)送信機32に電圧を供給するために、モーターユニットは繰返される曲げモーメントに電圧を発生するよう構成された舌状の圧電要素35の形態で電圧発生手段34を備えている。圧電要素35は、シリンダー17の出口開口部30の外側に密接して配置され、シリンダー17の軸方向に伸びている。要素35は、2つのネジ37、38で固定されたクランプ36によって後方端部壁21の一端で端部壁21に堅固に取付けられているのに対し、一方で要素35の反対側の端部は揺動するよう自由である。好ましくは、クランプ36は電気的に非伝導の素材で作られる。電気絶縁プレート40は、ハウジング10及びモーターユニットに圧電要素35から発生した交流電流が拡散するのを回避するために要素34と端部壁21との間に配置されている。
【0016】
典型的には、ベーンモーターは排気口を介してそれらの脈動する排気流量をシリンダーから放出する。排気流量の圧力パルスは、舌状要素35を揺動動作で作動させるために使用され、よって揺動動作で電圧を発生させる。舌状要素35に動作空間を作るために、シリンダー17の外側にチャネル14を設けている。そこで要素35が、中央静止位置に関わって双方向に揺動するよう配置されている。この静止位置は、図2及び図5に示されている。チャネル41は、舌状要素35の周囲で相当精密な篏合を有している。この精密な嵌合によって舌状要素35のそれらの活性化に圧力パルスの増幅効果が期待されるであろう。
【0017】
静止位置に相対した舌状要素35の双方向揺動動作は、圧電素材に交流電圧を発生させ、2本の配線39を包含する電気回路は、発生した電圧を受けてそれをラジオ周波数送受信機32に送るために要素35に接続されている。例えば整流装置を包含する電子電圧変換回路は、圧電舌状要素35の電圧出力をラジオ周波数送受信機32に適した電圧特性に変換するために配置されている。
【0018】
回転子の回転毎に発生する排気圧力パルス数は、回転子19に担持された羽根の数に直接的に依存するので、単位時間当りの脈数の倍数として単位時間当りの回転子の回転数からモーターの回転速度を計算することが可能である。また、発生圧力パルス数と組合せて、モーター回転子と出力軸との間で動力伝達ギア比を使用することによって、回転子で充たされる回転角度及びよって出力軸で充たされる回転角度を計算することが可能である。これは、ネジ継手緊締過程を正確に制御できる動力レンチで最も有効である。
【0019】
空気圧式動力レンチのような所定のモーターユニット応用例では、トルク検知器及び/又は角度検知手段をできればワイヤレス信号送信手段との組合せで使用してもよい。多くの場合、動力レンチの動作過程を制御するためにモーターユニットからの情報を読み出すだけでなく固定動作制御装置からの動作関連情報をモーターユニットに送信する双方向データ通信を必要とする。
【0020】
上述の本発明の実施形態は、空気圧式動力レンチに関わって説明されたものであって本発明が応用例を制限するものではない。例えば本発明によるモーターユニットは、プロセス監視及び/又は制御手段をモーターユニットに接続するための電線の設置が望ましくなく代わりにラジオ周波数通信が好ましい産業過程で非常に良く使用することができる。本発明はまた上述の圧電要素の当該位置を限定するものではない。排気流量の圧力パルスがシリンダーの出口開口部の直ぐ外側で一番強力であるが、出口通路の他の位置を圧電要素に使用してもよい。また圧電要素をシリンダー端部への付着以外の配置で使用してもよい。
【符号の説明】
【0021】
10 ハウジング
11 入口通路
12 出口通路
13 モーター
16 回転子
17 シリンダー
18 スピンドル
19 羽根
20 前方端部壁
21 後方端部壁
22 玉軸受
23 玉軸受
25 入口開口部
26 入口開口部
27 出力軸
28 圧力空気供給通路
29 絞り弁
31 ハンドル
32 RF(ラジオ周波数)ワイヤレス送受信機
33 圧力空気導管接続
34 電圧発生手段
35 舌状圧電要素
36 クランプ
37 ネジ
38 ネジ
39 配線
40 絶縁プレート
41 チャネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6