(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698224
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】磁気継手、並びに磁気継手のための分割型ケース
(51)【国際特許分類】
H02K 49/10 20060101AFI20150319BHJP
F04B 9/02 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
H02K49/10 A
F04B9/02 A
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-512202(P2012-512202)
(86)(22)【出願日】2010年5月25日
(65)【公表番号】特表2012-528555(P2012-528555A)
(43)【公表日】2012年11月12日
(86)【国際出願番号】DE2010000572
(87)【国際公開番号】WO2010136019
(87)【国際公開日】20101202
【審査請求日】2013年5月22日
(31)【優先権主張番号】102009022916.7
(32)【優先日】2009年5月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】311010176
【氏名又は名称】デーエステー ダウアーマグネート―ズュステームテヒニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DST Dauermagnet―SystemTechnik GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100167852
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ハインリヒ ヴィトシィア
【審査官】
安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】
特表平05−501194(JP,A)
【文献】
米国特許第03819293(US,A)
【文献】
特開2008−001586(JP,A)
【文献】
特開平06−263465(JP,A)
【文献】
特開2002−352717(JP,A)
【文献】
国際公開第98/022402(WO,A1)
【文献】
特開昭60−026429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 49/00
C03B 3/00
C03B 23/00
C03B 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともインナロータ(2)とアウタロータ(3)と、前記インナロータ(2)と前記アウタロータ(3)との間に配置された、ガラスだけより成る分割型ケース(6)とから成る磁気継手において、
前記分割型ケース(6)がホウケイ酸ガラスより成っており、該ホウケイ酸ガラスは、二酸化ケイ素の他に、主要な成分として、含有量3〜9%のアルカリ金属酸化物、含有量1.5〜8%の酸化アルミニウム、含有量6%までのアルカリ土類金属酸化物、及び含有量6〜14%の酸化硼素を有しており、
分割型ケース(6)のためのベース体がガラス管より形成されており、該ガラス管が、分割型ケース(6)を形成するために、熱及び圧力を加えることによって、管の一端部の領域に閉じられた底部(8)が得られ、管の他端部の領域に突起部(7)が得られるように、成形される、
ことを特徴とする、磁気継手。
【請求項2】
前記分割型ケース(6)が、特に4×10−6/K以下の熱膨張率を有する、耐化学物質性、耐圧性及び耐熱性のガラスより成っている、請求項1記載の磁気継手。
【請求項3】
前記分割型ケース(6)が、ガラス半製品をプレスすることによって形成される、請求項1又は2記載の磁気継手。
【請求項4】
流体ポンプ特に容積型ポンプの領域内に装着可能である、請求項1から3までのいずれか1項記載の磁気継手。
【請求項5】
圧縮機又はファンの領域内に装着可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載の磁気継手。
【請求項6】
磁気継手(1)のための、ガラスだけより成る分割型ケースにおいて、前記ガラスがホウケイ酸ガラスによって形成されており、二酸化ケイ素の他に、主な成分として、含有量3〜9%のアルカリ金属酸化物、含有量1.5〜8%の酸化アルミニウム、含有量6%までのアルカリ土類金属酸化物、及び含有量6〜14%の酸化硼素を有しており、
分割型ケース(6)のためのベース体がガラス管より形成されており、該ガラス管が、分割型ケース(6)を形成するために、熱及び圧力を加えることによって、管の一端部の領域に閉じられた底部(8)が得られ、管の他端部の領域に突起部(7)が得られるように、成形される、
ことを特徴とする分割型ケース。
【請求項7】
ガラス半製品をプレスすることによって形成する、請求項6記載の分割型ケース。
【請求項8】
前記分割型ケース(6)の前記突起部(7)をフランジ状に構成された構成部分(11)によって包囲して、該構成部分(11)によって前記分割型ケース(6)をポンプフランジ(12)に固定した、請求項1から7までのいずれか1項記載の分割型ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載した
磁気継手に関する。
【0002】
磁気継手において一般的に使用される分割型ケースは、種々異なる合金組成を有する金属、プラスチック、セラミック材料、ガラス繊維又は炭素繊維より成っている。
【0003】
金属製の分割型ケースは、渦電流損失及びそれに伴う高い温度によって、
磁気継手の領域におけるエネルギ損失が大きいという問題がある。従って、比較的高い出力を有する電動モータが必要となる。
【0004】
プラスチック製の分割型ケースは、耐熱性及び耐圧性が低いという欠点を有している。
【0005】
セラミック材料より成る分割型ケースは、渦電流損失がなく、高温が発生することもない、という利点を有しているが、製造費用が極めて高価である、という大きい欠点がある。従って、このような形式のセラミック製の分割型ケースは、経済的な理由により例えば大量生産ポンプのための
磁気継手には適しておらず、むしろこのような形式の分割型ケースは、高価であるということを証明するための、特別な製造のためにのみ用いられる。
【0006】
ドイツ連邦共和国実用新案登録第202004013080号明細書によれば、流体を搬送するための電磁継手ポンプについて開示されており、この電磁継手は、モータに組み付け可能なポンプハウジングと、モータによって駆動可能かつ外側磁石を備えた回転可能な駆動部と、回転可能なロータとを備えており、該ロータは、ポンプ軸、該ポンプ軸に相対回動不能に配置された少なくとも1つのホイールと、ポンプ軸に相対回動不能に組み付けられた内側磁石とを有しており、この場合、互いに電磁的に作用接続している外側磁石と内側磁石との間に分割型ケース配置されている。分割型ケースは、非導電性のセラミック材料より成っているので、渦電流損失は発生することは全くなく、潤滑剤及び冷却剤として用いられる液体が過剰に加熱されることはない。変化実施例によれば、分割型ケースは金属より成っている。
【0007】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の
磁気継手を改良して、一方ではセラミック材料より成る分割型ケースの利点が得られ、他方ではセラミック材料に対して経済性が改善されるようにすることである。
【0008】
本発明の課題はさらに、構造が簡単で、セラミック材料より成る分割型ケースに対して著しく安価に製造することができる、非導電性の材料より成る
磁気継手のための分割型ケースを提供することである。
【0009】
この課題を解決した本発明の
磁気継手によれば、冒頭に述べた形式の
磁気継手において、分割型ケースがガラスだけより成っている。
【0010】
本発明による
磁気継手の有利な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0011】
前記課題は、ガラスだけより成る分割型ケースによっても解決される。
【0012】
本発明による分割型ケースの有利な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0013】
使用例に応じて、分割型ケースが、耐化学物質性、耐圧性及び耐熱性のガラスより成っていれば、有利である。
【0014】
ガラスに関する有利な選択は、分割型ケースがホウケイ酸ガラスより成っており、該ホウケイ酸ガラスは、二酸化ケイ素の他に、主要な成分として、含有量3〜9%のアルカリ金属酸化物、含有量1.5〜8%の酸化アルミニウム、含有量6%までのアルカリ土類金属酸化物、及び含有量6〜14%の酸化硼素を有している。
【0015】
本発明の別の考え方によれば、分割型ケースのためのベース体がガラス管より形成されており、該ガラス管が、分割型ケースを形成するために、熱及び圧力を加えることによって、管の一端部の領域内に閉じられた底部が得られ、管の他端部の領域内に突起部が得られるように、成形される。
【0016】
選択的に、分割型ケースは、ガラス半製品を圧力及び熱を加えながらプレスすることによって形成してもよい。
【0017】
しかしながら材料選択に関して、このような形式のガラスより成る分割型ケースを備えた
磁気継手は、圧縮機及びファン、つまり乾式
磁気継手において使用してもよい。
【0018】
これによって本発明によれば、
磁気継手、若しくは
磁気継手のための分割ケースは、渦電流損失及び温度に関して、セラミック材料より成る分割型ケースと同様の機能を有しており、またエネルギ節約も、
磁気継手、若しくは
磁気継手のための分割ケースにおいて、セラミック材料と同様に得られる。
【0019】
しかしながら、セラミック材料より成る分割型ケースとは異なり、ガラスより成る分割型ケースは、著しく安価に製造できるという大きな利点を有しているので、この
磁気継手若しくは分割型ケースは、大量生産によるポンプ、圧縮機及びファンにも使用することができる。
【0020】
著しく安価なガラス製の構成部分が提供されるので、これまでセラミック製の分割型ケースが制限されていた、ポンプ、圧縮機及びファンのためにも用いることができる。
【0021】
これまで使用されていた多くの金属製の分割型ケースに対して、
磁気継手のその他の構成部分に本発明を適用することもできる。この場合、例えば異なる種類の磁石、若しくは異なる材料より成る磁石を使用することができる。何故ならば、高い温度も高い渦電流損失も発生しないからである。磁石のために安価な材料を選択することによって、
磁気継手のためのさらにコスト的な利点が得られる。
【0022】
前述のように、金属製の分割型ケースを使用した場合、渦電流に関するエネルギ損失が非常に高い。このようなエネルギ損失は、本発明の分割型ケースにおいてはもはや発生しないので、より小さい出力を有する駆動手段例えば電動モータ等を使用することができる。これによって経済性がさらに高められる。
【0023】
本発明による
磁気継手は、有利には容積型ポンプ(Verdraengerpumpe)に使用することができる。容積型ポンプとは、例えば回転ピストンポンプ(Rotationskolbenpumpe)、偏心ウォームポンプ(Exzenterschneckenpumpe)、インペラポンプ(Impeller-pumpe)である。
【0024】
さらに、本発明による
磁気継手は、有利には、ガスを圧縮するために使用される圧縮機に使用することもできる。このような圧縮機とは、例えば往復ピストン圧縮機(Hub-kolbenverdichter)、回転圧縮機(Rotationsverdichter)、ねじ圧縮機(Schrauben-verdichter)である。
【0025】
次に図面に示した実施例を用いて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
磁気継手の構造を示す斜視図及び断面図である。
【
図2】
図1に示した分割型ケースの詳細を示す斜視図、断面図及び一部の拡大図である。
【0027】
図1は、本発明による
磁気継手の構造を示す斜視図、及び
磁気継手1の部分的な組立状態の断面図を示す。
磁気継手1は、以下の構成部分より成っている。
【0028】
磁気継手1は、インナロータ2とアウタロータ3と分割型ケース6とから成っており、前記インナロータ2及びアウタロータ3は、それぞれ相応の磁石を備えている。分割型ケース6は、突起部7と閉じられた底部8とを有している。この場合、底部8と突起部7との間に延在する管状の区分6′は、磁石4,5間に存在する最小の遊び(+/−0.1mm)を有するエアギャップ9,9′内に位置している。分割型ケース6は、本発明によればホウケイ酸ガラスより成っており、該ホウケイ酸ガラスは、耐化学物質性、耐圧性及び耐熱性であり、熱膨張率<4×10
−6/Kを有している。モータ側M並びにポンプ側Pの組み込み状態が示されている。モータ側では、アウタロータ内にねじ山付き孔10が設けられており、該ねじ山付き孔10に電動モータ(図示せず)がフランジ結合、つまりフランジを介して結合されている。フランジ状に構成された構成部分11によって、
磁気継手1(インナロータ2、アウタロータ3並びに分割型ケース6を含む)は、例えばポンプフランジ12に接続エレメント13を介して作用接続せしめられる。シールのために、市販のOリング14が使用される。
【0029】
図2は、ホウケイ酸ガラスより成る分割型ケース6、フランジ状に構成された構成部分11、並びにOリング14の詳細を示す。図面には、閉じた底部8と、環状の突起部7と、前記底部8と前記突起部7との間に延在する管状の区分6′とが示されている。
【0030】
ホウケイ酸ガラスより成る分割型ケースは、例えば、所定の長さ(過剰長さ)を有する管区分を用いて、熱及び圧力を加えることによって、一方の管端部を閉じた底部に成形し、それと同時に又は別の作業ステップで、熱及び圧力を加えることによって突起部を一体成形することによって、製作される。
【0031】
高精度の中間製品(管)を使用することによって、エアギャップ9,9′に関する最小公差を維持することができる。
【0032】
選択的に、熱及び圧力を加えながらガラス半製品をプレスすることによって、分割型ケース6を形成することもできるが、この場合は、公差に関する欠点を甘受しなければならない。
【符号の説明】
【0033】
1
磁気継手、 2 インナロータ、 3 アウタロータ、 4,5 磁石、 6 分割型ケース、 6′ 管状の区分、 7 突起部、 8 底部、 9,9′ エアギャップ、 10 ねじ山突き孔、 11 フランジ状の構成部分、 12 ポンプフランジ、 13 接続エレメント、 14 Oリング、 M モータ側、 P ポンプ側