(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ジアミンが、1,6−ジアミノヘキサン、1,5−ジアミノペンタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン及び2−メチル−1,5−ジアミノペンタンからなる群より選択されるいずれかのジアミンを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液の製造方法。
前記ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液にジカルボン酸を添加し、ジアミンとジカルボン酸とのモル比(ジアミン/ジカルボン酸)が0.95〜1.05の混合物を得る工程と、
前記工程で得られた混合物中のジアミンとジカルボン酸との重縮合反応を行う工程と、
を含む、請求項7又は8に記載のポリアミドの製造方法。
前記重縮合反応を行う工程に用いるジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液に、ジカルボン酸を添加して、ジアミンとジカルボン酸とのモル比(ジアミン/ジカルボン酸)が0.95〜1.05の混合物を得る工程を、さらに含む、請求項13又は14に記載のポリアミドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0016】
〔ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液の製造方法〕
本実施形態のジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液の製造方法は、ジカルボン酸ジエステルと、ジアミンとを混合させる工程を含み、前記ジカルボン酸ジエステルと、前記ジアミンとの混合モル比(ジアミン/ジカルボン酸ジエステル)が、1.005以上である。
【0017】
(ジカルボン酸ジエステル)
ジカルボン酸ジエステルは、2個のエステル基を置換基として有する炭化水素化合物である。
前記炭化水素化合物のうち、脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、2−メチルペンタン、2,5−ジメチルヘキサン、2−メチルオクタン等が挙げられる。
脂環式炭化水素化合物としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等が挙げられる。
芳香族環を有する炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセン等が挙げられる。
エステル基は、下記化学式(I)で表すことができる。
−COOR ・・・(I)
ここで、式(I)中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基から選ばれる。
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基が挙げられる。
炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、p−トリル基が挙げられる。
炭素数7〜20のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
Rとしては、アルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0018】
前記ジカルボン酸ジエステルとしては、テレフタル酸ジエステル又はシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルが好適である。これらのジカルボン酸ジエステルを用いた場合は、ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を用いて得られるポリアミドは、ジアミンの種類にかかわらず高い耐熱性を持ったポリアミドを容易に得ることができる。
シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルは、シクロヘキサン骨格にエステル基を2個有する化合物である。
エステル基の位置は、1,2−位、1,3−位、1,4−位のいずれであってもよい。
前記シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルは、シクロヘキサン骨格にエステル基を2個有する化合物である。
前記シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルとしては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエチルエステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジn−ブチルエステル等が好ましく、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステルがより好ましい。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステルは、テレフタル酸ジメチルエステルを、例えばパラジウム触媒の存在下で高温高圧の条件で水素添加反応をすることで容易に得られる。
【0019】
(ジアミン)
ジアミンとは、2個のアミノ基を置換基として有する炭化水素化合物である。
ジアミンは、単独で用いても、2種類以上の混合物として用いてもよい。
本実施形態の製造方法において用いるジアミンを構成する前記炭化水素化合物としては、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素化合物、炭素数5〜20の脂環式炭化水素化合物、炭素数6〜20の芳香族環を有する炭化水素化合物が好ましい。
脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、2−メチルペンタン、2,5−ジメチルヘキサン、2−メチルオクタン等が挙げられる。
脂環式炭化水素化合物としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、デカヒドロナフタレン等が挙げられる。
芳香族環を有する炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセン等が挙げられる。
アミノ基の位置は、炭化水素化合物の任意の位置であってかまわない。
【0020】
本実施形態の製造方法において用いるジアミンは、1級ジアミン、2級ジアミンが好ましい。
3級ジアミンは、ジカルボン酸ジエステルを加水分解するに際し、反応速度が高いため効率的に反応を進めることができるが、ポリアミドの原料にすることはできない。
本実施形態の製造方法において用いるジアミンは、1級ジアミンであることが好ましい。2級ジアミンは、1級ジアミンに比べ反応速度が高いが、ポリアミドの原料としては1級ジアミンのほうがポリアミドの安定性の観点から適しているからである。
【0021】
本実施形態の製造方法において用いるジアミンは、具体的には、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、メタキシレンジアミン、3,5−ジアミノトルエン等が挙げられる。
特に、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタンが好ましく、1,6−ジアミノヘキサン、1,10−ジアミノデカン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタンがより好ましい。
【0022】
(水)
本実施形態のジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液では水を溶媒とする。水はジカルボン酸ジエステル及びジアミンに対して加えておく。この場合、ジカルボン酸ジエステルの種類や水の量によっては、油水の二層に分離することもあるし、均一になることもあるがいずれの場合でもかまわない。水の量は、ジアミンとジカルボン酸との混合物が析出せず均一な水溶液であれば任意の量を選択することができるが、ジアミン及びジカルボン酸の重量の和を1としたときに、水の重量は好ましくは0.2〜10の範囲、より好ましくは0.3〜5の範囲、さらに好ましくは0.5〜2の範囲である。前記水の重量が0.2より少ない場合は、ジアミン・ジカルボン酸が特に低温にした場合に析出してしまい、前記水の重量が10より多い場合はジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を原料としてポリアミドを製造する際に、同じ重合のリアクターに対してポリアミドの得られる量が少なくなるため効率が悪くなる。
【0023】
(ジカルボン酸ジエステルとジアミンとの作用)
本実施形態のジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液の製造方法においては、上述したジカルボン酸ジエステルと、上述したジアミンとを、水の存在下で混合、加熱し、反応させる。反応器は、副生するアルコールさらに必要に応じ溶媒である水を蒸留で除いていくことが好ましい。蒸留で除かれた水に対して反応中に水を加えてもよい。
反応工程においては、ラクタム又はω−アミノカルボン酸を任意に加えてもよい。
ラクタムは、以下に制限されないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタムやドデカラクタムが挙げられる。
一方、ω−アミノカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸が挙げられる。
なお、ラクタム又はω−アミノカルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
(ジカルボン酸ジエステルとジアミンとの混合比)
ジカルボン酸ジエステルとジアミンとの混合モル比(ジアミン/ジカルボン酸ジエステル)は、1.005以上であり、1.01以上であることが好ましく、1.03以上であることがより好ましく、1.05以上であることがさらに好ましい。また、当該混合モル比(ジアミン/ジカルボン酸ジエステル)は、3.00以下であることが好ましく、2.50以下であることがより好ましく、2.00以下であることがさらに好ましい。
前記混合モル比(ジアミン/ジカルボン酸ジエステル)が1.005より小さい場合は、ジカルボン酸ジエステルの加水分解反応が進むにつれて反応の進行が遅くなっていき、時間をかけてもジカルボン酸ジエステルやジカルボン酸モノエステルといった加水分解反応が進行しなかった未反応物が残存してしまう。前記混合モル比(ジアミン/ジカルボン酸ジエステル)が3.00よりも大きい場合は、ジカルボン酸ジエステルの加水分解は速やかに進行するが、得られたジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を用いてポリアミドを製造する際に、ジアミンとジカルボン酸とのモル数を後述するように等モル近くに調整する必要があり、その調整の量が大きくなるため効率が悪くなる。
また、ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液中に、ジカルボン酸ジエステルやジカルボン酸モノエステルが混入していると、ポリアミドを製造する際にそれらが重合を阻害するため、重合度が期待通りに上がらなくなる。ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液において、ジカルボン酸ジエステル及びジカルボン酸モノエステルの合計モル量としては、ジカルボン酸、ジカルボン酸ジエステル及びジカルボン酸モノエステルの合計モル量に対して、好ましくは1mol%以下、より好ましくは0.5mol%以下、さらに好ましくは0.3mol%以下とする。
なお、ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液における、ジカルボン酸ジエステル及びジカルボン酸モノエステルの合計モル量は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0025】
本実施形態の製造方法により得られるジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液をポリアミド製造用の原料として用いる場合、得られたジアミン・ジカルボン酸にジアミン又はジカルボン酸を添加して、ジアミンとジカルボン酸とのモル数を特定の範囲とすることが好ましい。
例えば、ジアミンの量が過剰で、本実施形態の製造方法による反応が行われた場合、得られたジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液に対してジカルボン酸を添加することが好ましい。ジアミンとジカルボン酸とのモル数が特定の範囲のときに、後に行うポリアミドの重合反応が効率よく進行し、ポリアミドの重合度を向上させることができる。ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液に対してジカルボン酸を添加して混合物を調製する場合、該混合物中のジアミンとジカルボン酸とのモル比(ジアミン/ジカルボン酸)は、0.95〜1.05とすることが好ましく、0.98〜1.04とすることがより好ましく、0.99〜1.03とすることがさらに好ましい。
【0026】
ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液の製造の際には、水を加えて反応を行うが、ジカルボン酸ジエステル1モルに対して、水の量は、モル比で2〜20が好ましく、2〜15がより好ましく、4〜10がさらに好ましい。
水の量をモル比で20以下とすることにより、塩水溶液の濃度が低くなり過ぎることを防止でき、製造効率を高く維持できる。また、水の量をモル比で2以上とすることにより、短時間で反応を完了させることができる。
【0027】
(トリアルキルアミン類)
本実施形態のジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液の製造方法において、ジカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる際に、さらにトリアルキルアミン類を混合させることができる。トリアルキルアミン類を混合させることにより、ジカルボン酸ジエステルの加水分解の反応速度を向上させることや、ジカルボン酸ジエステルに対するジアミンの量比を小さくすることができる傾向にある。
本実施形態に用いるトリアルキルアミン類とは、3級アミンや環状のアミンのように窒素原子に水素が結合していない窒素化合物を言う。本実施形態に用いるトリアルキルアミン類は、「NR
3」であらわされる。Nは窒素原子、Rは脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基を示し、Rは同一の1種類でもかまわないし、複数の2種類、3種類の組み合わせでもかまわない。またR同士が環状構造をとっておいてもよい。
トリアルキルアミン類の例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジエチルメチルアミン、ピリジン、2−メチルピリジン等が挙げられる。
トリアルキルアミン類は、反応中にアルコール、水とともに一部あるいは全部が蒸留により除かれていてもかまわない。また、塩水溶液を原料とするポリアミドの製造工程に残ってもかまわないし、ポリアミドの製造工程において水と共に除かれてもかまわない。
【0028】
ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液の製造について、反応温度や反応圧力は反応で副生するアルコールを蒸留し除去することができれば任意の値を用いることができるが、反応温度としては50〜150℃が好ましく、80〜120℃がさらに好ましく、圧力は真空状態の−0.1MPa(ゲージ圧力)〜0.1MPa(ゲージ圧)が好ましい。
本実施形態のジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液の製造方法を実施することによる反応の進行に従い、エステルに対応するアルコールが生成する。
このアルコールは、反応容器に戻すこともできるし、反応の系から蒸留により抜き出すこともできる。
アルコールの除去に際して、水を同時に蒸留により抜き出すことも可能である。系内に水を添加してもよい。
アルコールを除去することにより反応の平衡がアルコール生成側に傾くため、本実施形態のジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液の製造方法による反応を有利に進めることができる。また、本実施形態のジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液の製造方法の反応においては、水が必要であるため、水を反応系に適宜戻したり、添加したりする。
【0029】
〔ポリアミドの製造方法〕
本実施形態のポリアミドの製造方法は、ジカルボン酸ジエステルと、ジアミンとを、混合させ、ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を形成する工程と、前記工程で形成されたジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を加熱し、ジアミンとジカルボン酸との重縮合反応を行う工程とを含み、前記ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を形成する工程において、前記ジカルボン酸ジエステルと、前記ジアミンとの混合モル比(ジアミン/ジカルボン酸ジエステル)が、1.005以上である。
【0030】
本実施形態のポリアミドの製造方法において、重縮合反応とは、一般に知られているジアミンとジカルボン酸との脱水縮合反応のことをいう。当該脱水縮合することによって得られるポリアミドは、ジアミン成分とジカルボン酸由来成分とが交互にアミド結合で連結されたものである。
【0031】
本実施形態のポリアミドの製造方法は、上述のジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液の製造方法で得られたジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を用いることが好ましい。
すなわち、本実施形態のポリアミドの製造方法は、上述のジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液の製造方法によりジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を形成する工程と、前記工程で形成されたジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を加熱し、ジアミンとジカルボン酸との重縮合反応を行う工程とを含むことが好ましい。
【0032】
本実施形態のポリアミドの製造方法は、前記ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を形成する工程において、前記ジカルボン酸ジエステルと、前記ジアミンとの混合モル比(ジアミン/ジカルボン酸ジエステル)が、1.005以上であり、1.01以上であることが好ましく、1.03以上であることがより好ましく、1.05以上であることがさらに好ましい。また、当該混合モル比(ジアミン/ジカルボン酸ジエステル)は、3.00以下であることが好ましく、2.50以下であることがより好ましく、2.00以下であることがさらに好ましい。当該混合モル比(ジアミン/ジカルボン酸ジエステル)が前記範囲内であると、ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を形成する工程において、ジカルボン酸ジエステルの加水分解反応が速やかに進行し、ジカルボン酸ジエステルやジカルボン酸モノエステルといった未反応物の残存量を抑制することができる。また、ジアミンとジカルボン酸との重縮合反応を行う工程を行う際に、ジアミンとジカルボン酸とのモル数を後述するように等モル近くに調整するためのジカルボン酸の添加作業を軽減でき、ポリアミドの製造効率を向上させることができる。
【0033】
本実施形態のポリアミドの製造方法は、前記工程で形成されたジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液において、ジカルボン酸ジエステル及びジカルボン酸モノエステルの合計モル量は、ジカルボン酸、ジカルボン酸ジエステル及びジカルボン酸モノエステルの合計モル量に対して、1mol%以下であることが好ましく、0.5mol%以下であることがより好ましく、0.3mol%以下であることがさらに好ましい。ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液において、ジカルボン酸ジエステル及びジカルボン酸モノエステルの合計モル量が前記範囲内であると、重合度の高いポリアミドが効率良く得られる傾向にある。
【0034】
本実施形態のポリアミドの製造方法は、前記重縮合反応を行う工程に用いるジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液に、ジカルボン酸を添加して、ジアミンとジカルボン酸とのモル比(ジアミン/ジカルボン酸)が0.95〜1.05の混合物を得る工程を、さらに含むことが好ましい。該混合物中のジアミンとジカルボン酸とのモル比(ジアミン/ジカルボン酸)は、0.98〜1.04とすることがより好ましく、0.99〜1.03とすることがさらに好ましい。該混合物中のジアミンとジカルボン酸とのモル比(ジアミン/ジカルボン酸)が前記範囲であると、該混合物中のジアミンとジカルボン酸との重縮合反応が効率よく進行し、重合度の高いポリアミドを得ることができる。
【0035】
本実施形態のポリアミドの製造方法は、前記ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を形成する工程において、前記ジカルボン酸ジエステル及びジアミンに、さらにトリアルキルアミン類を混合させることが好ましい。トリアルキルアミン類を混合させることにより、ジカルボン酸ジエステルの加水分解の反応速度を向上したり、ジカルボン酸ジエステルに対するジアミンの量比を小さくすることができる傾向にある。
【0036】
本実施形態のポリアミドの製造方法で用いる、カルボン酸ジエステル、ジアミン、トリアルキルアミン類は、上述したジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液の製造方法で用いるものと同様である。
【0037】
前記ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を形成する工程において用いるジカルボン酸ジエステルは、テレフタル酸ジエステル又はシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルであることが好ましい。テレフタル酸ジエステルは、基礎的な石油化学品であるパラキシレンを酸化することによって容易に得ることができる。特にテレフタル酸ジメチルは古くからポリエチレンテレフタレート(PET)の原料として使用されることもあり、工業的に生産され広く流通しており容易に入手が可能である。また、テレフタル酸ジメチルを水素還元することによって得られるシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルも容易に入手が可能である。このようなジカルボン酸ジエステルを用いて得られるジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液から得られるポリアミドは融点が高くなる傾向にある。
【0038】
前記ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を形成する工程において用いるジアミンは、1,6−ジアミノヘキサン、1,5−ジアミノペンタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン及び2−メチル−1,5−ジアミノペンタンからなる群より選択されるいずれかのジアミンを含むことが好ましい。このようなジアミンは入手が容易であり、またこのようなジアミンを用いたジアミン・ジカルボン酸から結晶性の高いポリアミドが得られる傾向にある。
【0039】
本実施形態のポリアミドの製造方法で得られるポリアミドの融点は280℃以上であることが好ましく、285〜380℃であることが好ましく、290〜360℃であることが好ましい。融点が前記範囲内であるポリアミドは、自動車産業において、金属代替材料として利用可能であり、また電気・電子産業においても、表面実装技術(SMT技術)に対応する高耐熱材料として利用することができ、さらに、溶融状態である重合や押し出し、成型の熱安定性が高くなる傾向にある。
なお、ポリアミドの融点は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0040】
本実施形態のポリアミドの製造は、上述のジカルボン酸ジエステルと、ジアミンとを、混合させ、ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を形成する工程と、前記工程で形成されたジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を加熱し、ジアミンとジカルボン酸との重縮合反応を行う工程とを含み、前記ジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を形成する工程において、前記ジカルボン酸ジエステルと、前記ジアミンとの混合モル比(ジアミン/ジカルボン酸ジエステル)を上記特定の範囲に制御していれば、当該重縮合反応やポリアミドの重合度を上昇させる工程については公知の方法を用いることができる。例えば、本実施形態のポリアミドの製造方法としては、ポリアミドの重合度を上昇させる工程を、さらに含むことが好ましい。
【0041】
本実施形態のポリアミドの製造方法としては、例えば、以下に例示するように種々の方法が挙げられる:
1)上述の工程で形成されたジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を、加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法、
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法、
3)上述の工程で形成されたジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダーなどの押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法、
4)上述の工程で形成されたジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法。
【0042】
本実施形態のポリアミドの製造方法において、重合度を上昇させてポリアミドの融点を上昇させるための方法としては、加熱の温度を上昇させたり、及び/又は加熱の時間を長くする方法が挙げられる。このような方法を行う場合、加熱によるポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下が起こる場合がある。また、分子量の上昇速度が著しく低下する場合がある。
【0043】
本実施形態のポリアミドの製造方法において、重合形態としては、バッチ式でも連続式でもよい。
本実施形態のポリアミドの製造方法において用いる重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型反応器、タンブラー型反応器、及びニーダーなどの押出機型反応器などが挙げられる。
【0044】
本実施形態のポリアミドの製造方法の具体例としては、特に限定されるものではなく、以下に記載するバッチ式の熱溶融重合法を挙げることができる。
バッチ式の熱溶融重合法としては、例えば、以下のとおりである。上述の工程で形成されたジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、容器における圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、温度が約250〜350℃に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。その後、窒素などの不活性ガスで加圧し、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。該ストランドを、冷却、カッティングしてペレットを得る。
【0045】
本実施形態のポリアミドの製造方法の具体例としては、特に限定されるものではなく、以下に記載する連続式の熱溶融重合法を挙げることができる。
連続式の熱溶融重合法としては、例えば、以下のとおりである。上述の工程で形成されたジアミン・ジカルボン酸の塩水溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱し、次いで、濃縮層/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。該濃縮溶液を約200〜350℃の温度に保ったフラッシャーに排出し、その後、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧する。その後、ポリアミド溶融物は押し出されてストランドとなり、冷却、カッティングされペレットとなる。
【0046】
本実施形態の製造方法で得られるポリアミドを用いて、周知の成形方法、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸などを行うことにより各種成形品を得ることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0048】
〔原料〕
(1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(1,4−DMCD):和光純薬工業社製の試薬を使用した。
(2)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエチルエステル(1,2−DECD):東京化成社製の試薬を使用した。
(3)テレフタル酸ジメチル(DMT):和光純薬工業社製の試薬を使用した。
(4)テレフタル酸ジエチル(DET):東京化成社製の試薬を使用した。
(5)セバシン酸ジメチル(DMC10D):東京化成社製の試薬を使用した。
(6)1,6−ジアミノヘキサン(C6DA):和光純薬工業社製の試薬を使用した。
(7)1,10−ジアミノデカン(C10DA):東京化成社製の試薬を使用した。
(8)2−メチルペンタメチレンジアミン(MC5DA):アルドリッチ社製の試薬(2−メチル−1,5−ジアミノペンタン)を使用した。
(9)1,9−ジアミノノナン(C9DA):アルドリッチ社製の試薬を使用した。
(10)硫酸(96%):和光純薬工業社製の試薬を使用した。
(11)水酸化ナトリウム:和光純薬工業社製の試薬を使用した。
(12)トリ−n−ブチルアミン(TBA):和光純薬工業製の試薬を使用した。
(13)ピリジン(PY):和光純薬工業製の試薬を使用した。
(14)蒸留水:和光純薬工業製の試薬を使用した。
(15)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(1,4−CHDA):東京化成社製の試薬を使用した。
(16)テレフタル酸(TPA):和光純薬工業製の試薬を使用した。
【0049】
〔評価方法〕
以下、後述する実施例及び比較例における生成物の評価方法について説明する。
<ジエステル転化率>
GC−14A(島津製作所社製)、DB−5カラム、FID検出器の装置でガスクロマトグラフ分析を行い、反応前後のジエステル量の変化を内部標準法で決定した。
<ジカルボン酸収率>
ジカルボン酸を単離する場合は、蒸留水で洗浄し真空乾燥を行ったのち秤量して決定した。
<ジカルボン酸純度>
塩水溶液の一部を採取し、80℃で加熱しながら減圧して水を留去して塩(固体)を得た。得られた塩、又はジカルボン酸を重ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、400MHzのNMR装置で、
1H−NMR分析を行い、純度99.9%以上のジカルボン酸との積分値の違いで決定した。
<塩水溶液中のエステル量>
塩水溶液の一部を採取し、80℃で加熱しながら減圧して水を留去して塩(固体)を得た。得られた塩を重ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、400MHzのNMR装置で、
1H−NMR分析を行い、エステル基のピーク及びカルボン酸由来のピークの積分値より塩水溶液中のエステル量〔(ジカルボン酸ジエステル及びジカルボン酸モノエステルの合計モル量)/(ジカルボン酸、ジカルボン酸ジエステル及びジカルボン酸モノエステルの合計モル量)×100)をモル%で算出し決定した。
<不純物(Na)>
塩水溶液を80℃で加熱しながら減圧して水を留去して塩(固体)を得た。得られた塩又はジカルボン酸について、ICP−MS法分析を行い、決定した。
<不純物(S)>
塩水溶液を80℃で加熱しながら減圧して水を留去して塩(固体)を得た。得られた塩又はジカルボン酸について、イオンクロマト法で分析を行い、決定した。
<ポリアミドの融点Tm2>
ポリアミドの融点Tm2(℃)について、JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて以下のとおり測定した。
まず、窒素雰囲気下、試料約10mgを昇温速度20℃/minで試料の融点に応じて300〜350℃まで昇温した。この昇温のときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とした。前記昇温の最高温度の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温し、30℃で2分間保持した。その後、昇温速度20℃/minで前記と同様に昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の最大ピーク温度を融点Tm2(℃)とし、その全ピーク面積を融解熱量ΔH(J/g)とした。なお、ΔHが1J/g以上のものをピークとみなし、ピークが複数ある場合には、ΔHが最大の吸熱ピーク温度を融点Tm2(℃)とした。例えば、吸熱ピーク温度295℃、ΔH=20J/gと吸熱ピーク温度325℃、ΔH=5J/gとの二つの吸熱ピーク温度が存在する場合、融点Tm2(℃)は325℃とした。
<ポリアミドの25℃の相対粘度ηr>
ポリアミドの25℃の相対粘度ηrの測定を、JIS−K6810に準じて実施した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作成し、25℃の温度条件下で相対粘度ηrを測定した。
【0050】
〔実施例1〕
<塩水溶液の製造>
温度計、蒸留管及び冷却管を備えた300mLのガラス製三口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル40g、1,6−ヘキサメチレンジアミン35g、蒸留水72gを加えて混合液を得た。
大気圧下で、混合液の温度が100℃になるように連続的に蒸留をさせながらオイルバスで加熱を行った。
蒸留された量に相当する体積量の蒸留水を三口フラスコに加えながら4時間反応を行うことにより、1,6−ヘキサメチレンジアミン・1,4−シクロヘキサンジカルボン酸塩水溶液が得られた。
フラスコ中の混合液の一部を採取し、GC分析を行ったところ、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの転化率は99.9%超であった。
また、前記塩水溶液から得られた塩のNMR分析より、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の純度は98%であった。
また塩中の不純物(S)量、不純物(Na)量とも0.1ppm未満であった。
下記表1に仕込み量及び塩水溶液の分析結果を示した。
【0051】
<ポリアミドの製造>
前記塩水溶液を用いて熱溶融重合法によりポリアミドの製造を以下のとおり実施した。
上記で得られた1,6−ヘキサメチレンジアミン・1,4−シクロヘキサンジカルボン酸塩水溶液に対して、pH計で確認しながら1,4−シクロヘキサンジカルボン酸17.2gを追加することで、ポリアミド原料として好適な、中和されたジアミン・シクロヘキサンジカルボン酸塩の水溶液を調製した。
得られた水溶液を内容積500mLのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込み、液温(内温)が50℃になるまで保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。オートクレーブの槽内の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5kg/cm
2になるまで、液温を約50℃から加熱を続けた。槽内の圧力を約2.5kg/cm
2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、水溶液の濃度が約85%になるまで濃縮した。水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cm
2になるまで加熱を続けた。槽内の圧力を約30kg/cm
2に保つため水を系外に除去しながら、330℃(最終反応温度−50℃)になるまで加熱を続けた。液温が340℃(最終反応温度−40℃)まで上昇した後に、加熱を続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm
2)になるまで60分間かけて降圧した。
その後、樹脂温度(液温)の最終反応温度が380℃になるようにヒーター温度を調整した。樹脂温度はその状態のまま、槽内を真空装置で370torrに減圧して10分維持した。その後、オートクレーブ内を窒素で約0.2kg/cm
2に加圧した後、オートクレーブをヒーターから取り出して冷却した。オートクレーブを室温まで冷却した後、生成したポリアミドを砕きながらオートクレーブから取り出した。得られたポリアミドの分析を上記測定方法に基づいて行った。当該ポリアミドの分析結果を表1に示す。
【0052】
〔実施例2、3及び4〕
ジアミンの種類及び量、蒸留水の量、追加ジカルボン酸の量、並びにポリアミド製造時の最終の反応温度等を、下記表1に記載のとおりに変えた。
その他の条件は、実施例1と同様として塩水溶液の製造及びポリアミドの製造を行った。
下記表1に仕込み量及び反応温度、塩水溶液の分析結果、並びにポリアミドの分析結果を示した。
【0053】
〔実施例5〕
ジエステルの種類及び量、ジアミンの種類及び量、蒸留水の量、ポリアミド製造時の最終の反応温度等を、下記表1に記載のとおりに変えた。
また、ポリアミド製造時にジカルボン酸を追加しなかった。
さらに塩水溶液の製造時にトリアルキルアミン類としてトリ−n−ブチルアミン3.7gを加えた。
その他の条件は、実施例1と同様として塩水溶液の製造及びポリアミドの製造を行った。
下記表1に仕込み量及び反応温度、塩水溶液の分析結果、並びにポリアミドの分析結果を示した。
【0054】
〔実施例6〕
ジエステルの種類及び量、ジアミンの種類及び量、蒸留水の量、追加ジカルボン酸の量、ポリアミド製造時の最終の反応温度等を、下記表1に記載のとおりに変えた。
さらに塩水溶液の製造時にトリアルキルアミン類としてピリジン1.9gを加えた。
その他の条件は、実施例1と同様として塩水溶液の製造及びポリアミドの製造を行った。
下記表1に仕込み量及び反応温度、塩水溶液の分析結果、並びにポリアミドの分析結果を示した。
【0055】
〔実施例7及び8〕
ジエステルの種類及び量、ジアミンの種類及び量、蒸留水の量、追加ジカルボン酸の種類及び量、ポリアミド製造時の最終の反応温度等を、下記表1に記載のとおりに変えた。
その他の条件は、実施例1と同様として塩水溶液の製造とポリアミドの製造を行った。
下記表1に仕込み量及び反応温度、塩水溶液の分析結果、並びにポリアミドの分析結果を示した。
【0056】
〔比較例1〕
<塩水溶液の製造>
温度計、蒸留管及び冷却管を備えた500mLのオートクレーブに、セバシン酸ジメチル46g、1,6−ヘキサメチレンジアミン23g、蒸留水108gを加えて混合液を得た。
密閉系で前記オートクレーブの内温が130℃になるように3時間加熱を行った。次に100℃で連続的に蒸留させながら大気圧下で加熱を行った。
蒸留された量に相当する体積量の蒸留水をオートクレーブに加えながら4時間反応を行うことにより、1,6−ヘキサメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液が得られた。
オートクレーブ中の混合液の一部を採取し、GC分析を行ったところ、セバシン酸ジメチルの転化率は99.5%であった。
また、前記塩水溶液から得られた塩のNMR分析より、セバシン酸の純度は97%であった。
また塩中の不純物(S)量、不純物(Na)量とも0.1ppm未満であった。
下記表1に仕込み量及び塩水溶液の分析結果を示した。
【0057】
<ポリアミドの製造>
前記塩水溶液を用いて熱溶融重合法によりポリアミドの製造を以下のとおり実施した。
ジカルボン酸を追加せずに前記塩水溶液を内容積500mLのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込み、最終の反応温度を270℃に変えた以外は実施例1と同様にポリアミドの製造を実施した。
得られたポリアミドの分析を上記測定方法に基づいて行った。当該ポリアミドの分析結果を表1に示す。
【0058】
〔比較例2〕
ジエステルの種類及び量、ジアミンの種類及び量、蒸留水の量、ポリアミド製造時の最終の反応温度等を、下記表1に記載のとおりに変えた。
その他の条件は、比較例1と同様として塩水溶液の製造及びポリアミドの製造を行った。
下記表1に仕込み量及び反応温度、塩水溶液の分析結果、並びにポリアミドの分析結果を示した。
【0059】
〔比較例3〕
温度計、蒸留管及び冷却管を備えた300mLのガラス製の三口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル40g、硫酸2.0g、蒸留水108gを加えて混合液を得た。
大気圧下で、混合液の温度が100℃になるように連続的に蒸留をさせながらオイルバスで加熱を行った。
蒸留された量に相当する体積量の蒸留水を三口フラスコに加えながら、10時間反応を行うことにより、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が得られた。
フラスコ中の混合液のGC分析を行ったところ、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの転化率は99.9%超であった。
得られた混合溶液を10℃まで冷却し、析出した白色固体をろ過で回収した。
この固体を蒸留水で洗浄し、80℃で減圧乾燥した。
得られた固体のNMR分析より1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の純度は99%であった。
また、カルボン酸中の不純物(S)量は0.7ppmで、不純物(Na)量は0.1ppm未満であった。
下記表1に仕込み量及び塩水溶液の分析結果を示した。
【0060】
〔比較例4〕
温度計、還流管を備えた300mLのガラス製三口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル40g、水酸化ナトリウム17.6g、蒸留水72gを加えて混合液を得た。
大気圧下で混合液の温度が100℃になるように連続的に蒸留をさせながらオイルバスで加熱を行った。
これにより、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のナトリウム塩水溶液が得られた。
フラスコ中の混合液のGC分析を行ったところ、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの転化率は99.9%超であった。
得られた混合溶液を10℃まで冷却し、35%塩酸約30mLを加え、析出した白色固体をろ過で回収した。
この固体を蒸留水で洗浄し、80℃で減圧乾燥した。
得られた固体のNMR分析より1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の純度は99%であった。
また、塩中の不純物(S)量は0.1ppm未満で、不純物(Na)量は320ppmであった。
下記表1に仕込み量及び塩水溶液の分析結果を示した。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1〜8によれば、ポリアミド製造に好適なジアミン・ジカルボン酸塩水溶液を、ジカルボン酸ジエステルから1つの反応容器で簡易な工程で製造できた。
また得られるジアミン・ジカルボン酸塩水溶液は、SやNaという不純物の量が少ない質の高いものであることが分かった。
さらにジアミン・ジカルボン酸塩水溶液を原料として重縮合反応により得られるポリアミドは、高い融点を持つとともに十分に高い分子量を持つことが分かった。
【0063】
本出願は、2010年6月23日出願の日本特許出願(特願2010−142843号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。