特許第5698247号(P5698247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698247
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】ハイドロニューマチック式蓄圧器
(51)【国際特許分類】
   F15B 1/08 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   F15B1/047
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-533492(P2012-533492)
(86)(22)【出願日】2010年8月26日
(65)【公表番号】特表2013-507591(P2013-507591A)
(43)【公表日】2013年3月4日
(86)【国際出願番号】EP2010005239
(87)【国際公開番号】WO2011044968
(87)【国際公開日】20110421
【審査請求日】2013年5月2日
(31)【優先権主張番号】102009049547.9
(32)【優先日】2009年10月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591204333
【氏名又は名称】ハイダック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HYDAC TECHNOLOGY GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100110489
【弁理士】
【氏名又は名称】篠崎 正海
(74)【代理人】
【識別番号】100133008
【弁理士】
【氏名又は名称】谷光 正晴
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト ランゲ
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト ベーバー
【審査官】 吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許第00604731(GB,B)
【文献】 特開2008−232367(JP,A)
【文献】 米国特許第02604118(US,A)
【文献】 特開2000−320501(JP,A)
【文献】 特開2003−013902(JP,A)
【文献】 特開平08−326704(JP,A)
【文献】 特開平07−224801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄圧器ハウジング(1)内に配置された移動可能な隔離要素を備えたハイドロニューマチック式蓄圧器であって、前記隔離要素が、第1作動室、有利には気体室(7)を、第2作動室としての液体室(5)から分離していて、そして可撓性材料、特にエラストマーから成るダイヤフラム(3)によって形成されており、前記蓄圧器ハウジング(1)に、前記液体室(5)への入出路を形成するハウジング開口(15)が位置しており、前記ハウジング開口における流通が、解放位置及び閉鎖位置に移行可能な弁装置によって制御可能であり、前記弁装置が、前記ダイヤフラム(3)の表面部分に位置する弁体(29)を有しており、前記弁体は、前記ハウジング開口(15)に位置する弁座(33)に近づくと弁装置を閉鎖位置に移行させ、前記弁装置が、前記閉鎖位置で前記ハウジング開口を通る制限された流通を可能にするバイパス装置を有しており
前記弁体(29)が、前記バイパス装置を形成するために、該弁体の、前記弁座(33)に向いた面(34)に少なくとも一つの突起(37)を有しており、前記突起が、前記流通を可能にするスペーサを前記弁座(33)に対して形成している、ハイドロニューマチック式蓄圧器において、
前記弁体(29)が、前記弁座(33)に向いた面(34)を画成する周縁部(39)に、前記面(34)の平面から僅かに突出するエッジ(51)を有するように形成されていることを特徴とする、ハイドロニューマチック式蓄圧器。
【請求項2】
前記弁体(29)の、前記弁座(33)に向いた面(34)に、少なくとも二つの突起(37)が設けられており、前記突起の間に、前記流通を可能にする間隙(41)が位置していることを特徴とする、請求項1に記載のハイドロニューマチック式蓄圧器。
【請求項3】
複数の突起(37)が前記弁体(29)の面(34)に、規則的な位置関係を成して分配されて配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のハイドロニューマチック式蓄圧器。
【請求項4】
前記弁体(29)の前記面(34)が円形であること、及び前記突起(37)が、前記面(34)の周縁から僅かな間隔を置いて延びる一つの同心円周に沿って配置されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載のハイドロニューマチック式蓄圧器。
【請求項5】
前記突起がスリット入り環状体(37)によって形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のハイドロニューマチック式蓄圧器。
【請求項6】
前記スリット入り環状体が四つの同一の部分リング・セグメント(37)を有しており、前記部分リング・セグメントの間に、前記部分リング・セグメント(37)の周方向長さの半分よりも小さい長さを有する間隙(41)が設けられていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載のハイドロニューマチック式蓄圧器。
【請求項7】
それぞれの前記突起(37)が、前記弁体(29)の面(34)に形成されたその基部から出発して、自由端部(47)に向かってテーパを有していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載のハイドロニューマチック式蓄圧器。
【請求項8】
スリット入り環状体(37)によって形成された突起が、テーパのために、一方の側では前記弁体(29)の面(34)から出発する円錐面(45)によって画成され、他方の側では円筒面(43)によって画成されていること、及び前記円錐面(45)と前記円筒面(43)とが、前記弁体(29)の面(34)に対して平行な狭幅の端面(47)によって結合されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載のハイドロニューマチック式蓄圧器。
【請求項9】
請求項1の前提部分に記載されたハイドロニューマチック式蓄圧器を製造する方法であって、
a)前記弁座(33)に向いた面(34)に少なくとも一つの突起(37)が位置する弁体(29)を用意する段階;
b)移動可能な隔離要素を形成する可撓性のダイヤフラム(3)を形成するための射出成形型(53)内に前記弁体(29)を配置する段階;及び
c)前記弁体(29)が、前記弁座(33)に向いた面(34)を露出させた状態でエラストマー内に結合されるように、前記ダイヤフラム(3)を形成するエラストマーを射出する段階;を含む、ハイドロニューマチック式蓄圧器を製造する方法において、
前記面(34)を画成する周縁部に突出エッジ(51)を有する弁体(29)が利用されること、及び前記突出エッジが、前記射出成形型(53)の壁と協働するシーリング部材を形成することを特徴とする、ハイドロニューマチック式蓄圧器を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄圧器ハウジング内に配置された移動可能な隔離要素を備えたハイドロニューマチック式蓄圧器であって、隔離要素が、第1作動室、有利には気体室を、第2作動室としての液体室から分離していて、そして可撓性材料、特にエラストマーから成るダイヤフラムによって形成されており、蓄圧器ハウジングに、液体室への入出路を形成するハウジング開口が位置しており、ハウジング開口における流通が、解放位置及び閉鎖位置に移行可能な弁装置によって制御可能であり、弁装置が、ダイヤフラムの表面部分に位置する弁体を有しており、弁体は、ハウジング開口に位置する弁座に近づくと弁装置を閉鎖位置に移行させ、弁装置は、閉鎖位置でハウジング開口を通る制限された流通を可能にするバイパス装置を有しているハイドロニューマチック式蓄圧器に関する。さらに本発明は、このような形式のハイドロニューマチック式蓄圧器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなダイヤフラム型蓄圧器の場合、気体側の作動室は大抵、高い予圧力下にある作動ガス、特にN2で予め充填されている。予圧力の大きさは100barのオーダーであってよい。作動中、油接続部を有するハウジング開口に油圧が接続されていて、接続された油圧システムの作動油の圧力が規定の作動圧力の範囲にある場合、可撓性ダイヤフラムは、油圧を導く液体室の領域内で蓄圧器ハウジングの内壁から持ち上がり、これにより、ダイヤフラムが反って蓄圧器ハウジングの液体側の内壁から離れることによって生じる容積減少が、元の予充填圧力p0を圧力p1(瞬時の作動圧力)に上昇させ、ダイヤフラムの圧力均衡が形成される。
【0003】
ハウジング開口に流体圧力が全く又は僅かしか形成されていない場合、例えば油接続部に油圧が接続されていないか、又は油圧が無圧である場合には、ダイヤフラムは予充填圧力p0の作用下で液体室の内壁に当て付けられている。ハウジング開口に向かって動かされた表面部分は、この表面部分に位置する弁装置の弁体によってハウジング開口を閉じる。
【0004】
ダイヤフラム型蓄圧器は当該油圧装置内に組み込まれる前、そして気体室内に所望の予充填圧力p0が形成された後に、油接続部を形成する開口がダイヤフラムによって閉じられているため、開いたハウジング開口を有さないという点に限っては有利である。従って、予充填された蓄圧器は、油接続部を形成するハウジング開口を通って不純物又は異物が侵入する懸念なしに、取り扱われ、貯蔵され、及び輸送されることができる。
【0005】
他方において、液圧装置内に組み込まれた蓄圧器の作動中には、弁装置によってハウジング開口が閉鎖されることに起因する問題が生じるおそれがある。作動時に例えば比較的突然の圧力降下が油接続部に生じ、そして弁体がハウジング開口へ急激に動かされるため、このような圧力降下がダイヤフラムの可撓性に基づき急速な閉鎖動作をもたらすと、いわゆる「オイルポケット(Oeltaschen)」が形成されて、ハウジング開口から隔たった壁領域内で作動油の残留体積が液体室内に残される。換言すれば、このような場合ダイヤフラムは、オイルポケット領域内で蓄圧器ハウジングの内壁に全面的に当て付けられるのではなく、オイルポケットの容積に相応して僅かに持ち上げられている。これにより、気体室の容積は、蓄圧器ハウジングの形状によって規定された最大容積に対して相応に小さくなる。その結果、気体室内の気体予圧力は、油接続部の流体圧力が存在しないにもかかわらず、規定された値p0に相当するのではなく、より高い気体予圧力に相当する。これにより、蓄圧器の応答圧力、すなわち開放圧力p1も高くなる。従って、急速な排出及び充填が多数回行われると、p1の上昇を伴う蓄圧器の「膨張」が生じ得る。ここで、液圧装置においてシステム制御装置によって行われるような試験プロセスを気体側で実施すると、予充填圧力が値p0に相当するかどうかの検査の際に、誤って余りにも高い気体予圧力が検知される。このような圧力は、システムによって場合によっては誤って補正される。
【0006】
ここで救済策を提供するために、すなわち、オイル側のハウジング開口に位置する弁装置の存在にもかかわらず、流体圧力がないと、試験プロセス時に誤りを招く可能性のある種々異なる気体予圧力が気体室内に生じるおそれを回避するために、閉鎖位置において、制限された流れがハウジング開口を通るのを可能にするバイパス装置が形成されるように、冒頭で述べた形式の弁装置を形成することが、特許文献1に基づいて既に公知である。この公知の解決手段の場合、弁体のための弁座として役立つ、蓄圧器ハウジングのハウジング開口の縁部に溝が設けられており、これらの溝が、蓄圧器ハウジングのハウジング開口の弁座面形成縁部内に加工されることにより、バイパス装置が形成されている。溝の形成は、ハウジングの製造時の製造コストを高くする。加えて、弁体のために意図された材料が相応の追従性を有すると、弁体の材料が溝内に押し込まれるおそれがある。このことは、結果として弁装置を密に閉鎖し、バイパス装置を無効にしてしまうだろう。
【0007】
上記ダイヤフラム型蓄圧器の他に、従来技術では、ベローズ型蓄圧器の形態のハイドロニューマチック式蓄圧器も知られている。上記ベローズ型蓄圧器の場合、蓄圧器ハウジング内部で、長手方向で見て拡張可能なベローズが延びている。ベローズの一方の自由端は通常、蓄圧器ハウジングの内側に結合されていて、他方の自由端は通常、プレート状の弁閉鎖部材を有している。この弁閉鎖部材で、蓄圧器ハウジングの油流体接続部を閉じ、しかも解放することもできる。ベローズの内部には、この場合ダイヤフラム型蓄圧器手段と比較可能に、通常は作動ガス、特に窒素ガスの形の作動ガスが配置されている。このようなベローズ型蓄圧器手段の代表が特許文献2に示されている。プレート状弁閉鎖部材の下面には、蓄圧器ハウジングの液体流入開口に向かって延びた状態で、環状のエラストマーシール縁が突出している。このシール縁は、より良好な衝撃減衰のために個々のリング・セグメント状突起を有している。しかしこれらの突起の広がり全体は、液体開口を遮断する閉鎖位置において、液体開口を全面的且つ完全に包囲する。冒頭で述べた有利な「バイパス装置」は、このような公知のベローズ型蓄圧器手段を用いては達成されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第202007008175号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1052412号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来技術から出発して、本発明の課題は、特に簡単な構造においても及び特に良好な作動特性においても際立っている、考察されているタイプの蓄圧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
冒頭で述べた形式のハイドロニューマチック式蓄圧器において、このような課題は本発明によれば、弁体が、バイパス装置を形成するために、弁体の、弁座に向いた面に少なくとも一つの突起を有しており、突起が、流通を可能にするスペーサを弁座に対して形成することによって解決される。
【0011】
これにより、蓄圧器ハウジングの改変を必要とすることなしに、弁体の形状付与を行うだけで、油室の油内容物全体を確実に流出させるのを保証するバイパス装置が実現される。このような構造は、蓄圧器の特に合理的な製造を可能にする。
【0012】
有利な実施例の場合、弁体の、弁座に向いた面に少なくとも二つの突起が設けられており、それら突起の間に流通を可能にする間隙が位置していてよい。
【0013】
この配置は、複数の突起が弁体の面に、規則的な位置関係を成して分配されるようにすることができるので特に有利である。これにより、突起は、弁体を弁座面に対して傾かない状態で支持するスペーサを形成する。
【0014】
弁体の面が円形である特に有利な実施例の場合、これらの突起は、面の周縁から僅かな間隔を置いて延びる一つの同心円周に沿って配置されてよい。突起はスリット入り環状体によって形成されてよい。
【0015】
このような構成の場合、スリット入り環状体は四つの同一の部分リング・セグメントを有しており、これらの部分リング・セグメントの間に、部分リング・セグメントの周方向長さの半分よりも小さい長さを有する間隙が設けられてよい。これにより、スペーサとして役立つ突起が申し分のない耐久性を得る一方、好ましい流通特性が生じる。
【0016】
このような突起は、弁体の面に形成されたその基部から出発して、自由端部に向かってテーパを有することができる。
【0017】
本発明の対象はまた、請求項1の前提部分に記載されたハイドロニューマチック式蓄圧器の製造方法でもあり、この方法は、請求項9に記載の方法工程及び方法特徴を有している。
【0018】
以下に図面を用いて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明のハイドロ蓄圧器の一実施例を示す縦断面図である。
図2図2は、実施例の弁装置の弁体を、実際の実施形に対して拡大して示す斜視図である。
図3図3は、弁体を図2の尺度で示す平面図である。
図4図4は、弁体を図3の切断線IV−IV−に沿って示す断面図である。
図5図5は、蓄圧器の実施例のハウジング開口、及びこれと協働する弁装置の領域だけを、図1を拡大して破断した状態で示す部分断面図である。
図6図6は、本発明による方法を利用しながら蓄圧器を製造する際に、ダイヤフラムに形状付与を施すための射出成形型の型部分を不完全な状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図示されたハイドロ蓄圧器は、全体を符号1で示された蓄圧器ハウジング内に弾性的なダイヤフラム3の形の隔壁が配置されたいわゆるダイヤフラム型蓄圧器である。ダイヤフラム3はハウジング1の内部を液体室5と気体室7とに分離している。ハウジング1は図1に向かって見て、上側ハウジングシェル9と下側ハウジングシェル11とから成っている。これらのハウジングシェルはそれぞれ、ほぼ半球状に湾曲した内壁を備えた丸いシェル状を呈する。蓄圧器ハウジング1の、液体室5とは反対側の端部、つまり気体室7に所属する端部には、気体接続部13が位置している。この気体接続部を介して、気体室7には作動ガス、特にN2ガスを予め充填することができる。液体室5に対応配置された端部は、液体室5内に開口するハウジング開口15を有している。ハウジング開口15には油接続部17が外側に取り付けられている。この油接続部17を介して、蓄圧器は油圧(図示せず)に接続され得る。
【0021】
接合部19に沿って互いに突き合わされた上側ハウジングシェル9と他方のハウジングシェル11とは、電子ビーム溶接法によって互いに結合されている。接合部19の領域内には、内壁に固定リング21が固定されている。固定リング21はダイヤフラム3のための支持体を形成する。ダイヤフラム3の、厚くされた周縁ビード23が固定リング21の環状溝25内に嵌め込まれている。この固定リングはシール要素27を介してハウジング1の内壁上にシーリングされている。
【0022】
図1は、ダイヤフラム型蓄圧器を1作動状態で示している。この作動状態において、ダイヤフラム3は、ダイヤフラム3の両側で圧力均衡が形成されている中間位置に位置している。圧力均衡が形成されているのは、油接続部17に接続された、図示されていない油圧が、気体室7内に形成された圧力に相当する流体圧力を発生させるからである。油室5内に油圧が僅かしか又は全く形成されていない状態では、ダイヤフラム3は図1で見て下方に向かって見て動き、そして下側ハウジングシェル11の内側に当て付けられる。この場合、ダイヤフラム3の真ん中の面領域に位置する弁体29は、ハウジング開口15の周縁部31に設けられた弁座33に被さる。油室5の最小容積と気体室7の最大容積とに対応するこのような作動状態では、気体室7内に予充填圧力p0が形成される。その大きさは用途に応じて特有に選択され、そしてこれは液体室5が無圧である間のハイドロ蓄圧器のプリセット値として気体室7内に形成される予充填圧力となる。連続作動時に、予充填圧力p0が不変であるかどうか、そしてそれに相応して蓄圧器が不変の作動特性を有しているかどうかの試験が実用的なやり方で実施される。
【0023】
作動中に、液体室5内に極めて急速且つ急激な圧力降下が生じると、ダイヤフラム3はハウジング開口15に向かって急激に動く。その結果、弁体29は弁座33に当て付けられる。これにより、弁体29は弁装置の構成部分を形成する。
【0024】
ダイヤフラム3が相応に急速又は急激に移動したときに、油の体積5の全体が流出する前にハウジング開口15が閉じられるおそれを回避するために、つまり液体室5内に残留体積が残されることによってオイルポケットが形成されないようにするために、図2〜5から最もよく判るように、バイパス装置が形成されるように弁体29が形成されている。バイパス装置は、弁装置が閉鎖位置にあるときに、制限された流れがハウジング開口15を通るのを可能にするので、どんな油残留体積も液体室5から流出することができる。弁装置の迂回を可能にするために、弁座33に向いた面34に特別に形成された、円形面34の平面から延びる突起が設けられている。その特別な輪郭は図2及び3から最も明らかに見て取れる。弁座33に対してスペーサを形成するこれらの突起は、弁体29の面34が弁座33に直接に接触するのを阻止する。図2及び3に最も明らかに示されているように、突起は、スリット入り環状体の部分リング・セグメント37によって形成されている。これらのセグメントは、円形の弁体29の周縁部39に隣接する一つの同心円周に沿って延びている。それぞれ同じ長さを有する部分リング・セグメント37の間には、それぞれ間隙41が位置している。これらの間隙も同じ長さを有しているので、これらの突起は規則的な位置関係を成して面34に配置されている。図5に示されているように、弁装置が閉鎖位置にあるとき、間隙41はそれぞれ、液体室5とハウジング開口15との間に制限された流通のための流体路を形成する。
【0025】
図2〜4からも明らかなように、部分リング・セグメント37は、面34に形成されたその基部から出発して自由端部に向かうテーパ形状を有している。この形状は、部分リング・セグメントの半径方向外側に位置する側が同軸的な円筒面43(図2及び4参照)によって、そして内側が円錐面45によって画成され、円筒面43と円錐面45とが、弁体29の面34に対して平行な狭幅の端面47によって結合されることによって画成されている。図示の実施例の場合、間隙41の長さはそれぞれ、部分リング・セグメント37の周方向長さの半分よりも小さい。
【0026】
図示の実施例の場合、部分リング・セグメント37によって形成された突起が、規則的な配置関係を成して面34に設けられており、突起の間隙41は流通のための通路を形成する。言うまでもなく、単独の、(図示していない)一体的な突起と同様に、他の形状及び配置関係を有するスペーサが設けられてもよい。前記の事例では、突起に設けられた破断部分又は切欠きが、弁装置の流通のための流路を形成することもできる。
【0027】
図1及びより明白には図5から判るように、弁体29は、面34を画成する周縁部39に、面34の平面から僅かに突出するエッジ51を有するように形成されてよい。このような周縁側のエッジ51を有する弁体29を利用すると、特に有利な製造方法に従って蓄圧器を製造することが可能になる。図6に概略的にのみ示すように、内部に弁体29が形成されたダイヤフラム3を製造する際に、エッジ51を備えた弁体29を射出成形型(そのうち図6には型部分53だけが概略的に示されている)内に配置し、次いで、弁体29が内部に配置された状態でエラストマーを射出することにより、ダイヤフラム3を形成すると、エッジ51は、成形型53の壁に当て付けられることにより、シールエッジを形成し、このシールエッジは、エラストマーが弁体29の面34の下方に制御されない状態で達するのを効果的に阻止する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6