(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698273
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】増加させた焼結作用を有する二酸化チタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 23/07 20060101AFI20150319BHJP
C23C 16/453 20060101ALI20150319BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20150319BHJP
C04B 35/626 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
C01G23/07
C23C16/453
C23C16/40
C04B35/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-8446(P2013-8446)
(22)【出願日】2013年1月21日
(62)【分割の表示】特願2010-508771(P2010-508771)の分割
【原出願日】2008年4月25日
(65)【公開番号】特開2013-75829(P2013-75829A)
(43)【公開日】2013年4月25日
【審査請求日】2013年2月1日
(31)【優先権主張番号】07108632.6
(32)【優先日】2007年5月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュルツェ−イズフォート
(72)【発明者】
【氏名】オスヴィン クロッツ
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ゴルヒェルト
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ディーナー
(72)【発明者】
【氏名】カイ シューマッハー
【審査官】
村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−504368(JP,A)
【文献】
特開2001−039704(JP,A)
【文献】
特開平11−349328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/07
C04B 35/626
C23C 16/40
C23C 16/453
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET表面積30〜65m2/g及びルチル含有率45〜70%を有する凝集一次粒子の形の結晶二酸化チタン粉末を製造するための方法であって、
− 四塩化チタン蒸気及び、それとは別に、水素、空気又は酸素を富化させた空気を、混合チャンバー中に導入し、
− 続いて、四塩化チタン蒸気、水素及び一次空気の混合物をバーナーで点火し、そしてその火炎を、反応チャンバー中で燃焼し、
− 続いて、その固体を、ガス状物質から分離し、
その際、BET表面積30〜65m2/g及びルチル含有率45〜70%に達するために使用される量は、以下の式
A=105{[(TiCl4×H2)/(空気の量×合計ガス)]/BET}
[式中、A=6〜12である]
に従い、かつTiCl4、H2、空気の量及び合計ガスの単位はkmol/hであり、BETの単位はm2/gであり、かつAの単位はg/m2であるように選択され、および
一次空気中の酸素含有量、又は一次空気中及び一次空気に加えて反応チャンバー中に導入されてもよい二次空気中の合計の酸素含有量を供給された酸素量(モル)とし、四塩化チタンを二酸化チタンに転化しかつ存在する過剰な水素を水に転化するのに十分である酸素の化学量論的量を化学量論的酸素量(モル)とすると、
ラムダ=供給された酸素量(モル)/化学量論的酸素量(モル)
の式において、ラムダが1〜2の範囲であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増加させた焼結作用を有する二酸化チタン粉末、その製造、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンを、熱分解法によって製造することができることは公知である。本発明の目的に関して、熱分解法は、火炎酸化又は火炎加水分解である。火炎酸化において、二酸化チタン前駆体、例えば四塩化チタンを、反応式1aに従って酸素によって酸化する。火炎加水分解において、二酸化チタンを、燃料ガス、例えば水素と、酸素との燃焼から生じる、加水分解に必要である水で、二酸化チタン前駆体の加水分解によって形成する(反応式1b)。
TiCl
4+O
2−>TiO
2+2Cl
2(反応式1a)
TiCl
4+2H
2O−>TiO
2+4HCl(反応式1b)
【0003】
前記二酸化チタンは、一般に、結晶変態のアナターゼ及びルチルで存在する。以下に記載されている従来技術において、主な焦点は、アナターゼの割合を最大にすることである。
【0004】
WO 96/06803号は、二酸化チタンを、火炎酸化及び火炎加水分解の燃焼によって製造する方法を記載している。ここで、ガス状四塩化チタンと酸素は、反応域で混合され、そしてその混合物は、燃料ガスとして炭化水素の燃焼によって製造された火炎で加熱される。アナターゼ変態の100%までの高い含有率を有する二酸化チタン粉末が得られる。
【0005】
Powder Technology 86 (1996) 87〜93は、拡散反応器中で実施される火炎酸化法を開示している。ルチル含有率は、BET表面積約40〜60m
2/gの範囲で最大6%である。
【0006】
DE−A−102004055165号は、火炎加水分解によって製造され、かつBET表面積20〜200m
2/gを有する二酸化チタン粉末を開示している。アナターゼ/ルチル比は、一定の表面積で2:98〜98:2の範囲で変動することができると言われるが、その実施例は、アナターゼの割合が明らかに優位を占めていることを示す。特に、BET表面積約40〜50m
2/gの範囲において、アナターゼ含有率は、少なくとも71%である。
【0007】
JP−A−10251021号は、明確に、火炎酸化によって得られることができ、かつそれぞれ、BET表面積3.2、28及び101m
2/g、並びにルチル含有率97、32及び15%を有する3つの二酸化チタン粉末を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO 96/06803公報
【特許文献2】DE−A−102004055165号明細書
【特許文献3】JP−A−10251021号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Powder Technology 86 (1996) 87〜93
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術は、熱分解二酸化チタンに強い関心を示している。熱分解法の複雑さのために、いくつかの材料パラメータのみが、標的とされる方法で起こりうる。
【0011】
二酸化チタンは、例えば、セラミクス産業において使用されうる。本明細書で、高い焼結作用を有する粉末を使用することが所望されうる。
【0012】
従って、本発明の目的は、高い焼結作用を有する二酸化チタン粉末を提供することであった。
【0013】
本発明の他の目的は、この二酸化チタン粉末を製造するための方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、BET表面積30〜65m
2/g及びルチル含有率
45〜70%を有する凝集一次粒子の形の結晶二酸化チタン粉末を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前記のルチル含有率は、合計100%となる結晶変態のルチル及びアナターゼの合計の割合である。ルチル含有率は、有利には、55〜65%でありうる。
【0016】
本発明の二酸化チタン粉末のBET表面積は、有利には、35〜60m
2/g、及び特に有利には40〜55m
2/gでありうる。
【0017】
一般的に、ルチル及びアナターゼに加えて他の結晶変態が、本発明の二酸化チタン粉末のX線回折パターンにおいて検出されることができない場合がある。
【0018】
本発明の目的に関して、一次粒子は、最初に反応で形成され、かつ共に成長して、反応の他の過程において凝集体を形成することができる粒子である。
【0019】
本発明の目的に関して、凝集体は、共に成長している同一の構造及びサイズの一次粒子であり、その際該凝集体の表面積は、個々の分離された一次粒子の合計の表面積よりも小さい。多数の凝集体又は個々の一次粒子は、合されて凝集塊も形成することができる。本明細書で、凝集体又は一次粒子は、互いに適切に接触する。凝集塊は、それぞれの場合において、それらにおける粒子又は凝集体を共に成長する程度の機能として、エネルギーの導入によって再度破壊されうる。
【0020】
本発明の二酸化チタン粉末において、45μmより大きい直径を有する凝集体及び/又は凝集塊の割合は、0.0001〜0.05質量%の範囲である。0.001〜0.01質量%の範囲が好ましく、及び特に、0.002〜0.005質量%の範囲が好ましい。
【0021】
本発明の二酸化チタン粉末は、塩化物残分を含有しうる。塩化物含有率は、有利には、0.1質量%未満である。特に、0.01〜0.05質量%の範囲の塩化物含有率を有する本発明による二酸化チタン粉末が好ましい。
【0022】
本発明の二酸化チタン粉末の突き固め密度は、制限されない。しかしながら、突き固め密度20〜200g/lが有利であることが見出されている。突き固め密度30〜120g/lが特に好まれうる。
【0023】
本発明は、さらに、二酸化チタン粉末の製造方法を提供し、その際、
− 四塩化チタン蒸気及び、それとは別に、水素、空気又は酸素を富化させた空気を、混合チャンバー中に導入し、
− 続いて、四塩化チタン蒸気、水素及び一次空気の混合物をバーナーで点火し、そしてその火炎を、反応チャンバー中で燃焼し、
− 続いて、その固体を、ガス状物質から分離し、
− その際、BET表面積30〜65m
2/g及びルチル含有率
45〜70%に達するために使用される量は、以下の式
A=10
5{[(TiCl
4×H
2)/(空気の量×合計ガス)]/BET}
[式中、A=6〜12である]
に従い、かつTiCl
4、H
2、空気の量及び合計ガスの単位はkmol/hであり、BET表面積の単位はm
2/gであり、かつAの単位は
g/m2であるように選択される。
【0024】
ガスの総量は、四塩化チタン、水素、一次空気及び、適宜二次空気からなる。
【0025】
前記の四塩化チタンは、有利には、200℃未満の温度で蒸発される。
【0026】
本発明の方法は、一次空気に加えて、反応チャンバー中に導入される二次空気でも実施されうる。かかる一実施態様において、一次空気/二次空気の比に関して、10〜0.1であることが有利であることが見出されている。特に、4.5〜0.3の範囲であることが好ましい。二次空気の量を正確に計測供給できるために、火炎を、周囲空気から閉鎖させた反応チャンバー中で燃焼させる必要がある。これは、正確な加工条件を可能にする。
【0027】
原則として、一次空気及び/又は二次空気が、予熱された酸素又は一次空気及び/又は二次空気で富化される方法で実施されることができる。本発明の目的に関して、"予熱された"は、空気を、50℃〜500℃の温度まで予熱することを意味する。
【0028】
さらに、反応は、有利には、1〜9の範囲におけるラムダ値、及び1〜9の範囲におけるガンマ値で実施される。
【0029】
火炎加水分解によって製造された酸化物は、通常、導入された水素が、TiCl
4からの塩素と反応してHClを形成するのに少なくとも十分であるような、ガス状出発材料の化学量論比で得られる。このために要求される水素の量は、水素の化学量論量と言われる。
【0030】
導入された水素と、前記の化学量論的に要求される水素との比は、ガンマと言われる。従って:
ガンマ=供給されたH
2(mol)/化学量論的H
2(mol)
【0031】
火炎加水分解によって製造される酸化物の場合において、通常、TiCl
4を二酸化チタンに転化し、かつ未だ存在しているあらゆる過剰な水素を水に転化するのに少なくとも十分である酸素(例えば空気)の量を使用することもある。この酸素の量は、化学量論的酸素量と言われる。
【0032】
類似の方法において、供給された酸素と化学量論的に要求された酸素との比は、ラムダと言われる。従って:
ラムダ=供給されたO
2(mol)/化学量論的O
2(mol)
【0033】
ガス状物質を分離した後に、二酸化チタン粉末は、有利には蒸気で処理されうる。この処理は、第一に、塩素含有基を表面から除去するために供給する。同時に、この処理は、多くの凝集塊を低減する。この方法は、適宜、空気と共に、蒸気で、並流又は向流で粉末を処理することによって、連続して処理されうる。蒸気での処理が実施される温度は、250〜750℃の範囲であり、450〜550℃の範囲での値が好ましい。
【0034】
さらに、本発明は、セラミクス産業において、本発明の二酸化チタン粉末の使用を提供する。
【実施例】
【0035】
分析方法
BET表面積を、DIN 66131に従って測定する。
【0036】
突き固め密度を、DIN ISO 787/XI K 5101/18(篩がけなし)に基づく方法によって測定する。
【0037】
嵩密度を、DIN−ISO 787/XIに従って測定した。
【0038】
pHを、DIN ISO 787/IX、ASTM D 1280、JIS K 5101/24に基づく方法によって測定する。
【0039】
45μmよりも大きい粒子の割合を、DIN ISO 787/XVIII、JIS K 5101/20に従って測定する。
【0040】
塩化物含有量の測定:本発明による粒子約0.3gを正確に量り、20%の濃度の水酸化ナトリウム溶液(分析試薬液)20mlと混合し、溶解し、そして冷却したHNO
3 15mlを撹拌しながら導入する。その溶液の塩化物含有率を、AgNO
3溶液(0.1mol/l又は0.01mol/l)で滴定する。
【0041】
実施例1(本発明による)
TiCl
4蒸気0.0042kmol/hを、混合チャンバー中に導入する。これとは別に、水素0.19kmol/h及び一次空気0.683kmol/hを、この混合チャンバー中に導入する。その反応混合物を、バーナーに供給し、そして点火する。この火炎は、水冷式炎管中で燃焼する。さらに、二次空気0.892kmol/hを、反応領域中に導入する。形成された粉末を、下流のフィルター中で分離し、続いて520℃で空気及び蒸気を用いて向流的に処理する。
【0042】
出発材料の量から算出された因数Aは、8.2g/m
2である。この二酸化チタン粉末は、BET表面積34m
2/g及びルチル含有率54%を有する。
【0043】
本発明による実施例2〜7を、同様に実施する。出発材料の量、並びに得られた粉末のBET表面積及びルチル含有率を、表において報告する。
【0044】
比較例C1〜C10を、実施例1と類似の方法で同様に実施するが、しかし出発材料の量を、因数Aが本発明による範囲を超えるように選択する。得られた二酸化チタン粉末は、本発明による範囲を超えるBET表面積及びルチル含有率を有する。
【0045】
C11及びC12は、市販の二酸化チタン粉末を示す。C11は、Aeroxide(登録商標)TiO
2 P25であり、C12は、Aeroxide(登録商標)VP TiO
2 P90であり、双方ともDegussa社製である。
【0046】
本発明による実施例1及び2の二酸化チタン粉末を、匹敵するBET表面積を有する比較例C4及びC5の粉末に対する焼結作用に関して比較した。BET表面積における割合の増加は、実施例1及び2の二酸化チタン粉末の極めて高い焼結作用を実証する。
【0047】
【表1】