【発明の効果】
【0029】
純粋なμ−オピオイドと比較した慢性痛の場合の作用の強化
a) 神経障害性痛
典型的なμ−アゴニストとは反対に、意外にも0.1〜30、有利に20までの範囲内の混合されたORL1/μ−アゴニストの場合には、神経障害性痛モデルにおける鎮痛についての有効性の明らかな向上を観察することができる。拮抗作用試験において、前記ORL1−成分は混合されたORL1/μ−アゴニストの場合に鎮痛作用についての直接的寄与が提供されることが示された(
図3)。ORL1/μ−割合が0.5(化合物A4)の物質とモルフィンとの未処理の動物及び神経障害性の動物における直接的比較は、ニューロパシーの形成によりモルフィンの有効性は低下する(このことは臨床的事象と一致する)が、混合されたアゴニストについては増加する傾向を示す(
図5、5a、6、6a)。
【0030】
急性痛モデル(テールフリック(Tail-flick)、ラット/マウス)及びニューロパシー痛みモデル(ラットに関するチュング−モデル(Chung-Modell)並びにラット/マウスに関するベネット−モデル(Bennett-Modell))における鎮痛についての有効性の比較は、本発明による特性を有する化合物の例外性を示す(
図1及び2参照)。神経障害性痛モデルの場合の鎮痛能力が急性痛モデルの場合よりも低い(5分の1まで)純粋なμ−オピオイドとは反対に、混合されたORL1/μ−アゴニストの鎮痛能力は神経障害性痛モデルの場合に急性痛モデルの場合よりも2〜10倍高い。例えば、臨床的に使用されるμ−オピオイドのオキシコドンは、神経障害性痛の場合に、急性痛と比較して3分の1〜5分の1の能力であるが(動物モデルに依存する)、それに対してORL1/μ割合が0.5(化合物A4)の混合されたアゴニストの場合には、神経障害性痛の場合に急性痛の場合よりも約10倍高い能力である。
【0031】
前記効果を生じる範囲の上限は、化合物B8により証明されていて、前記化合物B8はORL1/μ−割合0.03を有し、かつ神経障害性痛モデルの場合に、急性痛モデルの場合よりももはやより良好な効果を示さない。この実施例A1(ORL1/μ−割合が0.1)は、それに対して10倍良好な効果を示す。
【0032】
ORL1/μ−割合が20である化合物A11は、骨髄内投与で、神経障害性痛の場合になお高い作用の強化を示す。この化合物は、急性痛の場合に全身投与により依然として良好な有効性を示す(マウスのテールフリック試験、i.v.ED
50=0.42mg/kg)。ORL1/μ−割合が140:1である化合物B9は、骨髄内投与で、神経障害性痛の場合に同様に高い作用の強化を示す。しかしながら、この化合物は、全身投与により急性痛の場合に低すぎるμ−成分のためにもはや効果がない。内因性ORL−1−リガンドのノシセプチンは、急性痛モデル(テールフリック試験、i.v.)の場合にもはや効果を示さない。ORL1−成分の抗オピオイド特性のために、μ−成分と比較して30:1よりも明らかに良好であるORL1−成分を有する化合物の場合には、急性痛の場合の作用は、その作用強度において段階−3−オピオイドと同等であるために悪すぎる。この関係は、ORL1−成分の拮抗作用により表すことができる。この所見は、本発明による特性を有する化合物が、明らかに特殊な特性を有する混合されたμ/ORL1−アゴニストの定義されたサブグループを形成することを示す。本発明による前記範囲の下限は、従って30であり、有利に20である。
【0033】
チュング−モデル(Chung-Modell)での拮抗作用試験の場合に、混合されたORL1/μ−アゴニストの鎮痛についての有効性は両方の成分に起因することが証明された。混合されたORL1/μ−アゴニストの投与後に、μ−アンタゴニストによって、並びにORL1−アンタゴニストによってそれぞれ鎮痛作用の部分的低下を示すことができる(
図3及び4)。このことは、μ−オピオイド−成分もORL1−成分も慢性の神経障害性痛の場合に作用に寄与することを証明する。
【0034】
この拮抗作用試験は、本発明による特性が前記化合物のORL1−アゴニスト作用及びμ−アゴニスト作用に直接起因していることを明らかに示している。
【0035】
急性痛及び神経障害性痛における異なる有効性を比較する場合に「痛みの質」(テールフリック、侵害受容刺激vs.チュング(Chung)、触覚アロディニア)の可能な影響を排除するために、A4とモルフィンを比較してチュング動物及び見かけ上手術された動物において試験した。痛みモデルとしてテールフリックを全ての場合で使用した。この直接的な比較は、モルフィンが見かけ上手術された動物に関して極めて良好な作用を有することを示し、これは急性痛の場合に相応するが、手術された動物の場合にニューロパシーの形成の後にモルフィンの有効性は比較的明らかに低下することを示す(
図7)。これは臨床的状況にも一致し、臨床におけるμ−オピオイドの問題の一つを示す。それに対して、A4は見かけ上手術された動物に関して明らかな作用を示し、その作用はニューロパシー形成の後でもなお増加することを示す(
図8)。これは、神経障害性痛の治療の場合に純粋なμ−オピオイドと比較して混合されたORL1/μ−アゴニストの明らかな利点を示す。
【0036】
従って、100を下回るnMのμ−オピオイド−レセプターに関するK
i値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20の1/[K
i(ORL1)/K
i(μ)]として定義されたORL1/μ−割合を有する化合物は、神経障害性痛の治療のために有利に使用できる。
【0037】
神経障害性の動物における抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離
他の利点は、本発明の範囲内で混合されたORL1/μ−アゴニストが抗侵害受容効果と抗アロディニア効果との分離により示される。いわゆるアロディニアの場合に、関係のない身体領域で確かに痛みを伴わない刺激(例えば接触、温熱刺激、寒冷刺激)により痛みが引き起こされる。この機械的アロディニアは、帯状ヘルペス後の神経痛の際に典型的であり、この寒冷アロディニアは心的外傷後神経損傷及びいくつかの多発性ニューロパシーの場合に頻繁に生じる。特に糖尿病によるニューロパシーの場合には、機械的アロディニアの発症が典型的である(Calcutt及びChaplan著, Br. J. Pharmacol. 1997, 122, 1478-1482)。
【0038】
慢性痛患者の所定の患者グループの場合には、しかしながら通常の痛み感覚が十分に存続されているアロディニア及び痛覚過敏に対処する場合に有利である。日常正確において痛みの保護メカニズムが機能しているこれらの患者は、従って、特別にアロディニア及び痛覚過敏にだけ対処するが、一般的な痛み感覚にはできる限り手を付けない投薬法が必要である。このことは、例えば通常ではほとんど痛みを感じない刺激、例えば軽い接触又は着衣による刺激によって典型的な痛みが引き起こされる帯状ヘルペス後の神経痛にも通用する。
【0039】
チュング−モデル(Chung-Modell)の場合には、同側性又は対側性の脚(脊髄神経結紮がなされた側に対して)についての痛み反応の比較試験によって、抗侵害受容作用(対側性)及び抗アロディニア作用(同側性)が区別される。
【0040】
μ−アゴニストのモルフィンについて、1mg/kg iv.の投与後にだけ純粋な抗アロディニア作用が観察することができた。この最大の有効性は、この場合に29%のMPE(最大可能効果)であり、これは弱い作用に相当することが確認された。次に高い試験用量(2.15mg/kg iv.)の場合には、既に明らかな抗侵害受容作用が生じる(
図5、5a)従って、モルフィンの場合には明らかな抗アロディニア効果と抗侵害受容効果との明確な分離は達成できない。
【0041】
これに対して、最大の、A4の純粋な抗アロディニア効果は56%MPEである。これは、1μg/kg iv.の試験用量で達成され、良好な有効性に相当する(
図6、6a)。これは、純粋なμ−オピオイドと比較した混合されたORL1/μ−アゴニストの更なる利点を示す。
【0042】
従って、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターに関するKi値でORL1/μ−割合が0.1〜30、有利に1:10〜20:1の化合物を、有利に一般的な痛み感覚を十分に維持する用量で、アロディニア、痛覚過敏及び自発的痛みの治療のために使用することも有利である。ヒトに関する一般的な痛み感覚の維持は、寒冷昇圧モデルで調査することができる(Enggaard et al.著, Pain 2001, 92, 277-282)。
【0043】
さらに、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターに関するKi値でORL1/μ−割合が0.1〜30、有利に0.1〜20の化合物を、帯状ヘルペス後の神経痛の場合の痛みの治療のために使用することが有利である。
【0044】
多様な神経障害性痛の形態の精確な調査のために、A4は細胞増殖抑制剤により誘導された多発性神経障害性痛の調査のためのモデルにおいて調査された。この細胞増殖抑制剤により誘導された多発性神経障害性痛は、神経障害性痛の臨床的に極めて重要なサブグループを形成する。この多発性ニューロパシーは細胞増殖抑制剤のビンクリスチンの投与によって引き起こした。従って、ラットに関して、ビンクリスチンを用いた化学療法の後の臨床的症状を模倣する病状が生じた。比較物質として、この場合にモルフィンを調査した。
【0045】
A4は、1μg/kgの用量から、つまり慢性痛においてED
50の範囲内にある用量から有意な有効性を示した。しかしながら、0.464μg/kgの低い用量の場合には、まだ有意な有効性を示さなかった(
図24)。モルフィンについては、2.15mg/kgの用量から良好な有効性が観察された(ED
50 チュング(Chung)ラット 3.7mg/kg)。
【0046】
さらに、糖尿病により誘導される多発性神経障害性痛に対するこの有効性を調査した。この痛みの形態はラットに関するモデルで調査し、この場合、ストレプトゾトシンの投与により糖尿病による多発性ニューロパシーを引き起こした。A4は0.316μg/kg i.v.の試験された最も低い用量で、従って0.464μg/kgの用量ではまだ有意な有効性が観察されなかった細胞増殖抑制剤により誘導された多発性神経障害性痛の場合よりも低い用量範囲で、ラットに関する糖尿病により誘導された機械的痛覚過敏の既に有意な阻害を示した。この低い用量範囲の場合でも、A4は対照グループに効果を示さなかった。このことは、糖尿病により誘導される多発性神経障害性痛の場合に、
1.) 意外にも、A4のこの有効性は他の神経障害性痛の形態の場合よりもさらに良好であり、かつ
2.) A4の抗痛覚過敏作用は、抗侵害受容作用を引き起こさない用量範囲においても既に存在し(
図26)、ひいては急性痛敏感性に不利な影響を与えずに多発性神経障害性痛の軽減を可能にすることを意味する。
【0047】
それに対して、モルフィンの場合には、抗痛覚過敏作用は、対照グループにおいても抗侵害受容作用が生じる用量範囲で初めて観察することができる(
図27)。糖尿病により引き起こされる多発性神経障害性痛の場合にこの標準治療は今日ではモルフィンのようなμ−アゴニストの投与ではなく特にプレガバリンの投与であるため、プレガバリンをさらなる比較として同じモデルにおいて調査した。ここでも、抗痛覚過敏作用は、対照グループにおいても抗侵害受容作用が生じる用量範囲で初めて観察することができることが示された(
図28)。これは、糖尿病により引き起こされる多発性神経障害性痛の場合の本発明による特性を有する化合物の際立った有効性を強調する。
【0048】
従って、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのK
i値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物は、糖尿病による多発性神経障害性痛の治療のために特に有利に使用される。
【0049】
b) 炎症性痛
2種のin-vivo-モデル(脊髄損傷されたラットに関するシングル−モーターユニット誘導及びCFA**により誘導された痛覚過敏)において、慢性炎症の後で混合されたORL1/μ−アゴニストの有効性が高められたことを示すことができた。
【0050】
脊髄損傷されたラットにおけるシングルーモーターユニット誘導未処理の動物とカラゲナンにより誘導された炎症後の動物の比較
ラットにおいて、炎症を誘導した後の24時間に、A4(ORL1/μ割合 1:2、
図9及び10)及びA11(ORL1:μ割合 20:1)の抗侵害受容作用は炎症前の値と比較して明らかに高められていることが観察される。μ−アゴニストのモルフィンのこの抗侵害受容作用は、それに対して炎症後にはより弱い傾向を示す。(
図11及び11a)。このことは、慢性炎症後に、混合されたORL1/μ−アゴニストの有効性は高められるが、純粋なμ−アゴニストはそれに対して高められないことを示す。
【0051】
CFAにより誘導された痛覚過敏
慢性炎症性痛に対するモデルにおいて、CFAの注射により後ろ脚の炎症を誘導させた。炎症を誘導させた後の1h、3h、24h及び4日後に、触覚性痛覚過敏及び痛覚を測定した。モルフィンは全体の調査期間にわたり軽度に低下する抗痛覚過敏作用又は同じに維持される抗侵害受容作用を示したが、A4の抗痛覚過敏作用及び抗侵害受容作用は24hにわたり増加した。この効果は少なくとも4日間安定である(
図12及び12a)。このことは、神経障害性痛の際の刺激に対してと同様に、混合されたORL1/μ−アゴニストが、急性痛の鎮痛の場合と比較して炎症性痛の場合の鎮痛の明らかな作用の強化により優れていることを示す。
【0052】
内臓性炎症性痛
カラシ油により誘導された非神経性の内臓性炎症のマウスにおける伝達されたアロディニア及び伝達された痛覚過敏についてのモデルにおけるA4及びフェンタニルの比較試験は、両方の疼痛パラメータに対して、純粋なμ−オピオイドと比較して混合されたORL1/μ−アゴニストの有意に高められた有効性を示した。A4の鎮痛についての有効性は、2つの試験した疼痛パラメータに関して、急性痛での鎮痛についての有効性よりも約6倍〜7倍高められる。これに対して、内臓性炎症性痛におけるフェンタニルの鎮痛についての有効性は、急性痛の場合よりも低い。このことは同様に、神経障害性痛の際の刺激に対してと同様に、内臓性炎症性痛の場合に混合されたORL1/μ−アゴニストが、急性痛と比較して鎮痛の明らかな作用の強化により優れていることを示す。これらの化合物は、従って減少された副作用の他に、純粋なμ−オピオイドと比較して炎症性痛における改善された有効性も示す。
【0053】
100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのK
i値の場合の0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1:μ−割合を有する混合されたORL1/μ−アゴニストは、従って炎症性痛において高い有効性により優れている。従って、本発明の主題は、炎症性痛を患う患者の治療のための、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのK
i値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物の使用でもある。この炎症性痛は、例えばリウマチ性関節炎又は膵臓炎により引き起こされることがある。
【0054】
100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのK
i値の場合の0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1:μ−割合を有する混合されたORL1/μ−アゴニストは、急性痛と比較して慢性痛において作用の強化を示すことが判明した。従って、これらの化合物は急性痛において必要な用量を下回る用量で慢性痛において適用されることが有利である。有利に、これらの化合物は慢性痛の場合に、急性痛の場合に適用される用量よりも少なくとも2分の1以下の用量で、特に有利に少なくとも5分の1以下の用量で適用される。動物に関して、この用量はテールフリックにおけるED
50として測定することができ、ヒトに関しては寒冷昇圧モデルで測定することができる(Enggaard et al.著, Pain 2001, 92, 277-282)。
【0055】
c) 急性痛
0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1:μ−割合を有するこの混合されたORL1/μ−アゴニストは、i.v.投与後に多様な急性痛モデル及び種類において完全な有効性を示す。ラットについても、マウスについても(テールフリック、
図13)前記効果を示すことができた。
【0056】
混合されたORL1/μ−アゴニストと純粋なμ−アゴニストとの比較において、混合されたORL1/μ−アゴニストは、改善された適合性の場合に同等の有効性を示す。この結果は、混合されたORL1/μ−アゴニストが急性痛の場合においても優れた有効性を有することを示す。これらの化合物は、急性痛の場合のその有効性において段階−3のオピオイドと同等である。このことは、数世紀以来強い痛みの治療の領域を占めていた純粋なμ−アゴニストとは異なるメカニズムを介して鎮痛作用が行われるが、同じ作用強度を有する化合物が存在することを意味している。急性痛と比較して慢性痛におけるその意外な作用の強化の他に、本発明による結合プロフィールを有する化合物は、純粋なμ−アゴニストと比較して明らかに改善された副作用プロフィールをも示す。
【0057】
d) 副作用
オピオイドにより誘導された痛覚過敏
オピオイドの慢性的な投与は、痛みのある患者において痛覚過敏を引き起こす(Chu et al.著 2006, J. Pain 7:43-48参照)。同様の現象が、急性の投与後に禁断症状の形でも生じる(Angst et al.著 2003, Pain 106:49-57)。動物モデルにおいて、純粋なμ−オピオイドは急性の投与後に過渡的な痛覚過敏を誘導し、これは例えばソフト−テールフリックモデルにおいて過渡的「前侵害受容」期間として検出することができる。
【0058】
このオピオイドにより誘導された痛覚過敏は、純粋なμ−オピオイド(フェンタニル及びモルフィン)についての低減された刺激強度(25%熱放射線強度)を用いる改良されたテール−フリックモデルを用いて示すことができる。これとは反対に、混合されたORL1/μ−アゴニスト(A4及びA7)の急性の投与後には過渡的な痛覚過敏は観察されなかった(
図14〜14c)。
【0059】
このことは、混合されたORL1/μ−アゴニストの慢性的な投与の場合に痛覚過敏を誘導しないか又は純粋なμ−オピオイドと比較してより低い痛覚過敏を生じることを示す。この典型的なμ−オピオイド−副作用のひとつは、混合されたORL1/μ−アゴニストの場合に従って低減される。
【0060】
従って、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのK
i値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物は、痛みの治療の際のオピオイドにより誘導される痛覚過敏の低減のために有利に使用される。
【0061】
特に、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのK
i値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物は、痛覚過敏を発症する高い危険性を有する患者の治療の場合に使用するのが有利である。これには、例えば既に痛覚過敏を患いかつ手術を受けなければならない患者、例えば過敏性腸疾患患者(内臓性痛覚過敏)、腫瘍疼痛患者及び筋骨核疼痛を患う患者又は強い作用のオピオイド、例えばフェンタニルを術中に髄腔内に投与された患者(例えば帝王切開患者)が属する。従って、本発明の主題は、痛覚過敏を発症する高い危険性を有する患者における痛みを緩和するための、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのK
i値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物の使用でもある。
【0062】
本発明の主題は、痛みの治療のための、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな痛覚過敏を誘導する化合物の使用でもある。
【0063】
禁断
マウスに関するナロキソンにより誘導された禁断飛び跳ね行動において、μ−成分よりも10分の1未満の弱いORL−1成分を有する化合物は、禁断飛び跳ね行動を抑制することを示すことができた。より弱いORL1−成分を有する化合物は、それに対して禁断飛び跳ね行動を引き起こした。「禁断飛び跳ね行動」試験の場合に、マウスは定義された時間にわたり数回試験物質で処理された。μ−オピオイドの場合には、この期間内に身体的依存性が達成された。この治療の完了時に、ナロキソン、μ−アンタゴニストの投与によりオピオイドの作用は突然高められる。身体的依存性が現れた場合にマウスは、飛び跳ね行動の形態を表す特徴的な禁断症状を示す(Saelens JK著, Arch Int Pharmacodyn190: 213-218, 1971)。
【0064】
本発明による特徴を有する化合物は、ORL1作用成分に基づき、純粋なμ−オピオイドは有していない治療法の改善を引き起こす付加的な特徴を有する。マウスに関する禁断飛び跳ね行動の場合に、組み合わされたORL1/μ−アゴニスト、例えばA9、A6、A4又はA7を用いて治療された動物の場合にはナロキソンによって禁断症状は引き起こされないか僅かな禁断症状が引き起こされるだけであることが示された(
図15c〜e参照)。A1はそれに対して、禁断飛び跳ね行動の場合に明らかな禁断症状(
図15b)を示した。ラットの自発的禁断の際に、ラットの体重を試験物質の中止後に数日間にわたり記録したが、モルフィンとA1(ORL1:μ 0.1)との間に明らかな差異は認識できない(
図16)。モルフィンの中止後にラットの体重はほぼ10%減少するが、A9の中止後には約3%減少するだけであった。0.1のORL1/μ−割合は、ここでも、本発明による特徴を有する化合物の有利な作用までの限界を観察することができる。この特性により100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのK
i値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物は、身体的依存性に対する高い危険性を有する患者グループに特に適している。このグループには、例えば既にμ−オピオイドを経験している患者が属する。
【0065】
しかしながら、身体的依存症の抑制のために、ORL1−成分はいくらか高められ、その際、前記身体的依存症は、0.1のORL1:μ−割合で既に低減されているのが有利である。痛みの治療のためと、同時に禁断症状の抑制する場合に、前記化合物のORL1/μ割合は少なくとも0.25であるのが有利であり、特に少なくとも0.5であるのが有利である。この高められたORL1成分を有する化合物は、有利に身体的依存性のために特別な危険性を有する患者グループの場合に使用される。
【0066】
本発明の主題は、痛みの治療のための、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな禁断症状を誘導する化合物の使用でもある。前記効果は、実施例において記載された禁断飛び跳ね行動についてのモデル及び自発的禁断についてのモデルにより明らかにすることができる。
【0067】
精神的依存症/中毒の低減
混合されたORL1/μ−アゴニストは、純粋なμ−アゴニストと同様に、ラットの場合に場所条件付け(Platzkonditionierung)を引き起こす。場所嗜好性の誘導のための閾値用量は純粋なμ−オピオイド(B1、B3〜B6の実施例に関して)の場合に鎮痛作用の半値有効用量を明らかに下回るが、前記閾値用量は他方で混合されたORL1/μ−アゴニスト(A4、A7及びA6の実施例に関して)の場合に鎮痛作用の半値有効用量の範囲内にあるかもしくはそれを上回る(
図21)。このことは、混合されたORL1/μ−アゴニストが純粋なμ−オピオイドと比較して減少された中毒能力を有することを意味する。
【0068】
μ−オピオイドの身体的及び精神的依存能力にもかかわらず、前記μ−オピオイドは以前から臨床において成果を達成して使用されており、この場合、たいていの患者は必要な治療の後に再び前記医薬を取り止めている。所定の患者グループは、しかしながら中毒挙動になりやすい。従って、本発明による特性を有する化合物は、潜在的に中毒になりやすい患者の場合の痛み治療のために使用することが有利である。
【0069】
この患者グループには、例えば精神疾患を有するヒト、特に抑鬱性のヒト又は不安障害を患うヒトが属する(Paton et al.著, Journal of Genetic Psychology 1977, 131, 267-289)。有利に、本発明による特性を有する化合物は、従って、精神疾患を有する患者の場合に、痛みの治療の過程で精神的依存症の危険を低下するために使用される。特に、本発明による特性を有する化合物は、鬱病又は不安障害を患う患者に痛みの治療のために適用するのが有利である。
【0070】
本発明の主題は、痛みの治療のための、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな精神的依存症を誘導する化合物の使用でもある。この効果は、例えば拮抗作用試験により明らかにすることができるが、実施例に記載されたような場所嗜好性のための試験によっても明らかにすることができる。
【0071】
呼吸抑制
μ−媒介された呼吸抑制は、混合されたORL1/μ−アゴニストの場合に明らかに軽減される。この急性の呼吸抑制作用は、完全な鎮痛作用用量でも鎮痛閾値用量でもラットに関して動脈血液のpCO
2の上昇として測定された。
【0072】
B1(フェンタニル、
図17)及びB4(オキシコドン、
図17a)に関して示された純粋なμ−オピオイドの場合に、最大鎮痛作用の時点で、μ−誘導された呼吸抑制に基づき動脈のpCO
2の明らかな上昇が生じる。90〜100%の作用用量の場合には、このpCO
2値は50%より大きく上昇する。
【0073】
それに対して、前記pCO
2値は、A4、A5、A6及びA9のような混合されたORL1/μ−アゴニストの場合にわずかに上昇しただけである(
図17b〜e)。数時間にわたり鎮痛について最大に作用する極めて高い用量の場合であっても、この動脈pCO
2は約20〜30%上昇するだけである。
【0074】
拮抗作用試験により、
(1) 前記呼吸抑制は、A4とB11との実施例のORL1成分の拮抗作用の後で明らかに強化され(約70%)、かつ
(2) 前記呼吸抑制は、引き続くナロキソンを用いたμ−拮抗作用により完全に抑制される(
図18)ことが示された。
【0075】
このことは、本発明による特性を有する混合されたORL1/μ−アゴニストの場合の前記の減少した呼吸抑制がORL1−成分に起因していることを示す。この呼吸抑制は、完全にμ−成分により引き起こされる。この拮抗作用試験は、呼吸抑制の低減はORL1−成分によって生じることを証明する。
【0076】
μ−オピオイドにより引き起こされるこの呼吸抑制は特に麻酔の場合に重大な結果を生じる合併症を引き起こしかねないため、本発明による特性を有する化合物は麻酔のため又は麻酔に関連して使用することが有利である。この場合、特に、前記化合物の半減期が1時間より短い場合に有利であり、さらに特に30分より短い場合が有利である。
【0077】
この場合、半減期とは、本発明による特性を有する摂取された化合物の半分が物質代謝され及び/又は排泄されるまでの時間の時間であると解釈される。
【0078】
手術に引き続く場合でも、呼吸抑制の危険は高められる。100nMより低いμ−オピオイド−レセプターに関するK
i値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ割合を有する化合物を使用することにより、より高い用量を術後に使用することができ、それにより、必要な場合には、純粋なμ−アゴニストを用いた場合よりもより強い鎮痛を達成することができる。従って、本発明による特性を有する化合物は術後の痛みの治療のために使用するのが有利である。
【0079】
研究論文にも証明されているように、60才からヒトの場合の呼吸抑制の危険性は若い人と比較して明らかに高まるため(Cepeda et al.著, Clinical Pharmacology & Therapeutics 2003, 74, 102-112)、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターに関する
K
i値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ割合を有する化合物は有利に60才を越える患者の場合の痛みの治療のために使用される。従って、本発明による特性を有する化合物は、60才を越える患者の場合の麻酔、麻酔に関連して又は術後に使用するのが特に有利である。特に、前記化合物は、60才を越える患者に関しても神経障害性痛の治療のために使用するのが有利である。
【0080】
前記呼吸抑制のORL1−成分による低減は、実施例においても示されているように、拮抗作用試験により証明することができる。本発明の主題は、従って、痛みの治療のための、有利に麻酔に関連して又は術後に、μ−オピオイド−レセプターに対して及びORL1−レセプターに対して少なくとも100nMの親和性を有し、ORL1成分に基づきμ−オピオイドと比較して同じ親和性領域においてわずかな呼吸抑制を示す化合物の使用でもある。
【0081】
混合されたORL1/μ−アゴニストの場合のより高い安全間隔
一方で減少されたμ−ORにより媒介された呼吸抑制に基づき、及び他方で神経障害性痛の場合に高められた有効性に基づき、混合されたORL1/μ−アゴニストは純粋なμ−オピオイドと比較して明らかに拡大された安全間隔により優れている。動脈のpCO
2の上昇についての閾値用量(ED
10)は、実施例A1、A5、A7、A6及びA4に関して示された本発明による特性を有する混合されたORL1/μ−アゴニストについて、神経障害性痛において半値有効用量(ED
50)の約3倍〜20倍上回る(
図20)。このことは、特に慢性痛症状の場合に可能なオピオイド性副作用までの間隔は、一方で本発明による特性を有する化合物の高められた有効性に基づきかつ他方で抗オピオイド成分の有効性に基づき、μ型の副作用が治療的範囲において同じ有効性の場合に比較的低減されて生じる程度に大きいことを意味する。
【0082】
本発明による特性を有する化合物の場合に作用と副作用との間のより大きな間隔に基づき、前記化合物は緩和治療患者の場合の痛みの治療のために特に適している。緩和治療患者は、その多重罹患状態に基づき、特に強くオピオイド型の副作用を受けている。従って、本発明の主題は、緩和治療患者の痛みの治療の場合の、100nMより低いμ−オピオイド−レセプターでのK
i値の場合に0.1〜30、有利に0.1〜20のORL1/μ−割合を有する化合物の使用でもある。
【0083】
少なくとも100nM(K
i値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有する化合物(この場合、親和性ORL1:μ(K
i値)の間の割合は0.1〜30、有利に1:20〜20:1にある)は、従って、要約するとμ−オピオイドを用いた標準的治療と比較して特に以下のような利点を有する:
- 慢性痛の場合の、特に神経障害性痛の場合の及び炎症性痛の場合の作用の強化
- 急性痛の場合の同等の有効性の場合に明らかに低減された副作用、例えば呼吸抑制、禁断/中毒及びオピオイドにより誘導される痛覚過敏を示す。
【0084】
少なくとも100nM(K
i値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性及びORL−1−レセプターに対する親和性を有する化合物(この場合、親和性ORL1:μ(K
i値)の間の割合は0.1〜30、有利に1:20〜20:1にある)は、前記した特性を有する。これらの観察された利点は、特別に試験された化合物が有する特性に基づくのではなく、前記作用メカニズムから生じる効果である。このことは、拮抗作用試験により証明することができた。この場合、ORL1−成分は鎮痛のために寄与し、しかしながらμ型の副作用を抑制することが示された。鎮痛の範囲内で、前記ORL1−成分は相乗的にふるまうが、しかしながら試験された副作用の範囲内では反対的にふるまう。このために重要であるのは両方の成分の割合である。
【0085】
本発明による範囲を定義する値は、in vitroデータに関しており、in vivoで1つ以上の活性の代謝物が形成される場合には、前記代謝物が前記活性に影響を及ぼすことができる。代謝物が形成される場合には、次のケースに区別することができる。
【0086】
a) プロドラッグの使用
本発明による結合プロフィールを示さない化合物は、少なくとも100nM(K
i値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有し、かつヒトORL−1−レセプターに対する親和性を有し、1/[K
i(ORL1)/K
i(μ)]として定義される前記親和性ORL1/μの割合が0.1〜30、有利に0.1〜20であり、従って、本発明による特性を有する代謝物を形成することができる。このことは、前記代謝物のK
i値の測定により確認することができる。従って、本発明の主題は、少なくとも100nM(K
i値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有し、かつヒトORL−1−レセプターに対する親和性を有し、1/[K
i(ORL1)/K
i(μ)]として定義される前記親和性ORL1/μの割合が0.1〜30、有利に0.1〜20であり、有効性について及び/又はμ型の副作用の低減についての寄与が拮抗作用試験により検出することができる代謝物を形成する化合物の使用でもある。
【0087】
b) 親物質と共通の又は親物質との一緒に本発明によるプロフィールを形成する代謝物の形成
例えば選択的μ−アゴニストは部分的に選択されたORL1−アゴニストに代謝され、この生じる混合物が本発明による特性を有する、つまり1/[K
i(ORL1)/K
i(μ)]として定義されたORL1/μの割合が0.1〜30であり、かつヒトのμ−オピオイド−レセプターに関するK
i値は少なくとも100nMである場合に、前記混合物は同様に本発明の主題である。前記混合物は、選択性を有しない化合物から生じることもできるが、それにもかかわらず本発明による範囲外にあることができる。本発明による特性は、一方で、in vivoで生じる前記混合物の結合定数を測定することにより検出することができ(その際、前記濃度はHPLC−MS−試験により決定することができる)、他方で、ORL1−アンタゴニストを用いた拮抗作用試験によりORL1−成分の慢性痛の場合の作用の強化への寄与及び/又はμ型の副作用の低減への寄与が示されることにより検出することができる。さらに、前記化合物は、急性痛において有効であるという特性を有する。従って、本発明の主題は、代謝物により形成される、本発明による特性を有する物質混合物でもあり、その際、前記混合物の結合定数は本発明の範囲内に一致し、かつ拮抗作用試験により有効性への寄与及び/又はμ型の副作用の低減への寄与が検出することができる。
【0088】
本発明による化合物が及ぼす作用は、2種又はそれ以上の異なる物質の投与によっても達成することができる。これは、一方で、前記混合物の結合定数を決定することにより証明することができ、かつ他方で、慢性痛の場合の作用の強化へのORL1−成分の寄与及び/又はμ型の副作用の低減への寄与がORL1−アンタゴニストを用いた拮抗作用試験により示されることにより証明することができる。さらに、前記化合物は、急性痛において有効であるという特性を有する。従って、本発明の主題は、1/[K
i(ORL1)/K
i(μ)]として定義されるORL1/μが0.1よりも選択的であるμ−アゴニストと、1/[K
i(ORL1)/K
i(μ)]として定義されるORL1/μが30よりも選択的であるORL1−アゴニストとの、痛みの治療のための医薬を製造するための使用でもあり、その際、前記組み合わせは、本発明による化合物の特性を有する、つまり前記組み合わせ又はそのin vivoで生成される代謝物の組み合わせが、少なくとも100nM(K
i値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有しかつORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[K
i(ORL1)/K
i(μ)]として定義されるORL1/μの親和性の割合が0.1〜30、有利に0.1〜20である。有利にこのような組み合わせは、神経障害性痛の治療のため、特に帯状ヘルペス後の神経痛及びの場合の疼痛及び糖尿病による多発性神経障害性痛の治療のために使用される。さらに、麻酔におけるこのような組み合わせの使用が有利である。特に、前記組み合わせは60才を越えるヒトにおいて使用するのが有利である。
【0089】
本発明による医薬は、少なくとも本発明による特性を有する化合物又は本発明による組み合わせの他に、場合により適当な添加剤及び/又は助剤、並びに担持剤、充填剤、溶剤、希釈剤、着色剤及び/又は結合剤を含有し、かつ液状の医薬剤形として注射溶液、滴剤又は液剤の形態に、半固体の医薬剤形として顆粒剤、錠剤、ペレット、パッチ、カプセル、プラスター又はエアゾールの形態で投与することができる。この助剤等の選択並びにその使用されるべき量は、前記医薬が、経口、経口的、腸管外、静脈内、腹腔内、皮内、筋肉内、点鼻、バッカル、直腸又は局所、例えば皮膚、粘膜及び目に対して適用されるかどうかに依存する。経口適用のために、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、滴剤、液剤及びシロップ剤の形態の調製物が適しており、腸管外、局所及び吸入適用のために、溶液、懸濁液、容易に再構築可能な乾燥調製物並びにスプレー剤が適している。場合により皮膚浸透を促進する薬剤の添加下で、デポー剤、溶解した形態又はプラスターの形態の本発明による化合物は、適当な経皮適用調製物である。経口又は皮下適用することができる調製物は、本発明による特性を有する化合物又は本発明による組み合わせを遅延放出することができる。原則として、本発明による医薬に、当業者に公知の他の作用物質が添加されていてもよい。
【0090】
患者に投与すべき作用物質量は、患者の体重、適用種類、適応症及び疾患の重度に依存して変えられる。通常では、本発明による特性を有する少なくとも1種の化合物又は組み合わせ0.005〜20mg/kg、有利に0.05〜5mg/kgが適用される。
【0091】
全て本発明による特性を有する化合物A1〜A10は、スピロ環式シクロヘキサン誘導体のグループに属する。これらの化合物は、μ−オピオイド−レセプター及び/又はORL−1−レセプターに対する親和性を有し、しかしながら、これらの化合物のサブグループは本発明による特性を有している。
【0092】
従って、本発明の主題は、少なくとも100nM(Ki値 ヒト)のμ−オピオイド−レセプターに対する親和性を有しかつORL−1−レセプターに対する親和性を有し、その際、1/[Ki(ORL1)/Ki(μ)]として定義される前記の親和性のORL1/μの割合は、0.1〜30であり、糖尿病による多発性神経障害性痛、術後の痛み又は
帯状ヘルペス後の神経痛の場合の痛みの治療のための医薬の製造のための、一般式I
【0093】
【化1】
[式中、
R
1及びR
2は、相互に無関係に、H又はCH
3を表し、その際、R
1及びR
2は同時にHを表さず;
R
3は、フェニル、ベンジル又はヘテロアリールを表し、これらはそれぞれ非置換であるか又はF、Cl、OH、CN又はOCH
3でモノ又はポリ置換されている;
Wは、NR
4、O又はSを表し、
及び
R
4は、H;C
1〜C
5−アルキル、フェニル;C
1〜C
3−アルキル基を介して結合したフェニル、COR
12;SO
2R
12を表し、
その際、R
12は、H;C
1〜C
7−アルキル(これは分枝した又は非分枝の、飽和又は不飽和の、非置換であるか又はOH、F又はCOOC
1〜C
4−アルキルによりモノ又はポリ置換されている);C
4〜C
6−シクロアルキル;アリール−、又はヘテロアリール(これは非置換であるか又はF、Cl、Br、CF
3、OCH
3、C
1〜C
4−アルキル(これは分枝した又は非分枝の、非置換であるかF、Cl、CN、CF
3、OCH
3又はOHにより置換されている)によりモノ又はポリ置換されている);又は飽和又は不飽和のC
1〜C
3−アルキルを介して結合されたフェニル又はヘテロアリール(これらは非置換であるか又はF、Cl、Br、CF
3、OCH
3、C
1〜C
4−アルキル(これは分枝された又は非分枝の、非置換であるかF、Cl、CN、CF
3、OCH
3又はOHにより置換されている)によりモノ又はポリ置換されている);又は飽和又は不飽和のC
1〜C
3−アルキルを介して結合されたC
5〜C
6−シクロアルキル;OR
13;NR
14R
15を表し;
R
5は、H;COOR
13、CONR
13、OR
13;C
1〜C
5−アルキルを表し、これは飽和又は不飽和であり、分枝又は非分枝であり、非置換であるか又はOH、F、CF
3又はCNによりモノ又はポリ置換されている;
R
6は、Hを表すか;
又はR
5及びR
6は一緒になって、(CH
2)
nを表し、その際、n=2、3、4、5又は6を表し、その際、個々の水素原子はF、Cl、NO
2、CF
3、OR
13、CN又はC
1〜C
5−アルキルにより置換されていてもよく;
R
7、R
8、R
9及びR
10は、相互に無関係に、H、F、Cl、Br、NO
2、CF
3、OH、OCH
3、CN、COOR
13、NR
14R
15;C
1〜C
5−アルキル、ヘテロアリールを表し、これは非置換又はベンジル、CH
3、Cl、F、OCH
3又はOHによりモノ又はポリ置換されているか;
R
13は、H又はC
1〜C
5−アルキルを表し;
R
14及びR
15は、相互に無関係に、H又はC
1〜C
5−アルキルを表し;
Xは、O、S、SO、SO
2又はNR
17を表し;
R
17は、H;C
1〜C
5−アルキル、これは飽和又は不飽和であり、分枝又は非分枝である;COR
12又はSO
2R
12を表す]のスピロ環式シクロヘキサン誘導体のグループからなる化合物
その純粋なジアステレオマーの形態、そのラセミ体の形態、その純粋なエナンチオマーの形態、又は任意の混合割合での立体異性体の混合物の形態;
塩基として、又はその塩として、特に生理学的に許容される塩又は生理学的に許容される酸又はカチオンの塩の形態でもある。